(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-167530(P2021-167530A)
(43)【公開日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】流動化処理土の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/00 20060101AFI20210924BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20210924BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20210924BHJP
C04B 18/16 20060101ALI20210924BHJP
【FI】
E02D3/00 101
C04B28/02
C04B18/10 A
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-71102(P2020-71102)
(22)【出願日】2020年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591146125
【氏名又は名称】日鉄スラグ製品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】村本 藤和
(72)【発明者】
【氏名】水田 智幸
【テーマコード(参考)】
2D043
4G112
【Fターム(参考)】
2D043CA01
4G112PA26
4G112PA30
(57)【要約】
【課題】作業時の流動性と硬化後の強度との調整が容易な流動化処理土の製造方法を提供する。
【解決手段】石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程(ステップS1)と、石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程(ステップS2)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える、流動化処理土の製造方法。
【請求項2】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水、セメント及び建設残土を混合する工程と、を備える、流動化処理土の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流動化処理土の製造方法であって、
前記石炭灰固化物のバインダがセメントである、流動化処理土の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の流動化処理土の製造方法であって、
前記石炭灰固化物中の前記バインダの含有量が5〜15質量%である、流動化処理土の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の流動化処理土の製造方法であって、
前記石炭灰固化物は、ふるい目寸法が75μmのときの通過重量百分率が30%以下である、流動化処理土の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の流動化処理土の製造方法であって、
前記混合する工程では、前記石炭灰固化物100質量部に対して前記水を15〜35質量部の割合で混合する、流動化処理土の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の流動化処理土の製造方法であって、
混合直後の流動化処理土のフロー値が180mm以上である、流動化処理土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化処理土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動化処理土は、建設残土等に水とセメントとを添加して流動性及び硬化性を持たせたものであり、埋設配管の埋戻し等に用いられる。
【0003】
特開2008−31638号公報には、非水硬性物質の粉体100質量部に対し、セメント0.5〜40質量部を配合し、湿潤密度が1.6Mg/m
3以上となるように水を加えて混練してなる自硬性の地中充填材が開示されている。特開平10−195437号公報には、フライアッシュ及びセメントを含む粉体と水との混合物で、この混合物の水/粉体比が0.3から0.5である自己充填性充填材料が開示されている。
【0004】
特開平9−12349号公報には、石炭灰及びセメントを主要成分として成形してなる非焼成型の人工骨材であって、石炭灰の平均粒径を12μm以下とした人工骨材が開示されている。特開平8−259946号公報には、建設残土及び/又は石炭灰にセメント類を混合して硬化させ、25mm以下に粗砕した固化物を、製鋼スラグ及び/又は溶銑予備処理スラグと混合して路盤材等に利用することが開示されている。
【0005】
特開2001−347252号公報には、クラッシャラン、粒度調整鉄鋼スラグ、水硬性粒度調整鉄鋼スラグ等の道路用の路盤材の補足材として、粒度範囲が0.3mm〜20mm、圧壊強度が1.2MPa以上である石炭灰の造粒・硬化物を配合することが開示されている。特開2017−14087号公報には、石炭灰を含む路盤材用造粒物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−31638号公報
【特許文献2】特開平10−195437号公報
【特許文献3】特開平9−12349号公報
【特許文献4】特開平8−259946号公報
【特許文献5】特開2001−347252号公報
【特許文献6】特開2017−14087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流動化処理土には、作業時の流動性と硬化後の強度とが求められる。流動化処理土は一般的に建設残土に水とセメントとを添加して製造されるが、建設残土は採取された環境等によって特性が一定せず、流動性と強度とが両立する条件を都度探索する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、作業時の流動性と硬化後の強度との調整が容易な流動化処理土の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による流動化処理土の製造方法は、石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える。
【0010】
本発明の別の実施形態による流動化処理土の製造方法は、石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、前記石炭灰固化物、水、セメント及び建設残土を混合する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業時の流動性と硬化後の強度との調整が容易な流動化処理土が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による流動化処理土の製造方法のフロー図である。
【
図2】
図2は、石炭灰固化物及び石炭灰の粒度分布の一例である。
【
図3】
図3は、セメント比率と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々の検討を行い、以下の知見を得た。
【0014】
石炭火力発電で発生する石炭灰は、建設残土に比べて特性が安定している。そのため、建設残土の代わりに石炭灰を用いて流動化処理土を製造することが考えられる。しかし、石炭灰は粉体であり、比表面積が大きいため水分を表面で吸着しやすく、流動性を確保するために多くの水を混合する必要がある。混合する水の量が多くなると、同一セメント量では硬化強度が低下する。
【0015】
本発明者らは、予め石炭灰をバインダで造粒して石炭灰固化物として準備し、施工直前にこの石炭灰固化物にセメント及び水を混合することで、作業時の流動性と硬化後の強度とを両立しやすくできることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成された。以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による流動化処理土の製造方法のフロー図である。この製造方法は、石炭灰固化物を準備する工程(ステップS1)と、石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程(ステップS2)とを備えている。
【0017】
[準備工程]
石炭灰固化物を準備する(ステップS1)。石炭灰固化物は、石炭灰とバインダとを含んでいる。石炭灰固化物は、粉体状の石炭灰(「フライアッシュ」と呼ばれる。)にバインダを混合して粒状にしたものである。石炭灰は、例えば火力発電で生成されるものを用いることができる。
【0018】
石炭灰固化物は、微粉の混入率が低いものが好ましい。微粉の混入率が高いと、水分を吸着しやすくなり、流動性を確保するために多くの水が必要となる。石炭灰固化物は、好ましくは、ふるい目寸法が75μmのときの通過重量百分率が30%以下である。
【0019】
一方、石炭灰固化物に粗大な粒子が混ざっていると、ポンプ車の排出口等を閉塞させてしまう場合がある。そのため、石炭灰固化物は、粗大な粒子を除去しておくことが好ましい。石炭灰固化物の最大粒径は、好ましくは30mm以下であり、さらに好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
【0020】
石炭灰固化物は、例えば、次のように製造することができる。石炭灰とバインダとを混合し、必要に応じて水を加え、造粒機で粒状する。造粒物を乾燥させた後、必要に応じて粉砕や分級を実施して粒度分布を調整する。バインダは、これらに限定されないが、セメント、石膏、高炉スラグ微粉末等を用いることができ、特にセメントが好ましい。石炭灰固化物中のバインダの量は、5〜15質量%であることが好ましい。
【0021】
[混合工程]
石炭灰固化物、水及びセメントを混合する(ステップS2)。混合方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。
【0022】
混合する水の量は、特に限定されない。混合する水の量が多いほど、流動化処理土の流動性が高くなる一方、同一の強度を得るために必要なセメントの量が多くなる。そのため混合する水の量は、狙いとする流動性に応じて調整すればよいが、例えば、石炭灰固化物100質量部に対して15〜35質量部とすることができる。混合する水の量の下限は、より好ましくは石炭灰固化物100質量部に対して20質量部であり、さらに好ましくは22質量部である。混合する水の量の上限は、より好ましくは石炭灰固化物100質量部に対して30質量部であり、さらに好ましくは28質量部である。
【0023】
混合する工程では、混合直後の流動化処理土のフロー値が180mm以上になるようにすることが好ましい。フロー値は、JIS R5201:2015(セメントの物理試験方法)のフロー試験に準拠して測定するものとする。混合直後の流動化処理土のフロー値の下限は、より好ましくは200mmである。混合直後の流動化処理土のフロー値の上限は、より好ましくは300mmであり、さらに好ましくは250mmである。流動化処理土の流動性は、上述のとおり、混合する水の量によって調整することができる。
【0024】
混合するセメントの量も、特に限定されない。混合するセメントの量が多いほど、硬化後の強度が高くなる。そのため混合するセメントの量は、狙いとする強度に応じて調整すればよいが、例えば、石炭灰固化物100質量部に対して5質量部以上とすることができる。混合するセメントの量の下限は、より好ましくは石炭灰固化物100質量部に対して10質量部である。混合するセメントの量の上限は、より好ましくは石炭灰固化物100質量部に対して30質量部であり、さらに好ましくは20質量部である。
【0025】
セメントは、一般的なコンクリートや地盤改良用途等に用いられる種々のものを使用できる。例えば、普通セメント、高炉セメント、セメント系固化材等が挙げられる。石灰等、固化反応を呈する結合材をセメントとともに添加することもできる。
【0026】
セメントに加えて、流動化処理土の流動性を阻害しない範囲で、種々の混和剤をさらに混合してもよい。混和剤としては例えば、減水剤等が挙げられる。
【0027】
混合する工程では、石炭灰固化物に加えて、建設残土をさらに混合してもよい。すなわち、本実施形態による流動化処理土の製造方法では、石炭灰固化物と建設残土とを所定の割合で配合して使用してもよい。また、建設残土に加えて、又は建設残土に代えて、砕石、砕砂、スラグ等の非水硬性成分を混合してもよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0029】
石炭灰を造粒して石炭灰固化物を製造した。バインダはセメントとし、石炭灰固化物中のセメントの含有量は5%とした。
図2に、石炭灰固化物及び石炭灰の粒度分布を示す。製造した石炭灰固化物は、ふるい目寸法が75μmのときの通過重量百分率が30%以下であった。
【0030】
石炭灰固化物、水及びセメントを混合して流動化処理土を製造し、混合直後の流動性及び硬化後の強度を評価した。混合直後の流動性の評価として、JIS R 5201:2015のフロー試験を行い、流動化処理土が広がった最大長さ、及び最大長さの方向と垂直な方向の長さを測定した。硬化後の強度は、7日後及び28日後の一軸圧縮強度をJIS A 1216:2019に準拠して測定した。
【0031】
石炭灰固化物を使用した流動化処理土の配合及び評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
比較例として、石炭灰、水及びセメントを混合した流動化処理土を製造し、混合直後の流動性及び硬化後の強度を評価した。混合する水の量は、フロー値が石炭灰固化物を使用した場合(表1)と同程度になるように調整した。混合するセメントの量は、セメント比率(非水硬性成分(石炭灰固化物又は石炭灰)の質量に対するセメントの質量の比率)が石炭灰固化物を使用した場合(表1)と同じになるように調整した。
【0034】
石炭灰を使用した流動化処理土の配合及び評価結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
セメント比率と一軸圧縮強度との関係を
図3に示す。
【0037】
表1及び2、並びに
図3に示すように、同程度の流動性で同一のセメント比率となるように調合した場合、石炭灰固化物を使用した流動化処理土の方が、石炭灰を使用した流動化処理土に比べて明らかに大きな一軸圧縮強度を示した。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。