【解決手段】タイヤ幅方向における両側に配置される一対のサイドウォール部8と、一対のサイドウォール部8のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置される一対のビード部10と、一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13と、を有する空気入りタイヤ1における少なくとも一方のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60と、剛性可変部材60に対してエネルギーを付与することにより剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70と、を備え、制御部70は、所定のセンサ出力情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させる。
前記センサ出力情報は、前記タイヤが装着される車両が有する操舵角センサ、横加速度センサ及びヨーレートセンサから出力される情報のうち、少なくとも1つの情報を含む請求項1または2に記載のタイヤ剛性可変装置。
前記剛性可変部材は、前記タイヤのタイヤ断面高さのタイヤ径方向内側の基準位置からタイヤ径方向外側に向かって前記タイヤ断面高さの40%以上80%以下の範囲内に少なくとも一部が配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
前記剛性可変部材は、前記タイヤのタイヤ径方向における前記剛性可変部材の高さが、前記タイヤのタイヤ断面高さの15%以上65%以下の範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
前記制御部は、前記タイヤのタイヤ周方向に沿った方向を螺旋の中心として前記剛性可変部材の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイルである請求項10に記載のタイヤ剛性可変装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るタイヤ剛性可変装置及びタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
[実施形態]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【0027】
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0028】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示すタイヤ子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成され、トレッド接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝35とが、それぞれ複数形成されており、この主溝30とラグ溝35とにより、トレッド接地面3には陸部20が複数形成されている。本実施形態では、主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。
【0029】
なお、ここでいう主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する縦溝をいう。主溝30は、タイヤ赤道面CLとトレッド接地面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行になっており、タイヤ周方向に直線状に延在してもよく、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
【0030】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に配設されており、換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。このように形成されるサイドウォール部8は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分になっており、ゴム材料であるサイドゴム9を有している。サイドウォール部8に配置されるサイドゴム9は、弾性率が2.0MPa以上7.0MPa以下の範囲内になっている。
【0031】
タイヤ幅方向における両側に位置する一対のサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、それぞれビード部10が配置されている。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配置されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配置されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
【0032】
また、トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層14が設けられている。ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とが積層されている。一対の交差ベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、一対の交差ベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、一対の交差ベルト141、142は、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。
【0033】
ベルトカバー143は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、0°以上10°以下)になっている。本実施形態では、ベルトカバー143は、一対の交差ベルト141、142全体を覆って配設されている。また、一対のベルトカバー143は、例えば、1本或いは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。また、ベルトカバー143は、これ以外の構成でもあってもよい。ベルトカバー143は、例えば、一対の交差ベルト141、142のタイヤ幅方向端部付近のみに配設されていてもよい。
【0034】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0035】
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。サイドウォール部8に配置されるサイドゴム9は、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されている。
【0036】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0037】
また、サイドウォール部8には、剛性を変化させることができる剛性可変部材60が配置されている。剛性可変部材60は、磁性弾性体である磁性エラストマーからなり、外部からエネルギーを付与することにより、剛性が変化する部材になっている。剛性可変部材60は、サイドウォール部8の一部に配置されており、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置されている。即ち、剛性可変部材60は、一対のサイドウォール部8の双方に配置されている。本実施形態では、剛性可変部材60は、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されており、サイドウォール部8におけるカーカス層13とサイドゴム9との間に、剛性可変部材60は配置されている。
【0038】
図2は、
図1に示すサイドウォール部8の詳細図である。剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のタイヤ子午断面における形状が、カーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分に沿ってタイヤ幅方向外側に凸となって湾曲する形状で形成されており、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。つまり、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状となる形状となり、中心軸がタイヤ回転軸とほぼ一致する円環状の形状で形成されている。このように形成される剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のタイヤ断面高さSHのタイヤ径方向内側の基準位置であるリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されている。なお、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ断面高さSHの50%以上70%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されるのが好ましい。
【0039】
ここでいうタイヤ断面高さSHは、トレッド部2における最もタイヤ径方向外側に位置している部分と、リム径基準位置BLとのタイヤ径方向における距離になっている。リム径基準位置BLは、JATMAの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線である。つまり、タイヤ断面高さSHは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。
【0040】
また、ここでいう正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0041】
また、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、空気入りタイヤ1のタイヤ断面高さSHの15%以上65%以下の範囲内になっている。なお、剛性可変部材60における、リム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に配置される部分は、タイヤ径方向における当該範囲の20%以上の範囲に配置されるのが好ましい。
【0042】
また、空気入りタイヤ1には、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70が備えられている。制御部70は、剛性可変部材60に対して外部からエネルギーを付与することにより、剛性可変部材60の剛性を変化させることが可能になっている。これらの剛性可変部材60と制御部70とは、空気入りタイヤ1の剛性を変化させるタイヤ剛性可変装置50を構成しており、換言すると、本実施形態に係る空気入りタイヤ1には、剛性を変化させることができるタイヤ剛性可変装置50が用いられている。
【0043】
図3は、
図2に示す剛性可変部材60と制御部70の模式図である。剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状になっているが、
図3では、剛性可変部材60と制御部70との形態を説明するために、剛性可変部材60の形状を簡略化し、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が円形となる円環状の形状で図示している。
【0044】
剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70は、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿った方向を螺旋の中心として、剛性可変部材60の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイル71になっている。即ち、制御部70である励磁コイル71は、表面が絶縁性材料によって覆われた金属等の導電性の部材からなる線材が、剛性可変部材60の周方向に沿った方向を螺旋の中心として、円環状に形成される剛性可変部材60の外周面に沿って周方向に螺旋状に巻き回されることにより、コイル状に形成されている。
【0045】
コイル状に形成される励磁コイル71は、導電性の線材に電力が供給されることにより、磁場を発生させることが可能になっており、剛性可変部材60に対してエネルギーとして磁場を印加することにより、剛性可変部材60の剛性を変化させることが可能になっている。剛性可変部材60は、磁性エラストマーからなるため、励磁コイル71によって印加される磁場によって磁性エラストマーに含まれる磁性粒子が影響を受けることにより、弾性率を変化させることが可能になっている。即ち、剛性可変部材60は、制御部70である励磁コイル71から磁場を印加することにより、剛性を変化させることが可能になっている。具体的には、剛性可変部材60は、励磁コイル71から印加される磁場が強くなることにより、弾性率が大きくなり、剛性が高くなる。
【0046】
剛性可変部材60の剛性を変化させることができる制御部70は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60に対して、互いに同等の形態でコイル状に形成される励磁コイル71として、それぞれ配置されている。これにより、制御部70は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8にそれぞれ配置される剛性可変部材60の剛性を、個別に変化させることが可能になっている。
【0047】
本実施形態では、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーの磁性粒子は、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉になっており、鉄粉の直径は、1μm以上10μm以下の範囲内であるのが好ましい。また、剛性可変部材60は、基材の少なくとも一部が天然ゴムになっている。
【0048】
また、励磁コイル71から印加される磁場によって弾性率を変化させることができる剛性可変部材60は、1.5MPa以上15.0MPa以下の範囲内で弾性率が変化することが可能になっている。なお、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーは、印加される磁場が弱い場合は弾性率が低く、磁場が強くなるに従って弾性率が大きくなる特性を有している。このため、本実施形態における剛性可変部材60は、励磁コイル71から磁場が印加されない場合は、弾性率が1.5MPa程度になっており、励磁コイル71から印加される磁場が最大の場合には、弾性率が15.0MPa程度になり、剛性可変部材60の弾性率は、印加される磁場に応じてこの範囲内で変化する。
【0049】
図4は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50の構成を示す説明図である。タイヤ剛性可変装置50は、さらに、制御部70である励磁コイル71に電力を供給する給電部82及び受電部72と、制御部70を制御する制御ユニット80と、制御部70で剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いる情報を取得するセンサ90とを備えている。このうち、受電部72は、空気入りタイヤ1にリム組みされるリムホイール100に取り付けられており、リムホイール100が取り付けられた空気入りタイヤ1の内腔側で、導電性の線材等により励磁コイル71に電気的に接続されている。受電部72は、タイヤ幅方向における両側に配置される剛性可変部材60の励磁コイル71ごとに設けられており、各受電部72は、それぞれリムホイール100に取り付けられて配置されている。また、受電部72は、円環状の形状で形成されており、空気入りタイヤ1に装着されるリムホイール100の回転時には、リムホイール100と一体となって回転する。
【0050】
給電部82は、受電部72ごとに設けられており、即ち、給電部82は、タイヤ幅方向における両側に配置される剛性可変部材60の励磁コイル71ごとに設けられている。各給電部82は、円環状の形状で形成され、リムホイール100に取り付けられる受電部72からは離間して、それぞれの給電部82が対応する受電部72に対向する位置に配置されている。受電部72に対向する位置に配置される給電部82は、空気入りタイヤ1が装着される車両の車体側に取り付けられており、空気入りタイヤ1やリムホイール100の回転時においても、回転することなく受電部72に対向する状態を維持することが可能に配置されている。このように配置される給電部82は、受電部72に対して非接触で電力を供給することが可能になっており、例えば、電磁誘導による誘導起電力により、非接触で受電部72に対して電力を供給することが可能になっている。このため、受電部72に接続される励磁コイル71である制御部70は、給電部82と受電部72とにより、非接触で給電が行われる。
【0051】
制御ユニット80は、各種処理を実行するコントローラとして機能するCPU(Central Processing Unit)と、各種情報を記憶するメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有する制御装置になっている。制御ユニット80には、電源85が接続されており、電源85から給電部82に供給する電力を制御することが可能になっている。これにより、制御ユニット80は、電源85から供給される電力を、給電部82及び受電部72を介して、制御部70に供給することが可能になっている。その際に、制御ユニット80は、制御部70に供給する電力のON・OFFのみでなく、電力の大きさを調節して供給することができ、制御部70である励磁コイル71は、供給される電力の大きさに応じて、剛性可変部材60に印加する磁場の大きさを変化させることができる。これにより、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を変化させることができる。なお、電源85としては、空気入りタイヤ1が装着される車両に搭載されるバッテリーが用いられる。
【0052】
制御ユニット80は、センサ90の出力情報に基づいて、制御部70に供給する電力を制御し、制御部70は、供給された電力によって、剛性可変部材60の剛性を変化させる。その際に、制御ユニット80は、タイヤ幅方向両側に配置される制御部70に個別に電力を供給し、タイヤ幅方向両側に配置される剛性可変部材60の剛性を個別に変化させることができる。剛性可変部材60の剛性が変化した場合、剛性可変部材60が配置されるサイドウォール部8全体としての剛性が変化するため、タイヤ幅方向両側に配置される剛性可変部材60の剛性が個別に変化した場合には、一対のサイドウォール部8の剛性も個別に変化する。このため、換言すると、制御部70は、所定のセンサ出力情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させることができる。
【0053】
剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いるセンサ出力情報としては、空気入りタイヤ1が装着される車両の旋回に関する情報を用いられ、例えば、空気入りタイヤ1が装着される車両が有する操舵角センサや、横加速度センサ、ヨーレートセンサ等から出力される情報が用いられる。本実施形態では、制御ユニット80において、制御部70に供給する電力を制御する際に用いるセンサ出力情報は、空気入りタイヤ1が装着される車両が有する操舵角センサ91から出力される情報になっている。操舵角センサ91は、車両に備えられ、車両のドライバが操作をするステアリングホイール(図示省略)の回転角を検出することにより、ステアリングホイールの操舵角を検出することができる。これにより、操舵角センサ91は、車両の走行時において進行方向を変える際に変化させる、車両が有する操舵輪の操舵角を検出することが可能になっている。
【0054】
図5は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50が搭載される車両200の模式図である。制御ユニット80は、さらに、車両200に複数が装着される空気入りタイヤ1のそれぞれの剛性可変部材60の剛性を、個別に変化させることが可能になっている。このため、制御ユニット80は、各空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側に配置される剛性可変部材60の剛性を個別に変化させることができると共に、車両幅方向における両側に配置される空気入りタイヤ1の剛性可変部材60の剛性をそれぞれ個別に変化させることができる。これにより、制御ユニット80は、各空気入りタイヤ1が有する一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させるのみでなく、車両200の幅方向における両側に配置される空気入りタイヤ1の剛性可変部材60の剛性を個別に変化させて、サイドウォール部8の剛性を空気入りタイヤ1ごとに個別に変化させることができる。
【0055】
このように、空気入りタイヤ1が有する剛性可変部材60の剛性を変化させることができる制御ユニット80は、操舵角センサ91で検出した操舵角が操舵角センサ91から伝達されることにより、走行中における車両200の操舵角を随時取得することが可能になっている。制御ユニット80は、操舵角センサ91より取得した操舵角に基づいて、制御部70に供給する電力を制御し、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60の剛性を変化させる。例えば、操舵角センサ91で検出した操舵角が、所定の閾値以上になったことを検知した場合には、制御ユニット80は、操舵角に応じて剛性可変部材60の剛性を高める制御を行う。
【0056】
これらのように構成される、本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両200に装着する際には、ビード部10にリムホイール100を嵌合することによってリムホイール100に空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両200に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両200が走行すると、トレッド接地面3のうち下方に位置する部分のトレッド接地面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両200で乾燥した路面を走行する場合は、主にトレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド接地面3と路面との間の水が主溝30やラグ溝35等の溝に入り込み、これらの溝でトレッド接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド接地面3は路面に接地し易くなり、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、車両200は走行することが可能になる。
【0057】
空気入りタイヤ1を装着した車両200の走行時は、これらのように空気入りタイヤ1のトレッド接地面3と路面との間に発生する摩擦力により、車両200は走行することが可能となるが、車両200の走行時は、空気入りタイヤ1の各部には、様々な方向の荷重が作用する。空気入りタイヤ1に作用する荷重は、内部に充填された空気の圧力や、空気入りタイヤ1の骨格として設けられるカーカス層13等によって受ける。例えば、車両200の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部10との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部8等が撓んだりしながら受ける。つまり、サイドウォール部8は、タイヤ径方向における荷重を受けると共に、大きな荷重を受けた際には適度に撓むことにより、車両200の乗り心地を確保することが可能になっている。このため、車両200の乗り心地は、サイドウォール部8の剛性が低くなることによって撓み易くなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向における剛性が低くなるに従って、良化する傾向にある。
【0058】
車両200の走行時には、直進走行のみでなく、旋回したり車線変更を行ったりしながら走行をするが、車両200の走行中に旋回や車線変更を行う際には、車両200のドライバがステアリングホイールを操作することにより行う。ステアリングホイールを操作した際には、車両200の操舵輪の向きが、ステアリングホイールの操舵角に応じて変化する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1が装着される車両200では、前輪が操舵輪になっている。
【0059】
車両200の走行中に操舵輪の向きが変わることによって車両200が旋回をした場合には、空気入りタイヤ1には、車両200が一定の速度で直進走行をしているときと比較して、より大きな荷重が作用し易くなる。具体的には、車両200の走行中に旋回をした場合、車両200に装着される空気入りタイヤ1には、車両200の幅方向両側に装着される空気入りタイヤ1のうち、旋回方向における外側に装着される空気入りタイヤ1に、より大きな荷重が作用する。
【0060】
車両200の旋回時に空気入りタイヤ1の作用する大きな荷重は、直進走行時と同様に、サイドウォール部8が受けるが、この荷重によってサイドウォール部8が大きく撓んだ場合、操縦安定性が悪化し易くなる虞がある。つまり、車両200の旋回時に、空気入りタイヤ1に作用する荷重によってサイドウォール部8が大きく撓む場合、ドライバが操舵の操作を行った後に、サイドウォール部8の変形量が、その操舵量に応じた変形量になるまでに要する時間が長くなり易くなる。このため、空気入りタイヤ1は、サイドウォール部8の変形量が、ドライバの操舵に応じた変形量になるまでの時間が長くなるため、ドライバの操舵の操作に追従し難くなり、操縦安定性が不安定になり易くなる。特に、車両200の乗り心地を良くするためにサイドウォール部8の剛性を低くした場合、サイドウォール部8の変形量は、ドライバの操舵の操作により追従し難くなり、操縦安定性はより不安定になり易くなる。
【0061】
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ剛性可変装置50が用いられており、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の剛性を変化させることが可能になっている。これにより、乗り心地の悪化を抑制しつつ、操縦安定性を確保することができる。次に、このような効果を発揮するタイヤ剛性可変装置50の動作について説明する。
【0062】
タイヤ剛性可変装置50は、空気入りタイヤ1が装着される車両200の操舵角を検出する操舵角センサ91を備えており、空気入りタイヤ1を装着した車両200の運転時は、車両200のドライバの運転操作による操舵角を、操舵角センサ91によって検出する。操舵角センサ91は、例えば、ステアリングホイールと共に回転をするシャフト(図示省略)の回転角度を検出することが可能になっており、当該シャフトの回転角度を検出することにより、直進状態の回転角度を中心とする操舵の方向と操舵角を、検出することができる。操舵角センサ91で検出した操舵角は、操舵角センサ91から制御ユニット80に伝達され、制御ユニット80で取得する。
【0063】
制御ユニット80は、取得した操舵角に基づいて、制御部70を介して剛性可変部材60の剛性を制御する。制御ユニット80は、制御部70を介して剛性可変部材60の剛性を制御する際には、制御部70に供給する電力を調節することにより行う。即ち、制御部70は、励磁コイル71からなるため、電力が供給されることにより、供給された電力に応じた強さの磁場を発生することができ、供給される電力が大きくなるに従って、発生する磁場を強くすることができる。また、剛性可変部材60は、磁性エラストマーからなるため、剛性可変部材60に巻き回される励磁コイル71から付与される磁場に応じて剛性が変化し、付与される磁場が強くなるに従って、剛性が高くなる。このため、剛性可変部材60の剛性は、励磁コイル71に供給する電力を調節し、励磁コイル71で発生する磁場の強さを調節することにより、調節することが可能になっている。
【0064】
ここで、車両200の走行中は、空気入りタイヤ1は回転をするが、回転する空気入りタイヤ1に配置される励磁コイル71に供給する電力は、車両200の車体側の配置される給電部82と、空気入りタイヤ1と一体となって回転するリムホイール100に配置される受電部72とにより、非接触で供給される。即ち、リムホイール100に配置される受電部72は、励磁コイル71に対して電気的に接続されており、給電部82は、受電部72からは離間しつつ受電部72に対して対向する位置に配置されているため、給電部82から受電部72へは、電磁誘導による誘導起電力により電力を供給することが可能になっている。受電部72に供給された電力は、励磁コイル71に供給され、励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生する。これにより、回転をする空気入りタイヤ1に配置される励磁コイル71に対して、車体側から電力を供給し、励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生することができ、励磁コイル71で発生する磁場の強さを調節することにより、剛性可変部材60の剛性を調節することができる。
【0065】
操舵角センサ91より取得した操舵角に基づいて、制御ユニット80によって剛性可変部材60の剛性の調節する際には、例えば、取得した操舵角が、車両200は直進走行をしていることを示す角度である場合は、制御ユニット80は、剛性可変部材60の剛性を高くしない制御を行う。この場合における、車両200が直進走行をしていることを示す操舵角の角度は、例えば、車両200の直進走行時における操舵角を中心として、ステアリングホイールの回転方向における双方の方向においてそれぞれ境界の角度を設定し、境界の角度同士の範囲内とに位置する回転角度を、車両200が直進走行をしていることを示す操舵角の角度とする。このため、操舵角センサ91で検出した操舵角が、この範囲内に位置する角度である場合は、制御ユニット80は、車両200は直進走行、或いは直進走行に近い走行を行っていると判断し、励磁コイル71に対して電力を供給しない。これにより、励磁コイル71は、磁場を発生しないため、励磁コイル71が巻き回される剛性可変部材60は、磁場によって剛性が高くならない。従って、サイドウォール部8の剛性が高くならないため、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向における剛性は、剛性可変部材60によって高くならず、乗り心地が確保される。
【0066】
また、取得した操舵角が、車両200が旋回していることを示している場合は、制御ユニット80は、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60を個別に制御することにより、剛性可変部材60の剛性を必要に応じて高くする制御を行い、一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させる。換言すると、制御部70は、車両200が旋回していることを検知した際には、操舵角に応じて、空気入りタイヤ1が有する一対のサイドウォール部8のうち、車両200の旋回によって荷重が大きくなるサイドウォール部8の剛性を高めることができる剛性可変部材60の剛性を高くする。つまり、操舵角センサ91で検出した操舵角が、車両200が直進走行をしていることを示す角度より大きい場合は、制御ユニット80は、荷重が大きくなるサイドウォール部8に配置されている剛性可変部材60の剛性を変化させることができる制御部70、即ち、励磁コイル71に対して、所定の大きさの電力を供給する。これにより、荷重が大きくなるサイドウォール部8に配置されている剛性可変部材60の剛性を変化させることができる励磁コイル71は、供給された電力によって磁場を発生し、磁場を発生した励磁コイル71が巻き回される剛性可変部材60は、励磁コイル71で発生した磁場によって剛性が高くなる。
【0067】
このように、励磁コイル71で発生した磁場によって剛性が高くなった剛性可変部材60が配置されるサイドウォール部8は、剛性可変部材60の剛性が高くなるのに伴って剛性が高くなる。これにより、車両200の走行時の旋回操作によって大きな荷重が作用するサイドウォール部8は、剛性可変部材60の剛性が高くなるのに伴い剛性が高くなるため、車両200の旋回時においても大きく撓むことが抑制される。従って、車両200の走行時における旋回操作時に、サイドウォール部8の変形量がドライバの操舵の操作により追従し難くなることが抑制されるため、操縦安定性を確保することができる。
【0068】
図6は、車両200の旋回時に剛性を高くする制御についての説明図である。制御ユニット80は、車両200の旋回時に剛性可変部材60の剛性を高めるが、剛性可変部材60の剛性を高くする制御について具体的に説明する。空気入りタイヤ1が装着される車両200の旋回時には、制御ユニット80は、旋回方向における外輪201側となる空気入りタイヤ1の剛性可変部材60の剛性を高める制御を行う。また、空気入りタイヤ1が装着される車両200の旋回時には、旋回方向における内輪202側となる空気入りタイヤ1においては、制御ユニット80は、旋回方向における外側に位置する剛性可変部材60の剛性を高める制御を行う。つまり、車両200の旋回時には、制御ユニット80は、旋回方向における内輪202側となる空気入りタイヤ1の、車両装着方向内側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を高める制御を行う。
【0069】
なお、この場合における外輪201と内輪202は、車両200の幅方向両側に装着される車輪のうち、外輪201は、相対的に旋回の中心から離れる側に装着される車輪になっており、内輪202は、旋回の中心が位置する側に装着される車輪になっている。
【0070】
詳しくは、外輪201側となる空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側の剛性可変部材60のうち、車両装着方向外側の剛性可変部材60aとし、車両装着方向内側の剛性可変部材60bとする場合、制御ユニット80は、車両200の旋回時には、外輪201側となる空気入りタイヤ1が有する剛性可変部材60のうち、車両装着方向外側の剛性可変部材60aと、車両装着方向内側の剛性可変部材60bとの双方の剛性を高める制御を行う。車両200の旋回時には、外輪201側となる空気入りタイヤ1には、大きな荷重が作用するため、このように、双方の剛性可変部材60の剛性を高めることにより、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8の剛性を高めることができる。これにより、車両200の旋回時に、外輪201の空気入りタイヤ1に大きな荷重が作用する場合でも、この大きな荷重によってタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8が大きく撓むことを抑制することができる。
【0071】
また、内輪202側となる空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側の剛性可変部材60のうち、車両装着方向内側の剛性可変部材60cとし、車両装着方向外側の剛性可変部材60dとする場合、制御ユニット80は、空気入りタイヤ1が装着される車両200の旋回時には、内輪202側となる空気入りタイヤ1が有する剛性可変部材60のうち、車両装着方向内側の剛性可変部材60cの剛性を高める制御を行う。つまり、車両200の旋回時には、内輪202側となる空気入りタイヤ1では、空気入りタイヤ1における車両装着方向外側は、旋回方向内側となり、空気入りタイヤ1における車両装着方向内側は、旋回方向外側となる。また、車両200の旋回時における荷重は、旋回方向外側寄りの部分により大きな荷重が作用し易くなるため、内輪202側となる空気入りタイヤ1においては、車両装着方向内側寄りの部分に、より大きな荷重が作用し易くなる。このため、車両200の旋回時には、内輪202側となる空気入りタイヤ1が有する剛性可変部材60のうち、車両装着方向内側の剛性可変部材60cの剛性を高めることにより、内輪202において大きな荷重が作用し易い、旋回方向外側のサイドウォール部8の剛性を高めることができる。これにより、車両200の旋回時に、内輪202の空気入りタイヤ1に大きな荷重が作用する場合でも、この大きな荷重によって旋回方向外側のサイドウォール部8が大きく撓むことを抑制することができる。
【0072】
車両200の旋回時には、外輪201の剛性可変部材60の剛性と、内輪202の剛性可変部材60の剛性とを、これらのように高めることにより、車両200の旋回時に大きな荷重が作用するサイドウォール部8の剛性を、適切に高めることができる。これにより、車両200の旋回時におけるサイドウォール部8の変形量を抑えることができるため、操縦安定性を確保することができる。
【0073】
以上の実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50は、外部からエネルギーを付与することにより剛性が変化する剛性可変部材60を有しており、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8に配置されるため、剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、サイドウォール部8の剛性を変化させることができる。また、タイヤ剛性可変装置50は、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70を備え、制御部70は、所定のセンサ出力情報によって剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させるため、センサ出力情報に基づいて、車両200の旋回時に大きな荷重が作用する側のサイドウォール部8の剛性を変化させることができる。これにより、車両200の直進時における乗り心地を確保しつつ、車両200の旋回時に大きな荷重が作用する側のサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、サイドウォール部8が旋回時の荷重によって撓み過ぎることを抑制でき、操縦安定性を確保することができる。
【0074】
つまり、タイヤ剛性可変装置50は、サイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、車両200の旋回時における操縦安定性を確保できるため、剛性可変部材60の剛性を高めていない状態のサイドウォール部8の剛性を、比較的低めに設定することができる。従って、タイヤ剛性可変装置50は、車両200の直進時における空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の剛性が高くなり過ぎること抑制することができ、車両200の走行時間の中の大部分を示す直進走行時における乗り心地を確保することができる。この結果、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0075】
また、実施形態に係る空気入りタイヤ1は、上記タイヤ剛性可変装置50が用いられるため、サイドウォール部8の剛性を低めに設定して乗り心地を確保しつつ、車両200の旋回時に大きな荷重が作用する側のサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって補うことにより、操縦安定性を確保することができる。この結果、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0076】
また、剛性可変部材60は、カーカス層13の外側に配置されているため、剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、サイドウォール部8の剛性を効率的に変化させることができる。つまり、タイヤ径方向の荷重によってサイドウォール部8が撓む場合は、サイドウォール部8は、タイヤ径方向に潰れてタイヤ幅方向外側への突出量が多くなる方向に変形し、骨格として構成されるカーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分も、タイヤ幅方向外側への突出量が多くなる方向に変形する。このため、剛性可変部材60をカーカス層13の外側に配置した場合は、サイドウォール部8が撓む際に、カーカス層13の変形を、カーカス層13が突出する側から抑えることができ、カーカス層13が大きく撓むことを容易に抑制することができる。これにより、サイドウォール部8が大きく撓むことを容易に抑制することができ、剛性可変部材60は、サイドウォール部8の剛性を効率的に変化させることができる。この結果、操縦安定性と乗り心地とを容易に両立することができる。
【0077】
また、剛性可変部材60の剛性は、空気入りタイヤ1が装着される車両200の旋回時に高めるため、直進走行時には乗り心地を確保し、車両200の旋回時にはサイドウォール部8の変形量を低減してサイドウォール部8の変形がドライバの操舵の操作に追従し易くなるようにすることができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを容易に両立することができる。
【0078】
また、車両200の旋回時には、旋回方向における外輪201側となる空気入りタイヤ1の剛性可変部材60の剛性を高めるため、車両200の旋回時に、車両200の幅方向において大きな荷重が作用し易くなる外輪201側の、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8の剛性を高めることができる。これにより、車両200に装着される複数の空気入りタイヤ1の中で、車両200の旋回時に相対的に大きな荷重が作用し易い空気入りタイヤ1のサイドウォール部8の剛性を高めることができる。従って、車両200の旋回時に大きな荷重が作用し易いサイドウォール部8の変形量を、より確実に低減することができ、サイドウォール部8の変形が、ドライバの操舵の操作に追従し易くなるようにすることができる。この結果、より確実に操縦安定性を向上させることができる。
【0079】
また、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に少なくとも一部が配置されるため、サイドウォール部8の変形を剛性可変部材60によってより確実に低減して、操縦安定性を確保することができる。つまり、車両200の旋回時に大きくなる荷重によってサイドウォール部8の変形量が大きくなる際には、サイドウォール部8は、タイヤ径方向における中央付近で大きく撓み易くなる。このため、サイドウォール部8に剛性可変部材60を配置した場合でも、剛性可変部材60が、空気入りタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に配置されない場合は、車両200の旋回時におけるサイドウォール部8の変形を、効果的に低減し難くなる虞がある。この場合、車両200の走行時におけるドライバの操舵の操作に伴うサイドウォール部8の変形を、操舵の操作に効果的に追従させるのが困難になる虞がある。
【0080】
これに対し、空気入りタイヤ1のリム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に向かってタイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に、剛性可変部材60の少なくとも一部が配置される場合は、車両200の旋回時に、サイドウォール部8における変形量が大きくなる部分のサイドウォール部8の変形を、剛性可変部材60によって効果的に低減することができる。これにより、車両200の走行時におけるドライバの操舵の操作に伴うサイドウォール部8の変形が、操舵の操作に対してより確実に追従し易くなるようにすることができる。この結果、より確実に操縦安定性を向上させることができる。
【0081】
また、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、空気入りタイヤ1のタイヤ断面高さSHの15%以上65%以下の範囲内であるため、剛性可変部材60の剛性を変化させた際におけるサイドウォール部8の剛性の急激な変化を抑制しつつ、車両200の旋回時におけるサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって効果的に確保することができる。つまり、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、タイヤ断面高さSHの15%未満である場合は、剛性可変部材60の高さHVが小さ過ぎるため、車両200の旋回時に剛性可変部材60の剛性を高めても、サイドウォール部8の剛性を効果的に確保し難くなる虞がある。この場合、車両200の旋回時におけるサイドウォール部8の変形を低減し難くなり、車両200の走行時におけるドライバの操舵の操作に伴うサイドウォール部8の変形を、操舵の操作に効果的に追従させるのが困難になる虞がある。また、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、タイヤ断面高さSHの65%より大きい場合は、剛性可変部材60の高さHVが大き過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を変化させた場合、剛性可変部材60の剛性の変化に伴うサイドウォール部8の剛性の変化が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、剛性可変部材60の剛性を変化させた際に、サイドウォール部8の剛性が急激に変化するため、車両200のドライバに違和感を生じさせる虞があり、乗り心地の悪化につながる虞がある。
【0082】
これに対し、タイヤ径方向における剛性可変部材60の高さHVが、空気入りタイヤ1のタイヤ断面高さSHの15%以上65%以下の範囲内である場合は、剛性可変部材60の剛性を変化させた際におけるサイドウォール部8の剛性の急激な変化を抑制しつつ、車両200の旋回時におけるサイドウォール部8の剛性を、剛性可変部材60によって効果的に確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0083】
また、車両200の旋回時には、旋回方向における外側に位置する剛性可変部材60の剛性を高めるため、車両200の旋回時に、タイヤ幅方向両側に配置される一対のサイドウォール部8のうち大きな荷重が作用し易くなる側に位置するサイドウォール部8の剛性を高めることができる。これにより、車両200の旋回時に大きな荷重が作用し易いサイドウォール部8の変形量を、より確実に低減することができ、サイドウォール部8の変形が、ドライバの操舵の操作に追従し易くなるようにすることができる。この結果、より確実に操縦安定性を向上させることができる。
【0084】
また、車両200の旋回時には、旋回方向における内輪202側となる空気入りタイヤ1の車両装着方向内側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60cの剛性を高めるため、車両200の旋回時に、内輪202側の空気入りタイヤ1において大きな荷重が作用し易くなる側に位置するサイドウォール部8の剛性を高めることができる。これにより、車両200の旋回時に大きな荷重が作用し易いサイドウォール部8の変形量を、より確実に低減することができ、サイドウォール部8の変形が、ドライバの操舵の操作に追従し易くなるようにすることができる。一方で、車両200の旋回時においても、内輪202側の空気入りタイヤ1における車両装着方向外側のサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60dは、剛性を高めないため、車両200の旋回時にサイドウォール部8の剛性を高め過ぎることに起因する乗り心地の悪化を抑制することができ、乗り心地を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0085】
また、剛性可変部材60は、磁性エラストマーであるため、剛性可変部材60の耐熱性を確保することができ、サイドウォール部8の温度が高くなった際における剛性可変部材60の損傷を抑制することができる。つまり、剛性を変化させることができる剛性可変部材60は、電力を印加することにより弾力性が変化する電気粘性エラストマーのような電気弾性体を用いても構成することができるが、電気弾性体は、磁性エラストマーと比較して耐熱性が低くなっている。一方で、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8は、車両200の走行時には変形を繰り返しながら回転をしており、特に、車両200の旋回時には、サイドウォール部8には大きな荷重が作用するため、高速走行や旋回が多い走行の場合には、サイドウォール部8の温度は高くなり易くなっている。このため、剛性可変部材60に、磁性エラストマーを用いて剛性可変部材60の耐熱性を確保することにより、高速走行や旋回が多い走行を行った際にサイドウォール部8の温度が高くなることに起因する、剛性可変部材60の損傷を抑制することができる。これにより、剛性可変部材60の耐久性を確保することができ、サイドウォール部8に剛性可変部材60を配置することによる効果を、より確実に得ることができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0086】
また、制御部70は、剛性可変部材60の外周に螺旋状に巻き回される励磁コイル71により形成されるため、制御部70によって剛性可変部材60に対してエネルギーを付与して剛性可変部材60の剛性を変化させる際に、剛性可変部材60の剛性を、タイヤ周方向において均一に変化させることができる。これにより、剛性可変部材60のタイヤ周方向における剛性の均一性を確保することができ、剛性可変部材60のタイヤ周方向における剛性が不均一になることに起因する、空気入りタイヤ1の回転時の振動を抑制して乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0087】
また、制御部70は、螺旋状に巻き回される励磁コイル71によって形成されるため、空気入りタイヤ1の製造時における加硫成形時に、剛性可変部材60の成形に追従することができる。これにより、剛性可変部材60の剛性を変化させるために配置する制御部70を、生産性を損なうことなく配置することができる。これらの結果、生産性の低下を抑えつつ、より確実に乗り心地を向上させることができる。
【0088】
また、剛性可変部材60を構成する磁性エラストマーは、磁性粒子の直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉であるため、より確実に剛性を変化させることができる。つまり、磁性エラストマーは、磁性粒子が小さくなるに従って透磁率が高く、残留磁化が小さくなるため、直径が0.1μm以上100μm以下の範囲内の鉄粉を磁性粒子として用いることにより、励磁コイル71で磁場を印加した際に、効率良く剛性を変化させることができる。これにより、より確実に、車両200の直進走行時における乗り心地を確保しつつ、旋回時における操縦安定性を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0089】
また、剛性可変部材60は、弾性率が1.5MPa以上15.0MPa以下の範囲内で変化するため、車両200の直進走行時における操縦安定性を確保しつつ、旋回時における乗り心地の悪化を抑制することができる。つまり、剛性可変部材60の弾性率が1.5MPa未満になる場合は、剛性可変部材60の剛性を高めない状態における弾性率が小さくなり過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を高めない状態におけるサイドウォール部8の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、車両200の直進走行時におけるサイドウォール部8の剛性が低過ぎるため、直進走行を行っている際の操縦安定性を確保し難くなる虞がある。また、剛性可変部材60の弾性率が15.0MPaより大きくなる場合は、剛性可変部材60の剛性を高くした際における弾性率が大きくなり過ぎるため、剛性可変部材60の剛性を高めた状態におけるサイドウォール部8の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、車両200の旋回時に、剛性可変部材60によって剛性を高めるサイドウォール部8の剛性が高くなり過ぎるため、旋回時における乗り心地が悪化する虞がある。
【0090】
これに対し、剛性可変部材60の弾性率が、1.5MPa以上15.0MPa以下の範囲内で変化する場合は、車両200の直進走行時におけるサイドウォール部8の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、車両200の旋回時にサイドウォール部8の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、車両200の直進走行時における操縦安定性を確保しつつ、旋回時における乗り心地の悪化を抑制することができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0091】
また、剛性可変部材60は、基材の少なくとも一部が天然ゴムであるため、剛性可変部材60の耐久性を確保することができる。この結果、乗り心地を確保しつつ、長期に亘って操縦安定性を向上させることができる。
【0092】
また、制御部70は、給電部82と受電部72とにより、非接触で給電が行われるため、回転する空気入りタイヤ1に配置される制御部70に対して、容易に電力を供給することができ、剛性可変部材60の剛性を、容易に変化させることができる。これにより、回転する空気入りタイヤ1のサイドウォール部8の剛性を、容易に変化させることができる。この結果、より容易に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0093】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向両側のサイドウォール部8に配置されているが、剛性可変部材60は、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部8に配置されていなくてもよい。剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1における少なくとも一方のサイドウォール部8に配置されていればよい。剛性可変部材60は、空気入りタイヤ1における少なくとも一方のサイドウォール部8に配置し、剛性可変部材60の剛性を制御部70によって変化させることにより、車両200の旋回時に、荷重が大きくなるサイドウォール部8の剛性を剛性可変部材60によって高めることができる。これにより、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0094】
また、上述した実施形態では、制御部70が剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いるセンサ出力情報として、空気入りタイヤ1が装着される車両200が有する操舵角センサ91から出力される情報を用いているが、センサ出力情報は、操舵角センサ91から出力される情報以外であってもよい。
【0095】
図7は、実施形態に係るタイヤ剛性可変装置50の変形例であり、横加速度センサ92やヨーレートセンサ93から出力される情報を用いる場合の説明図である。剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いるセンサ出力情報は、例えば、車両200に搭載されて車両200の走行時における横加速度を検出する横加速度センサ92から出力される情報や、車両200の走行時におけるヨーレートを検出するヨーレートセンサ93から出力される情報を用いてもよい。車両200が旋回を行った際には、横加速度やヨーレートが変化するため、車両200が旋回していることや、旋回の方向、旋回の度合いは、横加速度センサ92から出力される情報や、ヨーレートセンサ93から出力される情報に基づいて、検出することができる。このため、剛性可変部材60の剛性を変化させる際には、横加速度センサ92から出力される情報や、ヨーレートセンサ93から出力される情報に基づいて変化させ、大きな荷重が作用するサイドウォール部8に配置される剛性可変部材60の剛性を高めるようにしてもよい。剛性可変部材60の剛性を変化させる際に用いるセンサ出力情報は、空気入りタイヤ1が装着される車両200が有する操舵角センサ91、横加速度センサ92及びヨーレートセンサ93から出力される情報のうち、少なくとも1つの情報を含んでいればよく、これらの情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることにより、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0096】
また、上述した実施形態では、車両200の旋回時において、旋回方向における外輪201側となる空気入りタイヤ1の剛性可変部材60の剛性を高める際に、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60で、特に剛性を異ならせる制御は行っていないが、外輪201側の空気入りタイヤ1において、タイヤ幅方向両側の剛性可変部材60で剛性を異ならせてもよい。車両200の旋回時には、外輪201側となる空気入りタイヤ1では、例えば、車両装着方向外側の剛性可変部材60a(
図6参照)の剛性を、車両装着方向内側の剛性可変部材60b(
図6参照)の剛性よりも高くしてもよい。これにより、車両200の旋回時に、作用する荷重が相対的に高くなる、旋回方向外側に配置される剛性可変部材60aの剛性を、旋回方向内側に配置される剛性可変部材60bの剛性よりも高くすることにより、外輪201において旋回方向外側に位置することにより大きな荷重が作用するサイドウォール部8の剛性を、より確実に高めることができる。これにより、操縦安定性をより確実に向上させることができる。
【0097】
また、上述した実施形態では、車両200の旋回時には、剛性可変部材60の剛性を高めることにより、サイドウォール部8の剛性を高めているが、剛性可変部材60の剛性を変化させる際には、旋回の度合いに応じて変化させてもよい。つまり、操舵角センサ91や、横加速度センサ92、ヨーレートセンサ93等から出力される情報に基づき、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8に作用すると推測される荷重が大きくなるに従って、剛性可変部材60の剛性を高め、サイドウォール部8の剛性を高めてもよい。サイドウォール部8に作用する荷重が大きくなるに従ってサイドウォール部8の剛性を高めることにより、より確実にサイドウォール部8の剛性を、乗り心地の悪化を抑制しつつ、旋回の度合いに応じて高めることができる。この結果、より確実に操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0098】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、サイドウォール部8におけるカーカス層13とサイドゴム9との間に配置されているが、剛性可変部材60は、カーカス層13とサイドゴム9との間以外の位置に配置されていてもよい。剛性可変部材60は、例えば、サイドゴム9に埋設されていてもよく、または、サイドウォール部8におけるカーカス層13のタイヤ幅方向内側に配置されていてもよい。剛性可変部材60は、剛性を高めた際にサイドウォール部8の剛性を高めることができるように形成されていれば、剛性可変部材60の配置位置は問わない。
【0099】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、タイヤ子午断面における形状が三日月形状となる形状で形成されているが、剛性可変部材60は、これ以外の形状で形成されていてもよい。剛性可変部材60は、例えば、タイヤ子午断面における形状が矩形状の形状で形成されていてもよく、即ち、剛性可変部材60は、厚さがほぼ均一なシート状の形状で形成されていてもよい。剛性可変部材60は、剛性を高めた際にサイドウォール部8の剛性を高めることができるように形成されていれば、剛性可変部材60自体の形状は問わない。
【0100】
また、上述した実施形態では、剛性可変部材60は、磁性エラストマーにより構成されるが、剛性可変部材60は、磁性エラストマー以外によって構成されていてもよい。剛性可変部材60は、例えば、電気粘性エラストマーのような電気弾性体を用いても構成されていてもよい。剛性可変部材60に電気弾性体を用いる場合には、剛性可変部材60の剛性を変化させる制御部70は、剛性可変部材60に対して任意の電力を印加することのできる電気回路により構成する。電気弾性体は、磁性エラストマーと比較して耐熱性が低くなっているが、温度が高くなり難い使用環境や使用条件で使用される空気入りタイヤ1では、剛性可変部材60も高温にはなり難いので、そのような空気入りタイヤ1では、剛性可変部材60に電気弾性体を用いてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、車両200の旋回時に剛性可変部材60の剛性を高めているが、剛性可変部材60の剛性は、車両200の旋回時以外に高めてもよい。例えば、剛性可変部材60の剛性は、空気入りタイヤ1の空気圧が低下した際に高めてもよい。空気入りタイヤ1の空気圧が低下した場合は、空気入りタイヤ1に作用する荷重によってサイドウォール部8が撓み易くなり、操縦安定性が低下し易くなるため、空気入りタイヤ1の空気圧が低下したことを検出した際には、剛性可変部材60の剛性を高めることにより、空気圧の低下時におけるサイドウォール部8の剛性を確保してもよい。これにより、空気入りタイヤ1の空気圧が低下した際における操縦安定性を確保することができる。
【0102】
また、上述した実施形態では、空気入りタイヤ1は主溝30は4本が形成されているが、主溝30は4本以外であってもよい。また、上述した実施形態や変形例は、適宜組み合わせてもよい。タイヤ剛性可変装置50及び空気入りタイヤ1は、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8に、剛性を変化させることができる剛性可変部材60を配置し、所定のセンサ出力情報に基づいて剛性可変部材60の剛性を変化させることによって一対のサイドウォール部8の剛性を個別に変化させることにより、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、本発明に係るタイヤの一例として空気入りタイヤ1を用いて説明したが、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤ1以外であってもよい。本発明に係るタイヤは、例えば、気体を充填することなく使用することができる、いわゆるエアレスタイヤであってもよい。
【0104】
[実施例]
図8は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、操縦安定性と、乗り心地とについての試験を行った。
【0105】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが245/50R19 105Wサイズの空気入りタイヤを、リムサイズ19×7.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みして空気圧を200kPaに調整し、排気量が2000ccのSUV車両のテスト車両に試験タイヤを装着してテスト車両で走行をすることにより行った。
【0106】
各試験項目の評価方法は、操縦安定性については、試験タイヤを装着したテスト車両でテストコースを走行した際における、評価パネラーの官能評価により比較した。操縦安定性は、評価パネラーの官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価し、指数値が大きいほど操縦安定性が高く、操縦安定性に優れていることを示している。
【0107】
また、乗り心地の評価方法は、試験タイヤを装着したテスト車両でテストコースを走行した際における、評価パネラーの官能評価により比較した。乗り心地は、評価パネラーの官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価し、指数値が大きいほど乗り心地がよく、乗り心地の性能に優れていることを示している。
【0108】
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜5と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤの一例である比較例との7種類のタイヤについて行った。これらの試験タイヤは、サイドゴムの弾性率がいずれも5MPaになっている。これらの試験タイヤのうち、従来例の空気入りタイヤは、サイドウォール部に剛性可変部材を有していない。また、比較例の空気入りタイヤは、サイドウォール部に剛性可変部材を有しているものの、サイドウォール部の剛性を個別に変化させることは不可能になっている。
【0109】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜5は、全てサイドウォール部8に剛性可変部材60を有しており、サイドウォール部8の剛性を個別に変化させることが可能になっている。さらに、実施例1〜5に係る空気入りタイヤ1は、剛性可変部材60の配置位置や、剛性可変部材60がタイヤ断面高さSHの40%以上80%以下の範囲内に少なくとも一部が位置しているか否か、剛性可変部材60を構成する材料、剛性可変部材60の弾性率が、それぞれ異なっている。
【0110】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図8に示すように、実施例1〜5に示す空気入りタイヤ1は、従来例や比較例に対して、乗り心地を悪化させることなく、操縦安定性を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜5に示す空気入りタイヤ1は、操縦安定性と乗り心地とを両立することができる。