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特開2021-165071タイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165071(P2021-165071A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】タイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20210917BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20210917BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   B60C19/00 B
   B60C17/00 B
   B60C1/00 B
   B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-68516(P2020-68516)
(22)【出願日】2020年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 卓範
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA06
3D131AA07
3D131BA02
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB10
3D131BC13
3D131BC32
3D131BC42
3D131BC43
3D131BC51
3D131CA03
3D131GA13
3D131GA17
3D131JA05
3D131JA06
3D131LA02
3D131LA05
3D131LA06
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】ランフラット耐久性と乗り心地とを両立すること。
【解決手段】タイヤ剛性可変装置50に、サイドウォール部8にサイド補強ゴム層40が配置されるランフラットタイヤ1におけるサイドウォール部8の一部に配置される剛性可変部材60と、剛性可変部材60に対してエネルギーを付与することにより剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70と、を備え、制御部70は、所定のセンサ出力情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部にサイド補強ゴム層が配置されるランフラットタイヤにおける前記サイドウォール部の一部に配置される剛性可変部材と、
前記剛性可変部材に対してエネルギーを付与することにより前記剛性可変部材の剛性を変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、所定のセンサ出力情報に基づいて前記剛性可変部材の剛性を変化させることを特徴とするタイヤ剛性可変装置。
【請求項2】
前記剛性可変部材は、前記サイド補強ゴム層に配置される請求項1に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項3】
前記センサ出力情報は、前記ランフラットタイヤの空気圧であり、
前記制御部は、前記空気圧の低下を検知した際に前記剛性可変部材の剛性を高める請求項1または2に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項4】
前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ断面高さのタイヤ径方向内側の基準位置からタイヤ径方向外側に向かって前記タイヤ断面高さの35%以上65%以下の範囲内に少なくとも一部が配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項5】
前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ径方向における前記剛性可変部材の高さが、前記ランフラットタイヤのタイヤ断面高さの8%以上60%以下の範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項6】
前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ幅方向両側の前記サイドウォール部にそれぞれ配置され、
前記制御部は、前記ランフラットタイヤのタイヤ幅方向両側の前記サイドウォール部にそれぞれ配置される前記剛性可変部材の剛性を個別に変化させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項7】
前記剛性可変部材は、磁性エラストマーである請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ランフラットタイヤのタイヤ周方向に沿った方向を螺旋の中心として前記剛性可変部材の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイルである請求項7に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項9】
前記磁性エラストマーの磁性粒子は、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉である請求項7または8に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項10】
前記剛性可変部材は、弾性率が2MPa以上20MPa以下の範囲内で変化する請求項1〜9のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項11】
前記剛性可変部材は、基材の少なくとも一部が天然ゴムである請求項1〜10のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項12】
前記制御部は、非接触で給電が行われる請求項1〜11のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置が用いられることを特徴とするランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着して使用される空気入りタイヤは、走行時における操縦安定性や転がり抵抗、乗り心地性能等の様々な性能が求められるが、これらの性能の中には、互いに背反する性能がある。例えば、乗り心地は、タイヤ剛性を低下させることにより向上させることができるが、タイヤ剛性を低下させた場合、操縦安定性が低下し易くなる。空気入りタイヤに求められる複数の性能は、このように互いに背反するものがあるため、空気入りタイヤの各性能は、一般的に妥協点で設定されることが多いが、従来の空気入りタイヤの中には、使用状況に応じて性能や特性を変化させることができるように構成されているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたタイヤでは、タイヤに剛性可変部材を設けて剛性可変部材に外部からエネルギーを与えてタイヤの剛性を変化させることにより、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変化させ、乗り心地に優れた設定や操縦安定性に優れた設定の切り替えを可能としている。また、特許文献2に記載されたタイヤでは、磁界の印加によって粘弾性特性が変化するエラストマーによりトレッド部材の接地面を形成し、トレッド部材の接地面側に一対の磁極部材によって磁界を印加することにより、トレッド部材のヒステリシスロスの調整を可能としている。また、特許文献3に記載されたタイヤでは、トレッドの内部層を、電圧の印加により粘弾性率が変化する電気応答性弾性体から構成すると共に、トレッドのタイヤ径方向内側に導電体として螺旋状ベルトを配置し、螺旋状ベルトに電圧を印加して電気応答性弾性体の弾性率を高めることにより、トレッドの変形を抑制して十分なグリップ力を生じさせることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44595号公報
【特許文献2】特許第6037180号公報
【特許文献3】特許第6211903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、空気入りタイヤは、リムに組み付けられて内部に空気を充填した状態で車両に装着され、内部の空気圧によって車両走行時の荷重を受けるが、パンク等により内部の空気が漏出した場合、空気圧によって荷重を受けるのが困難になる。つまり、内部の空気が漏出することにより空気圧が低下した場合、空気圧によって支持していた分の荷重をサイドウォール部で支持することになるため、大きな荷重が付与されるサイドウォール部は大きく変形し、走行が困難になる。このため、近年の空気入りタイヤの中には、パンク等によって内部の空気が漏出した際における走行であるランフラット走行が可能な、いわゆるランフラットタイヤとして構成されているものがある。ランフラットタイヤは、例えば、サイドウォール部の内側にサイド補強ゴム層を配置し、サイドウォール部の曲げ剛性を向上させることにより、内部に充填された空気が漏出して大きな荷重がサイドウォール部に作用する場合でも、サイドウォール部の変形を抑制して走行を行うことが可能になっている。
【0006】
しかしながら、ランフラットタイヤは、サイド補強ゴム層を設けることにより、タイヤ径方向における剛性が高くなるため、通常走行時における乗り心地が悪化し易くなる虞がある。乗り心地を良くするためには、サイド補強ゴム層の剛性を低くすることによりタイヤ径方向の剛性を低くすることが考えられるが、サイド補強ゴム層の剛性を低くした場合、ランフラット走行における耐久性が低下し易くなる。このように、通常走行時における乗り心地と、ランフラット走行における耐久性であるランフラット耐久性とは、互いに背反する性能であるため、双方の性能を両立するのは、大変困難なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することのできるタイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ剛性可変装置は、サイドウォール部にサイド補強ゴム層が配置されるランフラットタイヤにおける前記サイドウォール部の一部に配置される剛性可変部材と、前記剛性可変部材に対してエネルギーを付与することにより前記剛性可変部材の剛性を変化させる制御部と、を備え、前記制御部は、所定のセンサ出力情報に基づいて前記剛性可変部材の剛性を変化させることを特徴とする。
【0009】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、前記サイド補強ゴム層に配置されることが好ましい。
【0010】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記センサ出力情報は、前記ランフラットタイヤの空気圧であり、前記制御部は、前記空気圧の低下を検知した際に前記剛性可変部材の剛性を高めることが好ましい。
【0011】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ断面高さのタイヤ径方向内側の基準位置からタイヤ径方向外側に向かって前記タイヤ断面高さの35%以上65%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されることが好ましい。
【0012】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ径方向における前記剛性可変部材の高さが、前記ランフラットタイヤのタイヤ断面高さの8%以上60%以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、前記ランフラットタイヤのタイヤ幅方向両側の前記サイドウォール部にそれぞれ配置され、前記制御部は、前記ランフラットタイヤのタイヤ幅方向両側の前記サイドウォール部にそれぞれ配置される前記剛性可変部材の剛性を個別に変化させることが好ましい。
【0014】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、磁性エラストマーであることが好ましい。
【0015】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記制御部は、前記ランフラットタイヤのタイヤ周方向に沿った方向を螺旋の中心として前記剛性可変部材の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイルであることが好ましい。
【0016】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記磁性エラストマーの磁性粒子は、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉であることが好ましい。
【0017】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、弾性率が2MPa以上20MPa以下の範囲内で変化することが好ましい。
【0018】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記剛性可変部材は、基材の少なくとも一部が天然ゴムであることが好ましい。
【0019】
また、上記タイヤ剛性可変装置において、前記制御部は、非接触で給電が行われることが好ましい。
【0020】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るランフラットタイヤは、上記タイヤ剛性可変装置が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤは、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係るランフラットタイヤの要部を示すタイヤ子午断面図である。
図2図2は、図1に示すサイドウォール部の詳細図である。
図3図3は、図2に示す剛性可変部材と制御部の模式図である。
図4図4は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置の構成を示す説明図である。
図5図5は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置の変形例であり、剛性可変部材がカーカス層のタイヤ幅方向外側に配置される場合の説明図である。
図6図6は、ランフラットタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るタイヤ剛性可変装置及びランフラットタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0024】
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、ランフラットタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってランフラットタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0025】
図1は、実施形態に係るランフラットタイヤ1の要部を示すタイヤ子午断面図である。本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該ランフラットタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成され、トレッド接地面3は、ランフラットタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝(図示省略)とが、それぞれ複数形成されており、この主溝30とラグ溝とにより、トレッド接地面3には陸部20が複数形成されている。本実施形態では、主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。
【0026】
なお、ここでいう主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する縦溝をいう。主溝30は、タイヤ赤道面CLとトレッド接地面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行になっており、タイヤ周方向に直線状に延在してもよく、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
【0027】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に配設されており、換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向におけるランフラットタイヤ1の両側2箇所に配設されている。このように形成されるサイドウォール部8は、ランフラットタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分になっており、ゴム材料であるサイドゴム9を有している。
【0028】
タイヤ幅方向における両側に位置する一対のサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、それぞれビード部10が配置されている。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配置されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配置されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
【0029】
また、トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層14が設けられている。ベルト層14は、少なくとも2層の交差ベルト141、142が積層される多層構造によって構成されている。この交差ベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層の交差ベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層の交差ベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。なお、トレッド部2は、ベルト層14の他に、ベルト層14のタイヤ径方向外側に、ベルト層14の少なくとも一部を覆うベルト補強層を有していてもよい。
【0030】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0031】
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。サイドウォール部8に配置されるサイドゴム9は、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されている。
【0032】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、ランフラットタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、ランフラットタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0033】
また、サイドウォール部8には、サイド補強ゴム層40が配設されている。サイド補強ゴム層40は、サイドウォール部8の内部に設けられるゴム部材になっており、タイヤ内表面やタイヤ外表面には露出することなく配置されている。詳しくは、サイド補強ゴム層40は、主にカーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分のタイヤ幅方向内側に位置しており、サイドウォール部8におけるカーカス層13とインナーライナ16との間に配置されている。また、サイド補強ゴム層40は、トレッド部2とビード部10との間に亘ってサイドウォール部8に配置されている。このため、サイド補強ゴム層40は、タイヤ径方向外側の端部付近は、ベルト層14のタイヤ径方向内側に位置しており、タイヤ径方向内側の端部付近は、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に位置している。このように配置されるサイド補強ゴム層40は、ランフラットタイヤ1のタイヤ子午断面における形状が、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。
【0034】
サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向内側に配置されるサイド補強ゴム層40は、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドゴム9よりも剛性が高くなっている。詳しくは、サイドゴム9は、弾性率が2.0MPa以上6.0MPa以下の範囲内になっているのに対し、サイド補強ゴム層40の弾性率は、8.0MPa以上19.0MPa以下の範囲内になっている。
【0035】
さらに、サイドウォール部8には、剛性を変化させることができる剛性可変部材60が配置されている。剛性可変部材60は、磁性弾性体である磁性エラストマーからなり、外部からエネルギーを付与することにより、剛性が変化する部材になっている。剛性可変部材60は、サイドウォール部8の一部に配置されており、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置されている。即ち、剛性可変部材60は、一対のサイドウォール部8の双方に配置されている。本実施形態では、剛性可変部材60は、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8におけるサイド補強ゴム層40に、それぞれ配置されており、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8のサイド補強ゴム層40に、それぞれ埋設されている。つまり、剛性可変部材60は、カーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分と、インナーライナ16におけるサイドウォール部8に位置する部分とのそれぞれから離間して双方の間に配置され、サイド補強ゴム層40に埋設されている。
【0036】
図2は、図1に示すサイドウォール部8の詳細図である。剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のタイヤ子午断面における形状が、サイド補強ゴム層40と同様に、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。つまり、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状となる形状となり、中心軸がタイヤ回転軸とほぼ一致する円環状の形状で形成されている。このように形成される剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のタイヤ断面高さSHのタイヤ径方向内側の基準位置であるリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されている。なお、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ断面高さSHの45%以上55%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されるのが好ましい。
【0037】
ここでいうタイヤ断面高さSHは、トレッド部2における最もタイヤ径方向外側に位置している部分と、リム径基準位置BLとのタイヤ径方向における距離になっている。リム径基準位置BLは、JATMAの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線である。つまり、タイヤ断面高さSHは、ランフラットタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、ランフラットタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。
【0038】
また、ここでいう正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0039】
また、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、ランフラットタイヤ1のタイヤ断面高さSHの8%以上60%以下の範囲内になっている。なお、剛性可変部材60における、リム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に配置される部分は、タイヤ径方向における当該範囲の50%以上の範囲に配置されるのが好ましい。
【0040】
また、ランフラットタイヤ1には、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70が備えられている。制御部70は、剛性可変部材60に対して外部からエネルギーを付与することにより、剛性可変部材60の剛性を変化させることが可能になっている。これらの剛性可変部材60と制御部70とは、ランフラットタイヤ1の剛性を変化させるタイヤ剛性可変装置50を構成しており、換言すると、本実施形態に係るランフラットタイヤ1には、剛性を変化させることができるタイヤ剛性可変装置50が用いられている。
【0041】
図3は、図2に示す剛性可変部材60と制御部70の模式図である。剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状になっているが、図3では、剛性可変部材60と制御部70との形態を説明するために、剛性可変部材60の形状を簡略化し、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が円形となる円環状の形状で図示している。
【0042】
剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70は、ランフラットタイヤ1のタイヤ周方向に沿った方向を螺旋の中心として、剛性可変部材60の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイル71になっている。即ち、制御部70である励磁コイル71は、表面が絶縁性材料によって覆われた金属等の導電性の部材からなる線材が、剛性可変部材60の周方向に沿った方向を螺旋の中心として、円環状に形成される剛性可変部材60の外周面に沿って周方向に螺旋状に巻き回されることにより、コイル状に形成されている。
【0043】
コイル状に形成される励磁コイル71は、導電性の線材に電力が供給されることにより、磁場を発生させることが可能になっており、剛性可変部材60に対してエネルギーとして磁場を印加することにより、剛性可変部材60の剛性を変化させることが可能になっている。剛性可変部材60は、磁性エラストマーからなるため、励磁コイル71によって印加される磁場によって磁性エラストマーに含まれる磁性粒子が影響を受けることにより、弾性率を変化させることが可能になっている。即ち、剛性可変部材60は、制御部70である励磁コイル71から磁場を印加することにより、剛性を変化させることが可能になっている。具体的には、剛性可変部材60は、励磁コイル71から印加される磁場が強くなることにより、弾性率が大きくなり、剛性が高くなる。
【0044】
剛性可変部材60の剛性を変化させることができる制御部70は、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60に対して、互いに同等の形態でコイル状に形成される励磁コイル71として、それぞれ配置されている。これにより、制御部70は、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60の剛性を、個別に変化させることが可能になっている。
【0045】
本実施形態では、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーの磁性粒子は、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉になっており、鉄粉の直径は、1μm以上10μm以下の範囲内であるのが好ましい。また、剛性可変部材60は、基材の少なくとも一部が天然ゴムになっている。
【0046】
また、励磁コイル71から印加される磁場によって弾性率を変化させることができる剛性可変部材60は、2MPa以上20MPa以下の範囲内で弾性率が変化することが可能になっている。なお、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーは、印加される磁場が弱い場合は弾性率が低く、磁場が強くなるに従って弾性率が大きくなる特性を有している。このため、本実施形態における剛性可変部材60は、励磁コイル71から磁場が印加されない場合は、弾性率が2MPa程度になっており、励磁コイル71から印加される磁場が最大の場合には、弾性率が20MPa程度になり、剛性可変部材60の弾性率は、印加される磁場に応じてこの範囲内で変化する。
【0047】
図4は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50の構成を示す説明図である。タイヤ剛性可変装置50は、さらに、制御部70である励磁コイル71に電力を供給する給電部82及び受電部72と、制御部70を制御する制御ユニット80と、制御部70で剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いる情報を取得するセンサ90とを備えている。このうち、受電部72は、ランフラットタイヤ1にリム組みされるリムホイール100に取り付けられており、リムホイール100が取り付けられたランフラットタイヤ1の内腔側で、導電性の線材等により励磁コイル71に電気的に接続されている。受電部72は、タイヤ幅方向における両側に配置される剛性可変部材60の励磁コイル71ごとに設けられており、各受電部72は、それぞれリムホイール100に取り付けられて配置されている。また、受電部72は、円環状の形状で形成されており、ランフラットタイヤ1に装着されるリムホイール100の回転時には、リムホイール100と一体となって回転する。
【0048】
給電部82は、受電部72ごとに設けられており、即ち、給電部82は、タイヤ幅方向における両側に配置される剛性可変部材60の励磁コイル71ごとに設けられている。各給電部82は、円環状の形状で形成され、リムホイール100に取り付けられる受電部72からは離間して、それぞれの給電部82が対応する受電部72に対向する位置に配置されている。受電部72に対向する位置に配置される給電部82は、ランフラットタイヤ1が装着される車両の車体側に取り付けられており、ランフラットタイヤ1やリムホイール100の回転時においても、回転することなく受電部72に対向する状態を維持することが可能に配置されている。このように配置される給電部82は、受電部72に対して非接触で電力を供給することが可能になっており、例えば、電磁誘導による誘導起電力により、非接触で受電部72に対して電力を供給することが可能になっている。このため、受電部72に接続される励磁コイル71である制御部70は、給電部82と受電部72とにより、非接触で給電が行われる。
【0049】
制御ユニット80は、各種処理を実行するコントローラとして機能するCPU(Central Processing Unit)と、各種情報を記憶するメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有する制御装置になっている。制御ユニット80には、電源85が接続されており、電源85から給電部82に供給する電力を制御することが可能になっている。これにより、制御ユニット80は、電源85から供給される電力を、給電部82及び受電部72を介して、制御部70に供給することが可能になっている。その際に、制御ユニット80は、制御部70に供給する電力のON・OFFのみでなく、電力の大きさを調節して供給することができ、制御部70である励磁コイル71は、供給される電力の大きさに応じて、剛性可変部材60に印加する磁場の大きさを変化させることができる。これにより、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を変化させることができる。なお、電源85としては、ランフラットタイヤ1が装着される車両に搭載されるバッテリーが用いられる。
【0050】
制御ユニット80は、センサ90の出力情報に基づいて、制御部70に供給する電力を制御し、制御部70は、供給された電力によって、剛性可変部材60の剛性を変化させる。このため、換言すると、制御部70は、所定のセンサ出力情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることができる。本実施形態では、センサ出力情報としては、ランフラットタイヤ1の空気圧を用いる。即ち、制御ユニット80において、制御部70に供給する電力を制御する際に用いるセンサ出力情報は、ランフラットタイヤ1の空気圧を検出する空気圧センサ91から出力される情報になっている。
【0051】
空気圧センサ91は、ランフラットタイヤ1にリム組みされるリムホイール100に取り付けられており、リムホイール100における、ランフラットタイヤ1の内腔に位置する面側に取り付けられている。これにより、空気圧センサ91は、リムホイール100にリム組みされた状態におけるランフラットタイヤ1の空気圧を検出することが可能になっている。
【0052】
制御ユニット80は、空気圧センサ91で検出した空気圧を、無線通信にて取得することが可能になっている。詳しくは、空気圧センサ91は、検出した空気圧を無線信号によって送信することが可能になっており、制御ユニット80には、空気圧センサ91から送信された無線信号を受信する受信装置81が接続されている。また、受信装置81は、受信装置81で受信した無線信号に含まれている空気圧の情報を、制御ユニット80に伝達することが可能になっている。これにより、制御ユニット80は、空気圧センサ91で検出した空気圧を、受信装置81を介して取得することにより、ランフラットタイヤ1の空気圧を取得することが可能になっている。制御ユニット80は、このように取得したランフラットタイヤ1の空気圧に基づいて、制御部70に供給する電力を制御し、剛性可変部材60の剛性を変化させる。例えば、空気圧センサ91で検出した空気圧が、所定の閾値以下になったことを検知した場合には、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を高める制御を行う。
【0053】
これらのように構成される、本実施形態に係るランフラットタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイール100を嵌合することによってリムホイール100にランフラットタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。ランフラットタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド接地面3のうち下方に位置する部分のトレッド接地面3が路面に接触しながら当該ランフラットタイヤ1は回転する。ランフラットタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合は、主にトレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド接地面3と路面との間の水が主溝30やラグ溝等の溝に入り込み、これらの溝でトレッド接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド接地面3は路面に接地し易くなり、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0054】
ランフラットタイヤ1を装着した車両の走行時は、これらのようにランフラットタイヤ1のトレッド接地面3と路面との間に発生する摩擦力により、車両は走行することが可能となるが、車両の走行時は、ランフラットタイヤ1の各部には、様々な方向の荷重が作用する。ランフラットタイヤ1に作用する荷重は、内部に充填された空気の圧力や、ランフラットタイヤ1の骨格として設けられるカーカス層13等によって受ける。例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部10との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、ランフラットタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部8等が撓んだりしながら受ける。つまり、ランフラットタイヤ1の内部に充填された空気は、ランフラットタイヤ1を内部から外側方向に押し広げようとする力として作用する。車両の走行時には、ランフラットタイヤ1は、このように内部に充填された空気による、内部から外側方向への付勢力によって大きな荷重を受けたり、サイドウォール部8等が適度に撓んだりしながら走行することにより、車両は乗り心地を確保しつつ走行することが可能になっている。
【0055】
ここで、ランフラットタイヤ1は、例えばトレッド接地面3に異物が刺さってパンクする等により、内部の空気が漏出する場合がある。内部の空気が漏出すると、空気圧が低下し、ランフラットタイヤ1の内部から外側方向への空気による付勢力が低減するため、車両の走行時における荷重を、内部の空気圧によって受けることが困難になる。この場合、ランフラットタイヤ1は、空気圧によって受けることが困難になった荷重の一部を、サイドウォール部8に設けられるサイド補強ゴム層40によって受けることが可能になっている。つまり、サイド補強ゴム層40は、サイドウォール部8を形成するサイドゴム9よりも強度が高いゴム材料により形成されているため、サイドウォール部8に対してタイヤ径方向の大きな荷重が作用した場合でも、サイド補強ゴム層40は、サイドウォール部8のタイヤ径方向の変形を抑えることが可能になっている。
【0056】
一方で、ランフラットタイヤ1は、サイドウォール部8にサイド補強ゴム層40が配設されることにより、サイドウォール部8にサイド補強ゴム層40が配設されない通常の空気入りタイヤと比較して、サイドウォール部8にタイヤ径方向の荷重が作用した際におけるサイドウォール部8の撓みが小さくなっている。このため、ランフラットタイヤ1は、サイド補強ゴム層40が配設されない通常の空気入りタイヤと比較してタイヤ径方向の剛性が高くなっており、サイド補強ゴム層40が配設されない通常の空気入りタイヤと比較して、一般的に乗り心地が悪くなっている。
【0057】
しかし、サイド補強ゴム層40を有するランフラットタイヤ1において、乗り心地を良くするためにサイド補強ゴム層40の剛性を低くした場合、パンク等によって内部の空気が漏出した際における走行であるランフラット走行時に、サイドウォール部8が大きく変形し、サイドウォール部8が損傷し易くなる虞がある。即ち、サイド補強ゴム層40の剛性を低くした場合、ランフラット走行時における耐久性であるランフラット耐久性が低下し易くなる虞がある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、タイヤ剛性可変装置50が用いられており、タイヤ径方向の剛性を変化させることが可能になっている。これにより、乗り心地の悪化を抑制しつつ、ランフラット耐久性を確保することができる。次に、このような効果を発揮するタイヤ剛性可変装置50の動作について説明する。
【0059】
タイヤ剛性可変装置50は、ランフラットタイヤ1の空気圧を検出する空気圧センサ91を備えており、ランフラットタイヤ1を装着した車両の運転時は、ランフラットタイヤ1の空気圧を空気圧センサ91によって検出する。空気圧センサ91は、検出した空気圧を無線信号によって送信し、空気圧センサ91から送信された無線信号は、受信装置81によって受信する。これにより、受信装置81は、空気圧センサ91で検出した空気圧を取得する。受信装置81で取得した空気圧は、受信装置81から制御ユニット80に伝達され、制御ユニット80で取得する。
【0060】
制御ユニット80は、取得した空気圧に基づいて、制御部70を介して剛性可変部材60の剛性を制御する。制御ユニット80は、制御部70を介して剛性可変部材60の剛性を制御する際には、制御部70に供給する電力を調節することにより行う。即ち、制御部70は、励磁コイル71からなるため、電力が供給されることにより、供給された電力に応じた強さの磁場を発生することができ、供給される電力が大きくなるに従って、発生する磁場を強くすることができる。また、剛性可変部材60は、磁性エラストマーからなるため、剛性可変部材60に巻き回される励磁コイル71から付与される磁場に応じて剛性が変化し、付与される磁場が強くなるに従って、剛性が高くなる。このため、剛性可変部材60の剛性は、励磁コイル71に供給する電力を調節し、励磁コイル71で発生する磁場の強さを調節することにより、調節することが可能になっている。
【0061】
ここで、車両の走行中は、ランフラットタイヤ1は回転をするが、回転するランフラットタイヤ1に配置される励磁コイル71に供給する電力は、車両の車体側の配置される給電部82と、ランフラットタイヤ1と一体となって回転するリムホイール100に配置される受電部72とにより、非接触で供給される。即ち、リムホイール100に配置される受電部72は、励磁コイル71に対して電気的に接続されており、給電部82は、受電部72からは離間しつつ受電部72に対して対向する位置に配置されているため、給電部82から受電部72へは、電磁誘導による誘導起電力により電力を供給することが可能になっている。受電部72に供給された電力は、励磁コイル71に供給され、励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生する。これにより、回転をするランフラットタイヤ1に配置される励磁コイル71に対して、車体側から電力を供給し、励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生することができ、励磁コイル71で発生する磁場の強さを調節することにより、剛性可変部材60の剛性を調節することができる。
【0062】
受信装置81より取得した空気圧に基づいて、制御ユニット80によって剛性可変部材60の剛性の調節する際には、例えば、取得した空気圧が、ランフラットタイヤ1の使用時において適正な空気圧である場合は、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を高くしない制御を行う。つまり、空気圧センサ91で検出した空気圧が、ランフラットタイヤ1の使用時において適正な空気圧である場合は、制御ユニット80は、励磁コイル71に対して電力を供給しない。これにより、励磁コイル71は、磁場を発生しないため、励磁コイル71が巻き回される剛性可変部材60は、磁場によって剛性が高くならない。従って、サイドウォール部8の剛性が高くならないため、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性は、剛性可変部材60によって高くならず、乗り心地が確保される。
【0063】
なお、この場合におけるランフラットタイヤ1の使用時において適正な空気圧は、例えば、正規内圧や、ランフラットタイヤ1の製造元が推奨する空気圧、車両の製造元が推奨する空気圧等が挙げられ、これらの空気圧を基準とする許容範囲も含まれる。
【0064】
また、取得した空気圧が、パンク等によってランフラットタイヤ1の空気圧が大幅に低下していることを示している場合は、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を高くする制御を行う。換言すると、制御部70は、空気圧の低下を検知した際に、剛性可変部材60の剛性を高める。つまり、空気圧センサ91で検出した空気圧が、ランフラットタイヤ1の使用時における適正な空気圧と比較して大幅に低くなっている場合は、制御ユニット80は、制御部70である励磁コイル71に対して所定の大きさの電力を供給する。例えば、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を高くするか否かの判定に用いる空気圧の閾値を予め設定して記憶しておき、制御ユニット80で取得した空気圧が閾値以下である場合は、励磁コイル71に対して所定の大きさの電力を供給する。これにより、励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生し、励磁コイル71が巻き回される剛性可変部材60は、励磁コイル71で発生した磁場によって剛性が高くなる。
【0065】
従って、サイドウォール部8は、剛性可変部材60の剛性が高くなるのに伴って剛性が高くなるため、空気圧が低下したランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性は、剛性可変部材60の剛性によりサイドウォール部8の剛性が補われることによって高くなる。これにより、パンク等によって空気圧が大幅に低下したランフラットタイヤ1は、空気圧が低くなった状態においてもサイドウォール部8が大きく変形し難くなり、サイドウォール部8が大きく変形することに起因してサイドウォール部8が損傷することを抑制できるため、ランフラット耐久性を確保することができる。
【0066】
なお、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置され、制御部70は、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60の剛性を個別に変化させることが可能になっている。このため、空気圧の低下時に剛性可変部材60の剛性を変化させる際には、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60の剛性を同等に高めてもよく、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60で剛性を異ならせてもよい。
【0067】
空気圧の低下時に、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60で剛性を異ならせる際には、相対的に負荷が大きい側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を、負荷が小さい側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性よりも高くするのが好ましい。例えば、車両への装着時に、キャンバ角がネガティブキャンバとなって装着されるランフラットタイヤ1では、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8のうち、車両装着方向における外側のサイドウォール部8よりも、車両装着方向における内側のサイドウォール部8の方が負荷が大きくなっている。このため、このようなランフラットタイヤ1では、空気圧の低下時には、車両装着方向における内側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を、車両装着方向における外側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性よりも高くするのが好ましい。
【0068】
また、ランフラットタイヤ1の空気圧の低下時に、剛性可変部材60の剛性を高くすることによりサイドウォール部8の剛性を確保する際には、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性が、ランフラットタイヤ1の空気圧が適正な空気圧である場合におけるタイヤ径方向における剛性と同程度になるように、剛性可変部材60の剛性を調節するのが好ましい。
【0069】
以上の実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50は、外部からエネルギーを付与することにより剛性が変化する剛性可変部材60を有しており、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のサイドウォール部8に配置されるため、剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、サイドウォール部8の剛性を変化させることができる。また、タイヤ剛性可変装置50は、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70を備え、制御部70は、所定のセンサ出力情報によって剛性可変部材60の剛性を変化させるため、センサ出力情報に基づいて、ランフラットタイヤ1の空気圧が適正な通常の走行時と、空気圧が低下したランフラット走行時とで、剛性可変部材60の剛性を変化させることができる。これにより、空気圧が適正な通常の走行時における乗り心地を確保しつつ、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の損傷を抑制することができ、ランフラット耐久性を確保することができる。
【0070】
つまり、タイヤ剛性可変装置50は、サイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、ランフラットタイヤ1のランフラット耐久性を確保できるため、ランフラットタイヤ1のサイド補強ゴム層40の剛性を、比較的低めに設定することができる。従って、タイヤ剛性可変装置50は、空気圧が適正な通常の走行時におけるランフラットタイヤ1のタイヤ径方向の剛性が高くなり過ぎること抑制することができ、通常の走行時における乗り心地を確保することができる。この結果、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0071】
また、実施形態に係るランフラットタイヤ1は、上記タイヤ剛性可変装置50が用いられるため、サイド補強ゴム層40の剛性を低めに設定して乗り心地を確保しつつ、ランフラット走行時における剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、ランフラット耐久性を確保することができる。この結果、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0072】
また、剛性可変部材60は、サイド補強ゴム層40に配置されるため、剛性可変部材60の剛性を変化させることによってサイドウォール部8の剛性を変化させる効果を、効率的に得ることができる。これにより、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向の剛性を、効率的に変化させることができる。この結果、より確実にランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0073】
また、制御部70は、ランフラットタイヤ1の空気圧の低下を検知した際に、剛性可変部材60の剛性を高めるため、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下することによりサイドウォール部8の負担が大きくなる状況におけるサイドウォール部8の剛性を、剛性可変部材60により補うことができる。これにより、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際におけるサイドウォール部8の変形を抑制することができ、サイドウォール部8の損傷を抑制することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0074】
また、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されるため、ランフラット走行時における耐久性を、剛性可変部材60によってより確実に確保することができる。つまり、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下することにより、サイドウォール部8の変形量が大きくなる際には、サイドウォール部8は、タイヤ径方向における中央付近で大きく撓み易くなる。このため、サイドウォール部8に剛性可変部材60を配置した場合でも、剛性可変部材60が、ランフラットタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に配置されない場合は、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際におけるサイドウォール部8の変形を、効果的に抑制し難くなる虞がある。この場合、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の損傷を、効果的に抑制し難くなる虞がある。
【0075】
これに対し、ランフラットタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に、剛性可変部材60の少なくとも一部が配置される場合は、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際に、サイドウォール部8における変形量が大きくなる部分のサイドウォール部8の変形を、剛性可変部材60によって効果的に抑制することができる。これにより、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の損傷を、剛性を変化させることができる剛性可変部材60によって効果的に抑制することができ、ランフラット走行時における耐久性を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0076】
また、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、ランフラットタイヤ1のタイヤ断面高さSHの8%以上60%以下の範囲内であるため、剛性可変部材60の剛性を変化させた際におけるサイドウォール部8の剛性の急激な変化を抑制しつつ、空気圧が低下した際におけるサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって効果的に確保することができる。つまり、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、タイヤ断面高さSHの8%未満である場合は、剛性可変部材60の高さHVが小さ過ぎるため、パンク等によってランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際に剛性可変部材60の剛性を高めても、サイドウォール部8の剛性を効果的に確保し難くなる虞がある。この場合、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際におけるサイドウォール部8の変形を抑制し難くなり、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の損傷を、効果的に抑制し難くなる虞がある。また、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、タイヤ断面高さSHの60%より大きい場合は、剛性可変部材60の高さHVが大き過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を変化させた場合、剛性可変部材60の剛性の変化に伴うサイドウォール部8の剛性の変化が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、剛性可変部材60の剛性を変化させた際に、サイドウォール部8の剛性が急激に変化するため、車両のドライバに違和感を生じさせる虞があり、乗り心地の悪化につながる虞がある。
【0077】
これに対し、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、ランフラットタイヤ1のタイヤ断面高さSHの8%以上60%以下の範囲内である場合は、剛性可変部材60の剛性を変化させた際におけるサイドウォール部8の剛性の急激な変化を抑制しつつ、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際におけるサイドウォール部8の剛性を、剛性可変部材60によって効果的に確保することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0078】
また、制御部70は、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60の剛性を、個別に変化させることができるため、サイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって高める際に、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8のそれぞれの負荷の大小に応じて、適切に高めることができる。これにより、空気圧の低下時に、負荷が大きい側のサイドウォール部8の剛性をより確実に高めることができるため、ランフラット走行時における耐久性を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0079】
また、剛性可変部材60は、磁性エラストマーであるため、剛性可変部材60の耐熱性を確保することができ、サイドウォール部8の温度が高くなった際における剛性可変部材60の損傷を抑制することができる。つまり、剛性を変化させることができる剛性可変部材60は、電力を印加することにより弾力性が変化する電気粘性エラストマーのような電気弾性体を用いても構成することができるが、電気弾性体は、磁性エラストマーと比較して耐熱性が低くなっている。一方で、ランフラットタイヤ1は、ランフラット走行時にはサイドウォール部8に大きな負荷が作用するため、ランフラット走行時にはサイドウォール部8の温度が高くなり易くなっている。このため、剛性可変部材60に、磁性エラストマーを用いて剛性可変部材60の耐熱性を確保することにより、ランフラット走行時にサイドウォール部8の温度が高くなった際における剛性可変部材60の損傷を抑制することができる。これにより、ランフラット走行時における耐久性を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0080】
また、制御部70は、剛性可変部材60の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイル71により形成されるため、制御部70によって剛性可変部材60に対してエネルギーを付与して剛性可変部材60の剛性を変化させる際に、剛性可変部材60の剛性を、タイヤ周方向において均一に変化させることができる。これにより、剛性可変部材60のタイヤ周方向における剛性の均一性を確保することができ、剛性可変部材60のタイヤ周方向における剛性が不均一になることに起因する、ランフラットタイヤ1の回転時の振動を抑制して乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0081】
また、制御部70は、螺旋状に巻き回される励磁コイル71によって形成されるため、ランフラットタイヤ1の製造時における加硫成形時に、剛性可変部材60の成形に追従することができる。これにより、剛性可変部材60の剛性を変化させるために配置する制御部70を、生産性を損なうことなく配置することができる。これらの結果、生産性の低下を抑えつつ、より確実に乗り心地を向上させることができる。
【0082】
また、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーは、磁性粒子の直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉であるため、より確実に剛性を変化させることができる。つまり、磁性エラストマーは、磁性粒子が小さくなるに従って透磁率が高く、残留磁化が小さくなるため、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉を磁性粒子として用いることにより、励磁コイル71で磁場を印加した際に、効率良く剛性を変化させることができる。これにより、より確実に、通常の走行時における乗り心地を確保しつつ、ランフラット走行時における耐久性を確保することができる。この結果、より確実にランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0083】
また、剛性可変部材60は、弾性率が2MPa以上20MPa以下の範囲内で変化するため、空気圧が適正な通常の走行時における操縦安定性を確保しつつ、ランフラット耐久性をより確実に確保することができる。つまり、剛性可変部材60の弾性率が2MPa未満になる場合は、剛性可変部材60の剛性を高めない状態における弾性率が小さくなり過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を高めない状態におけるサイドウォール部8の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、空気圧が適正な通常の走行時におけるサイドウォール部8の剛性が低過ぎるため、操縦安定性を確保し難くなる虞がある。また、剛性可変部材60の弾性率が20MPaより大きくなる場合は、空気圧が低下することにより剛性可変部材60の剛性を高くした際における弾性率が大きくなり過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を高めた場合に、剛性可変部材60の剛性差が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、剛性可変部材60と、周囲の部材との間の剛性差が大きくなることに起因して、応力集中が発生し易くなり、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の損傷を抑制し難くなる虞がある。
【0084】
これに対し、剛性可変部材60の弾性率が、2MPa以上20MPa以下の範囲内で変化する場合は、空気圧が適正な通常の走行時におけるサイドウォール部8の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、空気圧が低下して剛性可変部材60の剛性を高めた場合に、剛性可変部材60と周囲の部材との間の剛性差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、空気圧が適正な通常の走行時における操縦安定性を確保しつつ、ランフラット走行時における、サイドウォール部8を構成する部材間の剛性差に起因するサイドウォール部8の損傷を抑制することができる。この結果、操縦安定性を確保しつつ、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0085】
また、剛性可変部材60は、基材の少なくとも一部が天然ゴムであるため、剛性可変部材60の耐久性を確保することができる。この結果、乗り心地を確保しつつ、より確実にランフラット耐久性を向上させることができる。
【0086】
また、制御部70は、給電部82と受電部72とにより、非接触で給電が行われるため、回転するランフラットタイヤ1に配置される制御部70に対して、容易に電力を供給することができ、剛性可変部材60の剛性を、容易に変化させることができる。これにより、回転するランフラットタイヤ1のサイドウォール部8の剛性を、容易に変化させることができる。この結果、より容易にランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0087】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、剛性可変部材60はサイド補強ゴム層40に埋設されているが、剛性可変部材60は、サイド補強ゴム層40に埋設される形態以外で配置されていてもよい。図5は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50の変形例であり、剛性可変部材60がカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置される場合の説明図である。剛性可変部材60は、例えば、図5に示すように、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されていてもよい。即ち、剛性可変部材60は、サイドウォール部8におけるカーカス層13とサイドゴム9との間に配置されていてもよい。剛性可変部材60が、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置される場合でも、ランフラットタイヤ1の空気圧に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、サイドウォール部8の剛性を変化させることができ、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0088】
また、剛性可変部材60は、これら以外の形態で配置されていてもよく、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向内側でカーカス層13とサイド補強ゴム層40との間に配置されていたり、サイド補強ゴム層40とインナーライナ16との間に配置されていたりしてもよい。または、剛性可変部材60が、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側で、カーカス層13から離間してサイドゴム9に埋設して配置されていてもよい。剛性可変部材60は、配置形態に関わらず、サイドウォール部8に配置されることにより、剛性可変部材60の剛性を変化させることによってサイドウォール部8の剛性を変化させることができるため、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0089】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状となる形状で形成されているが、剛性可変部材60は、これ以外の形状で形成されていてもよい。剛性可変部材60は、例えば、タイヤ子午断面における形状が矩形状の形状で形成されていてもよく、即ち、剛性可変部材60は、厚さがほぼ均一なシート状の形状で形成されていてもよい。剛性可変部材60は、剛性を高めた際にサイドウォール部8の剛性を高めることができるように形成されていれば、剛性可変部材60自体の形状は問わない。
【0090】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60の剛性は、空気圧センサ91で検出した空気圧が、所定の閾値以下になったことを検知した場合に剛性を高めているが、剛性可変部材60の剛性は、これ以外の形態で変化させてもよい。剛性可変部材60の剛性は、例えば、空気圧センサ91で検出した空気圧が低下するに従って剛性を高めてもよい。これにより、ランフラットタイヤ1のタイヤ径方向における剛性を、空気圧の低下に関わらず一定に維持することができ、空気圧が変化した場合でも乗り心地や操縦安定性を維持することができる。
【0091】
また、上述した実施形態では、ランフラットタイヤ1の空気圧は、空気圧センサ91によって検出しているが、ランフラットタイヤ1の空気圧は、空気圧センサ91以外を用いて検出してもよい。例えば、ランフラットタイヤ1が装着される車両に搭載される、車輪の回転速度を検出するセンサを用いて、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下したことを検出してもよい。具体的には、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した場合には、サイドウォール部8の撓み量が大きくなることにより、回転中心と路面との距離が小さくなり、回転半径が小さくなる。この場合、回転半径が小さくなっていない状態のランフラットタイヤ1と比較して、同じ速度で車両が走行をする際における回転速度が速くなる。このため、車両に装着される複数のランフラットタイヤ1のうち、一部のランフラットタイヤ1の空気圧が低下した場合には、空気圧が低下したランフラットタイヤ1の回転速度は、空気圧が低下していないランフラットタイヤ1の回転速度よりも速くなる。
【0092】
制御ユニット80は、車両に装着される複数のランフラットタイヤ1の回転速度を取得し、一部のランフラットタイヤ1の回転速度が、他のランフラットタイヤ1の回転速度と比較して、空気圧が低下したと判断できる程度に速い場合には、そのランフラットタイヤ1は空気圧が低下したと判断し、剛性可変部材60の剛性を高める制御を行ってもよい。ランフラットタイヤ1の空気圧を検出する手法は、空気圧が低下したことを車両の走行中に適切に検出することができれば、その手法は問わない。
【0093】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、磁性エラストマーにより構成されるが、剛性可変部材60は、磁性エラストマー以外によって構成されていてもよい。剛性可変部材60は、例えば、電気粘性エラストマーのような電気弾性体を用いても構成されていてもよい。剛性可変部材60に電気弾性体を用いる場合には、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70は、剛性可変部材60に対して任意の電力を印加することのできる電気回路により構成する。電気弾性体は、磁性エラストマーと比較して耐熱性が低くなっているが、温度が高くなり難い使用環境や使用条件で使用されるランフラットタイヤ1では、剛性可変部材60も高温にはなり難いので、そのようなランフラットタイヤ1では、剛性可変部材60に電気弾性体を用いてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、ランフラットタイヤ1の空気圧が低下した際に剛性を高めているが、剛性可変部材60の剛性は、空気圧以外に基づいて変化させてもよい。例えば、車両の旋回時には、車両の幅方向両側に装着されるランフラットタイヤ1のうち、旋回の半径方向外側に位置するランフラットタイヤ1に大きな負荷が作用するため、旋回の半径方向外側に位置するランフラットタイヤ1のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を高めてもよい。車両が旋回していることと、車両の旋回方向については、例えば、車両に備えられる操舵角センサ等での検出結果に基づいて判断することができる。
【0095】
さらに、車両の旋回時に、旋回の半径方向外側に位置するランフラットタイヤ1の剛性可変部材60の剛性を高める際には、当該ランフラットタイヤ1における、旋回の半径方向外側に位置するサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を、反対側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性よりも高めるのが好ましい。剛性可変部材60の剛性は、これらのように車両の旋回時に、旋回の半径方向外側に位置する剛性可変部材60の剛性を高めることにより、旋回時にサイドウォール部8への負荷が大きくなる部分の負荷を剛性可変部材60で補うことができ、操縦安定性を確保することができる。これにより、サイドウォール部8自体の剛性を高めることなく、車両の旋回時における負荷を剛性可変部材60で受けることができるため、乗り心地を低下させることなく、操縦安定性を確保することができる。
【0096】
また、上述した実施形態では、ランフラットタイヤ1は主溝30は4本が形成されているが、主溝30は4本以外であってもよい。また、上述した実施形態や変形例は、適宜組み合わせてもよい。タイヤ剛性可変装置50及びランフラットタイヤ1は、ランフラットタイヤ1におけるサイドウォール部8の一部に、剛性を変化させることができる剛性可変部材60を配置し、剛性可変部材60の剛性を、所定のセンサ出力情報に基づいて制御部70によって変化させることにより、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【0097】
[実施例]
図6は、ランフラットタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記のランフラットタイヤ1について、従来例のランフラットタイヤと、本発明に係るランフラットタイヤ1と、本発明に係るランフラットタイヤ1と比較する比較例のランフラットタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ランフラット耐久性と、乗り心地とについての試験を行った。
【0098】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが245/50R19 105Wサイズのランフラットタイヤを、リムサイズ19×7.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みして、排気量が2000ccのSUV車両のテスト車両に試験タイヤを装着してテスト車両で走行をすることにより行った。
【0099】
各試験項目の評価方法は、ランフラット耐久性については、テスト車両に装着される4つの試験タイヤのうち、前輪右側に装着される試験タイヤの空気圧を0kPaとし、前輪右側以外の3箇所に装着される試験タイヤの空気圧を200kPaとして、テストドライバーにより80km/hで周回路を走行した。ランフラット耐久性は、試験タイヤが破損するまでの走行距離を測定し、従来例の走行距離を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど、ランフラット走行時に破損し難く、ランフラット耐久性が優れていること示している。
【0100】
また、乗り心地の評価方法は、テスト車両に装着する試験タイヤの空気圧を4輪とも200kPaにしてテストコースを走行した際における、評価パネラーの官能評価により比較した。乗り心地は、評価パネラーの官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価し、指数値が大きいほど乗り心地がよく、乗り心地の性能に優れていることを示している。
【0101】
性能評価試験は、従来のランフラットタイヤの一例である従来例のランフラットタイヤと、本発明に係るランフラットタイヤ1の一例である実施例1〜5と、本発明に係るランフラットタイヤ1と比較するランフラットタイヤの一例である比較例1、2との8種類のタイヤについて行った。このうち、従来例のランフラットタイヤは、サイドウォール部に剛性可変部材を有しておらず、サイド補強ゴム層の弾性率が14MPaになっている。また、比較例1のランフラットタイヤは、サイドウォール部に剛性可変部材を有しておらず、サイド補強ゴム層の弾性率が10MPaになっており、乗り心地を重視したランフラットタイヤになっている。また、比較例2のランフラットタイヤは、サイドウォール部に剛性可変部材を有しておらず、サイド補強ゴム層の弾性率が18MPaになっており、ランフラット耐久性を重視したランフラットタイヤになっている。
【0102】
これに対し、本発明に係るランフラットタイヤ1の一例である実施例1〜5は、全てサイドウォール部8に剛性可変部材60を有しており、サイド補強ゴム層の弾性率は、12MPaになっている。さらに、実施例1〜5に係るランフラットタイヤ1は、剛性可変部材60の配置位置や、剛性可変部材60がタイヤ断面高さSHの35%以上65%以下の範囲内に少なくとも一部が位置しているか否か、剛性可変部材60を構成する材料、剛性可変部材60の弾性率が、それぞれ異なっている。
【0103】
これらのランフラットタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図6に示すように、実施例1〜5に示すランフラットタイヤ1は、従来例に対して、ランフラット耐久性を低下させることなく、乗り心地を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜5に示すランフラットタイヤ1は、ランフラット耐久性と乗り心地とを両立することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 ランフラットタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド接地面
4 トレッドゴム層
5 ショルダー部
8 サイドウォール部
9 サイドゴム
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
14 ベルト層
141、142 交差ベルト
16 インナーライナ
17 リムクッションゴム
18 タイヤ内面
20 陸部
30 主溝
40 サイド補強ゴム層
50 タイヤ剛性可変装置
60 剛性可変部材
70 制御部
71 励磁コイル
72 受電部
80 制御ユニット
81 受信装置
82 給電部
85 電源
90 センサ
91 空気圧センサ
100 リムホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6