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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-164900(P2021-164900A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】散水ろ床装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/04 20060101AFI20210917BHJP
【FI】
   C02F3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-68444(P2020-68444)
(22)【出願日】2020年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
(72)【発明者】
【氏名】亀田 公晴
(72)【発明者】
【氏名】山口 和紀
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB08
4D003DA01
4D003DA03
4D003DA07
4D003DA14
4D003EA02
4D003EA16
4D003EA23
4D003EA34
4D003EA35
4D003EA36
(57)【要約】
【課題】運搬作業性を向上させるとともに、設置工事を容易に行うことが可能な散水ろ床装置を提供する。
【解決手段】散水ろ床装置は、有機物を含有する廃水を貯留する受水槽2と、微生物を担持する担体5に廃水を散布して、該廃水に含まれる有機物を生物処理する少なくとも1つのろ床槽1と、ろ床槽1を着脱自在に固定する架台7と、を備える。ろ床槽1は受水槽2の上方に配置されており、架台7は受水槽2と一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する廃水を貯留する受水槽と、
微生物を担持する担体に前記廃水を散布して、該廃水に含まれる有機物を生物処理する少なくとも1つのろ床槽と、
前記ろ床槽を着脱自在に固定する架台と、を備え、
前記ろ床槽は前記受水槽の上方に配置されており、
前記架台は前記受水槽と一体化されている、散水ろ床装置。
【請求項2】
前記架台は、前記ろ床槽が着脱自在に固定される梁構造体と、該梁構造体に接続される複数の柱を有しており、
前記柱は、前記受水槽の外部に配置されている、請求項1に記載の散水ろ床装置
【請求項3】
前記柱は、前記受水槽の側壁の外側面に接触している、請求項2に記載の散水ろ床装置。
【請求項4】
前記架台は、前記柱の下端が接続される基礎フレームをさらに有している、請求項2または3に記載の散水ろ床装置。
【請求項5】
前記ろ床槽は、前記担体を収容する箱体を有しており、
前記受水槽は、前記箱体を形成する材料よりも高い強度を有する材料から形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の散水ろ床装置。
【請求項6】
前記ろ床槽は、前記担体を収容する箱体を有しており、
前記受水槽は、前記箱体よりも高い強度を有するように、該受水槽の強度を増加させる構造を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の散水ろ床装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水ろ床装置に関し、特に、微生物を担持する担体を収容するろ床槽が受水槽の上方に配置された散水ろ床装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微生物を利用して有機物を含有する廃水(以下、単に「廃水」と称する。)を無曝気で処理する散水ろ床装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。散水ろ床装置は、微生物を担持する担体(「微生物担体」とも称される)に廃水を散布し、該廃水に含まれる有機物を微生物に生物処理させる装置である。散水ろ床装置は、他の処理方法(例えば、標準活性汚泥法)を使用して廃水を処理する装置と比較して、消費電力が低い、設置工事費が低廉である、および維持管理が容易であるなどの利点を有している。
【0003】
このような散水ろ床装置は、一般に、担体を収容するろ床槽と、該ろ床槽内の担体に散布される廃水を貯留する受水槽と、を備えている。ろ床槽は、受水槽とは異なる設置場所に配置されることもあるし、設置現場に運搬する前に受水槽上に予め固定されることもある。ろ床槽が受水槽とは異なる設置場所に配置される散水ろ床装置では、散水ろ床装置の設置面積が増大してしまう。一方で、ろ床槽が受水槽上に予め固定された散水ろ床装置は、限られた設置面積でも散水ろ床装置を設置可能であるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−25782号公報
【特許文献2】特開平9−155372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、設置場所に運搬する前からろ床槽が受水槽上に予め固定された散水ろ床装置は、その鉛直方向の大きさ(すなわち、高さ)、およびその運搬重量が大きくなってしまうため、散水ろ床装置の運搬・搬入作業および設置工事が困難となることがある。この場合、作業員の負担が増加するとともに、設置工事費が増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、運搬作業性を向上させるとともに、設置工事を容易に行うことが可能な散水ろ床装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明者らは、ろ床槽を着脱自在に支持する架台を受水槽と一体化させた散水ろ床装置を開発した。この散水ろ床装置によれば、散水ろ床装置の設置現場に、ろ床槽と受水槽とを別々に運搬できる。したがって、散水ろ床装置の運搬作業性が向上する。
【0008】
さらに、受水槽の設置と同時に、架台の設置も完了する。ろ床槽は、設置が完了した架台に取り付けられる。架台を受水槽と一体化しない場合は、架台の設置工事が必要となる。特に、架台に支持されるろ床槽の重量は、その内部に配置される担体、および該担体上で成長する微生物の量に応じて大きくなる。そのため、架台を受水槽と一体化しない場合は、典型的には、受水槽を水平に設置するための受水槽ベースとは別に、架台を水平に設置するための架台ベースを設置する必要が生じる。この場合、散水ろ床装置の設置工事が比較的大がかりなものとなる。本発明者らが開発した散水ろ床装置によれば、架台が受水槽と一体化されているため、散水ろ床装置の設置工事費を大幅に削減することができる。
【0009】
一態様では、有機物を含有する廃水を貯留する受水槽と、微生物を担持する担体に前記廃水を散布して、該廃水に含まれる有機物を生物処理する少なくとも1つのろ床槽と、前記ろ床槽を着脱自在に固定する架台と、を備え、前記ろ床槽は前記受水槽の上方に配置されており、前記架台は前記受水槽と一体化されている、散水ろ床装置が提供される。
この構成によれば、設置面積が低減化された散水ろ床装置を容易に設置現場まで運搬して、さらに、容易にかつ低コストで設置現場に設置することができる。
【0010】
一態様では、前記架台は、前記ろ床槽が着脱自在に固定される梁構造体と、該梁構造体に接続される複数の柱を有しており、前記柱は、前記受水槽の外部に配置されている。
この構成によれば、廃水によって柱が腐食することが防止され、かつ柱の点検を容易に行うことができる。
【0011】
一態様では、前記柱は、前記受水槽の側壁の外側面に接触している。
この構成によれば、散水ろ床装置の設置面積を低減できる。
【0012】
一態様では、前記架台は、前記柱の下端が接続される基礎フレームをさらに有している。
この構成によれば、ろ床槽を基礎フレームの下面全体で支持することが可能となるので、ろ床槽の安定性(すなわち、散水ろ床装置の安定性)が増加するとともに、散水ろ床装置の耐震性能を向上させることができる。
【0013】
一態様では、前記ろ床槽は、前記担体を収容する箱体を有しており、前記受水槽は、前記箱体を形成する材料よりも高い強度を有する材料から形成されている。
一態様では、前記ろ床槽は、前記担体を収容する箱体を有しており、前記受水槽は、前記箱体よりも高い強度を有するように、該受水槽の強度を増加させる構造を有する。
これらの構成によれば、架台および受水槽によって、ろ床槽を安定して支持することができる。さらに、必要に応じた最適な材料または構造を選択することで、架台および受水槽の製造コスト(すなわち、散水ろ床装置の製造コスト)を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ろ床槽と、架台と一体化された受水槽とを別々に設置現場まで運搬することができる。したがって、散水ろ床装置の運搬作業性を向上させることができる。さらに、受水槽を設置するのと同時に、ろ床槽を支持する架台の設置も完了する。ろ床槽は、受水槽を設置した後で架台に取り付けられる。したがって、散水ろ床装置の設置工事を容易にかつ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る散水ろ床装置を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す散水ろ床装置の架台を説明するための概略斜視図である。
図3図3は、他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。
図4図4は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。
図5図5は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。
図6図6は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。
図7図7は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。
図8図8は、他の実施形態に係る散水ろ床装置を示す模式図である。
図9図9は、図8に示す散水ろ床装置の架台の変形例を説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る散水ろ床装置を示す模式図である。図1に示す散水ろ床装置は、廃水が貯留される受水槽2と、受水槽2の上方に配置されるろ床槽1と、該ろ床槽1を支持する架台7と、受水槽2内に配置されたポンプ10と、を備える。図1に示すように、受水槽2には、廃水を受水槽2に流入させる流入ライン52と、廃水を受水槽2から流出させる流出ライン62とが接続されている。流入ライン52は、原水槽、スクリュープレス、調整槽、およびスクリーン装置などの前段の設備50から受水槽2まで延びている。流出ライン62は、受水槽2から、希釈槽、および沈殿槽などの後段の設備60まで延びている。所定量の廃水が流入ライン52を通って受水槽2に流入し、流入量に応じた量の廃水が受水槽2から流出ライン62を通じて流出される。
【0017】
ろ床槽1は、箱体1aと、箱体1a内に吊り下げられる複数の担体5と、箱体1a内で担体5の上方に設けられた散水管1cと、散水管1cに取り付けられた複数の散水栓3と、を備える。本実施形態では、箱体1aの水平断面は矩形形状を有する。箱体1aは、その上部に着脱自在に固定された蓋1bを有している。
【0018】
散水管1cは、ろ床槽1の側壁(すなわち、箱体1aの側壁)を貫通して延びており、その先端には、接続フランジなどの管継手1dが設けられている。散水管1cは、受水槽2内に設置されたポンプ10の吐出口から延びる供給管12に管継手1dを介して連結される。散水管1cの内部には、廃水の流路が形成されており、該流路は各散水栓3と連通している。ポンプ10を駆動すると、受水槽2内の廃水が供給管12を介して散水管1cに供給され、散水栓3から担体5に向けて散布される。担体5の表面には、廃水に含まれる有機物を生物処理する(分解する)微生物膜が形成される。担体5を通過した廃水は、ろ床槽1の下部から受水槽2に戻される。
【0019】
本実施形態では、各担体5は、箱体1aの内部に鉛直方向に吊り下げられた布状担体である。隣接する担体5の間には、スペーサ(図示せず)が配置されており、該スペーサによって、隣接する担体5の間に廃水の流路が形成される。廃水は担体5の間に形成された流路を流下する間に、担体5の表面に形成された微生物膜と接触し、これにより、廃水中の有機物が生物処理される。
【0020】
図示した例では、担体5は布状担体であるが、有機物を生物処理する微生物が成長可能である限り、担体5の構成は任意である。例えば、担体5は、砕石であってもよいし、プラスチックなどの樹脂からなる球状体であってもよい。
【0021】
受水槽2内の廃水は、流入ライン52から流入して、流出ライン62から流出されるまでの間に、ポンプ10によってろ床槽1の散水栓3から担体5に繰り返し散布される。このような構成で、廃水に含まれる有機物の濃度が低下される。
【0022】
上記した箱体1aの蓋1bをろ床槽1から取り外すと、作業者が散水栓3にアクセス可能となる。例えば、ポンプ10の運転中に、作業者は、蓋1bを取り外して、各散水栓3から散布される廃水の様子を確認することができる。図示はしないが、蓋1bの代わりに、または蓋1bに加えて、散水栓3への作業者のアクセスを許容する扉を、箱体1aの側壁に形成してもよい。
【0023】
図1に示す散水ろ床装置は、1つのろ床槽1を備えるが、散水ろ床装置は、複数のろ床槽1を備えていてもよい。この場合、散水ろ床装置は、複数のろ床槽1に共通に用いられる1つの受水槽2を有していてもよいし、各ろ床槽1に対応する複数の受水槽2を有していてもよい。あるいは、散水ろ床装置は、いくつかのろ床槽1に共通に用いられる受水槽2を複数有していてもよい。図示はしないが、散水ろ床装置が複数の受水槽2を有する場合は、これら受水槽2は、連結管によって直列に、および/または並列に連結される。
【0024】
図2は、図1に示す散水ろ床装置の架台を説明するための概略斜視図である。図2では、ポンプ10、ろ床槽1の散水栓3、担体5、散水管1c、および管継手1dなどの構成要素、およびポンプ10から散水管1cに延びる供給管12の図示を省略している。
【0025】
図1および図2に示すように、ろ床槽1は、架台7に支持されており、架台7は、受水槽2と一体化される。図1および図2に示す架台7は、ろ床槽1が着脱自在に固定される梁構造体7aと、梁構造体7aから下方に延びる複数の(図示した例では、4つの)柱7bと、を備えた構造を有する。本実施形態では、梁構造体7aは、箱体1aの下端部を取り囲むように配置された4つの支持体15,16,17,18を備えている。梁構造体7aの支持体15,16,17,18は、ろ床槽1の箱体1aが載るフレーム構造を形成する。支持体15,16,17,18は、例えば、山形鋼(「Lアングル」とも称される)であってもよいし、溝形鋼(「Cチャネル」とも称される)であってもよい。一実施形態では、梁構造体7aを構成する支持体15,16,17,18は、H形鋼またはI形鋼であってもよい。支持体15,16,17,18は、例えば、ボルトナット機構(図示せず)によって互いに接続されてもよいし、溶接によって互いに接続されてもよい。さらに、支持体15,16,17,18の材料は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
図1および図2に示す実施形態では、4つの支持体のうちの2つの支持体15,16は、互いに平行に、かつ水平方向に受水槽2の外部まで延びている。2つの支持体15,16の間の距離は、ろ床槽1の箱体1aの1つの側壁の長さT1に応じて決定される。残りの支持体17,18は、2つの支持体15,16に垂直な水平方向で互いに平行に延びており、2つの支持体15,16に接続される。残りの支持体17,18の間の距離は、支持体15,16の間の距離を定める箱体1aの側壁に接続される他の側壁の長さT2に応じて決定される。
【0027】
ろ床槽1は、架台7の梁構造体7aに着脱自在に支持される。本実施形態では、ろ床槽1は、梁構造体7aの4つの支持体15,16,17,18によって区画される領域に配置され、さらに、図示しない連結機構で4つの支持体15,16,17,18に固定される。連結機構の構成は、ろ床槽1を着脱自在に架台7の梁構造体7aに固定可能である限り任意である。例えば、連結機構は、ボルトナット機構であってもよいし、クランプ機構であってもよい。
【0028】
本実施形態では、梁構造体7aは4つの支持体15,16,17,18から構成されているが、梁構造体7aでろ床槽1を支持可能である限り、梁構造体7aの構成は任意である。例えば、梁構造体7aは、支持体17,18の間に配置され、支持体15,16に接続される他の支持体をさらに有していてもよい。
【0029】
梁構造体7aの2つの支持体15,16は、受水槽2に連結される。より具体的には、2つの支持体15,16は、受水槽2の対向する側壁2a,2bの上面に連結される。2つの支持体15,16は、受水槽2の側壁2a,2bの上面に溶接されてもよいし、ボルトナット機構などの連結機構(図示せず)で固定されてもよい。このような構成により、架台7が受水槽2と一体化される。
【0030】
架台7は、梁構造体7aに接続される複数の(図示した例では、4つの)柱7bを有している。より具体的には、4つの柱7bが、梁構造体7aの2つの支持体15,16の各端部から下方に延びている。柱7bも、例えば、山形鋼であってもよいし、溝形鋼であってもよい。一実施形態では、柱7bは、H形鋼またはI形鋼であってもよい。各柱7bは、梁構造体7aを構成する支持体15,16,17,18と同一の材料から構成されてもよいし、異なる材料から構成されてもよい。各柱7bは、例えば、ボルトナット機構(図示せず)、または溶接によって支持体15,16に固定される。
【0031】
梁構造体7aに固定された柱7bの下面は、受水槽2の下面と同一面内にある。したがって、図1に示すように、受水槽2を受水槽ベース23(または、地面)に設置したときに、各柱7bの下面も受水槽ベース23(または、地面)に接触する。ろ床槽1の重量の大部分は、架台7の柱7bによって支えられ、ろ床槽1の残りの重量は、架台7の梁構造体7aを介して受水槽2によって支えられる。
【0032】
ろ床槽1の重量を軽減するために、ろ床槽1の箱体1aは、好ましくは、樹脂などの比較的軽量な材料から形成される。これに対し、架台7および受水槽2は、ろ床槽1の重量を支持するために、好ましくは、箱体1aを形成する材料よりも高い強度を有する材料から形成される。例えば、ろ床槽1の箱体1aは樹脂製であるのに対し、架台7および受水槽2の材料は、樹脂よりも高い強度を有する金属から形成される。架台7および受水槽2を形成する金属の例としては、材料のコスト、材料の入手の容易性、および加工の容易性などの観点から鋼鉄が挙げられる。架台7の材料は、受水槽2の材料と異なっていてもよい。
【0033】
一実施形態では、架台7および/または受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aと同一の材料から構成されてもよい。この場合、架台7および/または受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aよりも高い強度を有するように、その強度を増加させる構造を有するのが好ましい。例えば、架台7の支持体15,16,17,18および柱7bの厚さを、ろ床槽1の箱体1aの側壁の厚さよりも大きくしてもよいし、受水槽2の側壁の厚さを、ろ床槽1の箱体1aの側壁の厚さよりも大きくしてもよい。あるいは、受水槽2の側壁の一部または全部が凹凸形状、または波形形状を有するように、受水槽2を構成してもよい。さらに、架台7は、支持体15,16に連結された補強部材(図示せず)、および/または支持体17,18に連結された補強部材(図示せず)を有していてもよいし、隣接する柱7bを連結する補強部材(図示せず)を有していてもよい。一実施形態では、ろ床槽1を支持する架台7を受水槽2の壁面に溶接などで固定して、架台7の支持体15,16,17,18および柱7bを受水槽2の補強部材として兼用させてもよい。この場合、架台7の支持体15,16,17,18および柱7bは、受水槽2の強度を増加させる部材としても機能する。
【0034】
なお、ろ床槽1の重量を支持するのに十分な構造上の強度を担保できる限り、受水槽2および/または架台7の構成および強度、並びにこれらの組み合わせは任意である。例えば、受水槽2がろ床槽1の重量を十分に支持可能であるならば、受水槽2は、上述のように、ろ床槽1の箱体1aの材料と同一の材料から形成されてもよい。さらに、受水槽2がその強度を増加させるための上記構造のいずれかを有していることにより、ろ床槽1の重量を十分に支持可能であれば、受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aの材料よりも低い強度を有する材料から構成されてもよい。さらに、受水槽2がその強度を増加させるための上記構造のいずれかを有している場合に、受水槽2の強度をさらに増加させるために、受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aを形成する材料よりも高い強度を有する材料から形成されてもよい。
【0035】
ろ床槽1の大きさおよび/または重量に応じて、架台7および/または受水槽2の材料または構造を最適なものに選択することで、架台7および/または受水槽2の製造コスト(すなわち、散水ろ床装置の製造コスト)を削減することができる。
【0036】
本実施形態に係る散水ろ床装置によれば、ろ床槽1と、架台7と一体化された受水槽2と、を設置現場まで別々に運搬することができる。したがって、散水ろ床装置の運搬作業性が向上する。散水ろ床装置を設置する際は、最初に、受水槽2を受水槽ベース(または、地面)23に設置する。架台7は、受水槽2と一体化されているので、受水槽2の設置が完了すると同時に、架台7の設置も完了する。架台7の柱7bの下端および受水槽2は、例えば、アンカーボルトなどの定着具によって、受水槽ベース(または、地面)23に固定される。一実施形態では、受水槽2のみを定着具によって受水槽ベース(または、地面)23に固定してもよい。この状態で、ろ床槽1が架台7の梁構造体7a上に搬送され、該梁構造体7aに図示しない連結機構を用いて固定される。このように、本実施形態に係る散水ろ床装置は、受水槽2を設置するだけで、ろ床槽1を支持する架台7の設置も完了する。したがって、散水ろ床装置の設置工事を容易にかつ低コストで行うことができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、架台7の各柱7bの内側面は、受水槽2の側壁2a,2bの外側面に接触している。さらに、架台7の各柱7bの内側面を、溶接などにより受水槽2の側壁2a,2bの外側面に固定してもよい。このような構成によれば、散水ろ床装置の設置面積を低減することができる。なお、各柱7bは、受水槽2の外部に配置されているので、廃水による柱7bの腐食の心配がない。さらに、各柱7bの点検を容易に行うことができる。
【0038】
さらに、この散水ろ床装置によれば、ろ床槽1の交換も容易に行うことができる。具体的には、ろ床槽1を架台7の梁構造体7aに固定する連結機構(図示せず)の係合を解除するだけで、ろ床槽1を散水ろ床装置から取り外すことができる。新しいろ床槽1を架台7の梁構造体7a上に載せて、連結機構を用いて架台7に固定するだけで、ろ床槽1の交換が完了する。
【0039】
図3は、他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0040】
図3に示す架台7の各柱7bは、受水槽2の側壁2a,2bの外側面から離れている。この実施形態は、図2に示す実施形態と比較して、散水ろ床装置の設置面積が増加してしまうが、架台7の柱7bが既存の設備(例えば、既存の配管)と干渉することを防止することができる。さらに、ろ床槽1の安定性(すなわち、散水ろ床装置の安定性)を増加させて、散水ろ床装置の耐震性能を向上させることができる。図示はしないが、4つの柱7bのうちの一部を、受水槽2の側壁2a,2bの外側面から離し、残りの柱7bの内側面を受水槽2の側壁2a,2bの外側面に接触させてもよい。
【0041】
図4は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0042】
図4に示す実施形態では、架台7の全ての柱7bが受水槽2内に配置されている。柱7bの先端は、受水槽2の底面に溶接などで固定される。本実施形態によれば、架台7の梁構造体7aおよび柱7bが受水槽2の外縁から水平方向に突出しない。そのため、受水槽2を設置可能な場所を確保できれば、散水ろ床装置を設置できる。
【0043】
柱7bが受水槽2に流入する廃水に対して十分な化学的耐性を有していない場合(例えば、廃水が酸性を有する一方で、柱7bが耐蝕性を有さない金属製である場合)は、廃液によって柱7bが損傷されるおそれがある。このような場合は、柱7bをテフロン(登録商標)、繊維強化プラスチック(FRP)、およびハステロイ(登録商標)などの被覆材でライニング処理すればよい。あるいは、柱7bを、ある程度強度があり、かつ化学的耐性に優れた材料(例えば、繊維強化プラスチック、および耐蝕性合金など)から形成してもよい。
【0044】
図5は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0045】
図5に示す実施形態では、架台7の梁構造体7aを構成する4つの支持体15,16,17,18の全てが水平方向に受水槽2の外部まで延びている。さらに、架台7は、4つの支持体15,16,17,18の各端部から下方に延びる8つの柱7bを有する。本実施形態によれば、ろ床槽1の重量が8つの柱7bに分散されるので、架台7に取り付けられたろ床槽1の安定性が増加するとともに、散水ろ床装置の耐震性能が向上する。さらに、本実施形態の散水ろ床装置は、上述した実施形態と比較して、より重量のある、および/またはより大型のろ床槽1を備えることができる。
【0046】
図5に示すように、全ての柱7bの内側面を受水槽2の4つの側壁2a,2b,2c,2dの外側面に接触させることができる。一実施形態では、一部の柱7bの内側面を受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの外側面に接触させ、残りの柱7bを受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの外側面から離してもよい。あるいは、全ての柱7bを受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの外側面から離してもよい。
【0047】
図6は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0048】
図6に示す実施形態では、受水槽2の上端部は、ろ床槽1の下端部と同一の大きさを有する。架台7の梁構造体7aを構成する4つの支持体15,16,17,18は、それぞれ、受水槽2の4つの側壁2a,2b,2c,2dの上端部に沿って配置されている。架台7の柱7bは、受水槽2の4隅に沿って(すなわち、4つの支持体15,16,17,18の各接続部から下方に)延びている。受水槽2の高さ(言い換えれば、受水槽2の下面から上面までの鉛直方向の距離)は、散水ろ床装置2に流入される廃水の量に応じて設定される。ポンプ10は、受水槽2の外部に配置され、受水槽2の内部と連通する吸込管11がポンプ10の吸込口に連結される。本実施形態によれば、ポンプ10を除いた散水ろ床装置の設置面積を最小化できる。
【0049】
図7は、さらに他の実施形態に係る架台を説明するための概略斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0050】
図7に示す実施形態では、架台7は、柱7bの全てが接続される基礎フレーム7cをさらに有している。基礎フレーム7cは、全ての柱7bの下端に接続される。基礎フレーム7cの下面は、受水槽2の下面と同一面内にある。したがって、受水槽2を受水槽ベース23(または、地面)に設置したときに、基礎フレーム7cの下面も受水槽ベース23(または、地面)に接触する。基礎フレーム7cは、その下面全体でろ床槽1の重量を支持する。
【0051】
架台7の柱7bの下端は、溶接によって、またはボルトナット機構などの連結機構(図示せず)によって基礎フレーム7cに固定される。図7に示す基礎フレーム7は、受水槽2の4つの側壁2a,2b,2c,2dの下端部を取り囲むように、該下端部に沿って延びている。基礎フレーム7は、例えば、溶接によって受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの下端部に固定されてもよいし、基礎フレーム7を受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dから離間するように配置してもよい。
【0052】
本実施形態によれば、ろ床槽1の重量を基礎フレーム7の下面全体で支えることができる。すなわち、ろ床槽1の重量を支持する設置面の面積を増加させることができる。したがって、架台7は、ろ床槽1の重量を分散して支えることができ、架台7に取り付けられたろ床槽1の安定性が増加するとともに、耐震性能を向上させることができる。さらに、本実施形態の散水ろ床装置は、上述した実施形態と比較して、より重量のある、および/またはより大型のろ床槽1を備えることができる。
【0053】
図8は、他の実施形態に係る散水ろ床装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0054】
図8に示す散水ろ床装置は、複数の(図示した例では、2つの)ろ床槽1A,1Bと、隣接する2つのろ床槽1A,1Bで共通に用いられる1つの受水槽2と、を有している。ろ床槽1A,1Bは、上述したろ床槽1と同一の構成を有している。なお、図8では、各ろ床槽1A,1Bに配置された散水栓3,担体5、散水管1c、および管継手1dなどの構成要素の図示を省略している。さらに、図8では、各ろ床槽1A,1Bに対して設けられた複数の(2つの)ポンプ10と、複数のポンプ10からろ床槽1A,1Bにそれぞれ延びる供給管12の図示も省略している。
【0055】
散水ろ床装置は、複数のろ床槽1A,1Bを着脱自在に支持する架台7を有している。図示した例では、架台7は、6つの支持体15,16,17,18,19,20から構成される梁構造体7aと、4つの柱7bと、を備えている。
【0056】
図8に示す実施形態でも、6つの支持体のうちの2つの支持体15,16が互いに平行に、かつ水平方向に受水槽2の外部まで延びている。2つの支持体15,16の間の距離は、上述した箱体1aの側壁の長さT1に応じて決定される。残りの支持体17,18,19,20は、2つの支持体15,16に垂直な水平方向で互いに平行に延びており、2つの支持体15,16に接続される。支持体17,18の間の距離、および支持体19,20の間の距離は、上述した箱体1aの他の側壁の長さT2によって設定される。
【0057】
ろ床槽1Aは、支持体15,16,17,18によって区画される領域に配置され、さらに、図示しない連結機構で4つの支持体15,16,17,18に固定される。ろ床槽1Bは、支持体15,16,19,20によって区画される領域に配置され、さらに、図示しない連結機構で4つの支持体15,16,19,20に固定される。ろ床槽1A,1Bのそれぞれを梁構造体7aに固定するための連結機構は、該ろ床槽1A,1Bを着脱自在に架台7の梁構造体7aに固定可能である限り任意である。例えば、連結機構は、ボルトナット機構であってもよいし、クランプ機構であってもよい。
【0058】
図8に示す実施形態では、梁構造体7aの2つの支持体15,16が受水槽2に連結される。より具体的には、2つの支持体15,16は、受水槽2の対向する側壁2a,2bの上面に連結される。2つの支持体15,16は、受水槽2の側壁2a,2bの上面に溶接されてもよいし、ボルトナット機構などの連結機構(図示せず)で固定されてもよい。このような構成により、架台7が受水槽2と一体化される。
【0059】
図8に示す架台7の各柱7bは、梁構造体7aの2つの支持体15,16の端部から下方に延びている。本実施形態でも、梁構造体7aに固定された柱7bの下面は、受水槽2の下面と同一面内にあり、架台7は、受水槽2と一体化されている。したがって、散水ろ床装置の運搬作業性が向上する。さらに、受水槽2の設置が完了すると同時に、架台7の設置も完了するので、散水ろ床装置の設置工事を容易にかつ低コストで行うことができる。
【0060】
本実施形態でも、ろ床槽1A,1Bの箱体は、樹脂などの比較的軽量な材料から形成されるのに対し、架台7および受水槽2は、箱体1aを形成する材料よりも高い強度を有する材料から形成されるのが好ましい。架台7の材料は、受水槽2の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。上述したように、架台7および/または受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aと同一の材料から構成されてもよい。この場合、架台7および/または受水槽2は、ろ床槽1の箱体1aよりも高い強度を有するように、その強度を増加させる構造を有するのが好ましい。
【0061】
さらに、本実施形態の架台7の各柱7bの内側面は、受水槽2の側壁2a,2bの外側面に接触している。一実施形態では、架台7の各柱7bの内側面を、溶接などにより受水槽2の側壁2a,2bの外側面に固定してもよい。このような構成によれば、散水ろ床装置の設置面積を低減することができる。
【0062】
図3を参照して説明したように、複数の柱7bのいくつかまたは全部を受水槽2の側壁2a,2bから離してもよいし、図4を参照して説明したように、全ての柱7bを受水槽2内に配置してもよい。さらに、図5を参照して説明したように、支持体15,16,17,18、19,20の全てが水平方向に受水槽2の外部まで延びていてもよい。この場合、架台7は、全ての支持体15,16,17,18、19,20(の各端部)から下方に延びる12本の柱7bを有する。この場合でも、全ての柱7bの内側面を受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの外側面に接触させてもよいし、受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dから離してもよい。一実施形態では、複数の柱7bのうちの一部を受水槽2の側壁2a,2b,2c,2dの外側面に接触させ、残りの柱7bを受水槽2の側壁2a,2b,2c,2fの外側面から離してもよい。
【0063】
図9は、図8に示す散水ろ床装置の架台の変形例を説明するための概略斜視図である。図9に示す架台7は、受水槽2の4つの側壁2a,2b,2c,2fの下端部を取り囲むように、該下端部に沿って延びる基礎フレーム7cをさらに有する。架台7の柱7bの下端は、溶接によって、またはボルトナット機構などの連結機構(図示せず)によって基礎フレーム7cに接続される。
【0064】
図7を参照して説明したように、フレーム7は、溶接によって受水槽2の側壁の下端部に固定されてもよいし、受水槽2の下端部から離れるように配置されてもよい。このような構成によれば、架台7は、ろ床槽1A,1Bの重量を分散して支えることができ、架台7に取り付けられたろ床槽1A,1Bの安定性が増加するとともに、耐震性能が向上する。さらに、本実施形態の散水ろ床装置は、図8に示す散水ろ床装置と比較して、より重量のある、および/またはより大型のろ床槽1A,1Bを備えることができる。
【0065】
図示はしないが、図8または図9に示す散水ろ床装置は、ろ床槽1A,1Bの間に形成された空間を延びる点検歩廊を有していてもよい。図1を参照して説明したように、ろ床槽1A,1Bの箱体1aは、それぞれ、蓋1bを有している。作業者は、点検歩廊からろ床槽1A,1Bの箱体1aの蓋1bをそれぞれ取り外すことができるので、一回の点検で、ろ床槽1A,1Bの散水栓3の様子を確認することができる。このようなろ床槽1A,1Bに共通の点検歩廊は、散水ろ床装置の製造コストとメンテナンスコストの両者を低減することに役立つ。
【0066】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 ろ床槽
1a 箱体
1b 蓋
1c 散水管
1d 管継手
2 受水槽
2a,2b,2c,2d 側壁
3 散水栓
5 担体
7 架台
7a 梁構造体
7b 柱
7c 基礎フレーム
10 ポンプ
11 吸込管
12 供給管
15,16,17,18,19,20 支持体
23 受水槽ベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9