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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165583(P2021-165583A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】液封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20210917BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   F16F13/10 J
   B60K5/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-69944(P2020-69944)
(22)【出願日】2020年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山本 彦文
(72)【発明者】
【氏名】上間 涼介
【テーマコード(参考)】
3D235
3J047
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB23
3D235BB25
3D235BB27
3D235CC01
3D235EE05
3J047AA03
3J047CA04
3J047CA10
3J047CB06
3J047DA01
3J047FA02
(57)【要約】
【課題】弾性可動体の耐久性を向上できる液封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】第2オリフィスP2は、第1弁部13の上下に対向する一対の対向面81c,91cを備え、弾性可動体10の外周部12の径方向寸法D1が上下方向寸法D2よりも大きく形成される。これにより、第2オリフィスP2を通過する液体の液圧が弾性可動体10の外周部12に作用した場合に、外周部12の全体が撓むように変形する。その外周部12の変形によって第1弁部13と対向面81c,91c(凹部81d,91d)とが離隔または接触することにより、第2オリフィスP2の連通状態および閉塞状態が切り替えられる。弾性可動体10の外周部12の全体を撓ませるように変形させることにより、外周部12の一部に応力が集中することを抑制できるので、外周部12に亀裂が生じ難くなる。よって、弾性可動体10の耐久性を向上できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1取付部材と、筒状の第2取付部材と、その第2取付部材の軸方向一端側の開口部分を閉塞するようにして前記第1取付部材および前記第2取付部材を連結し、ゴム状弾性体を用いて形成される防振基体と、前記第2取付部材の軸方向他端側の開口部分を閉塞し、ゴム状弾性体を用いて形成されるダイヤフラムと、そのダイヤフラム及び前記防振基体の間で前記第2取付部材の内周側に保持され、前記防振基体側の第1液室および前記ダイヤフラム側の第2液室を仕切る仕切部材と、その仕切部材に形成され、前記第1液室および前記第2液室を連通させるオリフィスと、前記仕切部材に収納され、ゴム状弾性体を用いて形成される円盤状の弾性可動体と、を備え、
前記オリフィスは、第1オリフィスと、その第1オリフィスよりも高い周波数で共振するように構成される第2オリフィスと、から少なくとも構成され、
前記弾性可動体は、その弾性可動体の内周側の部位を構成し前記仕切部材に保持される被保持部と、その被保持部から径方向外側に突出し前記第2オリフィスの流路上に配置される外周部と、その外周部の外周端側から軸方向両側に突出する第1弁部と、を備え、
前記第2オリフィスには、前記第1弁部に径方向で対向し前記第1弁部との間に流路を形成する周壁面が形成される液封入式防振装置であって、
前記外周部は、径方向寸法が軸方向寸法よりも大きく設定され、
前記第2オリフィスには、前記周壁面から径方向内側に突出し前記第1弁部に軸方向両側で対向する一対の対向面が形成され、
前記第1弁部が前記対向面と接触または離隔することにより、第2オリフィスの連通状態と閉塞状態とが切り替えられることを特徴とする液封入式防振装置。
【請求項2】
振動が入力される前の状態において前記第1弁部と前記対向面とが離隔し、
前記第1弁部または前記対向面の少なくとも一方には、所定の第1振幅の振動入力時に前記第1弁部が前記対向面に接触した場合に、前記第2オリフィスの連通状態を維持するリーク流路が形成されることを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
【請求項3】
前記第1振幅よりも大きい第2振幅の振動入力時に、前記第1弁部によって前記リーク流路を閉塞可能に構成されることを特徴とする請求項2記載の液封入式防振装置。
【請求項4】
前記弾性可動体は、前記第1弁部よりも内周側に形成され前記外周部から軸方向両側に突出する第2弁部を備え、
前記第2弁部は、一対の前記対向面に軸方向で対向し、
前記第2弁部と前記対向面との対向間隔は、前記第1弁部と前記対向面との対向間隔よりも広く形成されることを特徴とする請求項3記載の液封入式防振装置。
【請求項5】
前記第2振幅の振動入力時に前記第2弁部が前記対向面に接触することを特徴とする請求項4記載の液封入式防振装置。
【請求項6】
前記第2弁部または前記対向面の少なくとも一方には、前記第2弁部が前記対向面に接触した場合に、前記第2オリフィスの連通状態を維持するリーク流路が形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の液封入式防振装置。
【請求項7】
前記第2振幅の振動入力時に、前記第2弁部によって前記リーク流路を閉塞可能に構成されることを特徴とする請求項6記載の液封入式防振装置。
【請求項8】
前記第1弁部および前記第2弁部が非形成とされる領域において、前記外周部の軸方向寸法が一定に形成されることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【請求項9】
前記リーク流路の流路幅が径方向内側ほど狭く形成されることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【請求項10】
前記仕切部材は、前記外周部の周方向の一部を上下から挟持する挟持部を備え、
前記リーク流路は、周方向において前記挟持部とは異なる位置に形成されることを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【請求項11】
前記対向面に形成される凹部によって前記リーク流路が形成されることを特徴とする請求項2から10のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封入式防振装置に関し、特に、弾性可動体の耐久性を向上できる液封入式防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オリフィス流路104及び連通路106(第1オリフィス及び第2オリフィス)の2つの流路によって受圧室96と平衡室98とが連通される液封入式防振装置が記載されている。この技術では、オリフィス流路104における液体流動時の共振周波数を連通路106よりも低い周波数に設定し、連通路106の連通状態および閉塞状態を弾性可動体78の弁部94によって切り替えるように構成している。この技術によれば、比較的大きい振幅(低周波)の振動入力時には、弁部94の変位によって連通路106が閉塞されるため、オリフィス流路104での液体流動によって高い減衰係数を得ることができる。一方、比較的小さい振幅(高周波)の振動入力時には、弁部94の変位が小さく、連通路106の連通状態が維持されるため、連通路106での液体流動によって動ばね定数を低くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−158022号公報(例えば、段落0056,0058,0065〜0067,0070、図12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、弾性可動体78に形成された薄肉部88の変形によって弁部94を変位させる構成であるため、弁部94の変形が繰り返されると薄肉部88で亀裂が生じ易くなる。よって、弾性可動体78の耐久性が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、弾性可動体の耐久性を向上できる液封入式防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の液封入式防振装置は、第1取付部材と、筒状の第2取付部材と、その第2取付部材の軸方向一端側の開口部分を閉塞するようにして前記第1取付部材および前記第2取付部材を連結し、ゴム状弾性体を用いて形成される防振基体と、前記第2取付部材の軸方向他端側の開口部分を閉塞し、ゴム状弾性体を用いて形成されるダイヤフラムと、そのダイヤフラム及び前記防振基体の間で前記第2取付部材の内周側に保持され、前記防振基体側の第1液室および前記ダイヤフラム側の第2液室を仕切る仕切部材と、その仕切部材に形成され、前記第1液室および前記第2液室を連通させるオリフィスと、前記仕切部材に収納され、ゴム状弾性体を用いて形成される円盤状の弾性可動体と、を備え、前記オリフィスは、第1オリフィスと、その第1オリフィスよりも高い周波数で共振するように構成される第2オリフィスと、から少なくとも構成され、前記弾性可動体は、その弾性可動体の内周側の部位を構成し前記仕切部材に保持される被保持部と、その被保持部から径方向外側に突出し前記第2オリフィスの流路上に配置される外周部と、その外周部の外周端側から軸方向両側に突出する第1弁部と、を備え、前記第2オリフィスには、前記第1弁部に径方向で対向し前記第1弁部との間に流路を形成する周壁面が形成される液封入式防振装置であって、前記外周部は、径方向寸法が軸方向寸法よりも大きく設定され、前記第2オリフィスには、前記周壁面から径方向内側に突出し前記第1弁部に軸方向両側で対向する一対の対向面が形成され、前記第1弁部が前記対向面と接触または離隔することにより、第2オリフィスの連通状態と閉塞状態とが切り替えられる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の液封入式防振装置によれば、次の効果を奏する。弾性可動体の外周部の径方向寸法が軸方向寸法よりも大きく形成されるので、第2オリフィスを通過する液体の液圧が弾性可動体の外周部に作用すると、弾性可動体の外周部の全体が撓むように変形し、この外周部の変形によって第1弁部が軸方向に変位する。第2オリフィスには、周壁面から径方向内側に突出し第1弁部に軸方向両側で対向する一対の対向面が形成されるので、第1弁部が軸方向に変位して対向面と接触または離隔することにより、第2オリフィスの連通状態および閉塞状態を切り替えることができる。
【0008】
このように、弾性可動体の外周部の全体を撓ませるように変形させることにより、その変形時に外周部の一部に応力が集中することを抑制できる。よって、弾性可動体の外周部に変形が繰り返されても、外周部に亀裂が生じ難くなるので、弾性可動体の耐久性を向上できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。振動が入力される前の状態において第1弁部と対向面とが離隔し、第1弁部または対向面の少なくとも一方には、所定の第1振幅の振動入力時に第1弁部が対向面に接触した場合に、第2オリフィスの連通状態を維持するリーク流路が形成される。これにより、第1振幅の振動が入力された場合に、第2オリフィスにおける液体流動をリーク流路によって僅かに生じさせつつ、第1オリフィスにおける液体流動も生じさせることができる。よって、第1振幅の振動入力時に、動ばね定数が高くなることを抑制しつつ、所定の減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の液封入式防振装置によれば、請求項2記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1振幅よりも大きい第2振幅の振動入力時に、第1弁部によってリーク流路を閉塞可能に構成される。これにより、第2振幅の振動入力時に、リーク流路を通じた第2オリフィスでの液体流動が生じることを抑制し、第1オリフィスのみで液体流動を生じさせることができる。よって、第1振幅よりも大きい第2振幅の振動入力時に、高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の液封入式防振装置によれば、請求項3記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。弾性可動体は、第1弁部よりも内周側に形成され外周部から軸方向両側に突出する第2弁部を備え、第2弁部も一対の対向面に軸方向で対向する。第2弁部と対向面との対向間隔は、第1弁部と対向面との対向間隔よりも広く形成されるので、第1振幅以下の振幅の振動入力時には第2弁部と対向面とが接触することを抑制できる。一方、第1振幅を超える振幅の振動入力時に、第2弁部と対向面とが接触した場合には、その接触によって弾性可動体の外周部の剛性が高まるため、振動入力時の液圧が弾性可動体の外周部の変形によって吸収されることを抑制できる。よって、第1振幅を超える振幅の振動入力時に、高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0012】
請求項5記載の液封入式防振装置によれば、請求項4記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2振幅の振動入力時に第2弁部が対向面に接触し、その接触によって弾性可動体の外周部の剛性が高まるので、第2振幅の振動入力時の液圧が弾性可動体の外周部の変形によって吸収されることを抑制できる。よって、第2振幅の振動入力時に、より高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0013】
請求項6記載の液封入式防振装置によれば、請求項4又は5に記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2弁部または対向面の少なくとも一方には、第2弁部が対向面に接触した場合に、第2オリフィスの連通状態を維持するリーク流路が形成されるので、仮に、第1振幅の振動入力時に第2弁部と対向面とが接触しても、第2オリフィスにおける液体流動をリーク流路によって生じさせることができる。よって、第1振幅の振動入力時に、動ばね定数が高くなることを抑制しつつ、所定の減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0014】
請求項7記載の液封入式防振装置によれば、請求項6記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2振幅の振動入力時に、第2弁部によってリーク流路を閉塞可能に構成される。これにより、第2振幅の振動入力時に、仮に、第1弁部によるリーク流路の閉塞が不十分な部分があったとしても、リーク流路を通じた第2オリフィスでの液体流動が生じることを抑制できる。よって、第1オリフィスのみで液体流動を生じさせることができるので、第2振幅の振動入力時に高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0015】
請求項8記載の液封入式防振装置によれば、請求項4から7のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1弁部および第2弁部が非形成とされる領域において、弾性可動体の外周部の軸方向寸法が一定に形成されるので、弾性可動体の外周部が変形した場合に、かかる外周部の一部に応力が集中することを抑制できる。よって、弾性可動体の耐久性を向上できるという効果がある。
【0016】
請求項9記載の液封入式防振装置によれば、請求項2から8のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。リーク流路の流路幅が径方向内側ほど狭く形成されるので、仮に、第1弁部によるリーク流路の閉塞が不十分な部分があったとしても、その部分を流れる液体の流動抵抗を高めることできる。よって、第2振幅の振動入力時に高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0017】
請求項10記載の液封入式防振装置によれば、請求項2から9のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。仕切部材は、外周部の周方向の一部を上下から挟持する挟持部を備えるので、外周部の一部の変形が挟持部によって拘束される。外周部の変形が拘束される領域は、第1弁部によるリーク流路の閉塞が不十分になるおそれがある。これに対し、リーク流路は、周方向において挟持部とは異なる位置に形成される。即ち、外周部の変形が拘束されていない領域にリーク流路が形成されるので、外周部の変形に伴う第1弁部の変位によってリーク流路が閉塞され易くなる。よって、第2振幅の振動入力時に高い減衰係数を得ることができるという効果がある。
【0018】
請求項11記載の液封入式防振装置によれば、請求項2から10のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2オリフィスの対向面に形成される凹部によってリーク流路が形成されるので、ゴム状弾性体である第1弁部に凹部を形成する場合に比べ、リーク流路の流路幅や深さ等の寸法の精度を向上できる。よって、リーク流路を通した液体の流量を意図した流量に設定し易くできるので、第1振幅の振動入力時に、意図した動ばね定数や減衰係数が得られ易くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における液封入式防振装置の断面図である。
図2】仕切部材の上面図である。
図3】(a)は、図2のIIIa−IIIa線における仕切部材の断面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb部分を拡大した仕切部材の部分拡大断面図である。
図4】(a)は、図3(a)のIVa−IVa線における仕切部材の断面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における仕切部材の部分拡大断面図である。
図5】(a)は、振動入力前の負荷状態における液封入式防振装置の部分拡大断面図であり、(b)は、図5(a)の状態から中程度の振幅の振動が入力された状態を示す液封入式防振装置の部分拡大断面図であり、(c)は、図5(a)の状態から比較的大きい振幅の振動が入力された状態を示す液封入式防振装置の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における液封入式防振装置1の断面図である。なお、図1では、液封入式防振装置1の軸Oに沿う平面で切断した断面を図示している。
【0021】
図1に示すように、液封入式防振装置1は、自動車のエンジン等の振動源側(図示せず)から車体等の振動受側(図示せず)への振動伝達を抑制しつつ、振動源側を振動受側に支持固定するための防振装置である。液封入式防振装置1は、振動源側に取り付けられる第1取付部材2を備えている。
【0022】
第1取付部材2は、アルミニウム合金などの金属材料を用いて略円柱状に形成される。以下の説明においては、第1取付部材2(第2取付部材4)の軸O方向を上下方向とし、第1取付部材2側を液封入式防振装置1の上側として説明する。また、軸O回りの方向を周方向、軸Oと直交する方向(図1の左右方向)を径方向として説明する。
【0023】
第1取付部材2の上面にはねじ穴が形成されており、このねじ穴には、第1取付部材2を振動源側に固定するためのボルト(図示せず)が締結される。第1取付部材2の下面から外周面にかけて防振基体3が接着される。
【0024】
防振基体3は、下方側ほど直径が大きい略円錐台状にゴム状弾性体を用いて形成される。防振基体3の上端側の部位は第1取付部材2に加硫接着され、防振基体3の下端側の部位は、第2取付部材4に加硫接着される。第2取付部材4は、振動受側に取り付けられる部材である。なお、第2取付部材4を振動源側に取り付け、第1取付部材2を振動受側に取り付けることは可能である。
【0025】
第2取付部材4は、鉄鋼等の金属材料を用いて円筒状に形成される。第2取付部材4の上端側(軸O方向一端側)の開口部分を閉塞するようにして防振基体3が接着される。防振基体3の下端側には、第2取付部材4の内周面を覆うゴム膜30が一体に形成されており、第2取付部材4の下端側の内周面には、ゴム膜30を介して取付具5が保持される。
【0026】
取付具5は、金属材料を用いて円環状に形成され、取付具5にはダイヤフラム6が接着される。ダイヤフラム6は、ゴム状弾性体を用いて蛇腹状に屈曲した膜状に形成される。ダイヤフラム6の外縁は取付具5に加硫接着され、第2取付部材4の下端部をかしめて取付具5を保持させることにより、防振基体3とダイヤフラム6との間に液封入室が形成される。
【0027】
液封入室には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。防振基体3とダイヤフラム6との間における第2取付部材4の内周面には、ゴム膜30に密着するようにして仕切部材7が保持される。この仕切部材7により、防振基体3側の第1液室C1と、ダイヤフラム6側の第2液室C2との2室に液封入室が仕切られる。
【0028】
仕切部材7には、第1液室C1及び第2液室C2を連通させる複数(本実施形態では、2つ)の第1オリフィスP1及び第2オリフィスP2が形成される。仕切部材7は、第1オリフィスP1が形成される第1仕切体8と、その第1仕切体8と共に第2オリフィスP2を形成する第2仕切体9と、から構成される。
【0029】
第1仕切体8及び第2仕切体9の間には、円盤状の弾性可動体10が収納される。この弾性可動体10の外周側の部位により、第2オリフィスP2を通した液体流動が可能な連通状態と、液体流動が不能な閉塞状態とが切り替えられる。
【0030】
次いで、図2図4を参照して、仕切部材7及び弾性可動体10の詳細構成を説明するが、その構成による作用についても図5を適宜参照しながら説明する。図2は、仕切部材7の上面図である。図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線における仕切部材7の断面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb部分を拡大した仕切部材7の部分拡大断面図である。なお、図3では、弾性可動体10を保持した状態の仕切部材7が図示される。
【0031】
図4(a)は、図3(a)のIVa−IVa線における仕切部材7の断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における仕切部材7の部分拡大断面図である。なお、図4では、弾性可動体10を取り外した状態の仕切部材7の断面を図示している。
【0032】
図5(a)は、振動入力前の負荷状態における液封入式防振装置1の部分拡大断面図であり、図5(b)は、図5(a)の状態から中程度の振幅の振動が入力された状態を示す液封入式防振装置1の部分拡大断面図であり、図5(c)は、図5(a)の状態から比較的大きい振幅の振動が入力された状態を示す液封入式防振装置1の部分拡大断面図である。
【0033】
なお、振動入力前の負荷状態(荷重平衡状態)とは、振動源側と振動受側との間に液封入式防振装置1が組付けられた状態であって、液封入式防振装置1に振動が加わる前の状態である。
【0034】
図2及び図3に示すように、仕切部材7は、その下面側の部位を構成する第1仕切体8と、仕切部材7の上面側の部位を構成する第2仕切体9とが上下に重ね合わされた状態で一体に連結される。
【0035】
第1仕切体8は、円環状のオリフィス形成部80と、そのオリフィス形成部80の下端側を閉塞するように接続される略円盤状の保持部81と、を備える。オリフィス形成部80及び保持部81は一体的に形成される。
【0036】
第2仕切体9は、オリフィス形成部80の内周側に嵌め込まれ断面L字状に形成される円環状の円環部90と、その円環部90の下端側を閉塞するように接続される略円盤状の保持部91と、を備える。円環部90及び保持部91は一体的に形成される。
【0037】
オリフィス形成部80の外周面の上端および下端側には、径方向外側に向けて張り出す一対のオリフィス形成壁80a,80bが形成される。第2取付部材4(図1参照)の内周面を覆うゴム膜30にオリフィス形成壁80a,80bが密着することにより、仕切部材7の外周に沿って第1オリフィスP1が形成される。
【0038】
オリフィス形成部80には、オリフィス形成壁80a,80bの間を上下に接続する縦壁部80c(図2参照)が形成され、この縦壁部80cによって第1オリフィスP1が周方向に分断される。オリフィス形成壁80aには、そのオリフィス形成壁80aを径方向内側に凹ませるようにして切り欠いた切欠き80dが開口形成される。第1オリフィスP1の流路の一端は、この切欠き80dを介して第1液室C1(図1参照)に連通される。
【0039】
オリフィス形成壁80bは、縦壁部80cとの接続部分を始端にしてオリフィス形成部80の略半周にわたって延びており、オリフィス形成壁80bの終端部80b1(図2参照)が第1オリフィスP1の流路の他端となる。即ち、第1オリフィスP1は、オリフィス形成壁80bの終端部80b1で第2液室C2(図1参照)に連通される。
【0040】
第1仕切体8の保持部81の外周端側には、第2オリフィスP2を形成する貫通孔81aが開口形成される。貫通孔81aは、上下に貫通しつつ周方向に延びるように形成されており(図4(a)参照)、周方向等間隔に複数(本実施形態では、4つ)の貫通孔81aが並べて設けられる。
【0041】
貫通孔81aよりも内周側における保持部81の上面からは、弾性可動体10の被保持部11を保持するための突出部81bが上方に突出される。突出部81bの上面には、下方に凹む凹溝が形成されており(図3参照)、この凹溝を有する突出部81bが周方向に連続して形成される。
【0042】
第2仕切体9の保持部91は、後述する貫通孔91hが形成される点を除き、軸Oと直角な平面を挟んで第1仕切体8の保持部81と面対称に形成される。よって、保持部81の貫通孔81a及び突出部81bと上下対称となる貫通孔91a及び突出部91bが第2仕切体9の保持部91にも形成される。
【0043】
そして、保持部81,91は、互いに上下に所定間隔を隔てて配置されるため、上下に対向する貫通孔81a,91aによって第2オリフィスP2が形成される。また、上下に対向する突出部81b,91b(凹溝)の対向間には、弾性可動体10の被保持部11を保持するための空間が形成される。
【0044】
弾性可動体10の被保持部11は、突出部81b,91bの凹溝に対応する形状(弾性的に嵌め込み可能な形状)に形成されている。よって、被保持部11が突出部81b,91bに保持されることにより、上下方向や径方向における被保持部11の変位が規制されている。弾性可動体10のうち、被保持部11よりも外周側の部位は、突出部81b,91bから径方向外側に突出することで第2オリフィスP2の流路上に配置される。
【0045】
図3(b)に示すように、弾性可動体10は、被保持部11から径方向外側に突出する外周部12と、その外周部12に形成される第1弁部13及び第2弁部14と、を備え、各部がゴム状弾性体を用いて一体的に形成される。
【0046】
第1弁部13は、外周部12の外周端の上下の両面から上下一対に突出する突起形状に形成されており、第1弁部13の上下方向寸法D3は、外周部12の上下方向寸法D2よりも大きく設定されている。また、第2弁部14も同様に、第1弁部13よりも内周側で外周部12の上下の両面から上下一対に突出する突起形状に形成されており、第2弁部14の上下方向寸法D4は、外周部12の上下方向寸法D2や、第1弁部13の上下方向寸法D3よりも小さく設定されている。第1弁部13及び第2弁部14は、それぞれ周方向に連続して形成される円環状の突起である。
【0047】
第2オリフィスP2には、第1弁部13に径方向で対向する周壁面80eと、その周壁面80eの上下の両端部から径方向内側に突出し第1弁部13に上下方向両側で対向する一対の対向面81c,91cと、が形成される。周壁面80eは、オリフィス形成部80の内周面であり、一対の対向面81c,91cは、貫通孔81a,91aよりも外周側における保持部81の上面および保持部91の下面である。
【0048】
即ち、第1弁部13及び第2弁部14は、保持部81,91の貫通孔81a,91aよりも径方向外側に配置されており、外周部12のうち、第2弁部14よりも内周側の部位が貫通孔81a,91aと上下で対向している。よって、第2オリフィスP2を流動する液体の液圧は、第2弁部14の内周側に位置する外周部12に作用する。
【0049】
この場合、外周部12の径方向寸法D1(図3(b)の左右方向寸法であって、突出部81b,91bによって保持されていない部位の寸法)は、外周部12の上下方向寸法D2(軸O方向での厚み寸法)よりも大きく、且つ、外周部12の上下方向寸法D2と一対の第1弁部13の上下方向寸法D3とを合算した寸法(D2+D3×2)よりも大きく設定されている。よって、図5に示すように、外周部12に液圧が作用すると、外周部12の全体が撓むように変形し、その変形に伴って第1弁部13が上下に変位する(図5(b)及び図5(c)参照)。
【0050】
振動入力前の負荷状態(図5(a)の状態)においては、第1弁部13と対向面81c,91cとが離隔しているため、第1弁部13が上下に変位して対向面81c,91cと離隔または接触することにより、第2オリフィスP2の連通状態および閉塞状態が切り替えられる。このように、外周部12の全体を撓ませるように変形させることにより、その変形時に外周部12の一部に応力が集中することを抑制できる。よって、外周部12に変形が繰り返されても、外周部12に亀裂が生じ難くなるので、弾性可動体10の耐久性を向上できる。
【0051】
更に、第1弁部13及び第2弁部14が非形成とされる領域においては、外周部12の上下方向寸法D2(図3(b)参照)が内周側から外周側にかけて一定に形成されるので、外周部12が変形した場合に、外周部12の一部に応力が集中することをより効果的に抑制できる。
【0052】
また、第1弁部13は、上下方向の端部(先端側)ほど先細りに形成されるため、対向面81c,91cとの接触時の接触面積を小さくできる。よって、第1弁部13と対向面81c,91cとの接触時に異音が生じることを抑制できる。
【0053】
なお、このような外周部12の変形により、第1弁部13も径方向外側に向けて僅かに倒れるように変位(変形)するが、この変位時に第1弁部13が周壁面80eに接触しない程度に、振動入力前における第1弁部13と周壁面80eとの隙間が十分に確保されている。
【0054】
ここで、アイドル振動のような振幅が小さい(高周波の)振動入力時には、外周部12の変形量が小さく、第1弁部13が対向面81c,91cと離隔した状態を保って上下に変位するため、第2オリフィスP2での液体流動が生じることになる。この時、第1弁部13と対向面81c,91cとの間の隙間が第2オリフィスP2の実質的な流路となるが、振動入力前の負荷状態における第1弁部13と対向面81c,91cとの間の隙間は僅かである(例えば、0.1mm)。
【0055】
つまり、第2オリフィスP2の実質的な流路断面積(第1弁部13と対向面81c,91cとの間の流路断面積)は、第1オリフィスP1(図3(a)参照)の流路断面積よりも小さく形成される。また、第2オリフィスP2の流路長は、第1オリフィスP1の流路長よりも短く形成される。よって、第2オリフィスP2で生じる液柱共振周波数は、第1オリフィスP1で生じる液柱共振周波数よりも高く設定されている。
【0056】
従って、小振幅(例えば、0.05mm)の振動入力時に第2オリフィスP2の連通状態を維持する(第1弁部13が対向面81c,91cに接触しない)ことにより、第2オリフィスP2での液体流動によって動ばね定数を低くできる。また、シェイク振動のような大振幅(例えば、0.5mmの振幅)の振動入力時には、第1弁部13によって第2オリフィスP2が閉塞されて第1オリフィスP1での液体流動が生じるため、減衰係数を高くできる。
【0057】
そして、本実施形態では、そのような大小の振幅の間の中程度の振幅(所定の第1振幅)の振動入力時には、動ばね定数を低くしつつ、所定の減衰係数を得ることができる構成となっている。この構成について、以下に説明する。
【0058】
図4に示すように、保持部81の対向面81cには、その対向面81cに凹む凹部81dが形成される。凹部81dは、周方向等間隔に複数(本実施形態では、8個)形成される。また、第2仕切体9の保持部91には、凹部81dと上下対称となる位置に凹部91dが形成される(図4(b)参照)。これらの凹部81d,91dは、径方向に延びるように形成され、凹部81d,91dと第1弁部13とが上下に対向して配置される。これにより、第1弁部13が対向面81c,91cに接触した場合に、第2オリフィスP2の連通状態を維持するリーク流路L(図5参照)を形成できる。
【0059】
よって、図5(b)に示すように、第1弁部13と対向面81c,91cとが接触する程度の中程度の振幅(例えば、0.1mm)の振動入力時には、第2オリフィスP2での液体流動を、リーク流路Lを通じて僅かに生じさせることができる。一方、この第2オリフィスP2での液体流動は僅かであるため、第1オリフィスP1(図1参照)においても液体流動を生じさせることができる。よって、動ばね定数が高くなることを抑制しつつ、所定の減衰係数を得ることができる。
【0060】
そして、図5(c)に示すように、比較的大きい振幅(第1振幅よりも大きい第2振幅)の振動入力時には、第1弁部13によってリーク流路Lが閉塞され、第2オリフィスP2での液体流動が生じることを抑制できる。これにより、第1オリフィスP1のみで液体流動を生じさせることができるので、高い減衰係数を得ることができる。
【0061】
このように、本実施形態では、対向面81c,91cの凹部81d,91dによってリーク流路Lが形成されているが、例えば、凹部81d,91dに相当する凹みを第1弁部13の先端部分に形成することも可能である。しかしながら、そのような構成の場合、第1弁部13がゴム状弾性体を用いて形成されるため、リーク流路Lの流路幅や深さ等の寸法の精度が低下し易い。また、第1弁部13に凹部を形成すると、その形成部分で亀裂が生じ易くなり、弾性可動体10の耐久性が低下する。
【0062】
これに対して本実施形態では、対向面81c,91cの凹部81d,91dによってリーク流路Lを形成しているため、第1弁部13に凹部を形成する場合に比べ、リーク流路Lの流路幅や深さ等の寸法の精度を向上できる。よって、リーク流路Lを通した液体の流量を意図した流量に設定し易くできるので、中程度の振幅の振動入力時に(図5(b)の状態で)、意図した動ばね定数や減衰係数が得られ易くなる。更に、第1弁部13に凹部を形成する場合に比べ、弾性可動体10の耐久性を向上できる。
【0063】
ここで、上述した通り、本実施形態では、第1弁部13よりも径方向内側には、第2弁部14が形成されている。この第2弁部14は、対向面81c,91cとの接触によって外周部12の剛性を高めるための部位である。
【0064】
図5(a)に示すように、振動入力前の負荷状態における第2弁部14と対向面81c,91cとの対向間隔は、第1弁部13と対向面81c,91cとの対向間隔よりも広く設定されている。よって、図5(b)に示すように、中程度の振幅の振動入力時には、第2弁部14と対向面81c,91cとが接触することを抑制できる。これにより、外周部12の剛性が高まることを抑制し、外周部12に作用する液圧を外周部12の変形によって吸収できるので、動ばね定数が高くなることを抑制できる。
【0065】
一方、図5(c)に示すように、大振幅の振動入力時には、第2弁部14と対向面81c,91cとを接触させて弾性可動体10の外周部12の剛性を高くすることできる。これにより、振動入力時の液圧が外周部12の変形によって吸収されることを抑制できるので、大振幅の振動入力時に、より高い減衰係数を得ることができる。
【0066】
また、第2弁部14は、上下方向の端部(先端側)ほど先細りに形成されるため、第2弁部14と対向面81c,91cとが面接触する場合に比べて接触面積を小さくできる。よって、第2弁部14と対向面81c,91cとの接触時に異音が生じることを抑制できる。
【0067】
また、対向面81c,91cの内周端から外周端にかけて、凹部81d,91dが径方向に延びるように形成される。即ち、リーク流路Lは、凹部81d,91dと第2弁部14との間の領域にも形成される。これにより、仮に、中程度の振幅の振動入力時に(図5(b)の状態で)第2弁部14と対向面81c,91cとが接触しても、第2弁部14と凹部81d,91dとの間に形成されるリーク流路Lによって第2オリフィスP2における液体流動を生じさせることができる。よって、中程度の振幅の振動入力時に、動ばね定数が高くなることを抑制しつつ、所定の減衰係数を得るという効果を確実に発揮させることができる。
【0068】
一方、大振幅の振動入力時には、図5(c)に示すように、第2弁部14によってリーク流路Lが閉塞される。これにより、仮に、第1弁部13によるリーク流路Lの閉塞が一部不十分であったとしても、第2オリフィスP2での液体流動が生じることを抑制できる。よって、大振幅の振動入力時に高い減衰係数を確実に得ることができる。
【0069】
また、図4(a)に示すように、周方向における凹部81d,91dの幅寸法(即ち、リーク流路Lの流路幅)は、径方向内側ほど狭く形成される。よって、第1弁部13及び第2弁部14と対向面81c,91cとの接触時に、仮に、第1弁部13及び第2弁部14によるリーク流路L(図5参照)の閉塞が不十分な箇所があったとしても、その箇所を流れる液体の流動抵抗を高めることできる。よって、大振幅の振動入力時に高い減衰係数を確実に得ることができる。
【0070】
また、図4(b)に示すように、対向面81c,91c及び凹部81d,91dの底面は、傾斜面81e,91eによって周方向で接続されている。この傾斜面81e,91eは、対向面81c,91cと凹部81d,91dの底面との段差部分を滑らかに接続するように傾斜している。これにより、第1弁部13及び第2弁部14と対向面81c,91cとの接触時にリーク流路L(図5参照)が閉塞され易くなる。よって、大振幅の振動入力時に高い減衰係数を確実に得ることができる。
【0071】
ここで、周方向に並ぶ複数の貫通孔81a,91a同士の間には、径方向に延びるリブ81f,91fが形成される(リブ91fについては、図2参照)。このリブ81f,91fは、保持部81,91のうち、貫通孔81a,91aよりも外周側の部位と、突出部81b,91bとを接続している。そして、図3(a)に示すように、リブ81f,91fが形成される領域においては、外周部12が上下一対のリブ81f,91fによって挟まれた状態で保持される。
【0072】
このリブ81f,91fによって外周部12の変形が拘束されるため、リブ81f,91fが形成される領域の近くでは、第1弁部13及び第2弁部14によるリーク流路L(図5参照)の閉塞が不十分になるおそれがある。これに対して本実施形態では、図4(a)に示すように、リブ81f,91fの径方向外側に位置する対向面81c,91cには、凹部81d,91dを形成していない。
【0073】
つまり、凹部81d,91dは、周方向でリブ81f,91fとは異なる位置に(周方向での位相をずらして)形成されるので、外周部12の変形が拘束されていない領域にリーク流路L(図5参照)を形成できる。よって、外周部12の変形に伴う第1弁部13及び第2弁部14の変位によってリーク流路Lが閉塞され易くなる。従って、大振幅の振動入力時に高い減衰係数を得るという効果を確実に発揮させることができる。
【0074】
このように、本実施形態では、大振幅の振動入力時にリーク流路Lを閉塞する(第2オリフィスP2を閉塞する)構成となっている。この場合、かかる大振幅よりも大きい過大な振幅の振動が入力された場合、第1液室C1及び第2液室C2(図1参照)の液圧が急激に変動し、第1液室C1の液圧が急激に低下し易くなる。この液圧の低下によって第1液室C1が負圧になると、キャビテーションが発生して異音が生じることがあるが、このキャビテーションは、弾性可動体10の被保持部11の内周側の可動栓部15(図3(a)参照)によって抑制される。
【0075】
図3(a)に示すように、保持部81,91の突出部81b,91bよりも内周側には、可動栓部15を収容可能な空間が形成される。弾性可動体10のうち、かかる空間内に配置される部位(被保持部11よりも中央側の部位)が可動栓部15である。可動栓部15は、被保持部11と一体的に形成されている。
【0076】
可動栓部15には、上下に円環状に突出する環状弁部16と、その環状弁部16の外周側に配置される貫通孔17と、が形成される。振動入力前の負荷状態において、環状弁部16の上下の先端は、それぞれ保持部81の上面と、保持部91の下面とに接触している。
【0077】
環状弁部16よりも内周側に位置する保持部81,91の中心部分には、それぞれ貫通孔81g,91gが形成され、環状弁部16の外周側に位置する保持部91には、貫通孔91hが形成される。貫通孔91hは、貫通孔17の上方側に(可動栓部15と対面する位置に)形成される。
【0078】
これにより、第1液室C1(図1参照)が負圧になると、上方に突出する環状弁部16を保持部91側に押しつぶすようにして可動栓部15が上方に変位する。この可動栓部15の変位に伴い、下方に突出する環状弁部16と保持部81との間に隙間が生じる。そして、その隙間と、可動栓部15の貫通孔17と、保持部91の貫通孔91hとを通じた液体の流動が可能となる。よって、第1液室C1に生じる負圧を早期に解消できるので、キャビテーションによる異音の発生を抑制できる。
【0079】
以上のように、本実施形態の液封入式防振装置1によれば、小振幅(0.05mm)の振動入力時には動ばね定数を低くできると共に、中程度の振幅(0.1mm)の振動入力時には、動ばね定数が高くなることを抑制しつつ、所定の減衰係数を得ることができる。更に、大振幅(0.5mm)の振動入力時には、高い減衰係数を得ることができると共に、過大な(0.5mmを超える)振幅の振動入力時には、キャビテーションによる異音の発生を抑制できる。
【0080】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0081】
上記実施形態では、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして液封入式防振装置1を用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ボディマウント、デフマウント等、任意の振動体に液封入式防振装置1を適用することが可能である。
【0082】
上記実施形態では、第1液室C1及び第2液室C2を連通する2つの第1オリフィスP1及び第2オリフィスP2が形成される場合を説明したが、第1オリフィスP1及び第2オリフィスP2に加え、第1液室C1及び第2液室C2を連通する他のオリフィスを形成しても良い。
【0083】
上記実施形態では、弾性可動体10の外周部12に第1弁部13及び第2弁部14が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2弁部14を省略しても良いし、第1弁部13及び第2弁部14に加え、対向面81c,91cに当接可能な弁部を更に設けても良い。
【0084】
上記実施形態では、第1弁部13及び第2弁部14が非形成とされる領域において、外周部12の厚みが一定に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。液圧が作用した場合に外周部12の全体が撓むように変形し、第1弁部13及び第2弁部14の上下の変位によって第2オリフィスP2の連通状態を切り替えることができる程度であれば、外周部12の厚みを一部薄く形成しても良い。
【0085】
上記実施形態では、弾性可動体10の被保持部11の内周側に可動栓部15が接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、可動栓部15を省略する(被保持部11より内周側における弾性可動体10の厚みを一定にする)構成でも良い。この場合には、保持部81,91の貫通孔81g,91g,91hを省略しても良い。
【0086】
上記実施形態では、第1弁部13が対向面81c,91cに接触しない振動として0.05mm振幅の振動、第1弁部13が対向面81c,91cに接触する振動として0.1mm振幅(所定の第1振幅)の振動、第1弁部13がリーク流路Lを閉塞する振動として0.5mm振幅(第1振幅よりも大きい第2振幅)の振動を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。所望の振幅で第1弁部13が対向面81c,91cに接触する(リーク流路Lを閉塞する)ように、即ち、所望の振幅の振動の入力時に意図するばね定数や減衰係数が得られるように、第1弁部13と対向面81c,91cとの隙間や凹部81d,91dの深さは適宜設定すれば良い。
【0087】
上記実施形態では、対向面81c,91cとの対向間隔が第1弁部13よりも第2弁部14の方が広く設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、対向面81c,91cとの対向間隔が第1弁部13と第2弁部14とで同一に設定される構成でも良い。この構成の場合でも、外周部12の全体が撓むように変形するため、第2弁部14よりも第1弁部13を先に対向面81c,91cに接触させることができる。
【0088】
上記実施形態では、対向面81c,91cの凹部81d,91dによってリーク流路Lが形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凹部81d,91dに相当する凹みを第1弁部13(第2弁部14)の先端に形成することや、径方向に貫通する孔を第1弁部13(第2弁部14)に形成することによって、リーク流路を形成しても良い。また、対向面81c,91cと第1弁部13(第2弁部14)とのそれぞれにリーク流路を形成しても良い。
【0089】
また、凹部81d,91dを対向面81c,91cの表面に直接形成するのではなく、例えば、対向面81c,91cの表面に周方向に延びるゴム膜を形成し、そのゴム膜の表面に凹部81d,91dに相当する凹みを形成しても良い。また、ゴム製の凸部(突起)を対向面81c,91cの表面に周方向で断続するように並べて設け、それら凸部同士の対向間をリーク流路とする構成でも良い。このように、対向面81c,91cに接着されるゴムを用いてリーク流路を形成すれば、第1弁部13(第2弁部14)との接触時の異音を抑制できる。
【0090】
上記実施形態では、複数の凹部81d,91d(リーク流路L)が周方向等間隔に並べて設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凹部81d,91d(リーク流路L)は、1つであっても良く、凹部81d,91d(リーク流路L)を省略しても良い。また、凹部81d,91dを複数設ける場合には、必ずしも周方向で等間隔に設ける必要は無い(周方向で断続的に設ければ良い)。
【0091】
上記実施形態では、第1弁部13及び第2弁部14のそれぞれと対向するように凹部81d,91d(リーク流路L)が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1弁部13との対向部分のみに凹部81d,91d(リーク流路L)を形成する構成でも良い。
【0092】
上記実施形態では、周方向における凹部81d,91dの幅寸法(即ち、リーク流路Lの流路幅)が径方向内側ほど狭く形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、周方向における凹部81d,91dの幅寸法(即ち、リーク流路Lの流路幅)を径方向内側から外側にかけて一定にしても良く、径方向内側ほど広くしても良い。
【0093】
上記実施形態では、凹部81d,91d(リーク流路L)が周方向においてリブ81f,91fとは異なる位置に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、リブ81f,91fの径方向外側の領域に凹部81d,91d(リーク流路L)を形成しても良い。
【符号の説明】
【0094】
1 液封入式防振装置
2 第1取付部材
3 防振基体
4 第2取付部材
6 ダイヤフラム
7 仕切部材
10 弾性可動体
11 被保持部
12 外周部
13 第1弁部
14 第2弁部
80e 周壁面
81c,91c 対向面
81d,91d 凹部
81f,91f リブ(挟持部)
C1 第1液室
C2 第2液室
D1 外周部の径方向寸法
D2 外周部の軸方向寸法
L リーク流路
P1 第1オリフィス(オリフィス)
P2 第2オリフィス(オリフィス)
図1
図2
図3
図4
図5