【解決手段】筐体用部材は、電子機器に用いる筐体用部材であって、表面板と、前記表面板の一面に固定され、該一面の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられるフレームと、を備える。前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを複数層積層して形成されている。前記フレームは、前記一面に固定されるフレーム本体と、前記フレーム本体と一体に形成され、シャフト状部材を圧入するための挿入穴が形成されたシャフト支持部と、を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、プリプレグを用いた筐体用部材をノート型PCのディスプレイ筐体に使用している。ところで、ノード型PCのディスプレイ筐体は、本体筐体に対してヒンジ装置を介して連結される。そこで、特許文献1の筐体用部材は、プリプレグ積層板の周囲に設けた樹脂フレームに十分な幅を確保し、ここにヒンジ装置をねじ止めしている。つまり、この構成では、ディスプレイ筐体内にヒンジ装置の取付板やその取付ねじが大きく侵入している。このため、この構成では、ディスプレイを筐体の縁部近傍まで寄せることが難しく、ディスプレイの周囲を囲むベゼル部材の幅が拡大し、外観品質の向上や筐体の小型化の障害となっていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、筐体の外観品質の向上や小型化を可能とする筐体用部材、電子機器及び筐体用部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る筐体用部材は、電子機器に用いる筐体用部材であって、表面板と、前記表面板の一面に固定され、該一面の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられるフレームと、を備え、前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを複数層積層して形成され、前記フレームは、前記一面に固定されるフレーム本体と、前記フレーム本体と一体に形成され、シャフト状部材を圧入するための挿入穴が形成されたシャフト支持部と、を有する。
【0007】
前記シャフト支持部は、前記一辺から前記一面の面方向へと起立した突出部を有し、前記挿入穴は、前記フレーム本体に沿って前記突出部に形成され、前記突出部の端面において前記面方向と交差する方向を臨んで開口した構成としてもよい。
【0008】
前記突出部には、前記挿入穴の少なくとも一部の周囲を囲むボス部が設けられ、前記ボス部の外周面を囲む補強リングをさらに備える構成としてもよい。
【0009】
前記フレーム本体及び前記突出部を一括りに囲む補強シートをさらに備える構成としてもよい。
【0010】
前記強化繊維は、少なくとも前記一辺の長手方向に沿って延在している構成であってもよい。
【0011】
前記フレーム本体は、前記一面を囲むように該一面の周縁部に沿って枠状に延在しており、前記シャフト支持部は、前記フレーム本体の一辺に設けられた構成としてもよい。
【0012】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体用部材を用いて形成された筐体を備える電子機器であって、前記筐体用部材は、表面板と、前記表面板の一面に固定され、該一面の周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられるフレームと、を備え、前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを複数層積層して形成され、前記フレームは、前記一面に固定されるフレーム本体と、前記フレーム本体と一体に形成され、ヒンジシャフトを圧入するための挿入穴が形成されたシャフト支持部と、を有し、さらに、前記ヒンジシャフトが前記挿入穴に圧入されることで、前記筐体と相対的に固定されたヒンジと、前記ヒンジシャフトに対して軸回りに回転可能に連結されることで、前記筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2の筐体と、を備える。
【0013】
前記筐体の正面に設けられたディスプレイと、前記第2の筐体に設けられたキーボードと、をさらに備え、前記筐体は、背面が前記表面板で形成され、側面が前記フレームで形成された構成としてもよい。
【0014】
本発明の第3態様に係る筐体用部材の製造方法は、電子機器に用いる筐体用部材の製造方法であって、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを金型の外面に巻き付けて複数層積層することで、フレーム原型を形成する工程と、前記フレーム原型を加工することで、フレーム本体と、該フレーム本体の一辺に設けられたシャフト支持部と、を形成する工程と、前記シャフト支持部を加工することで、シャフト状部材を圧入するための挿入穴を形成する工程と、を含む。
【0015】
前記シャフト支持部を形成する工程では、前記一辺から突出する突出部と、該突出部の端面近傍に前記挿入穴の少なくとも一部を囲むためのボス部を形成しておき、前記挿入穴は、前記端面から前記シャフト状部材を圧入する方向に穿孔して形成するようにしてもよい。
【0016】
さらに、前記ボス部の外周面にシート状のプリプレグを周方向に巻き付けて硬化させる工程、又は、前記ボス部の外周面に金属リングを被せる工程、を含んでもよい。
【0017】
さらに、前記フレーム本体及び前記シャフト支持部にシート状のプリプレグを巻き付けて硬化させる工程を含んでもよい。
【0018】
さらに、前記フレーム本体と前記シャフト支持部とを設けたフレームを、板状部材の一面に固定する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筐体の外観品質の向上や小型化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る筐体用部材について、この部材を用いた電子機器との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る筐体用部材10を用いて形成した筐体12を備える電子機器14の斜視図である。本実施形態では、筐体用部材10を用いた筐体12をノート型PCである電子機器14の蓋体16に利用した構成を例示する。筐体用部材10は、タブレット型PC、デスクトップ型PC、スマートフォン、携帯電話、携帯用ゲーム機等の各種電子機器の筐体に利用できる。
【0023】
図1に示すように、電子機器14は、キーボード18を有する機器本体20と、液晶ディスプレイ等で構成されたディスプレイ22を有する矩形平板状の蓋体16と、を備える。蓋体16と機器本体20とは、左右のヒンジ24によって相対的に回動可能に連結されている。機器本体20の内部には、図示しない基板、演算処理装置、ハードディスク装置、メモリ等の各種電子部品が収納されている。キーボード18は、機器本体20の上面に設けた図示しないディスプレイに表示してタッチ操作するソフトウェア式のキーボードでもよい。
【0024】
蓋体16は、筐体12の正面にディスプレイ22を設けた構成である。筐体12は、背面カバー12aと正面カバー12bとで構成されている。背面カバー12aは、蓋体16の背面及び四周側面を覆うカバー部材であり、本実施形態に係る筐体用部材10によって形成されている。正面カバー12bは、蓋体16の正面の四周縁部を覆い、中央に形成された開口にディスプレイ22が配設される樹脂或いは金属等で形成されたベゼル部材である。
【0025】
次に、蓋体16の背面カバー12aを形成する筐体用部材10の構成について具体的に説明する。
図2は、筐体用部材10の構成を模式的に示す分解斜視図であり、ディスプレイ22等が収納される背面カバー12aの内面側を示した図である。
図3は、筐体用部材10の構成を模式的に示す斜視図である。
【0026】
以下、筐体用部材10(背面カバー12a)について、
図2及び
図3に示す姿勢を基準とし、手前側をY1、奥側をY2、左側をX1、右側をX2と呼び、さらに、板厚方向で上側をZ1、下側をZ2と呼んで説明する。これらの各方向は、Y1方向及びY2方向をまとめてY方向、X1方向及びX2方向をまとめてX方向、Z1方向及びZ2方向をまとめてZ方向と呼ぶこともある。なお、筐体用部材10(背面カバー12a)が電子機器14に用いられた状態での各方向は、
図1に示す通りである。
【0027】
図2及び
図3に示すように、筐体用部材10は、表面板26と、フレーム28と、を備える。
【0028】
表面板26は、薄い矩形状のプレートである。表面板26は、筐体12の背面を形成する。つまり表面板26は、外面26aが筐体12の背面となり、内面26bが筐体12内を向いたディスプレイ22の支持面となる。表面板26は、例えばプリプレグの積層板、ガラス板、樹脂板、又は、アルミニウムやチタン等の金属板で構成される。プリプレグの積層板は、例えば炭素樹脂等の強化繊維にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグを複数層積層したものである。
【0029】
フレーム28は、表面板26の内面26bに接着剤等で固定される。フレーム28は、内面26bを囲むようにその四周縁部に沿って延在する枠体である。フレーム28は、筐体12の側面を形成する。つまりフレーム28の外周面28aが、筐体12の四周側面となる。フレーム28は、さらに、表面板26の剛性を高める補強部材としての機能と、ヒンジ24の取付部としての機能と、を有する。
【0030】
フレーム28は、例えば炭素樹脂等の強化繊維にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグ29を複数層積層して形成したプレートに機械加工を施したものである(
図5参照)。これによりフレーム28は、軽量且つ高強度である。本実施形態では、強化繊維として炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂(CFRP)を用いてフレーム28を形成している。強化繊維は、ステンレス繊維等の金属繊維やガラス繊維等の無機繊維等、各種材料を用いてもよい。強化繊維は、フレーム28の延在方向(長手方向)、つまりフレーム28が表面板26の内面26bを枠状に囲む方向に沿って延在している(
図4中に破線で示す強化繊維29a参照)。表面板26もプリプレグである場合、フレーム28は、熱溶着で表面板26に固定してもよい。
【0031】
フレーム28は、フレーム本体30と、シャフト支持部32と、を有する。フレーム本体30及びシャフト支持部32は、一体に形成されている。フレーム28は、プリプレグ29の積層体に機械加工を施してフレーム本体30及びシャフト支持部32を形成したものであるが、詳細は後述する。
【0032】
フレーム本体30は、表面板26の内面26bに固定され、内面26bの周縁部に沿って延在するように配置される矩形の枠状部分である。
図2及び
図3では、フレーム本体30は、4辺のうち、Y1側でX方向に沿った辺30aを多少幅広に形成し、残りの3辺を辺30aよりも幅狭に構成した構成を例示しているが、各辺の幅や形状は適宜変更可能である。
【0033】
シャフト支持部32は、ヒンジ24のヒンジシャフト24aを支持する部分である(
図6A及び
図6B参照)。シャフト支持部32は、フレーム本体30のY1側の辺30aに形成されている。シャフト支持部32は、辺30aに設けられた突出部34と、突出部34のX方向の左右端面にそれぞれ形成された挿入穴36と、を有する。
【0034】
図4は、挿入穴36及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図4は、
図2及び
図3中でX2側を向いた挿入穴36及びその周辺部の構成を代表的に図示している。X1側を向いた挿入穴36及びその周辺部の構成は、X2側のものと左右対称構造であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
図2〜
図4に示すように、突出部34は、辺30aから面方向(Z1方向)へと起立し、X方向に延在した断面略かまぼこ型(hog−backed)の壁体である。突出部34のX方向長さは、フレーム本体30の辺30aのX方向長さよりも短い。これにより、突出部34の端面に形成された挿入穴36は、フレーム本体30の左右でY方向に延びた各辺からX方向に後退した位置にあり、この後退したスペースにヒンジ24が配設される(
図6B参照)。突出部34の形状は、適宜変更可能である。
【0036】
突出部34の左右の端面34aには、挿入穴36が開口している。突出部34の左右の端部には、挿入穴36の少なくとも一部を囲む円筒状のボス部34bが設けられている。ボス部34bは、突出部34の円弧状の頂面よりも一回り小さい外径の円筒とされている。ボス部34bは、省略してもよく、その場合は突出部34の全長を同一断面で形成すればよい。但し、後述する補強リング38を設置する際は、ボス部34bを設けることが好ましい(
図7参照)。
【0037】
挿入穴36は、ヒンジシャフト24aを圧入するための穴である。挿入穴36は、ボス部34bの軸心に軸方向に沿って形成されている。挿入穴36は、フレーム本体30に沿って突出部34に形成され、突出部34の左右の端面34aにおいて表面板26の内面26bの面方向(Z方向)と交差する方向を臨んで開口している。本実施形態では、挿入穴36は、例えば内面26bの面方向と垂直する方向、具体的には突出部34及び辺30aの長手方向であるX方向を臨んで開口している。そこで本実施形態の挿入穴36は、突出部34に対し、端面34aからヒンジシャフト24aを圧入する方向(X方向)に穿孔して形成されている。
図4及び
図5では、開口側から奥側に内径が2段に縮径する段付き構造の挿入穴36を例示している。挿入穴36は開口側から奥側にかけて同一の内径で形成されてもよい。
【0038】
図5は、フレーム28を突出部34を横切る位置で切断した断面図であり、辺30a及び突出部34をX方向に直交する平面(YZ平面)で切断した図である。
図5では、断面を示すハッチングは省略している。
【0039】
図5に示すように、フレーム28は、プリプレグ29が幅方向に複数層積層され、互いに固定されている。
図5に示す辺30a及び突出部34を含む部分では、プリプレグ29がY方向に積層されている。辺30aと対向するY2側の辺は、プリプレグ29がY方向に積層されている。辺30aと直交するY方向に延在した他の2辺は、プリプレグ29がX方向に積層されている。挿入穴36は、プリプレグ29が積層され、固定された積層板に機械加工で穿孔し、形成してものである。フレーム28は、その厚み方向(Z方向)にプリプレグ29を積層して形成してもよい。
【0040】
次に、挿入穴36に対するヒンジ24の具体的な取付構造を説明する。
図6Aは、ヒンジシャフト24aを挿入穴36に圧入する動作を模式的に示す平面図である。
図6Bは、
図6Aに示す状態からヒンジシャフト24aを挿入穴36に圧入した状態での平面図である。
【0041】
図6A及び
図6Bに示すように、本実施形態のヒンジ24は、ヒンジシャフト24aと、ブラケット24bと、トルク発生部24cと、を有する。
【0042】
ヒンジシャフト24aは、ヒンジ24の回転軸となる金属製のシャフト状部材である。ブラケット24bは、ヒンジシャフト24aに対して相対的に回転可能に外挿された支持板24dと、支持板24dと一体形成された取付板24eとで構成された金属部品である。取付板24eは、複数の貫通孔を有し、機器本体20に対してねじ止めされる。トルク発生部24cは、ヒンジシャフト24aとブラケット24b(支持板24d)との間の相対回転に所定の回転トルクを付与する。
【0043】
ヒンジシャフト24aは、挿入穴36に圧入されることで、筐体12(蓋体16)と回転不能に固定される。つまりブラケット24bと固定された機器本体20は、蓋体16と固定されたヒンジシャフト24aの軸回りに相対的に回動可能な状態にある。その結果、ヒンジ24は、蓋体16と機器本体20との間を相対的に回動可能に連結する。
【0044】
このようなフレーム28において、フレーム本体30は、シャフト支持部32を設けた1つの辺30aのみで棒状に形成されてもよいし、30aを含めた2辺或いは3辺で形成されてもよい。フレーム28は、2辺又は3辺の場合、各辺同士は繋がっていなくてもよい。
【0045】
ところで、
図5で示したように、挿入穴36は、プリプレグ29の積層板を穿孔して形成している。このため、プリプレグ29同士の境界が挿入穴36に重なる位置にも形成されている。従って、例えば蓋体16と機器本体20との間に大きな外力が付与され、挿入穴36の内周面がヒンジシャフト24aから負荷を受けた場合、積層されたプリプレグ29の層間が強化繊維29aの繊維方向に沿って剥離する懸念がある。例えば、
図5に示す構成例では、ヒンジシャフト24aから挿入穴36に負荷が掛かると、挿入穴36に重なる位置にあるプリプレグ29同士の境界がY方向に剥離する懸念がある。なお、このようなプリプレグ29の層間剥離は、挿入穴36にヒンジシャフト24aを圧入する際にも起こり得る。さらに、フレーム28は、ヒンジシャフト24aから
図5中でZ1方向の負荷を受けると、突出部34とフレーム本体30との境界部34c(
図4参照)に亀裂や割れを生じる懸念もある。
【0046】
そこで、本実施形態のフレーム28は、補強リング38と、補強シート40と、を備え、上記した問題を抑制可能な構成とすることが好ましい。
図7は、ボス部34bに補強リング38を取り付けた状態での挿入穴36及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【0047】
図7に示すように、補強リング38は、ボス部34bの外周面を囲むように固定されるリンク状部材である。補強リング38は、例えば帯状のプリプレグをボス部34bの周方向に1周又は複数周巻き付けて固定したものである。補強リング38に含まれる強化繊維38aは、例えば炭素繊維である。強化繊維38aは、ボス部34bの外周面の周方向に沿って延在している。これにより補強リング38は、ヒンジシャフト24aから挿入穴36の内周面への負荷によるプリプレグ29の層間剥離を抑制する。補強リング38は、金属や樹脂で形成されたリンク状部材でもよい。
【0048】
上記のように、本実施形態のボス部34bは、その外径が突出部34よりも一回り小さい。そこで、このボス部34bと突出部34との間に形成された段差に補強リング38が収容される。これにより補強リング38が、突出部34とボス部34bとの間に凸状の段差を形成することを抑制できる。
【0049】
図8は、
図7に示すシャフト支持部32に補強シート40を取り付けた状態での斜視図である。
図9は、
図8に示すフレーム28を補強リング38を横切る位置で切断した模式的な断面図である。
【0050】
図8及び
図9に示すように、補強シート40は、フレーム本体30の辺30aと、突出部34と、補強リング38(ボス部34b)とを一括りに囲んで固定された帯状のシートである。補強シート40は、例えば帯状のプリプレグをフレーム本体30や突出部34の周方向に1周又は複数周巻き付けて固定したものである。補強シート40に含まれる強化繊維40aは、例えば炭素繊維である。強化繊維40aは、フレーム本体30や突出部34の外周面の周方向に沿って延在している。補強シート40は、突出部34の全長に設けてもよいが、少なくとも左右のボス部34bの近傍、つまり境界部34cの近傍に設けられる。これにより補強シート40は、ヒンジシャフト24aから挿入穴36の内周面への負荷による境界部34cでの亀裂や割れを抑制する。補強シート40は、金属や樹脂で形成されたシート状部材でもよい。補強シート40は、ボス部34bを覆わない位置に設けられてもよい。
【0051】
図10に示すように、突出部34及びフレーム本体30には、補強シート40を設ける部分の外周面を凹ませた凹状部34dを設けてもよい。これにより補強シート40は、凹状部34dに収容され、突出部34等の外面に凸状の段差ができることを防止できる。
【0052】
補強リング38及び補強シート40は、いずれか一方のみを用いてもよい。また、補強リング38及び補強シート40は、例えば挿入穴36へのシャフト状部材からの負荷が想定されないか又は相当に小さい仕様では、省略してもよい。
【0053】
次に、筐体用部材10の製造方法の一手順を説明する。
図11A〜
図11Dは、筐体用部材10の製造工程を模式的に示す説明図である。
【0054】
上記した通り、フレーム28は、プリプレグ29の積層体に機械加工を施してフレーム本体30及びシャフト支持部32を形成したものである。フレーム28を製造する際は、先ず、
図11Aに示すように、フレーム28の内周形状に合わせた矩形棒状の金型42を準備する。そして、金型42の外周面に対し、長尺なシート状のプリプレグ29を複数周巻き付ける。この巻き付けるプリプレグ29の幅は、少なくともフレーム28のZ方向高さ以上である必要があり、本実施形態ではフレーム28の7個以上の幅である(
図11C参照)。なお、
図11Aでは、1周目のプリプレグ29を金型42の外面から離間させて図示しているが、実際には1周目のプリプレグ29は金型42の外面に当接している。
【0055】
プリプレグ29は、所定の積層厚みとなるまで、具体的には、少なくともフレーム28の各辺の幅寸法以上の厚みになるまで金型42の外面に巻き付ける。プリプレグ29の巻き付けが完了すると、
図11Bに示すように、金型42の外面には、プリプレグ29がトイレットペーパー状に積層され、所定の厚みを持った矩形筒状の積層体44が形成される。積層体44は、プリプレグ29の巻き付け完了後にまとめて各層のプリプレグ29を加熱して硬化させ、これにより各層のプリプレグ29同士を溶着固定してもよい。プリプレグ29同士は、接着剤で固定してもよい。
【0056】
そして、積層体44を金型42から引き抜く。
図11Cに示すように、積層体44は、フレーム28の細かな加工前の原型であるフレーム原型46をZ方向に複数積層した大きさである。
図11Cは、フレーム原型46の7個分の高さを持った積層体44を例示している。そこで、今度は、積層体44を
図11C中の破線で示すフレーム原型46同士の境界線にそって輪切りに切断し、1つのフレーム原型46毎に分割する。
【0057】
次いで、
図11Dに示すように、フレーム原型46について、CNC工作機械を用いて機械加工を施す。
図11D中の参照符号48は、例えばCNC工作機械のエンドミル48である。
図11Dは、フレーム原型46をフレーム28に加工している途中の状態を示している。
図11D中の参照符号50は、フレーム本体30の原型であり、参照符号52は、シャフト支持部32の原型である。そして、挿入穴36も穿孔し、フレーム原型46の加工が完了すると、フレーム28の成形が完了する。
【0058】
次に、補強リング38の取付工程を実施する。補強リング38がプリプレグである場合には、帯状のプリプレグのシートをボス部34bの外周面に巻き付ける。そして、プリプレグの樹脂を加熱して硬化させることで、補強リング38がボス部34bに固定される。一方、補強リング38が、樹脂や金属のリング状部材である場合は、ボス部34bの先端から外嵌し、接着剤等で固定すればよい。
【0059】
次に、補強シート40の取付工程を実施する。補強シート40がプリプレグである場合には、帯状のプリプレグのシートをフレーム本体30、突出部34、及び補強リング38の外周面を一括りに覆うように巻き付ける。そして、プリプレグの樹脂を加熱して硬化させることで、補強シート40がフレーム28に固定される。一方、補強シート40が、樹脂や金属のシートである場合は、フレーム本体30や突出部34に巻き付けて接着剤等で固定すればよい。
【0060】
最後に、このように形成したフレーム28を表面板26に固定することで筐体用部材10の製造が完了する。なお、筐体用部材10は、フレーム28と表面板26とが異なる製造所で製造され、最終的なアセンブリ工程で一体化される場合もある。そこで、当該筐体用部材の製造方法は、最終的なフレーム28と表面板26との固定工程を省略し、フレーム28の製造工程のみで構成されてもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る筐体用部材10は、表面板26と、表面板26の内面26bに固定され、内面26bの周縁部の少なくとも一辺に沿って設けられるフレーム28と、を備える。フレーム28は、強化繊維29aにマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグ29を複数層積層して形成されている。さらに、フレーム28は、表面板26の内面26bに固定されるフレーム本体30と、フレーム本体30と一体に形成され、シャフト状部材(ヒンジシャフト24a)を圧入するための挿入穴36が形成されたシャフト支持部32と、を有する。
【0062】
このように、当該筐体用部材10は、表面板26の内面26bに固定されるフレーム28に挿入穴36が形成されている。そして、この挿入穴36には、シャフト状部材としてヒンジシャフト24aを圧入することができる。このため、当該筐体用部材10は、ヒンジ24の取付板をねじ止めするためのスペースが不要となる。これによりフレーム28は、可及的に幅狭に形成することができ、ディスプレイ22等の電子部品を可及的に筐体12の縁部まで寄せて搭載することができる。その結果、筐体用部材10を用いることで、ディスプレイ22を囲むベゼル部材(正面カバー12b)を可及的に幅狭に構成でき、筐体12の外観品質が向上し、さらに小型化も可能となる。またフレーム28は、プリプレグ29の積層構造であるため、軽量且つ高強度である。しかも筐体用部材10は、フレーム28と表面板26とが別構造のため、使用する電子機器14や筐体12の仕様に応じて、フレーム28或いは表面板26の形状等を容易に変更でき、高い汎用性が得られる。
【0063】
フレーム28は、
図2及び
図3に示すように、表面板26の内面26bを枠状に囲んでいることが好ましい。これにより、フレーム28による筐体用部材10の補強効果が向上し、且つフレーム28の外周面28aを筐体12の側面として兼用することができる。
【0064】
フレーム28は、シャフト支持部32を構成する突出部34がフレーム本体30から起立している。これにより、フレーム28は、ヒンジ24の取付スペースを容易に確保できる。なお、ヒンジ24は、ねじを用いずにヒンジシャフト24aを直接的に挿入穴36に固定するため、突出部34を設けても筐体用部材10の板厚は、従来のねじ止め構造のヒンジの場合と同様か又は薄型化できる。また、突出部34は、ヒンジ24によって形成される蓋体16と機器本体20との間の隙間を埋めるヒンジカバーとしても機能する。
【0065】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0066】
上記では、筐体用部材10を電子機器14を構成する蓋体16の筐体12として用いた構成を例示したが、筐体用部材10は機器本体20に用いてもよい。
【0067】
上記では、表面板26の内面26bのみにフレーム28を設けた構成を例示したが、当該筐体用部材10の用途によってはフレーム28を表面板26の内面26b及び外面26aの両方又は外面26aのみに設けてもよい。
【0068】
上記では、フレーム28の筐体12の長辺に対応する辺30aにシャフト支持部32を設け、ここにヒンジ24を連結する構成を例示したが、シャフト支持部32は筐体12の短辺に対して設けてもよい。