(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165244(P2021-165244A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】酸化染毛剤、染毛処理方法、酸化染毛用第1剤、および酸化染毛用第2剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20210917BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20210917BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20210917BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/10
A61K8/37
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-68999(P2020-68999)
(22)【出願日】2020年4月7日
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 諭
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC551
4C083AC552
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD33
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】均染性に優れる酸化染毛剤、染毛処理方法、酸化染毛用第1剤、および酸化染毛用第2剤の提供。
【解決手段】酸化染毛剤は、酸化染料、アルカリ剤、酸化剤、及び液状エステルが配合されているものであり、染毛処理方法は、酸化染料、アルカリ剤、酸化剤、及び液状エステルが配合されている酸化染毛剤を使用するものであり、酸化染毛用第1剤は、酸化剤が配合されている酸化染毛用第2剤と混合して使用されるものであって、酸化染料、アルカリ剤、及び液状エステルが配合されているものであり、酸化染毛用第2剤は、酸化染料、及びアルカリ剤が配合されている酸化染毛用第1剤と混合して使用されるものであって、酸化剤、及び液状エステルが配合されているものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料、アルカリ剤、酸化剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
前記酸化染料として、
パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、
メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラーと、
が配合されている請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記酸化染料として、下記(A)〜(C)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体、及びカップラーが配合されている請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。
(A)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(B)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(C)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【請求項4】
前記液状エステルとして、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、及び直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステルから選ばれた一種又は二種以上が配合されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
前記液状エステルとして、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステルから選ばれた一種又は二種以上が配合されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化染毛剤を使用することを特徴とする染毛処理方法。
【請求項7】
酸化剤が配合されている酸化染毛用第2剤と混合して使用される酸化染毛用第1剤であって、酸化染料、アルカリ剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする酸化染毛用第1剤。
【請求項8】
前記酸化染料として、
パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、
メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラーと、
が配合されている請求項7に記載の酸化染毛用第1剤。
【請求項9】
前記酸化染料として、下記(a)〜(c)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体、及びカップラーが配合されている請求項7又は8に記載の酸化染毛用第1剤。
(a)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(b)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(c)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【請求項10】
酸化染料、及びアルカリ剤が配合されている酸化染毛用第1剤と混合して使用される酸化染毛用第2剤であって、酸化剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする酸化染毛用第2剤。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染料を使用する酸化染毛剤、染毛処理方法、酸化染毛用第1剤、および酸化染毛用第2剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪を着色するために用いられる酸化染毛剤は、毛髪内に浸透させた酸化染料を酸化重合によって染着させる染色原理のものであり、酸性染毛料などのヘアカラーリング剤に比して毛髪の色持ちを長期にわたって持続させることができる。
【0003】
持続性のある染色が可能な酸化染毛剤ではあるが、均染性(毛髪における濃淡が均一な染色)が低下する場合がある。その低下を引き起こす要因として毛髪の損傷があり、この損傷は、染毛処理、縮毛矯正処理などの化学的処理、ブラッシングなどの物理的処理により生じ、毛先に近づくほど大きくなるのが一般的である。そして、損傷の度合い、酸化染料の分子構造及び分子量などの複合要因によって、毛髪内に浸透する酸化染料の増加、毛髪内から流出する染料の増加が毛髪の各部において異なる状態となるため、毛髪内への酸化染料の定着量の変動が均染性を低下させる。
【0004】
上記均染性を向上させる開示として、例えば特許文献1には、損傷の大きな毛先及びその付近に対して、染毛処理前に所定の組成物を塗布することが挙げられている。また、特許文献2には、染毛剤に、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、及び海洋性コラーゲンの加水分解物又はその誘導体を含有させて、優れた均染性を実現する開示がある。このように、均染性を高めるための開示があり、優れた均染性を実現するための提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−286143号公報
【特許文献2】特開2006−69893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、均染性に優れる酸化染毛剤、染毛処理方法、酸化染毛用第1剤、および酸化染毛用第2剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、液状エステルの配合が均染性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明に係る酸化染毛剤は、酸化染料、アルカリ剤、酸化剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする。前記酸化染料として、例えば、パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラーと、が配合されていると良い。
【0009】
本発明の酸化染毛剤において、前記酸化染料として、下記(A)〜(C)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体、及びカップラーが配合されていると好適である。この(A)〜(C)から選ばれた酸化染料による染毛であれば、液状エステルによる均染性向上に特に優れる。
(A)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(B)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(C)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【0010】
本発明の酸化染毛剤には、前記液状エステルとして、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、及び直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステルから選ばれた一種又は二種以上が配合されていると良く、均染性向上に好ましい液状エステルは、例えば、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステルである。
【0011】
本発明に係る染毛処理方法は、本発明の酸化染毛剤を使用することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る酸化染毛用第1剤は、酸化剤が配合されている酸化染毛用第2剤と混合して使用されるものであって、酸化染料、アルカリ剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする。この第1剤は、前記酸化染料として、例えば、パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラーと、が配合されている。
【0013】
本発明の酸化染毛用第1剤において、液状エステルによる均染性向上に特に優れる前記酸化染料として、下記(a)〜(c)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体及びカップラーが配合されていると好適である。
(a)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(b)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(c)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【0014】
また、本発明に係る酸化染毛用第2剤は、酸化染料、及びアルカリ剤が配合されている酸化染毛用第1剤と混合して使用されるものであって、酸化剤、及び液状エステルが配合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る酸化染毛剤、染毛処理方法、酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤によれば、酸化染料、アルカリ剤、及び酸化剤と共に液状エステルが配合されるから、優れた毛髪の均染性が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
(酸化染毛剤)
本実施形態の酸化染毛剤は、公知の酸化染毛剤と同様、酸化染毛用第1剤(以下、「第1剤」と称することがある。)と酸化染毛用第2剤(以下、「第2剤」と称することがある。)とを混合して得られる水中油型組成物である(本実施形態の酸化染毛剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。
【0017】
本実施形態の酸化染毛剤の25℃でのpHは、第1剤などに配合されるアルカリ剤の配合によりアルカリ性に調整されていると良く、例えば8.5以上12.0以下であり、9.0以上11.0以下が良く、9.5以上10.5以下が好ましい。pHが8.0以上であると、毛髪内部への酸化染料の浸透促進に好適であり、pHが12.0以下であると、皮膚への刺激抑制に好適である。
【0018】
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤と第2剤との混合比率は、例えば、第1剤:第2剤=1:0.5以上2以下の質量比である。
【0019】
本実施形態に係る酸化染毛剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、フォーム状(泡状)が挙げられる。本実施形態の酸化染毛剤の粘度は、使用の際の毛髪への塗布、垂れ落ち等のハンドリング性を考慮すれは、クリーム状が良い。
【0020】
一種又は二種以上の液状エステルを第1剤及び第2剤の一方又は双方に配合すれば、本実施形態の酸化染毛剤に液状エステルが配合される。当該液状エステルは、毛髪の損傷に伴って低下し易い均染性を抑制するために配合される。本実施形態の酸化染毛剤における液状エステルの配合量は、均染性を向上させる観点から、0.01質量%以上が良く、0.03質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、2質量%以下が良く、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0021】
上記液状エステルは、25℃で液状のエステルであり、例えば、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、及び直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステルから選ばれた一種又は二種以上が配合される。ここで、液状エステルを構成するための「分枝脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する分岐飽和脂肪酸を意味し、「直鎖脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する直鎖飽和脂肪酸を意味し、「分枝高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する分岐飽和アルコールを意味し、「直鎖高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する直鎖飽和アルコールを意味し、「低級アルコール」とは、炭素数5以下かつ一価アルコールに該当する直鎖又は分岐飽和アルコールを意味する。
【0022】
上記分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルとしては、例えば、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリルが挙げられ、上記分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルとしては、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルが挙げられ、上記分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステルとしては、例えば、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピルが挙げられ、上記直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチルが挙げられ、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルとしては、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシルが挙げられ、直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0023】
均染性を向上させるための好適な液状エステル例としては、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルの一種又は二種以上が挙げられ、当該エステルの本実施形態の酸化染毛剤における配合量は、均染性を向上させる観点から、0.01質量%以上が良く、0.03質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、2質量%以下が良く、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0024】
上記液状エステルと共に、酸化染料、アルカリ剤、及び酸化剤が、本実施形態の酸化染毛剤に配合されている。当該酸化染毛剤における酸化染料の配合量は、例えば0.03質量%以上5質量%以下である。また、当該酸化染毛剤における酸化剤の配合量は、例えば1質量%以上4質量%以下である。
【0025】
(第1剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤は、酸化染料とアルカリ剤が配合されたものである(本実施形態の第1剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。また、上記液状エステル及び公知の第1剤用原料を任意原料として本実施形態に係る第1剤に配合しても良い。
【0026】
上記第1剤に配合する酸化染料として、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体から選択した一種又は二種以上を採用する。染料中間体としては、塩酸トルエン−2,5−ジアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;塩酸2,4−ジアミノフェノール、硫酸オルトアミノフェノール、オルトアミノフェノール、硫酸パラアミノフェノール、パラアミノフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられる。
【0027】
また、第1剤の酸化染料として、染料中間体により酸化されて色調を呈する公知のカップラーから選択された一種または二種以上を採用しても良い。カップラーとしては、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール、塩酸メタフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;硫酸5−アミノオルトクレゾール、5−アミノオルトクレゾール、メタアミノフェノール等のアミノフェノール誘導体;レゾルシン;α−ナフトール等が挙げられる。
【0028】
染料中間体と共にカップラーを本実施形態の第1剤に配合する場合、例えば、パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラーと、を配合すると良い。
【0029】
また、液状エステルの配合による均染性の向上に関して、下記(a1)〜(c1)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体及びカップラーであればより効果的であり、下記(a2)〜(c2)から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体及びカップラーであれば、更に効果的である。
【0030】
(a1)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(b1)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、5−アミノオルトクレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(c1)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【0031】
(a2)パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(b2)パラフェニレンジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
(c2)トルエン−2,5−ジアミン、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上の染料中間体と、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、レゾルシン、α−ナフトール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上のカップラー
【0032】
本実施形態の第1剤における酸化染料の配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下である。
【0033】
上記第1剤に配合するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩;リン酸ナトリウムなどの金属リン酸塩;アンモニア水;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;などが挙げられる。
【0034】
均染性を高めるための一種又は二種以上の液状エステルを本実施形態の第1剤に配合する場合、当該第1剤への液状エステルの配合量は、均染性を向上させる観点から、0.02質量%以上が良く、0.05質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、4質量%以下が良く、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0035】
また、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルの一種又は二種以上の液状エステルを本実施形態の第1剤に配合することが好適であり、当該液状エステルの第1剤への配合量は、0.02質量%以上が良く、0.05質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、4質量%以下が良く、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0036】
本実施形態の第1剤に任意配合する公知の第1剤用原料としては、例えば、高級アルコール、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、多価アルコール、炭化水素、油脂、抗炎症剤、酸化防止剤、キレート剤である。
【0037】
第1剤に高級アルコールを配合する場合、この高級アルコールとしては、例えば、セタノール、イソセチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを第1剤に配合すると良く、高級アルコールの配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば2質量%以上20質量%以下である。
【0038】
第1剤にノニオン界面活性剤を配合する場合、このノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。一種又は二種以上のノニオン界面活性剤を第1剤に配合すると良く、ノニオン界面活性剤の配合量は、例えば1質量%以上10質量%以下である。
【0039】
第1剤にカチオン界面活性剤を配合する場合、このカチオン界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩など4級アンモニウム塩が挙げられる。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を第1剤に配合すると良く、カチオン界面活性剤の配合量は、例えば0.5質量%以上2質量%以下である。
【0040】
本実施形態の第1剤の25℃でのpHは、例えば8.5以上12.5以下であり、9.0以上11.0以下が良く、9.5以上10.5以下が好ましい。pHが8.5以上であると、毛髪内部への酸化染料の浸透促進に好適であり、pHが12.5以下であると、皮膚への刺激抑制に好適である。なお、第1剤のpHは、上記アルカリ剤の配合により調整可能である。
【0041】
また、本実施形態に係る第1剤の剤型は、特に限定されず、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状等のO/Wエマルションである。クリーム状の剤型である場合の第1剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値が30000mPa・s以上60000mPa・s以下である。
【0042】
(第2剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第2剤は、酸化剤が配合されたものである(本実施形態の第2剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。また、上記液状エステル及び公知の第2剤用原料を任意原料として本実施形態に係る第2剤に配合しても良い。
【0043】
上記第2剤に配合する酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩が挙げられる。本実施形態の第2剤における酸化剤の配合量は、特に限定されないが、例えば2質量%以上7質量%以下である。
【0044】
均染性を高めるための一種又は二種以上の液状エステルを本実施形態の第2剤に配合する場合、当該第2剤への液状エステルの配合量は、均染性を向上させる観点から、0.02質量%以上が良く、0.05質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、4質量%以下が良く、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0045】
また、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルの一種又は二種以上の液状エステルを本実施形態の第2剤に配合することが好適であり、当該液状エステルの第2剤への配合量は、0.02質量%以上が良く、0.05質量%以上が好ましい。液状エステルの上限は、染料を毛髪に浸透させる観点から、4質量%以下が良く、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0046】
本実施形態の第2剤に任意配合する公知の第2剤用原料としては、高級アルコール(配合量は、例えば1質量%以上6質量%以下)、ノニオン界面活性剤(配合量は、例えば1質量%以上5質量%以下)、カチオン界面活性剤(配合量は、例えば0.1質量%以上3質量%以下)、多価アルコール、エステル油、酸化防止剤、キレート剤などである。
【0047】
第2剤の剤型は、特に限定されず、例えば液状、クリーム状、ゲル状が挙げられ、第2剤の25℃におけるpHは、過酸化水素を酸化剤として配合している場合、例えば2.0以上4.0以下である。
【0048】
(染毛処理方法)
本実施形態の染毛処理方法は、公知の染毛処理方法と同様、酸化染料、アルカリ剤、酸化剤、及び液状エステルが配合されている本実施形態の酸化染毛剤を毛髪に塗布後、当該酸化染毛剤の洗浄除去を経て行われるものである。この染毛処理対象となる毛髪は、化学的損傷を受けた毛髪(酸化染毛剤による染毛処理後の毛髪、縮毛矯正やウェーブ形成などのパーマ処理後の毛髪など)、ブラッシングなどで物理的損傷を受けた毛髪であっても良い。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を詳述するが、この実施例等の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0050】
(第1剤)
クリーム状の水中油型乳化物である実施例1a〜1d、実施例2a〜2d、実施例3a〜3d、実施例4、比較例1a〜1d、比較例2a〜2d、比較例3a〜3d、比較例4の第1剤を、水、酸化染料、イソステアリン酸イソステアリル、及び他の原料を配合して製造した。第1剤に配合した酸化染料及びイソステアリン酸イソステアリルの配合量は、下記表1〜6の通りである。また、第1剤に配合した上記他の原料及びその配合量は、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム1質量%、セトステアリルアルコール8質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル2質量%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル1質量%、親油型モノステアリン酸グリセリル1質量%、パラフィン2質量%、コメヌカ油3質量%、ジメチコン1質量%、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース0.1質量%、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム0.4質量%、プロピレングリコール0.5質量%、イソプロパノール0.3質量%、タウリン0.2質量%、L−アスコルビン酸0.2質量%、亜硫酸ナトリウム0.2質量%、キレート剤0.2質量%、アンモニア水 pHを9〜10に調整する量、香料0.1質量%とした。
【0051】
(第2剤)
過酸化水素が6質量%配合されたミルボン社製「オルディーブ オキシダン 6.0」を、全ての実施例及び比較例の酸化染毛剤を製造するための第2剤とした。なお、当該第2剤は、水、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、塩化セチルトリメチルアンモニウム、流動パラフィンなどが配合されたpH2.6程度、粘度4500mPa・s程度のものである。
【0052】
(酸化染毛剤)
実施例1aの第1剤と上記第2剤とを、第1剤:第2剤=1:1の質量比で混合し、実施例1aの酸化染毛剤を製造した。また、これと同様にして、実施例1b〜1d、実施例2a〜2d、実施例3a〜3d、実施例4、比較例1a〜1d、比較例2a〜2d、比較例3a〜3d、比較例4の酸化染毛剤を製造した。
【0053】
(染毛処理)
実施例及び比較例の各酸化染毛剤2gを未損傷毛束及び損傷付与毛束に塗布し、室温で30分間放置してから、市販のシャンプー(ミルボン社製「ディーセス ノイ シルキーリュクス シャンプー」)を使用して洗浄、温風乾燥させることで、毛束の染毛処理を行った。
【0054】
上記染毛処理で使用した未損傷毛束については、市販の1g白色毛束(ビューラックス社製ヤク毛束「BM−YK−A」)を使用した。
【0055】
また、上記染毛処理で使用した損傷付与毛束は、次の通り準備したものである。市販の1g白色毛束(ビューラックス社製ヤク毛束「BM−YK−A」)に、3gのブリーチ剤(ミルボン社製「オルディーブ アディクシー 13−CL」1質量部とミルボン社製「オルディーブ アディクシー オキシダン6.0」2質量部の混合組成物)を塗布後30分間放置し、次に、市販のシャンプー(ミルボン社製「ディーセス ノイ シルキーリュクス シャンプー」)を使用して洗浄、乾燥させた。このブリーチ剤の塗布から乾燥までを5回行った毛束を、染毛処理の対象の損傷付与毛束とした。
【0056】
(均染性の評価)
染毛処理後の未損傷毛束、損傷付与毛束の明度(L
*値)を色差計(コニカミノルタ センシング社製「分光測定器CM−5」)で測定した。そして、同じ酸化染毛剤を使用した未損傷毛束と損傷付与毛束の明度差である色差(イソステアリン酸イソステアリルを配合した実施例の色差:ΔE
+、イソステアリン酸イソステアリルを配合しなかった比較例の色差:ΔE)に基づいて「(ΔE−ΔE
+)/ΔE×100」にて算出した値により、均染性の評価を行った。当該値が正の値であれば、イソステアリン酸の配合が均染性を向上させたことになり、同値が大きい程、イソステアリン酸イソステアリルの配合が未損傷毛束及び損傷付与毛束の色差を抑制したことになるから、均染性に優れることを示す。
【0057】
均染性の評価結果と共に、イソステアリン酸イソステアリル及び酸化染料の配合有無、配合量を、下記表1〜6に示す。これらの表において、液状エステル(イソステアリン酸イソステアリル)の配合による均染性向上を確認できる。また、「(ΔE−ΔE
+)/ΔE×100」の値が大きいほど、液状エステル(イソステアリン酸イソステアリル)の配合による均染性向上に効果的であったことを付言する。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】