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特開2021-165332リキッド印刷インキ、印刷物、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165332(P2021-165332A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】リキッド印刷インキ、印刷物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20210917BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20210917BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   C09D11/037
   C09D11/102
   B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-68297(P2020-68297)
(22)【出願日】2020年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】河合義道
(72)【発明者】
【氏名】片山悠
(72)【発明者】
【氏名】山本帆南美
(72)【発明者】
【氏名】伊東聡子
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC02
2H113BC09
2H113BC10
2H113CA25
2H113CA46
2H113DA03
2H113DA07
2H113DA15
2H113DA46
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA63
2H113EA07
2H113EA10
2H113FA04
2H113FA23
2H113FA32
4J039AE04
4J039BA13
4J039BA35
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA05
4J039EA18
4J039GA03
4J039GA09
(57)【要約】
【課題】プラスチックフィルムに対してのラミネート強度を維持しながら、高い隠ぺい性を有するリキッド印刷インキを提供することを目的とする。
【解決手段】
バインダー樹脂、有機溶剤、及び白色顔料を含有するリキッド印刷インキであって、以下を満たすリキッド印刷インキ、前記リキッド印刷インキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物、及び積層体。
(1)インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18〜0.24の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、有機溶剤、及び白色顔料を含有するリキッド印刷インキであって、以下を満たすことを特徴とするリキッド印刷インキ。
(1)インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18〜0.24の範囲である。
【請求項2】
前記白色顔料が酸化チタンを含有し全白色顔料に対して酸化チタンを80質量%以上含有する請求項1に記載のリキッド印刷インキ。
【請求項3】
前記白色顔料が表面に少なくともアルミナ及び/又はシリカからなる処理層を有する酸化チタンを含有する請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ。
【請求項4】
前記バインダー樹脂が、重量平均分子量が10,000〜80,000且つウレタン結合濃度が0.8mmol/g以上2.5mmol/g以下であるポリウレタン尿素樹脂を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のリキッド印刷インキ。
【請求項5】
前記ポリウレタン尿素樹脂が、ポリエステルポリオール(a)およびポリエーテルポリオール(b)を反応原料としており、(3)、(4)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載のリキッド印刷インキ。
(3) ポリエステルポリオール(a)が炭素原子数3〜6の分岐ジオールを反応原料としており、前記炭素原子数3〜6の分岐ジオールの全重量が、ポリエステルポリオ―ルの全重量に対して30〜50%である。
(4) ポリエーテルポリオール(b)が数平均分子量100〜1000のポリオキシエチレンである。
【請求項6】
基材上に、請求項1〜5のいずれかに記載のリキッド印刷インキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷物の印刷層に、接着剤層、フィルム層が順に貼り合わされた積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッド印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキやフレキソインキ等のリキッド印刷インキは、被印刷体に美粧性、機能性、表面保護性を付与させる目的で広く用いられている。この被印刷体が包装材料、中でも特に食品包材として用いられる場合、ラミネート加工が施されるのが一般的である。この場合、内容物の種類や使用目的に応じて様々な被印刷体やラミネート加工が利用される。
従来この様なラミネート加工物には、ポリウレタン尿素樹脂をバインダーとした印刷インキが、各種被印刷体への接着性や各種ラミネート加工物のラミネート強度、ボイルレトルト適性に優れることから、広く用いられてきた。
【0003】
被印刷体がポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート等のプラスチック素材からなる場合、プロセスカラーインキのみで印刷を行うと基材の色影響を受け、発色性や視認性に劣る画像が得られることがある。これを解決するために白色インキを用いる方法が知られている。即ち、カラーインキで印刷を行う前に、白色インキを印刷して基材の下地処理を行い、その上にカラーインキで画像を形成することで、カラーインキの発色性や視認性に優れた画像を得ることが可能となる。また同様に、白色インキを印刷する前にカラーインキを印刷して基材の下地処理を行い、その上から白色インキで画像形成することで、白色インキの発色性や視認性に優れた画像を得る。
【0004】
これらに使用される白色インキは、主に酸化チタン等の白無機顔料が使用され、より高い白色度や隠ぺい性を得るためにできるだけ高濃度でインキ中に配合される。例えば特許文献1の段落0026では、インキ100重量%中、10〜60重量%であることが好ましく、10〜45重量%であることがより好ましいとの記載があるものの、実施例で開示された含有量は30質量%にとどまっている。また特許文献2においても、実施例で開示された含有量は、35質量%にとどまっている。また特許文献3でも30質量%、特許文献4でも40質量%と、実質的に従来知られている方法では、酸化チタン量の含有量は40質量%にとどまっている。即ちプラスチックフィルムに対してのラミネート強度を維持しながら、所望する隠ぺい性にはいまだ到達できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−127545号公報
【特許文献2】特開2011−122064号公報
【特許文献3】特開2018−044047号公報
【特許文献4】特開2016−104842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、プラスチックフィルムに対してのラミネート強度を維持しながら、高い隠ぺい性を有するリキッド印刷インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
隠ぺい性を高くするためにはインキ中の顔料濃度を高めることが必須であるが、相対的にインキ中のバインダー樹脂は減少してしまう。即ち所望する隠ぺい性に到達させようとすると、バインダー樹脂に依存する諸物性、特に接着性やラミネート強度は低下してしまう。
本発明者らは、相反する該課題を両立するインキとして、バインダー樹脂、有機溶剤、及び白色顔料を含有し以下を満たすリキッド印刷インキが課題を解決することを見出した。
(1)インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18−0.24の範囲である。
【0008】
即ち、本発明は、バインダー樹脂、有機溶剤、及び白色顔料を含有するリキッド印刷インキであって、以下を満たすリキッド印刷インキを提供する。
(1)インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18〜0.24の範囲である。
【0009】
また本発明は、前記白色顔料が酸化チタンを含有し全白色顔料に対して酸化チタンを80質量%以上含有する前記記載のリキッド印刷インキを提供する。
【0010】
また本発明は、前記白色顔料が表面に少なくともアルミナ及び/又はシリカからなる処理層を有する酸化チタンを含有する前記記載のリキッド印刷インキを提供する。
【0011】
また本発明は、前記バインダー樹脂が、重量平均分子量が10,000〜80,000且つウレタン結合濃度が0.8mmol/g以上2.5mmol/g以下であるポリウレタン尿素樹脂を含有する前記記載のリキッド印刷インキを提供する。
【0012】
また本発明は、前記ポリウレタン尿素樹脂が、ポリエステルポリオール(a)およびポリエーテルポリオール(b)を反応原料としており、(3)、(4)を満たす前記記載のリキッド印刷インキを提供する。
(3) ポリエステルポリオール(a)が炭素原子数3〜6の分岐ジオールを反応原料としており、前記炭素原子数3〜6の分岐ジオールの全重量が、ポリエステルポリオ―ルの全重量に対して30〜50%である。
(4) ポリエーテルポリオール(b)が数平均分子量100〜1000のポリオキシエチレンである。
【0013】
また本発明は、基材上に、前記記載のリキッド印刷インキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物を提供する。
【0014】
また本発明は、前記記載の印刷物の印刷層に、接着剤層、フィルム層が順に貼り合わされた積層体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、プラスチックフィルムに対してのラミネート強度を維持しながら、高い隠ぺい性を有するリキッド印刷インキが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(言葉の定義)
本発明においてリキッド印刷インキとは、グラビアインキまたはフレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキを指し、好ましくはグラビアインキまたはフレキソインキである。また本発明のリキッド印刷インキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、即ち活性エネルギー線非反応性のリキッドインキである。
なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示す。
【0017】
本発明のリキッド印刷インキは、バインダー樹脂、有機溶剤、及び白色顔料を含有するリキッド印刷インキであって、以下を満たすことを特徴とするリキッド印刷インキである。
(1)インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18−0.24の範囲である。
【0018】
(白色顔料)
本発明において白色顔料とは、リキッド印刷インキにおいて通常使用される白色顔料であればよく、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パール、等が挙げられる。中でも酸化チタンが好ましく、酸化チタンを全白色顔料に対して80質量%以上含有することが好ましい。
【0019】
(酸化チタン)
本発明で使用する酸化チタンは、その製法、形状、結晶形及び粒子径において特に限定されることなく公知の酸化チタンを使用することができる。例えば、酸化チタン粒子の製法については、塩素法によって製造されたものであっても硫酸法によって製造されたものであってもよい。ドクターブレードの摩耗を抑制するという点で硫酸法によって製造されたものが好ましい。
【0020】
硫酸法による酸化チタンの製造工程の具体的態様の一例は以下のとおりである。
(1)溶解工程:乾燥・粉砕したイルメナイト鉱石を硫酸で溶解し、主に硫酸チタン(TiOSO)と硫酸第1鉄(FeSO)との溶液とする。
(2)冷却、分離工程:溶解原液を冷却して晶出した硫酸第1鉄(FeSO・7HO)を遠心分離機で分離して原液を得る。
(3)加水分解工程:硫酸第1鉄を分離した原液を加熱して、水酸化チタン(TiO(OH))と硫酸とに分離する。
(4)焼成工程:加水分解反応によって得られた水酸化チタンの白色沈殿を、充分水洗してろ過した後、900℃以上で焼成して所定の粒子径を持つルチル型酸化チタン(TiO)とする。
【0021】
酸化チタン粒子の結晶形については、ルチル型でもアナタース型でもブルカイト型でもよい。より高い隠ぺい率を得られる点において、ルチル型が好ましい。酸化チタン粒子の平均粒子径は、高い光沢度と隠ぺい率を発現する点から、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.5μm、更に好ましくは0.2〜0.3μmである。酸化チタン粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、隠ぺい率が低下する他、ドクターブレードでの掻き残しが発生しやすくなり、版かぶりの原因となり易い。また、酸化チタン粒子の平均粒子径が1.0μmを超えると、隠ぺい率や光沢度が低下することがある。
【0022】
前記酸化チタンは、該表面に少なくともアルミナおよび/またはシリカからなる処理層を有することが好ましい。
アルミナおよび/またはシリカで表面処理された酸化チタンにおいて、一般にシリカは、酸化チタン表面の酸・塩基の状態を調整する目的や、得られたインク・塗料皮膜の耐久性を付与するために使用され、アルミナは分散時の酸化チタンの濡れを改良するために使用される。また酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が挙げられる。シリカとアルミナの処理量の比率は、分散安定性の観点から、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。また、酸化チタンに対する該無機物の量は必ずしも限定されないが、一般的には酸化チタン100部に対して30部以下である。
【0023】
シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンは、市販品を使用してもよく、例えば、石原産業(株)、テイカ(株)等の酸化チタン製造メーカーより市販されている。例えば、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販され、アルミナによる処理量が上記比率の範囲に入る酸化チタンも入手することができる。
【0024】
前記アルミナ及びシリカそれぞれの質量比は、酸化チタンの表面に酸化チタンと共に存在するアルミナ及びシリカの量から推定することができる。アルミナ及びシリカの存在量比は、蛍光X線またはESCA等により酸化チタン表面に吸着されたアルミナ、またはシリカの量を分析、比較することによって確認することができる。特に蛍光X線による測定が簡便で精度が高い。シリカおよびアルミナは酸化チタンの表面上に存在する他、その一部が遊離した粒子として存在する可能性があり、蛍光X線による測定を行うと、その総量を測定することができる。蛍光X線による定量法については、標準資料を用いた検量線による分析方法が確立されている。
従って、市販の酸化チタンに対して、その表面に存在するアルミナとシリカの質量比を蛍光X線による測定で確認し、種々の質量比の酸化チタンを使用することができる。
【0025】
本願においては、
(1)前記白色顔料のインキ中白色顔料濃度が40質量%以上である。
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18〜0.24の範囲である。
の両方を満たすことが必要である。
【0026】
(1)前記白色顔料のインキ中白色顔料濃度が40質量%以上である、とは、具体的には、有機溶剤までを含むインキ中の白色顔料濃度が40質量%以上であることを示す。白色顔料濃度は中でも42質量%以上であることが好ましく、44質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることが最も好ましい。一方上限は、概ね60質量%以下であれば、ラミネート適性等を維持することができる。
【0027】
(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)が0.18〜0.24の範囲であるとは、具体的には、後述のバインダー樹脂の重量に対する白色顔料の重量の比率R/が0.18〜0.24の範囲であることを示す。範囲は中でも0.185〜0.225の範囲であることがなお好ましく、0.19〜0.22の範囲であることが最も好ましい。
【0028】
本発明のリキッド印刷インキには、着色剤を添加することができる。着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を使用することができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
【0029】
前記無機顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。また、ガラスフレークまたは塊状フレークを母材とした上に金属、もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料(メタシャイン;日本板硝子株式会社)を使用できる。墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0030】
(バインダー樹脂)
本発明で使用するバインダー樹脂は、通常グラビアインキまたはフレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキに使用されるバインダー樹脂であれば特に限定されないが、プラスチックフィルムに対してのラミネート強度に優れることから、ポリウレタン尿素樹脂を主バインダー樹脂として使用することが好ましく、重量平均分子量が10,000〜80,000且つウレタン結合濃度が0.8mmol/g以上2.5mmol/g以下であるポリウレタン尿素樹脂であることが好ましい。
このようなポリウレタン尿素樹脂は低粘度であるために、前記(2)白色顔料に対するバインダー樹脂の比率(R/P)を0.18〜0.24の範囲にすることができる。
【0031】
本発明で使用するポリウレタン尿素樹脂は、通常のラミネート用グラビアインキまたはフレキソインキ等に使用されるポリウレタン尿素樹脂であれば特に限定されないが、高い隠ぺい性とフィルムへの接着性やラミネート強度を両立する観点から、樹脂の溶液粘度は固形分30%の酢酸エチル/IPA=65/35溶液において、1500mPa・s以下であることが好ましい。中でも1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0032】
前記ポリウレタン尿素樹脂は、高い隠ぺい性とフィルムへの接着性やラミネート強度を両立する観点から、重量平均分子量10000〜80000の範囲であることが好ましい。中でも10000〜50000の範囲のものがより好ましい。
【0033】
前記ポリウレタン尿素樹脂は、高い隠ぺい性とフィルムへの接着性やラミネート強度を両立する観点から、ポリウレタン尿素樹脂100質量%中、ポリエーテルポリオール由来の構造単位を1〜50質量%含有する事が好ましく、より好ましくは1〜30質量%の範囲である。
【0034】
前記ポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。上記範囲のポリエーテルポリオールを用いることで、フィルムに対する優れた接着性とラミネート強度および高い隠ぺい性の印刷物が得られるようになる。前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は100〜3500であることが好ましく、数平均分子量100〜1000であることがなお好ましい。特にポリエーテルポリオールの中ではポリオキシエチレンがより好ましい。
【0035】
ポリウレタン尿素樹脂の構成成分であるポリエーテルポリオールの数平均分子量が100以上であればポリウレタン尿素樹脂の皮膜が硬くなることなく、ポリエステルフィルム等のフィルム基材への接着性も保持される傾向にある。数平均分子量が3500以下の場合、ポリウレタン尿素樹脂の皮膜が脆弱になる事なくインキ皮膜の耐ブロッキング性が保持される傾向となる。
【0036】
なお、ポリエーテルポリオールや後述のポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、後述の条件で測定した。
【0037】
前記ポリウレタン尿素樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0038】
本発明のリキッド印刷インキに使用されるポリウレタン尿素樹脂は、高い隠ぺい性とフィルムへの接着性やラミネート強度を両立する観点から、ポリエステルポリオール(a)およびポリエーテルポリオール(b)を反応原料としており、(3)、(4)を満たすことが好ましい。
(3) ポリエステルポリオール(a)が炭素原子数3〜6の分岐ジオールを反応原料としており、前記炭素原子数3〜6の分岐ジオールの全重量が、ポリエステルポリオ―ルの全重量に対して30〜50%である。
(4) ポリエーテルポリオール(b)が数平均分子量100〜1000のポリオキシエチレンである。
【0039】
前記ポリエステルポリオール(a)において、炭素原子数3〜6の分岐ジオールとは具体的には、1,2−プロピレンジオール、1,3−ブチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。中でもネオペンチルグリコールや2−メチル−1,3−プロパンジオールが好ましい。
また、これらの分岐ジオールと反応させる多価カルボン酸としては、特に限定はないが例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物が挙げられる。
【0040】
本発明のリキッド印刷インキに使用されるポリウレタン尿素樹脂のウレタン結合濃度は、1.2mmol/g以上 2.5mmol/g以下が好ましく、1.3mmol/g以上であればより好ましい。本発明のリキッド印刷インキのウレタン結合濃度を1.2mmol/g以上 2.5mmol/g以下であれば、フィルム基材との接着性やラミネート強度が良好であり、1.3mmol/g以上であればより好ましい。
【0041】
ウレタン結合濃度={(W1×OH1+W2×OH2+・・・+Wi×OHi)×1000}/(56100×S) 式(1)
【0042】
式(1)において、各々以下の通りである。
複数種ポリオールを使用する場合、各々ポリオール1、ポリオール2〜ポリオールiとして算出する。
W1:ポリオール1の質量
OH1:ポリオール1の水酸基価
W2:ポリオール2の質量
OH2:ポリオール2の水酸基価
Wi:ポリオールiの質量
OHi:ポリオールiの水酸基価
S:ウレタン樹脂固形分の質量
【0043】
本発明のリキッド印刷インキで使用するポリウレタン尿素樹脂に必要に応じて使用される併用ポリオールとしては、前記ポリエステルポリオール(a)および前記ポリエーテルポリオール(b)を反応原料としているが、この定義から外れる公知のポリオールを前記(3)や(4)の範囲を満たす範囲で適宜併用してもよい。
これらの公知のポリオールは1種または2種以上を併用することができる。例えば、ポリオキシエチレン以外の酸化メチレン、酸化エチレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2ブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類;これらの低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(但し前記ポリエステルポリオール(a)に定義される以外の);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;前記低分子ポリオール類などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類;ポリブタジエングリコール類;ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類;1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオールなどが挙げられる。
【0044】
なお、前記ポリエステルポリオール類のなかで、ジオール類(グリコール類)と二塩基酸とから得られる高分子ジオールは、ジオール類のうち5モル%までを前記水酸基を3つ以上有する低分子ポリオール類に置換することが出来る。
【0045】
本発明のリキッド印刷インキにおけるポリウレタン尿素樹脂に使用されるジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン尿素樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
本発明のリキッド印刷インキにおけるポリウレタン尿素樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
本発明のリキッド印刷インキで使用するポリウレタン尿素樹脂は、例えば、前記ポリオールと前記ジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、ノントルエン系グラビアインキ用、又はフレキソインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいは前記ポリオール、前記ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なポリウレタン尿素樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。また、ポリウレタン尿素樹脂を二段法で製造する場合、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9〜1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン尿素樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
【0048】
本発明のリキッド印刷インキで使用するポリウレタン尿素樹脂のインキにおける含有量は、インキの被印刷体への接着性とラミネート強度を十分にする観点から、樹脂溶液としてインキ中に15質量%以上、高い隠ぺい性と作業性の観点から40%質量以下が好ましく、更には20〜30質量%の範囲が好ましい。
【0049】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂)
更に、本発明のリキッド印刷インキでは、前記ポリウレタン尿素樹脂に加えて、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を併用してもよく、好ましい。
【0050】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は特に限定なく公知のものが使用できるが、中でも水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましく、水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、かつ前記共重合体樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80〜95重量%である水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂がなお好ましい。
【0051】
本発明に用いられる水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0052】
また水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂のモノマー比率としては、例えば水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂100質量部に対し、塩化ビニルは80〜95質量部であると、耐ブロッキング性と接着性のバランスがとれ、なお好ましい。80質量部以上であれば樹脂被膜の強靭さが保て、耐ブロッキング性が確保できる。95質量部以下であれば、樹脂被膜が硬くなりすぎず、接着性が低下し難い。また、ビニルアルコールから得られる水酸基価は50〜200mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g以上であれば極性溶媒への溶解性が良好であり、印刷適性も安定し易い。200mgKOH/g以下であれば、ラミネート適性も良好に保てる。
【0053】
前記水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を併用する場合は、リキッド印刷インキの全樹脂固形分に対して1〜30%の範囲であることが好ましい。
【0054】
(塩素化ポリプロピレン樹脂)
更に、本発明のリキッド印刷インキでは、前記ポリウレタン尿素樹脂に加えて、塩素化ポリプロピレン樹脂を併用してもよい。前記塩素化ポリプロピレン樹脂としては特に限定なく公知のものが使用できるが、中でも、塩素化度が30〜45%、重量平均分子量が5000〜50000であると有機溶剤に対する溶解度や基材フィルムとの密着性のバランスがとれなお好ましい。ここで本発明における塩素化度とは、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の重量%である。
【0055】
前記塩素化ポリプロピレン樹脂を併用する場合は、リキッド印刷インキの全固形分に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましい。この範囲において、有機溶剤に対する溶解度や基材フィルムとの密着性のバランスがより良好であるインキを得ることができる。前記塩素化ポリプロピレン樹脂は、前記ポリウレタン尿素樹脂との併用でもよいし、前記ポリウレタン尿素樹脂と水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂との併用でもよい。
【0056】
(その他の樹脂)
更に、本発明のリキッド印刷インキで必要に応じて併用される樹脂の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総質量に対して1〜25質量%が好ましく、更に好ましくは2〜15質量%である。
【0057】
(溶剤)
本発明のリキッド印刷インキには、例えば芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n−プロパノール、イノプロパノール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤及びケトン類の溶剤を用いないことが望ましい。
【0058】
(水)
本発明のリキッド印刷インキには、揮発性成分として前記有機溶剤と共に、水を添加してもよい。水の添加により、インキの乾燥性を制御する事ができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。前記水の添加量は、印刷適性が良好となる点からインキ組成物全量の0.3〜10質量%の範囲であることが好ましい。前記水の添加量が0.3質量%以上であれば、インキの乾燥抑制効果が低下することなくグラデーション部の再現性が良好となる傾向にあり、水の添加量がインキ全量の10質量%以下であれば、インキ安定性が低下する事も抑制できる。
また、このような水の添加により、使用有機溶剤成分を低減させることも可能であり環境対応に繋がる。水は有機溶剤に予め添加して含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量を添加してもよい。
【0059】
(その他の添加剤)
本発明では更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0060】
(分散剤)
前記白色顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα−オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。
【0061】
本発明のリキッド印刷インキは、前記白色顔料及びバインダー樹脂等を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。
【0062】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0063】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン尿素樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0064】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材上に、本発明のリキッド印刷インキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物である。本発明のリキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である一方で、版を使用せずインクジェットノズルからインキを吐出するインクジェット方式向けのインキを除くものである。
即ち、インクジェットインキの場合、ノズルから吐出したインク滴が、直接基材に密着し印刷物を形成するのに対し、本発明のリキッド印刷インキは、印刷インキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じて乾燥させて印刷物とするものである。
本発明のリキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0065】
前記基材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0066】
(積層体)
また本発明のリキッド印刷インキは、1層の印刷層のみならず、プラスチックフィルムに少なくとも第一の印刷層と第二の印刷層とをこの順に有する積層体も作成することができる。
前記第一の印刷層と第二の印刷層は、バインダー樹脂、有機溶剤、着色剤、硫酸法により得られた酸化チタン、及び無機フィラーを含有する本願発明のリキッド印刷インキから形成された印刷層であることを特徴とする。
更に、前記第二の印刷層がオーバープリントニスである場合は、着色剤を含まなくてもよいし、着色目的に種々顔料を用いてもよく、中でも白色顔料が好ましい。
【0067】
前記バインダー樹脂としてポリウレタン尿素樹脂を第一の印刷層に用いる事で、塗膜に柔軟性があり、プラスチックフィルムに対する密着性が高くフィルム基材の変形に伴う追従性も高い。また、ポリウレタン尿素樹脂は顔料分散性、印刷時の再溶解性、顔料を分散した際の発色性の点でも優れ、顔料との相性もよい。
【0068】
更に本発明のリキッド印刷インキは、前記第一の印刷層、第二の印刷層に隣接する更に第三の印刷層をこの順に有する積層体を形成する事が出来るものであり、例えばポリウレタン尿素樹脂と着色剤を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層と、着色剤として白色顔料を含有するリキッド印刷インキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の白印刷層とをこの順に有する積層体をも作製する事ができる。
プラスチックフィルムに、ポリウレタン尿素樹脂と着色剤を含有する印刷インキにより形成された第一の印刷層は着色剤による絵柄を形成させる事ができ、白色顔料を含有するリキッド印刷インキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の印刷層は、絵柄の背景として使用することができる。
第三の印刷層がオーバープリントニスである場合は、着色剤を含まなくてもよいし、着色目的に種々着色顔料を用いてもよく、中でも白色顔料が好ましい。
【実施例】
【0069】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。表中の空欄は未配合であることを示す。
【0070】
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:0.4質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
尚、水酸基価は、ポリウレタン樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
【0071】
ウレタン結合濃度={(W1×OH1+W2×OH2+・・・+Wi×OHi)×1000}/(56100×S) 式(1)
式(1)において、各々以下の通りである。
複数種ポリオールを使用する場合、各々ポリオール1、ポリオール2〜ポリオールiとして算出する。
W1:ポリオール1の質量
OH1:ポリオール1の水酸基価
W2:ポリオール2の質量
OH2:ポリオール2の水酸基価
Wi:ポリオールiの質量
OHi:ポリオールiの水酸基価
S:ウレタン樹脂固形分の質量
【0072】
(合成例1)ポリウレタン尿素樹脂溶液P−1
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール、アジピン酸からなるポリエステルポリオ―ル60.0部(水酸基価:112.0mgKOH/g)とポリエチレングリコール40.0部(水酸基価:280mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート45.72部を仕込み、窒素気流下に90℃で16時間反応させ、イソシアネート基含有率2.67重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル97.0部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.95部、ジ−n−ブチルアミン0.62部、酢酸エチル119.0部およびイソプロピルアルコール144.0部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン尿素樹脂溶液P−1を得た。
得られたポリウレタン尿素樹脂溶液P−1は、樹脂固形分濃度30.1重量%、樹脂固形分のMwは52,000であり、ウレタン結合濃度は式(1)に従う算出方法により2.07mmol/gであった。
ポリエステルポリオ―ル中に分岐ジオールが46.9%、ポリウレタン尿素樹脂(総計154.3部)中にポリエーテルポリオールとしてポリエチレングリコール(40.0部)を25.9質量%含有するものである。
【0073】
(合成例2)ポリウレタン尿素樹脂溶液P−1−2
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、アジピン酸からなるポリエステルポリオ―ル40.0部(ネオペンチルグリコール/プロピレングリコール=1/2mol、水酸基価:56.0mgKOH/g)と2−メチル−1,3−プロパンジオール、アジピン酸からなるポリエステルポリオ―ル50.0部(水酸基価:34.5mgKOH/g)ポリエチレングリコール10.0部(水酸基価:280mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート22.00を仕込み、窒素気流下に90℃で16時間反応させ、イソシアネート基含有率2.67重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル81.3部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン6.65部、ジ−n−ブチルアミン0.52部、酢酸エチル99.5部およびイソプロピルアルコール120.6部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン尿素樹脂溶液P−1−2を得た。
得られたポリウレタン尿素樹脂溶液P−1−2は、樹脂固形分濃度30.0重量%、樹脂固形分のMwは54,000であり、ウレタン結合濃度は式(1)に従う算出方法により0.93mmol/gであった。
ポリエステルポリオ―ル中に分岐ジオールが39.3%、ポリウレタン尿素樹脂(総計129.2部)中にポリエーテルポリオールとしてポリエチレングリコール(10.0部)を7.7質量%含有するものである。
【0074】
(合成例3)ポリウレタン尿素樹脂溶液P−2
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、アジピン酸からなるポリエステルポリオ―ル100.0部(ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール=1/1mol、水酸基価:22.0mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート12.27部を仕込み、窒素気流下に90℃で16時間反応させ、イソシアネート基含有率2.67重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル74.8部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン6.12部、ジ−n−ブチルアミン0.47部、酢酸エチル91.6部およびイソプロピルアルコール110.9部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン尿素樹脂溶液P−2を得た。
得られたポリウレタン尿素樹脂溶液P−2は、樹脂固形分濃度30.3重量%、樹脂固形分のMwは56,000であり、ウレタン結合濃度は式(1)に従う算出方法により0.33mmol/gであった。
ポリエステルポリオ―ル中に分岐ジオールが20.7%含有するものである。
【0075】
(合成例4)ポリウレタン尿素樹脂溶液P−3
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエチレングリコール、アジピン酸からなるポリエステルポリオ―ル100.0部(水酸基価:112.0mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート31.48部を仕込み、窒素気流下に90℃で16時間反応させ、イソシアネート基含有率2.68重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル87.7部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.21部、ジ−n−ブチルアミン0.56部、酢酸エチル107.2部およびイソプロピルアルコール130.0部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン尿素樹脂溶液P−3を得た。
得られたポリウレタン尿素樹脂溶液P−3は、樹脂固形分濃度30.3重量%、樹脂固形分のMwは57,000であり、ウレタン結合濃度は式(1)に従う算出方法により1.43mmol/gであった。
【0076】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液の調整)
ポリウレタン尿素樹脂と併用して用いる水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(樹脂モノマー組成が重量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、水酸基価(mgKOH)=64)を酢酸エチルで15%溶液とし、これを塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液(B−1)した。
【0077】
(塩素化ポリプロピレン樹脂)
塩素化ポリプロピレンとしては、日本製紙ケミカル社製の「スーパークロン390S 塩素含有率36%」を使用した。
【0078】
(実施例、比較例 リキッド印刷インキの製造方法)
合成済みのポリウレタン尿素樹脂溶液を用い、表1に記載の配合比率で混合した混合物を、マイティーミル(株式会社井上製作所製)を用いて混練し、実施例1〜18及び比較例1〜9に記載の白インキを調製し、各々について以下の評価を実施した。
【0079】
〔印刷物の製造方法〕
得られたリキッド印刷インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で15秒(25℃)に調整した。調整後のインキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 E−5100 厚さ12μm)へ印刷して、乾燥し、PETフィルム印刷物を得た。
【0080】
[隠ぺい性]
前記「印刷物の製造方法」により得られたPETフィルム印刷物の透過濃度を透過濃度計X−Rite 361T(V)にて測定を行った。隠ぺい性は10段階で評価し、隠ぺい性が最も高いものを10、最も低いものを1とし、6以上あれば合格とする。
【0081】
[接着性]
前記「印刷物の製造方法」により得られたPETフィルム印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を評価した。なお、接着性が6以上であれば合格であるものとする。
(評価基準)
10:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
9:印刷皮膜の90%以上がフィルムに残った
8:印刷皮膜の80%以上〜90%未満がフィルムに残った
7:印刷皮膜の70%以上〜80%未満がフィルムに残った
6:印刷皮膜の60%以上〜70%未満がフィルムに残った
5:印刷皮膜の50%以上〜60%未満がフィルムに残った
4:印刷皮膜の40%以上〜50%未満がフィルムに残った
3:印刷皮膜の30%以上〜40%未満がフィルムに残った
2:印刷皮膜の20%以上〜30%未満がフィルムに残った
1:印刷皮膜の10%以上〜20%未満がフィルムに残った
0:印刷皮膜の10%未満がフィルムに残った
【0082】
[ラミネート適性]
前記「印刷物の製造方法」により得られたPETフィルム印刷物の印刷面に、ウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX−703VL/KR−90(DIC製)をドライラミネート機(DICエンジニアリング製)にて塗工し、接着剤塗工面に無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R−CPP:東レ合成フィルム社製 ZK−75 50μm)を積層させた。その後40℃で5日間エージングを施しラミネート物を得た。
得られたラミネート物を15mm幅に切り出し、引っ張り速度300mm/分で90度の剥離試験を行った。なお、ラミネート強度が3以上であれば合格とする。
(評価基準)
5:ラミネート強度が4N/15mm以上である。
4:ラミネート強度が3N/15mm以上〜4N/15mm未満である。
3:ラミネート強度が2N/15mm以上〜3N/15mm未満である。
2:ラミネート強度が1N/15mm以上〜2N/15mm未満である 。
1:ラミネート強度が1N/15mm未満である。
【0083】
〔耐レトルト性〕
前記「印刷物の製造方法」により得られたPETフィルム印刷物の印刷面に、ウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX−500/KW−75(DIC製)を塗膜量が3.5g/m2となるように塗布、乾燥後、ドライラミネート機((株)武蔵野機械設計事務所)によってアルミニウム箔(以下、AL:東洋アルミニウム工業(株)製 アルミ箔C、15μm)をラミネートし、2層のラミネート物1を得た。次にラミネート物1のAL上に接着剤を同様に塗布し、無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R−CPP:東レ合成フィルム社製 ZK−93KM 50μm)を積層し、40℃で5日間エージング施し、3層の複合ラミネート物2を得た。その後、得られたラミネート物2を120mm×120mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として、水/サラダ油=1:1(重量比)に配合した疑似食品70gを充填密封した。作成したパウチを135℃、30分間の蒸気レトルト殺菌処理をした後、外観の変化を以下の基準で目視評価した。なお、レトルト適性が4以上であれば合格とする
(評価基準)
5:外観に全く変化が見られなかった。
4:3と5の中間程度
3:外観にブリスター痕またはラミネート浮きが僅かに見られた。
2:1と3の中間程度
1:外観にブリスター痕またはラミネート浮きが著しく見られた。
【0084】
結果を以下に示す。
【0085】
【表1】


【0086】
【表2】


【0087】
【表3】


【0088】
表中、略語は次の通りである。
酸化チタン(A):硫酸法により得られた、酸化チタン/アルミナ/シリカ(Ti/Al/Si)の質量比が92/4/4であるアルミナシリカ処理酸化チタン
酸化チタン(B):硫酸法により得られた、酸化チタン/アルミナ/シリカ(Ti/Al/Si)の質量比が96/4/0であるアルミナシリカ処理酸化チタン
【0089】
この結果、実施例のリキッド印刷インキは、隠ぺい性、接着性、ラミネート適性、レトルト適性に優れるものであった。インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上含有しないインキは、隠ぺい性が劣ることがわかる。また、インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上含有している場合でも、R/Pが0.18〜0.24の範囲にない場合は、フィルムへの接着性、ラミネート強度、レトルト適性に劣ることがわかる。これに対し、インキ中の白色顔料濃度が40質量%以上含有しており、かつR/Pが0.18〜0.24の範囲であるインキは、優れた隠ぺい性を有しており、フィルムへの接着性、ラミネート強度、レトルト適性に優れていることがわかる。