【解決手段】偏光板2を含む画像表示部材4と、硬化樹脂層6と、光透過性部材5とをこの順に備える画像表示装置1における硬化樹脂層6に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、硬化後の光硬化性樹脂組成物は、厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
上記(メタ)アクリレート樹脂は、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの少なくとも1種を含有する、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物。
上記単官能モノマーは、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー及びヘテロ環含有(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を含有する、請求項2〜4のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<光硬化性樹脂組成物>
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、硬化後の厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上であり、好ましくは500g/m
2/day以上であり、より好ましくは600g/m
2/day以上であり、さらに好ましくは700g/m
2/day以上である。また、光硬化性樹脂組成物の硬化後の透湿度の上限は、特に限定されないが、例えば1000g/m
2/day以下とすることができる。ここで、透湿度とは、JISZ0208に準拠して、40℃、相対湿度90%の雰囲気で測定した透湿度をいう。このような構成の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、高温環境下で、例えば
図1に示す画像表示装置1における偏光板2の変色を抑制できる。
【0013】
光硬化性樹脂組成物の硬化物は、例えば、大気中で光照射により光硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させて得られた硬化物全体の平均的な反応率(硬化率)が90%以上(好ましくは97%以上)となるように硬化させたものをいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物全体の反応率は、例えば厚さ0.3mmに成膜した硬化物について測定した反応率を意味する。
【0014】
ここで、反応率とは、光照射前の光硬化性樹脂組成物層中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する、光照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)で定義される数値である。反応率の数値が大きい程、反応がより進行していることを示す。具体的には、反応率は、光照射前の光硬化性樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
−1の吸収ピーク高さ(X)と、光照射後の光硬化性樹脂組成物層(硬化樹脂層)のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
−1の吸収ピーク高さ(Y)とを、下記式に代入することにより算出することができる。
反応率(%)=[(X−Y)/X]×100
【0015】
図1は、画像表示装置の一例を示す断面図である。
図2は、画像表示装置に用いられる偏光板の一例を示す断面図である。本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物を、例えば
図1に示す画像表示装置1における硬化樹脂層6(
図1参照)に用いることにより、硬化樹脂層6の透湿度を高くすることができる。これにより、高温環境下で偏光板2から発生した水分が、硬化樹脂層6を介して画像表示装置1の外部に排出されやすくなり、偏光板2(例えば保護層9や保護層10)から発生した水分が偏光子8に接触することを抑制できると考えられる。したがって、高温環境下で画像表示装置1における偏光板2の変色を抑制できる。
【0016】
以下、光硬化性樹脂組成物の構成例について説明する。光硬化性樹脂組成物は、上述した硬化後の透湿度の条件を満たす組成であれば特に限定されない。光硬化性樹脂組成物は、硬化物の透湿度を高くするとともに、相溶性が良好な成分からなることが好ましい。光硬化性樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリレート樹脂と、単官能モノマーと、光重合開始剤と、可塑剤と、酸化防止剤とを含有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートの両方を包含する。
【0017】
[(メタ)アクリレート樹脂]
(メタ)アクリレート樹脂は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する、光硬化性の樹脂(重合体)である。(メタ)アクリレート樹脂は、相溶性の観点から、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。(メタ)アクリレート樹脂は、ポリマーであってもよいし、オリゴマーであってもよい。
【0018】
ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、主鎖にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート樹脂であり、具体例として、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。市販品としては、例えば、アートレジンUN−6200、UN−6202、UN−6300、UN−6301(以上、根上工業社製)が挙げられる。
【0019】
ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、主鎖にポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート樹脂であり、具体例として、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。市販品としては、例えば、アートレジンUN−7600、UN−7700(以上、根上工業社製)が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量は、例えば、1000〜100000が好ましく、5000〜40000がより好ましく、10000〜25000がさらに好ましい。
【0021】
光硬化性樹脂組成物中、(メタ)アクリレート樹脂の含有量は、5〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。特に、(メタ)アクリレート樹脂の含有量の合計に対して、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の含有量の合計が、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の(メタ)アクリレート樹脂を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0022】
[単官能モノマー]
単官能モノマーは、例えば光硬化性の(メタ)アクリレートモノマーである。また、単官能モノマーは、光硬化性樹脂組成物の硬化物の透湿度を高くする観点、及び他の成分との相溶性の観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー及びヘテロ環含有(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
ヘテロ環含有(メタ)アクリレートモノマー中におけるヘテロ環は、ヘテロ原子として酸素原子又は窒素原子の少なくとも1種を含むことが好ましい。ヘテロ環は、3〜8員環であることが好ましく、3〜6員環であることがより好ましい。ヘテロ環を構成する炭素原子数は、2〜6が好ましく、3〜5がより好ましい。ヘテロ環は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。ヘテロ環が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基などが挙げられる。
【0025】
ヘテロ環含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、モルホリン環、フラン環、ジオキソラン環からなる群より選ばれるヘテロ環を含有する(メタ)アクリレートが好ましい。具体例としては、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
光硬化性樹脂組成物中、単官能モノマーの含有量は、10〜40質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。特に、単官能モノマーの含有量の合計に対する、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー及びヘテロ環含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量の合計が、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。単官能モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の単官能モノマーを併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0027】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、アルキルフェノン系光重合開始剤、及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の少なくとも1種を含有することがより好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2一ヒドロキシ−2−メチル−プロピロニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア127、BASF社製)等を用いることができる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュアTPO、BASF社製)等を用いることができる。その他、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を用いることもできる。
【0028】
光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性成分(上述した(メタ)アクリレート樹脂、及び単官能モノマー)の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。このような範囲にすることにより、光照射時に硬化不足となるのをより効果的に防ぐとともに、開裂によるアウトガスの増加をより効果的に防ぐことができる。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0029】
[可塑剤]
可塑剤は、例えば光照射によりそれ自身が光硬化をせず、光硬化後の硬化樹脂層に柔軟性を与えるものである。可塑剤は、他の成分との相溶性の観点から、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0030】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の開始剤に、アルキレンオキシドを付加重合することにより得られる一般的なポリエーテルポリオールを用いることができる。アルキレンオキシドは、特に限定されず、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテル系ポリオールの市販品としては、例えばADEKA社製の「アデカポリエーテル」が挙げられる。より具体的には、ポリプロピレングリコールである「Pシリーズ」、ビスフェノールAのポリプロピレングリコール付加物である「BPXシリーズ」、グリセリンのポリプロピレングリコール付加物である「Gシリーズ」、トリメチロールプロパンのポリプロピレングリコール付加物である「Tシリーズ」、エチレンジアミンのポリプロピレングリコール付加物である「EDPシリーズ」、ソルビトールのポリプロピレングリコール付加物である「SPシリーズ」、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムコポリマーである「PRシリーズ」、プロピレングリコールにプロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーを付加させた「CMシリーズ」等が挙げられる。
【0032】
ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、例えば500〜8000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。
【0033】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばジカルボン酸とジオールとを縮合重合することにより得られる一般的なポリエステルポリオールを用いることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の直鎖構造のジオール;1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
【0034】
ポリエステル系ポリオールの市販品としては、「P−1010」、「P−2010」、「P−3010」、「P−2050」(以上、クラレ社製)、「OD−X−102」、「OD−X−668」、「OD−X−2068」(以上、DIC社製)、「NS-2400」、「YT−101」、「F7−67」、「#50」、「F1212−29」、「YG−108」、「V14−90」、「Y65−55」(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0035】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、例えば500〜8000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。
【0036】
光硬化性樹脂組成物中、可塑剤の含有量は、15〜50質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。特に、可塑剤の含有量の合計に対する、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールの含有量の合計が、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の可塑剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0037】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、例えば光硬化性樹脂組成物の変色防止の目的で用いられる。酸化防止剤は、特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物、チオエーテル構造を有する化合物等が挙げられ、ヒンダードフェノール構造を有する化合物が好ましい。
【0038】
酸化防止剤の一例であるヒンダードフェノール構造を有する化合物の市販品としては、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX565」、「IRGAMOD295」(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0039】
光硬化性樹脂組成物中、酸化防止剤の含有量は、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の酸化防止剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0040】
[その他の成分]
光硬化性樹脂組成物は、高温環境下で画像表示装置における偏光板の変色を抑制する効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば粘着付与剤等が挙げられる。
【0041】
光硬化性樹脂組成物は、常温で液状であることが好ましい。例えば、光硬化性樹脂組成物は、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01〜100Pa・sを示すことが好ましい。
【0042】
光硬化性樹脂組成物は、可視光領域の透過率が90%以上であることが好ましい。これにより、硬化樹脂層を形成したときに、画像表示部材に形成された画像の視認性をより良好にすることができる。
【0043】
光硬化性樹脂組成物の屈折率は、画像表示部材や光透過性部材の屈折率とほぼ同等であることが好ましく、例えば1.45以上1.55以下であることが好ましい。これにより、画像表示部材からの映像光の輝度やコントラストを高め、視認性を向上させることができる。
【0044】
光硬化性樹脂組成物は、上述した各成分を、公知の混合手法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0045】
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、硬化後の厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上であることにより、高温環境下で、画像表示装置1における偏光板2の変色を抑制できる。
【0046】
<画像表示装置>
本実施の形態に係る画像表示装置1は、例えば
図1に示すように、偏光板2を含む画像表示部材4と、硬化樹脂層6と、光透過性部材5とこの順に備える。硬化樹脂層6は、厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上である。このように透湿度が高い硬化樹脂層6を用いることにより、高温環境下で偏光板2の変色を抑制できる。
【0047】
画像表示部材4は、例えば、画像表示セル3の視認側表面に偏光板2が形成された画像表示パネルである。画像表示部材4は、例えば液晶表示パネル、有機EL表示パネル、タッチパネル等である。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0048】
画像表示セル3は、例えば液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、例えば反射型液晶セル、透過型液晶セル等が挙げられる。
【0049】
偏光板2は、例えば
図2に示すように、偏光子8と、偏光子8の一方の面に設けられた保護層9と、偏光子8の他方の面に設けられた保護層10とを備える積層体である。偏光板2は、偏光子8と保護層9との間、及び偏光子8と保護層10との間に、図示しない接着層をさらに備えていてもよい。また、偏光板2は、偏光子8と保護層9、10以外の他の光学層(例えば位相差板)をさらに備えていてもよい。
【0050】
偏光子8としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂に、二色性物質(例えばヨウ素化合物)による染色処理と、延伸処理とを施すことによって得られる、周知の構成の偏光板を用いることができる。
【0051】
保護層9、10としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
光透過性部材5は、画像表示部材4に形成された画像が視認可能となるような光透過性を有するものであればよい。例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面にハードコート処理、反射防止処理などが施されていてもよい。光透過性部材5の厚さや弾性率などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。また、光透過部材5は、上記のような比較的構成の簡単な部材だけでなく、タッチパネルモジュールのような各種シート又はフィルム材が積層されたものも含まれる。
【0053】
光透過性部材5の周縁部には、画像のコントラスト向上のために遮光層7が設けられていてもよい。遮光層7は、例えば、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。遮光層7の厚さは、通常5〜100μmである。
【0054】
硬化樹脂層6は、上述した光硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化樹脂層6は、厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上である。硬化樹脂層6の透湿度の好ましい範囲は、上述した光硬化性樹脂組成物の硬化物の透湿度の範囲と同様である。
【0055】
硬化樹脂層6は、可視光領域の透過率が90%以上であることが好ましい。このような範囲を満たすことにより、画像表示部材4に形成された画像の視認性をより良好にすることができる。硬化樹脂層6の屈折率は、画像表示部材4や光透過性部材5の屈折率とほぼ同等であることが好ましい。硬化樹脂層6の屈折率は、例えば1.45以上1.55以下であることが好ましい。これにより、画像表示部材4からの映像光の輝度やコントラストを高め、視認性を向上させることができる。硬化樹脂層6の厚さは、例えば25〜200μm程度とすることができる。
【0056】
本実施の形態に係る画像表示装置1は、偏光板2を含む画像表示部材4と、硬化樹脂層6と、光透過性部材5とこの順に備え、硬化樹脂層6の厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上である。このように、画像表示装置1は、透湿度が高い硬化樹脂層6を備えることにより、高温環境下で偏光板2の変色を抑制できる。
【0057】
<画像表示装置の製造方法>
以下、画像表示装置の製造方法の具体例である第1の実施の形態、及び第2の実施の形態について説明する。なお、図面において同じ図番は同一の構成要素を表すものとする。
【0058】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る製造方法は、光硬化性樹脂組成物を光透過性部材の表面に塗布する工程(A)と、画像表示部材と光透過性部材とを光硬化性樹脂組成物を介して貼合せる工程(B)と、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程(C)とを有する。
【0059】
[工程(A)]
工程(A)では、例えば
図3に示すように、光透過性部材5の遮光層7が形成された側の表面に、光硬化性樹脂組成物11を塗布する。光硬化性樹脂組成物11は、上述した光硬化性樹脂組成物と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0060】
[工程(B)]
工程(B)では、例えば
図4に示すように、画像表示部材4の偏光板2側に、光硬化性樹脂組成物11を介して光透過性部材5を貼合せる。これにより、偏光板2と光透過性部材5との間に光硬化性樹脂組成物層12が形成される。
【0061】
[工程(C)]
工程(C)では、例えば
図5に示すように、光硬化性樹脂組成物層12に対し光(好ましくは紫外線)を照射して光硬化性樹脂組成物層12を硬化させる。これにより、
図1に示すように硬化樹脂層6を介して画像表示部材4と光透過性部材5とが積層した画像表示装置1が得られる。
【0062】
光照射は、硬化樹脂層6の反応率(硬化率)が90%以上となるように行うことが好ましく、95%以上となるように行うことがより好ましい。このような範囲を満たすことにより、画像表示部材4に形成された画像の視認性を良好にすることができる。硬化樹脂層6の反応率は、上述した反応率と同義である。
【0063】
光照射に用いる光源の種類、出力、照度、積算光量などは、特に制限されず、例えば、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0064】
なお、第1の実施の形態では、光透過性部材5の表面に光硬化性樹脂組成物11を塗布するようにしたが、この例に限定されるものではない。例えば、工程(A)において、画像表示部材4の表面に光硬化性樹脂組成物11を塗布してもよい。
【0065】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る製造方法は、光硬化性樹脂組成物を光透過性部材の表面に塗布する工程(AA)と、光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行う工程(BB)と、画像表示部材と光透過性部材とを仮硬化樹脂層を介して貼合せる工程(CC)と、仮硬化樹脂層を本硬化させる工程(DD)とを有する。
【0066】
[工程(AA)]
工程(AA)では、例えば
図6に示すように、光透過性部材5の表面に、光硬化性樹脂組成物11を塗布し、光硬化性樹脂組成物層12を形成する。具体的には、遮光層7の表面も含め、光透過性部材5の遮光層7が形成された側の表面全面に、光硬化性樹脂組成物11を平坦になるように塗布し、段差が生じないようにすることが好ましい。光硬化性樹脂組成物層12の厚さは、例えば、遮光層7の厚さの1.2〜50倍の厚さが好ましく、2〜30倍の厚さがより好ましい。光硬化性樹脂組成物11の塗布は、必要な厚さが得られるように行えばよく、1回で行ってもよいし、複数回で行ってもよい。
【0067】
[工程(BB)]
工程(BB)では、例えば
図7に示すように、工程(AA)で形成された光硬化性樹脂組成物層12に光(好ましくは紫外線)を照射して仮硬化を行い、
図8に示すように仮硬化樹脂層13を形成する。
【0068】
光硬化性樹脂組成物層12の仮硬化は、仮硬化樹脂層13の反応率が、10〜80%となるように行うことが好ましく、40〜80%となるように行うことがより好ましい。光照射の条件は、仮硬化樹脂層13の反応率が好ましくは10〜80%となるように硬化させることができる限り、特に制限されない。
【0069】
[工程(CC)]
[工程(CC)では、例えば
図9に示すように、画像表示部材4に、光透過性部材5を仮硬化樹脂層13を介して貼合せる。貼合せは、例えば、公知の圧着装置を用いて、10〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0070】
[工程(DD)]
工程(DD)では、例えば
図10に示すように、仮硬化樹脂層13に対し光(好ましくは紫外線)を照射して本硬化させる。これにより、硬化樹脂層6を介して画像表示部材4と光透過性部材5とが積層した画像表示装置1(
図1参照)が得られる。
【0071】
仮硬化樹脂層13の本硬化は、硬化樹脂層6の反応率が90%以上となるように行うことが好ましく、95%以上となるように行うことがより好ましい。本硬化の条件は、硬化樹脂層6の反応率が90%以上となるように硬化させることができる限り、特に制限されない。
【0072】
なお、第2の実施の形態では、光透過性部材5の遮光層7が形成された側の表面に光硬化性樹脂組成物11を塗布する例を説明したが、画像表示部材4の表面に光硬化性樹脂組成物11を塗布してもよい。
【0073】
上述した画像表示装置の製造方法では、遮光層7を有する光透過性部材5を用いた場合について説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、遮光層7を有しない光透過性部材を用いて画像表示装置を作製してもよい。
【0074】
また、画像表示装置の製造方法として、いわゆるダムフィルプロセスを採用してもよい。ダムフィルプロセスは、例えば、ダム材を用いて画像表示部材の表面にフィル材の塗布領域を形成し、この塗布領域にフィル材を塗布して画像表示部材と光透過性部材とをフィル材を介して貼合せ、フィル材に光を照射して硬化樹脂層を形成する方法である。
【実施例】
【0075】
以下、本技術の実施例について説明する。
【0076】
[(メタ)アクリレート樹脂]
アートレジンUN−6202:ポリエーテル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー、根上工業社製
アートレジンUN−7700:ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー、根上工業社製
TE−2000:ポリブタジエン骨格ウレタンメタクリレートオリゴマー、日本曹達社製
【0077】
[単官能モノマー]
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製
ACMO:アクリロイルモルホリン、KJケミカルズ社製
ビスコート#150:テトラヒドロフルフリルアクリレート、大阪有機化学工業社製
MEDOL−10:(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、大阪有機化学工業社製
ニューフロンティアPGA:フェニルグリシジルエーテルアクリレート、第一工業製薬社製
SR506:イソボルニルアクリレート、アルケマ社製
【0078】
[可塑剤]
アデカポリエーテルP−3000:ポリエーテルポリオール、ADEKA社製
クラレポリオールP−3010:ポリエステルポリオール、クラレ社製
Krasol LBH−P3000:ポリブタジエンポリオール、クレイバレー社製
【0079】
[酸化防止剤]
Irganox1135:3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、BASF社製
【0080】
[光重合開始剤]
Irgacure184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製
【0081】
[光硬化性樹脂組成物の調製]
下記表1に示す配合量(質量部)で各成分を均一に混合して実施例、及び比較例の光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0082】
[偏光板変色試験]
図11に示すように、厚さ80μmのTAC層14と、厚さ30μmのPVA層15と、厚さ80μmのTAC層16と、厚さ25μmのアクリル系粘着剤層17とをこの順に備える偏光板18(株式会社ポラテクノ社製)を用意した。
【0083】
図12に示すように、偏光板18のアクリル系粘着剤層17を介して、厚さ1.1mmのガラス板19を貼合せた。また、偏光板18が貼り合わされたガラス板19上に光硬化性樹脂組成物20を滴下し、滴下した光硬化性樹脂組成物20の上に、厚さ1.1mmのガラス板21を載置し、ガラス板21の自重でガラス板21を貼り付けた。これによりガラス接合体22を得た。
【0084】
紫外線照射装置を用いて、積算光量が5000mJ/cm
2となるように、ガラス接合体22のガラス板21側から紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物20を硬化させて硬化樹脂層23を形成し、
図13に示す試験用の画像表示装置24を得た。ガラス板19とガラス板21との間に形成された硬化樹脂層23の最大厚さは約0.3mmであった。また、偏光板18とガラス板21との間に形成された硬化樹脂層23の厚さは0.1mmであった。硬化樹脂層23の反応率は90%以上であった。
【0085】
画像表示装置24を100℃の環境下に240時間放置した。240時間放置後の画像表示装置24における偏光板18の変色の有無を目視で確認した。偏光板18の変色なしと判断した場合を「〇」と評価し、偏光板18の変色ありと判断した場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0086】
[透湿度試験]
JISZ0208の透湿度試験(透湿カップ法)に準拠して硬化樹脂層の透湿度を測定した。上述した光硬化性樹脂組成物に対して、積算光量が5000mJ/cm
2となるように紫外線を照射して厚さ0.3mmの硬化樹脂層を準備した。この硬化樹脂層25を、
図14に示すように、塩化カルシウム26を入れたカップ27にセットし、40℃、相対湿度90%の恒温機に入れ、24時間放置した後の塩化カルシウム26の重量増加を測定することで、硬化樹脂層25の透湿度を求めた。
【0087】
なお、下記表中、「*」は、光硬化性樹脂組成物が非相溶で各種成分が分離した結果、硬化樹脂層を形成できず、各評価を行うことができなかったことを表す。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例で用いた光硬化性樹脂組成物は、硬化後の厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day以上であったため、高温環境下での偏光板の変色を抑制できることが分かった。
【0090】
一方、比較例1、2、6で用いた光硬化性樹脂組成物は、硬化後の厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で400g/m
2/day未満であったため、高温環境下での偏光板の変色を抑制することが困難であることが分かった。なお、比較例3−5で用いた光硬化性樹脂組成物は、非相溶のため、硬化樹脂層を形成することができず、硬化物の透湿度、及び偏光板の変色について評価ができなかった。