【解決手段】オルソ変換対象範囲を含む画像を撮像する撮像手段と、当該撮像手段により撮像した画像データに基づいて当該画像データをオルソ画像に変換するオルソ変換手段とを備えてなるオルソ画像作成装置において、前記オルソ変換対象範囲に設置され、オルソ変換対象の基準面に沿って当該基準面に略並行に敷設する基礎部材と、当該基礎部材の撮像側の面に配置され、予め相対位置が決められた一直線上にない少なくとも3か所の基準マークをオルソ変換に使用する。
オルソ変換対象範囲を含む画像を撮像する撮像手段と、当該撮像手段により撮像した画像データに基づいて当該画像データをオルソ画像に変換するオルソ変換手段とを備えてなるオルソ画像作成に用いる基準マーカにおいて、
前記オルソ変換対象範囲に設置され、
オルソ変換対象の基準面に沿って当該基準面に略並行に敷設する基礎部材と、
当該基礎部材の撮像側の面に配置され、予め相対位置が決められた一直線上にない少なくとも3か所の基準マークと
から成る画像のオルソ変換に使用する基準マーカ。
前記基準マークは、少なくとも1つの基準マークがその他の基準マークと、基準面からの距離が異なることを特徴とする請求項1に記載の画像のオルソ変換に使用する基準マーカ。
オルソ変換対象範囲を含む画像を撮像する撮像手段と、当該撮像手段により撮像した画像データに基づいて当該画像データをオルソ画像に変換するオルソ変換手段とを備えてなるオルソ画像作成装置において、
前記オルソ変換対象範囲に設置され、オルソ変換対象の基準面に沿って当該基準面に略並行に敷設する基礎部材と当該基礎部材の撮像側の面に配置され、予め相対位置が決められた一直線上にない少なくとも3か所の基準マークとを有する基準マーカを備え、
前記オルソ変換手段は、前記撮像された画像データを前記基準マーカの前記少なくとも3か所の基準マークの相対位置を基準としてオルソ画像を作成する
ことを特徴とするオルソ画像作成装置。
前記基準マークは、少なくとも1つの基準マークがその他の基準マークと、基準面からの距離が異なっており、前記オルソ変換手段に距離が異なる基準マークを判別する判別手段を設けたことを特徴とする請求項6に記載のオルソ画像作成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施形態を、図を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す基準マーカの平面図であり、道路の路面のオルソ画像を作成するのに好適な基準マーカ1を示す平面図である。後述するように、この基準マーカ1は、オルソ変換対象範囲に配置され、オルソ変換対象の基準面である路面に沿って、この路面に略並行に敷設するものである。
【0020】
この基準マーカ1は、十字形状を成し、2本の直線状の平板1aおよび1bを備え、これにより基礎部材を構成している。そして、これら各平板1aおよび1bを互いにその中央部で、相互に回転自在に接合する接合部1cとで構成される。
【0021】
図2は、
図1に示した基準マーカ1の各平板1aおよび1bが相互に回転可能な状態を示した図であり、平板1a、1bを相互に回転し、互いに重ね合わせることにより、1本の板状になり、これを逆に互いに開くことにより、十字形状となる。通常の保管時は、各平板1a、1bを互いに重ね合わせ、1枚の板状にすれば、その保管が容易となる。そして、基準マーカ1としての使用時は、各平板1a、1bを互いに開き、十字形状とする。
【0022】
図3(a)は各平板1a、1bを互いに重ね合わせた状態を示す平面図、
図3(b)は側面図である。平板1aおよび1bは予め定めた同一の長さであり、黒と白に塗り分けられている。この場合、各平板1a、1bの基礎部材としての本体部は黒に着色され、基準マーク1aa、1ab、1ba、1bbとして先端部は白に着色してある。後述するように、基礎部材としての平板1a、1bの黒に着色した部分と、白に着色した部分との境界線の幅方向の中心をオルソ変換の基準点として用いる。このため、基準マーカ1の各平板1a,1bを開いた状態では、各基準マーク1aa、1ab、1ba、1bbは、そのすべてが一直線上にないように設置される。
【0023】
図3(b)に示すように、平板1aおよび1bの板厚はtで、黒く塗られた部分の端から中心までの長さはLとしてある。板厚tに回転機構用の隙間の寸法を加えたものがdである。基準マーカ1は
図3のように折りたたんだ状態で運搬し、撮像する現場で
図1に示すように十字形の状態に展開して使用する。従って基準マーク1aaと1abは基準面からの距離がtであり、1baと1bbは基準面からの距離がt+dとなり、互いに基準面からの距離が異なっている。この実施例では、tが6mm、dが8mm、Lが350mmとしてある。この寸法は、このものに係わることなく任意であるが、実施例の場合、可搬性、保管等を考慮し、一例としてこの寸法とした。
【0024】
基準マーカ1の材質は、上記した寸法が確保されればよく、金属、材木、樹脂等の種々の材料が使用可能であるが、本実施例の場合、材質はアルミ製を採用した。その理由は、軽く、しかも加工のし易さ、容易に運搬できる等の理由による。
【0025】
また、この基準マーカ1の接合部1cは、後述するように、各平板1a、1bを互いに開き、互いに直行して十字形状とした位置で容易に動かないようロックされ、また各平板1a、1bを互いに重ね合わせ、1枚の板状にした保管状態で容易に動かないようロックする構成となっている。
図4は、このロック機構の構成を示した図であり、基準マーカ1の接合部1cの上面図である。
図5は
図4のC−C断面図である。
【0026】
これらの図において、1c−aは平板1aの中央部を受ける平板受部、1c−bは平板1bの中央部を受ける平板受部である。平板受部1c−aの対向する側方には搭載した平板1aを係止し、位置決めする側板1da、1dbを備え、更にこの側板1da、1dbには平板受部1c−aに搭載した平板1aを固定するねじ穴1eを複数個、この場合は片側に2個ずつ設けてあり、平板1aは図示しないねじによって平板受部1c−aに固定される。
【0027】
同様に、平板受部1c−bの対向する側方には、搭載した平板1bを係止し、位置決めする側板1dc、1ddを備え、更にこの側板1dc、1ddには平板受部1c−bに搭載した平板1bを固定するねじ穴1eを複数個、この場合は片側に2個ずつ設けてあり、平板1bは図示しないねじによって平板受部1c−aに固定される。
【0028】
上記したように、平板受部1c−a、1c−bは互いに平板状を成し、背中合わせに配置され、中央部には、相対的に回転可能なように、透孔1fを設けてある。この透孔1fには円管1iが嵌合され、この円管1iの両端はカシメが施してある。これにより、平板受部1c−a、1c−bは相対的に回転可能となっている。各平板1a、1bは互いに開き、互いに直行して十字形状とした位置で容易に動かないようロックされる。また各平板1a、1bは互いに重ね合わせ、1枚の板状にした保管状態で容易に動かないようロックできる。この機構は次のように実現している。
【0029】
すなわち、この実施例の場合、平板受部1c−aの平板受部1c−bとの対向面には、図示のように円管1iを中心に等距離で、しかも90度の間隔で半球状の凸部1ga,1gb,1gc、1gdを4か所設ける。ほぼ同様に、対応する平板受部1c−bの平板受部1c−aとの対向面には、図示のように円管1iを中心に等距離で、しかも90度の間隔で前記凸部1ga、1gb、1gc、1gdと対応した半球状の凹部1ha、1hb、1hc、1hdを4か所設ける。
【0030】
これにより、各平板1a、1bを互いに重ね合わせ、1枚の板状にした保管状態では、平板受部1c−aの凸部1ga,1gb,1gc、1gdが容易に平板受部1c−bの凹部1ha、1hb、1hc、1hdに平板の弾性力により嵌まり込み、
図5のように両平板1a、1bを相互に容易に動かないようロックする。同様に、各平板1a、1bを互いに90度開き、互いに直行して十字形状とした位置では、平板受部1c−aの凸部1ga,1gb,1gc、1gdが容易に、互いに90度回転した平板受部1c−bの凹部1ha、1hb、1hc、1hdに平板の弾性力により嵌まり込み、両平板1a、1bを相互に容易に動かないようロックする。
【0031】
図4、5の場合、各々の平板受部1c−aの側方には側板1da、1dbを設けてあるが、平板受部1c−aと側板1da、1dbとは一体的に構成してもよい。同様に、平板受部1c−bと側板1dc,1ddとは一体的に構成してもよい。この部材は、相互に摺動する構成なので、金属板等をコの字状に折り曲げて構成することができる。また、凹凸の関係は、逆の関係でもあってもよく、両部材を同様の構成部品とするためには、各平板受部1c−a、1c−bに凹凸部を所定の関係で交互に配置してもよい。
【0032】
上記のように構成した基準マーカ1は2枚の平板1a、1bをその中心位置で回転可能に連結したが、これは中心位置である必要はなく片側に寄った構成であってもよい。要するに、平板1a、1bを開いたときに基準マーク1aa、1ab、1ba、1bbのすべてが一直線上になく、相対位置を保った位置関係にあればよい。
【0033】
図6は、前記した基準マーカ1を用いたオルソ画像作成装置の全体構成図である。基準マーカ1は、オルソ変換したい変換対象範囲の対象視野内に配置する。2はオルソ変換する対象部分であり、この実施例の場合、道路であるが、建造物の一部であってもよい。この実施例では道路の路面を対象とし、これを測定の基準面としている。以降、オルソ変換する対象部分を測定の基準面と定義する。3はデジタルカメラ等の撮像装置であり、基準マーカ1含めてオルソ変換する対象部分2を撮像する。デジタルカメラ3は、三脚に固定するか人が持って撮像する。デジタルカメラ3の部分に記載されたYc、Zcはカメラ座標系の定義であり、デジタルカメラ3のレンズ焦点位置を原点とし、カメラの視線方向をZ軸、カメラの上方向をY軸として、右手系を構成するようにX軸方向を定めている。4はデジタルカメラ3で撮像した画像を保存する記憶媒体である。この実施例ではSDメモリカードを使用している。5はコンピュータであり、オルソ変換ソフトウェアとCADソフト等がインストールされている。この実施例ではコンピュータとしてパーソナルコンピュータ(以下パソコンと称する)を使用している。
【0034】
なお、この実施例では、デジタルカメラ3とパソコン5との間の撮像データの受け渡しはSDメモリカードを媒体としているが、これはデジタルカメラ3とパソコン5とを通信手段で連結し、デジタルカメラ3からの画像データをパソコン5に直接送信するようにしてもよい。
【0035】
図7は、
図6に示すように、デジタルカメラ3で撮像した測定面の画像を示している。道路を現場で真上から撮像するのは実際には不可能である。そのため、この実施例の場合、現場を斜めから撮像している。この場合、基準マーカ1は、オルソ変換したい変換対象範囲内の任意の所望の場所に敷設する。すなわち、基準マーカ1はオルソ変換対象の基準面に沿って、この基準面に略並行に敷設する。2は撮像対象部分の全体画像であり、
図6で示すように変換対象範囲を斜め上から撮像した画像となっている。画像は幅がWp画素、高さがHp画素であり、画素座標系は画像の左上を原点として水平方向がXp軸、下方向がYp軸と定義している。
【0036】
また、
図7において、印2a、2bおよび2cは寸法を図面化した際に、これを報告書として、この報告書に記載したい部分であり、路面の必要な個所にチョーク等で一時的にマーキングしている。これは、例えば、交通事故の現場検証であれば、タイヤのスリップ痕の位置、車の破片が飛び散った位置等である。また、地下に埋められた配管測定であれば、水道管やガス管の位置を示している。この実施例の目的は、印2a、2bおよび2cを現場で寸法を測定することなく、デジタルカメラ3で撮像した撮像データに基づいて、事務所等で寸法を記載した図面とし、この図面により報告書を作成することである。
【0037】
図8は、測定面である基準面をオルソ変換した結果である。画像は幅がWd画素、高さがHd画素であり、画素座標系は画像の左上を原点として水平方向がXd軸、下方向がYd軸と定義している。測定面2が真上から見た状態に変換されており、この変換された画像データをCADソフトに取り込むことにより、印2a、2bおよび2cの寸法を図面上で計測することが可能となる。このオルソ変換方法と手順については、以下で詳細に説明する。
【0038】
図9は、準備作業のフローチャートである。準備作業は使用するデジタルカメラ3のレンズについて1回だけ実施すればよい。また、準備作業は現場作業実施前に行っても良いし、現場作業が終了してから行っても良い。
【0039】
まず、ステップ101〜104でレンズ歪み補正用のパラメータを作成して保存する。レンズの歪み補正は、例えば、Zhangのカメラキャリブレーション手法により実行可能である。この実施例では、Zhangの手法に類似した方法を用いている。
【0040】
ステップ101でデジタルカメラ3を用いてレンズ歪み補正用の画像を撮像する。レンズ歪み補正手法で使用するチェスパターン、または水玉模様のパターン等を1回以上撮像する。ステップ102では、デジタルカメラ3で撮像した画像をSDメモリカード4に保存し、パソコン5で取り込む。ステップ103で取り込んだ画像を用いてレンズ歪み補正パラメータを計算する。レンズ歪み補正パラメータは、ビューポート変換、放射状歪み、接線歪み、薄プリズム歪み等の係数で構成されている。ステップ104で計算したレンズ歪み補正パラメータをパソコン5のハードディスクに保存する。
【0041】
ステップ105では、使用する基準マーカ1の寸法、オルソ変換後の出力範囲幅Wdと高さHd、および一画素当たりの寸法Aをパソコン5に入力し、記憶手段であるハードディスクに保存する。この実施例では、Lが350mm、tが6mm、dが8mm、Wdが15m、Hdが15m、Aが5mmと設定している。
【0042】
なお、基準マーカ1の寸法は、常に同一のものを使用する場合には、予めその寸法を入力し、パソコン5内の記憶部に記憶しておけば、そのたび毎に入力の必要はない。
【0043】
図10は、現場作業のフローチャートである。作業現場には、基準マーカ1、デジタルカメラ3およびSDメモリカード4を持参する。
【0044】
まず、ステップ201で、測定面の必要部分に印をつける。必要部分とは最終的な報告書で寸法を記載したい部分であり、この実施例では前記した印2a、2bおよび2cが該当する。印2a、2bおよび2cは撮像に必要なだけなので、一時的なもので構わない。この実施例では、道路にチョークで×印をつけている。
【0045】
次に、ステップ202で基準マーカ1を設置する。基準マーカ1は、対象部分に記した印2a、2bおよび2cがすべてデジタルカメラの視野内に入るように撮像範囲を決定し、印2a、2bおよび2cと重ならず、しかも視野内に基準マーカ1全体が撮像可能な場所に敷設する。
【0046】
ステップ203で実際に測定面を撮像する。撮像する角度は任意であるが、デジタルカメラの視線が水平に近づくとオルソ画像の精度が低下するので、この実施例では水平から約40°で撮像している。撮像した画像は自動的にSDメモリカード4に保存される。
【0047】
図11は、事務所での作業のフローチャートである。画像を保存したSDメモリカード4を事務所に持ち帰り、寸法の入った報告書を作成する。
【0048】
まず、ステップ301でSDメモリカード4の画像情報をパソコン5に転送する。次に、ステップ302でハードディスクに保存されたレンズ歪み補正パラメータを用いて、画像に対してレンズの歪みを補正する。ステップ303でレンズ歪みが補正された画像をオルソ変換する。この変換の処理内容は
図12で詳しく説明するが、1画素当たりの寸法Aに従い1画素が5mmに対応するように変換する。
【0049】
ステップ304でオルソ変換された画像をCADソフトに取り込む。続く、ステップ305でCADソフトを用いて必要な部分の寸法を測定し、報告書を作成する。一般に、CADソフトは、画素の寸法を指定して画像を取り込む機能を有しているので、1画素当たりの寸法Aに合わせて1画素が5mmと指定して取り込んでいる。
【0050】
図14が作成した報告書の例である。測定面の該当部分の寸法がCADソフトで計測しやすいように、CADソフトの機能を使って回転変換を行っている。画素数を数えるか、CADソフトの距離計算機能や寸法測定を用いることにより、望んだ位置間の寸法を計測できる。ここでは、印2bを例として内容を示した。道幅や印2bの位置の寸法がCAD図上に記載されている。同様に、印2aや2cに対しても寸法を容易に計測可能である。
【0051】
図12は、前記したオルソ変換の処理内容を示すフローチャートである。
【0052】
ステップ401で基準マーカ1を画像内で探索する。探索では、まず、基準マーカ1の中央の円、すなわち円筒1iを画像内で探索し、候補円をすべて抽出する。その後、中央の円から外側に探索し、4方向に平板が存在するものを基準マーカ1であると判断する。
【0053】
続くステップ402では、基準マーカ1の中央から各平板1a、1bの方向に探索して、
図13に示した基準点である端点P1からP4の画素座標を検出する。検出した結果をカメラ座標系で仮想的な撮像素子上の射影として表現した結果を数1に示す。仮想的な撮像素子とは、カメラ座標系のZ=1にXY平面を設定したものである。この数式において、各変数の左上のcとの表記はカメラ座標系座標系で表現していることを示している。
【数1】
【0054】
端点P1からP4を
図13に示した基準マーカ1の中心を原点とする基準マーカ座標系で表すと、数2または数3となる。なお、Z軸は、基準マーカ座標系が右手系を構成するように定めている。この数式において、各変数の左上に付したrは基準マーカ座標系で表現していることを示している。数2は基準マーク位置P1とP2が上になっていた場合で、数3は基準マーク位置P3とP4が上になっていた場合を示している。
【数2】
【数3】
【0055】
ステップ403で数2の場合の変換式を求める。基準マーカ1の座標系で表したカメラの位置と姿勢を数4とする。
【数4】
【0056】
ここに、
rMcは同時変換形式であり、a
11からa
33の3×3の部分は姿勢を表した正規直交行列で、X
c、Y
c、Z
cはカメラの位置を表している。正規直交行列部分には拘束条件があるので、この行列の実際の未知数は6である。
【0057】
この行列に対して数5が成立する。右上のtは転置行列を表している。この式はカメラから各端点への視線ベクトル
cPi
t上に実際の端点P1からP4が存在していることを表している。C1からC4はカメラ座標系のZ軸の値に対応した係数である。
【数5】
【0058】
数5は
rMcの未知数が6個で、C1からC4も未知数であるため、全体で10個の未知数を持っている。各点について3個の式が成立するので、全体で12個の式の連立方程式となる。本来は3点で解析解が求まるので、この実施例では統計的に最適解を求めている。なお、最適解は表側と裏側の2点が存在するので、この実施例では、カメラの上側方向が基準マーカ1の座標系のZ軸方向と近いほうの最適解を選択している。
【0059】
ステップ404では、数3に対して同様に数6を用い、
rMc′を求める。
【数6】
【0060】
ステップ405で、
rMcおよび
rMc′について求めた端点から得られる視線ベクトル数7と、仮定した座標から計算した視線ベクトル数8を、i=1から4について算出する。求めた視線ベクトルが、
rν
i、
rν′
i、
ru
i、
ru′
iであり、各々単位ベクトルである
【数7】
【数8】
【0061】
ステップ406で各視線ベクトルの角度誤差を求める。数9は基準マーク位置P1とP2が上になっていた場合の合計角度誤差、数10は基準マーク位置P3とP4が上になっていた場合の合計角度誤差を計算している。ここに、”×”はベクトルの外積、”・”はベクトルの内積である。
【数9】
【数10】
【0062】
ステップ407でΔθとΔθ′とを比較して、ステップ408とステップ409で誤差の少ないほうを採用し、最終的な
rMcとする。このΔθとΔθ′との比較により、距離の異なる基準マークが判別でき、距離が異なることに対応した変換式を求めることができる。
ステップ410では最終的な
rMcを用いて
図7のすべての画素について座標変換を行う。まず、画素座標をカメラ座標に変換する。画素座標の各点を
pQ=(i,j)
tとする。
【数11】
ここに、
cMpは画素座標からカメラ座標系のXY平面に射影する座標変換行列であり、下記となる。
【数12】
【0063】
次に、数13を用いて基準マーカ座標系のZ=0のXY平面に射影する。kはカメラ3から各点への距離に相当する値であり、Z=0の条件から各点で先にkを求めて、数13の計算を行う。
【数13】
【0064】
最後に数14を用いてオルソ画像座標
dQ=(Xd,Yd)
tに変換する。
【数14】
【0065】
ここに、Aは1画素当たりの長さであり、この実施例1では5mm/画素となっている。
dMrは次の条件を満たす3×3の同次変換行列である。
【0066】
図7の手前の中心(Wp/2,Hp)が
図8の手前の中心(Wd/2,Hd)に変換される。
図7の手前の両端(0,Hp)と(Wp,Hp)が作る方向と、
図8の手前の両端(0,Hd)および(Wd,Hd)が作る方向が一致するように変換される。
【0067】
以上の処理により、撮像した画像の各点
pQの画素値を、オルソ画像の対応点
dQに代入することにより、良好なオルソ画像を得ることができる。なお、この実施例では、対応点
dQに画素値が存在しない場合は、ニアレストネイバー法で補間している。
【0068】
以上の実施例では、SDメモリカードを使って画像データを転送しているが、無線LAN機能付きのデジタルカメラとパソコンを使用すれば、SDメモリカードは不要となる。
【0069】
また、この実施例では、デジタルカメラとパソコンを使用しているが、カメラ付きのタブレットPC等を使用することも可能である。タブレットPCにオルソ変換処理部分をインストールしておけば、測定現場ですぐにオルソ画像を作成することが可能となる。
【0070】
以上の実施例によれば、次のような効果がある。すなわち、各基準マークの基準面からの距離を統一しなかったことにより、基準マーカ1を簡単に板状から十字形状に展開でき、しかも容易に測定現場に準備できるので、測定現場での作業時間が大幅に短縮されるという効果がある。また、オルソ変換の対象範囲と一画素当たりの寸法を指定できるので、最適な分解能でオルソ画像を作成できる。更に、基準マーカ1の寸法を指定できるので、大きさの異なる基準マーカ1を使うことも容易である。
【0071】
図15は本発明における基準マーカ1の他の実施例を示したものであり、これは路面に敷設するものであってもよいが、特に住宅壁面のオルソ画像を求め、竣工図を作成する場合に好適である。上記した基準マーカ1でも住宅壁面に適当な固定手段で固定すれば実現可能であるが、この実施例によれば、より一層基準マーカ1の敷設が容易となる。
図15はこの実施例における平面図である。この基準マーカ10の基礎部材は、一例としてシート状の塩化ビニール製を採用しており、厚さは0.5mmである(以下、基礎シート10aと称する)。基礎シート10aには3か所に基準マーク11a、11b、11cが印刷により設置されている。3つの基準マーク11a、11b、11cは正三角形を構成するように配置、すなわち一直線上にないよう配置されており、一辺の長さはL2となっている。
【0072】
図1の説明にあたっては、基準マーカ1は4点の基準マークを備えた場合について説明したが、オルソ変換の説明からも明らかな通り、オルソ画像変換にあたっては、基準マークは3点あればその変換は数学的に容易に可能である。これについては特に詳細な説明は不要であるので省略する。
【0073】
図16は、基準マーカ10を丸めた状態を示している。この基準マーカ10は筒状に丸めて運搬することが可能である。現場で測定する際には、これを広げて使用する。
【0074】
図17は、前記した基準マーカ10を使用した本発明の実施例の全体構成図である。基準マーカ10をオルソ変換したい対象視野内に貼り付けて敷設する。12はオルソ変換する測定面であり、この例では建物の壁面を対象としている。その他の構成要素は
図7に示した実施例と同一である。
【0075】
図18は、この実施例で撮像した測定面を示している。現場で建物の正面中央から撮像するのは難しいので、斜め右側から撮像している。10は基準シートであり、オルソ変換したい測定面である住宅の壁面に上部を両面テープで貼り付けている。上部を貼り付けると重力により基準シートが真っ直ぐに延び、平面度が確保できる。この場合、必要に応じ、上部、下部、側部を貼り付けてもよい。12は測定面の対象部分全体である。実施例1と同様に、画像は幅がWp画素、高さがHp画素であり、画素座標系は画像の左上を原点として水平方向がXp、下方向がYpと定義している。
【0076】
なお、
図17に示した基準マーカ10の貼り付けに際し、裏面に粘着剤等を塗り、通常時は保護シートで覆い、使用時にこの保護シートを剥がして貼り付けて敷設してもよい。
【0077】
図19は、測定面をオルソ変換した結果である。画像は幅がWd画素、高さがHd画素であり、画素座標系は画像の左上を原点として水平方向がXd軸、下方向がYd軸と定義している。測定面12が真正面から見た状態に変換されており、CADソフトに取り込むことにより、窓や建物の高さを図面上で計測することが可能である。このオルソ変換方法と手順については、以下で詳細に説明する。
【0078】
図20、
図21は、このオルソ変換方法と手順を示したフローチャートである。ここにおいて、準備作業は、前記実施例の準備作業の
図9に示したフローチャートとは、入力する寸法を除き同一である。この実施例の場合、ステップ105でL2が1000mm、tが0.5mm、Wdが8m、Hdが8m、Aが5mmと設定する。この場合、dの入力は不要である。
【0079】
図20は、現場作業のフローチャートである。作業現場には、基準シート10、デジタルカメラ3およびSDメモリカード4を持参する。
【0080】
まず、ステップ501で、持参した基準シート10を広げ、上部に両面テープを貼り、測定面の対象範囲内に貼り付けて敷設する。ステップ502で実際に測定面を撮像する。撮像する角度は任意であるが、デジタルカメラの視線が真横に近づくとオルソ画像の精度が低下するので、この実施例では正面から約60°で撮像している。撮像した画像は自動的にSDメモリカード4に保存される。
【0081】
この実施例の事務所での作業のフローチャートは
図11に示した実施例と同一である。
【0082】
図23が作成した報告書の例である。この例の報告書とは竣工図である。画素数を数えるか、CADソフトの距離計算機能や寸法測定を用いることにより、望んだ位置間の寸法を計測できる。この例では、建物および窓の高さや幅を計測して竣工図を作成している。
【0083】
図21は、実施例2のオルソ変換のフローチャートである。
【0084】
ステップ601で基準シート10を画像内で探索する。探索では、まず、基準マーク11a、11b、11cに相当する円を画像内で探索し、候補円をすべて抽出する。その後、3つの候補円が一定距離内に存在するものを基準シート10と判断する。
【0085】
ステップ602では、
図22に示した基準マーク11a、11b、11cの位置P1からP3、すなわち前記した実施例における基準点としての端点を検出する。基準マーク11a、11b、11cは円形なので円の中心をマーク位置、すなわち基準点としている。数2と同様に、カメラ座標系での検出した位置を数15に示す。
【数15】
【0086】
マーク位置P1からP3を基準シート座標系で表すと数16となる。基準シート10の座標系とは、
図22に示した基準シート10の左下マーク中心を原点とし、Z軸を基準シート座標系が右手系を構成するように定めたものである。変数の左上のrは基準シート座標系で表現していることを示している。
【数16】
【0087】
次に、ステップ603で変換式を求める。基準シート10の座標系で表したカメラの位置と姿勢は、前記の実施例と同様に数4と置くことができる。すると、数5と同様に次の数17が成立する。C1からC3はカメラ座標系のZ軸の値に対応した係数である。
【数17】
【0088】
数17は
rMcの未知数が6個で、C1からC3も未知数であるため、全体で9個の未知数を持っている。各点について3個の式が成立するので、全体で9個の式の連立方程式となり、解析解を求めることができる。解析解は表側と裏側の2点が存在するので、この実施例2では、カメラの上側方向が基準シート座標系のY軸方向と近いほうの解を選択している。
【0089】
ステップ604では求めた
rMcを用いて
図18のすべての画素について座標変換を行う。座標変換には実施例1と同じように数11から数14を用いる。ただし、実施例2の
dMrは次の条件を満たす3×3の同次変換行列である。
【0090】
図18の右下(Wp,Hp)が
図19の右下(Wd,Hd)に変換される。および、
図18の右側の両端(Wd,0)と(Wp,Hp)が作る方向と、
図19の右側の両端(Wd,0)および(Wd,Hd)が作る方向が一致するように変換される。
【0091】
以上の処理により、撮像した画像の各点
pQの画素値を、オルソ画像の対応点
dQに代入することにより、良好なオルソ画像を得ることができる。なお、この実施例では、滑らかなオルソ画像が得られるように、対応点
dQに画素値が存在しない場合は、バイキュービック法で補間している。
【0092】
この実施例でも、SDメモリカードを4使って画像データを転送しているが、無線LAN機能付きのデジタルカメラ3とパソコン5を使用すれば、SDメモリカード4は不要となる。
【0093】
また、この実施例では、デジタルカメラ3とパソコン5を使用しているが、カメラ付きのタブレットPC等を使用することも可能である。タブレットPCにオルソ変換処理部分をインストールしておけば、測定現場ですぐにオルソ画像を作成することが可能となる。
【0094】
なお、この実施例では壁面を対象としているが、路面に基準シート10を設置すれば、路面のオルソ画像を生成できることは言うまでもない。ただし、この場合、路面の凹凸によって基準シート10の平面度が確保できない場合、適宜、路面の凹凸を補修すればよい。
【0095】
以上の実施例によれば、次のような効果がある。すなわち、基準シート10を簡単に広げることができ、容易に測定現場に準備できるので、測定現場での作業時間が大幅に短縮される。また、オルソ変換の対象範囲と一画素当たりの寸法を指定できるので、最適な分解能でオルソ画像を作成できる。更に、基準シート10の寸法を指定できるので、大きさの異なる基準シート10を使うことも容易である。更に又、基準シート10は丸めることが可能なので、持ち運びが容易である。
【0096】
一般的に、竣工図の作成には建築の専門知識が必要とされるが、上記実施例によれば、専門知識を持たない販売担当者等でも容易に竣工図が作成できる。
【0097】
次に、
図24から
図31を用いて、本発明の更に他の実施例を説明する。
【0098】
図24から
図26示したものは、
図1、
図2、
図3に示した実施例で使用している基準マーカ1の変形例であり、壁面等で使用できるように改造したものである。
【0099】
図24は、基準マーカ1の変形例であり、
図24(a)は平面図、
図24(b)は側面図である。これは基準マーカ1に、この基準マーカ1を引っかけるための機構1jを追加している。すなわち、平板1bの端部にフック機構1jを設ける。この機構1jを利用すれば、建物の窓枠等に、基準マーカ1をぶら下げてオルソ変換の基準マーカ1として用いることができる。
【0100】
図25は、基準マーカ1の他の変形例であり、
図25(a)は平面図、
図25(b)は底面図である。これは基準マーカ1の平板1bの底面の両端に吸盤1kを取り付けたものである。そして、この吸盤1kを利用して、建物の壁面等に、基準バー1を吸着して固定し、オルソ変換の基準マーカ1として用いるものである。
【0101】
図26は、基準マーカ1の更なる変形例であり、
図26(a)は平面図、
図26(b)は底面図である。これは基準マーカ1の平板1bの底面の両端に磁石1lを取り付けたものである。そして、この磁石1lを利用して、鉄製の壁面等に基準マーカ1を磁石で固定し、オルソ変換の基準マーカ1として用いるものであり、例えば、船舶の鉄製の壁面に取り付け、この船舶の完成図書を確認するために利用可能である。
【0102】
図27は、基準マーカ1の最も単純な構成例の一つであり、
図27(a)は平面図、
図27(b)は側面図である。20で示した基準マーカは、基礎部材20aを1枚の金属板で構成し、基準マーク21a、21b、21c、21dを4つ印刷したものである。基準マーク21a、21b、21c、21d間の距離はLの2倍としてある。ここで、板厚tに実際の値を入力し、dに0mmと入力することにより、前記実施例でそのまま使用できる。
図27の基準マーカ20は、組み立て機構の誤差がないため、オルソ画像への変換精度が最も良い。
【0103】
図28は、
図27に折りたたみ機構を設けたものであり、
図28(a)は平面図、
図28(b)は側面図である。30で示した基準マーカは
図27の基礎部材20aを中央で分割し、分割した部分をヒンジ32で連結し、中央で折りたたむことができるようにしたものである。更に、側面に取っ手33を設けることにより、運搬が容易になっている。また、31a、31b、31c、31dで示した基準マークは、円ではなく、三角形を2つ組み合わせたマークを用いている。この基準マーク31a、31b、31c、31dは斜めから撮像した時、基準マーク31a、31b、31c、31dの中心がずれないため、補正が不要であり、オルソ変換処理が簡単になる。また、背景に円形の物体が多数存在する場合、このマークを用いると基準マーク候補が減るため位置検出の計算時間を短縮できる。
【0104】
図29は、40で示す基準マーカを基礎部材である2枚の平板40a,40bで構成した例であり、
図29(a)は平面図、
図29(b)は平板40a,40bを折りたたんだ時の側面図である。この基準マーカ40は平板40a、40bと固定具42で構成されている。
【0105】
平板40a、40bの一端は互いに回転自在に連結してある。41a、41b、41cは基準マークであり、平板40a、40bをその一端で回転し、開いた状態で、一辺がL2の正三角形の頂点に位置するように印刷されている。そして、平板40a、40bを開いた状態で基準マーク41a、41b、41cが正三角形の頂点に位置するよう、その精度が保てるように、切り欠き43aと43bに固定具42をはめ込む構成となっている。これにより、全体が折りたためるため、運搬が容易である。ここで、t、dは
図3と同様であり、40bだけ基準面からの距離が異なっている。
【0106】
図30と
図31は基準マーカの更に他の実施例であり、
図29に示した基準マーカ40を更に小さく折りたためるようにした基準マーカ50である。
図30は後述する腕部50b1,50b2,50b3を開いた状態を示す平面図、
図31(a)は腕部50b1,50b2,50b3を閉じた状態を示す平面図、
図31(b)は側面図である。
【0107】
これらの図において、50aは回転機構部であり、各腕部50b1,50b2,50b3の一端はこの回転機構部50aに連結してあり、各腕部50b1,50b2,50b3はこの回転機構部50aを中心に互いに120度間隔で開くよう構成してある。51a、51b、51cは基準マークであり、各腕部50b1,50b2,50b3の他端に設置した基準マークである。基準マーク51a、51b、51cは各腕部50b1、50b2、50b3を開いた状態で一辺がL2の正三角形の頂点に位置するように構成してある。また、回転機構部50aは各腕部50b1,50b2,50b3を角度60°毎にロックする機構を備えている。この場合、オルソ変換処理で、dを2回分、考慮に入れるようにすればよい。
【0108】
図30、
図31のように、各基準マークの基準面からの距離が全て異なるように、基準マーカ50を構成すれば、より小さく折りたためるため、運搬、保管が容易である。
【0109】
以上の説明から明らかなように、基準マーカは、オルソ変換対象範囲に設置され、オルソ変換対象の基準面に沿ってこの基準面に略並行に敷設する基礎部材と、この基礎部材の撮像側の面に配置され、予め相対位置が決められた一直線上にない少なくとも3か所の基準マークを備えるものであれば、使用状況に応じ、必要となる可搬性や精度に応じて、さまざまな構成のものを採用することができるものであり、上記した実施例のものに限定されるものではない。