(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-163597(P2021-163597A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】装置及び装置の電池残量を調べる方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20210913BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20210913BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H02J7/00 X
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-63176(P2020-63176)
(22)【出願日】2020年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】富田 親弘
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503EA05
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AS11
5H030BB21
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】電池の消費を抑制しつつ、正確に電池残量を調べることが可能な装置、及び当該装置の電池残量を調べる方法を提供する。
【解決手段】
装置1は、電池20と、電池20から電圧を印加され、少なくとも一の所定の処理を実行可能な負荷部30と、所定の処理による電圧降下が生じている間に測定された電池20の第1電圧値を記憶する電圧記憶部41と、電圧記憶部41に記憶された第1電圧値と負荷部30の所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較するコンピュータプロセッサ10と、を備え、第1電圧値が第2電圧値以上である場合、コンピュータプロセッサ10は負荷部30に所定の処理を実行させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池から電圧を印加され、少なくとも一の所定の処理を実行可能な負荷部と、
前記所定の処理による前記電池の電圧降下が生じている間に測定された前記電池の第1電圧値を記憶する電圧記憶部と、
前記電圧記憶部に記憶された前記第1電圧値と前記負荷部の前記一の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する制御部と、を備え、
前記第1電圧値が前記第2電圧値以上である場合、前記制御部は前記負荷部に前記所定の処理を実行させる、装置。
【請求項2】
前記第1電圧値が前記第2電圧値より小さい場合、前記制御部は前記負荷部に前記所定の処理を停止させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2電圧値は、前記負荷部によって実行される他の処理に必要な電圧値の何れよりも大きい、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記負荷部は、無線で情報を送信する送信部である、請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
電池と、少なくとも一の所定の処理を実行可能な負荷部と、第1電圧値を記憶する電圧記憶部と、を備える装置において前記電池の残量を調べる方法であって、
前記電圧記憶部から前記第1電圧値を読み出す第1工程と、
前記第1電圧値と前記負荷部が前記所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する第2工程と、
前記第2工程の結果、前記第1電圧値が前記第2電圧値以上である場合に、前記負荷部による前記所定の処理を実行する第3工程と、
前記第3工程による前記電池の電圧降下が生じている間に前記電源部の電圧値を測定する第4工程と、
前記第4工程で測定された電圧値を新たな第1電圧値として記憶する第5工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、装置及び装置の電池残量を調べる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な電子機器において電池が用いられている。電子機器の小型化に伴い、電子機器に使用される電池においても物理的な寸法の制限が厳しくなっており、小型化された電子機器に大容量の電池を搭載することは困難である。このため、小型化された電子機器においては、電池の交換又は充電を頻繁に行う必要がある。電池の交換又は充電のタイミングは、電池の電圧を測定して電池残量を調べることで予測できる。例えば、特許文献1には、電池の残量を表示する残量表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−225286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池残量を正確に測るためには電気的な負荷をかける必要がある。このため、電池残量を調べるために電池の電圧を測定する度に電池が消費されてしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、電池の消費を抑制しつつ、正確に電池残量を調べることが可能な装置、及び当該装置の電池残量を調べる方法を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る装置は、電池と、電池から電圧を印加され、少なくとも一の所定の処理を実行実行可能な負荷部と、所定の処理による電池の電圧降下が生じている間に測定された電池の第1電圧値を記憶する電圧記憶部と、電圧記憶部に記憶された第1電圧値と負荷部の所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する制御部と、を備え、第1電圧値が第2電圧値以上である場合、制御部は負荷部に所定の処理を実行させる。
【0007】
本発明の一実施形態において、第1電圧値が第2電圧値より小さい場合、負荷部は所定の処理を停止してもよい。
【0008】
本発明の一実施形態において、第2電圧値は、負荷部によって実行される他の処理に必要な電圧値の何れより大きくてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、負荷部は、無線で情報を送信する送信部であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る方法は、電池と、少なくとも一の所定の処理を実行可能な負荷部と、第1電圧値を記憶する電圧記憶部と、を備える装置において電池の残量を調べる方法であって、電圧記憶部から第1電圧値を読み出す第1工程と、第1電圧値と負荷部が所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する第2工程と、第2工程の結果、第1電圧値が第2電圧値以上である場合に、負荷部による所定の処理を実行する第3工程と、第3工程による電池の電圧降下が生じている間に電源部の電圧値を測定する第4工程と、第4工程で測定された電圧値を新たな第1電圧値として記憶する第5工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池の消費を抑制しつつ、正確に電池残量を調べることが可能な装置、及び当該装置の電池残量を調べる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る装置を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電池残量を調べる方法を示すフローチャートである。
【
図3】従来の電池残量を調べる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には、当該複数の図面を通して同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る装置1の概要を説明する。
図1は、装置1を模式的に示す図である。
図1に示される装置1は、例えば位置情報を含む信号(すなわち、ビーコン信号)を無線で送信する小型無線端末である。より具体的には、装置1は、例えばWi−Fi(登録商標)又はBLE(Bluetooth Low Energy)(Bluetoothは登録商標)省電力近距離通信等を用いた屋内測位等に使用される装置である。
図1に示されるように、装置1は、コンピュータプロセッサ(制御部)10と、電池20と、負荷部30と、ストレージ40と、電圧測定部50と、を備えている。装置1は小型無線端末に限られず、例えば歩数計や時計等ユーザが移動しながら携行する電子機器であってもよい。
【0015】
コンピュータプロセッサ10は、ストレージ40又はオペレーティングシステムや様々な機能を実現する様々なプログラムをメモリにロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。コンピュータプロセッサ10は、CPU、MPU、DSP、GPU、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせである。コンピュータプロセッサ10は、ASIC、PLD、FPGA、MCU等の集積回路により実現されてもよい。
図1においては、コンピュータプロセッサ10が単一の構成要素として図示されているが、コンピュータプロセッサ10は複数の物理的に別体のコンピュータプロセッサの集合であってもよい。本明細書において、コンピュータプロセッサ10によって実行されるとして説明されるプログラム又は当該プログラムに含まれる命令は、単一のコンピュータプロセッサで実行されてもよいし、複数のコンピュータプロセッサにより分散して実行されてもよい。
【0016】
コンピュータプロセッサ10は、コンピュータ読み取り可能な命令を実行することにより負荷部30、ストレージ40、及び電圧測定部50を制御すると共に、電圧比較部11として機能する。コンピュータプロセッサ10は、電圧測定部50を制御することにより、当該電圧測定部50に電池20の電圧を測定させる。より具体的には、コンピュータプロセッサ10は、負荷部30に所定の処理を実行させ、当該所定の処理による電池20の電圧降下が生じている間に電池20の電圧を測定するように、電圧測定部50を制御する。また、コンピュータプロセッサ10は、電圧測定部50によって測定された第1電圧値をストレージ40の電圧記憶部41に記憶させる。コンピュータプロセッサ10の電圧比較部11は、ストレージ40の電圧記憶部41に記憶された第1電圧値と、負荷部30による所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する。
【0017】
ストレージ40はコンピュータプロセッサ10によりアクセスされる記憶装置である。ストレージ40は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク、又はデータを記憶可能な前記以外の各種記憶装置である。ストレージ40には、様々なプログラムが記憶され得る。ストレージ40は、電圧測定部50によって測定された第1電圧値を記憶する電圧記憶部41を含む。
【0018】
電圧測定部50は、コンピュータプロセッサ10からの命令により、電池20の電圧を測定する。電圧測定部50は、例えばホイートストンブリッジ回路を含む電圧計である。電圧測定部50で測定された電圧は、コンピュータプロセッサ10によってデジタル信号に変換された後、ストレージ40の電圧記憶部41に第1電圧値として記憶される。図示の実施形態では、電圧測定部50はコンピュータプロセッサ10とは別体に構成されているが、電圧測定部50はコンピュータプロセッサ10の一部に含まれていてもよい。
【0019】
電池20は、コンピュータプロセッサ10、負荷部30、ストレージ40、及び電圧測定部50に電圧を供給する。電池20としては、例えばマンガン電池、アルカリ電池、ニッケル電池、及びリチウム電池等の一次電池、並びに、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、及び鉛蓄電池等の二次電池が用いられ得る。電池20の種類は特に限定されず、上記の種類の電池以外にも、任意の公知の電池が用いられ得る。
【0020】
負荷部30は、電池20から電圧を印加され、少なくとも一の所定の処理を実行する。本発明の一実施形態に係る装置1では、負荷部30は、無線で位置情報を送信する送信部である。すなわち、本発明の一実施形態に係る装置1では、負荷部30が実行する少なくとも一の所定の処理は、位置情報の送信である。負荷部30は、位置情報を送信するという所定の処理のみを実行してもよいし、位置情報を送信する処理以外にも複数の処理を実行してもよい。負荷部30が実行する所定の処理に必要な電圧値は、第2電圧値として記憶される。第2電圧値は、例えばストレージ40にあらかじめ記憶される。また、第2電圧値は、電圧記憶部41によって第1電圧値と共に記憶されてもよいし、コンピュータプロセッサ10のメモリ等の記憶媒体に記憶されてもよい。負荷部30が複数の処理を連続及び/又は並行して実行する場合、一の所定の処理の実行に必要な電圧値を第2電圧値としてもよいし、当該複数の処理の実行に必要な電圧値の合計を第2電圧値としてもよい。負荷部30による一の所定の処理の実行に必要な電圧値を第2電圧値とする場合、当該所定の処理の実行に必要な電圧値は、負荷部30によって実行される他の処理に必要な電圧値の何れよりも大きいことが好ましい。すなわち、第2電圧値は、負荷部30によって実行される他の処理に必要な電圧値の何れよりも大きいことが好ましい。
【0021】
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る装置1において電池残量を調べる方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る装置1において電池残量を調べる方法を示すフローチャートである。
図2のフローチャートは、装置1が負荷部30による処理を少なくとも1度実行し、電圧記憶部41に第1電圧値が記憶されていることを想定している。
【0022】
図2に示されるように、本実施形態に係る電池残量を調べる方法では、まず、電圧記憶部41によって記憶された第1電圧値を読み出す第1工程S1を実行する。次に、電圧記憶部41から読み出された第1電圧値と、負荷部30が所定の処理を実行するために必要な第2電圧値とを比較する第2工程S2を実行する。第2工程S2は、電圧比較部11によって行われる。第2電圧値は、例えば負荷部30が無線で位置情報を送信するために消費する電圧値とすることができる。
【0023】
第2工程S2における比較の結果、から読み出された第1電圧値が第2電圧値以上である場合、装置1は負荷部30による処理(すなわち、位置情報を送信する処理)を実行する(第3工程S3)。第2工程S2における比較の結果、第1電圧値が第2電圧値未満である場合、装置1は負荷部30による処理を実行せずに正常停止する。なお、装置1の初回起動時等、電圧記憶部12に第1電圧値が記憶されていない場合には、装置1は、第1工程S1及び第2工程S2を実行せずに、直接第3工程S3を実行してもよい。
【0024】
次に、電圧測定部50によって、第3工程S3による電圧降下が生じている間に電池20の電圧値を測定する第4工程S4を実行する。ここで、「電圧降下が生じている間」とは、負荷部30の処理(すなわち、第3行程S3)が開始された直後から、負荷部30の処理が終了するまでの間である。第3工程S3と第4工程S4との間には、負荷部30の他の処理は実行されない。このように、負荷部30の処理の負荷によって電池20に電圧降下が起こっている間に電池20の電圧値を測定することにより、電池20の残量を正確に測ることができる。次に、装置1は、第4工程S4で測定された電圧値を、新たな第1電圧値として電圧記憶部41に記憶する(第5工程S5)。
【0025】
次に、装置1を省電力モードにするか否か判断する(第6工程S6)。判断の結果、Yesである場合には、装置1は一定時間が経過した後に再び第1工程S1を実行する。判断の結果、Noである場合には、例えば装置1の電源が切断される。
【0026】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る装置1は、少なくとも一の所定の処理を実行する負荷部30と、所定の処理による電圧降下が生じている間に測定された電池20の第1電圧値を記憶する電圧記憶部41と、電圧記憶部41に記憶された第1電圧値と負荷部の所定の処理の実行に必要な第2電圧値とを比較する電圧比較部11と、を備えている。
【0027】
従来の装置においては、例えば
図3に示されるように、まず電池の電圧を測定するための負荷をかける工程S101を実行し、その後電圧を測定する工程S102を実行する。次に、工程S102で測定された電圧値と、負荷部の処理の実行に必要な電圧値とを比較し(工程S103)、比較の結果、工程S102で測定された電圧値が負荷部の処理の実行に必要な電圧値以上である場合に、負荷部による処理を実行し(工程S104)、その後、装置を省電力モードにするか否か判断する(工程S105)。すなわち、従来の装置においては、電池残量を調べるためだけに電気的な負荷をかける工程S101を実行している。このため、電池残量を調べるために電池の電圧を測定する度に電池が消費されてしまい、電池の寿命が短くなってしまう。
【0028】
これに対し、本発明の一実施形態に係る装置1においては、負荷部30の処理による電圧降下を利用し、当該電圧降下が生じている間に電圧測定部50によって第1電圧値を測定するので、電池20の残量を調べるためだけに電気的な負荷をかける必要がない。すなわち、本発明の一実施形態に係る装置1の第3工程S3は、従来の装置における工程S101及び工程104の機能を兼ねている。したがって、本発明の一実施形態に係る装置1によれば、電池20の消費を抑制しつつ、電池20の残量を正確に調べることが可能である。
【0029】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1…装置、10…コンピュータプロセッサ(制御部)、11…電圧比較部、20…電池、30…負荷部、40…ストレージ、41…電圧記憶部、50…電圧測定部。