特開2021-165255(P2021-165255A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165255(P2021-165255A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】飲用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4188 20060101AFI20210917BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20210917BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20210917BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/8969 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/815 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20210917BHJP
   A61K 36/8945 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20210917BHJP
   A61K 36/254 20060101ALI20210917BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210917BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20210917BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20210917BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20210917BHJP
【FI】
   A61K31/4188
   A61P17/16
   A61P17/14
   A61P43/00 111
   A61K9/08
   A61K47/32
   A61K36/9068
   A61K36/232
   A61K36/65
   A61K36/8969
   A61K36/815
   A61K35/644
   A61K36/8945
   A61K36/23
   A61K36/254
   A61P43/00 121
   A23L2/52
   A23L2/00 F
   A23L33/10
   A23L33/105
   A23L33/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-38702(P2021-38702)
(22)【出願日】2021年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2020-67007(P2020-67007)
(32)【優先日】2020年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】本間 芳子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD23
4B018MD48
4B018MD54
4B018MD61
4B018MD76
4B018ME14
4B018MF09
4B117LC04
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG07
4B117LG18
4B117LG24
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK16
4B117LK20
4B117LK30
4B117LP01
4B117LP13
4B117LP17
4B117LP20
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC18
4C076CC29
4C076EE16Q
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB28
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZC02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA17
4C087MA52
4C087NA03
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZC02
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB16
4C088AB40
4C088AB41
4C088AB48
4C088AB58
4C088AB81
4C088AB84
4C088AB85
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA08
4C088MA17
4C088MA52
4C088NA03
4C088ZA89
4C088ZA92
4C088ZC02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ビオチンと生薬、ポリビニルピロリドンを含有し、飲用組成物の性状の安定性及びビオチンの経時的な含量低下を抑制した優れた飲用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
特定の生薬と特定のグレードのポリビニルピロリドンを使用すると、飲用組成物の性状の安定性及びビオチンの含量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は
a)ビオチン
b)ポリビニルピロリドンK90
c)生姜、トウキ、シャクヤク、オウセイ、クコシ、ローヤルゼリー、サンヤク、リュウガンニク、トチュウ、ニンジン、加工ダイサン、シゴカ、タイソウ、及びジコッピからなる群から選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する飲用組成物、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ビオチン
b)ポリビニルピロリドンK90、並びに
c)生姜、トウキ、シャクヤク、オウセイ、クコシ、ローヤルゼリー、サンヤク、リュウガンニク、トチュウ、ニンジン、加工ダイサン、シゴカ、タイソウ、及びジコッピからなる群から選ばれる少なくとも1種の生薬
を含有する飲用組成物。
【請求項2】
pHが2.5〜5.5である、請求項1に記載の飲用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオチンを含有する飲用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビオチンは、ビタミンB群の1種であり、ビタミンHまたは補酵素Rとも称され、皮膚,毛髪を正常に維持するための必須成分である。また糖質、アミノ酸、脂質代謝に関与することから疲労回復への効果が期待されている。ビオチン含有内服液剤をpH2〜4の酸性領域で保存すると、液剤中で経時的に沈殿生成やモヤが発生し、性状安定性が悪いことが知られている。この沈殿生成、モヤなどの生成を防止する方法として、ポリビニルピロリドンを配合する方法が知られている(特許文献1)。
また、生薬は、その種類によりさまざまな効能、効果を有していることから、生薬を配合した飲用組成物は多数上市されている。しかし、生薬を配合した飲用組成物は、生薬由来の沈殿が生じることがあり、その沈殿をポリビニルピロリドンの配合により改善することが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-76520号公報
【特許文献2】特開平10-45627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、皮膚や毛髪の不調改善や疲労回復を見込むことができる飲用組成物の開発にあたり、ビオチンと特定の生薬の配合を検討し、生薬由来の沈殿抑制にポリビニルピロリドンを同時配合しようとしたところ、経時的にビオチン含量が低下するという知見を得た。また、ビオチンと特定の生薬の配合を検討し、生薬由来の沈殿抑制にポリビニルピロリドンを同時配合しようとしたところ、低温保存時にビオチン含量が低下するという知見を得た。
【0005】
したがって、本発明は、ビオチンと生薬、ポリビニルピロリドンを含有し、飲用組成物の性状の安定性及びビオチンの経時的な含量低下を抑制した優れた飲用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の生薬と特定のグレードのポリビニルピロリドンを使用すると、飲用組成物の性状の安定性及びビオチンの含量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)a)ビオチン
b)ポリビニルピロリドンK90
c)生姜、トウキ、シャクヤク、オウセイ、クコシ、ローヤルゼリー、サンヤク、リュウガンニク、トチュウ、ニンジン、加工ダイサン、シゴカ、タイソウ、及びジコッピからなる群から選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する飲用組成物、
(2)pHが2.5〜5.5である、(1)に記載の飲用組成物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特定の生薬とビオチンを含有し、ビオチンの含量低下を抑制した優れた飲用組成物を提供することが可能になった。また、本発明の飲用組成物は性状安定性もよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の飲用組成物中におけるビオチンの含有量は、0.00001〜0.0025質量%が好ましく、0.0005〜0.001質量%がより好ましい。
【0010】
本発明における特定のグレードのポリビニルピロリドンとは、ポリビニルピロリドンK90である。ポリビニルピロリドンK90とは、1−ビニル-2-ピロリドンの直鎖重合物で、フィケンチャーのK値(以下、K値)が77〜103の化合物を意味する。白色ないしわずかに黄色の結晶で、水に溶けてコロイド状の溶液となる。 本発明の飲用組成物中におけるポリビニルピロリドンK90の含有量は、0.1〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0011】
本発明における生薬とは、生姜、トウキ、シャクヤク、オウセイ、クコシ、ローヤルゼリー、サンヤク、リュウガンニク、トチュウ、ニンジン、加工ダイサン、シゴカ、タイソウ、ジコッピである。これらはエキスの形態での配合が好ましい。エキスの製造は通常の方法、例えば、抽出溶媒を用いて、適当な温度(低温又は加熱)にて、原料から抽出する方法などにより行う。抽出溶媒は適当に選択できるが、好ましくは、水、親水性溶媒およびこれらの混合溶媒が用いられ、特に、親水性溶媒としてエタノールを用いるのが良い。本発明のエキスとは、液状抽出物をそのまま使用できるほか、水などで希釈したもの、液状抽出物の濃縮物、液状抽出物の乾固物としても使用できる。すなわち、本発明のエキスには、乾燥エキス、軟エキス、流エキス、チンキなどいずれのものも包含される。エキスは市販品を購入することもできる。
【0012】
本発明にかかる飲用組成物のpHは、特に限定されず、例えば、2.0〜7.0である。風味の観点からは低pHであることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜5.5である。本発明の飲用組成物のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられる。
【0013】
本発明の飲用組成物にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、他の生薬や生薬抽出物などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0014】
さらに必要に応じて、酸味料、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0015】
本発明の飲用組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
【0016】
本発明の飲用組成物は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料、清涼飲料などの各種飲料に適用することができる。
【実施例】
【0017】
(比較例1〜3)
表1に従い、上記成分を精製水に溶解させ、ろ過及び殺菌を行い、pH3に調製し、50mLのキャップ付きガラス瓶に充填し、飲用組成物を製造した。
【0018】
【表1】
【0019】
(試験例1)
表1の比較例1〜3の飲用組成物を65℃で9日間保存した時のビオチンの安定性を調べた。ビオチン残存率は、HPLC(液体クロマトグラフィー)法でビオチンの残存量を測定することで求めた。結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
表2から明らかなように、ビオチンにポリビニルピロリドンを配合すると、ビオチンの安定は低下した(比較例1〜3)。
【0022】
(実施例1、比較例4〜5)
表3に示す組成に従い、上記成分を精製水に溶解させ、ろ過及び殺菌を行い、pH3に調製し、50mLのキャップ付きガラス瓶に充填し、飲用組成物を調製した。なお、生姜エキスは日本粉末薬品製の生姜流エキスを使用した。
【0023】
【表3】
【0024】
(試験例2)
表3の実施例1、比較例4〜5の飲用組成物を65℃で7日間保存した時のビオチンの安定性を調べた。ビオチン残存率は、試験例1と同様の方法で求めた。結果を表4に示す。
【0025】
【表4】
【0026】
表4から明らかなように、ビオチンと生姜エキスとポリビニルピロリドンK90を含有する飲用組成物中のビオチンは、安定性低下が抑制された。ポリビニルピロリドンK30とK90を配合した場合のビオチンの安定性を比較すると、ポリビニルピロリドンK90を配合した方が明らかにビオチンの安定性が改善されていた。
【0027】
(試験例3)
表3の実施例1、比較例4〜5の飲用組成物を65℃で7日間保存した時の製剤の性状を評価した。評価は、比較例5をコントロールとして、2名が目視により観察した。その結果、比較例5は沈殿あるいはモヤが生成されたのに対し、実施例1及び比較例4はポリビニルピロリドンの配合により沈殿生成あるいはモヤの生成が抑制され、性状改善が認められた。
【0028】
(実施例2〜9、比較例6〜13)
表5〜6に示す実施例2〜9、比較例6〜13の組成に従い、精製水に溶解させ、ろ過及び殺菌を行い、pH3に調製し、50mLのキャップ付きガラス瓶に充填し、飲用組成物を製造した。それらの溶液について、65℃で7日間保存した時のビオチンの安定性を調べた。ビオチン残存率は、試験例1と同様の方法で求めた。結果を表5及び6に示す。
【0029】
なお、オウセイエキスはアルプス薬品製のオウセイ流エキス、トウキエキスは松浦薬業製のトウキ流エキスS、シャクヤクエキスはアルプス薬品製のシャクヤクエキス、クコシエキスは日本粉末薬品製のクコシ流エキス、ローヤルゼリーエキスは日本養蜂製のローヤルゼリー抽出液、サンヤクエキスは小城製薬製のサンヤク流エキス、リュウガンニクエキスは日本粉末薬品製の龍眼肉エキス、トチュウエキスは日本粉末薬品製のトチュウ葉抽出液を使用した。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
表5〜6から明らかなように、ビオチンと、トウキ、シャクヤク、オウセイ、クコシ、ローヤルゼリー、サンヤク、リュウガンニクまたはトチュウを含有する飲料組成物に、ポリビニルピロリドンK30とK90を配合した場合のビオチンの安定性を比較すると、ポリビニルピロリドンK90を配合した方が明らかにビオチンの安定性が改善されていた。
【0033】
(実施例10〜14、比較例14〜13)
表7〜8に示す実施例10〜14、比較例14〜19の組成に従い、精製水に溶解させ、ろ過及び殺菌を行い、pH3で調製し、50mLキャップ付きガラス瓶に充填し、飲用組成物を製造した。それらの溶液について、5℃で7日間保存した時のビオチンの安定性を調べた。ビオチン残存率は、試験例1と同様の方法で求めた。結果を表7及び8に示す。
【0034】
なお、ニンジンエキスはアルプス薬品製のニンジンエキスP、加工ダイサンは理研化学工業製のオキソアミヂン末、シゴカエキスはアルプス薬品製のシゴカ流エキス、タイソウエキスは小城製薬製のタイソウ軟エキス、ジコッピエキスは松浦薬業製のジコッピエキスを使用した。
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
表7〜8から明らかなように、ビオチンと、ニンジン、加工ダイサン、シゴカ、タイソウまたはジコッピを含有する飲料組成物に、ポリビニルピロリドンK30とK90を配合した場合のビオチンの低温安定性を比較すると、ポリビニルピロリドンK90を配合した方が明らかにビオチンの安定性が改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によりビオチンの安定性及び性状が改善された飲用組成物を得ることができ、医薬品、食品、健康飲料、特定保健用食品などに使用可能である。