特開2021-167738(P2021-167738A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝電子管デバイス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000003
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000004
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000005
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000006
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000007
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000008
  • 特開2021167738-放射線検出器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-167738(P2021-167738A)
(43)【公開日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20210924BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20210924BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20210924BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20210924BHJP
   H04N 5/32 20060101ALI20210924BHJP
   H04N 5/357 20110101ALI20210924BHJP
【FI】
   G01T7/00 A
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
   G01T1/24
   G01T1/20 L
   A61B6/00 300S
   H04N5/32
   H04N5/357 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-70435(P2020-70435)
(22)【出願日】2020年4月9日
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】川端 智樹
(72)【発明者】
【氏名】身深 亮
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188BB04
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188CC30
2G188DD05
2G188DD12
2G188DD14
2G188DD35
2G188DD36
2G188DD44
2G188EE07
2G188EE32
4C093CA06
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB30
5C024AX11
5C024CX11
(57)【要約】
【課題】ノイズの低減を図ることができる放射線検出器を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る放射線検出器は、筐体と、前記筐体の内部に設けられ、放射線を直接的またはシンチレータと協働して検出する複数の検出部を有するアレイ基板と、前記筐体の内部に設けられ、前記アレイ基板と電気的に接続された回路基板と、前記筐体の内部であって、前記回路基板に設けられた膜状のグランドと、前記筐体に設けられ、導電性を有する板状体と、の間に設けられた導電部と、を備えている。前記導電部は、導電性を有し、前記グランドの材料よりも柔らかい材料を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、放射線を直接的またはシンチレータと協働して検出する複数の検出部を有するアレイ基板と、
前記筐体の内部に設けられ、前記アレイ基板と電気的に接続された回路基板と、
前記筐体の内部であって、前記回路基板に設けられた膜状のグランドと、前記筐体に設けられ、導電性を有する板状体と、の間に設けられた導電部と、
を備え、
前記導電部は、導電性を有し、前記グランドの材料よりも柔らかい材料を含んでいる放射線検出器。
【請求項2】
前記導電部は、
板状を呈し、導電性を有する本体部と、
膜状を呈し、少なくとも、前記本体部の前記グランド側の面と、前記本体部の前記板状体側の面と、に設けられた被覆部と、
を有し、
前記被覆部は、導電性を有し、前記グランドの材料よりも柔らかい材料を含んでいる請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記グランドは、銅を含み、
前記導電部は、ニッケル、ニッケル合金、および、導電性を有する有機材料のいずれかを含む請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記グランドは、銅を含み、
前記本体部は、銅を含み、
前記被覆部は、ニッケル、またはニッケル合金を含む請求項2記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器の一例にX線検出器がある。一般的なX線検出器には、例えば、シンチレータ、アレイ基板、および回路基板が設けられている。シンチレータは、入射したX線を蛍光に変換する。アレイ基板は、光電変換素子と薄膜トランジスタとを有する光電変換部を複数備え、シンチレータにおいて発生した蛍光を電荷に変換する。回路基板には、アナログ回路とデジタル回路が設けられている。アナログ回路は、複数の光電変換部から電荷(画像データ信号)を読み出す。デジタル回路は、読み出された画像データ信号に基づいてX線画像を構成する。
【0003】
X線検出器が医療に用いられるものである場合には、人体へのX線照射量が必要最低限に抑えられるため、X線検出器に入射するX線の強度が非常に弱いものとなる。そのため、複数の光電変換部から読み出される画像データ信号が極めて微弱なものとなるので、僅かなノイズが画像データ信号に混入してもX線画像の品質が低下するおそれがある。
【0004】
また、近年においては、正確な診断を行うために、より多くの光電変換部を設ける高密度化や、画像データ信号の読み出しと処理の高速化を図ることが求められている。そのため、デジタル回路における処理の高速化が必要となり、動作クロックが高速化して、ノイズが増加している。その結果、ノイズがアナログ回路にさらに混入し易くなるので、X線画像の品質がさらに低下するおそれがある。
そこで、ノイズの低減を図ることができる放射線検出器の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−239657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズの低減を図ることができる放射線検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る放射線検出器は、筐体と、前記筐体の内部に設けられ、放射線を直接的またはシンチレータと協働して検出する複数の検出部を有するアレイ基板と、前記筐体の内部に設けられ、前記アレイ基板と電気的に接続された回路基板と、前記筐体の内部であって、前記回路基板に設けられた膜状のグランドと、前記筐体に設けられ、導電性を有する板状体と、の間に設けられた導電部と、を備えている。前記導電部は、導電性を有し、前記グランドの材料よりも柔らかい材料を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るX線検出器を例示するための模式断面図である。
図2】検出モジュールを例示するための模式斜視図である。
図3】アレイ基板の回路図である。
図4】検出モジュールのブロック図である。
図5】比較例に係る回路基板と支持板との接続を例示するための模式断面図である。
図6】本実施の形態に係る回路基板と支持板との接続を例示するための模式断面図である。
図7】他の実施形態に係る回路基板と支持板との接続を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本発明の実施形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0010】
また、以下に例示をするX線検出器1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサとすることができる。X線平面センサには、大きく分けて直接変換方式と間接変換方式がある。
【0011】
間接変換方式のX線検出器には、例えば、複数の光電変換部を有するアレイ基板と、複数の光電変換部の上に設けられX線を蛍光(可視光)に変換するシンチレータとが設けられている。間接変換方式のX線検出器においては、外部から入射したX線はシンチレータにより蛍光に変換される。発生した蛍光は、複数の光電変換部により電荷に変換される。
【0012】
直接変換方式のX線検出器には、例えば、アモルファスセレンなどからなる光電変換膜が設けられている。直接変換方式のX線検出器においては、外部から入射したX線は、光電変換膜に吸収され、電荷に直接変換される。なお、直接変換方式のX線検出器の基本的な構成には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0013】
以下においては、一例として、間接変換方式のX線検出器1を例示するが、本発明は、直接変換方式のX線検出器にも適用することができる。
すなわち、X線検出器は、X線を電気的な情報に変換する複数の検出部を有するものであれば良い。検出部は、例えば、X線を直接的またはシンチレータと協働して検出するものとすることができる。
また、X線検出器1は、例えば、一般医療などに用いることができる。ただし、X線検出器1の用途は、一般医療に限定されるわけではない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るX線検出器1を例示するための模式断面図である。
図2は、検出モジュール10を例示するための模式斜視図である。
図3は、アレイ基板2の回路図である。
図4は、検出モジュール10のブロック図である。
図1図4に示すように、X線検出器1には、検出モジュール10、および筐体20を設けることができる。
【0015】
検出モジュール10には、アレイ基板2、シンチレータ3、回路基板4、および導電部5を設けることができる。
検出モジュール10は、筐体20の内部に設けることができる。
【0016】
アレイ基板2は、シンチレータ3によりX線から変換された蛍光を電荷に変換する。図1に示すように、アレイ基板2は、例えば、支持板24の、X線が入射する側の面に設けることができる。
【0017】
アレイ基板2には、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、および保護層2fなどを設けることができる。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2などの数は例示をしたものに限定されるわけではない。
本実施の形態に係るX線検出器1においては、光電変換部2bが、X線をシンチレータ3と協働して検出する検出部となる。
【0018】
基板2aは、板状を呈し、例えば、無アルカリガラスやポリイミド樹脂などから形成することができる。基板2aの平面形状は、例えば、四角形とすることができる。
光電変換部2bは、基板2aの、支持板24側とは反対側の面に複数設けることができる。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより画された領域に設けることができる。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べて設けることができる。なお、1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素(pixel)に対応する。
【0019】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2を設けることができる。
また、光電変換素子2b1において変換した電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることができる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、膜状を呈し、各薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0020】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蓄積キャパシタ2b3への電荷の蓄積および放出のスイッチングを行うことができる。図3に示すよう、薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ドレイン電極2b2b及びソース電極2b2cを有することができる。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続することができる。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続することができる。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続することができる。また、光電変換素子2b1のアノード側と蓄積キャパシタ2b3は、後述するアナログ回路4bが電気的に接続された配線パターン4a1のグラウンド(アナロググラウンド)に電気的に接続することができる。
【0021】
制御ライン2c1は、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けることができる。制御ライン2c1は、例えば、行方向に延びるものとすることができる。1つの制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続することができる。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つを電気的に接続することができる。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、回路基板4に設けられたアナログ回路4b(ゲートドライバ4b1)とそれぞれ電気的に接続することができる。
【0022】
データライン2c2は、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けることができる。データライン2c2は、例えば、行方向に直交する列方向に延びるものとすることができる。1つのデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続することができる。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つを電気的に接続することができる。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、回路基板4に設けられたアナログ回路4b(積分アンプ4b3)とそれぞれ電気的に接続することができる。
制御ライン2c1、およびデータライン2c2は、例えば、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0023】
保護層2fは、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2などを覆うことができる。保護層2fは、例えば、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、酸窒化物絶縁材料、および樹脂の少なくとも1種を含むことができる。
【0024】
図2に示すように、シンチレータ3は、複数の光電変換部2bの上に設けることができる。シンチレータ3は、入射したX線を蛍光に変換することができる。シンチレータ3は、基板2a上の複数の光電変換部2bが設けられた領域(有効画素領域)を覆うように設けることができる。
【0025】
シンチレータ3は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、ヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)、あるいは臭化セシウム(CsBr):ユーロピウム(Eu)などを用いて形成することができる。シンチレータ3は、真空蒸着法を用いて形成することができる。真空蒸着法を用いてシンチレータ3を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ3を形成することができる。
【0026】
また、シンチレータ3は、例えば、テルビウム賦活硫酸化ガドリニウム(GdS/Tb、又はGOS)などを用いて形成することもできる。この場合、複数の光電変換部2bごとに四角柱状のシンチレータ3が設けられるように、マトリクス状の溝部を形成することができる。
【0027】
その他、検出部10には、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータ3の表面側(X線の入射面側)を覆う反射層を設けることもできる。
また、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ3の特性と反射層の特性が劣化するのを抑制するために、シンチレータ3と反射層を覆う防湿部を設けることもできる。
【0028】
回路基板4は、導電部5を介して、例えば、支持板24の、X線が入射する側とは反対側の面に設けることができる。回路基板4は、例えば、ネジなどの締結部材を用いて支持板24に取り付けることができる。回路基板4は、フレキシブルプリント基板2e1、2e2を介して、アレイ基板2と電気的に接続することができる。
【0029】
回路基板4には、基板4a、アナログ回路4b、デジタル回路4c、グランド4d、およびインダクタ4eを設けることができる。
基板4aは、板状を呈し、導電部5側とは反対側の面に配線パターン4a1、4a2を有することができる。
【0030】
後述するように、アナログ回路4bは、複数のゲートドライバ4b1、行選択回路4b2、複数の積分アンプ4b3、複数の選択回路4b4、および複数のADコンバータ4b5を有することができる。この場合、アナログ回路4bを構成する要素や回路を集積回路として1つのパッケージに収納することができる。アナログ回路4bが収納されたパッケージは、配線パターン4a1と電気的に接続することができる。配線パターン4a1は、フレキシブルプリント基板2e1、2e2と電気的に接続することができる。すなわち、アナログ回路4bは、フレキシブルプリント基板2e1を介して複数の制御ライン2c1と電気的に接続することができる。アナログ回路4bは、フレキシブルプリント基板2e2を介して複数のデータライン2c2と電気的に接続することができる。
【0031】
後述するように、デジタル回路4cは、画像処理回路4c1を有することができる。この場合、デジタル回路4cを構成する要素や回路を集積回路として1つのパッケージに収納することができる。デジタル回路4cが収納されたパッケージは、配線パターン4a2と電気的に接続することができる。デジタル回路4cが収納されたパッケージは、配線パターン4a2のグラウンド(デジタルグラウンド)が設けられる領域に設けることができる。
【0032】
アナログ回路4bは、複数の光電変換部2bから画像データ信号S2を読み出すことができる。また、アナログ回路4bは、さらに、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に変換するようにしてもよい。
【0033】
図4に示すように、アナログ回路4bは、複数のゲートドライバ4b1、行選択回路4b2、複数の積分アンプ4b3、複数の選択回路4b4、および複数のADコンバータ4b5を有することができる。なお、複数のADコンバータ4b5は、アナログ回路4bおよびデジタル回路4cのいずれかに設けられていればよい。以下においては、一例として、複数のADコンバータ4b5がアナログ回路4bに設けられている場合を説明する。
【0034】
行選択回路4b2には、制御信号S1を入力することができる。制御信号S1は、例えば、画像処理回路4c1などから行選択回路4b2に入力することができる。行選択回路4b2は、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ4b1に制御信号S1を入力することができる。ゲートドライバ4b1は、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を入力することができる。
【0035】
例えば、ゲートドライバ4b1は、フレキシブルプリント基板2e1を介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次入力することができる。制御ライン2c1に入力された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、蓄積キャパシタ2b3からの電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0036】
また、1つの積分アンプ4b3は、1つのデータライン2c2と電気的に接続することができる。積分アンプ4b3は、光電変換部2bからの画像データ信号S2を順次受信することができる。そして、積分アンプ4b3は、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を選択回路4b4へ出力することができる。この様にすれば、所定の時間内にデータライン2c2を流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することが可能となる。すなわち、積分アンプ4b3は、シンチレータ3において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換することができる。
【0037】
選択回路4b4は、読み出しを行う積分アンプ4b3を選択し、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順次読み出すことができる。
ADコンバータ4b5は、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に順次変換することができる。デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、デジタル回路4c(画像処理回路4c1)に入力することができる。
【0038】
デジタル回路4cは、画像処理回路4c1を有することができる。画像処理回路4c1は、アナログ回路4bからの信号に基づいて、X線画像を構成することができる。構成されたX線画像のデータは、デジタル回路4cから外部の機器に向けて出力することができる。
【0039】
なお、複数のADコンバータ4b5がアナログ回路4bに設けられている場合には、画像処理回路4c1は、アナログ回路4bからのデジタル信号に基づいて、X線画像を構成することができる。複数のADコンバータ4b5がデジタル回路4cに設けられている場合には、デジタル回路4cは、アナログ回路4bからの画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号に基づいて、X線画像を構成することができる。
【0040】
グランド4dは、基板4aの、導電部5側の面に設けることができる。グランド4dは、基板4aの、導電部5側の面の全領域に設けることもできるし、基板4aの、導電部5側の面の一部の領域に設けることもできる。例えば、アナログ回路4bやデジタル回路4cを構成する素子が、基板4aの、導電部5側の面にも設けられる場合がある。この様な場合には、基板4aの、アナログ回路4bやデジタル回路4cを構成する素子が設けられていない領域にグランド4dを設けることができる。
【0041】
例えば、グランド4dは、膜状を呈し、銅などの導電性材料から形成することができる。また、グランド4dは、アナログ回路4bが電気的に接続された配線パターン4a1のグラウンド(アナロググラウンド)と電気的に接続される部分4daと、デジタル回路4cが電気的に接続された配線パターン4a2のグラウンド(デジタルグラウンド)と電気的に接続される部分4dbと、に分割することもできる。なお、配線パターン4a1のグラウンドとグランド4dの部分4daとの電気的な接続は、基板4aを厚み方向に貫通する複数の導通ビアにより行うことができる。配線パターン4a2のグラウンドとグランド4dの部分4dbとの電気的な接続は、基板4aを厚み方向に貫通する複数の導通ビアにより行うことができる。
【0042】
図1に示すように、インダクタ4eは、アナロググラウンドとデジタルグラウンドとの間に電気的に接続することができる。
ここで、前述したように、アナログ回路4bは、アレイ基板2から画像データ信号S2を読み出す。デジタル回路4cは、アナログ回路4bからの信号に基づいて、X線画像を構成する。アナログ回路4bとデジタル回路4cは、それぞれグラウンドラインを有しており、アナロググラウンドとデジタルグラウンドに別れている。
【0043】
デジタルグラウンドには、ノイズを多く含む信号が流れる場合が多い。例えば、デジタルグラウンドには、画像処理回路4c1を駆動するための電源などからのノイズを多く含む信号が流れる場合がある。また、アナロググラウンドは、アナロググラウンドの電位を安定させるために筺体20などに電気的に接続される。そのため、デジタルグラウンド側のノイズが、カバー21、ベース23、スペーサ25、支持板24、および導電部5などを介して、アナロググラウンド側に混入し易くなる。デジタルグラウンド側のノイズが、アナロググラウンド側に混入すると、X線画像のノイズとなり、X線画像の品質が低下するおそれがある。
【0044】
そこで、アナロググラウンドとデジタルグラウンドとの間に、インダクタ4eを電気的に接続している。インダクタ4eは、例えば、フェライトなどの磁性体やセラミックスなどから形成された本体と、本体の内部に設けられ、導電性を有する導電体と、を有している。そのため、ノイズが導電体を流れた際に、ノイズの少なくとも一部を熱に変換することができる。その結果、デジタルグラウンド側のノイズが、デジタルグラウンドとアナロググラウンドとを介して、アレイ基板2(複数の光電変換部2b)から読み出された画像データ信号S2に混入するのを抑制することができる。
【0045】
ここで、X線検出器1が一般医療などに用いられる場合には、正確な診断を行うために、より多くの光電変換部2bを設ける高密度化や、画像データ信号S2の読み出しと処理の高速化がX線検出器1に求められている。そのため、デジタル回路4cにおける処理の高速化が必要となり、動作クロックが高速化して、高周波成分の多いノイズが増加する傾向にある。
【0046】
インダクタ4eが設けられていれば、高周波の電位変動(ノイズの高周波成分)を効果的に除去することができる。そのため、動作クロックが速くなっても、ノイズがアレイ基板2(複数の光電変換部2b)から読み出された画像データ信号S2に混入するのを抑制することができる。
【0047】
また、デジタルグラウンド側のノイズが、導電部5に流れたとしても、ノイズのパスは、導電部5と基板4aとの間という短いループとなる。そのため、ノイズが、他の回路などに混入して、X線画像のノイズとなるのを抑制することができる。
【0048】
導電部5は、グランド4dと支持板24との間に設けることができる。導電部5は、導電性を有し、グランド4dと支持板24とを電気的に接続することができる。グランド4dが、部分4daと部分4dbとに分割される場合には、導電部5は、グランド4dの部分4daと支持板24との間に設けられる部分5aと、グランド4dの部分4dbと支持板24との間に設けられる部分5bとに分割することもできる。
【0049】
なお、図1においては一例として、回路基板4が支持板24に設けられる場合を例示したが、回路基板4は、筐体20に設けられたカバー21の内面やベース23などに、導電部5を介して設けることもできる。すなわち、導電部5は、筐体20の内部であって、回路基板4に設けられた膜状のグランド4dと、筐体20に設けられ、導電性を有する板状体と、の間に設けることができる。
【0050】
導電部5は、導電性を有し、グランド4dの材料よりも柔らかい材料から形成することができる。導電部5は、例えば、ニッケルやニッケル合金などを含むことができる。また、導電部5は、例えば、金属などの導電性材料から形成された粒子や繊維を含む樹脂やゴムなどとしてもよい。すなわち、導電部5は、導電性を有する有機材料を含むものとしてもよい。ただし、インピーダンスの低減を考慮すると、ニッケルなどの金属を含む導電部5とすることが好ましい。
【0051】
図5は、比較例に係る回路基板4と支持板24との接続を例示するための模式断面図である。
図5に示すように、基板4aの、支持板24側の面にはグランド4dが設けられている。一般的に、グランド4dは、メッキなどにより、銅などの金属を基板4aの面に成膜することで形成される。そのため、グランド4dの、基板4a側とは反対側の面には凹凸が形成されている場合が多い。また、基板4aの面に凹凸やうねりがある場合には、グランド4dの面に、基板4aの面の凹凸やうねりが転写される場合がある。また、支持板24の面にも凹凸やうねりがある場合がある。
【0052】
そのため、グランド4dが設けられた基板4aを、ネジなどの締結部材を用いて支持板24に取り付けると、グランド4dと支持板24との間に隙間100が生じる場合がある。例えば、図5に示すように、締結部材が設けられる位置においては、グランド4dと支持板24とが接触するが、締結部材と締結部材との間などにおいては、グランド4dと支持板24との間に隙間100が生じる場合がある。グランド4dと支持板24との間に隙間100が生じると、グランド4dと支持板24との間のインピーダンスが高くなり、ノイズの低減が困難となるおそれがある。
【0053】
図6は、本実施の形態に係る回路基板4と支持板24との接続を例示するための模式断面図である。
図6に示すように、基板4aの、支持板24側の面にはグランド4dが設けられている。グランド4dと支持板24との間には、導電部5が設けられている。前述したように、導電部5は、導電性を有し、グランド4dの材料よりも柔らかい材料から形成されている。例えば、導電部5は、ニッケル、ニッケル合金、あるいは、導電性を有する有機材料などから形成されている。そのため、グランド4dの、基板4a側とは反対側の面に凹凸やうねりがあったとしても、導電部5とグランド4dとが密着しやすくなる。支持板24の面に凹凸やうねりがあったとしても、導電部5と支持板24とが密着しやすくなる。
【0054】
その結果、グランド4dと支持板24との間のインピーダンスを低くすることができるので、ノイズの低減を図ることができる。なお、インピーダンスをより低くするためには、導電性を有する有機材料から導電部5を形成するよりも、ニッケルやニッケル合金などの金属から導電部5を形成することが好ましい。
【0055】
図7は、他の実施形態に係る回路基板4と支持板24との接続を例示するための模式断面図である。
図7に示すように、基板4aの、支持板24側の面にはグランド4dが設けられている。グランド4dと支持板24との間には、導電部15が設けられている。導電部15は、本体部15aと被覆部15bを有することができる。
【0056】
本体部15aは、板状を呈し、導電性を有する材料から形成することができる。本体部15aは、例えば、銅やアルミニウムなどの低抵抗金属から形成することができる。
被覆部15bは、少なくとも、本体部15aのグランド4d側の面と、本体部15aの支持板24側の面とに設けることができる。なお、図7に例示をした様に、被覆部15bは、本体部15aの全ての面に設けることもできる。被覆部15bは、膜状を呈し、導電性を有する材料から形成することができる。被覆部15bは、例えば、グランド4dの材料よりも柔らかい材料から形成することができる。被覆部15bは、例えば、ニッケルやニッケル合金などを含むことができる。被覆部15bは、例えば、本体部15aに、ニッケルやニッケル合金などをメッキすることで形成することができる。
【0057】
導電部15の表面には、グランド4dの材料よりも柔らかい材料を含む被覆部15bが設けられているので、グランド4dの、基板4a側とは反対側の面に凹凸やうねりがあったとしても、導電部15(被覆部15b)とグランド4dとが密着しやすくなる。支持板24の面に凹凸やうねりがあったとしても、導電部15(被覆部15b)と支持板24とが密着しやすくなる。
その結果、グランド4dと支持板24との間のインピーダンスを低くすることができるので、ノイズの低減を図ることができる。
【0058】
次に、図1に戻って、筐体20について説明する。
図1に示すように、筐体20には、カバー21、入射窓22、ベース23、支持板24、スペーサ25、およびアース線26を設けることができる。
カバー21は、箱状を呈し、X線の入射側、およびX線の入射側とは反対側に開口部を有することができる。軽量化を考慮して、カバー21は、例えば、アルミニウム合金などの軽金属を用いて形成することができる。
【0059】
入射窓22は、板状を呈し、カバー21の、X線の入射側の開口部を塞ぐように設けることができる。入射窓22は、X線を透過させることができる。入射窓22は、X線吸収率の低い材料を用いて形成することができる。入射窓22は、例えば、炭素繊維強化プラスチックなどを用いて形成することができる。
【0060】
ベース23は、板状を呈し、カバー21の、X線の入射側とは反対側の開口部を塞ぐように設けることができる。なお、ベース23は、カバー21と一体化してもよい。ベース23の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。ベース23の材料は、例えば、カバー21の材料と同様とすることができる。なお、回路基板4(基板4a)に設けられたグランド4dは、導電部5(15)、支持板24、およびスペーサ25を介して、カバー21やベース23に電気的に接続される。そのため、ノイズの低減を考慮すると、カバー21やベース23は、導電性を有する材料(例えば、アルミニウム合金などの金属)を用いて形成することが好ましい。
【0061】
支持板24は、板状を呈し、カバー21の内部に設けることができる。支持板24の入射窓22側の面には、アレイ基板2を設けることができる。この場合、アレイ基板2を支持板24に固定してもよいし、アレイ基板2が支持板24に対して着脱可能としてもよい。支持板24の入射窓22側とは反対側の面には、導電部5(15)を介して、回路基板4を設けることができる。また、前述したように、回路基板4は、導電部5(15)を介して、カバー21の内面やベース23などに設けることもできる。
【0062】
支持板24の材料は、導電性を有し、X線吸収率がある程度高いものとすることが好ましい。支持板24の材料は、例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属とすることができる。
【0063】
スペーサ25は、柱状や筒状を呈し、カバー21の内部に複数設けることができる。複数のスペーサ25は、支持板24とベース23との間に設けることができる。スペーサ25と支持板24の固定は、例えば、ネジなどの締結部材を用いて行うことができる。スペーサ25の材料は、ある程度の剛性と導電性を有するものであれば特に限定はない。スペーサ25は、例えば、金属などを用いて形成することができる。
【0064】
なお、スペーサ25の形態、配設位置、数、材料などは例示をしたものに限定されるわけではない。また、支持板24がカバー21の内部に支持されるのであれば、スペーサ25を用いなくてもよい。例えば、カバー21の内側面からカバー21の内部に突出するリブを設け、支持板24がリブにより支持されるようにしてもよい。
【0065】
アース線26の一端は、例えば、カバー21およびベース23の少なくともいずれかと電気的に接続することができる。アース線26の他端は、接地することができる。アース線26が設けられていれば、回路基板4に設けられたグランド4dを、導電部5および筐体20を介して接地することができる。そのため、前述したノイズの低減を効果的に行うことができる。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 X線検出器、2 アレイ基板、2a 基板、2b 光電変換部、3 シンチレータ、4 回路基板、4a 基板、4a1 配線パターン、4a2 配線パターン、4b アナログ回路、4c デジタル回路、4d グランド、4da 部分、4db 部分、4e インダクタ、5 導電部、5a 部分、5b 部分、10 検出モジュール、15 導電部、15a 本体部、15b 被覆部、20 筐体、21 カバー、22 入射窓、23 ベース、24 支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7