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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-164957(P2021-164957A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】レーザ刻印装置及びレーザ刻印方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20210917BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20210917BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20210917BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   B23K26/00 B
   B23K26/142
   B23K26/16
   B23K26/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-33762(P2021-33762)
(22)【出願日】2021年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2020-67754(P2020-67754)
(32)【優先日】2020年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 康明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和憲
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168CA07
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB04
4E168CB12
4E168CB15
4E168EA15
4E168FC01
4E168FC04
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】レーザ光の照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できるレーザ刻印装置を提供する。
【解決手段】レーザ刻印装置は、鋳型の表面に気体を吹き付ける吹付部と、鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するヘッドと、吹付部による気体の吹き付け中にヘッドに識別子を刻印させる制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型の表面に気体を吹き付ける吹付部と、
前記鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するヘッドと、
前記吹付部による気体の吹き付け中に前記ヘッドに前記識別子を刻印させる制御部と、
を備える、レーザ刻印装置。
【請求項2】
前記吹付部は、前記鋳型の表面に気体を吹き付けるノズルを有し、
前記ノズル及び前記ヘッドは、一体的に移動する、
請求項1に記載のレーザ刻印装置。
【請求項3】
前記ノズルは前記ヘッドに設けられる、請求項2に記載のレーザ刻印装置。
【請求項4】
前記識別子を刻印するための作業空間を画成するケースと、
前記作業空間に接続された集塵機と、
をさらに備える、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ刻印装置。
【請求項5】
前記鋳型を予め定められた作業位置に固定する位置決め部をさらに備える、請求項1〜4の何れか一項に記載のレーザ刻印装置。
【請求項6】
前記ヘッドの縦位置、横位置及び高さ位置を変更するロボットをさらに備える、請求項1〜5の何れか一項に記載のレーザ刻印装置。
【請求項7】
前記ヘッドと前記鋳型の表面との間の距離を測定する測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記測定部によって測定された前記距離に基づいて、前記ヘッドの高さ位置及びレーザ光の焦点距離の少なくとも一方を調整する、
請求項1〜6の何れか一項に記載のレーザ刻印装置。
【請求項8】
前記ヘッドが前記識別子を刻印した後に、前記鋳型の表面へ液体を散布する散布部をさらに備える、請求項1〜7の何れか一項に記載のレーザ刻印装置。
【請求項9】
鋳型の表面に気体を吹き付けるステップと、
前記気体の吹き付け中に、前記鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するステップと、
を含む、レーザ刻印方法。
【請求項10】
前記吹き付けるステップ及び前記刻印するステップは、前記鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するヘッドと、前記ヘッドと一体的に移動し、前記鋳型の表面に気体を吹き付けるノズルとを備えるレーザ刻印装置によって実行される、請求項9に記載のレーザ刻印方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ刻印装置及びレーザ刻印方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生砂から形成される鋳型にレーザ光を照射することで鋳型に識別子を刻印するレーザ刻印方法を開示する。この方法においては、レーザ光を鋳型に照射する前に鋳型の生砂を樹脂で硬化させる。これにより、レーザ光を照射して刻印される識別子の形状が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−299842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光を用いて鋳型に識別子を刻印する場合、レーザ光の照射によって鋳型から蒸気又は残滓が発生することがある。発生した蒸気又は残滓はレーザ光を遮るおそれがある。レーザ光が鋳型の表面に十分に照射されない場合、刻印される識別子が不鮮明になることがある。本開示は、レーザ光の照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できるレーザ刻印装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るレーザ刻印装置は、鋳型の表面に気体を吹き付ける吹付部と、鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するヘッドと、吹付部による気体の吹き付け中にヘッドに識別子を刻印させる制御部とを備える。
【0006】
このレーザ刻印装置では、気体が鋳型の表面に吹き付けられる。気体の吹き付け中に、レーザ光が鋳型の表面に照射される。レーザ光の照射により鋳型から発生する蒸気又は残滓は、吹付部が鋳型の表面に気体を吹き付けることで鋳型の表面から除去される。これにより、レーザ光は、鋳型から発生する蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光の出力を維持して鋳型の表面へ照射される。よって、レーザ刻印装置は、レーザ光の照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できる。一実施形態においては、吹付部は、鋳型の表面に気体を吹き付けるノズルを有し、ノズル及びヘッドは、一体的に移動してもよい。この場合、ヘッドが移動した場合であっても気体が鋳型の表面に適切に吹き付けられる。一実施形態においては、ノズルはヘッドに設けられてもよい。この場合、ヘッド及びノズルそれぞれに駆動機構を設ける場合と比べて構造を簡素化できる。
【0007】
一実施形態においては、識別子を刻印するための作業空間を画成するケースと、作業空間に接続された集塵機とをさらに備えてもよい。この場合、吹付部によって鋳型の表面から除去された蒸気又は残滓は、集塵機によって集塵される。これにより、レーザ光は、発生した蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光の出力を維持して鋳型の表面へ照射される。よって、このレーザ刻印装置は、レーザの照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響をさらに抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、レーザ刻印装置は、鋳型を予め定められた作業位置に固定する位置決め部をさらに備えてもよい。この場合、鋳型は位置決め部によって予め定められた作業位置に固定された後に識別子が刻印される。よって、このレーザ刻印装置は、鋳型の位置ずれによって発生する識別子の位置ずれ又は刻印不良の発生を抑制できる。
【0009】
一実施形態においては、レーザ刻印装置は、ヘッドの縦位置、横位置及び高さ位置を変更するロボットをさらに備えてもよい。このレーザ刻印装置は、ヘッドの縦位置、横位置及び高さ位置を、ロボットにより変更できる。
【0010】
一実施形態においては、ヘッドと鋳型の表面との間の距離を測定する測定部をさらに備え、制御部は、測定部によって測定された距離に基づいて、ヘッドの高さ位置及びレーザ光の焦点距離の少なくとも一方を調整してもよい。この場合、制御部は、測定部によって測定された距離に基づいて、ヘッドと鋳型の表面との間の距離が設定値になるように調整する。よって、このレーザ刻印装置は、鋳型の表面の高さ位置にばらつきが生じた場合であっても識別子を鋳型に鮮明に刻印できる。
【0011】
一実施形態においては、レーザ刻印装置は、ヘッドが識別子を刻印した後に、鋳型の表面へ液体を散布する散布部をさらに備えてもよい。この場合、レーザ光の照射によって蒸発する水分は、液体の散布によって補われる。これにより、このレーザ刻印装置は、刻印作業が鋳型の品質に与える影響を小さくできる。
【0012】
本開示の他の側面に係るレーザ刻印方法は、鋳型の表面に気体を吹き付けるステップと、気体の吹き付け中に、鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するステップと、を備える。
【0013】
このレーザ刻印方法では、気体は、鋳型の表面に吹き付けられる。気体の吹き付け中に、レーザ光は、鋳型の表面に照射される。鋳型から発生する蒸気又は残滓は、吹付部が鋳型の表面に気体を吹き付けることで鋳型の表面から除去される。これにより、レーザ光は、鋳型から発生する蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光の出力を維持して鋳型の表面へ照射される。よって、レーザ刻印方法は、レーザ光の照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できる。一実施形態においては、吹き付けるステップ及び刻印するステップは、鋳型の表面にレーザ光を照射して識別子を刻印するヘッドと、ヘッドと一体的に移動し、鋳型の表面に気体を吹き付けるノズルとを備えるレーザ刻印装置によって実行されてもよい。この場合、ヘッドが移動した場合であっても気体が鋳型の表面に適切に吹き付けられる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、レーザ光の照射によって鋳型から発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できるレーザ刻印装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るレーザ刻印装置が備わる鋳造システムの一例を概略的に示す構成図である。
図2】実施形態に係るレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。
図3】集塵機を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。
図4】位置決め部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す上面図である。
図5】ロボットを備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。
図6】測定部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。
図7】散布部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。
図8】散布部を備えるレーザ刻印装置の他の一例を示す断面図である。
図9】レーザ刻印装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】集塵機を備えるレーザ刻印装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。図中において示されるX方向及びY方向は水平方向を示し、Z方向は鉛直方向を示す。
【0017】
[鋳造システムの一例]
図1は、実施形態に係るレーザ刻印装置が備わる鋳造システムの一例を概略的に示す構成図である。図1に示される鋳造システム1は、鋳物を製造するためのシステムである。鋳造システム1は、造型機2、搬送ライン3、レーザ刻印装置4、注湯機5、及び、ライン制御部6を備える。
【0018】
造型機2は、鋳型Mを製造する装置である。鋳型Mは、一例として生型砂で形成される砂型である。生型砂は、珪砂、ベントナイト及び所定の添加剤を含む。造型機2は、水分が加えられた生型砂を材料にして鋳型Mを形成する。造型機2は、鋳枠Fを用いて鋳型Mを形成する。造型機2は、ライン制御部6と通信可能に接続される。造型機2は、ライン制御部6から造型開始信号を受信した場合、造型エリアにおいて鋳型Mの製造を開始する。造型機2は、模型が配置された鋳枠F内に砂(生型砂)を投入し、鋳枠F内の砂を加圧して固める。造型機2は、固められた砂から模型を取り出すことにより鋳型Mを形成する。造型機2は、造型完了信号をライン制御部6に送信する。造型完了信号は、造型機2が正常な動作で鋳型Mを造型できたことを示す信号である。
【0019】
搬送ライン3は、鋳型を搬送する設備である。搬送ライン3は、造型機2から鋳型Mを受け取り、注湯機5に向けて鋳型Mを搬送する。搬送ライン3は、例えば、ローラコンベヤ、レール、鋳型M及び鋳枠Fが載置されレール上を走行する台車、造型機2側に配置されたプッシャ装置、及び、注湯機5側に配置されたクッション装置などを有する。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2から注湯機5に向けて直線状に延びる。ローラコンベヤ又はレールは、直線状に延びる場合に限定されず、例えば階段状に延びていてもよい。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2と注湯機5との間で一筆書き状に延びていてもよい。搬送ライン3は、ローラコンベヤ又はレール上に等間隔で配列された複数の鋳型M及び鋳枠Fを造型機2から注湯機5に向けて順次搬送する。搬送ライン3は、間欠駆動され、鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分ずつ搬送する。所定の枠分は1枠でもよいし複数枠でもよい。搬送ライン3は、ライン制御部6と通信可能に接続される。搬送ライン3は、ライン制御部6から枠送り信号を受信すると、複数の鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分搬送する。搬送ライン3は、所定の枠分の搬送を完了すると、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信する。搬送ライン3は、搬送された鋳型M及び鋳枠Fの位置決めを完了したときに、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信してもよい。
【0020】
レーザ刻印装置4は、搬送ライン3に設けられ、搬送ライン3上の鋳型Mに対してレーザにより刻印を行う。レーザ刻印装置4は、ライン制御部6と通信可能に接続され得る。レーザ刻印装置4、搬送ライン3及びライン制御部6は、協働して動作する場合、レーザ刻印システムを構成する。レーザ刻印装置4の詳細は後述する。
【0021】
注湯機5は、鋳型Mに溶湯を流し込む装置である。注湯機5は、ライン制御部6と通信可能に接続される。注湯機5は、ライン制御部6から枠送り完了信号を受信した場合、注湯エリアに位置する鋳型Mを注湯対象として、当該鋳型Mに溶湯を流し込む。注湯機5は、ライン制御部6から鋳型情報を受信し、鋳型情報に基づいた条件で注湯を行う。注湯された鋳型Mは、搬送ライン3により後工程を行うエリアへと搬送される。
【0022】
造型機2と注湯機5との間には、中子セット場Wが設けられてもよい。中子セット場Wには、作業者が駐留しており、鋳型Mに中子をセットする。または、装置が鋳型Mに中子を自動でセットしてもよい。
【0023】
ライン制御部6は、鋳造システム1を統括制御するコントローラである。ライン制御部6は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。ライン制御部6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(RandomAccess Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。ライン制御部6は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、ライン制御部6の機能を実現する。
【0024】
[レーザ刻印装置の詳細]
図2は、一実施形態に係るレーザ刻印装置の構成の一例を示す断面図である。図2に示されるように、レーザ刻印装置4は、ヘッド10、吹付部20、及び、制御部30を備える。
【0025】
ヘッド10は、レーザ光Lを鋳型Mの表面へ照射して、鋳型に識別子を刻印する。識別子とは対象物に付与される文字、数字又は記号などのことであり、刻印するとは、文字、数字又は記号などを鋳型に付与する動作のことである。鋳型Mの表面とは、鋳型Mの外側に現れている面であり、最上面だけでなく、製品形状を画定する面(製品形状を転写する面)も含まれる。以下では、鋳型Mの表面の刻印予定箇所Pへ刻印する場合を一例として説明する。
【0026】
ヘッド10は、レーザ光Lを刻印予定箇所Pで集束させる部品である。ヘッド10は、レーザ光を発生させる光源(不図示)に接続される。ヘッド10は、一例として、ガルバノミラー(不図示)及び集束レンズ(不図示)を有し、レーザ光Lの照射位置及び焦点距離を調整する。ヘッド10は、レーザ光Lの焦点距離を鋳型Mの表面の刻印予定箇所Pに集束させて識別子を刻印する。刻印予定箇所Pは、鋳型Mの予め定められた範囲に設定される。ヘッド10は、ケース11の内部に画成される作業空間Sに収容される。ヘッド10は、作業空間Sに配置されたフレーム部材12に支持される。
【0027】
ケース11は、作業空間Sと連通する搬入口22及び搬出口23を有する。ケース11は、搬入口22及び搬出口23を介して作業空間Sに鋳型Mが搬入出されるように搬送ライン3へ設けられる。例えば、搬送ライン3が直線である場合、搬入口22と搬出口23とは、対向するようにケース11に形成される。ケース11は、搬入口22及び搬出口23の対向方向が搬送ライン3の延在方向と一致するように搬送ライン3に設けられる。
【0028】
吹付部20は、鋳型Mの表面へ気体Gを吹き付ける。吹付部20は、気体Gを送り出す機器であり、例えば送風機、圧縮機、ブロアなどである。吹付部20が圧縮機又はブロアの場合、吹付部20は、鋳型Mの表面へ向けて気体Gを吹き付ける吹出ノズル21(ノズルの一例)を有する。吹出ノズル21は、一例としてヘッド10に設けられる。吹出ノズル21は、フレーム部材12に支持されてもよい。吹付部20が送風機の場合、吹付部20は、ヘッド10又はフレーム部材12に支持されてもよい。
【0029】
制御部30は、ヘッド10を制御する。制御とは、位置及び動作を決定することをいう。制御部30は、一例としてPLCとして構成される。制御部30は、上述したコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部30は、ケース11の外側に配置されてもよいし、ケース11の内側に配置されても構わない。
【0030】
制御部30は、主に、レーザ光Lの出力、照射位置及び焦点距離などを制御する。制御部30は、レーザ光源、ガルバノミラー及び集束レンズを制御してレーザ光Lの出力、照射位置及び焦点距離を制御する。ヘッド10は、制御部30の制御に基づいて、刻印予定箇所Pへ識別子を刻印する。鋳型Mに含まれる水分などは、レーザ光Lの照射によって蒸発する。
【0031】
制御部30は、吹付部20の動作を制御してもよい。この場合、制御部30は、開始信号、終了信号、目標圧力を示す信号などを吹付部20へ出力する。吹付部20は、制御部30から受け付けた信号に基づいて動作する。制御部30は、吹付部20による気体Gの吹き付け中にヘッド10に識別子を刻印させる。制御部30は、吹付部20に吹き付け動作を開始させた後、又は吹き付け動作の開始と同時にヘッド10を動作させて、ヘッド10に鋳型Mに対して識別子を刻印させる。
【0032】
[レーザ刻印装置の他の構成例]
図3は、集塵機を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。図3に示されるように、レーザ刻印装置4Aは、作業空間Sに接続された集塵機42をさらに備える。集塵機42は、作業空間Sを画成するケース11に設けられる。集塵機42は、作業空間Sの内気を吸気し、刻印することによって鋳型Mから発生する蒸気又は残滓を取り込み、粉塵などを捕集して、作業空間Sの内気を浄化する。レーザ刻印装置4Aの他の構成は、図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。
【0033】
図4は、位置決め部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す上面図である。図4に示されるように、レーザ刻印装置4Bは、鋳型Mを予め定められた作業位置に固定する位置決め部50をさらに備える。
【0034】
位置決め部50は、鋳型Mを予め定められた作業位置に機械的に固定する。一例として、位置決め部50は、ピン51を有する。ピン51は、鋳型Mの進行方向に対して直交する方向に進退するくさび部材である。ピン51は、先端に向かって細くなる形状を有する。鋳枠Fには、ピン51と係合する穴52が設けられる。穴52の径はピン51の径よりも若干大きい。穴52は、底部に向かって徐々に径が小さくなる内面を有する。鋳型Mが予め定められた作業位置に搬入された場合、ピン51は穴52に挿入される。位置決め部50は、搬入完了信号をライン制御部6から受信して、ピン51を穴52へ挿入する。位置決め部50は、ライン制御部6からの指示又は搬入完了信号を受信した制御部30からの指示により、ピン51を穴52へ挿入してもよい。搬入完了信号は、鋳型Mの搬入が完了したことを示す信号である。ピン51と穴52の内面とが係合することによって、搬送ライン3上の鋳型Mは予め定められた作業位置に正確に固定される。レーザ刻印装置4Bの他の構成は、図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。
【0035】
図5は、ロボットを備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。図5に示されるように、レーザ刻印装置4Cは、ヘッド10の縦位置(X方向)、横位置(Y方向)及び高さ位置(Z方向)を変更するロボット60をさらに備える。ロボット60は、ヘッド10をX方向、Y方向及びZ方向へ移動させる三軸の直交ロボットである。
【0036】
ロボット60は、例えばフレーム部材12に設けられる。ロボット60は、X軸駆動部61、Y軸駆動部62及びZ軸駆動部63を有する。X軸駆動部61は、X軸方向に沿ってヘッド10を移動させる。Y軸駆動部62は、Y軸方向に沿ってヘッド10を移動させる。X軸駆動部61及びY軸駆動部62は、ヘッド10を鋳型Mの表面と平行な水平面内で移動させる。X軸駆動部61及びY軸駆動部62は、刻印予定箇所Pの位置に応じてヘッド10の水平位置を変更できる。Z軸駆動部63は、Z軸方向に沿ってヘッド10を移動させる。Z軸駆動部63は、鋳型Mの表面に対して鉛直方向にヘッド10を移動させる。Z軸駆動部63は、刻印予定箇所Pの位置に応じてヘッド10の高さ位置を変更できる。ロボット60は、制御部30に接続される。ロボット60は、制御部30から動作指令を受け取り、動作指令に基づいてヘッド10の位置を調整する。
【0037】
ロボット60は、ヘッド10の傾きや刻印予定箇所Pから鉛直方向に延びる軸を中心とする円周方向などを変更する付加軸を備えてもよい。この場合、ロボット60は、ヘッド10から照射されるレーザ光Lと鋳型Mの表面とが鉛直になるように、ヘッド10の傾きを調整することができる。レーザ刻印装置4Cの他の構成は、図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。吹出ノズル21は、ヘッド10と一体的に移動する。一体的に移動とは、吹出ノズル21とヘッド10との相対位置を変化させることなく同一方向に移動することである。吹出ノズル21がフレーム部材12に支持される場合、吹出ノズル21はロボット60とは異なる駆動機構によって移動してもよい。
【0038】
図6は、測定部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。図6に示されるように、レーザ刻印装置4Dは、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を測定する測定部70をさらに備え、制御部30は、測定部70によって測定された距離に基づいてレーザ光Lの焦点距離を調整する。
【0039】
測定部70は、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を測定する。測定部70は、例えばレーザ距離計である。測定部70は、フレーム部材12に設けられる。測定部70は、鋳型Mの表面へ測定光Dを照射する。測定部70は、測定光Dと鋳型Mの表面から反射する反射光との位相差又は時間差から、鋳型Mの表面の高さ位置を測定する。測定部70は、三角測量法に基づいて鋳型Mの表面の高さ位置を測定してもよい。ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離は、ヘッド10の高さ位置と鋳型Mの表面の高さ位置との差分で算出することができる。図6に示されるようにヘッド10がフレーム部材12に固定されている場合には、ヘッド10の高さ位置は事前に計測され、記憶される。測定部70は、予め記憶されたヘッド10の高さ位置と、測定された鋳型Mの表面の高さ位置との差分を算出し、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を算出する。
【0040】
鋳型Mの表面の高さ位置は、造型時の造型機2の動作条件、生型砂の性状、又はレールもしくはローラの摩耗などによってばらつきが生じる。このため、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離にもばらつきが生じる。制御部30は、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離に基づいて、レーザ光Lの焦点距離を調整する。制御部30は、レーザ光Lの焦点が鋳型Mの表面に位置するように、ガルバノミラー及び集束レンズを制御する。
【0041】
ヘッド10の高さ位置が図5に示されるロボット60により調整される場合には、制御部30は、レーザ光Lの焦点が鋳型Mの表面に位置するように、ヘッド10の高さ位置を調整してもよい。測定部70は、制御部30からヘッド10の高さ位置を取得する。ヘッド10の高さ位置は、Z軸駆動部63によってヘッド10を移動させた位置である。測定部70は、取得されたヘッド10の高さ位置と、測定された鋳型Mの表面の高さ位置との差分を算出し、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を算出する。この場合、制御部30は、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離に基づいて、ヘッド10の高さ位置及びレーザ光Lの焦点距離の少なくとも一方を調整する。
【0042】
ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離は、基準となる鋳型Mの表面の高さ位置と他の鋳型Mの表面の高さ位置との差分に基づいて算出されてもよい。この場合、ヘッド10と基準となる鋳型Mの表面との間の距離は事前に計測され、レーザ光Lの焦点距離が調整される。測定部70は、予め記憶された基準となる鋳型Mの表面の高さ位置と測定した他の鋳型Mの表面の高さ位置との差分を算出し、この差分に基づきヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離が適切な距離になるようにヘッド10の高さ位置を調整し、又はレーザ光Lの焦点距離を調整する。
【0043】
測定部70は、ヘッド10に設けられてもよい。この場合、測定部70は、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を直接的に測定することができる。測定部70は、レーザ距離計に限定されず、超音波距離計であってもよい。測定部70は、探触子を用いて距離を測定してもよい。測定部70は、画像認識により距離を測定してもよい。測定部70は、複数設けられてもよい。レーザ刻印装置4Dの他の構成は、図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。
【0044】
図7は、散布部を備えるレーザ刻印装置の一例を示す断面図である。図7に示されるように、レーザ刻印装置4Eは、ヘッド10が鋳型Mに識別子を刻印した後に、鋳型Mの表面へ液体Rを散布する散布部80をさらに備える。
【0045】
散布部80は、鋳型Mの表面へ液体Rを散布する。散布部80は、液体Rを送り出す機器であり、例えば、ポンプ(不図示)、弁(不図示)、及び液体Rのタンク(不図示)などを備える。散布部80は、鋳型Mの表面へ向けて液体Rを散布する散布ノズル81を有する。散布ノズル81は、一例としてヘッド10に設けられる。散布ノズル81は、フレーム部材12に支持されてもよい。散布部80は、例えばポンプを駆動し、弁を開とすることにより散布ノズル81から鋳型Mへ液体Rを散布する。散布部80は、弁を閉とすることにより液体Rの散布を停止する。
【0046】
液体Rは、一例として、水、又は添加剤などである。添加剤は、例えば、表面安定化剤又は塗型剤である。表面安定化剤は、糖アルコールなどを含む。表面安定化剤は、生型砂の保水力などを改善する。塗型剤は、一例として、シリコンを含む。塗型剤は、鋳型Mの表面に薄膜を形成し、鋳型Mの焼き付きを予防する。レーザ光Lを照射することによって蒸発する水分は、散布部80による液体の散布によって補われる。
【0047】
図8は、散布部を備えるレーザ刻印装置4Eの他の一例を示す断面図である。図8に示されるように、散布ノズル81は、フレーム部材12に設けられてもよい。図8の例においては、搬送ライン3は鋳型Mを図面の右方向へ搬送する。散布ノズル81は、ヘッド10の下流側に設けられ、ヘッド10によってレーザ光Lが照射された鋳型Mに対して液体Rを散布する。レーザ刻印装置4Eの他の構成は、図2に記載のレーザ刻印装置4と同一である。
【0048】
[レーザ刻印システムの動作]
図9は、レーザ刻印システムの動作の一例を示すフローチャートである。レーザ刻印システムは、搬送ライン3、ライン制御部6及びレーザ刻印装置を備える。以下では、レーザ刻印装置が上述したレーザ刻印装置4,4A〜4Eの全ての機能を備える場合を一例として説明する。
【0049】
図9に示されるフローチャートは、例えば、作業員の開始指示に基づいて開始される。システム起動時、作業員又は制御部30は集塵機42の動作を開始させる(ステップS10)。集塵機42は、作業空間Sの集塵を開始する。
【0050】
次に、ライン制御部6は、搬送ライン3を動作させて鋳型Mをレーザ刻印装置の作業空間Sへ搬入させる(ステップS20)。一例として、ライン制御部6は、鋳型Mが所定の位置に搬送されたときに、搬入完了信号を制御部30へ送信する。ライン制御部6は、鋳型Mが所定の位置に搬送されたことをセンサなどで検出してもよいし、搬送された所定の枠分に基づいて所定の位置に搬送されたことを判定してもよい。
【0051】
次に、位置決め部50は、作業空間Sに搬送された鋳型Mを予め定められた作業位置に固定する(ステップS22)。制御部30は、搬入完了信号を受信した後に、位置決め部50を動作させてもよい。位置決め部50は、鋳枠Fの穴52にピン51を係合させる。ピン51と、穴52の内面とが係合することによって、鋳型Mは、予め定められた作業位置に正確に固定される。
【0052】
次に、測定部70は、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離を測定する(ステップS24)。測定部70は、測定光Dと鋳型Mの表面から反射する反射光との位相差もしくは時間差、又は三角測量などによって、鋳型Mの表面の高さ位置を測定する。ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離は、ヘッド10の高さ位置と鋳型Mの表面の高さ位置との差分で算出することができる。測定部70は、鋳型Mの位置決めが完了したことに応じて動作してもよい。制御部30は、測定部70が測定した距離に基づいてレーザ光Lの焦点距離を調整する。
【0053】
次に、ロボット60は、ヘッド10の位置を変更する(ステップS26)。ロボット60は、刻印予定箇所Pの位置に応じて、ヘッド10の縦位置、横位置及び高さ位置を変更する。例えば、ロボット60は、ヘッド10のカルバノミラーの駆動によるレーザ照射範囲に鋳型Mの表面の刻印予定箇所Pが収まるように、ヘッド10の縦位置及び横位置を変更する。その後に、ロボット60は、測定部70の結果に基づいてレーザ光Lの焦点が鋳型Mの表面に位置するように、ヘッド10の高さ位置を調整する。
【0054】
次に、吹付部20は、鋳型Mの表面に気体Gを吹き付ける(ステップS28)。吹付部20は、気体Gの吹き付けを開始し、気体Gの吹き付けを継続する。
【0055】
次に、制御部30は、吹付部20の吹き付け中に、ヘッド10に識別子を刻印させる(ステップS30)。ヘッド10は、カルバノミラーを駆動させ、鋳型Mの表面に識別子を刻印する。このとき、鋳型Mに含まれる水分などは、レーザ光Lの照射によって蒸気に変化する。レーザ光Lの照射によって鋳型Mから発生した蒸気又は残滓は、吹付部20が鋳型Mの表面に気体を吹き付けることで鋳型Mの表面から除去される。レーザ光Lは、鋳型Mから発生する蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光の出力を維持して鋳型Mの表面へ照射される。発生した蒸気又は残滓は、集塵機42によって集塵される。
【0056】
次に、ヘッド10は、鋳型Mへのレーザ光Lの照射を停止し、識別子の刻印を停止する(ステップS32)。続いて吹付部20は、気体Gの吹き付けを停止する(ステップS34)。吹付部20は、例えば識別子の刻印の停止に応じて気体Gの吹き付けを停止する。ロボット60は、先にヘッド10の高さ位置を戻し、後に縦位置及び横位置を移動前の位置へ戻す(ステップS36)。ロボット60は、ヘッド10の位置を予め定められた原点へ戻してもよい。
【0057】
次に、位置決め部50は、鋳型Mの固定を解除する(ステップS38)。鋳枠Fの穴52とピン51との間の係合が解除され、鋳型Mは搬送可能になる。最後に、ライン制御部6は、搬送ライン3を動作させて鋳型Mをレーザ刻印装置から搬出する(ステップS40)。以上によって、図9に示されるフローチャートは終了する。
【0058】
刻印システムが連続して刻印作業を行う場合、新規の鋳型Mが、鋳型Mの搬出に応じて搬入される(ステップS20)。以後、ステップS20からステップS40までの工程が繰り返し実行される。刻印システムが停止する場合、システムの停止に応じて集塵機42は動作を停止する。
【0059】
[実施形態のまとめ]
レーザ刻印装置4,4A〜4E及びレーザ刻印方法によれば、気体Gが鋳型Mの表面に吹き付けられる。気体Gの吹き付け中に、レーザ光Lが鋳型Mの表面に照射される。レーザ光Lの照射により鋳型Mから発生する蒸気又は残滓は、吹付部20が鋳型Mの表面に気体Gを吹き付けることで鋳型Mの表面から除去される。これにより、レーザ光Lは、鋳型Mから発生する蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光Lの出力を維持して鋳型Mの表面へ照射される。レーザ刻印装置4及びレーザ刻印方法は、レーザ光Lの照射によって鋳型Mから発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響を抑制できる。
【0060】
レーザ刻印装置4Aによれば、吹付部20によって鋳型Mの表面から除去された蒸気又は残滓は、集塵機42によって集塵される。これにより、レーザ光Lは、発生した蒸気又は残滓に遮られることなく、設定されたレーザ光Lの出力を維持して鋳型Mの表面へ照射される。レーザ刻印装置4Aは、集塵機42を備えないレーザ刻印装置と比べて、レーザ光Lの照射によって鋳型Mから発生する蒸気又は残滓が刻印作業に与える影響をさらに抑制できる。
【0061】
レーザ刻印装置4Bによれば、搬送された鋳型Mは、位置決め部50によって予め定められた作業位置に固定された後に刻印される。レーザ刻印装置4Bは、位置決め部50を備えないレーザ刻印装置と比べて、鋳型Mの位置ずれによって発生する識別子の位置ずれ又は刻印不良の発生を抑制できる。
【0062】
レーザ刻印装置4Cによれば、ヘッド10の縦位置、横位置及び高さ位置をロボット60によって変更できる。レーザ刻印装置4Dによれば、制御部30は、測定部70によって測定された距離に基づいて、ヘッド10と鋳型Mの表面との間の距離が設定値になるように調整する。レーザ刻印装置4Dは、測定部70を備えないレーザ刻印装置と比べて、鋳型Mの表面の高さ位置にばらつきが生じた場合であっても識別子を鋳型Mに鮮明に刻印できる。
【0063】
レーザ刻印装置4Eによれば、刻印によって蒸発する水分は、散布部80による液体の散布によって補われる。レーザ刻印装置4Eは、刻印作業が鋳型Mの品質に与える影響を小さくできる。
【0064】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0065】
例えば、集塵機を備えるレーザ刻印装置は、図3に示される例に限定されない。図10は、集塵機を備えるレーザ刻印装置の他の例を示す断面図である。図10に示されるレーザ刻印装置4Aは、図3に示されるレーザ刻印装置4Aと比べて、補助装置43を備える点、及び、集塵機42が補助装置43に対向して配置される点が相違し、その他は同一である。集塵機42及び補助装置43は、作業空間Sを画成するケース11に設けられる。補助装置43は、集塵機42に向けて気流を発生させる。補助装置43と集塵機42との間に発生する気流は、刻印することによって鋳型Mから発生する蒸気又は残滓を集塵機42へ搬送するため、集塵機42の集塵効果が向上する。
【0066】
レーザ刻印装置4は、砂により形成される鋳型に刻印する形態に限定されない。レーザ刻印装置4は、自硬性鋳型、熱硬化性鋳型、又はガス硬化性鋳型にも刻印することができる。レーザ刻印装置4は、鋳型だけでなく中子に刻印することもできる。本開示で説明された鋳型は、上述した鋳型、自硬性鋳型、熱硬化性鋳型、ガス硬化性鋳型、及び中子を包含する。
【0067】
本開示の実施形態では、造型機2として、上下鋳型を交互に上下鋳枠に造型する枠付鋳型造型機を用いた例を示したが、本開示はこれに限定されるものではない。この他に例えば、上下鋳型を同時に造型した後、該上下鋳型を型合わせし、その後、該上下鋳型を上下鋳枠から抜き出し、上下鋳型だけの状態で造型機2から搬出される方式の無枠鋳型造型機に適用するようにしてもよい。
【0068】
位置決め部50は、鋳枠Fの側方に設けられた穴52に係合するピン51とは異なる係合手段を備えてもよい。位置決め部50は、鋳枠Fの上面に立設されたピン(又はブッシュ)と係合するブッシュ(又はピン)を備えてもよい。この場合、位置決め部50は、鋳枠Fの上方から下方に向けてブッシュ(又はピン)を動作させればよい。
【0069】
ロボット60は、直交ロボットに限定されない。ロボット60は、例えば、多関節ロボット、パラレルリンクロボット及びスカラーロボットであってもよい。
【0070】
搬送される鋳型Mに対して液体Rを散布する散布装置が、搬送ライン3上に設けられてもよい。散布装置は、例えばレーザ刻印装置4と注湯機5との間に設けられる。
【0071】
図9に示されるレーザ刻印装置の動作の一例の説明からも明らかなとおり、本開示のレーザ刻印装置は、レーザ刻印装置4,4A〜4Eの全ての機能を備えることができる。また、本開示のレーザ刻印装置は、レーザ刻印装置4,4A〜4Eから任意に選択された機能を備えることができる。
【符号の説明】
【0072】
3…搬送ライン、4…レーザ刻印装置、10…ヘッド、11…ケース、20…吹付部、30…制御部、42…集塵機、50…位置決め部、60…ロボット、70…測定部、80…散布部、G…気体、L…レーザ光、M…鋳型、R…液体、S…作業空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10