(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-164901(P2021-164901A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】コーティング方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20210917BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20210917BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20210917BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20210917BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20210917BHJP
C09D 1/02 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
B05D1/02 G
B05D3/12 Z
B05D3/02 A
B05D7/24 303B
C09D1/00
C09D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-68454(P2020-68454)
(22)【出願日】2020年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】520121898
【氏名又は名称】株式会社ザックジャパンカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】特許業務法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 ひろみ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AE03
4D075BB01Z
4D075BB16X
4D075BB22X
4D075BB64Z
4D075BB78Z
4D075BB93X
4D075CA02
4D075CA13
4D075CA34
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA07
4D075DC11
4D075EA06
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC05
4J038AA001
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA27
4J038PA06
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】 有機系等のバインダーを使用する必要がなく雨じみが付きにくく、かつ、施工時間を大幅に短縮することができ、基材表面に対する結晶の定着性にも優れたコーティング方法を提供すること。
【解決手段】 トルマリンセラミック粒子と、ケイ酸ナトリウムセラミック粒子と、シリカ溶出セラミック粒子とを精製水内で混合し、攪拌することによって、前記トルマリンセラミック粒子を水分と反応させて混合液内に電位を発生させ、前記精製水を電気分解し、混合液中にケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを放出させて、ケイ酸ナトリウムおよびシリカを混合液中に溶出せしめ、
この混合液を加熱して、高温蒸気として基材表面に噴霧して、当該基材表面の微細凹凸に浸透させて被覆した後、混合液中の水分を蒸発させ、ケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを空気中の二酸化炭素と反応させて前記基材表面において結晶化させることにより付着せしめる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルマリンセラミック粒子と、ケイ酸ナトリウムセラミック粒子と、シリカ溶出セラミック粒子とを精製水内で混合し、この混合液を攪拌することによって、前記トルマリンセラミック粒子を水分と反応させて混合液内に電位を発生させ、この電位によって前記精製水を電気分解し、混合液中にケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを放出させることによって、ケイ酸ナトリウムおよびシリカを混合液中に溶出せしめ、
この混合液を加熱して、高温蒸気として基材表面に噴霧して、当該基材表面の微細凹凸に浸透させて被覆した後、
混合液中の水分を蒸発させ、ケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを空気中の二酸化炭素と反応させて前記基材表面において結晶化させることにより付着せしめることを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
高温蒸気を90℃以上にすることを特徴とする請求項1記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング技術の改良、更に詳しくは、有機系等のバインダーを使用する必要がなく雨じみが付きにくく、かつ、施工時間を大幅に短縮することができ、基材表面に対する結晶の定着性にも優れたコーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの塗装面などに対して、塵埃や酸性雨、紫外線などから保護する手段として、種々のコーティング剤やコーティング方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、基材表面に対してコーティング被膜を形成するものについては、一般的に、コーティング液剤を塗布するために有機系等のバインダー(溶剤)が必要であり、乾燥するまでに時間がかかるという問題があった。また、残留したバインダーの成分が酸性雨と化学反応を起こして酸化するため、雨じみなどが付きやすくなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−61334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のコーティング技術に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、有機系等のバインダーを使用する必要がなく雨じみが付きにくく、かつ、施工時間を大幅に短縮することができ、基材表面に対する結晶の定着性にも優れたコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0007】
即ち、本発明は、トルマリンセラミック粒子と、ケイ酸ナトリウムセラミック粒子と、シリカ溶出セラミック粒子とを精製水内で混合し、この混合液を攪拌することによって、前記トルマリンセラミック粒子を水分と反応させて混合液内に電位を発生させ、この電位によって前記精製水を電気分解し、混合液中にケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを放出させることによって、ケイ酸ナトリウムおよびシリカを混合液中に溶出せしめ、
この混合液を加熱して、高温蒸気として基材表面に噴霧して、当該基材表面の微細凹凸に浸透させて被覆した後、
混合液中の水分を蒸発させ、ケイ酸ナトリウムイオンおよびシリカイオンを空気中の二酸化炭素と反応させて前記基材表面において結晶化させることにより付着せしめるという技術的手段を採用したことによって、コーティング方法を完成させた。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、高温蒸気を90℃以上にするという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコーティング方法によれば、精製水にイオンを放出ないし溶出させるため、有機系等のバインダーを使用する必要がなく、酸化せず、雨じみが付きにくい。また、蒸気の噴霧により施工性が良く、ムラなく塗ることができ、重ね塗り作業も簡単である。更に、自然素材のみを使用しているため環境にも優しい。
【0010】
また、高温の蒸気が塗布後に素早く乾燥するため、施工時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
更にまた、イオン分子が小さいために、基材表面の微細凹凸の内側まで奥深く浸透させることができ、基材表面に対する結晶の定着性にも優れている。そしてまた、3種類のセラミックを使用することにより、適度な密度と強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態のコーティング方法の手順を表わす概略図である。
【
図2】本発明の実施形態のコーティング方法の手順を表わす概略図である。
【
図3】本発明の実施形態のコーティング方法の手順を表わす概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を
図1から
図3に基づいて説明する。本実施形態では、まず、
図1に示すように、トルマリンセラミック粒子1およびケイ酸ナトリウムセラミック粒子2およびシリカ溶出セラミック粒子3を精製水4内で混合する。
【0014】
本実施形態のトルマリンセラミック粒子1は、例えば、化学式
NaFe
2Al
6(HO
2)
3(Si
6O
16)(OH)
4
で表され、平均粒径が約4〜6mmのものを採用することができる。また、ケイ酸ナトリウムセラミック粒子2(Na
4SiO
4:ケイ酸ナトリウムを主成分とする焼結体)およびシリカ溶出セラミック粒子3(SiO
2:二酸化ケイ素を主成分とする焼結体)も、平均粒径が約4〜6mmのものを採用することができる。
【0015】
そして、この混合液を攪拌する(容器を数回振る)ことによって、前記トルマリンセラミック粒子1を水分と反応させて混合液内に電位を発生させ、この電位によって精製水4を電気分解し、混合液中にケイ酸ナトリウムイオン51およびシリカイオン52を放出させることによって、ケイ酸ナトリウムおよびシリカを混合液中に溶出せしめる。
【0016】
次に、この混合液を加熱する。本実施形態では90℃以上(好ましくは100℃)に加熱する。90℃以上の高温に加熱することにより、ケイ酸ナトリウムイオン51およびシリカイオン52の溶出量を多くすることができ、かつ、施工後の水分の乾燥時間を短くすることができる。
【0017】
そして、高温蒸気として基材表面A(自動車ボディの塗装面など。洗車により予め表面汚れを落としておく)に噴霧する。この噴霧作業には、片手で持つことができる大きさのハンディスチーマーを使用することができ、特別な技術を習得する必要がなく、初心者でも簡単に施工することができる。なお、自家用車1台分のコーティングには、混合液を300〜500cc使用する。
【0018】
そして、混合液を基材表面Aの微細凹凸に浸透させて被覆する(
図2参照)。ケイ酸ナトリウムイオン51およびシリカイオン52は分子が小さいので、基材表面Aの微細凹凸の内側まで奥深く浸透させる(および電着させる)ことができる。
【0019】
然る後、混合液中の水分を蒸発させる。こうして水分が減少することにより、ケイ酸ナトリウムイオン51とシリカイオン52の濃度が上がり粘度の高い状態となる。高温蒸気を使用するために、乾燥時間および硬化時間は短いが、必要に応じて、マイクロファイバーのクロスを使用して、基材表面に付着した混合液を素早く拭き上げ、更に、仕上げとして、乾燥したマイクロファイバーのクロスを使用して丁寧に拭き上げることもできる。
【0020】
そして、ケイ酸ナトリウムイオン51とシリカイオン52を空気中の二酸化炭素(炭酸ガス:CO
2)と反応させて基材表面Aにおいて結晶化させることにより付着せしめることができ(ケイ酸ナトリウム結晶61およびシリカ結晶62)、コーティングが完了する(
図3参照)。
【0021】
本実施形態では、ハンディタイプのスチーマーを使用して高温の蒸気で施工することにより、車体の塗装面だけでなく、フロントグリルなどの細部やオートバイにも施工することができる。
【0022】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、トルマリンセラミック粒子1の種類は、例示した組成以外のトルマリンであっても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 トルマリンセラミック粒子
2 ケイ酸ナトリウムセラミック粒子
3 シリカ溶出セラミック粒子
4 精製水
41 電解水
51 ケイ酸ナトリウムイオン
52 シリカイオン
61 ケイ酸ナトリウム結晶
62 シリカ結晶
A 基材表面