【実施例】
【0049】
上記実施形態に従って、リチウムイオンキャパシタを作製し、特性について調べた。
図5は、実施例と比較例の各々の試験条件を示す図である。
【0050】
(実施例1)
正極10の活物質として、活性炭を用いた。カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンゴムをバインダーとしてスラリを調製し、調製されたスラリを孔空き加工の施されたアルミ箔上に塗布してシート状に作製した。負極20の活物質として、易黒鉛化炭素を用いた。カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンゴムをバインダーとしてスラリを調製し、調製されたスラリを孔空き加工の施された銅箔上に塗布してシート状に作製した。これらの電極10、20間にセルロース系のセパレータ30を挟み、超音波溶接により引出端子41を正極集電体11に取り付け、引出端子42を負極集電体21に取り付けてからこれらを捲回し、ポリイミドの粘着テープで蓄電素子50を固定した。作製した蓄電素子50に封口ゴム60を取付けて約180℃で真空乾燥した後、負極20にリチウム箔を貼りつけ、蓄電素子50を容器70に入れた。
【0051】
その後、PCとEMCとを体積比で3:7の割合で混合した非水溶媒に、LiFSIとLiPF
6とをモル比で7:3の割合で混合した電解質を溶解した非水電解液を作製した。その非水電解液における電解質の濃度は1.0mol/Lとした。更に、非水電解液に第1添加剤としてジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.1wt%の濃度で添加し、第2添加剤としてジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiP(C
2O
4)
2F
2)を0.6wt%の濃度で添加し、第3添加剤としてビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C
2O
4)
2)を0.3wt%の濃度で添加した。そして、この非水電解液を容器70に注入した後、封口ゴム60の部分をかしめてリチウムイオンキャパシタ100を作製した。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、第2添加剤の濃度を0.5wt%とし、第3添加剤の濃度を0.4wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、第1添加剤の濃度を0.2wt%とし、第2添加剤の濃度を0.6wt%とし、第3添加剤の濃度を0.2wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、第2添加剤の濃度を0.5wt%とし、第3添加剤の濃度を0.3wt%とした。その他の条件は実施例3と同様とした。
【0055】
(実施例5)
実施例5では、第2添加剤の濃度を0.4wt%とし、第3添加剤の濃度を0.4wt%とした。その他の条件は実施例3と同様とした。
【0056】
(実施例6)
実施例6では、第1添加剤の濃度を0.3wt%とし、第2添加剤の濃度を0.5wt%とし、第3添加剤の濃度を0.2wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0057】
(実施例7)
実施例7では、第2添加剤の濃度を0.4wt%とし、第3添加剤の濃度を0.3wt%とした。その他の条件は実施例6と同様とした。
【0058】
(実施例8)
実施例8では、第1添加剤の濃度を0.1wt%とし、第2添加剤の濃度を0.2wt%とし、第3添加剤の濃度を0.2wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0059】
(実施例9)
実施例9では、第1添加剤の濃度を0.2wt%とし、第2添加剤の濃度を0.9wt%とし、第3添加剤の濃度を0.4wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0060】
(実施例10)
実施例10では、第1添加剤の濃度を0.4wt%とし、第2添加剤の濃度を1.2wt%とし、第3添加剤の濃度を0.4wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0061】
(比較例1)
比較例1では、第2添加剤の濃度を0.7wt%とし、第3添加剤の濃度を0.2wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0062】
(比較例2)
比較例2では、第2添加剤の濃度を0.4wt%とし、第3添加剤の濃度を0.5wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0063】
(比較例3)
比較例3では、第2添加剤の濃度を0.7wt%とし、第3添加剤の濃度を0.1wt%とした。その他の条件は実施例3と同様とした。
【0064】
(比較例4)
比較例4では、第2添加剤の濃度を0.3wt%とし、第3添加剤の濃度を0.5wt%とした。その他の条件は実施例3と同様とした。
【0065】
(比較例5)
比較例5では、第2添加剤の濃度を0.6wt%とし、第3添加剤の濃度を0.1wt%とした。その他の条件は実施例6と同様とした。
【0066】
(比較例6)
比較例6では、第2添加剤の濃度を0.3wt%とし、第3添加剤の濃度を0.4wt%とした。その他の条件は実施例6と同様とした。
【0067】
(比較例7)
比較例7では、第1添加剤の濃度を0.4wt%とし、第2添加剤の濃度を0.3wt%とし、第3添加剤の濃度を0.3wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0068】
(比較例8)
比較例8では、第1添加剤の濃度を0.05wt%とし、第2添加剤の濃度を0.1wt%とし、第3添加剤の濃度を0.1wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0069】
(比較例9)
比較例9では、第1添加剤の濃度を0.5wt%とし、第2添加剤の濃度を1.5wt%とし、第3添加剤の濃度を0.5wt%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0070】
(比較例10)
比較例10では、第2添加剤の濃度を0.5wt%とし、第3添加剤の濃度を0.5wt%とした。なお、電解液に第1添加剤は添加しなかった。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0071】
(比較例11)
比較例11では、第1添加剤の濃度を0.3wt%とし、第3添加剤の濃度を0.7wt%とした。なお、電解液に第2添加剤は添加しなかった。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0072】
(比較例12)
比較例12では、第1添加剤の濃度を0.3wt%とし、第2添加剤の濃度を0.7wt%とした。なお、電解液に第3添加剤は添加しなかった。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0073】
(評価方法)
実施例1〜10と比較例1〜12の各々のリチウムイオンキャパシタ100を作製した。その後、初期特性として、室温(25℃)におけるDCR(内部抵抗)を測定した。
【0074】
低温特性は、セルを−40℃で2時間放置した後、−40℃でDCRを測定し、この値の25℃からの変化率に基づいて評価した。
【0075】
また、高温信頼性を評価するために、85℃の恒温槽中において3.5Vの電圧で1000時間連続充電するフロート試験を行った。フロート試験後、セルを室温(25℃)まで放冷し、DCRを測定し、試験前後の値の変化率を算出した。実施例と比較例の各々の試験結果を
図6に示す。
【0076】
(低温特性)
−40℃での低温特性の良否の判定基準は、抵抗上昇率が1500%以内とし、この基準が満たされない場合には不良と判定した。なお、抵抗上昇率は、25℃のときを基準としたときの内部抵抗の上昇率である。また、
図6には、この基準を満たさない欄にハッチングを掛けてある。
【0077】
実施例1〜7及び比較例1〜7、10〜12の結果から明らかなように、低温特性に最も影響を及ぼすのは第3添加剤のビス(オキサラト)ホウ酸リチウムであり、その添加量が増えるほど低温特性が悪化する傾向が確認された。また、第1添加剤のジフルオロリン酸リチウムの添加量が増えると、低温特性は良くなる傾向が見られた。
【0078】
一方、実施例8〜10及び比較例8〜9の結果によれば、第1添加剤、第2添加剤、及び第3添加剤のそれぞれの濃度の合計が2.0wt%よりも高いと低温特性の判定基準を満たさないことが確認された。
【0079】
(高温信頼性)
高温信頼性の良否の判断基準は、抵抗上昇率が200%以内とし、この基準が満たされない場合には不良と判定した。抵抗上昇率は、フロート試験の前後における内部抵抗の上昇率である。なお、
図6には、この基準を満たさない欄にハッチングを掛けてある。
【0080】
実施例1〜7及び比較例1〜7、10〜12の結果から明らかなように、第3添加剤のビス(オキサラト)ホウ酸リチウムの添加量が増えるほど高温信頼性は良くなるものの、その添加量が多すぎるとかえって高温信頼性が悪化することが確認された。また、第1添加剤のジフルオロリン酸リチウムの添加量が増えると、高温信頼性は悪化する傾向が見られた。
【0081】
一方、実施例8〜10及び比較例8〜9の結果によれば、第1添加剤、第2添加剤、及び第3添加剤のそれぞれの濃度の合計が0.5wt%〜2.0wt%の範囲を外れると、高温信頼性が悪化することが確認された。なお、比較例11に示されるように、電解液に第2添加剤のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムが含まれていないと、高温信頼性が悪いだけでなく、低温特性も悪化する結果が得られた。
【0082】
また、
図6によれば、低温特性と高温信頼性の両方の判定基準を満たす実施例1〜10においては、第1添加剤、第2添加剤、及び第3添加剤のそれぞれの濃度の合計が0.5wt%以上2.0wt%以下であり、第1添加剤の重量と、第2添加剤と第3添加剤とを合わせた重量との比が1:9〜3:7であり、第2添加剤の重量と第3添加剤の重量との比が1:1〜3:1である。
【0083】
よって、低温特性と高温信頼性を両立するためには、第1添加剤、第2添加剤、及び第3添加剤のそれぞれの濃度の合計を0.5wt%以上2.0wt%以下とし、第1添加剤の重量と、第2添加剤と第3添加剤とを合わせた重量との比を1:9〜3:7とし、第2添加剤の重量と第3添加剤の重量との比を1:1〜3:1とするのが有効であることが確認された。