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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-164151(P2021-164151A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】集音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20210913BHJP
   H04R 5/027 20060101ALI20210913BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20210913BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20210913BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R5/027 Z
   H04R1/10 104Z
   H04R1/10 104E
   H04R1/40 320Z
   H04R25/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-213639(P2020-213639)
(22)【出願日】2020年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2020-59982(P2020-59982)
(32)【優先日】2020年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515009066
【氏名又は名称】プレシードジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】土山 裕和
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 顕悟
【テーマコード(参考)】
5D005
5D011
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BA13
5D005BA14
5D005BB07
5D011AB00
5D220BA06
5D220BB03
5D220BC02
5D220BC05
5D220DD03
(57)【要約】
【課題】使用者が周囲の環境に左右されずに会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる集音装置を提供すること。
【解決手段】集音装置は、使用者の耳に装着される本体部と、前記本体部に設けられ、使用者の耳の付近で集音した音声を音声信号として取得する音声取得部21と、言語の可聴帯域となる指定周波数帯域を指定周波数帯域情報として記憶する記憶部28と、前記音声取得部で取得された音声信号のうち、特定の周波数帯域を通過する音声信号を選択音声信号として抽出する信号処理部26と、前記本体部に設けられ、音声信号を音声として使用者の耳に出力する音声出力部22と、制御部29と、を備え、制御部29は、信号処理部26において、記憶部28に記憶されている指定周波数帯域情報に基づいて、音声取得部21で取得された前記音声信号から選択音声信号を抽出させ、抽出した前記選択音声信号に対応する音声を音声出力部22から出力させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳の付近で集音した音声を加工して、使用者の耳に出力する集音装置であって、
使用者の耳に装着される本体部と、
前記本体部に設けられ、使用者の耳の付近で集音した音声を音声信号として取得する音声取得部と、
言語の可聴帯域となる指定周波数帯域を指定周波数帯域情報として記憶する記憶部と、
前記音声取得部で取得された音声信号のうち、特定の周波数帯域を通過する音声信号を選択音声信号として抽出する信号処理部と、
前記本体部に設けられ、音声信号を音声として使用者の耳に出力する音声出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記信号処理部において、前記記憶部に記憶されている指定周波数帯域情報に基づいて、前記音声取得部で取得された前記音声信号から選択音声信号を抽出させ、抽出した前記選択音声信号に対応する音声を前記音声出力部から出力させる、集音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集音装置において、
前記音声取得部は、単一指向性のマイクロフォンであり、
使用者が前記本体部を装着した場合に、集音口が使用者から見て前方へ向くように配置されている、集音装置。
【請求項3】
請求項1に記載の集音装置において、
前記音声取得部は、複数のマイクロフォンからなり、
前記信号処理部は、複数の前記マイクロフォンで取得された音声信号をビームフォーミング処理して、特定の周波数帯域の選択音声信号として抽出する、集音装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の集音装置において、
前記音声出力部は、使用者の耳に装着可能な形状であって、耳穴の全部を密閉するように装着される密閉型の形状又は耳穴の全部を塞がない開放型の形状を有する集音装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の集音装置において、
前記記憶部に記憶された前記指定周波数帯域情報を変更するための操作情報を取得する操作情報取得部を備える、集音装置。
【請求項6】
請求項5に記載の集音装置において、
前記記憶部は、複数の異なる可聴帯域をそれぞれ指定周波数帯域情報として記憶しており、
前記制御部は、前記操作情報取得部で取得された前記操作情報に基づいて、前記記憶部に記憶されている複数の指定周波数帯域の中から特定の指定周波数帯域情報を選択し、前記信号処理部において、選択した前記指定周波数帯域情報に基づいて、選択音声信号を抽出させる、集音装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の集音装置において、
前記操作情報取得部と前記制御部との間で無線によりデータを送受信可能な通信部を備える、集音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の聴力の低下を補うための器具として、集音器、補聴器等が用いられている。これらの器具は、人の耳に装着され、周囲の音を集音して増幅等の処理を施し、使用者の耳に出力する機能を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集音器、補聴器等を装着した使用者が会話する場合、周囲が騒がしいと、使用者が会話相手の音声を聞き取りにくいことがある。一般的な集音器、補聴器等は、出力音の調整が簡単には出来ないため、周囲が騒がしい場合、使用者は会話相手と共に別の場所に移動する必要がある。また、出力音を調整により大きくしたとしても、周囲の騒がしい音も同時に大きくなるため、使用者が会話相手の音声を鮮明に聞き取ることが難しいことに変わりはない。
【0005】
本発明の目的は、使用者が周囲の環境に左右されずに会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる集音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用者の耳の付近で集音した音声を加工して、使用者の耳に出力する集音装置であって、使用者の耳に装着される本体部と、前記本体部に設けられ、使用者の耳の付近で集音した音声を音声信号として取得する音声取得部と、言語の可聴帯域となる指定周波数帯域を指定周波数帯域情報として記憶する記憶部と、前記音声取得部で取得された音声信号のうち、特定の周波数帯域を通過する音声信号を選択音声信号として抽出する信号処理部と、前記本体部に設けられ、音声信号を音声として使用者の耳に出力する音声出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記信号処理部において、前記記憶部に記憶されている指定周波数帯域情報に基づいて、前記音声取得部で取得された前記音声信号から選択音声信号を抽出させ、抽出した前記選択音声信号に対応する音声を前記音声出力部から出力させる集音装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る集音装置によれば、使用者が周囲の環境に左右されずに会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における集音装置1の全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態におけるイヤホンセット2の斜視図である。
図3】イヤホンセット2の装着状態の一例を示す図である。
図4】イヤホン10の機能的な構成を示すブロック図である。
図5】携帯端末3の機能的な構成を示すブロック図である。
図6】携帯端末3のタッチパネル33の表示例を示す概念図である。
図7】実施形態の集音装置1で実行される指定周波数帯域情報の取得処理を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態におけるイヤホンセット2の斜視図である。
図9】第2実施形態の信号処理部26におけるビームフォーミング処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る集音装置の実施形態について説明する。
本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。
本明細書等においては、使用者が集音装置1の本体部を耳に装着した状態において、使用者を正面から見たときの左右方向をX方向、前後方向をY方向とする。左右方向(X方向)においては、図1の右方向をX1方向、左方向をX2方向とする。前後方向(Y方向)においては、図3の前方向をY1方向、後方向をY2方向とする。また、本明細書においては、「〜方向」を適宜に「〜側」ともいう。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における集音装置1の全体構成を示す図である。図2は、第1実施形態におけるイヤホンセット2の斜視図である。図3は、イヤホンセット2の装着状態の一例示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の集音装置1は、イヤホンセット2と、携帯端末3と、を備えている。
(イヤホンセット2)
イヤホンセット2は、イヤホン10R及び10Lにより構成されている。本実施形態のイヤホンセット2は、左右分離型のステレオワイヤレスイヤホンである。すなわち、イヤホンセット2は、イヤホン10R及び10Lが物理的に分離している。図1に示すように、イヤホン10Rは、使用者Aの右耳に装着される。イヤホン10Lは、使用者Aの左耳に装着される。イヤホン10R及び10Lは、左右対称に構成されており、機能的には実質的に同一である。そのため、実施形態では、イヤホン10R及び10Lを、適宜に「イヤホン10」ともいう。
【0011】
図2に示すように、イヤホン10は、本体部となるハウジング20の外側に、マイク21、スピーカー22、第1操作ボタン23A及び第2操作ボタン23Bが配置されている。
ハウジング20は、イヤホン10を構成する各部(後述)が実装される筐体である。ハウジング20は、例えば、プラスチック等の樹脂材料により構成される。図2は、ハウジング20の形状の一例を示したものである。ハウジング20の形状は、図示の例に限定されない。なお、本明細書では、スピーカー22が使用者の耳穴に挿入されることにより、ハウジング20が耳に保持された状態を、使用者の耳にマイク21が装着された状態として説明する。
【0012】
マイク(音声取得部)21は、集音した音声を音声信号として取得する部品である。マイク21により集音される音声は、主に使用者が会話している相手の音声である。マイク21により集音された音声は、音声信号に変換された後、信号処理部26(後述の図4参照)に送信される。マイク21は、第2操作ボタン23B(後述)を操作することにより機能(集音)のオン/オフを切り替えることができる。なお、使用者は、周波数選択機能(後述)をオフにした場合、マイク21の機能をオンに設定することにより、マイク21で集音された外部の音声をそのまま聞くことができる。
【0013】
本実施形態のマイク21は、単一指向性のマイクロフォンにより構成されている。単一指向性のマイクロフォンは、正面方向から来る音声を捉えやすい特性を備えている。マイク21は、図2に示すように、イヤホン10の前側(Y1側)に集音口21aが向くように配置されている。これにより、図3に示すように、使用者Aがイヤホン10を耳に装着すると、マイク21の集音口21aが使用者Aから見て前方、すなわち会話相手Bの方を向くことになる。そのため、単一指向性を有するマイク21において、主に会話相手Bの発する音声が集音される。なお、マイク21は、主に会話相手Bの発する音声を集音するが、これ以外の音声がすべて集音されないわけではなく、例えば、使用者の発する音声や使用者の周囲で発生する音声の一部も集音する。
【0014】
スピーカー(音声出力部)22は、音声を使用者の耳に出力する部品である。信号処理部26(後述の図4参照)で抽出された特定の周波数帯域の音声信号は、スピーカー22で音声に変換されることにより、外部に出力される。また、携帯端末3(後述)からイヤホンセット2に音楽データが転送された場合、2つのスピーカー22からは、音楽がステレオサウンドで出力される。スピーカー22は、使用者Aの耳に装着された場合に、図2に示すように、イヤホン10R及び10Lの出音口22aがX方向において互いに対向するように配置されている。本実施形態のスピーカー22は、使用者の耳穴に装着可能な形状であって、耳穴の全部を密閉するように装着される密閉型の形状又は耳穴の全部を密閉しない開放型の形状を有する。
【0015】
第1操作ボタン23Aは、イヤホン10及び携帯端末3の各種動作を設定可能なマルチファンクションボタンである。第1操作ボタン23Aを1又は複数回押すことにより、その回数に割り当てられた動作を実行させることができる。例えば、使用者が第1操作ボタン23Aを1回押すと電源オンとなり、2回目の押し操作を行うと電源オフとなる。この他、第1操作ボタン23Aを操作することにより、例えば、周波数選択機能のオン/オフ、音量調節、楽曲の早送り、早戻し、スキップ、一時停止、頭出し等を行うことができる。
【0016】
第1操作ボタン23Aは、イヤホン10R及び10Lの両方に設けられているため、例えば、左右でそれぞれ独立して音量を調節することができる。これにより、使用者の聴力が弱い場合、左右の耳で聴力に差がある場合等において、より適切な音量で音声を出力させることができる。なお、第1操作ボタン23Aは、イヤホン10R又は10Lのいずれか一方にのみ設けられていてもよい。その場合、一方のイヤホン10の第1操作ボタン23Aに対して行われた操作に関する信号が他方のイヤホン10にも転送される。
【0017】
第2操作ボタン23Bは、マイク21の機能(集音)をオン/オフするためのボタンである。第2操作ボタン23Bを1回押すとマイク21の機能がオンし、2回目の押し操作を行うとマイク21の機能がオフする。
第2操作ボタン23Bは、イヤホン10R及び10Lの両方に設けられているため、左右でそれぞれ独立してマイク21の機能をオン/オフすることができる。また、左右に設けた第2操作ボタン23Bにおいて、その機能を異ならせることもできる。例えば、音楽を聴きながらイヤホン10R側の第2操作ボタン23Bをオンすると、音楽の再生が停止して、マイク21で集音した外部の音声を聞き取るモードとすることができる。その場合、第1操作ボタン23Aで周波数選択機能をオンしていれば、使用者は、周囲の環境に左右されずに会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる。また、第1操作ボタン23Aで周波数選択機能をオフしていれば、使用者は、マイク21で集音された会話相手の音声だけでなく、外部のさまざまな音を同時に聞き取ることができる。なお、イヤホン10R側の第2操作ボタン23Bをオンすると、そのオン信号がイヤホン10Lに転送されるため、イヤホン10Lにも上記と同じ機能が設定される。
【0018】
また、音楽を聴きながらイヤホン10L側の第2操作ボタン23Bをオンすると、音楽の音量が小さくなり、マイク21で集音した外部の音声を聞き取るモードとすることができる。これによれば、使用者は、音楽を小音量で聴きながら、外部の音声を聞き取ることができる。この場合も、第1操作ボタン23Aで周波数選択機能をオンしていれば、使用者は、音楽を小音量で聞きながら、会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる。
【0019】
また、第1操作ボタン23Aで周波数選択機能をオフしていれば、使用者は、音楽を小音量で聞きながら、マイク21で集音された会話相手の音声だけでなく、外部のさまざまな音を同時に聞き取ることができる。イヤホン10L側の第2操作ボタン23Bをオンしたときの音楽の音量は、一定の値に設定することもできるし、外部の音声に対して相対的に同じ音圧分だけ低くするように設定することもできる。なお、イヤホン10L側の第2操作ボタン23Bをオンすると、そのオン信号がイヤホン10Rに転送されるため、イヤホン10Rにも上記と同じ機能が設定される。
【0020】
なお、第2操作ボタン23Bをオンしたときの機能を統一した場合、第2操作ボタン23Bを、イヤホン10R及び10Lのいずれか一方のみに設ける構成としてもよい。
また、イヤホン10R及び10Lのそれぞれの第2操作ボタン23Bをオンしたときの機能は、イヤホン10R及び10Lにおいて、それぞれ独立して設定されるようにしてもよい。
【0021】
第2操作ボタン23Bをオンしたときの機能を、イヤホン10R及び10Lにおいて、それぞれ独立して設定できるようにした場合、使用者がイヤホン10R及び10Lのそれぞれの第2操作ボタン23Bをオンすると、例えば、イヤホン10Rでは、音楽の再生が停止して、マイク21で集音した外部の音声を聞き取ることができる。また、イヤホン10Lでは、音楽を小音量で聴きながら、外部の音声を聞き取ることができる。その際に、第1操作ボタン23Aで周波数選択機能をオン又はオフすることにより、使用者は、イヤホン10R及び10Lにおいて、それぞれ異なる条件で音楽、外部の音、会話相手の音声を聞くことができる。
【0022】
図4は、イヤホン10の機能的な構成を示すブロック図である。図4に示すように、イヤホン10は、上述したマイク21、スピーカー22、操作ボタン23の他、アンテナ24、通信部25、信号処理部26、電源部27、記憶部28及び制御部29を備えている。
アンテナ24は、携帯端末3(後述)との間で無線によりデータを送受信する部品である。
通信部25は、アンテナ24を介して携帯端末3との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部25と携帯端末3との間は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線通信によりデータが送受信される。本実施形態では、データをBluetoothの規格に準じた通信インターフェースにより送受信する例について説明するが、どのような近距離無線通信を適用してもよい。
【0023】
信号処理部26は、マイク21で取得された音声信号のうち、特定の周波数帯域に含まれる音声信号を選択音声信号として抽出するバンドパスフィルタである。本実施形態の信号処理部26は、周波数帯域を任意に設定可能な可変式のバンドパスフィルタとして構成されている。信号処理部26で設定可能な周波数帯域は、人間の可聴帯域を20〜20000Hzとすると、例えば、200〜15000Hzである。信号処理部26では、携帯端末3から送信される指定周波数帯域情報(後述)に基づいて、音声信号を通過させる周波数帯域が設定される。
【0024】
電源部27は、イヤホン10を構成する各部に電力を供給するバッテリー(不図示)が収納される部分である。電源部27は、例えば、充電式の電池により構成される。充電式の電池を用いた場合は、ハウジング20に設けられた端子(不図示、例えばUSB端子)を介して外部のバッテリーチャージャー(チャージングケース)から給電することができる。なお、電源部27は、例えば、コイン型の電池により構成されてもよい。
【0025】
記憶部28は、制御部29(後述)で実行される各種のプログラム、データ等が記憶される記憶装置であり、例えば、半導体メモリにより構成される。記憶部28には、使用者に選択された言語の可聴帯域となる指定周波数帯域が、指定周波数帯域情報として1又は複数記憶される。指定周波数帯域情報は、例えば、日本語であれば250〜3000Hzの数値情報であり、英語(アメリカ英語)であれば2000〜12000Hzの数値情報である。使用者が携帯端末3(後述)を操作して所望の言語を選択すると、選択された言語の可聴帯域となる指定周波数帯域が指定周波数帯域情報としてイヤホン10に送信される。なお、選択可能な言語は、上記例に限らず、例えば、中国語、スペイン語等であってもよいし、更に他の言語が含まれていてもよい。以下の説明においては、選択された言語の可聴帯域となる指定周波数帯域を「選択された言語の指定周波数帯域」、選択された言語の可聴帯域となる指定周波数帯域の指定周波数帯域情報を「選択された言語の指定周波数帯域情報」ともいう。
【0026】
制御部29は、イヤホン10の動作を統括的に制御するMPU(マイクロプロセッサユニット)である。制御部29は、記憶部28に記憶されているオペレーションシステム、アプリケーションプログラムを読み出して実行することにより、各ハードウェアと協働して、後述する各種の機能を実現する。
【0027】
制御部29は、信号処理部26において、記憶部28に記憶された指定周波数帯域情報に基づいて、マイク21から取得された音声信号から選択音声信号を抽出させる。そして、制御部29は、信号処理部26で抽出された選択音声信号に対応する音声を、スピーカー22から出力させる。選択音声信号とは、マイク21から取得された音声信号のうち、信号処理部26において指定周波数帯域を通過した音声信号である。例えば、集音する言語として日本語が選択された場合、信号処理部26において、指定周波数帯域250〜3000Hzで抽出された音声信号が選択音声信号となる。選択音声信号は、主に選択された言語の音声信号により構成されるため、集音装置1の使用者は、会話相手が日本人であれば、その音声をより鮮明に聞き取ることができる。なお、信号処理部26においては、指定周波数帯域以外の周波数帯域の音声信号がすべて除去されるわけではなく、指定周波数帯域以外の周波数帯域の音声信号を、実質的に除去されたと見做せる程度まで減衰させている。
また、制御部29は、携帯端末3との間におけるデータの送受信等の動作を実行する。
【0028】
(携帯端末3)
携帯端末3は、集音装置1の使用者Aが保持する通信端末装置であり、例えば、音楽再生機能を備えたスマートフォン、タブレット端末等である。すなわち、携帯端末3は、使用者が携帯可能なコンピュータである。なお、本実施形態では、携帯端末3をスマートフォンとして説明するが、携帯端末3は、スマートフォン等に限らず、集音装置1の機能に特化した専用の機器であってもよいし、ICレコーダー、音楽プレーヤー等であってもよい。
【0029】
図5は、携帯端末3の機能的な構成を示すブロック図である。図6は、携帯端末3のタッチパネル33の表示例を示す概念図である。なお、図5では、携帯端末3において、本実施形態の説明に必要な構成のみを図示している。そのため、マイク、スピーカー、操作スイッチ、電源部等のほか、音楽再生、インターネット接続、メール送信、通話等の機能を実現するための構成については図示を省略している。
【0030】
図5に示すように、携帯端末3は、アンテナ31、通信部32、タッチパネル(操作情報取得部)33、記憶部34及び制御部35を備えている。
アンテナ31は、イヤホン10との間で無線によりデータを送受信する部品である。
通信部32は、アンテナ31を介してイヤホン10との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部32とイヤホン10との間は、前述したイヤホン10と同じ規格の近距離無線通信によりデータが送受信される。なお、図示していないが、携帯端末3は、通信ネットワーク及び中継装置を介して、外部のサーバ等との間でデータを送受信する通信インターフェースとしての通信部を備えている。
【0031】
タッチパネル33(図6参照)は、液晶パネル等の表示デバイスで構成される表示部と、タッチスクリーン等の操作検出デバイスで構成される入力部と、を備えている(いずれも不図示)。使用者は、タッチパネル33の指等で触れてジェスチャーを行うことにより、制御部35(後述)に対してデータの入力、動作の指示等を行うことができる。
【0032】
使用者は、携帯端末3にインストールされた周波数選択機能のアプリケーションプログラムを起動することにより、図6に示すような言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2をタッチパネル33に表示させることができる。使用者は、言語の選択画面A1の領域を指等でタッチして、プルダウンメニュー33aを表示させることにより、主に集音したい言語を選択することができる。なお、図6では、選択可能な複数の言語として、日本語と英語を例示しているが、上述したように、選択可能な言語は更に複数設定されていてもよい。すなわち、本実施形態の集音装置1は、複数の言語の中から、主に集音したい言語を選択することができる。
【0033】
例えば、使用者Aが、日本人の会話相手の音声をより鮮明に聞き取りたい場合には、プルダウンメニュー33aの中から「日本語」のメニューを指等でタッチするジェスチャーを行うことにより、主に集音したい言語として日本語を選択することができる。言語の選択画面A1において、「日本語」を選択することにより、指定周波数帯域情報として、日本語の周波数帯域250〜3000Hzの数値情報が記憶部34の揮発性メモリ領域に一時的に記憶される。なお、使用者が言語の選択を行わない場合、すなわち、使用者が周波数選択機能のアプリケーションプログラムを起動しない場合、マイク21で集音可能なすべての周波数帯域の音声が集音され、スピーカー22から出力される。
【0034】
また、使用者は、周波数帯域の調整画面A2に表示された帯域調整バー33cを指等でタッチして、所望の周波数帯域に移動させるジェスチャーを行うことにより、選択した言語の指定周波数帯域を調整することができる。図6に示すように、言語の選択画面A1で選択した言語の可聴帯域は、周波数帯域の調整画面A2において、帯域スケール33bに沿って、帯域調整バー33cで表示される。使用者は、指定周波数帯域を調整したい場合、帯域調整バー33cの中央部分を指等でタッチして、例えば、周波数の高い広域側に移動させるジェスチャーを行うことにより、指定周波数帯域を変更することができる。使用者により指定周波数帯域が変更されると、記憶部28の揮発性メモリ領域に記憶されている指定周波数帯域情報も更新される。
【0035】
なお、図6に示す帯域調整バー33cにおいて、中央部分はカットオフ周波数(中心周波数)、低域側の端部は指定周波数帯域の下限値、高域側の端部は指定周波数帯域の上限値をそれぞれ示している。そのため、使用者は、帯域調整バー33cの中央部分をタッチして移動させることにより、指定周波数帯域の下限値と上限値を含む範囲を同時に変更することができる。
【0036】
本明細書においては、使用者が調整した指定周波数帯域に関する情報を「周波数帯域変更情報」ともいう。周波数帯域変更情報は、例えば、変更されたカットオフ周波数であってもよいし、基準となる位置から低域側又は高域側に移動した量をプラスマイナスの数値で表してもよい。例えば、基準となる位置から低域側に移動した場合は、その移動量をマイナスの周波数値で表し、高域側に移動した場合は、その移動量をプラスの周波数値で表してもよい。使用者が日本語の可聴帯域となる指定周波数帯域(250〜3000Hz)を−100Hzに調整した場合、信号処理部26に設定される指定周波数帯域は、150〜2900Hzとなる。この場合、「−100Hz」が周波数帯域変更情報となる。また、指定周波数帯域の下限値及び上限値を、それぞれ個別に調整できるようにしてもよい。
【0037】
使用者が、上述した言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2を介して指定周波数帯域を設定すると、制御部35は、記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶されている指定周波数帯域情報を読み出し、通信部32及びアンテナ31を介してイヤホン10に送信する。イヤホン10の制御部29は、携帯端末3から受信した指定周波数帯域情報を記憶部28に記憶させる。制御部29は、記憶部28に既に指定周波数帯域情報が記憶されている場合には、最新の指定周波数帯域情報で上書き保存する。イヤホン10の信号処理部26において、マイク21から取得された音声信号から選択音声信号を抽出する処理は、記憶部28に記憶された指定周波数帯域情報に基づいて行われる。
【0038】
記憶部34は、制御部35(後述)で実行される各種のプログラム、データ等が記憶される記憶装置であり、例えば、半導体メモリにより構成される。記憶部34の不揮発性メモリ領域には、使用者により選択される言語と、その言語の可聴帯域となる指定周波数帯域情報とが対応付けられて記憶されている。例えば、「日本語」という言語の情報には、その可聴帯域となる周波数帯域250〜3000Hzという数値情報(指定周波数帯域情報)が対応付けられて記憶されている。他の言語についても同様である。
【0039】
また、記憶部34の揮発性メモリ領域には、使用者により選択された言語の指定周波数帯域情報が作業用のデータとして一時的に記憶される。記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶される指定周波数帯域情報は、使用者が携帯端末3(タッチパネル33)の言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2を介して指定周波数帯域を変更することにより更新される。なお、使用者が周波数帯域の調整画面A2を介して調整した指定周波数帯域の情報を、新たな指定周波数帯域情報として記憶部34の不揮発性メモリ領域に記憶するようにしてもよい。
【0040】
制御部35は、携帯端末3の動作を統括的に制御するMPU(マイクロプロセッサユニット)である。制御部35は、記憶部34に記憶されているオペレーションシステム、アプリケーションプログラムを読み出して実行することにより、各ハードウェアと協働して、各種の機能を実現する。
制御部35は、使用者が周波数選択機能のアプリケーションプログラムを起動して、携帯端末3(タッチパネル33)の言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2を介して指定周波数帯域を設定すると、設定された指定周波数帯域に対応する指定周波数帯域情報を、通信部32及びアンテナ31を介してイヤホン10に送信する。制御部35は、記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶されている指定周波数帯域情報が更新されると、新たな指定周波数帯域情報をイヤホン10に送信する。
【0041】
図7は、実施形態の集音装置1で実行される指定周波数帯域情報の取得処理を示すフローチャートである。
図7に示すステップS101において、携帯端末3の制御部35は、使用者がタッチパネル33の表示画面に対して所定の操作(例えば、アイコンの選択)を行い、周波数選択機能のアプリケーションプログラムが実行されることにより、タッチパネル33に言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2を表示させる(図6参照)。
【0042】
ステップS102において、携帯端末3の制御部35は、使用者が言語の選択画面A1を介して選択した言語の可聴帯域となる指定周波数帯域と、使用者が周波数帯域の調整画面A2を介して調整した周波数帯域の情報(周波数帯域変更情報)を、それぞれ記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶させる。なお、使用者が周波数帯域の調整をしなかった場合には、使用者が選択した言語の可聴帯域となる指定周波数帯域情報のみが記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶される。
【0043】
ステップS103において、携帯端末3の制御部35は、記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶されている指定周波数帯域情報及び周波数帯域変更情報を読み出し、周波数帯域変更情報により調整した指定周波数帯域情報を、通信部32及びアンテナ31を介してイヤホン10Rに送信する。なお、周波数帯域変更情報が記憶されていない場合、すなわち使用者が周波数帯域を調整しなかった場合、制御部35は、記憶部34の揮発性メモリ領域に記憶されている指定周波数帯域情報をそのままイヤホン10Rに送信する。
【0044】
なお、本実施形態では、携帯端末3からイヤホン10Rにデータを送信する例について説明するが、携帯端末3からデータを送信する相手先は、イヤホン10Lでもよい。その場合、イヤホン10Lからイヤホン10Rにデータが送信される。携帯端末3からイヤホン10Rへ送信したデータを更にイヤホン10Lに送信する形態は、携帯端末3からイヤホン10へ音楽データを送信する場合も同じである。なお、Bluetoothの代わりに、例えば、Wi−Fiの規格に準じた通信インターフェースを用いた場合、データ(音楽データを含む)をイヤホン10Rと10Lに同時に送信することができる。
【0045】
ステップS201において、イヤホン10Rの制御部29は、携帯端末3から受信した指定周波数帯域情報を記憶部28に記憶させる。
ステップ202において、イヤホン10Rの制御部29は、記憶部28に記憶されている指定周波数帯域情報を読み出し、通信部25及びアンテナ31を介して、イヤホン10Lに送信(転送)する。
ステップS301において、イヤホン10Lの制御部29は、イヤホン10Rから受信した指定周波数帯域情報を記憶部28に記憶させる。
【0046】
上述したように、指定周波数帯域情報の取得処理においては、携帯端末3で取得されたデータがイヤホン10Rに送信され、イヤホン10Rから反対側のイヤホン10Lに転送される。これにより、一対のイヤホン10R、10Lのそれぞれの記憶部28に同じ指定周波数帯域情報が記憶される。集音装置1において指定周波数帯域情報の取得処理が終了すると、イヤホン10R、10Lのそれぞれの信号処理部26においては、記憶部28に記憶されている指定周波数帯域情報に基づいて、音声信号を通過させる周波数帯域が設定される。
【0047】
この後、図3に示すように、使用者Aがイヤホンセット2を耳に装着して会話相手Bと会話を行うと、イヤホン10R、10Lのマイク21には、主に会話相手Bの発する音声が集音される。マイク21で集音された音声は、イヤホン10R、10Lのそれぞれの信号処理部26において、設定された周波数帯域(例えば、日本語の250〜3000Hz)に含まれる音声信号が選択音声信号として抽出され、それ以外の音声信号が除去される。信号処理部26で抽出された選択音声信号は、スピーカー22で音声に変換され、使用者の耳に出力される。
【0048】
本実施形態の集音装置1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
集音装置1のイヤホン10は、信号処理部26において、選択された言語の可聴帯域となる周波数帯域が設定される。選択された言語が、例えば日本語であれば、マイク21で集音された音声のうち、日本語の周波数帯域250〜3000Hzに含まれる音声信号が選択音声信号として抽出され、それ以外の周波数帯域の音声(例えば、周囲の雑音、その他の言語の音声等)はほぼ除去される。したがって、集音装置1の使用者は、周囲が騒がしい状況下においても、会話相手の音声をより鮮明に聞き取ることができる。
【0049】
集音装置1において、使用者は、複数の言語の中から、主に集音したい言語を選択することができる。そのため、使用者は、会話相手の話す言語に適した周波数帯域を設定することができる。
【0050】
イヤホン10のマイク(音声取得部)21は、単一指向性のマイクロフォンにより構成され、使用者が耳にハウジング(本体部)20を装着した場合に、集音口21aが使用者から見て前方へ向くように配置されている。そのため、イヤホン10は、会話相手の音声をより効率良く集音することができる。
【0051】
イヤホン10のスピーカー(音声出力部)22は、使用者の耳を密閉するように装着される密閉型の形状を有する。これによれば、周囲の雑音等が耳に入りにくくなるため、使用者は、会話相手の音声を、より集中して聞くことができる。また、イヤホン10R及び10Lは、ステレオワイヤレスイヤホンとして構成されている。そのため、使用者は、イヤホン10R及び10Lのそれぞれのスピーカー22からステレオサウンドで音楽のみを聴くこともできるし、ステレオサウンドで音楽を聴きながら外部の音を聞いたり、会話相手の音声を聞いたりすることができる。
【0052】
集音装置1の携帯端末3は、指定周波数帯域情報を変更するための操作情報を取得するタッチパネル(操作情報取得部)33を備えている。そのため、使用者は、指定周波数帯域情報を簡単に変更することができる。本実施形態では、タッチパネル33に言語の選択画面A1及び周波数帯域の調整画面A2を表示させるため、使用者は、主に集音したい言語の指定周波数帯域を選択したり、選択した言語の指定周波数帯域を変更したりする操作を簡単且つ速やかに行うことができる。
【0053】
集音装置1において、イヤホン10R、10L(イヤホンセット2)及び携帯端末3は、無線によりデータを送受信する通信部(25、32)をそれぞれ備えている。そのため、使用者は、イヤホンセット2と携帯端末3との間をケーブル等で接続することなしにデータの送受信が可能となる。これによれば、例えば、集音装置1におけるデータの送受信をBluetoothの規格で行うようにした場合、携帯端末3としてBluetoothの規格に対応したスマートフォンを選択することにより、イヤホンセット2との間で簡単にデータの送受信を行うことができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る集音装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、イヤホンセット2のイヤホン10(10R、10L)が、無指向性のマイクロフォンを備える点が第1実施形態と相違する。第2実施形態において、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態では、集音装置1の構成に関する説明を省略する。第2実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の構成には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0055】
図8は、第2実施形態におけるイヤホンセット2の斜視図である。図9は、第2実施形態の信号処理部26におけるビームフォーミング処理を説明する図である。図9では、音声信号の波形を、信号線上に模式的に示している。
図8に示すように、第2実施形態のイヤホンセット2において、イヤホン10R及び10Lのマイク21は、それぞれ第1マイク211と第2マイク212とを備えている。第1マイク211及び第2マイク212は、無指向性のマイクロフォンにより構成されている。無指向性のマイクロフォンは、全方向からの音声を捉える特性を備えている。イヤホン10Rのマイク21において、第1マイク211と第2マイク212は、距離d1の間隔で配置されている。イヤホン10Lのマイク21において、第1マイク211と第2マイク212は、距離d2の間隔で配置されている。距離d1とd2は、d1=d2であってもよいし、d1≠d2でもよい。2つのマイクロフォンで取得された音声信号を、特定の方向から到達した音声の音声信号に変換するビームフォーミング処理は、イヤホン10R及び10Lにおいてそれぞれ実施されるからである。なお、図8に示す第1マイク211と第2マイク212の配置は一例であり、図8に示す配置に限定されない。すなわち、それぞれのマイク21において、第1マイク211と第2マイク212は、どのように配置されていてもよい。
【0056】
第2実施形態において、イヤホン10の機能的な構成を示すブロック図は、第1実施形態の図4と実質的に同じであるため、図示を省略する。第2実施形態の信号処理部26では、まず2つのマイクロフォンで取得された音声信号を、ビームフォーミング処理により、特定の方向から到達した音声の音声信号に変換し、次に、変換した音声信号のうち、特定の周波数帯域に含まれる音声信号を選択音声信号として抽出するバンドパスフィルタ処理を実施する。
【0057】
図9に示すように、マイク21おいて、第1マイク211と第2マイク212は、距離dだけ離れた位置に設けられている。距離dは、上述した距離d1又はd2に相当する。図9に示すように、第2実施形態の信号処理部26は、第1遅延処理部261、第2遅延処理部262及び加算器263を備えている。第1遅延処理部261及び第2遅延処理部262(以下、総称して「遅延処理部」ともいう)は、音声信号の位相差を補正する回路である。遅延処理部は、入力する音声信号の位相の遅延量を設定することができる。第1遅延処理部261は、第1マイク211の出力側に接続されている。第2遅延処理部262は、第2マイク212の出力側に接続されている。加算器263は、各遅延処理部から出力された音声信号を加算して出力する回路である。第2実施形態の信号処理部26は、後述のビームフォーミング処理により、第1マイク211及び第2マイク212で取得された音声信号の位相を補正して、特定の方向(θ方向)から到達した音声の音声信号に変換する機能を備えている。
【0058】
図9に示すように、音源(不図示)から発せられ、θ方向から到達した音声Vは、第1マイク211及び第2マイク212で集音される。第2マイク212は、第1マイク211に対して距離dだけ離れているため、第1マイク211と第2マイク212から出力されるそれぞれの音声信号間の時間差τは、τ=dsinθ/c(c:音速)で表される。そこで、第1遅延処理部261の遅延量を、第2遅延処理部262の遅延量に対して時間差τ分だけ長くすることにより、第1マイク211からは、第2マイク212から出力される音声信号と位相の揃った音声信号が出力される。そして、位相の揃った2つの音声信号を加算器263で加算することにより、θ方向から到達した音声Vの音声信号を増幅(強調)して出力することができる。
【0059】
なお、図9において、θ方向以外から到達した音声は、遅延処理部で時間差が補正されないため、加算器263において互いに打ち消し合って音声信号が小さくなるか、遅延処理部で時間差が補正されたとしても、θ方向から到達した音声Vの音声信号ほど強調されることはない。このように、第2実施形態のイヤホンセット2では、音源が存在する特定の方向から到達する音声の指向性を高めることができるため、音源となる会話相手の発する音声を効率良く集音することができる。
【0060】
以上、本発明に係る集音装置の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。以下の説明においては、特に断りのない場合を除いて、第1及び第2実施形態を総称して「実施形態」ともいう。
【0061】
(変形形態)
実施形態のイヤホンセット2を、イヤホン10Rと10Lがケーブルで繋がっている左右一体型のワイヤレスイヤホンとして構成してもよい。
実施形態の集音装置1において、イヤホンセット2と携帯端末3をケーブルで接続する形態としてもよい。その場合、指定周波数帯域情報等のデータは、ケーブルを介して携帯端末3からイヤホンセット2に送信される。
【0062】
実施形態のイヤホン10R及び10Lにおいて、開放型の形状を有するスピーカーを用いてもよい。また、イヤホンセット2を、イヤホン10R又は10Lのいずれか一方のみで構成してもよい。
実施形態のイヤホン10R及び10Lにおいて、マイク21は、いずれか一方に設けられていればよい。また、第1実施形態のイヤホン10R及び10Lにおいて、1つのイヤホン10に、集音口21aの方向が異なる複数のマイク(単一指向性のマイクロフォン)21が設けられていてもよい。本構成において、使用者は、マイク21を切り替えることにより、集音したい方向を適宜に選択することができる。更に、第1実施形態のイヤホン10R及び10Lにおいて、単一指向性のマイクロフォンのほかに、無指向性のマイクロフォンを設け、状況に応じて切り替え可能に構成してもよい。本構成において、無指向性のマイクロフォンに切り替えた場合、出力音には、会話相手の発する音声だけでなく、使用者の周囲で発生する音声も含まれる。そのため、本構成において、無指向性のマイクロフォンへの切り替えは、第2実施形態とは異なり、主に周囲で発生する音声を鮮明に聞き取りたい場合に適している。
【0063】
第2実施形態のイヤホン10R及び10Lでは、それぞれのマイク21を、2つの無指向性のマイクロフォン(第1マイク211及び第2マイク212)で構成する例について説明したが、それぞれのマイク21を、3つ以上の無指向性のマイクロフォンで構成してもよい。その場合、各遅延処理部において、入力する音声信号の位相が揃うように遅延量を設定すればよい。また、第2実施形態に示すビームフォーミング処理は一例であり、他のビームフォーミング処理により音声信号の指向性を高めてもよい。
【0064】
実施形態のイヤホン10R及び10Lにおいて、第2操作ボタン23Bを設けない構成としてもよい。その場合、例えば、第1操作ボタン23A(マルチファンクションボタン)によりマイク21の機能をオン/オフするように構成してもよいし、マイク21の機能が常にオンするように構成してもよい。
【0065】
選択した言語の可聴帯域の調整は、図6の例に限らず、どのような形態で行ってもよい。例えば、タッチパネル33に指定周波数帯域の下限値と上限値を表示する入力枠を表示させ、使用者が各入力枠に所望の数値を直接入力する形態としてもよい。
【0066】
実施形態のイヤホン10R、10Lに、言語(指定周波数帯域情報)の選択、指定周波数帯域の調整(変更)を行うスイッチ、ダイヤル等を設け、言語の選択、指定周波数帯域の調整をイヤホン10で行うようにしてもよい。このように、指定周波数帯域情報を変更するための操作情報を取得する操作情報取得部は、携帯端末3の側に設けられていてもよいし、イヤホン10(10R、10L)の側に設けられていてもよい。例えば、操作情報取得部をイヤホン10(10R、10L)の側に設けた場合、集音装置1において、携帯端末3を省略した形態とすることができる。また、操作情報取得部は、その機能の一部が携帯端末3の側に設けられ、その他がイヤホン10の側に設けられていてもよい。
【0067】
実施形態のイヤホン10において、信号処理部26を、特定の周波数帯域の音声信号のみを通過させる複数のバンドパスフィルタで構成してもよい。すなわち、通過させる周波数帯域が異なる複数のバンドパスフィルタにより信号処理部26を構成し、使用者により言語が選択された場合に、選択された言語の周波数帯域に対応するバンドパスフィルタに切り替えて、目的とする周波数帯域の音声信号のみを抽出するようにしてもよい。
【0068】
実施形態のイヤホン10において、マイク21から集音した使用者又は会話相手の声を解析して、複数設定されている言語の中から、対応する言語を自動選択するように構成してもよい。また、実施形態のイヤホン10において、使用者の音声の周波数帯域を記憶部(28又は34)に記憶させておき、マイク21で集音した音声のうち、使用者の声の周波数帯域と同じ周波数帯域の音声信号を抽出するようにしてもよい。例えば、集音装置1の使用者が日本人であれば、同じ日本人と会話する場合には、言語を選択する操作を行うことなしに会話を開始することができる。
実施形態の集音装置1において、会話相手の話す言語が携帯端末3に設定されていない場合、外部のサーバから該当する言語の周波数帯域に関する情報を取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:集音装置
2:イヤホンセット
3:携帯端末
10,10R,10L:イヤホン
20:ハウジング(本体部)
21:マイク(音声取得部)
21a:集音口
22:スピーカー(音声出力部)
23A:第1操作ボタン
23B:第2操作ボタン
25,32:通信部
26:信号処理部
28,34:記憶部
29,35:制御部
33:タッチパネル
261 第1遅延処理部
262 第2遅延処理部
263 加算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9