【解決手段】素子実装体1は、実装基体2と、この実装基体2の実装面2aに、はんだ付けにより実装された素子基体3とを備えている。実装基体2の少なくとも素子基体3を実装した実装面2a部分を導電性材料で構成する。実装基体2の実装面2aを挟んで、対向する実装面の外側部分に、それぞれ、加熱ヘッド対向エリア2Aを設ける。素子基体3は、ガラスまたはセラミックよりなる素子基板4と、この素子基板4の実装基体2とは反対側の面に設けられた電子部品素子5とを有し、素子基板4の実装基体2側の面には、半田付け容易化用の金属皮膜を設けた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
図1〜
図3は、素子実装体1を示し、この素子実装体1は、導電性があり(高周波誘導加熱が可能な金属であり)、しかも磁性体のステンレス材(代表的なものとしてSUS430が有るが、SUS301、SUS304等も磁性体となっているものも存在する)により構成された実装基体2と、この実装基体2の表面側の実装面2aに、はんだ付け(
図4のはんだシート7)により実装された素子基体3とを備えている。
【0012】
なお、実装基体2は、少なくとも実装面2a部分が、高周波誘導加熱が可能な金属で形成されていればよい。
【0013】
素子基体3は、
図4に示すように、ガラスまたはセラミック材よりなる素子基板4と、この素子基板4の実装基体2とは反対側の面に設けられたセンサ素子または半導体素子などの電子部品素子5とを有する。
【0014】
なお、この
図4では、素子基体3を実装基体2の表面側に実装する際に使用する保護基板6も記載しているが、この保護基板6は、はんだ付け工程で、素子基体3の上面側に着脱自在に乗せられるものであり、はんだ付け工程後には、電子部品素子5上から取り除かれる。
また、この保護基板6は、ガラスまたはセラミック材等よりなる。
【0015】
素子基体3および保護基板6は、
図1〜
図3から理解されるように、薄い板状で、平面視が長方形となっている。
【0016】
また、実装基体2も、
図1〜
図3から理解されるように、板状で、平面視が長方形となっている。
【0017】
さらに、実装基体2の実装面2aも平面視が長方形で、この実装面2aの大きさは、平面視の状態で、素子基体3と略同じ大きさになっている。
【0018】
ここで、特筆すべきは、
図2のように、実施の形態1においては、平面視の状態で、素子基体3は、実装基体2よりも小さくしている。
【0019】
また、この大きさの差異に基づき、実装基体2の実装面2aを、この実装基体2の外周辺から内方に配置することで、
図2に示すように、実装面2aを挟んで対向する実装面2aの外側部分に、それぞれ、少なくとも一対の加熱ヘッド対向エリア2Aを設定することができる。
【0020】
つまり、実装基体2の実装面2aを挟んで対向する実装面2aの外側部分の平面が、加熱ヘッド対向エリア2Aとなっているのであり、後述するが、ここに高周波誘導加熱ヘッド16,17(
図10〜
図18参照)を構成する磁路形成体16a,16b,17a,17b(
図10〜
図18参照)の磁気ギャップ側端部を対向配置させることが、実施の形態1の大きな特徴となっている。
【0021】
素子基板4の下面側(実装基体2側)の面には、半田付け容易化用として、蒸着膜またはスパッタリング膜よりなる金製の金属皮膜(極めて薄い物なので図示せず)が設けられている。
【0022】
そして、このような構成の素子基体3が、錫−金製のはんだシート7の溶融体によって、実装基体2の表面側の実装面2a部分に、はんだ付けで実装された状態となっている。
【0023】
なお、実装基体2の表面全面、あるいは、少なくともこの実装面2a部分にも、蒸着膜またはスパッタリング膜よりなる金製の金属皮膜(極めて薄い物なので図示せず)が、半田付け容易化用として設けられている。
【0024】
以上の構成により、素子基体3は、実装基体2の表面側の実装面2a部分に、はんだ付けされ、実装された状態となっているのである。
【0025】
実施の形態1にかかる素子実装体1は、電子部品素子5としてセンサ素子を用いるものであり、実装基体2を介して伝達される変化量を電子部品素子5で検出し、制御部(図示せず)に伝達するものである。
【0026】
例えば、センサ素子が歪ゲージであった場合には、実装基体2を介して検出した機械的歪量が、素子基体3の電子部品素子5に伝達されることになる。
【0027】
そして、電子部品素子5によって検出された歪量は、有線または無線により外部へと伝達され、各種の制御がなされるのである。
【0028】
実装基体2は、
図1〜
図5から理解されるように板状で、長方形となっており、その一端側に貫通孔8が形成されており、この貫通孔8を利用し、例えば、ボルト(図示せず)によって測定場所への取り付けが行われる。
【0029】
そして、この実装基体2に素子基体3をはんだ付けで一体化することで、実装基体2に加わる歪量を、素子基体3の電子部品素子5によって検出することができるのである。
【0030】
以下、実装基体2への素子基体3の実装方法について説明する。
先ず、
図5、
図6から理解されるように、実装基体2の上面側に、実装基体2の実装面2a部分に開口部9を有する樹脂製の位置決めカバー10を被せる。
【0031】
なお、位置決めカバー10は、樹脂弾性を利用し、金属製の実装基体2に強固に取り付けられた状態となっている。勿論、取り外しは樹脂弾性を利用して行えるが、不用意に外れない状態となっている。
【0032】
次に、
図7から理解されるように、位置決めカバー10の開口部9内に、はんだシート7、素子基体3および保護基板6を、実装基体2側から順に、装着する。
【0033】
なお、この状態では、保護基板6の上部が、開口部9上に、わずかながら突出した状態となっている。
【0034】
この状態で、次に、
図8に示すように、位置決めカバー10の開口部9を覆うように、樹脂製の押さえ治具11を、この位置決めカバー10上に装着する。この押さえ治具11は細長い板状で、両端に貫通孔12が形成されている。
【0035】
また、この押さえ治具11の貫通孔12に対応する位置決めカバー10の上面には、
図7のように、ねじ穴13が形成されている。
【0036】
このため、
図9に示すように、樹脂製のねじ14を、押さえ治具11の貫通孔12を貫通させ、位置決めカバー10のねじ穴13にねじ込めば、押さえ治具11によって、保護基板6、素子基体3およびはんだシート7が、実装基体2の実装面2a部分に押圧された状態となる。
【0037】
図9に示す実装基体2は、図示していないが、XYテーブル上に載せられ、
図10〜
図18に示すはんだ付けの実装装置15へと搬送される。
【0038】
なお、
図11〜
図18においては、実装装置15と素子基体3の関係が理解されやすいように、位置決めカバー10を除いた状態で記載している。
【0039】
実施の形態1の実装装置15は、所定間隔をおいて配置された二つ(複数)の高周波誘導加熱ヘッド16,17を有する。
【0040】
また、これらの高周波誘導加熱ヘッド16,17は、磁気ギャップ20を形成する磁路形成体16a,16b,17a,17bと、これらの磁路形成体16a,16b,17a,17bに磁束を流すための磁気コイル18と、により構成されている。
【0041】
磁気コイル18は、内部に冷却水を循環させるパイプをループ形状にしたものであり、一例として1MHz、100Aの電流が供給される。
【0042】
高周波誘導加熱ヘッド16,17を構成する磁路形成体16a,16b,17a,17bは、例えば、フェライトなどの軟磁性体で形成されている。
【0043】
また、これらの高周波誘導加熱ヘッド16,17は、
図10〜
図13から理解されるように、それぞれ、左右のC字状の磁路形成体16a,17aと逆C字状の磁路形成体16b,17bを組み合わせることにより構成されている。
【0044】
具体的には、左右のC字状の磁路形成体16aと逆C字状の磁路形成体16bの上部分にはそれぞれ貫通孔19が設けられているので、この貫通孔19を合致させた状態で、左右の磁路形成体16aと磁路形成体16bの上部を重ね合わせる。
【0045】
左右の磁路形成体16aと磁路形成体16bの上部を、広い面積で重ね合わせることで、磁気抵抗が小さな状態で、磁路を形成することができる。
【0046】
また、C字状の磁路形成体16aと逆C字状の磁路形成体16bの下部は所定間隔離して、ここに磁気ギャップ20を形成する。高周波誘導加熱ヘッド16の磁気ギャップ20の間隔は、C字状の磁路形成体16aと逆C字状の磁路形成体16bを、貫通孔19を中心に回動させることで調整することができる。
【0047】
また、左右のC字状の磁路形成体17aと逆C字状の磁路形成体17bの上部分にはそれぞれ貫通孔19が設けられているので、この貫通孔19を合致させた状態で、左右の磁路形成体17aと磁路形成体17bの上部を重ね合わせる。
【0048】
左右の磁路形成体17aと磁路形成体17bの上部を、広い面積で重ね合わせることで、磁気抵抗が小さな状態で、磁路を形成することができる。
【0049】
また、C字状の磁路形成体17aと逆C字状の磁路形成体17bの下部は所定間隔離して、ここに磁気ギャップ20を形成する。高周波誘導加熱ヘッド17の磁気ギャップ20の間隔は、C字状の磁路形成体17aと逆C字状の磁路形成体17bを、貫通孔19を中心に回動させることで調整することができる。
【0050】
実施の形態1では、二つの高周波誘導加熱ヘッド16,17を用いており、
図12、
図14、
図15に示すように、高周波誘導加熱ヘッド16,17が、細長い素子基体3の長手方向の両側となるように、所定間隔を置いて配置されている。
【0051】
高周波誘導加熱ヘッド16,17の配置状態について、さらに詳細に説明する。
高周波誘導加熱ヘッド16は、左右の磁路形成体16aと磁路形成体16bを備え、その下方側の先端間で磁気ギャップ20を形成する構成としている。
【0052】
また、高周波誘導加熱ヘッド17も、左右の磁路形成体17aと磁路形成体17bを備え、その下方側の先端間で磁気ギャップ20を形成する構成としている。
【0053】
実施の形態1では、高周波誘導加熱ヘッド16を構成する左右の磁路形成体16a,16bの下方側の磁気ギャップ20側先端を、
図2に示した実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2A上に、
図11、
図12のように、非接触状態ではあるが、対向した状態で配置し、その後、磁束を流す。
【0054】
つまり、高周波誘導加熱ヘッド16の磁路形成体16aの下方側の先端を、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の下方のものに、非接触状態で対向配置した場合、磁路形成体16bの下方側の先端は、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の上方のものに、非接触状態で対向配置された状態となる。
【0055】
同様に、高周波誘導加熱ヘッド17の磁路形成体17aの下方側の先端を、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の下方のものに、非接触状態で対向配置した場合、磁路形成体17bの下方側の先端は、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の上方のものに、非接触状態で対向配置された状態となる。
【0056】
なお、高周波誘導加熱ヘッド16の磁路形成体16aの下方側の先端が、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の下方のものに、非接触状態で対向配置した状態となるのは、この高周波誘導加熱ヘッド16の磁路形成体16aの下方側の先端と、実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2Aの間に、
図6に示した樹脂製の位置決めカバー10が介在しているからである。
【0057】
同様に、高周波誘導加熱ヘッド16の磁路形成体16bの下方側の先端が、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の上方のものに、非接触状態で対向配置した状態となるのは、この高周波誘導加熱ヘッド16の磁路形成体16bの下方側の先端と、実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2Aの間に、
図6に示した樹脂製の位置決めカバー10が介在しているからである。
【0058】
また、高周波誘導加熱ヘッド17の磁路形成体17aの下方側の先端が、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の下方のものに、非接触状態で対向配置した状態となるのは、この高周波誘導加熱ヘッド17の磁路形成体17aの下方側の先端と、実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2Aの間に、
図6に示した樹脂製の位置決めカバー10が介在しているからである。
【0059】
さらに、高周波誘導加熱ヘッド17の磁路形成体17bの下方側の先端が、
図2に示した加熱ヘッド対向エリア2Aのうちの
図2の上方のものに、非接触状態で対向配置した状態となるのは、この高周波誘導加熱ヘッド17の磁路形成体17bの下方側の先端と、実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2Aの間に、
図6に示した樹脂製の位置決めカバー10が介在しているからである。
【0060】
なお、
図15は、実装基体2を除いて、素子基体3と、二つの高周波誘導加熱ヘッド16,17の関係が分かりやすくなるようにした図である。
【0061】
実施の形態1では、上述のように、素子基体3が細長い長方形となっているので、その長手方向の両側からの加熱をすることで、同じく長方形のはんだシート7が均一状態で溶融するような工夫を行った。
【0062】
図16〜
図18は、磁気コイル18に、1MHz、100Aの電流を供給した状態を示している。
この状態では、
図16に示すように、高周波誘導加熱ヘッド16,17の磁気ギャップ20部分においては、磁路形成体16a,16b間および磁路形成体17a,17b間において、磁束21が流れる。
【0063】
具体的には、磁路形成体17a(16a)、実装基体2の実装面2a両側部分、実装基体2の実装面2a、およびその直下部分、磁路形成体17b(16b)の方向に磁束21が流れ、また、次の状態では逆方向に磁束21が流れ、これにより、実装基体2の実装面2a部分において、誘導加熱による急速な発熱が発生し、はんだシート7が溶融し、その結果として、実装基体2の実装面2a部分に素子基体3がはんだ付けされる。
【0064】
なお、実施の形態1では、磁束21が、素子基体3の実装面2a両側部分近傍へと流れやすくするように、磁路形成体16a,16bおよび磁路形成体17a,17bの先端に、実装基体2の実装面2a側に向けて傾斜した傾斜面22を設けた。
【0065】
また、実装基体2の実装面2a部分の均一加熱を行うために、細長い素子基体3の両側に二つの高周波誘導加熱ヘッド16,17を配置している。
【0066】
この結果、
図17、
図18から理解されるように、素子基板4の下面のみならず、この素子基板4の下部外周(フィレット部23)にも、はんだが存在する状態となり、実装基体2への素子基体3のはんだ付けに対する信頼性の高いものとなる。
【0067】
また、
図16からも理解されるように、実装基体2への素子基体3のはんだ付けに対して、高周波誘導加熱ヘッド16,17からの磁束21は、素子基体3の素子基板4よりも磁気抵抗の小さな実装基体2側へと流れ、電子部品素子5部分には流れにくいので、電子部品素子5が磁束21による誘導加熱を受けることは少なく、この結果として、電子部品素子5の熱劣化が起きにくくなる。
【0068】
また、実施の形態1で特徴的なのは、素子基体3に、はんだ付けの際の応力が加わりにくく、その結果として、素子基体3および、それに実装した電子部品素子5の損傷が発生しにくいということである。
【0069】
つまり、実施の形態1では、ステンレス材により構成された実装基体2に、ガラスまたはセラミック材よりなる素子基板4をはんだ付けしており、はんだシート7を溶融させる加熱時には、その熱により、実装基体2も素子基板4も膨張し、熱が冷めると収縮することになる。この際、実装基体2と素子基板4の熱膨張係数が、構成材料の違いにより大きく異なるので、はんだ付けされた後の冷却時に、例えば、実装基体2が大きく収縮し、それによる応力が素子基板4に加わり、その結果として素子基板4または電子部品素子5を損傷させてしまう虞がある。
【0070】
一例として、実装基体2をステンレス材で形成した場合には、その熱膨張係数は以下の通りである。
・SUS430・・・11.0(x10^−6/℃)
・SUS301・・・17.1(x10^−6/℃)
・SUS304・・・17.8(x10^−6/℃)
【0071】
これに対して、素子基板4をガラスまたはセラミック材で形成した場合には、その熱膨張係数は以下の通りである。
・パイレックス(登録商標)ガラス・・・3.3(x10^−6/℃)
・アルミナAl2O3・・・7.2(x10^−6/℃)
・ジルコニアZrO2・・・10.5(x10^−6/℃)
・炭化ケイ素SiC・・・4.4(x10^−6/℃)
【0072】
このように、実装基体2をステンレス材で形成し、また素子基板4をガラスまたはセラミック材で形成した場合、はんだ付けされた後の冷却時に、例えば、実装基体2が大きく収縮し、それによる応力が素子基板4に加わり、その結果として素子基板4または電子部品素子5を損傷させてしまう虞がある。
【0073】
これに対して、実装基体2をステンレス材で形成し、また素子基板4をガラスまたはセラミック材で形成しても、実施の形態1では、素子基板4および電子部品素子5を損傷させることは無く、この点も実施の形態1の大きな特徴である。
【0074】
この点を詳細に説明すると、実施の形態1では、上述のごとく、
図16に示すように、高周波誘導加熱ヘッド16,17の磁気ギャップ20部分(実装基体2の実装面2a部分)において、実装基体2の実装面2a部分に集中的に磁束21を流し、この実装基体2の実装面2a部分を急速(例えば1秒程度)に加熱し、はんだシート7を溶融させる。
【0075】
このように、短時間の局部的(実装基体2の実装面2a部分)な加熱をした状態では、実装基体2の実装面2a部分の外周域部分は大きく温度上昇していないので、この外周域部分の熱膨張状態はごくわずかとなる。つまり、実装基体2の実装面2a部分は1秒の加熱といえども急速に温度上昇し、それに伴い大きく熱膨張しようとするが、実装基体2の実装面2a部分の外周域部分は、急速な温度上昇は発生しておらず、熱膨張量も少ない状態となるので、その結果として、素子基体3の実装面2a部分は、熱膨張により、外周方向へと大きく伸びることは出来ず、極めて小さな伸び状態にとどまる。
【0076】
このように実装基体2の実装面2a部分は、はんだ付け加熱時に、大きく膨張できないので、その後、常温への温度低下の際にも、極めて小さな縮み状態しか発生せず、これが、上方にはんだ付けされた素子基体3に、大きな応力を加えないことにつながり、これにより、素子基板4および電子部品素子5の損傷が発生しないことになるのである。
【0077】
なお、実施の形態1では、実装基体2をステンレス材によって形成しているが、ステンレス材は鉄材などに比べて熱伝導率が低く、それによっても、実装基体2の実装面2a部分の急速な温度上昇状態、および、その外周域部分での温度上昇が緩慢な状態を作り出すことができる。
【0078】
つまり、ステンレス材の熱伝導率は、以下のように、鉄材に比べて極めて小さくなっている。
・鉄・・・83.5(W/m・K)
・SUS301,SUS304・・・16.3(W/m・K)
・SUS430・・・26.4(W/m・K)
【0079】
熱伝導率が小さいということは、実装基体2の実装面2a部分が誘導加熱により急速に温度上昇している際に、その部分から外周方向への熱伝導が進まない状態となり、その結果、この実装面2a部分の温度を急速に上昇させることができるのである。
【0080】
つまり、はんだ付け時間を短くすることができ、そのことは生産性の観点だけでなく、素子基板4および電子部品素子5の熱的および機械的な理由による劣化および損傷も起きにくくなるという事にもつながり、極めて大きく評価されるものである。
【0081】
また、従来の考え方としては、実装基体2から素子基体3への熱的膨張および収縮による応力を緩和するために、実装基体2と素子基体3との間に、高価なコバール(応力緩衝体)を介在させることも検討されるが、実施の形態1では、上述のごとく、実装基体2から素子基体3への熱的膨張および収縮による大きな応力が発生しないので、このような応力緩衝体を介在させる必要が無く、製造コストなど、様々な点で、極めて大きな効果を発揮することができる。
【0082】
なお、実施の形態1では、以上のような加熱により、実装基体2の実装面2a外周へのはんだの広がりが、加熱ヘッド対向エリア2Aを超えて広がらないことが確認できた。つまり、はんだシート7は加熱により溶融し、外方へと広がることになるが、実施の形態1では、加熱ヘッド対向エリア2Aの外方には、実質的に磁束が広がらず、すなわち、この加熱ヘッド対向エリア2Aの外方部分は誘導加熱されない(理由1)。また、実装基体2を、鉄などに比べて熱伝導が小さなステンレス材によって構成することで、加熱ヘッド対向エリア2Aの外方向への熱伝導も小さくなっている(理由2)。
【0083】
そして、以上の二つの理由から、上述のごとく、加熱ヘッド対向エリア2Aの外側の実装基体2表面の温度は低く保たれ、これにより、上記溶融したはんだが、それ以上外方へと広がらないのである。
【0084】
ちなみに、加熱ヘッド対向エリア2Aの短辺側寸法は、実装面2aの短辺側寸法と同じ、またはそれ以下の寸法としている。
このため、実装基体2の実装面2aにおいて、はんだの広がり寸法(実装面2aの外周から外方に広がったはんだの外周面までの距離)は、実装面2aの短辺側寸法よりも小さなものとなっている。このことが実施の形態1の製造方法を用いて製造したことの特徴点でもあり、これを目視すれば、その素子実装体1が、実施の形態1の製造方法で製造したものであることを確認できる。
【0085】
また、はんだが必要以上に外方に広がらないので、近傍に配置される電子部品が存在する場合にも有利なものとなる。
【0086】
なお、実施の形態1では、素子実装体1、実装基体2、素子基体3および素子基板4を、板状で、平面視が長方形状としたが、これらは正方形でも、その他の多角形でも、円形、楕円形でもよい。
【0087】
以上のように、実施の形態1に係る素子実装体1は、少なくとも実装面2a部分が高周波誘導加熱が可能な金属で形成された実装基体2と、実装基体2よりも小さく、かつ、当該実装基体2の実装面2a上に、はんだ付けにより実装された素子基体3とを備え、実装基体2は、実装面2aを挟んで対向する当該実装面2aの外側部分に、それぞれ、高周波誘導加熱ヘッド16,17の磁気ギャップ側端部が対向配置される加熱ヘッド対向エリア2Aを有し、素子基体3は、ガラスまたはセラミックで形成された素子基板4と、素子基板4の実装基体2とは反対側の面に設けられた電子部品素子5と、素子基板4の実装基体2側の面に設けられた、はんだ付け容易化用の第1の金属皮膜とを有する構成としたものである。
【0088】
このため、実施の形態1に係る素子実装体1では、実装基体2の実装面2aに素子基体3をはんだ付け実装する場合、実装基体2の加熱ヘッド対向エリア2Aに対向配置した高周波誘導加熱ヘッド16,17の磁気ギャップ側端部から、実装基体2の実装面2a部分に磁束が供給され、実装面2aを発熱させ、はんだを溶融させ、これにより、実装基体2の実装面2a上に素子基体3をはんだ付けすることができる。
【0089】
つまり、実施の形態1に係る素子実装体1では、素子基体3の電子部品素子5に高周波誘導加熱ヘッド16,17からの磁束が流れることが少なく、その結果として、電子部品素子5への熱的影響を抑制することができるのである。
【0090】
また、実施の形態1に係る素子実装体1の実装装置15は、はんだを溶融させる高周波誘導加熱ヘッド16,17を備え、高周波誘導加熱ヘッド16,17は、磁気ギャップ20を有する磁路形成体16a,16b,17a,17bと、磁路形成体16a,16b,17a,17bに磁束を流す磁気コイル18とを有し、磁路形成体16a,16b,17a,17bの磁気ギャップ側端部は、実装基体2の実装面2aに素子基体3が配置された状態で、加熱ヘッド対向エリア2Aに、それぞれ対向配置される構成としたものである。
【0091】
このため、実施の形態1に係る素子実装体1の実装装置15では、素子基体3の電子部品素子5に高周波誘導加熱ヘッド16,17からの磁束が流れることが少なく、その結果として、電子部品素子5への熱的影響を抑制することができるのである。
【0092】
さらに、この実装装置15を用いた実装方法は、先ず、実装基体2の実装面2aに、はんだシート7を介して素子基体3を配置し、次に高周波誘導加熱ヘッド16,17を構成する磁路形成体16a,16b,17a,17bの磁気ギャップ側端部から、実装基体2の実装面2a部分に、磁束を供給するものである。
【0093】
このため、この実装方法では、素子基体3の電子部品素子5に高周波誘導加熱ヘッド16,17からの磁束が流れることが少なく、その結果として、電子部品素子5への熱的影響を抑制することができるのである。
【0094】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。