特開2021-162831(P2021-162831A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-162831(P2021-162831A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】ギターの装置
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/02 20060101AFI20210913BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
   G10D3/02
   G10D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-75726(P2020-75726)
(22)【出願日】2020年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】519456321
【氏名又は名称】森山 順一
(72)【発明者】
【氏名】森山 順一
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC01
(57)【要約】
【課題】本発明は図1に示すように、サドル21が装置1により挟み込まれ締結された状態において、弦17の振動により共振するサドル21により装置1を構成する取付けユニット2とパイプユニット3が同期して振動し、そのパイプユニット3に締結されている1個または複数個のサウンドパイプ8から表面板に振動が伝播し、響きを良くする装置1を提供する。
【解決手段】サウンドホールとサウンドボードを持つクラシックギターとアコースティックギターの共通部品であるサドル21を利用して、ギターの弦17を緩めることなく演奏可能な状態のままで脱着でき、複数個のサウンドパイプ8を装着可能とし、装着数を調整することにより演奏者の最適な好みの響きを得ることが可能な装置1を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調弦を完了した状態を維持したままで、ギターの弦17との干渉を防ぐ切り欠き部を有している前取付け板4と後ろ取付け板5をサドル21に挿入し挟み込むことにより締結されることを特徴とするギターの装置。
【請求項2】
前取付け板4と後ろ取付け板5およびこれらの間に挟まれた弾性体が弾性限度内で共に支点軸で締結され、支点軸を中心にしてサドル21の反対方向の位置において、前記どちらかの取付け板に設けられた押し具を出し入れすると、弾性体の反発力により前記取り付け板が開閉して脱着できる構造を有していることを特徴とする前記請求項1に記載のギターの装置。
【請求項3】
サドル21を挟みこんでいる取付けユニット2に固定されているパイプユニット3に締結されたサウンドパイプ8を複数個取り付けることができ、しかも締結数を調整することが可能であることを特徴とする前記請求項1または2に記載のギターの装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギターの響きを良くする装置(以下装置という)に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の一種である木製のサウンドボードとサウンドホールを持つギターには、クラシックギターとアコースティックギターがある。
【0003】
図7に示すようにクラシックギターは表面板20に固着されたブリッジ22の溝に弦17を張るためのサドル21がはめ込まれている。弦17はサドル21の上に掛けた後ブリッジ22の穴に通し、これを跨いでサドル21との間にある弦17の下に潜らせて先端をブリッジ22上面で絡めて弦17が外れないように留める。(以下弦留めという。)
【0004】
一方、図8に示すようにアコースティックギターは同じように表面板20に固着されたブリッジ22の溝に弦17を張るためのサドル21がはめ込まれている。弦17はその先端にボールエンド18を設けてあり、これをブリッジ22の穴に通した後にブリッジピン19をこの穴に差し込み弦留めする。
【0005】
クラシックギターは前記の通り弦17の先端をサドル21とブリッジ22の間にある弦17の下に潜らせてブリッジ22上面で絡めて弦留めする方法であるため音の調整を済ませた弦17を自身で持ち上げる方向に力が働き、極小の緩みが発生し音質が低下する。クラシックギターはこのような物理的要因によりクリアな音が出せない欠点があり、この問題を解決する先行技術として「特許文献1」がある。
ただし、アコースティックギターについては図8の通りクラシックギターのような音質を低下させる構造上の欠点はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2019−230932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記「特許文献1」ではパイプがブリッジの端で線接触し、しかも弦の張力のみで保持される構造を有しているので弦の振動に対してパイプが敏感に反応し共振してギター本体に伝播して響きの良い音を発生させることに寄与している。
【0008】
しかしながら、前記「特許文献1」はクラシックギター特有の弦留めを利用しているので、これと異なる弦留め方法を採用しているアコースティックギターには直接採用できない。しかし、ともにサウンドボードとサウンドホールを持つギターであり響きの良い音を発生することに関しては共通の課題を持っている。
【0009】
一般的にクラシックギターとアコースティックギターの使用状況を比較すると圧倒的にアコースティックギターのほうが多いことから両方のギターに利用できる構造にすることは、さらに利用価値を高めるという理由から前記問題を解決することは第1の課題である。
【0010】
さらに、前記「特許文献1」はパイプに直接弦留めしているため、弦17の交換には全てを緩めてパイプを脱着する必要がある。弦17を緩めた後、演奏するためには再度の調弦と、弦の張力が安定するまでの数回にわたりこの作業を繰り返すことになり、第2の課題となっている。
【0011】
前記課題の他に、パイプを複数個取り付けるようにすれば響きを良くする効果が期待できるはずであるが「特許文献1」ではパイプに弦留めする構造上、1個のパイプのみに取り付けが限定され、第3の課題として残されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで、クラシックギターとアコースティックギターの両方に適用するための第1の課題を解決する手段、前記「特許文献1」のパイプ脱着時の第2の課題を解決する手段およびパイプの取付けが1個に限定される第3の課題を解決する手段について下記に述べる。
【0013】
図1に示すように、前記第1ないし第3の課題を解決する手段として、本発明の装置1は大きく分けて取付けユニット2とパイプユニット3から構成されている。
【0014】
第1の課題を解決する手段について、
図7図8に示すようにクラシックギターとアコースティックギターの構造上の共通点は共にブリッジ22とサドル21を有していることである。本発明は図6に示すように、この2つのギターの共通部品であるサドル21を利用して両方のギターに適用できる装置1を提供する。
【0015】
本発明は図4ないし図6に示すように、装置1の構成部品である取付けユニット2において、弦17の干渉を防ぐために切り欠き部23を有している前取付け板4と後ろ取付け板5がサドル21を挟み込むことにより締結されることを特徴とする。
【0016】
第2の課題を解決する手段として、
図5で示すように、前取付け板4と後ろ取付け板5はこの2つの内側に挿入されている支点リングゴム右6a、支点リングゴム左6bと共に支点軸(ボルト)右10a、支点軸(ボルト)左10bとワッシャーA右11a、ワッシャーA左11b、ワッシャーB右13a、ワッシヤーB左13bおよびナット右12a、ナット左12bによりゴムの弾性限度内でサドル21に締め付けられている。
【0017】
このような状態において支点となる支点軸(ボルト)右10a、支点軸(ボルト)左10bを中心としてサドル21の反対側の一定の距離にあり、押し具としての役割をする押しボルト右14a、押しボルト左14bを緩めると支点リングゴム右6a、支点リングゴム左6bの反発力により二つの取付け板のC部がサドル21から離れて装置1が取り外せる状態になる。
【0018】
このようにギターの弦17を緩めることなく演奏可能な状態のままで装置1を素早く脱着できる構造を有していることを特徴とする。
【0019】
第3の課題を解決する手段として、
図3ないし図5に示すように取付けユニット2は前取付け板4と後ろ取付け板5をサドル21に挿入し挟み込むことにより締結され、さらにパイプユニット3は取付けユニット2に締結されて取付けられている。
【0020】
このとき、弦17の振動により共振するサドル21を挟み込むことにより締結されている取付けユニット2が同時に振動し、さらにパイプユニット3に振動が伝えられる。パイプユニット3に締結されている1個あるいは複数のサウンドパイプ8に振動が伝達されると、ギターの表面板20との隙間から表面板に伝播され、弦17の振動により直接表面板20に伝播された振動に付加され増幅されることによりさらに響きの良い音が発生する。
【0021】
図1および図3に示すように本発明の取付けユニット2に締結されているパイプユニット3に締結されたサウンドパイプ8を複数個取り付けることができ、締結数を調整することにより演奏者の最適な好みの響きを得ることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
課題1の手段の効果は、前記の「特許文献1」では図7に示すようなクラシックギター特有の構造を利用して効果的な響きの音を引き出している。一方図8に示すようにアコースティックギターは構造それ自体がが異なるので利用できない。本発明ではクラシックギターとアコースティックギターとの間の共通なサドル21を利用し、ユニット2の構成部品である弦17との干渉を防ぐ切込み部を有している前取付け板4と後ろ取付け板5によりこれを挟み込み装着して締結する構造を有している。
【0023】
したがってこのような構造を持つ装置1は、ギター本体の改造は不要であり即座に他のギターに装着することができる。
【0024】
課題2の手段の効果は、前記「特許文献1」ではサウンドパイプ8を装着しようとすると、調律したすべての弦17を緩めてパイプに弦留めし直して再度調律する必要があり、さらに一度緩めた弦は調律した後の演奏のたびに弦の張力が安定するまで数回の微調整が必要となる。一方、本発明の装置1は図7図8に示す共通な構造であるサドル21に挟み込んで締結され取り付けられているため、弦17を調律した状態すなわち演奏できる状態で装置1を即座に脱着できる特徴があり調律のやり直しによる煩わしさがない。
【0025】
さらに課題3の手段の効果は、前記[特許文献1]のギター特有の構造から響きに影響するサウンドパイプの取付けが1個に限定されるのに対して、本発明は図1に示すように1個から複数個の取付け(本事例では3個)が可能であり、締結数を調整することにより演奏者の最適な好みの響きを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】 本発明のギターへの取付け全体斜視図
図2】 本発明の分解斜視図
図3】 本発明の正面図
図4】 本発明の右・右断面図
図5】 A部詳細図
図6】 本発明の装置のギターへの取付説明図
図7】 クラシックギターの弦留め図
図8】 アコースティックギターの弦留め図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は図7図8に示すようにサドル21、ブリッジ22、表面板20を持つクラシックギターとアコースティックギターに適用できるものであるが本事例では発明を実施する形態としてクラシックギターを実施例に取り上げて説明する。
【0028】
図1は本発明の実施に係る装置1のギター本体への取り付け実施例を、図2はその分解斜視図である。
【0029】
図8で示すように弦留めの違いによりアコースティックギターが弦17の先端に抜け防止のボールエンド18、ブリッジピン19を有する以外は、クラシックギターとの共通部品であるサドル21、ブリッジ22を有している。
【0030】
本発明は図1に示すように前記第1ないし第3の解決手段のとおり大きく分けて取付けユニット2とパイプユニット3から構成されている
【0031】
また、図2ないし図4に示すように取付けユニット2は前取付け板4と後ろ取付け板5の間隔を広げる役割をする支点リングゴム右6aと支点リングゴム左6b、クランプの開閉の支点となる支点軸(ボルト)右10aと支点軸(ボルト)左10b、ワッシャーB右13aとワッシャーB左13b、ワッシャーA右11aとワッシャーA左11b、ナット右12aとナット左12b、押し具としての押しボルト右14aと押しボルト左14bを有している。
【0032】
さらに、パイプユニット3はサウンドパイプ支持板7、サウンドパイプ支持ボルト右15aとサウンド支持ボルト左15b、ワッシャーC右16aとワッシャーC左16b、結束バンド右9aと結束バンド左9b、サウンドパイプ8を有している。
【0033】
図1図4および図6に示すように、取付けユニット2の前取付け板4、後ろ取付け板5には弦17が通るための切り欠き部23が設けてあり、装置1をサドル21に挿入するとき干渉を防ぐ役割を有している。
【0034】
ここで、本発明の取付け使用方法について説明する。図5において、前取付け板4と後ろ取付け板5の間に挟まれている支点リングゴム右6aと支点リングゴム左6bの穴と、前取付け板4、後ろ取付け板5の穴に開閉の支点となる支点軸(ボルト)右10aと支点軸(ボルト)左10bを通す。
【0035】
このとき押し具の役割をする押しボルト右14a、押しボルト14bを緩めた状態において、前取付け板4と後ろ取付け板5はワッシャーA右11a、ワッシャーA左11b、ワッシャーB右13a、ワッシャーB左13bおよびナット右12a、ナット左12bによりゴムの弾性限度内でしかもサドル21に手で軽く挿入できる間隔で締め付けられている。
【0036】
このような状態において支点となる支点軸(ボルト)右10a、支点軸(ボルト)左10bを中心としてサドル21の反対側にある押し具の役割をする押しボルト右14a、押しボルト左14bを緩めると支点リングゴム右6a、支点リングゴム左6bの反発力により二つの取付け板のC部がサドル21から離れて装置1が取り外せる状態になる。
【0037】
次に図6の状態から装置1をブリッジ22の先端に接触するまでサドル21に押し込んだ後、押し具の役割をする押しボルト右14a、押しボルト左14bを締めこみ、あるいは緩めることにより支点軸(ボルト)右10a、支点軸(ボルト)左10bを支点として図5のC部に示すように装置1に設けてある前取付け板4と後ろ取付け板5はサドル21に締結あるいは解放される。
【0038】
次に、サウンドパイプ支持ボルト右15a、サウンドパイプ支持ボルト左15bを緩めた状態にして、結束バンド右9a、結束バンド左9bでサウンドパイプ支持板7に締結されているサウンドパイプ8を1個から複数個選択し表面板20とのB部隙間を最適な響きになるように調整する。
【0039】
続いてワッシャーC右16a、ワッシャーC左16bと共にサウンドパイプ支持ボルト右15a、サウンドパイプ支持ボルト左15bを締めつけてパイプユニット3を締結する。
【0040】
本発明はギター本体を加工する必要がなく、しかも響きの音に影響するサウンドパイプ8の形状、材質に制限がなく、前記のように取付け数も自由に選択することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 装置
2 取付けユニット
3 パイプユニット
4 前取付け板
5 後ろ取付け板
6a 支点リングゴム右
6b 支点リングゴム左
7 サウンドパイプ支持板
8 サウンドパイプ
9a 結束バンド右
9b 結束バンド左
10a 支点軸(ボルト)右
10b 支点軸(ボルト)左
11a ワッシャーA右
11b ワッシャーA左
12a ナット右
12b ナット左
13aワッシャーB右
13b ワッシャーB左
14a 押しボルト右
14b 押しボルト左
15a サウンドパイプ支持ボルト右
15b サウンドパイプ支持ボルト左
16a ワッシャーC右
16b ワッシャーC左
17 弦
18 ボールエンド
19 ブリッジピン
20 表面板
21 サドル
22 ブリッジ
23 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8