【解決手段】動作指令を発生させる操作装置30と、操作装置30により発生した動作指令に基づいて産業機械10を制御する制御装置20とを備え、産業機械10が、水平方向に動作する複数の水平直動機構を備え、操作装置30が、長手軸Lを備えるとともに、長手軸Lを水平面に投影した第1方向を検出する地磁気センサと、長手軸に沿う方向への動作量を変位によって入力する可動スイッチ31とを備え、制御装置20が、地磁気センサにより検出された第1方向に対応する水平方向に、可動スイッチ31に入力された動作量だけ、少なくとも1つの水平直動機構を動作させる制御システム100。
前記制御装置が、地磁気に対する各前記水平直動機構の動作方向を記憶し、前記第1方向に最も近似する動作方向を有する単一の前記水平直動機構を動作させる請求項1に記載の産業機械の制御システム。
前記制御装置が、地磁気に対する各前記水平直動機構の動作方向を記憶し、各前記水平直動機構および前記鉛直直動機構の内、前記長手軸の方向に最も近似する動作方向を有する単一の前記水平直動機構または前記鉛直直動機構を動作させる請求項2に記載の産業機械の制御システム。
前記制御装置が、地磁気に対する各前記水平直動機構の動作方向を記憶し、前記第1方向を各前記水平直動機構の動作方向の成分に分解し、分解された前記成分に応じた比率を前記動作量に乗じた量だけ、各前記水平直動機構を動作させる請求項1に記載の産業機械の制御システム。
前記制御装置が、地磁気に対する各前記水平直動機構の動作方向を記憶し、前記長手軸の方向を各前記水平直動機構および前記鉛直直動機構の動作方向の成分に分解し、分解された前記成分に応じた比率を前記動作量に乗じた量だけ、各前記水平直動機構および前記鉛直直動機構を動作させる請求項2に記載の産業機械の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る産業機械の制御システム100および制御方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る制御システム100は、
図1に示されるように、工作機械(産業機械)10の制御システムであって、工作機械10の動作を制御する制御装置20と、操作装置30とを備えている。
【0009】
工作機械10は、
図1に示される例では、第1水平直動機構11と、第2水平直動機構12と、鉛直直動機構13とを備えている。第1水平直動機構11は、床面に設置された第1ベース11aと、第1ベース11aに対してX方向(水平方向)に移動可能に支持された第1スライダ11bとを備えている。また、第2水平直動機構12は、第1スライダ11bに固定された第2ベース12aと、第2ベース12aに対してY方向(水平方向)に移動可能に支持された第2スライダ12bとを備えている。
【0010】
また、鉛直直動機構13は、第2スライダ12bに固定された第3ベース13aと、第3ベース13aに対してZ方向(鉛直方向)に移動可能に支持された第3スライダ13bとを備えている。第3スライダ13bには、工具を装着可能な主軸14が固定されている。
また、工作機械10は、ワークを搭載するテーブル15と、テーブル15を鉛直軸線回りに回転させる第1回転機構16と、テーブル15を水平軸線回りに傾斜させる第2回転機構17とを備えている。
【0011】
操作装置30は、
図1に示されるように、長手軸Lを有し、作業者によって把持される装置本体30aに、作業者が指で回転させるダイヤル(可動スイッチ)31を備えている。ダイヤル31の回転角度(変位)は、工作機械10のいずれかの直動機構11〜13の動作量に対応している。
【0012】
また、操作装置30は、
図2に示されるように、地磁気の方向を検出する地磁気センサ32と、重力方向を検出する加速度センサ33とを備えている。
地磁気センサ32は、装置本体30aに対する地磁気の方向を検出することにより、装置本体30aの長手軸Lの方向が地磁気の方向に対してどの方位にあるかを検出することができる。すなわち、地磁気センサ32は、
図3に示されるように、長手軸Lの方向を水平面(XY平面)に投影した方位を第1方向として検出する。地磁気センサ32は、具体的には、
図4に示されるように、地磁気のN方向に対する角度αとして第1方向を検出する。
【0013】
加速度センサ33は、装置本体30aに対する重力方向を検出することにより、装置本体30aの長手軸Lが、長手軸Lを含む鉛直面内においてどちらの方向にどれだけ傾いているのかを検出することができる。すなわち、加速度センサ33は、
図3に示されるように、長手軸Lを含む鉛直面内における長手軸Lの傾きβを検出する。
【0014】
また、操作装置30は、
図2に示されるように、工作機械10のいずれかの単一の直動機構11〜13のみを動作させる単軸モードと、全ての直動機構11〜13を動作させる複軸モードとを切り替える切替スイッチ35を備えている。
【0015】
また、操作装置30は、ダイヤル31の回転角度と、地磁気センサ32により検出された第1方向(角度α)および加速度センサ33により検出された傾きβと、モード情報とを含む動作指令を生成する動作指令生成部36を備える。
そして、操作装置30は、有線または無線により、動作指令生成部36によって生成された動作指令を制御装置20に送信する。
【0016】
制御装置20は、工作機械10の第1水平直動機構11、第2水平直動機構12の地磁気のN方向に対する動作方向を記憶している。すなわち、制御装置20は、
図4に示されるように、地磁気のN方向と第1水平直動機構11の動作方向Xとのなす角度θを記憶している。本実施形態においては、動作方向Xと動作方向Yとは直交しているので、制御装置20は、地磁気のN方向と動作方向Xとのなす角度θのみを記憶している。
【0017】
これにより、制御装置20は、地磁気のN方向を基準とすることにより、動作指令に含まれる第1方向が、動作方向X,Yに対してどの方向に配置されているのかを正確に算出することができる。
つまり、
図4に示すように、地磁気のN方向と第1方向との間の角度αから地磁気のN方向と第1水平直動機構11の動作方向Xとの間の角度θを減算することにより、第1水平直動機構11の動作方向Xに対して第1方向のなす角度γを求めることができる。
【0018】
そして、制御装置20は、操作装置30から送られてきた動作指令に含まれているモード情報が単軸モードである場合には、動作指令に含まれている長手軸Lの傾きβから水平直動機構か鉛直直動機構かを判断する。制御装置20は、傾きβが45°よりも小さい場合には、鉛直直動機構13を動作させず、水平直動機構のみを動作させる。
【0019】
この場合、制御装置20は、さらに、第1方向が第1水平直動機構11の動作方向Xまたは第2水平直動機構12の動作方向Yのいずれの方向に近いかによって第1水平直動機構11と第2水平直動機構12のいずれを動作させるのかを判断する。
【0020】
例えば、
図3に示す例では、長手軸Lの鉛直面内における傾きβが45°よりも小さいので、鉛直直動機構13を動作させず、第1水平直動機構11または第2水平直動機構12を動作させることが選択される。
次いで、角度γが45°以下か否かが判定され、角度γが45°よりも大きいため、第2水平直動機構12を動作させることが選択される。
【0021】
したがって、
図3に示す例では、制御装置20は、長手軸Lの方向に、最も近似する第2水平直動機構12を選択し、第2水平直動機構12のみを、ダイヤル31の回転角度に対応した動作量だけ動作させる。
【0022】
また、操作装置30から送られてきた動作指令に含まれているモード情報が単軸モードである場合において、長手軸Lの傾きβが45°よりも大きい場合には、鉛直直動機構13のみを動作させることが選択される。この場合には、制御装置20は、鉛直直動機構13のみを、ダイヤル31の回転角度に対応した動作量だけ動作させる。
【0023】
一方、動作指令に含まれているモード情報が複軸モードである場合には、まず、制御装置20は、動作指令に含まれている長手軸Lの方向を各直動機構11〜13の動作方向X,Y,Zの成分に分解し、各成分の比率を算出する。そして、各直動機構11〜13は、夫々対応する各成分の比率をダイヤル31の回転角度に乗じた動作量だけ、制御装置20によって動作させられる。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る産業機械の制御システム100を用いた制御方法について、
図2および
図5を用いて、以下に説明する。
本実施形態に係る制御システム100を用いて工作機械10を制御するには、作業者が、例えば、左手で操作装置30の装置本体30aを把持して、右手で操作装置30を操作する。作業者はまず、切替スイッチ35を操作して、単軸モードか複軸モードかを切り替える(ステップS1)。
【0025】
次いで、作業者は、右手を切替スイッチ35からダイヤル31に置き換えて、操作装置30の長手軸Lを作動させたい直動機構11〜13の動作方向X,Y,Zに近づける。これにより、操作装置30に内蔵されている地磁気センサ32によって、地磁気のN方向に対する第1方向(角度α)が検出され、加速度センサ33によって、長手軸Lの鉛直面内における傾きβが検出される(ステップS2)。
【0026】
この状態で、作業者がダイヤル31を回転させることにより、ダイヤル31の回転角度に対応する動作量が入力される(ステップS3)。そして、動作指令生成部36によって、設定されたモード情報と、検出された角度αおよび傾きβと、入力された動作量とを含む動作指令が生成される(ステップS4)。
【0027】
生成された動作指令が送られてくると、制御装置20は、動作指令に含まれているモード情報を確認する(ステップS5)。モード情報が単軸モードである場合には、制御装置20は、動作指令に含まれている傾きβが45°以下か否かを判断する(ステップS6)。
【0028】
傾きβが45°以下である場合には、制御装置20は、地磁気のN方向に対する第1方向の角度αから角度θを減算した角度γが45°以下であるか否かを判断する(ステップS7)。角度γが45°以下である場合には、第1水平直動機構11のみを動作させることを選択する(ステップS8)。角度γが45°よりも大きい場合には、第2水平直動機構12のみを動作させることを選択する(ステップS9)。
【0029】
また、制御装置20は、選択された水平直動機構11,12の動作量を、動作指令に含まれているダイヤル31の回転角度に基づいて算出し(ステップS10)、選択された単一の水平直動機構11,12を算出した動作量だけ動作させる(ステップS11)。
【0030】
一方、ステップS6において、傾きβが45°よりも大きい場合には、制御装置20は、鉛直直動機構13のみを動作させることを選択する(ステップS12)。そして、選択された鉛直直動機構13は、ダイヤル31の回転角度に対応した動作量だけ動作させられる。
【0031】
また、ステップS5において、動作指令に含まれているモード情報が複軸モードである場合には、制御装置20は、全ての直動機構11〜13を動作させることを選択する。この場合には、制御装置20は、地磁気のN方向に対する第1方向の角度α、長手軸Lの傾きβおよび地磁気のN方向に対する動作方向Xの角度θを用いて、長手軸Lの方向を各直動機構11〜13の動作方向X,Y,Zの成分の比率を算出する(ステップS13)。
【0032】
制御装置20は、算出された各成分の比率にダイヤル31の回転角度を乗ずることにより各直動機構11〜13の動作量を算出する(ステップS10)。そして、制御装置20は、各直動機構11〜13に対応する動作量だけ、各直動機構11〜13を同時に動作させる(ステップS11)。
【0033】
このように本実施形態に係る産業機械の制御システム100および制御方法によれば、作業者は、操作装置30を所望の方向に向けてダイヤル31を操作するだけで、所望の直動機構11〜13を動作させることができる。これにより、作業者は、手元の操作装置30を見ることなく、産業機械10を所望する動作方向に動作させることができる。
また、操作装置30の長手軸Lの方向を変更するだけで、動作させる直動機構を切り替えることもできるため、常に産業機械10の動作を確認しながら操作することができ、誤操作を防止することができる。
【0034】
また、単軸モードをおいては、作業者は、長手軸Lを、所望する方向に厳密に一致させることなく、大まかに向けるだけで、所望する水平直動機構または鉛直直動機構を動作させることができるという利点がある。
また、単軸モードと複軸モードを任意に切り替えることにより、作業者は、作業の内容や環境に応じて、適宜、最適な動作モードで工作機械10を操作することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、工作機械10の第1水平直動機構11、第2水平直動機構12および鉛直直動機構13を動作させる場合を例示して説明したが、これに代えて、第1水平直動機構11および第2水平直動機構12のみを動作させる場合に適用してもよい。
この場合には、操作装置30は、装置本体30aの長手軸Lが鉛直面内において、どちらに傾いているのかを検知する必要がないため、加速度センサ33を省略してもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、可動スイッチ31はダイヤル式を例示したが、これに限定されるものではなく、スライド式やローラー式など任意の態様でよい。
また、産業機械10として、5軸工作機械を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、直動機構を有するロボットなど任意の産業機械10を採用してもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、第1方向の傾きβ=45°の場合には、鉛直直動機構13のみを動作させ、角度γ=45°である場合には、第2水平直動機構12のみを動作させることとした。これに代えて、β=45°±Δβ、およびγ=45°±Δγ(Δβ、Δγは任意。)の領域に不感帯を設定してもよい。
【0038】
第1方向が不感帯の領域内にある場合には、制御装置20は、直動機構11,12,13を全て停止させる。これにより、作業者は、いずれかの直動機構11〜13の動作方向に、操作装置30の長手軸Lをより近づけて不感帯から離脱させることにより、動作させたい直動機構11〜13を明確に選択することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、第1水平直動機構11の動作方向Xと第2水平直動機構12の動作方向Yとが直交している場合を例示したが、直交していなくてもよい。この場合には、第1水平直動機構11の動作方向と第2水平直動機構12の動作方向との相対角度をさらに記憶しておけばよい。そして、第1方向と各動作方向とのなす角度の小さい方を動作させる直動機構として選択すればよい。