特開2021-165382(P2021-165382A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165382(P2021-165382A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】樹脂溶解剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/43 20060101AFI20210917BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20210917BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20210917BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   C11D3/43
   C11D1/22
   C11D1/04
   C11D3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-63232(P2021-63232)
(22)【出願日】2021年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2020-68285(P2020-68285)
(32)【優先日】2020年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502264991
【氏名又は名称】株式会社日新化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】特許業務法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 竜吾
(72)【発明者】
【氏名】二宮 幸浩
(72)【発明者】
【氏名】加賀屋 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一朗
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB03
4H003EB07
4H003EB22
4H003EB37
4H003EB38
4H003ED19
4H003ED26
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】消防法などの各種法令に該当せず、人体への影響や環境への負荷が少なく、樹脂に対して優れた溶解除去性能を有する樹脂溶解剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂溶解剤は、ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)を70〜99質量%と、アルキルベンゼンスルホン酸(B1)およびフルオロアルキルカルボン酸(B2)の少なくとも一方を1〜30質量%とを含み、ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)が、50℃以上の沸点および40以上のカウリブタノール値を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)を70〜99質量%と、
アルキルベンゼンスルホン酸(B1)およびフルオロアルキルカルボン酸(B2)の少なくとも一方を1〜30質量%と、
を含む樹脂溶解剤であって、
前記ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)が、50℃以上の沸点および40以上のカウリブタノール値を有する樹脂溶解剤。
【請求項2】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)が、(E)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一方である、請求項1に記載の樹脂溶解剤。
【請求項3】
前記アルキルベンゼンスルホン酸(B1)が、ベンゼン環に対し1〜18個の炭素原子を有するアルキル基を1個または2個有するアルキルベンゼンスルホン酸である、請求項1または2に記載の樹脂溶解剤。
【請求項4】
前記アルキルベンゼンスルホン酸(B1)が、ドデシルベンゼンスルホン酸およびキシレンスルホン酸の少なくとも一方である、請求項3に記載の樹脂溶解剤。
【請求項5】
前記フルオロアルキルカルボン酸(B2)が、トリフルオロ酢酸である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂溶解剤。
【請求項6】
前記樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選択される1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂溶解剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂溶解剤に関し、より詳細には、シリコーンなどの樹脂を溶解して除去するための溶解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンなどの樹脂は、化学工業、機械工業、電気工業などの各種産業分野で使用されている。このような樹脂は、製造工程中や製造後などに溶解除去しなければならない場合がある。例えば、電子部品には保護や絶縁などを目的に樹脂で被覆されることがある。しかし、修理や部品交換、不良解析、構造解析などの目的で樹脂を除去しなければならない場合がある。さらに、樹脂を施工、塗布するための設備や治具、配管などの洗浄を目的とする場合もある。このような樹脂を溶解除去するために、例えば、特許文献1および特許文献2に記載のような溶解除去液が使用される。
【0003】
ところで、特許文献1および特許文献2に記載のような溶解除去液は、樹脂の溶解性を考慮して塩素系溶剤やトルエン、ベンゼンなど芳香族炭化水素類が主成分として使用されている。このような有機溶剤を主成分として含む溶解除去液は、消防法や労働安全衛生法などの各種法令に該当する場合があり、さらに人体への影響や環境への負荷が大きく、扱いにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−216880号公報
【特許文献2】特開平4−318075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、消防法などの各種法令に該当せず、人体への影響や環境への負荷が少なく、樹脂に対して優れた溶解除去性能を有する樹脂溶解剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)を70〜99質量%と、アルキルベンゼンスルホン酸(B1)およびフルオロアルキルカルボン酸(B2)の少なくとも一方を1〜30質量%とを含む樹脂溶解剤であって、ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)が、50℃以上の沸点および40以上のカウリブタノール値を有する樹脂溶解剤。
(2)ハイドロクロロフルオロオレフィン(A)が、(E)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一方である、上記(1)に記載の樹脂溶解剤。
(3)アルキルベンゼンスルホン酸(B1)が、ベンゼン環に対し1〜18個の炭素原子を有するアルキル基を1個または2個有するアルキルベンゼンスルホン酸である、上記(1)または(2)に記載の樹脂溶解剤。
(4)アルキルベンゼンスルホン酸(B1)が、ドデシルベンゼンスルホン酸およびキシレンスルホン酸の少なくとも一方である、上記(3)に記載の樹脂溶解剤。
(5)フルオロアルキルカルボン酸(B2)が、トリフルオロ酢酸である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂溶解剤。
(6)樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選択される1種である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂溶解剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消防法などの各種法令に該当せず、人体への影響や環境への負荷が少なく、樹脂に対して優れた溶解除去性能を有する樹脂溶解剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る樹脂溶解剤(以下、単に「溶解剤」と記載する場合がある)は、特定のハイドロクロロフルオロオレフィン(成分(A))と、アルキルベンゼンスルホン酸(成分(B1))およびフルオロアルキルカルボン酸(成分(B2))の少なくとも一方とを含む。
請求項1では
【0009】
ハイドロクロロフルオロオレフィンは、代替フロンの一種であり、オゾン破壊係数や地球温暖化係数などの環境への負荷が少ないフッ素系化合物である。さらに、ハイドロクロロフルオロオレフィンは、消防法危険物、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)などの各種法令に該当せず、人体への影響も少ない。
【0010】
一実施形態に係る溶解剤には、ハイドロクロロフルオロオレフィンの中でも、50℃以上の沸点および40以上のカウリブタノール値(KB値)を有する特定のハイドロクロロフルオロオレフィンが含まれる。50℃未満の沸点を有するハイドロクロロフルオロオレフィンを用いると、例えば夏季などの高温環境下において溶解剤を使用する場合、ハイドロクロロフルオロオレフィンが揮発しやすくなり、樹脂の溶解性が低下したり、液の粘度が上昇したりする問題が生じる。さらに、夏季などの高温環境下において溶解剤を保管や輸送を行う場合、耐圧容器の使用や低温環境下での輸送が必要となり、保管条件や輸送条件など取り扱い条件が限定されてしまう問題がある。沸点の上限については限定されない。例えば、ある程度の乾燥性を有する方が溶解後の溶解剤の除去がより容易になるという点で、100℃以下の沸点を有するハイドロクロロフルオロオレフィンを用いるのが好ましい。
【0011】
カウリブタノール値(KB値)とは、溶解剤の樹脂溶解性を数値化したものであり、一般的に数値が大きいほど溶解性が高いことを示す。具体的には、カウリガム100gをブタノール500gに溶解させた溶液20gに溶剤を添加し、溶液が濁った(曇りが生じた)時点の添加量(mL)をKB値とする。溶剤として一般的に使用されるトルエンのKB値が100である。
【0012】
一実施形態に係る溶解剤には、ハイドロクロロフルオロオレフィンの中でも、40以上のKB値を有するハイドロクロロフルオロオレフィンが使用される。40未満のKB値を有するハイドロクロロフルオロオレフィンを用いると、樹脂の溶解性が乏しくなる。KB値の上限については限定されないが、例えば、人体への毒性を抑える点で80以下のKB値を有するハイドロクロロフルオロオレフィンを用いるのが好ましい。
【0013】
成分(A)について、50℃以上の沸点および40以上のKB値を有する特定のハイドロクロロフルオロオレフィンを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このような特定のハイドロクロロフルオロオレフィンは、例えば、3個以上の炭素原子を有している。さらに、このような成分(A)は、1.32以上の比重を有していてもよい。成分(A)としては、好ましくは、(E)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン、(Z)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンなどが挙げられる。
【0014】
アルキルベンゼンスルホン酸(成分(B1))は界面活性剤の一種であり、樹脂の溶解性をより向上させるために使用される。アルキルベンゼンスルホン酸についても、毒劇物取締法、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)などの各種法令に該当せず、環境への負荷および人体への影響が少ない。
【0015】
成分(B1)について、アルキル基部分は、直鎖アルキル基であってもよく分岐アルキル基であってもよい。樹脂の溶解性をより向上させる点で、成分(B1)のアルキル基部分は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基が好ましく、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基がより好ましく、成分(A)との相溶性や溶解性の観点から8〜14個の炭素原子を有するアルキルであることが特に好ましい。さらに、成分(B1)としては、ベンゼン環に対し、このようなアルキル基を1個または2個有するアルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0016】
成分(B1)としては、好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0017】
成分(B1)については、製造工程で不純物や副生成物(不可避成分)として混入や生成する硫酸や硫酸塩、有機スルホン酸またはその塩を微量含む場合がある。このような不可避成分については、樹脂溶解性に影響のない範囲で含有していてもよい。樹脂溶解性に影響のない範囲としては特に限定されず、好ましくは1質量%未満である。
【0018】
フルオロアルキルカルボン酸(成分(B2))は界面活性剤の一種であり、樹脂の溶解性をより向上させるために使用される。成分(B2)について、アルキル基部分は、直鎖アルキル基であってもよく分岐アルキル基であってもよい。樹脂の溶解性をより向上させる点や低毒性である点から、成分(B2)のアルキル基部分は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。
【0019】
成分(B2)としては、例えば、モノフルオロエタン酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸などが挙げられる。これらのフルオロアルキルカルボン酸については、毒劇物取締法、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)などの各種法令に該当せず、環境への負荷および人体への影響が少ない。
【0020】
一実施形態に係る溶解剤には、70〜99質量%の成分(A)ならびに1〜30質量%の成分(B1)および成分(B2)の少なくとも一方(以下、「成分(B1)および成分(B2)の少なくとも一方」を、単に「成分(B)」と記載する場合がある)が含まれる。成分(A)および成分(B)がこの範囲外の場合、樹脂の溶解性が乏しくなる。具体的には、成分(A)の含有量が70質量%未満および成分(B)の含有量が30質量%を超える場合、成分(A)の含有量が少なくなり、樹脂の溶解性が乏しくなる。一方、成分(B)の含有量が1質量%未満および成分(A)の含有量が99質量%を超える場合、樹脂の溶解性をより向上させるために使用される成分(B)の含有量が少なくなり、樹脂の溶解性が乏しくなる。成分(A)は、好ましくは75〜95質量%の割合で含まれ、成分(B)は、好ましくは5〜25質量%の割合で含まれる。
【0021】
一実施形態に係る溶解剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(成分(C))が含まれていてもよい。成分(C)が含まれることによって作業性に優れ、表面張力が下がる傾向があり、樹脂に対する溶解除去性能をより向上させることができる。成分(C)は、成分(A)および(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部の割合で含まれる。成分(C)は、消防法危険物、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)などの各種法令に該当せず、人体への影響も少ない。
【0022】
さらに、一実施形態に係る溶解剤には、溶解剤に一般的に添加される添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、成分(B)以外の界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防錆剤などが挙げられる。これらの添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要量添加される。
【0023】
一実施形態に係る溶解剤を製造する方法は限定されない。例えば、成分(A)と成分(B)とを特定の割合で混合し、必要に応じて、成分(C)や他の添加剤を添加すればよい。
【0024】
一実施形態に係る溶解剤によって溶解除去される樹脂は限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。一実施形態に係る溶解剤は、特にシリコーン樹脂を好適に溶解除去することができる。
【0025】
シリコーン樹脂としては、シロキサン結合を有する高分子化合物であれば限定されず、例えば、シリコーンオイル、シリコーングリース、シリコーンワニス、シリコーンシーラント、シリコーン系液状ガスケット、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0026】
ウレタン樹脂としては、ウレタン結合を有する高分子化合物であれば限定されず、例えば、ウレタンゴム、ウレタン系接着剤、ウレタン系塗料などが挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン環を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0028】
ポリアミド樹脂はアミド結合を有する高分子化合物であり、例えばナイロン樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。ポリイミド樹脂はイミド結合を有する高分子化合物である。
【0029】
一実施形態に係る溶解剤の使用方法は限定されない。例えば、溶解除去したい樹脂と溶解剤とを接触させればよい。溶解除去したい樹脂と溶解剤との接触時間は、樹脂の種類、樹脂の量、気温などにもよるが、例えば1〜1000分程度である。さらに、樹脂をより溶解させやすくするために、撹拌や振とうなどによって溶解剤を流動させてもよい。
【0030】
一実施形態に係る溶解剤に含まれる成分(A)は、50℃以上の沸点を有している。そのため、夏季などの高温環境下において溶解剤を使用する場合でも成分(A)が揮発しにくく、一実施形態に係る溶解剤は、樹脂に対して優れた溶解除去性能を発揮する。一方、冬季など低温環境下において溶解剤を使用する場合には、一実施形態に係る溶解剤を加温して使用することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
成分(A)としてAMOLEA AS−300(AGC株式会社製、(E)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの混合物、沸点54℃、KB値44、比重1.34)を90質量%、および成分(B1)として分岐ドデシルベンゼンスルホン酸(炭素数12のアルキル基を1個有する)を主成分とするテイカパワーB−121(テイカ株式会社製)を10質量%の割合で混合して溶解剤を得た。得られた溶解剤の各種物性を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(製品名:CELEFIN1233Z、セントラル硝子株式会社製)を90質量%、および上記のテイカパワーB−121を10質量%の割合で混合して溶解剤を得た。シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(比重1.29)は、39℃の沸点および34のKB値を有している。得られた溶解剤の各種物性を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
イソパラフィン系炭化水素(製品名:IPソルベント1620、出光興産株式会社製、沸点160℃以上)を80質量%、および上記のテイカパワーB−121を20質量%の割合で混合して溶解剤を得た。得られた溶解剤の各種物性を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
灯油(出光興産株式会社製、沸点140℃以上)を80質量%、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(製品名:テイカパワーL−121、テイカ株式会社製)を10質量%、および上記のテイカパワーB−121を10質量%の割合で混合して溶解剤を得た。得られた溶解剤の各種物性を表1に示す。
【0036】
(比較例4)
ジクロロメタン(沸点41℃およびKB値136)を溶解剤として用いた。各種物性を表1に示す。
【0037】
(比較例5)
トルエン(沸点111℃およびKB値100)を溶解剤として用いた。各種物性を表1に示す。
【0038】
実施例1ならびに比較例1〜5で得られた溶解剤を用いて、シリコーン樹脂の溶解性を下記の手順で検証した。まず、シリコーン樹脂として脱オキシム型シリコーン樹脂(製品名:KE−44、信越化学工業株式会社製)および脱アルコール型シリコーン樹脂(製品名:KE4895、信越化学工業株式会社製)、ポリアミド樹脂として6−ナイロン樹脂(製品名:MCナイロン、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社製)、ウレタン樹脂として1液硬化型ウレタン樹脂接着剤(製品名:KU928C−X、コニシ株式会社製)を用意し、厚膜状に硬化反応させて樹脂片を作製した。次に、各硬化樹脂を1cm×1cm四方に切り出し、樹脂試料とした。樹脂試料をガラス製シャーレに入れ、実施例1ならびに比較例1〜5で得られた溶解剤に浸漬し、一定時間経過ごとに溶解性を目視判定した。結果を表1に示す。
【0039】
<評価基準>
A:60分未満で、ほぼ全て溶解した場合。
B:60分以上180分未満で、ほぼ全て溶解した場合。
C:一部溶解しているものの、180分以上でも溶け残りがある場合。
D:1200分以上でも、ほとんど溶解しなかった場合。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、実施例1で得られた溶解剤は、消防法などの各種法令に該当せず、人体への影響や環境への負荷が少ないことがわかる。さらに、揮発性も高くないため長時間浸漬することができ、各種樹脂に対して優れた溶解除去性能を発揮することがわかる。
【0042】
一方、比較例1〜5で得られた溶解剤は、消防法などの各種法令に該当したり、揮発性が高かったり、樹脂に対する溶解除去性能に乏しかったりすることがわかる。比較例1は各種樹脂の溶解性に優れるが、一部溶解時間が掛かる樹脂に対しては、揮発性が高すぎるため長時間浸漬することができず、実施例1に比べて溶解性が劣ることがわかる。
【0043】
(実施例2)
実施例1で得られた溶解剤を用いて、シリコーン樹脂の溶解性を下記の手順で検証した。まず、シリコーン樹脂として、脱アルコール型シリコーン樹脂(製品名:KE4895、信越化学工業株式会社製)を使用した。このシリコーン樹脂を厚膜状に硬化反応させて、樹脂片を作製した。次いで、樹脂片を1cm×1cm四方に切り出し、樹脂試料とした。樹脂試料をガラス製シャーレに入れ、実施例1で得られた溶解剤に浸漬し、一定時間経過ごとに溶解性を目視判定した。結果を表2に示す。
【0044】
<評価基準>
A:液中に完全に溶解している場合。
B:ほぼ溶解しており、原型を留めていない場合。
C:一部しか溶解していない場合。
D:全く溶解していない場合。
【0045】
(実施例3)
成分(B1)として、テイカパワーB−121の代わりに、キシレンスルホン酸(テイカ株式会社製、炭素数1のアルキル基を2個有する)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例4)
成分(A)を80質量%および成分(B1)を20質量%の割合で混合した以外は、実施例3と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例5)
成分(A)を70質量%および成分(B1)を30質量%の割合で混合した以外は、実施例3と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0048】
(実施例6)
成分(A)を95質量%、およびテイカパワーB−121の代わりに、成分(B2)としてトリフルオロ酢酸(AGC株式会社製)を5質量%の割合で用いた以外は、実施例1と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例7)
成分(A)を90質量%および成分(B2)を10質量%の割合で混合した以外は、実施例6と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0050】
(実施例8)
成分(A)を80質量%および成分(B2)を20質量%の割合で混合した以外は、実施例6と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0051】
(比較例6)
成分(A)を50質量%および成分(B1)を50質量%の割合で混合した以外は、実施例3と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0052】
(比較例7)
成分(A)の代わりに、ABZOL 8000(アルベマール日本株式会社製、主成分1−ブロモプロパン、沸点71℃、KB値125)を用いた以外は、実施例6と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0053】
(比較例8)
成分(A)の代わりに、上記のIPソルベント1620を用いた以外は、実施例6と同様の手順で溶解剤を得た。得られた溶解剤について、実施例2と同様の手順で溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、本発明に係る溶解剤(実施例2〜8)は、1時間程度で樹脂資料をほぼ溶解していることがわかる。したがって、本発明に係る溶解剤は、優れた溶解除去性能を発揮することがわかる。一方、比較例6〜8で得られた溶解剤は、4時間経過しても、樹脂資料をほとんど溶解していないことがわかる。