特開2021-165088(P2021-165088A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2021165088-空気入りタイヤ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165088(P2021-165088A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20210917BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   B60C9/00 D
   B60C9/00 B
   B60C9/00 C
   B60C9/00 G
   B60C9/22 C
   B60C9/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-68913(P2020-68913)
(22)【出願日】2020年4月7日
(11)【特許番号】特許第6915720号(P6915720)
(45)【特許公報発行日】2021年8月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 隆充
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131AA44
3D131AA48
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA11
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC25
3D131BC31
3D131DA01
3D131DA54
3D131DA56
3D131DA57
(57)【要約】
【課題】操縦安定性を良好に維持しながら、高速耐久性を向上し、これら性能を高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部3間に装架されたカーカス層4とその外周側に配置されたベルト補強層8とを備えた空気入りタイヤにおいて、カーカス層4を有機繊維コードからなるカーカスコードで構成し、カーカスコードの破断伸びを20%以上、カーカスコードのベルト層7の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びを5.5%〜8.5%に設定し、ベルト補強層8を有機繊維コードからなるカバーコードで構成し、カバーコードの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度を2.8kN〜4.0kNに設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルト補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は有機繊維コードからなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%以上、前記カーカスコードの前記ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%〜8.5%であり、
前記ベルト補強層は有機繊維コードからなるカバーコードで構成され、前記カバーコードの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が2.8kN〜4.0kNであることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスコードの熱収縮率が0.5%〜2.5%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
下記式(1)で表される前記カーカスコードの撚り係数Kが2000〜2500であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tは前記カーカスコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dは前記カーカスコードの総繊度[dtex]である。)
【請求項4】
前記カーカスコードがポリエチレンテレフタレート繊維を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記カバーコードが芳香族ポリアミド繊維を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高弾性の有機繊維コードからなるベルト補強層を設けた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高速走行を意図した空気入りタイヤでは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に配置されたベルト層の更に外周側に、タイヤ周方向に配向する補強コードからなるベルト補強層を設けることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。このようなベルト補強層は、主に、高速走行時の遠心力によるベルト層両端部のせり上がりによる剥離故障を防止し、高速耐久性を向上している。
【0003】
近年、このようなベルト補強層に基づく高速耐久性を更に向上するために、ベルト補強層を構成する補強コードに剛性の高い有機繊維コードを用いることが検討されている。しかしながら、剛性の高い有機繊維コードからなるベルト補強層(以下、高剛性カバーという)を用いると、トレッド部の曲げ剛性が高くなるため、接地面積が減少して操縦安定性が低下する虞がある。そのため、高剛性カバーを用いる場合であっても、操縦安定性を損なうことなく、高速耐久性を向上する対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐149831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、操縦安定性を良好に維持しながら、高速耐久性を向上し、これら性能を高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルト補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は有機繊維コードからなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%以上、前記カーカスコードの前記ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%〜8.5%であり、前記ベルト補強層は有機繊維コードからなるカバーコードで構成され、前記カバーコードの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が2.8kN〜4.0kNであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、ベルト補強層を構成する有機繊維コード(カバーコード)の3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が2.8kN〜4.0kNであり、ベルト補強層の剛性が適度に高いため、高速走行時のベルト端部のせり上がりを効果的に抑制することができ、高速耐久性を向上することができる。一方で、カーカス層を構成する有機繊維コード(カーカスコード)のベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%〜8.5%に設定されて、ベルト層と重複する領域でカーカス層が適度に低剛性であるので、接地面積を十分に確保することが可能になり、操縦安定性を改善することができる。これらの協働により、本発明の空気入りタイヤは、操縦安定性を良好に維持しながら、高速耐久性を向上し、これら性能を高度に両立することができる。これに加えて、カーカスコードの破断伸びが20%以上であるため、プランジャーエネルギー試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を充分に許容することができ、破壊エネルギー(トレッド部の突起入力に対する破壊耐久性)を向上することができる。即ち、空気入りタイヤの耐ショックバースト性(走行中にタイヤが大きなショックを受けて、カーカスが破壊する損傷(ショックバースト)に対する耐久性)を向上する効果も付加することができる。
【0008】
本発明では、カーカスコードの熱収縮率が0.5%〜2.5%であることが好ましい。これにより、加硫時にカーカスコードにキンク(捩じれ、折れ、よれ、形くずれ等)が発生して耐久性が低下したり、ユニフォミティの低下を抑制することができなくなる虞がある。
【0009】
本発明では、下記式(1)で表されるカーカスコードの撚り係数Kが2000〜2500であることが好ましい。これにより、コード疲労性を良好にして優れた耐久性を確保することができる。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tはカーカスコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dはカーカスコードの総繊度[dtex]である。)
【0010】
本発明においては、カーカスコードがポリエチレンテレフタレート繊維を含むことが好ましい。このようにポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)を用いることで、その優れた物性により、高速耐久性と操縦安定性とをバランスよく高度に両立するには有利になる。また、低コスト化や作業性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明においては、カバーコードが芳香族ポリアミド繊維を含むことが好ましい。このように芳香族ポリアミド繊維を用いることで、その優れた物性により、高速耐久性と操縦安定性とをバランスよく高度に両立するには有利になる。特に、カバーコードの剛性を高めて耐久性を向上するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0015】
左右一対のビード部3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コード(後述のカーカスコード)を含むカーカス層4が装架されている。各ビード部には、ビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面略三角形状のビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。これにより、ビードコア5およびビードフィラー6はカーカス層4の本体部(トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分)と折り返し部(各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分)とにより包み込まれている。
【0016】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コード(ベルトコード)を含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルトコードとしては、例えばスチールコードが好ましく使用される。
【0017】
更に、ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、ベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する補強コード(カバーコード)を含む。ベルト補強層8において、カバーコードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。ベルト補強層8としては、ベルト層7の幅方向の全域を覆うフルカバー層8aや、ベルト層7のタイヤ幅方向の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層8bをそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて設けることができる(図示の例では、フルカバー層8aおよびエッジカバー層8bの両方が設けられている)。ベルト補強層8は、例えば、少なくとも1本のカバーコードを引き揃えてコートゴムで被覆したストリップ材をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して構成することができる。
【0018】
本発明において、ベルトカバー層8を構成するカバーコードは、有機繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードで構成される。このカバーコード(有機繊維コード)の3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度は2.8kN〜4.0kN、好ましくは3.1kN〜3.7kNである。このような物性のカバーコ―ドを用いることで、ベルト補強層8の剛性を適度に高めることができ、高速走行時のベルト端部のせり上がりを効果的に抑制することができ、高速耐久性を向上することができる。このとき、カバーコードの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が2.8kN未満であると、高速走行時のベルト端部のせり上がりを十分に抑制できず、高速耐久性を向上する効果が限定的になる。カバーコードの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度は4.0kNを超えると、トレッド部1の剛性が高くなりすぎて接地面積が減少して操縦安定性が低下する。尚、「3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度」とは、タイヤからコード1本(試料コード)を取り出し、取り出した直後に初荷重0.45mN/dtex、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、試料コードが3.0%伸長した時に測定される強度に、タイヤ中で幅50mm当たりに含まれるコード本数をかけた値である。
【0019】
カバーコード(有機繊維コード)を構成する有機繊維の種類は、上述の物性を満たしていれば特に限定されず、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)などを用いることができる。なかでも、アラミド繊維を含んでいることが好ましく、特に、ナイロン繊維とアラミド繊維とからなるハイブリッドコードを好適に用いることができる。芳香族ポリアミド繊維を含む場合(ナイロン繊維とアラミド繊維とからなるハイブリッドコードを用いた場合)、その優れた物性(高剛性)によって、効果的に高速耐久性を向上することができる。
【0020】
本発明は、上述のように高剛性のカバーコ―ドからなるベルト補強層8を用いて高速耐久性を向上するにあたって、それに起因して操縦安定性が低下することを抑制するために、カーカス層4を構成するカーカスコードに後述のように特定の有機繊維コードを用いるものである。そのため、タイヤ全体の基本的な構造は、上述のベルト補強層8(カバーコード)を除いて、上述のものに限定されない。
【0021】
本発明において、カーカス層4を構成するカーカスコードは、有機繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードで構成される。このカーカスコード(有機繊維コード)の破断伸びは20%以上、好ましくは24%〜28%である。このカーカスコード(有機繊維コード)のベルト層7の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びは5.5%〜8.5%、好ましくは6.0%〜7.0%である。尚、「破断伸び」および「1.5cN/dtex負荷時の伸び」はいずれも、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して測定される試料コードの伸び率(%)であり、「破断伸び」はコード破断時に測定される値であり、「1.5cN/dtex負荷時の伸び」は1.5cN/dtex負荷時に測定される値である。
【0022】
本発明では、カーカス層4として上述の物性を有するカーカスコード(有機繊維コード)を用いているので、上述のようにベルト補強層8に剛性の高いカバーコ―ドを用いる場合であっても、それに起因して操縦安定性が低下することを抑制して、操縦安定性を良好に維持することができる。即ち、カーカスコードがベルト層7の内周側において上記物性(1.5cN/dtex負荷時の伸び)を有しており、ベルト層7と重複する領域における剛性が適度に低いため、接地面積を十分に確保することが可能になり、操縦安定性を良好にすることができる。また、カーカスコードの破断伸びが上記範囲に設定されているので、耐ショックバースト性を向上することもできる。即ち、耐ショックバースト性は、例えばプランジャーエネルギー試験(トレッド中央部に所定の大きさのプランジャーを押し付けてタイヤが破壊する際の破壊エネルギーを測定する試験)によって判定することができるが、上述の破断伸びを有するコードを用いることで、試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を許容可能になり、プランジャーエネルギー試験において良好な結果を得ることができる。つまり、走行時に当てはめて考えると、トレッド部1の突起入力に対する破壊耐久性(上述の破壊エネルギーに相当)を向上することができ、空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上することができる。
【0023】
このとき、カーカスコードのベルト層7の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%未満であると、ベルト層7と重複する領域におけるカーカス層4の剛性が高くなり、接地領域直下でのカーカス層4の巻き上げ端部の圧縮歪みが増大し、コードの破断を招く虞がある(即ち、耐久性が損なわれる虞がある)。カーカスコードのベルト層7の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが8.5%を超えると、上述の接地面積を確保する効果が十分に得られなくなり、操縦安定性を改善する効果が限定的になる。カーカスコードの破断伸びが20%未満であると、プランジャーエネルギー試験において良好な結果を得ることができない。即ち、空気入りタイヤが凹凸路面における突起を乗り越す際の破壊エネルギー(トレッド部の突起入力に対する破壊耐久性)を高めることができず、空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上する効果が充分に見込めなくなる。
【0024】
更に、カーカスコード(有機繊維コード)は、熱収縮率が好ましくは0.5%〜2.5%、より好ましくは1.0%〜2.0であるとよい。尚、「熱収縮率」とは、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件150℃×30分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの乾熱収縮率(%)である。このような熱収縮率を有するコードを用いることで、加硫時に有機繊維コードにキンク(捩じれ、折れ、よれ、形くずれ等)が発生して耐久性が低下することや、ユニフォミティの低下を抑制することができる。このとき、カーカスコードの熱収縮率が0.5%未満であると、加硫時にキンクが発生しやすくなり、耐久性を良好に維持することが難しくなる。カーカスコードの熱収縮率が2.5%を超えると、ユニフォミティが悪化する虞がある。
【0025】
更に、カーカスコードは、下記式(1)で表される撚り係数Kが好ましくは2000〜2500、より好ましくは2100〜2400であるとよい。尚、この撚り係数Kは、ディップ処理後のカーカスコードの数値である。このような撚り係数Kを有するコードを用いることで、コード疲労性を良好にして優れた耐久性を確保することができる。このとき、カーカスコードの撚り係数Kが2000未満であると、コード疲労性が低下し、耐久性を確保することが難しくなる。カーカスコードの撚り係数Kが2500を超えると、カーカスコードの生産性が悪化する。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tはカーカスコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dはカーカスコードの総繊度[dtex]である。)
【0026】
カーカスコード(有機繊維コード)を構成する有機繊維の種類は特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)などを用いることができ、なかでもポリエステル繊維を好適に用いることができる。また、ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN繊維)、ポリブチレンテレフタレート繊維(PBT)、ポリブチレンナフタレート繊維(PBN)を例示することができ、PET繊維を好適に用いることができる。いずれの繊維を用いた場合も、各繊維の物性によって、高速耐久性と操縦安定性とをバランスよく高度に両立するには有利になる。特に、PET繊維の場合は、PET繊維が安価であることから、空気入りタイヤの低コスト化を図ることができる。また、コードを製造する際の作業性を高めることもできる。
【実施例】
【0027】
タイヤサイズが275/40ZR20であり、図1に示す基本構造を有し、カーカス層を構成するカーカスコードの材質(有機繊維の種類)や物性(破断伸び、ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸び、熱収縮率、撚り係数K)と、ベルト補強層を構成するカバーコードの材質(有機繊維の種類)や物性(3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度)を、表1〜2のように異ならせた従来例1、比較例1〜6、実施例1〜6の空気入りタイヤを製作した。
【0028】
表1〜2の「有機繊維の種類」の欄については、ポリエチレン繊維コード(PET繊維コード)を用いた場合を「PET」、ナイロン繊維およびアラミド繊維からなるハイブリッドコードを用いた場合を「ナイロン+アラミド」と表示した。また、PET繊維コードは2200dtex/2の構造を有し、ナイロン繊維およびアラミド繊維からなるハイブリッドコードはアラミド1670dtex(2本)ナイロン1400dtex(1本)/3の構造を有する。いずれの例においても、ベルト補強層は、1本のカバーコ―ド(上述の有機繊維コードのいずれか)をコートゴムで被覆してなるストリップをタイヤ周方向に螺旋状に巻回したジョイントレス構造を有している。ストリップにおけるコード打ち込み密度は40本/50mmである。
【0029】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、高速耐久性、操縦安定性、耐ショックバースト性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0030】
高速耐久性
各試験タイヤをリムサイズ20×9 1/2Jのホイールに組み付け、内圧270kPaで表面が平滑な鋼製で直径1707mmのドラムを備えたドラム試験機に装着し、周辺温度を38±3℃に制御し、速度120km/hから30分毎に10km/hずつ加速し、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を計測した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、タイヤに故障が生じるまでの走行距離が大きく、高速耐久性が優れていることを意味する。尚、この指数値が「110」未満であると、充分な改善効果が得られなかったことを意味する。
【0031】
操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ20×9 1/2Jのホイールに組み付けて、空気圧を270kPaとして排気量2000ccの試験車両(四輪駆動車)に装着し、2名が乗車した状態で乾燥路面からなるテストコースにて、テストドライバーによる操縦安定性の官能評価を行った。評価結果は、従来例1を3.0(基準)とする5点法にて評価し、最高点と最低点を除いた5名の平均点で表した。この評価値が大きいほど操縦安定性に優れることを意味する。尚、この点数が「3.5」以上であれば、優れた操縦安定性が得られたことを意味する。
【0032】
耐ショックバースト性
各試験タイヤを、リムサイズ20×9 1/2Jのホイールに組み付け、空気圧を270kPaとし、プランジャー径19±1.6mmのプランジャーを負荷速度(プランジャーの押し込み速度)50.0±1.5m/minの条件でトレッド中央部に押し付けるタイヤ破壊試験を行い、タイヤ強度(タイヤの破壊エネルギー)を測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数にて示した。この値が大きいほど破壊エネルギーが大きく、耐ショックバースト性に優れることを意味する。尚、この指数値が「110」未満であると、充分な改善効果が得られなかったことを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1〜2から判るように、実施例1〜6のタイヤは、従来例1との対比において、高速耐久性および操縦安定性を高度に両立し、更に、耐ショックバースト性を改善した。一方、比較例1は、カーカスコードの破断伸びが小さく、且つ、カーカスコードのベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが小さいため、操縦安定性が低下し、耐ショックバースト性を改善する効果も十分に得られなかった。比較例2は、カーカスコードのベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが小さいため、操縦安定性を向上する効果が十分に得られなかった。比較例3は、カーカスコードの破断伸びが小さいため、耐ショックバースト性を改善する効果が十分に得られなかった。比較例4は、カーカスコードのベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが大きいため、高速耐久性を向上する効果が十分に得られなかった。比較例5は、カバーコ―ドの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が小さいため、操縦安定性を向上する効果が十分に得られなかった。比較例6は、カバーコ―ドの3.0%伸長時の幅50mm当たりの引張強度が大きいため、高速耐久性を向上する効果が十分に得られなかった。
【符号の説明】
【0036】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
CL タイヤ赤道
図1