【実施例】
【0060】
[SiO
xシート:LSN]
SiO
xシートを次のように調製した。1.0gのケイ化カルシウム(CaSi
2、富士フイルム株式会社製)を100mLの塩酸水溶液(富士フイルム株式会社製、濃度37%)に添加し、−20℃まで冷却し、7日間攪拌させた。得られた黄色の生成物を洗浄し、24時間真空中で乾燥させた。
【0061】
得られた生成物について、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、JEM−2100F)、原子間力顕微鏡(AFM、日本電子株式会社製、型番JSPM−5200)、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社社製、JSM−6500)、X線回折(XRD、株式会社リガク製、SmartLab、λ=1.5418ÅのCu−Kα線)、X線光電子分光法(XPS、アルバック・ファイ社製、PHI Quantera SXM)を用いて、ヒドロキシ基、水素原子を有するSiO
xシートとしてSi
6H
3(OH)
3で表されるシート(以降では簡単のためLSNと称する)が得られたことを確認した。
【0062】
図4は、LSNのSEM像を示す図である。
図5は、LSNのTEM像(A)、AFM像(B)および膜厚プロファイル(C)を示す図である。
【0063】
図4(a)および
図4(b)は、それぞれ、低倍率および高倍率のSEM像である。
図4によれば、メラレウカ様の二次元構造が見られ、Ca
2+のデインタカレーションによる剥離・酸化が生じたことが示唆される。
【0064】
図5(A)によれば、平坦かつ滑らかな表面を有するLSNが得られており、
図5(B)および(C)によれば、その厚さは、約20nmであった。
【0065】
[GOシート:GO]
グラファイトから酸化グラファイトを改良Hummers法により合成した。詳細は次のとおりである。グラファイト(Alfa Aesar製、メディアン径:7〜10μm、純度99%、5g)と、NaNO
3(ナカライテスク株式会社製、5g)とをビーカー中で撹拌しながら混合した。この混合物にH
2SO
4(ナカライテスク株式会社製、濃度97%、20mL)を氷浴中で添加し、15分間撹拌した。次いで、KMnO
4(Chameleon Reagent製、3g)を添加し、さらに5分間撹拌した。この混合物を室温で15時間撹拌した。その後、脱イオン水(46mL)を添加し、30分間撹拌し、温度を90℃まで上昇させた。続いて、60℃に保持し、脱イオン水(100mL)を添加し、2時間撹拌したところ茶色の懸濁液が得られた。
【0066】
H
2O
2(三徳化学工業株式会社製、濃度30%、3mL)を茶色の懸濁液に添加したところ、反応が開始し、泡の発生とともに明るい黄色の懸濁液となった。この懸濁液を2日間保持すると、pHが低下し、析出物を得た。上澄み液(100mL)を除去し、脱イオン水(100mL)を添加し、ビーカー内で15分間撹拌した。上記の保持、上澄み液の除去、脱イオン水の添加および撹拌をpHが7になるまで繰り返し、酸化グラファイトシートを得た。酸化グラファイトが得られたことを、X線粉末回折(XRD)およびX線光電子分光法(XPS)により確認した。なお、酸化グラファイトシート(以降では簡単のためGOと称する)の層間距離は、0.85nm以上10nm以下であることを確認した。
【0067】
[例1〜例2:複合体]
例1では、LSN、GOおよびカチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミン(PEI)を用いて、
図2に示す製造方法を実施した。例2では、PEIを用いない以外は例1と同様の手順であった。
【0068】
表1に示すように、10mLのGOの塩酸水溶液(濃度5mg/mL)にLSN(125mg)を添加した(
図2のステップS210)。この混合物(混合液)を、高圧分散機を用いてよく分散させた。これにより、LSNをGOが挟持したLSN/GOを得た。得られたLSN/GOをSEM観察した。結果を
図6に示す。
【0069】
図6は、LSN/GOのSEM像を示す図である。
【0070】
図6(a)および
図6(b)は、それぞれ、低倍率および高倍率のSEM像である。
図6によれば、凝集・積層したLSNが、凝集・積層したGOによって覆われており、凝集したLSNとGOとの間には比較的弱い化学的相互作用が生じていることが示唆される。
【0071】
次いで、表1に示すように、LSN/GOをPEI(富士フイルム株式会社製、MW≒750000、50wt%H
2O、20mL)水溶液に攪拌しながらゆっくりと添加した(
図2のステップS220)。添加したLSN/GOの混合液の量は10mLであった。LSN/GOを添加すると、ただちにゲル状の生成物の形成が目視にて観察された。このことは、静電相互作用により、LSN/GOの層間にPEIが位置したLSN/GO/PEI(前駆物質)が生成したことを示唆する。得られたLSN/GO/PEIを濾別し、50℃、真空中で、10時間乾燥させた。得られたLSN/GO/PEIをSEM観察した。結果を
図7に示す。例2の試料についてはステップS220を行わなかった。
【0072】
図7は、LSN/GO/PEIのSEM像を示す図である。
【0073】
図7(A)および
図7(B)は、それぞれ、低倍率および高倍率のSEM像である。
図7と、
図4および
図6とを比較すると、生成物は密に凝集していた。図中矢印で示す極めて薄いシートが凝集したGOナノシートである。
【0074】
次いで、乾燥させたLSN/GO/PEIを焼成した(
図2のステップS230)。詳細には、表1に示すように、アルゴン雰囲気中、昇温速度5℃/分で800℃まで昇温し、3時間、LSN/GO/PEIを焼成した。PEIを添加した例1も、PEIを添加しなかった例2についても、黒色の粉末状の生成物が得られた。例1で得られた生成物をLSGCと、例2で得られた生成物をLSGと称する。
【0075】
【表1】
【0076】
このようにして得られたLSGCおよびLSGの外観を観察し、細部をSEM観察およびTEM観察した。結果を
図8〜
図10に示す。LSGCおよびLSGについてXRD回折、窒素吸着脱着法(Quantachrome autosorb iQ)による比表面積および細孔径分布、ラマン分光装置(Nanophoton Raman Plus system(λ=532nm))によるラマンスペクトル、XPSスペクトルを測定した。これらの結果を
図11〜
図14に示す。
【0077】
以上の結果をまとめて説明する。
図8は、例1のLSGCの外観を示す図である。
【0078】
図8には、参考のため、原料に用いたLSNの外観も併せて示す。
図8ではグレースケールで示すが、LSNは、淡緑色を有しており、LSGCは、黒色を有した。注目すべきは、LSGCは、原料のLSNに比べて、顕著に凝集し、高密度であることが分かる。LSNの密度は、0.2g/cm
3であるが、例1のLSGCのそれは、0.87g/cm
3であり、約4倍の高密度を有した。図示しないが、例2のLSGは、LSGCよりも嵩張っていた。
【0079】
図9は、例1のLSGCおよび例2のLSGのXRDパターンを示す図である。
【0080】
図9には原料に用いたLSNのXRDパターンも併せて示す。LSNのいくつかの回折ピークは(001)、(100)に指数付けされ、a=3.83Å、c=6.3Åを有する六方晶であることが分かった。また、LSNは、層状Si結晶の生成を示すSi(111)の回折ピークを示した。原料不純物であるFeSi
2の回折ピークもわずかに見られた。
【0081】
例1のLSGCおよび例2のLSGの回折パターンは、LSNの(001)および(100)回折ピークを示さなかった。これは、焼成によりLSNが、層状のSi6員環が二次元方向に周期的に配列したシリコンナノシートになったことを示唆する。
【0082】
さらに、例1のLSGCの回折パターンによれば、PEIに基づくアモルファス炭素のブロード回折ピーク(図中の★印で示す)を示した。一方、例2のLSGの回折パターンは、アモルファス炭素のブロード回折ピークを示さなかった。なお、Si(111)により、例1のLSGCのシリコンナノシートがsp
2結合およびsp
3結合を有するSi原子を有することを確認した。このことからも、例1のLSGCは、焼成によって、LSNがシリコンナノシートになったことが示唆される。
【0083】
図10は、例1のLSGCのSEM像を示す図である。
図11は、例1のLSGCのTEM像を示す図である。
【0084】
図10(A)および
図10(B)は、それぞれ、低倍率および高倍率のSEM像である。
図10と
図7とを比較すると、焼成後も、ナノシートが凝集した様態を維持していることを確認した。図中矢印で示す極めて薄いシートがグラフェンシートである。
【0085】
図11において濃く示される領域がLSNに基づくシリコンナノシートが凝集・積層したシリコンシートであり、その周りに薄く示される領域がGOに基づくグラフェンナノシートが凝集・積層したグラフェンシートである。
図11によれば、シリコンシートがグラフェンシートによって挟持されており、カプセル化されていることが分かる。
図11によれば、シリコンシートの厚さは、平均200nmであり、グラフェンシートの厚さは、平均80nmであった。図示しないが、例2のLSGは、シリコンシート同士が凝集していたり、シリコンシートがグラフェンシートにカプセル化されていなかったりした。
【0086】
このことから、カチオン性ポリマーを用いることにより、シリコンシートはグラフェンシートによって挟持されたまま高密度に凝集させることができることが分かった。すなわち、カチオン性ポリマーの添加による静電相互作用が、複合体の構造維持に有効であることが示された。
【0087】
図12は、例1のLSGCの窒素吸脱着等温線を示す図である。
【0088】
図12中には細孔径分布も併せて示す。表2は、
図12から求めた比表面積、および、吸着等温線の相対圧力(p/p
0)が0.99のときの窒素吸着量から求めた全細孔容積の一覧を示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2によれば、例1のLSGCがもっとも小さな比表面積を有することが分かる。このことからも、カチオン性ポリマーの添加により静電相互作用が生じ、凝集した複合体が得られることが示唆される。
【0091】
図12中の細孔径分布によれば、例1のLSGCは、比表面積が小さな凝集体であっても、1nm〜35nmの広い範囲の細孔径分布を有した多孔体であることが分かる。このような細孔は、シリコンシートとグラフェンシートとの間の間隙に相当し得る。このような細孔を介してリチウムイオンが挿入・脱離され得るので、素早い充放電を可能にする。
【0092】
図13は、例1のLSGCおよび例2のLSGのXPSスペクトルを示す図である。
図14は、例1のLSGCのN1sのXPSスペクトルを示す図である。
【0093】
図13には、焼成(800℃、3時間、アルゴン雰囲気)後の原料LSNのXPSスペクトルも併せて示す。いずれの試料も、シリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)を含有していることが分かった。一方、例1のLSGCのみがN1sのピークを有し、窒素(N)を含有することが分かった。このことからも、酸素はシリコンシート、さらにはアモルファス炭素中に含有されていることが示唆される。
【0094】
図14によれば、例1のLSGCのXPSスペクトルは、N1sの2つのピーク(398.4eVおよび400.3eV)を示した。400.3eVのピークは、PEIからの正に帯電した窒素であり、398.4eVのピークは、アモルファス炭素にドープされた窒素であり、ピリジン型窒素を形成していることを示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3は、例1のLSGCおよび例2のLSGの組成分析の結果を示す。組成分析は、XPSにより行った。XPSの測定条件は次のとおりであった。
【0097】
X線(Al Kα線):1.4×0.1mm 100W(20KV、5mA)
試料表面からの角度(take off角):45°
サーベイスキャンスペクトル:パスエネルギー280eV、エネルギーステップ0.5eV
ナロースキャン(multiplex)スペクトル:パスエネルギー55eV、エネルギーステップ0.1eV、パスエネルギー112eV、エネルギーステップ0.1eV
エネルギー較正:284.8eVをC1sピークとする。
原子濃度は、サーベイスペクトルを用いて算出された。
【0098】
例1のLSGCは、シリコン(Si)、炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)を含有しており、それぞれの含有量は、15wt%以上20wt%以下の範囲、62wt%以上75wt%以下の範囲、1.5wt%以上5wt%以下の範囲、および、8wt%以上16wt%以下の範囲を満たした。例2のLSGは、窒素を含有しなかった。
【0099】
なお、表3の組成分析および熱重量分析(図示せず)により、例1のLSGC中のシリコンシートおよびグラフェンシートの含有量は、それぞれ、約15wt%および約60wt%と算出された。
【0100】
以上の結果から例1のLSGCは、
図2の方法を実施することによって、シリコンシートと、シリコンシートを挟持したグラフェンシートと、シリコンシートとグラフェンシートとの間に位置する炭素材料とを含有する複合体であることが分かった。さらに、炭素材料には、窒素が含有されており、窒素はピリジン型窒素を構成していることが示された。
【0101】
[例3〜例5]
例3〜例5では、例1のLSGC、例2のLSGおよび原料のLSNをそれぞれアノード電極材料に用い、CR2032コイン型電池セルを製造し、電気化学特性を評価した。
【0102】
具体的には、各アノード電極材料と、カーボンブラックと、バインダとしてポリビニリデンジフロライドとを、N−メチルピロリドン(NMP)中で、質量比7:2:1で混合し、電極スラリとした。電極スラリを直径15mmの円形の銅箔に塗布し、真空雰囲気中、60℃で10時間乾燥させた。これにより、銅箔が集電体として機能するアノード電極を構成した。アノード電極内に含有される生成物の質量は1〜2mgであった。カソード電極(カウンタ電極)としてLi箔を用いた。
【0103】
ステンレス製のセル内に多孔性のセパレータとしてポリプロピレン(PP)メンブレン(Celgard2400)をこれら電極間に配置し、電解質としてエチレンと炭酸ジエチルとの混合物(1:1、v/v)中に1MLiPF
6を充填し、コイン型電池セルを製造した。なお、電池セルの組み立ては、Arガスで充填されたグローブボックス内で行った。例1のLSGC、例2のLSG、原料LSNをそれぞれ用いて得られた電池を、例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)と呼ぶ。
【0104】
電池セルの電気化学測定を、VMP3電気化学ステーション(Biologic)を用いて行った。室温において、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定、サイクル特性、レート特性、電気化学インピーダンス(EIS)測定を行った。CV測定は、0.1mV/sの掃引速度で行った。サイクル特性およびレート特性は、種々の電流密度(ただし、1C=500mA/g)で電圧幅0.005V〜2.0VvsLi/Li
+で行った。EIS測定は、AC振幅10mV、周波数幅100mHz〜200kHzで行った。測定後の電極の断面の様子をSEM観察した。結果を
図15〜
図21、表4および表5に示す。
【0105】
図15は、例3の電池(LSGC)の充放電プロファイルを示す図である。
【0106】
例3の電池(LSGC)は、0.2Cの電流密度において、871mAh/gの比容量を示した。例3の電池(LSGC)の比容量は、電流密度を4Cまで増大すると、低下する傾向を示したが、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)の比容量の低下の割合に比べて十分小さかった。
【0107】
例3の電池(LSGC)の充電容量は、高い電流密度4Cにおいても435mAh/gであった。この値は、人工グラファイトのそれ(372mAh/g)よりはるかに大きかった。例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)の充電容量(@4C)は、それぞれ、151mAh/gおよび37mAh/gであった。このことから、例1のLSGCは、リチウムイオン二次電池用のアノード電極材料として機能し、高い比容量を有することが確認された。
【0108】
初期クーロン効率(IEC)をガルバノ充放電曲線から求めた。例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のIECは、それぞれ、62.1%、58.2%および29%であり、例3の電池(LSGC)は高い初期クーロン効率を有することが分かった。
【0109】
図16は、例3の電池(LSGC)のサイクル特性を示す図である。
【0110】
最初の5サイクルを0.2Cで評価した後、0.6Cおよび1Cで200サイクルまでサイクル特性を評価した。
図16によれば、例3の電池(LSGC)は、0.6Cにおいて755mAh/gの高い充電容量を示し、200サイクル後も、750mAh/gを維持し、99.3%の高い容量保持率を有した。例3の電池(LSGC)は、1Cにおいても、200サイクル後に610mAh/gの充電容量を示し、容量保持率(96.2%)も低下した。
【0111】
図17は、例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のナイキストプロットを示す図である。
【0112】
例3の電池(LSGC)のナイキストプロットは、高周波数領域で小さな半円を示し、高周波数領域でy軸に近接する傾きの大きなスロープを示した。一方、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のナイキストプロットは、より大きな半円を示し、スロープの傾きも小さかった。この半円の大きさは、リチウムイオン電池における電解質と活性材料との間の界面接触における電荷移動抵抗に起因し、スロープの傾きは、電気化学反応活性に起因する。このことから、例3の電池(LSGC)は、電解質とシリコンシートとの間の電荷移動抵抗が極めて小さく、静電相互作用によって、シリコンシートとグラフェンシートとの間にアモルファス炭素を介した有効な界面接触が生じ、高い電気化学反応活性を有することが分かった。
【0113】
図18は、例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のレート特性を示す図である。
【0114】
例5の電池(LSN)の比容量は、電流密度の増加に伴い、597mAh/gから37mAh/gまで大きく減衰し、レート特性は悪かった。例4の電池(LSG)のレート特性は、例5の電池(LSN)のそれより改善したものの、比容量は、電流密度の増加に伴い、942mAh/g(@0.2C)から151mAh/g(@4C)まで減少した。この改善は、グラフェンシートを含有する点にあると考える。
【0115】
一方、例3の電池(LSGC)のレート特性は、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のそれより大きく改善した。詳細には、例3の電池(LSGC)の比容量は、電流密度を増加させても、873mAh/g(@0.2C)から435mAh/g(@4C)までの減少にとどまった。さらに、電流密度を0.2Cまで減少させると、比容量は867mAh/gとなり、最初の873mAh/gに実質一致した。
【0116】
例3の電池(LSGC)が優れたレート特性を有することから、LSGCの優れた電気伝導度によって高い電流密度下において早い応答を可能にし、LSGCはサイクルプロセス中も機械的破壊しないことが示された。このことからも、LSGCではシリコンシートがグラフェンシートによって挟持されることにより、高いロバスト性を有することが示された。
【0117】
図19は、例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)のさらなるレート特性を示す図である。
図20は、例3の電池(LSGC)および例4の電池(LSG)の71サイクルおよび600サイクルにおける充放電プロファイルを示す図である。
【0118】
図18のレート特性に続いて、電流密度2Cにて最大600サイクルまで充放電プロファイルを測定した。
図19には600サイクルまでのレート特性を示す。
図20(A)および
図20(B)は、それぞれ、例3の電池(LSGC)および例4の電池(LSG)の71サイクルおよび600サイクルの充放電プロファイルである。
【0119】
例3の電池(LSGC)の比容量は、71サイクルで549.1mAh/gを有し、500サイクルでも454.3mAh/gを有した。例3の電池(LSGC)は、電流密度2Cの長期サイクルにおいても、極めて安定であり、良好な可逆性を有した。例3の電池(LSGC)の平均クーロン効率(CE)および保持率は、それぞれ、99.8%および82.7%であった。なお、例5の電池(LSN)の容量は、200サイクル後に機械的破壊し、機械的破壊までの保持率は10%程度であった。
【0120】
一方、例4の電池(LSG)の比容量は、サイクル回数の増加に伴い大きく減少した。例4の電池(LSG)の容量は、500サイクル後には101.7mAh/gまで減少し、その保持率は37.7%であった。
図20(A)と
図20(B)との比較からも、例3の電池(LSGC)は、例4の電池(LSG)に比べて、顕著に優れていること分かる。このことから、カチオン性ポリマーを添加し、焼成することが有効であり、それによって得られる複合体は、アノード電極材料として優れていることが示された。
【0121】
これらの結果を簡単のため表4にまとめて示す。
【0122】
【表4】
【0123】
図21は、例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の断面のSEM像を示す図である。
【0124】
図21(a)、(c)、(e)は、それぞれ、充放電サイクル前の例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の断面のSEM像を示し、
図21(b)、(d)、(f)は、それぞれ、電流密度1Cで200サイクル後の例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の断面のSEM像を示す。
【0125】
充放電サイクル前の例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の厚さは、それぞれ、16.4μm、15.4μmおよび18.3μmであった。200サイクル後の例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の厚さは、それぞれ、20.7μm、24.1μmおよび45.0μmであった。例3の電池(LSGC)、例4の電池(LSG)および例5の電池(LSN)におけるアノード電極の体積膨張率は、それぞれ、26%、57%および146%であった。これらの結果を表5に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
このことから、本発明の複合体をアノード電極材料に用いることによりLiイオンの挿入・脱離による体積膨張が抑制され、高いサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が提供されることが示された。