【解決手段】縮小側2の第1の像面5aから拡大側3の第2の像面6へ投射する投射光学系10であって、複数のレンズを含む第1の光学系11であって、縮小側から入射した光により当該第1の光学系の内部の光軸7の第1の側に結像される第1の中間像IM1を当該第1の光学系11よりも拡大側の光軸の第2の側に第2の中間像IM2として結像する第1の光学系11と、第2の中間像IM2よりも拡大側3に位置する正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを有する投射光学系を提供する。この投射光学系10の第1の光学系11は、第1の中間像IM1よりも拡大側3に配置され、ズーミングの際に移動する第1の変倍群となる第7のレンズ群G7を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下においては、複数のレンズを含む第1の光学系と、正の屈折力の第1の反射面を含む第2の光学系とを含む投射光学系であって、第2の光学系の第1の反射面が、第1の光学系から出力された光を反射して投影光としてスクリーンに投射する投射光学系に対して、幾つかの条件を開示する。第1の光学系は、縮小側から入射した光により第1の光学系の内部に結像される第1の中間像を第1の光学系よりも拡大側に第2の中間像として結像する屈折光学系(レンズシステム)である。第1の光学系は、第1の中間像よりも拡大側に配置され、ズーミングの際に移動する第1の変倍群を含む。
【0010】
この投射光学系においては、レンズ内中間像(第1の中間像)よりも拡大側のレンズ系で変倍(ズーミング)を行うことで、レンズ内中間像よりも縮小側のレンズ系の移動をする必要が無くなり、または、移動を最小限にすることができる。このため、変倍の前後でのレンズ内中間像の位置および形状が基本的には変化しない。したがって、レンズ内中間像よりも縮小側のレンズ系における、変倍による収差の変動を抑制することが可能となる。このため、変倍によるレンズ内中間像よりも縮小側のレンズ系における収差の変動を基本的には考慮する必要が無くなる。したがって、レンズ内中間像よりも縮小側のレンズ群に、凹面鏡で発生する収差の一部を補正するための収差を予め発生させるように歪んだレンズ内中間像を形成させることが可能となる。すなわち、第2の光学系である凹面鏡により発生する収差に対して、レンズ内中間像よりも拡大側のレンズ系と縮小側のレンズ系とで上記収差の補正を分担することが可能となる。このため、レンズ内中間像(第1の中間像)の拡大側と縮小側とのレンズ系によって変倍と収差補正との役割を完全に分断しなくてもよく、レンズ系全体の構成枚数を少なくすることができる。また、変倍系の構成群を簡素化することが可能となる。
【0011】
この投射光学系の広角端における合成焦点距離fwと、第1の変倍群の焦点距離fz1とが以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.015<fw/fz1<0.125・・・(1)
条件(1)の下限を超える(下回る)と、第1の変倍群のパワーが小さすぎてズーミングのための移動距離が長くなりすぎ、収差補正が難しくなる。条件(1)の上限を超える(上回る)と、第1の変倍群のパワーが大きすぎて、他のレンズ群による収差補正が難しくなる。条件(1)の下限は0.03であってもよく、0.04であってもよい。条件(2)の上限は、0.1であってもよく、0.07であってもよい。
【0012】
また、広角端から望遠端にズーミングする際に第1の変倍群が移動する距離Dz1と、第1の変倍群の焦点距離fz1とが以下の条件(2)を満たしてもよい。
0.02<Dz1/fz1<0.15・・・(2)
条件(2)の下限を超えると、移動距離に対して第1の変倍群のパワーが小さすぎてズーミングの倍率を確保することが難しくなる。条件(2)の上限を超えると、移動距離に対して第1の変倍群のパワーが強すぎて、ズーミングに対する移動量が効きすぎ、収差補正が難しくなるとともに、組み立てなどによる個体差が大きくなり、投射光学系の品質の確保が難しくなる。条件(2)の上限は0.10であってもよく、0.05であってもよい。
【0013】
第1の光学系は、第1の変倍群の拡大側に隣接して配置された正の屈折力の第1の隣接レンズ群を含んでいてもよい。典型的には第1の隣接レンズ群は、第1の光学系の最も拡大側に配置された正の屈折力の第1の末端のレンズ群である。この正の屈折力のレンズ群は、第2の中間像を第1の中間像とは光軸を挟んだ反対側に形成するように光軸に向かって集光する光を出力するように第1の光学系の拡大側、典型的には最も拡大側に配置され、第1の隣接レンズ群の縮小側で、ライトバルブ(光変調器)の有効表示面(第1の像面)において投射光学系の光軸から最も離間した位置から出射した光線である周辺光が光軸を横切るように第1の光学系を構成することが可能となる。周辺光は、第2の光学系からスクリーン(第2の像面)までの投射距離の大きい光線であり、同時に、第2の光学系の第1の反射面の最も曲率の急な面で反射される光線であるため、第1の反射面に入射する光線の変化によって光学性能に影響が発生しやすい光線である。したがって、第1の変倍群は、第1の隣接レンズ群の縮小側に隣接して配置することにより、周辺光の主光線高を低くして変倍による光線への影響を抑制することで、周辺光やライトバルブの有効表示面において投射光学系の光軸から最も近接した位置から出射した光線である近軸光とのバランスをとり、コンパクトな第1の変倍群により近軸光および周辺光を適切に操作してズーミングすることができる。
【0014】
第1の隣接レンズ群は、両面が正の屈折力を備えた両凸の正レンズを含んでもよく、縮小側の凸面で周辺光を光軸との成す角が小さくなるように屈折させ、拡大側の凸面で光線の結像位置を縮小側に近づけて、第2の中間像としての結像位置を光軸に近づけ、結果として第1の反射面の有効径を小型化することが可能となる。また、両凸の正レンズは接合レンズであってもよく、ズーミングのために移動する第1の変倍群により発生する収差を良好に補正しやすい。第1の変倍群は正の屈折力を備え、広角端から望遠端にズーミングする際に、第1の変倍群は、第1の隣接レンズ群との間隔が狭くなるように移動してもよい。また、第1の隣接レンズ群は、ズーミングの際に移動する第2の変倍群であってもよく、第1の変倍群とともに第2の中間像のサイズおよび/または位置を操作するために移動してもよく、第1の変倍群の移動による収差を補正するように移動してもよい。広角端から望遠端にズーミングする際に、第2の変倍群は、第2の光学系との間隔が狭くなるように移動してもよい。
【0015】
第1の光学系は、第1の中間像よりも拡大側で、第1の変倍群の縮小側に隣接して配置され、ズーミングの際に、第1の変倍群と逆方向に移動する第3の変倍群を含んでもよい。第1の変倍群の移動による収差を補正するように移動できる。第1の光学系は、さらに、第1の中間像よりも縮小側に配置され、ズーミングの際に、第1の変倍群と逆方向に移動する第4の変倍群を含んでもよい。第1の中間像の位置あるいは形状をズーミングの際に調整してもよい。
【0016】
広角端から望遠端にズーミングする際に第1の変倍群が移動する距離Dz1と、第4の変倍群が移動する距離Dz4とが以下の条件(3)を満たしてもよい。
0.05<|Dz4/Dz1|<0.20・・・(3)
条件(3)の下限を超えると、第1の変倍群の移動に対する第4の変倍群による有効な補正が得られなくなる。条件(3)の上限を超えると、第1の中間像の縮小側に位置する第4の変倍群の移動量が大きくなり過ぎて、第1の中間像の形状および位置に対する影響が大きくなり、収差補正が難しくなる。条件(3)の下限は0.07であってもよく、上限は0.15であってもよい。
【0017】
第1の光学系は、第1の中間像よりも拡大側に配置され、フォーカシングの際に移動する第1の合焦群を含んでもよい。また、第1の光学系は、第1の中間像よりも縮小側に配置され、フォーカシングの際に移動する第2の合焦群を含んでもよい。広角端において当該投射光学系の焦点距離を近距離から遠距離に調整する際に、第1の合焦群が移動する距離Df1と、第2の合焦群が移動する距離Df2とが以下の条件(4)を満たしてもよい。第2の合焦群は、第1の合焦群と逆方向、例えば、焦点距離を近距離から遠距離に調整する際に、第1の合焦群は縮小側に移動し、第2の合焦群は拡大側に移動してもよい。
0.1<|Df2/Df1|<0.4・・・(4)
条件(4)の下限を超えると、第1の合焦群の移動に対する第2の合焦群による有効な補正が得られなくなる。条件(4)の上限を超えると、第1の中間像の縮小側に位置する第2の合焦群の移動量が大きくなり過ぎて、第1の中間像の形状および位置に対する影響が大きくなり、収差補正が難しくなる。条件(4)の下限は0.2であってもよく、上限は0.3であってもよい。
【0018】
第1の光学系は、最も縮小側に配置された第2の末端のレンズ群を含み、第2の末端のレンズ群は、縮小側が凹面の正の屈折力のメニスカスレンズを含んでもよい。第2の末端のレンズ群を設けることにより、第1の像面との間の距離(バックフォーカス)を調整しやすい。
【0019】
図1に、プロジェクタの一例を示している。プロジェクタ1は、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーンまたは壁面(第2の像面)6へ投射する投射光学系10を含む。ライトバルブ5は、LCD、デジタルミラーデバイス(DMD)あるいは有機ELなどの画像を形成できるものであればよく、単板式であっても、各色の画像をそれぞれ形成する方式であってもよい。ライトバルブ5は発光タイプであってもよく、照明タイプであってもよい。照明タイプの場合は、プロジェクタ1はさらに照明光学系(不図示)を含む。スクリーン6は、壁面やホワイトボードなどであってもよく、プロジェクタ1はフロントプロジェクタであっても、スクリーンを含むリアプロジェクタであってもよい。
【0020】
投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含む。第2の光学系12の反射面M1は、第1の光学系11から出力された光を反射して投影光19としてスクリーン6に投射する。第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像(レンズ内中間像)IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像(レンズ外中間像)IM2として結像する屈折光学系(レンズシステム)である。本例においては、第1の中間像IM1は、光軸7の、図面の上側(第1の側)に結像され、第2の中間像IM2は、第1の中間像IM1に対して光軸7の反対側(図面の下側、第2の側)に結像される。
【0021】
第1の光学系11は、縮小側(入力側)2に配置された、全体として正のパワーの縮小側のレンズ群(第1の屈折光学系)RGと、縮小側のレンズ群RGの拡大側(出力側)3に配置された、全体として正のパワーの拡大側のレンズ群(第2の屈折光学系)MGとを含む。拡大側のレンズ群MGにより、第1の中間像IM1が第1の反射面(ミラー)M1の縮小側2に第2の中間像IM2として結像され、正のパワーのミラーM1は、第2の中間像IM2をスクリーン6に拡大投影する。
【0022】
本例の投射光学系10は、スクリーン6に投影される画像のサイズを可変できる変倍光学系である。縮小側のレンズ群RGは4群構成で、縮小側2から順に配置された、正の屈折力(パワー)で位置が固定された第1のレンズ群(第2の末端のレンズ群)G1と、正の屈折力でフォーカシングの際に移動し、ズーミングの際には移動しない第2のレンズ群(第2の合焦群)G2と、正の屈折力でフォーカシングの際に移動する第3のレンズ群(第4の変倍群)G3と、負の屈折力で位置が固定された第4のレンズ群G4とを含む。拡大側のレンズ群MGは、4群構成で、縮小側2から順番に配置された、正の屈折力でフォーカシングの際に移動し、ズーミングの際は移動しない第5のレンズ群(第1の合焦群)G5と、正の屈折力でズーミングの際に移動する第6のレンズ群(第3の変倍群)G6と、正の屈折力でズーミングの際に移動する第7のレンズ群(第1の変倍群)G7と、正の屈折力で最も拡大側3に配置され、ズーミングの際に移動する第8のレンズ群(第2の変倍群、第1の末端のレンズ群)G8とを含む。
【0023】
図2〜
図5に、投射光学系10の各エレメントのデータを示している。
図2において、Sはレンズの場合の面番号、Riは縮小側2から順に並んだ各エレメント(レンズの場合は各レンズ面)の曲率半径(mm)、diは縮小側2から順に並んだ各エレメントの面の間の距離(間隔、mm)、Diは各エレメントの有効半径(mm)、屈折率Nd(d線)、アッベ数νd(d線)と、各レンズ群G1〜G8の合成焦点距離(mm)とを示している。
図3は、各エレメントの面の中の、非球面の面番号と、非球面データを示している。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、
図2に示した係数Riと
図3に示した係数K、A、B、C、D、およびEを用いて次式で表わされる。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。以下の各実施例においても同様である。
X=(1/Ri)Y
2/[1+{1−(1+K)(1/Ri)
2Y
2}
1/2]
+A3Y
3+A4Y
4+A6Y
6+A8Y
8+A10Y
10+A12Y
12
【0024】
図4は、ズーミングの際に移動する第3のレンズ群G3、第6のレンズ群G6,第7のレンズ群G7、および第8のレンズ群G8の動きを、焦点距離が近距離の際の、広角端(ワイド)、望遠端(テレ)および中間(標準)の各位置における各レンズ群の前後の間隔により示している。
図5は、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2、および第5のレンズ群の動きを、広角端におけるスクリーン6までの焦点距離(ミラーM1からスクリーン6までの距離d39)が近距離(655.8mm)、中距離(966.0mm)および遠距離(1666.0mm)の各位置における各レンズ群の前後の間隔により示している。
【0025】
投射光学系10の第1の光学系(レンズシステム、屈折光学系)11は、縮小側2から、入射側のガラスブロックCGと、縮小側のレンズ群RGと、拡大側のレンズ群MGとを含む。縮小側のレンズ群MGは、第1〜第4のレンズ群G1〜G4を含む。第1のレンズ群G1は、最も縮小側2に位置する末端(第2の末端)のレンズ群であり、全体として正のパワーのレンズ群であり、本例においては拡大側3に凸の正のメニスカスレンズL1の1枚構成である。
【0026】
第2のレンズ群G2は、正のパワーのレンズ群であり、本例においては、8枚のレンズで構成され、縮小側(ライトバルブ側)2より配置された、両凸の正レンズL2と、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL3と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL4と、両凸の正レンズL5と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL6と、両凹の負レンズL7と、両凸の正レンズL8と、開口絞りStと、拡大側3に凸の正のメニスカスレンズL9とを含む。第4、第5および第6のレンズL4〜L6は、第1の接合レンズ(バルサムレンズ)B1を構成し、第7のレンズおよび第8のレンズL7およびl8は、第2の接合レンズB2を構成している。接合レンズB1は、軸上色収差の補正に好適であり、接合レンズB2は、倍率色収差の補正に好適である。これらの接合レンズB1およびB2を含む第2のレンズ群G2は、近距離から遠距離にフォーカシングする際に拡大側3に移動し、色収差を含めた諸収差を良好に補正できる。第2のレンズ群G2は、後述する第5のレンズ群G5を主たる合焦群(第1の合焦群)とした、補正の合焦群(第2の合焦群)であり、フォーカシングの際に条件(4)を満足するように、第5のレンズ群G5と反対側に移動する。
【0027】
第3のレンズ群G3は、正のパワーのレンズ群であり、本例においては、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL10の1枚構成である。第3のレンズ群G3は、後述する第7のレンズ群G7を主たる変倍群(第1の変倍群)とした、補正(補償)の変倍群(第4の変倍群)であり、広角端から望遠端にズーミングする際に条件(3)を満足するように、微小な距離だけ縮小側2に移動する。
【0028】
第4のレンズ群G4は、負のパワーのレンズ群であり、本例においては、3枚のレンズで構成され、縮小側2から順に配置された、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL11と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL12と、両凸の正レンズL13とを含む。第4のレンズ群G4は、第1の中間像IM1の縮小側2に隣接して配置された、像面5aに対して位置が固定されたレンズ群であり、ズーミングおよびフォーカシングの際に移動しないレンズ群である。
【0029】
縮小側のレンズ群RGと第1の中間像IM1を挟んで拡大側3に配置された拡大側のレンズ群MGは、第5〜第8のレンズ群G5〜G8を含む。第5のレンズ群G5は、正のパワーのレンズ群であり、本例においては、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL14の1枚構成である。第5のレンズ群G5は、近距離から遠距離にフォーカシングする際に縮小側2に移動する第1の合焦群である。
【0030】
第6のレンズ群G6は、正のパワーのレンズ群であり、本例においては、3枚のレンズで構成され、縮小側2より、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL15と、両凸の正レンズL16と、拡大側3に凸の正のメニスカスレンズL17とを含む。第6のレンズ群G6は、第7のレンズ群G7を主たる変倍群(第1の変倍群)とした、補正(補償)の変倍群(第3の変倍群)であり、広角端から望遠端にズーミングする際に、第7のレンズ群G7の移動量に対して微小な距離だけ反対側の縮小側2に移動する。
【0031】
第7のレンズ群G7は、正のパワーのレンズ群であり、本例においては、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL18の一枚構成である。第7のレンズ群G7は、広角端から望遠端にズーミングする際に、拡大側3に隣接する第8のレンズ群G8との距離(間隔)が短くなるように、拡大側3に移動する主たる変倍群(第1の変倍群)である。
【0032】
第8のレンズ群G8は、最も拡大側3に位置する末端(第1の末端)のレンズ群で、全体として正のパワーのレンズ群であり、本例においては、3枚のレンズで構成され、縮小側2から、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL19と、両凸の正レンズL20と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL21とを含む。これらのレンズL19、L20およびL21は接合され、全体として両凸の正の屈折力の接合レンズB3を構成している。接合レンズB3は、軸上色収差および倍率色収差の補正に好適である。第8のレンズ群G8は、第7のレンズ群G7を主たる変倍群(第1の変倍群)とした、補正(補償)の変倍群(第2の変倍群)であり、広角端から望遠端にズーミングする際に、第7のレンズ群G7の移動量に対して少ない距離だけ拡大側3に移動する。
【0033】
このように投射光学系10は合計21枚のレンズで構成された、縮小側2から正−正−正−負−正−正−正−正の8群構成の光学系(レンズシステム)である。また、この投射光学系10は、インナーフォーカスタイプのズームレンズであり、第1の中間像IM1よりも拡大側3のレンズ群MGに配置された第7のレンズ群G7が主たる変倍群(第1の変倍群、バリエータ)として移動してズーミングを行う。したがって、レンズ内中間像である第1の中間像IM1の位置あるいは形状(大きさ)をズーミングのために積極的に変化させることはなく、第1の中間像IM1より縮小側2のレンズ群RGを構成するレンズの移動を最小限にすることができる。本例の投射光学系10においては、縮小側のレンズ群RGに、ズーミングの際のコンペンセータとして機能する第3のレンズ群G3と、フォーカシングの際のコンペンセータとして機能する第2のレンズ群G2とが含まれているが、いずれのレンズ群も移動距離を非常に小さく、例えば、条件(3)および(4)の範囲にすることができる。
【0034】
したがって、縮小側のレンズ群(レンズシステム)RGにおける、変倍による収差の変動を抑制することが可能となる。このため、縮小側のレンズ群RGにおける収差の変動を基本的には考慮する必要が無くなり、縮小側のレンズ群RGに、第2の光学系12の凹面鏡M1で発生する収差の一部を補正するための収差を予め発生させるように歪んだ第1の中間像IM1を形成させることが可能となる。すなわち、第2の光学系12の凹面鏡M1により発生する収差に対して、拡大側のレンズ系MGと、縮小側のレンズ系RGとで、その収差補正を分担することが可能となる。このため、投射光学系10を構成するレンズ枚数を低減でき、コンパクトで、高画質の画像を投影できる投射光学系10を提供できる。
【0035】
第1の光学系11は、ズーミングの機能を主として担う、移動距離の大きなバリエータとなる第1の変倍群を、第1の中間像IM1よりも拡大側3に配置された第7のレンズ群G7としてアレンジしている。第1の光学系11においては、レンズ内中間像である第1の中間像IM1と、レンズ外中間像である第2の中間像IM2とが光軸7に対して反対側に結像されるように設計されており、第1の中間像IM1から第2の中間像IM2に至る光束が、第1の中間像IM1の拡大側3で光軸7と交差する。したがって、第1の変倍群である第7のレンズ群G7は、光軸7と交差する近傍の、光軸7の周囲に集められた光束を操作することが可能となり、小型・軽量で精度よく移動しやすいレンズ群でズーミングを行うことが可能となる。第2の中間像に至る近軸光のみならず、第7のレンズ群G7の周辺部分ではなく光軸7に近い部分により、特に光軸7の近傍を通過する周辺光を操作することが可能となる。このため、ズーミングによる周辺光の収差の発生を抑制しやすく、近軸光と周辺光とを同等に制御しやすい。このため、ズーミングが可能で、高画質の画像を投影できるコンパクトな投射光学系10を提供できる。
【0036】
第1の光学系11は、さらに、第1の変倍群である第7のレンズ群G7に対して拡大側3に隣接して(空気間隔のみを開けて)、第1の光学系11の最も拡大側3に正のパワーの第8のレンズ群G8を第1の末端のレンズ群として配置している。第7のレンズ群G7の拡大側3に隣接して配置された正のパワーの第8のレンズ群G8は、第2の中間像IM2の結像群として機能し、第2の中間像IM2を形成する周辺光の少なくとも主光線は光軸7に対して第2の中間像IM2を形成する側のレンズ面を通過することで最終の収差補正などが行われることが多い。したがって、周辺光は、第8のレンズ群G8の縮小側2で光軸7と交差するように設計され、その近傍に第1の変倍群である第7のレンズ群G7を配置することで、コンパクトな設計の第7のレンズ群G7によりズーミングを行うことができる。
【0037】
また、第1の光学系11の最も拡大側3に結像レンズとして機能する正のパワーの第8のレンズ群G8を配置することにより、第1の光学系11の近傍に、比較的小さな第2の中間像IM2を形成できる。このため、第2の中間像IM2を反射して拡大する凹面鏡M1をコンパクトにすることが可能となり、コンパクトで拡大率の大きな投射光学系10を提供できる。
【0038】
さらに、第8のレンズ群G8は、3枚のレンズL19、L20およびL21の接合レンズB3で構成され、接合レンズB3は、両面が正の屈折力を備えた両凸の正レンズとして機能する。したがって、簡易な構成で結像に適したレンズ群を第1の変倍群である第7のレンズ群G7に隣接して配置できる。また、両凸の正レンズB3が負−正−負の3枚のレンズL19〜21の接合なので、簡易な構成で結像の際に色収差を含めて諸収差を補正できる。
【0039】
第1の変倍群である第7のレンズ群G7は正の屈折力を備え、広角端から望遠端にズーミングする際に、隣接する正の屈折力の第8のレンズ群G8との間隔d34が狭くなるように拡大側3へ移動する。これにより、第2の中間像IM2の光軸7上の位置がミラーM1の方向に移動する(近づく)。特に、第2の中間像IM2の周辺の結像位置をミラーM1の方向に近づけることができる。
【0040】
さらに、本例の投射光学系10においては、隣接する第8のレンズ群G8もミラーM1との距離d38が小さくなるように拡大側3へ移動し、第2の変倍群として機能する。第8のレンズ群G8が広角端から望遠端にズーミングする際に移動する距離Dz2は、第7のレンズ群G7の移動量Dz1よりも小さくてよい。第7のレンズ群G7および第8のレンズ群G8をズーミングの際の拡大側3に移動することにより、第7のレンズ群G7の変倍負荷を低減でき、第7のレンズ群G7の正のパワーを小さくできる。このため、ズーミングにより発生する収差を抑制でき、全体としてズーミングによる収差を補正しやすい投射光学系10を提供できる。典型的には、移動量の大きな第1の変倍群である第7のレンズ群G7の焦点距離f7(fz1)を、移動量の小さい第2の変倍群である第8のレンズ群G8の焦点距離f8(fz2)よりも大きくして、パワーを小さく設定し、収差補正が良好な投射光学系10を提供できる。
【0041】
例えば、第2の変倍群である第8のレンズ群G8の移動量Dz2と、第1の変倍群である第7のレンズ群G7の移動量Dz1とは以下の条件(5)を満足してもよい。また、第1の変倍群である第7のレンズ群G7の焦点距離f7(fz1)と、第2の変倍群である第8のレンズ群G8の焦点距離f8(fz2)とは以下の条件(6)を満足してもよい。
0.1<Dz2/Dz1<0.5・・・(5)
0.5<fz1/fz2<0.9・・・(6)
条件(5)の下限は0.2であってもよく、上限は0.4であってもよい。条件(6)の下限は0.6であってもよく、上限は0.8であってもよい。
【0042】
この第1の光学系11は、第1の中間像IM1よりも拡大側3で、第1の変倍群である第7のレンズ群G7の縮小側2に隣接して配置された第6のレンズ群G6が第3の変倍群として、ズーミングの際に、第7のレンズ群G7と逆方向に移動する。ズーミングの際に、第6のレンズ群G6を、主たる変倍群である第7のレンズ群G7と逆方向に移動することにより、第7のレンズ群G7の移動により発生する収差をさらに良好に補正できる。
【0043】
この第1の光学系11は、さらに、第1の中間像IM1よりも縮小側2に、ズーミングの際に、主たる変倍群である第7のレンズ群G7と逆方向に移動する第3のレンズ群G3を第4の変倍群として含む。ただし、第3のレンズ群G3の移動量Dz4は、第7のレンズ群G7の移動量Dz1に対して条件(3)を満足する範囲で小さく設定されている。このため、主たる変倍群である第7のレンズ群G7の移動により発生する収差を第3のレンズ群G3の移動によりさらに良好に補正するとともに、第1の中間像IM1から縮小側2の、縮小側のレンズ群RGの性能にはほとんど影響を与えず、ズーミングの全領域において、縮小側のレンズ群RGの主たる機能である、拡大側のレンズ群MGと協働して投射光学系10全系の収差を補正する機能が発揮できるようにしている。
【0044】
すなわち、全系(第1の光学系11および第2の光学系12を含めた系)の焦点距離が近距離における縮小側のレンズ群RGの広角端における焦点距離frwと、望遠端における焦点距離frtとはほとんど変化せずに、以下の条件(7)を満たす。
0.95<frw/frt<1.0・・・(7)
条件(7)の下限は0.97であってもよい。
【0045】
第1の光学系11は、第1の中間像IM1よりも拡大側3にフォーカシングの際に主たる合焦群(第1の合焦群)として機能する第5のレンズ群G5を含む。ズーミングと同様に、フォーカシングの際の移動量の大きな合焦用のレンズ群G5を第1の中間像IM1より拡大側3に配置することにより、第1の中間像IM1よりも縮小側2のレンズ群RGに、フォーカシングにより第1の中間像IM1の位置や形状を補正する機能よりも、拡大側のレンズ群MGと協働して投射光学系10全系の収差を補正する機能を主に発揮させることができる。このため、第1の中間像IM1よりも拡大側3のレンズ群MGに、ズーミングおよびフォーカシングの際に移動するレンズが集中するが、収差補正の負荷は低減でき、レンズ群MG全体の構成を簡易にすることができる。拡大側のレンズ群MGの構成を簡易でコンパクトにすることにより、ミラーM1で反射して出力される投影光19と第1の光学系11との干渉を抑制でき、コンパクトで拡大率の大きな投射光学系10を提供できる。
【0046】
また、第1の光学系11は、第1の中間像IM1よりも縮小側2に、フォーカシングの際に、主たる合焦群である第5のレンズ群G5と逆方向に移動する第2のレンズ群G2を第2の合焦群として含む。ただし、第2のレンズ群G2の移動量Df2は、第5のレンズ群G5の移動量Df1に対して条件(4)を満足する範囲で小さく設定されている。このため、主たる合焦群である第5のレンズ群G5の移動により発生する収差を第2のレンズ群G2の移動によりさらに良好に補正するとともに、第1の中間像IM1から縮小側2のレンズ群RGの性能にはほとんど影響を与えず、ズーミングの全領域において、縮小側のレンズ群RGの主たる機能である、拡大側のレンズ群MGと協働して投射光学系10全系の収差を補正する機能が発揮できるようにしている。
【0047】
特に、第1の光学系11においては、第1の中間像IM1より縮小側2のレンズ群RGの中の最も拡大側3、すなわち、第1の中間像IM1の縮小側2に隣接する、負の屈折力の第4のレンズ群G4を、ズーミングおよびフォーカシングの際に移動しない、固定されたレンズ群として配置できる。したがって、第4のレンズ群G4に、台形収差などの諸収差の補正(実際には拡大側で発生する諸収差をキャンセルする諸収差の発生を含む)を含めた機能を負担させやすい。
【0048】
また、第1の光学系11の最も縮小側2に配置された第2の末端のレンズ群(第1のレンズ群)G1は、ライトバルブ5に面した縮小側2の面が凹の正のメニスカスレンズL1で構成されている。最も縮小側2に、負のパワーの面をライトバルブ5に向けたレンズL1を配置することにより、ライトバルブ5からの光束を光軸7に対して平行化しやすく、ガラスブロックCGなどを挿入するために要する十分な長さのバックフォーカスBFを確保できる。
【0049】
図6に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)における歪曲収差を示している。
図7、
図8および
図9に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)の各像高における横収差図を示している。なお、これらの図には、波長650nm(短破線)と、波長550nm(実線)と、波長460nm(長破線)とを示している。以下の各実施例においても同様である。
【0050】
投射光学系10のレンズ群G1〜G8の焦点距離fg1〜fg8およびミラーM1の焦点距離は
図2に示し、その他の主なパラメータは以下の通りである。
倍率(広角端、近距離における倍率):119.5
F値:2.5
最大画角(半画角):71.3°
変倍比:1.05
全系の合成焦点距離(広角端、fw):5.361mm
全系の合成焦点距離(望遠端、ft):5.629mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(広角端、frw):30.102mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(望遠端、frt):30.847mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(広角端、fmw):89.161mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(望遠端、fmt):88.865mm
第7のレンズ群G7のズーミングの際の移動量(Dz1):3.366mm
第8のレンズ群G8のズーミングの際の移動量(Dz2):0.817mm
第6のレンズ群G6のズーミングの際の移動量(Dz3):−0.221mm
第3のレンズ群G3のズーミングの際の移動量(Dz4):−0.462mm
第5のレンズ群G5のフォーカシングの際の移動量(Df1):−0.604mm
第2のレンズ群G2のフォーカシングの際の移動量(Df2):0.167mm
条件(1)(fw/fz1(fw/fg7)):0.048
条件(2)(Dz1/fz1(Dz1/fg7)):0.030
条件(3)(|Dz4/Dz1|):0.14
条件(4)(|Df2/Df1|):0.28
条件(5)(Dz2/Dz1):0.24
条件(6)(fz1/fz2):0.67
条件(7)(frw/frt):0.976
【0051】
この投射光学系10においては、上述した条件(1)〜(7)のすべてを満たし、第1の中間像IM1の拡大側3に配置されたレンズ群により、ズーミングおよびフォーカシングを主に行うことができる。したがって、第1の中間像IM1の縮小側2に配置されたレンズ群RGでは、第1の中間像IM1の位置や形状をズーミングおよびフォーカシングのために変更することよりも、主に、第1の中間像IM1の拡大側のレンズ群MGと協調して、最終の第2の画面であるスクリーン6に投射される像を、より鮮明に形成することに集中することができる。このため、ズーミングが可能で、コンパクトでありながら、収差補正が良好にされた像を投影できる投射光学系10、および投射光学系10を備えたプロジェクタ1を提供できる。
【0052】
図10に、プロジェクタの他の例を示している。このプロジェクタ1も、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーン6または壁面(第2の像面)へ投射する投射光学系10を含む。投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含み、第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2を第2の像面へ映像(最終的な画像)として投影する。
【0053】
第1の光学系11は、上記の例と同様に、21枚のレンズで構成され、第1の中間像IM1に対して縮小側(入力側)2に配置されたレンズ群RGと、拡大側(出力側)3に配置されたレンズ群MGとを含む。縮小側のレンズ群RGは、縮小側2から配置された正−正−正−負の第1〜第4のレンズ群G1〜G4を含む。拡大側のレンズ群MGは、縮小側2から配置された正−正−正−正の第5〜第8のレンズ群G5〜G8を含む。
【0054】
図11に、投射光学系10の各エレメントのデータを示し、
図12に非球面のデータを示し、
図13にズーミングの際に移動するレンズ群の前後の間隔を示し、
図14に、フォーカシングの際に移動するレンズ群の前後の間隔を示している。第1の光学系11の第1〜第9のレンズ群G1〜G9の各群の基本的なレンズ構成は、第6のレンズ群G6がズーミングおよびフォーカシングにおいて動かない、固定されたレンズ群であること以外は、
図1に示した投射光学系10の第1の光学系11と共通する。したがって、この第1の光学系11は、第1の中間像IM1の拡大側3に、ズーミングの際に主として移動する第1の変倍群(第7のレンズ群)G7と、フォーカシングの際に主として移動する第1の合焦群(第5のレンズ群)G5とを含む。
【0055】
図15に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)における歪曲収差を示している。
図16、
図17および
図18に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)の各像高における横収差図を示している。
【0056】
投射光学系10のレンズ群G1〜G8の焦点距離fg1〜fg8およびミラーM1の焦点距離は
図11に示し、その他の主なパラメータは以下の通りである。
倍率(広角端、近距離における倍率):119.5
F値:2.5
最大画角(半画角):71.3°
変倍比:1.05
全系の合成焦点距離(広角端、fw):5.358mm
全系の合成焦点距離(望遠端、ft):5.626mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(広角端、frw):30.084mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(望遠端、frt):30.793mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(広角端、fmw):89.275mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(望遠端、fmt):88.999mm
第7のレンズ群G7のズーミングの際の移動量(Dz1):3.164mm
第8のレンズ群G8のズーミングの際の移動量(Dz2):1.019mm
第3のレンズ群G3のズーミングの際の移動量(Dz4):−0.428mm
第5のレンズ群G5のフォーカシングの際の移動量(Df1):−0.591mm
第2のレンズ群G2のフォーカシングの際の移動量(Df2):0.157mm
条件(1)(fw/fz1(fw/fg7)):0.045
条件(2)(Dz1/fz1(Dz1/fg7)):0.026
条件(3)(|Dz4/Dz1|):0.135
条件(4)(|Df2/Df1|):0.27
条件(5)(Dz2/Dz1):0.32
条件(6)(fz1/fz2):0.70
条件(7)(frw/frt):0.977
【0057】
この投射光学系10においては、上述した条件(1)〜(7)のすべてを満たし、第1の中間像IM1の拡大側3に配置されたレンズ群により、ズーミングおよびフォーカシングを主に行うことができる。したがって、第1の中間像IM1の縮小側2に配置されたレンズ群RGでは、第1の中間像IM1の位置や形状をズーミングおよびフォーカシングのために変更することよりも、主に、第1の中間像IM1の拡大側のレンズ群MGと協調して、最終の第2の画面であるスクリーン6に投射される像を、より鮮明に形成することに集中することができる。このため、ズーミングが可能で、コンパクトでありながら、収差補正が良好にされた像を投影できる投射光学系10、および投射光学系10を備えたプロジェクタ1を提供できる。
【0058】
図19に、プロジェクタの他の例を示している。このプロジェクタ1も、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーン6または壁面(第2の像面)へ投射する投射光学系10を含む。投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含み、第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2を第2の像面へ映像(最終的な画像)として投影する。
【0059】
第1の光学系11は、上記の例と同様に、21枚のレンズで構成され、第1の中間像IM1に対して縮小側(入力側)2に配置されたレンズ群RGと、拡大側(出力側)3に配置されたレンズ群MGとを含む。縮小側のレンズ群RGは、縮小側2から配置された正−正−正−負の第1〜第4のレンズ群G1〜G4を含む。拡大側のレンズ群MGは、縮小側2から配置された正−正−正−正の第5〜第8のレンズ群G5〜G8を含む。
【0060】
図20に、投射光学系10の各エレメントのデータを示し、
図21に非球面のデータを示し、
図22にズーミングの際に移動するレンズ群の前後の間隔を示し、
図23に、フォーカシングの際に移動するレンズ群の前後の間隔を示している。第1の光学系11の第1〜第9のレンズ群G1〜G9の各群の基本的なレンズ構成は、主たる変倍群である第7のレンズ群G7が両凸の正レンズL18の1枚構成となり、第8のレンズ群G8および第6のレンズ群G6がズーミングおよびフォーカシングにおいて動かない、固定されたレンズ群であること以外は、
図1に示した投射光学系10の第1の光学系11と共通する。したがって、この第1の光学系11は、第1の中間像IM1の拡大側3に、ズーミングの際に主として移動する第1の変倍群(第7のレンズ群)G7と、フォーカシングの際に主として移動する第1の合焦群(第5のレンズ群)G5とを含む。
【0061】
図24に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)における歪曲収差を示している。
図25、
図26および
図27に、広角端(ワイド)、標準状態(ノーマル)および望遠端(テレ)の各像高における横収差図を示している。
【0062】
投射光学系10のレンズ群G1〜G8の焦点距離fg1〜fg8およびミラーM1の焦点距離は
図20に示し、その他の主なパラメータは以下の通りである。
倍率(広角端、近距離における倍率):119.4
F値:2.5
最大画角(半画角):71.3°
変倍比:1.03
全系の合成焦点距離(広角端、fw):5.358mm
全系の合成焦点距離(望遠端、ft):5.518mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(広角端、frw):32.624mm
縮小側のレンズ群RGの合成焦点距離(望遠端、frt):33.190mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(広角端、fmw):92.834mm
拡大側のレンズ群MGの合成焦点距離(望遠端、fmt):92.702mm
第7のレンズ群G7のズーミングの際の移動量(Dz1):2.161mm
第3のレンズ群G3のズーミングの際の移動量(Dz4):−0.171mm
第5のレンズ群G5のフォーカシングの際の移動量(Df1):−0.601mm
第2のレンズ群G2のフォーカシングの際の移動量(Df2):0.145mm
条件(1)(fw/fz1(fw/fg7)):0.061
条件(2)(Dz1/fz1(Dz1/fg7)):0.025
条件(3)(|Dz4/Dz1|):0.079
条件(4)(|Df2/Df1|):0.24
条件(7)(frw/frt):0.983
【0063】
この投射光学系10においては、上述した条件(1)〜(4)および(7)を満たし、第1の中間像IM1の拡大側3に配置されたレンズ群により、ズーミングおよびフォーカシングを主に行うことができる。一方、第8のレンズ群G8がズーミングの際に固定されているので、主たる変倍群の第7のレンズ群G7のパワーが強くなり、ズーミングの際の移動距離が小さくなる。いずれの実施例においても、第1の中間像IM1の縮小側2に配置されたレンズ群RGと、第1の中間像IM1の拡大側のレンズ群MGとが協調して、最終の第2の画面であるスクリーン6に投射される像を、より鮮明に形成することが可能となる。このため、ズーミングが可能で、コンパクトでありながら、収差補正が良好にされた像を投影できる投射光学系10、および投射光学系10を備えたプロジェクタ1を提供できる。