【課題】スタイラス検出処理によって導出されたスタイラスの複数の位置の中から、スタイラスを持つ手やその反対側の手を経由してセンサに到来したバースト信号の成分によって導出された位置を取り除く。
【解決手段】それぞれ第1の方向に延在するM本の第1の電極、及び、それぞれ前記第1の方向と異なる第2の方向に延在するN本の第2の電極を含んでなるマトリクス電極に接続されたセンサコントローラを、セクタスキャンステップにおいて導出された1以上の位置座標のそれぞれについて、指タッチ検出ステップにおいて検出された1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定するステップS94と、ステップS94において含まれると判定した位置座標を無効化するステップS96と、を実行するように構成する。
それぞれ第1の方向に延在するM本の第1の電極、及び、それぞれ前記第1の方向と異なる第2の方向に延在するN本の第2の電極を含んでなるマトリクス電極に接続されたセンサコントローラであって、
前記M本の第1の電極のそれぞれに対して所定の信号を供給し、前記N本の第2の電極のそれぞれで検出された該所定の信号により、それぞれ指によってタッチされているエリアを示す1以上の指タッチエリアを検出する指タッチ検出ステップと、
前記M本の第1の電極の少なくとも一部及び前記N本の第2の電極の少なくとも一部を用いて、未検出のスタイラスを検出するとともに該スタイラスの位置座標を導出する全範囲スキャンステップと、
前記全範囲スキャンステップで用いた前記第1の電極の数より少ない数の前記第1の電極と、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第2の電極の数より少ない数の前記第2の電極とを用いて、既検出のスタイラスの位置座標を導出するセクタスキャンステップと、
前記セクタスキャンステップにおいて導出された1以上の位置座標のそれぞれについて、前記指タッチ検出ステップにおいて検出された前記1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて含まれると判定した位置座標を無効化する無効化ステップと、
を実行するように構成されたセンサコントローラ。
前記指タッチ検出ステップによって検出された前記1以上の指タッチエリアについて、それぞれの面積の大きさに基づくパームリジェクション処理によって無効化するパームリジェクションステップ、をさらに含み、
前記判定ステップは、前記パームリジェクションステップを実行する前に、前記セクタスキャンステップにおいて導出された1以上の位置座標のそれぞれについて、前記指タッチ検出ステップにおいて検出された前記1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定する処理を行う、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
前記無効化ステップによる無効化は、前記判定ステップにおいて含まれると判定した位置座標を、無効エリアであることを示す情報とともにシステムコントローラに対して出力する処理である、
請求項1又は2に記載のセンサコントローラ。
前記セクタスキャンステップは、前記既検出のスタイラスによって送信されたバースト信号の、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第1の電極の数より少ない数の前記第1の電極と、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第2の電極の数より少ない数の前記第2の電極とのそれぞれにおける検出強度に基づいて、前記既検出のスタイラスの位置座標を導出する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のセンサコントローラ。
それぞれ第1の方向に延在するM本の第1の電極、及び、それぞれ前記第1の方向と異なる第2の方向に延在するN本の第2の電極を含んでなるマトリクス電極を有するコンピュータによって実行される方法であって、
前記コンピュータが、前記M本の第1の電極のそれぞれに対して所定の信号を供給し、前記N本の第2の電極のそれぞれで検出された該所定の信号により、それぞれ指によってタッチされているエリアを示す1以上の指タッチエリアを検出する指タッチ検出ステップと、
前記コンピュータが、前記M本の第1の電極の少なくとも一部及び前記N本の第2の電極の少なくとも一部を用いて、未検出のスタイラスを検出するとともに該スタイラスの位置座標を導出する全範囲スキャンステップと、
前記コンピュータが、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第1の電極の数より少ない数の前記第1の電極と、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第2の電極の数より少ない数の前記第2の電極とを用いて、既検出のスタイラスの位置座標を導出するセクタスキャンステップと、
前記コンピュータが、前記セクタスキャンステップにおいて導出された1以上の位置座標のそれぞれについて、前記指タッチ検出ステップにおいて検出された前記1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記コンピュータが、前記判定ステップにおいて含まれると判定した位置座標を無効化する無効化ステップと、
を含む方法。
それぞれ第1の方向に延在するM本の第1の電極、及び、それぞれ前記第1の方向と異なる第2の方向に延在するN本の第2の電極を含んでなるマトリクス電極と、該マトリクス電極に接続された制御部とを有する電子機器であって、
前記制御部は、
前記M本の第1の電極のそれぞれに対して所定の信号を供給し、前記N本の第2の電極のそれぞれで検出された該所定の信号により、それぞれ指によってタッチされているエリアを示す1以上の指タッチエリアを検出し、
前記M本の第1の電極の少なくとも一部及び前記N本の第2の電極の少なくとも一部を用いて、未検出のスタイラスを検出するとともに該スタイラスの位置座標を導出する全範囲スキャンを実行し、
前記全範囲スキャンで用いた前記第1の電極の数より少ない数の前記第1の電極と、前記全範囲スキャンステップで用いた前記第2の電極の数より少ない数の前記第2の電極とを用いて、既検出のスタイラスの位置座標を導出するセクタスキャンを実行し、
前記セクタスキャンにおいて導出された1以上の位置座標のそれぞれについて、前記1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定し、
前記判定ステップにおいて含まれると判定した位置座標を無効化する、
電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による電子機器3の構成を示す図である。電子機器3は、例えばタブレット端末のようなタッチ面を有するコンピュータであり、同図に示すように、センサ30及びセンサコントローラ31を備えて構成される。
【0016】
センサ30は、タッチ面の内側に配置されたM本の線状電極30X(第1の電極)及びN本(N<M)の線状電極30Y(第2の電極)を含んでなるマトリクス電極によって構成される。具体的な例では、M=72、N=46である。M本の線状電極30Xは、タッチ面に平行な第1の方向に等間隔で延在するように配置される。また、N本の線状電極30Yは、タッチ面に平行かつ第1の方向と直交する第2の方向に等間隔で延在するように配置される。各線状電極30X及び各線状電極30Yは、個別にセンサコントローラ31に接続されている。
【0017】
センサコントローラ31は、センサ30を利用して、指Fによるタッチの検出(タッチ面内における指Fの位置座標の導出を含む)と、スタイラス2の検出(タッチ面内におけるスタイラス2の位置座標の導出を含む)とを時分割で行う制御部である。
【0018】
図1(a)は、指Fによるタッチを検出する場合の電子機器3の動作を示している。同図に示すように、指Fによるタッチを検出するときのセンサコントローラ31は、複数の線状電極30Yのそれぞれに対して順次所定の信号(以下、「指検出用信号」という)を供給するとともに、複数の線状電極30Xそれぞれの電位を順次走査することによって、線状電極30Yとの交点を通って各線状電極30Xに到来した指検出用信号の検出を行う。こうして検出される指検出用信号の振幅は、該指検出用信号が通過した交点の近傍に指Fが接近している場合に、接近していない場合に比べて小さくなる。指Fと線状電極30X,30Yとの間に生ずる容量結合を通じて、線状電極30X,30Y上を流れる電流の一部が人体方向に流れ出るからである。センサコントローラ31は、このような振幅の変化を検出することにより、指Fによるタッチを検出する。
【0019】
図1(b)は、スタイラス2を検出する場合の電子機器3の基本的な動作を示している。同図に示すように、スタイラス2を検出するときのセンサコントローラ31は、基本的な動作としては、複数の線状電極30X及び複数の線状電極30Yのそれぞれを順次受信電極として用いて、スタイラス2が送信する信号(以下、「ダウンリンク信号」という)の検出動作を行う。そして、その検出結果に基づいて、スタイラス2の検出を行う。なお、実際の動作では、線状電極30X,30Yの一部のみを用いてスタイラス2の検出を行う場合があるが、その点については後述する。
【0020】
センサコントローラ31がスタイラス2を検出するためには、ダウンリンク信号をセンサコントローラ31が受信できる程度にまで、スタイラス2が電子機器3のタッチ面に接近している必要がある。図示したセンシング範囲SRは、ダウンリンク信号をセンサコントローラ31が受信できる範囲を模式的に示したものである。センサコントローラ31は、スタイラス2がこのセンシング範囲SRに入った場合に、ダウンリンク信号を受信し、それによってスタイラス2を検出できるようになる。センシング範囲SRの外から中に移動するというスタイラス2の動きを、以下では「ペンダウン」と称する。ペンダウンは通常、スタイラス2を電子機器3のタッチ面に近づけるというユーザの操作によって実行される。また、センシング範囲SRに入ったものの、未だスタイラス2がタッチ面に接触していない状態を「ホバー中」と称する。スタイラス2がペンダウンを経てホバー中の状態になった場合、センサコントローラ31はダウンリンク信号を検出することによってスタイラス2を検出しようとするが、ホバー中においてはスタイラス2とタッチ面の間に一定の距離が存在し、その距離によっては十分なS/N比を確保することが困難となるため、結果としてスタイラス2の検出に失敗する場合がある。また、スタイラス2がセンシング範囲SRに入っていたとしても、スタイラス2がバースト信号ではなくデータ信号を送信している期間においては、センサコントローラ31はスタイラス2の検出に失敗する場合がある。本発明は、このような失敗を回避できるようにすることを目的の一つとするものである。
【0021】
ここで、スタイラス2は、センシング範囲SRの外にいる場合であっても、センサコントローラ31がスタイラス2に向けて送信する信号(以下、「アップリンク信号」という)を受信できる場合がある。これは、一部のアップリンク信号(後述するペン起動信号やロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号など)については、タッチ面の全面(全線状電極30X及び全線状電極30Yの一方又は両方)を用いて送信されるためである。図示したアップリンク検出高さAHは、スタイラス2がこれらのアップリンク信号を受信できる高さ(タッチ面からの距離)の限界を示している。アップリンク検出高さAHは、センシング範囲SRの上限よりも高い位置(タッチ面から遠い位置)となる。
【0022】
図2は、本実施の形態による電子機器3の構成を示す図である。センサ30を構成する複数の線状電極30X及び複数の線状電極30Yは、スタイラス2及び指Fと容量結合するように構成される。指Fがセンサ30に接近した場合、この容量結合を介して、センサコントローラ31から線状電極30Yに流れ込む電流の一部が指Fに吸い取られる。これにより、上記したように線状電極30Xで検出される指検出用信号の振幅が小さくなるので、センサコントローラ31による指Fによるタッチの検出が可能になる。また、センサ30は、上記容量結合を介して、スタイラス2との間で双方向に信号を送受信可能に構成される。
【0023】
センサコントローラ31は、
図2に示すように、送信部60、選択部40、受信部50、ロジック部70、及びMCU80を有して構成される。
【0024】
送信部60は、指Fによるタッチを検出するタイミングでは指検出用信号を生成し、スタイラス2を検出するタイミングではアップリンク信号を生成する回路である。アップリンク信号には、スタイラス2に対してセンサコントローラ31の存在を知らせるためのペン起動信号と、スタイラス2に対する指示(コマンド)を示すコマンド信号とが含まれる。
【0025】
図2の送信部60には、アップリンク信号の生成に関する機能ブロックのみを詳細に示している。この機能ブロックには、パターン供給部61、スイッチ62、拡散処理部63、符号列保持部64、及び送信ガード部65が含まれる。なお、このうち特にパターン供給部61に関して、本実施の形態では送信部60内に含まれるものとして説明するが、MCU80内に含まれることとしてもよい。
【0026】
ペン起動信号は、所定の検出パターンc1の繰り返しと、末尾に配置される所定の区切りパターンSTPとによって構成される。
【0027】
検出パターンc1は、スタイラス2がセンサコントローラ31の存在を検出するために用いられるシンボルの値のパターンであり、事前に(スタイラス2がセンサコントローラ31を検出する前に)スタイラス2に既知にされている。シンボルは、送信処理においては変調に用いる情報の単位(送信信号が表現する情報の単位)であり、受信処理においては受信信号である1シンボルを復調して得られる情報の単位である。シンボルの値は、ビット列に変換される値(以下、「ビット列対応値」と称する)と、シンボルを受信したスタイラス2によってビット列に変換されない値(以下、「ビット列非対応値」と称する)とを含むことができる。具体的な例では、検出パターンc1は、2種類のビット列非対応値「P」「M」の結合からなるパターン「PM」により構成される。
【0028】
区切りパターンSTPは、検出パターンc1の繰り返し期間の終了をスタイラス2に通知するためのシンボルの値のパターンであり、検出パターンc1の繰り返し中に現れないパターンによって構成される。区切りパターンSTPも、事前に(スタイラス2がセンサコントローラ31を検出する前に)スタイラス2に既知にされている。一例を挙げると、上記のように検出パターンc1を2つのビット列非対応値「P」「M」の結合「PM」により構成する場合、区切りパターンSTPは、ビット列非対応値「P」を2回連続させてなるパターン「PP」により構成することができる。区切りパターンSTPと検出パターンc1との構成を逆にして、区切りパターンを「PM」により構成して検出パターンc1を「PP」により構成してもよい。
【0029】
パターン供給部61は、検出パターンc1及び区切りパターンSTPを保持しており、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t1の指示に従ってこれらを所定の順序で出力するよう構成される。具体的には、所定の連続送信期間の間、検出パターンc1を連続して繰り返し出力するとともに、連続送信期間の終了直後に、区切りパターンSTPを出力するよう構成される。これにより、ペン起動信号の送信が実現される。なお、区切りパターンSTPについては、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号(後述)の先頭で出力することとしてもよい。
【0030】
スイッチ62は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t2に基づいてパターン供給部61及びMCU80のいずれか一方を選択し、選択した一方の出力を拡散処理部63に供給する機能を有する。スイッチ62がパターン供給部61を選択した場合、拡散処理部63には、パターン供給部61から検出パターンc1又は区切りパターンSTPが供給される。一方、スイッチ62がMCU80を選択した場合、拡散処理部63には、MCU80から制御情報c2が供給される。
【0031】
制御情報c2は、スタイラス2に対する指示(コマンド)を示す情報であり、MCU80によって生成される。上述したコマンド信号は、この制御情報c2によって構成される。制御情報c2は可変長のビット列に対応づけられるシンボルの値(例えば0〜15)を含み、スタイラス2との間でその値が事前に共有されていない点で、検出パターンc1や区切りパターンSTPと異なっている。
【0032】
符号列保持部64は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t3に基づき、自己相関特性を有する所定チップ長の拡散符号PNを生成して保持する機能を有する。符号列保持部64が保持している拡散符号PNは、拡散処理部63に供給される。
【0033】
拡散処理部63は、スイッチ62を介して供給されるシンボルの値(検出パターンc1、区切りパターンSTP、又は制御情報c2)に基づいて符号列保持部64によって保持される拡散符号PNを変調することにより、所定チップ長の送信チップ列を得る機能を有する。拡散処理部63は、取得した送信チップ列を送信ガード部65に供給するよう構成される。
【0034】
送信ガード部65は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t4に基づき、アップリンク信号の送信期間とダウンリンク信号の受信期間との間に、送信動作と受信動作を切り替えるために必要となるガード期間(送信と受信の両方を行わない期間)を挿入する機能を有する。
【0035】
受信部50は、ロジック部70の制御信号ctrl_rに基づいて、送信部60が送信した指検出用信号、又は、スタイラス2が送信したダウンリンク信号を受信するための回路である。具体的には、増幅回路51、検波回路52、及び、アナログデジタル(AD)変換器53を含んで構成される。
【0036】
増幅回路51は、選択部40から供給される信号(指検出用信号又はダウンリンク信号)を増幅して出力する。検波回路52は、増幅回路51の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器53は、検波回路52から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器53が出力するデジタル信号は、MCU80に供給される。
【0037】
選択部40は、スイッチ44x,44yと、導体選択回路41x,41yとを含んで構成される。
【0038】
スイッチ44x,44yはそれぞれ、共通端子とT端子及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成された1回路2接点のスイッチ素子である。スイッチ44xの共通端子は導体選択回路41xに接続され、T端子は送信部60の出力端に接続され、R端子は受信部50の入力端に接続される。また、スイッチ44yの共通端子は導体選択回路41yに接続され、T端子は送信部60の出力端に接続され、R端子は受信部50の入力端に接続される。
【0039】
導体選択回路41xは、M本の線状電極30Xを選択的にスイッチ44xの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路41xは、M本の線状電極30Xの一部又は全部を同時にスイッチ44xの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0040】
導体選択回路41yは、N本の線状電極30Yを選択的にスイッチ44yの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路41yも、N本の線状電極30Yの一部又は全部を同時にスイッチ44yの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0041】
選択部40には、ロジック部70から4つの制御信号sTRx,sTRy,selX,selYが供給される。具体的には、制御信号sTRxはスイッチ44xに、制御信号sTRyはスイッチ44yに、制御信号selXは導体選択回路41xに、制御信号selYは導体選択回路41yにそれぞれ供給される。ロジック部70は、これら制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御することにより、指検出用信号の送信及び受信と、ペン起動信号及びコマンド信号を含むアップリンク信号の送信と、ダウンリンク信号の受信とを実現する。ロジック部70による選択部40の制御については、後ほどより詳しく説明する。
【0042】
ロジック部70及びMCU80は、送信部60、受信部50、及び選択部40を制御することにより、センサコントローラ31の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、MCU80は、内部にROMおよびRAMを有し、所定のプログラムに基づき動作するマイクロプロセッサである。一方、ロジック部70は、MCU80の制御に基づき、上述した各制御信号を出力するよう構成される。MCU80はまた、AD変換器53から供給されるデジタル信号に基づいて指F又はスタイラス2の位置を示す座標データx,y等を導出し、電子機器3のシステムコントローラに対して出力する処理と、AD変換器53から供給されるデジタル信号がデータ信号を示している場合には、そのデジタル信号により表されるデータResを取得し、電子機器3のシステムコントローラに対して出力する処理とを行うよう構成される。
【0043】
以下、ロジック部70による選択部40の制御について、具体的に説明する。
【0044】
まず指検出用信号の送信及び受信を行うときのロジック部70は、N本の線状電極30Yが順次送信部60の出力端に接続され、M本の線状電極30Xが順次受信部50の入力端に接続されることとなるよう、制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御する。これにより、
図1にも示したように、N本の線状電極30Yのそれぞれに対して順次指検出用信号を供給すること、及び、線状電極30Yとの交点を通って各線状電極30Xに到来した指検出用信号を受信部50により検出することが可能になるので、指Fによるタッチの検出が実現される。
【0045】
アップリンク信号の送信及びダウンリンク信号の受信を行うときのロジック部70は、スタイラス2の検出状態及びダウンリンク信号の種類によって異なる処理を行う。以下、ダウンリンク信号の種類と、スタイラス2とセンサコントローラ31の間における信号送受信のシーケンスとを初めに説明し、その後、アップリンク信号の送信及びダウンリンク信号の受信を行うときを行うときのロジック部70の動作について、詳しく説明する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態によるスタイラス2が送信するダウンリンク信号の種類を示す図である。同図に示すように、ダウンリンク信号には、ロングバースト信号、バースト信号、及びデータ信号が含まれる。ロングバースト信号は、スタイラス2とセンサコントローラ31との間で予め既知とされた所定パターンの信号である所定波形の信号を、所定の時間T1(第1の時間)にわたって連続送信してなる信号である。バースト信号は、上記所定波形の信号を、時間T1より短い所定の時間T2(第2の時間)にわたって連続送信してなる信号である。データ信号は、上記所定波形の信号がデータにより変調されてなるデータ信号であり、時間T2と時間T1の差T1−T2に相当する時間内に、バースト信号に続けて送信される。なお、バースト信号の先頭には、バースト信号との区切りを示すための所定のギャップ信号(図示せず)が挿入される。スタイラス2が送信するダウンリンク信号の種類は、センサコントローラ31が送信するコマンド信号による指示に従って選択される。
【0047】
図4〜
図6は、スタイラス2とセンサコントローラ31の間における信号送受信のシーケンスを示す図であり、
図4は、スタイラス2がアップリンク検出高さAHより上方にある場合を、
図5は、スタイラス2がセンシング範囲SRの内側にあり、かつ、センサコントローラ31がスタイラス2の位置を未だ特定していない段階を、
図6は、スタイラス2がセンシング範囲SRの内側にあり、かつ、センサコントローラ31がスタイラス2の位置を特定した後をそれぞれ示している。以下、それぞれの場合について順に説明する。
【0048】
<スタイラス2がアップリンク検出高さAHより上方にある場合>
図4(a)はセンサコントローラ31によるペン起動信号の送信時を、
図4(b)はセンサコントローラ31がロングバースト信号の送信を要求した場合をそれぞれ示している。
【0049】
センサコントローラ31は、まず初めに
図4(a)に示すように、時刻t0から時刻t1までの時間T(=t1−t0)にわたり、ペン起動信号の送信を行う。この送信は、センサコントローラ31がスタイラス2をまだ検出していないときに実行される。ペン起動信号は、上述したように、検出パターンc1の繰り返しと末尾の区切りパターンSTPとを含む信号である。スタイラス2は、検出パターンc1を構成するシンボル(上述した例では「P」及び「M」)の検出動作を間欠的に行うことによって検出パターンc1の検出動作を間欠的に行うが、自身がアップリンク検出高さAHより上方にある場合には、この検出動作によっても検出パターンc1を検出することはできない。したがって、スタイラス2は、検出パターンc1の検出動作をただ繰り返すことになる。
【0050】
センサコントローラ31は、ペン起動信号の送信に引き続き、
図4(b)に示すように、時刻t1以後の時刻t2でコマンド信号(
図4〜
図6では「CMD」と記す)の送信を開始する。コマンド信号の送信に要する時間は、上述した時間Tより短いT0である。まだスタイラス2を検出していない段階では、センサコントローラ31はロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を送信する。しかし、アップリンク検出高さAHより上方にあるスタイラス2はこのコマンド信号を受信することもできないので、コマンド信号に応じてロングバースト信号を送信することもなく、ただ検出パターンc1の検出動作を繰り返す。
【0051】
センサコントローラ31は、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を送信した後、ロングバースト信号の検出動作を行う。この検出動作は、後述する全範囲スキャンの前半に相当し、N本の線状電極30Yを順次使用して実行される。全範囲スキャンの詳細については、後述する。ここでは、スタイラス2がロングバースト信号の送信を行わないことから、当然、センサコントローラ31によってロングバースト信号が検出されることはない。ロングバースト信号の検出動作として使用可能な時間は、時間Tと時間T0の差分に相当する時間T1(=T−T0)であるが、N本の線状電極30Yを順次使用してロングバースト信号の検出動作を行う場合、時間T1が経過する時刻t4(=t2+T)より前の時刻t3でロングバースト信号の検出動作が一旦完了する。そこで、この検出動作の間にロングバースト信号を検出しなかった場合のセンサコントローラ31は、時刻t3から時刻t4の間、スリープ状態となる。これにより、センサコントローラ31の消費電力が低減される。時刻t4の後には、ペン起動信号の送信が繰り返される。
【0052】
<スタイラス2がセンシング範囲SRの内側にあり、かつ、センサコントローラ31がスタイラス2の位置を未だ特定していない段階>
図5(a)はセンサコントローラ31によるペン起動信号の送信時を、
図5(b)はスタイラス2が送信したロングバースト信号をセンサコントローラ31が線状電極30Yを用いて受信する場合を、
図5(c)はスタイラス2が送信したロングバースト信号をセンサコントローラ31が線状電極30Xを用いて受信する場合をそれぞれ示している。
【0053】
図5(a)に示すようにペンダウン操作(時刻t6)がなされると、スタイラス2は、その後に行う検出パターンc1の検出動作(時刻t7)により、検出パターンc1を検出できるようになる。こうして検出パターンc1を検出したスタイラス2は、区切りパターンSTPが検出されるまで検出動作を継続する。そして区切りパターンSTPが検出されると、その検出時刻に基づいてセンサコントローラ31と同期する。この同期は、具体的には後述する送受信スケジュールの作成によって行われる。
【0054】
なお、
図5(a)には、ペン起動信号の送信が開始された時刻t5からペン起動信号の送信が終了した時刻t8(=t5+T)の間の時刻t6でペンダウン操作がなされ、時刻t8に至る前の時刻t7でスタイラス2が検出パターンc1を検出した例を示しているが、例えばセンサコントローラ31がロングバースト信号の検出動作を行っている場合にペンダウン操作がなされた場合(例えば
図5(b)に示す時刻t6')であっても、少しスタイラス2による検出パターンc1の検出タイミングが遅れるだけで、同様の処理が実行される。
【0055】
続いて
図5(b)に示すように、センサコントローラ31が時刻t8以後の時刻t9でロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号の送信を開始すると、スタイラス2はこのコマンド信号を受信し、時刻t10(=t9+T)までの時間T1にわたってロングバースト信号の連続送信を行う。センサコントローラ31は、こうして送信されるロングバースト信号を検出することにより、スタイラス2の検出を行う。
【0056】
具体的には、まず
図5(b)に示すように、N本の線状電極30Yを順次使用して、ロングバースト信号の検出動作を行う(後述する全範囲スキャンの前半)。このとき、いずれか1本以上の線状電極30Yでロングバースト信号が検出されることになるので、センサコントローラ31は、各線状電極30Yにおけるロングバースト信号の検出強度を記憶する。次いでセンサコントローラ31は、
図5(c)に示すように、時刻t10以後の時刻t11でロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号の送信を再度開始し、送信終了とともにロングバースト信号の検出動作を再度行う。この検出動作は、時刻t12(=t11+T)まで、M本の線状電極30Xを順次使用して実施される(後述する全範囲スキャンの後半)。この検出動作により、いずれか1本以上の線状電極30Xでロングバースト信号が検出されることになるので、センサコントローラ31は、各線状電極30Xにおけるロングバースト信号の検出強度を記憶する。そして、先に記憶した各線状電極30Yにおけるロングバースト信号の検出強度と、今回記憶した各線状電極30Xにおけるロングバースト信号の検出強度とに基づき、タッチ面上におけるスタイラス2の位置座標を導出する。
【0057】
<スタイラス2がセンシング範囲SRの内側にあり、かつ、センサコントローラ31がスタイラス2の位置を特定した後>
図6は、スタイラス2によるバースト信号及びデータ信号の送信時を示している。同図に示すように、スタイラス2の位置を特定したセンサコントローラ31は、その後の時刻t13で、データの送信指示を示すコマンド信号の送信を開始する。これを受けたスタイラス2は、まず時間T2にわたってバースト信号を連続送信する。センサコントローラ31は、このバースト信号を検出するとともに、検出したバースト信号に基づき、スタイラス2の位置座標の導出を行う。バースト信号の検出動作は、M本の線状電極30X及びN本の線状電極30Yのうち、直前に導出されたスタイラス2の位置座標によってスタイラス2の近くにあることが示されるもののみを順次使用して実行される(後述するセクタスキャン)。スタイラス2は、バースト信号に続けて、指示されたデータを含むデータ信号を送信する。センサコントローラ31は、このデータ信号を受信してデコードすることにより、スタイラス2が送信したデータを取得する。データ信号の受信は、直前に導出されたスタイラス2の位置座標に対応する1本の線状電極30X又は線状電極30Yのみを使用して実行される。
【0058】
図2に戻り、スタイラス2の検出及びスタイラス2との双方向通信を行うときのロジック部70の動作について、詳細に説明する。
【0059】
ペン起動信号及びロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号の送信を行うとき(
図4(a)(b)、
図5(a)(b)(c))のロジック部70は、M本の線状電極30Xのすべて又はN本の線状電極30Yのすべて或いはその両方を同時に使用するよう、選択部40を制御する。具体的には、送信部60の出力端がM本の線状電極30X及びN本の線状電極30Yの一方又は両方に同時に接続されることとなるよう、制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御する。これにより、ペン起動信号及びロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号のそれぞれがタッチ面の全体が送信されることになるので、スタイラス2は、
図1に示したセンシング範囲SR内のどこにいても、これらの信号を受信可能となる。
【0060】
まだスタイラス2を検出していない段階でロングバースト信号を受信するとき(
図4(b)、
図5(b))のロジック部70は、
図4(b)及び
図5(b)にも示すように、N本の線状電極30Yを順次使用するよう選択部40を制御する。具体的には、N本の線状電極30Yが順次受信部50の入力端に接続されることとなるよう、制御信号sTRy,selYを用いて選択部40を制御する。これによりセンサコントローラ31は、スタイラス2が
図1に示したセンシング範囲SR内のどこにいても、スタイラス2が送信したロングバースト信号を受信し、それによってスタイラス2を検出することが可能になる。
【0061】
図7(a)は、この場合におけるセンサコントローラ31の動作を説明する図である。同図に示すように、この場合のセンサコントローラ31は、N本の線状電極30Yを順次スキャンすることになる。この段階でM本の線状電極30Xをスキャンしないのは、N本の線状電極30Yのみを用いてもセンサ30の表面の全体をスキャンすることが可能であることに加え、電極1本あたりのスキャン時間を長くするためである。
【0062】
ロングバースト信号の受信によってスタイラス2を検出した後、スタイラス2の位置座標を未だ導出していない段階でロングバースト信号を受信するとき(
図5(c))のロジック部70は、
図5(c)にも示すように、M本の線状電極30Xを順次使用するよう選択部40を制御する。具体的には、M本の線状電極30Xが順次受信部50の入力端に接続されることとなるよう、制御信号sTRx,selXを用いて選択部40を制御する。センサコントローラ31は、この制御の結果と、先に実施したN本の線状電極30Yによるロングバースト信号の検出結果とに基づき、上述したようにして、タッチ面上におけるスタイラス2の位置座標を導出する。
【0063】
図7(b)は、この場合におけるセンサコントローラ31の動作を説明する図である。同図に示すように、この場合のセンサコントローラ31は、M本の線状電極30Xを順次スキャンすることになる。本明細書では、
図7(a)に示したN本の線状電極30Yを順次使用するスキャン(前半)と、
図7(b)に示すM本の線状電極30Xを順次使用するスキャン(後半)とを合わせて「全範囲スキャン」(第1のスキャン)と称する。
【0064】
スタイラス2の位置座標を導出した後の段階でコマンド信号の送信を行うとき(
図6)のロジック部70は、M本の線状電極30X及びN本の線状電極30Yのうちスタイラス2の近くにあるもののみを使用するよう、選択部40を制御する。具体的には、例えばスタイラス2がj+5番目の線状電極30Xとi+5番目の線状電極30Yの交点に位置しているとすると、例えばそこから両側に5本ずつの範囲、すなわち、j番目〜j+10番目の線状電極30Xとi番目〜i+10番目の線状電極30Yとが送信部60の出力端に同時に接続されることとなるよう、制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御する。これにより、スタイラス2の近くにある線状電極のみを用いてコマンド信号を送信することができるので、コマンド信号の送信にかかる消費電力を削減することが可能になる。また、タッチ面に置かれた手の平等にコマンド信号が供給されると、スタイラス2に供給されている接地電位が上昇し、その結果としてスタイラス2によるアップリンク信号の検出精度が低下する可能性があるが、上記のようにスタイラス2の近くにある線状電極のみを用いてコマンド信号を送信することで、手の平等にコマンド信号が供給される可能性が低下するので、スタイラス2によるアップリンク信号の検出精度の低下を防ぐことが可能になる。
【0065】
スタイラス2の位置座標を導出した後、ロングバースト信号でない通常のバースト信号の受信を行うとき(
図6)のロジック部70は、M本の線状電極30X及びN本の線状電極30Yのうちスタイラス2の近くにあるもののみを順次使用するよう、選択部40を制御する。具体的には、例えばスタイラス2がj+5番目の線状電極30Xとi+5番目の線状電極30Yの交点に位置しているとすると、例えば
図6に示すようにそこから両側に5本ずつの範囲、すなわち、j番目〜j+10番目の線状電極30Xとi番目〜i+10番目の線状電極30Yとが受信部50の入力端に順次接続されることとなるよう、制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御する。これにより、線状電極1本当たりの受信時間を長くすることができるので、より確実にバースト信号を受信することが可能になる。
【0066】
図7(c)は、この場合におけるセンサコントローラ31の動作を説明する図である。この例でも、スタイラス2はj+5番目の線状電極30Xとi+5番目の線状電極30Yの交点に位置しているとしている。この例によるセンサコントローラ31は、M×N本の線状電極のうちj番目〜j+10番目までの11本の線状電極30X及びi番目〜i+10番目までの11本の線状電極30Yのみを順次スキャンし、その結果に基づいてスタイラス2の位置座標を導出する。以下、このようにM本の線状電極30Xの一部とN本の線状電極30Yの一部の両方を用い、一度導出したスタイラス2の位置座標を再導出(更新)するスキャンを「セクタスキャン」(第2のスキャン)と称する。
【0067】
データ信号を受信するとき(
図6)のロジック部70は、直前のバースト信号によって導出されたスタイラス2の位置に対応する1本の線状電極30X又は線状電極30Yのみを使用するよう、選択部40を制御する。具体的には、その1本の線状電極30X又は線状電極30Yが受信部50の入力端に接続されることとなるよう、制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部40を制御する。これにより、データ信号の送信時間(=T1−T2)を、スタイラス2からセンサコントローラ31にデータを送るためにフルに活用することが可能になる。
【0068】
以上、スタイラス2の検出及びスタイラス2との双方向通信を行うときのロジック部70の動作について説明した。
【0069】
図8は、本実施の形態によるスタイラス2の機能ブロックを示すブロック図である。同図に示すように、スタイラス2は、電極21、筆圧検出センサ23、及び信号処理部24を有して構成される。
【0070】
電極21は、スタイラス2の芯体の先端近傍に設けられる導電性部材であり、ダウンリンク信号を送信するためのアンテナの役割を果たすとともに、センサコントローラ31から結合容量を介して送信されるアップリンク信号を受信するためのアンテナとしての役割も果たす。
【0071】
筆圧検出センサ23は、スタイラス2の芯体の先端に加えられる圧力(筆圧)を検出するための圧力センサである。
【0072】
信号処理部24は、電極21を介してセンサコントローラ31からアップリンク信号を受信し、その内容に応じた処理を行うとともに、センサコントローラ31に対して送信するダウンリンク信号を生成し、電極21を介してセンサコントローラ31に向けて送信する機能を有する。具体的には、機能的に切替部76、受信部71、送信部75、及び制御部90を含んで構成される。以下、これらの機能ブロックのそれぞれについて、順に説明する。
【0073】
切替部76は、共通端子とT端子及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成された1回路2接点のスイッチ素子である。切替部76の共通端子は電極21に接続され、T端子は送信部75の出力端に接続され、R端子は受信部71の入力端に接続される。切替部76の状態は、制御部90からの制御信号SWCによって制御される。制御部90は、センサコントローラ31からのアップリンク信号を受信する場合、R端子と共通端子とが接続されるよう、制御信号SWCによって切替部76を制御する。また、センサコントローラ31に対してダウンリンク信号を送信する場合、T端子と共通端子とが接続されるよう、制御信号SWCによって切替部76を制御する。制御部90は、初期状態、すなわちスタイラス2が上述した検出パターンc1を検出するまでの間においては、切替部76をR端子と共通端子が接続された状態に固定したうえで、スタイラス2の消費電力を削減するためにスリープ状態となる。
【0074】
受信部71は、切替部76から供給される信号(電極21に到来した信号)の受信と、受信した信号に含まれるシンボルの値のデコードを行う回路であり、波形再生部71a及び相関演算器71bを含み構成される。受信部71は、このデコードにより、上述した検出パターンc1、区切りパターンSTP、及び制御情報c2のそれぞれを検出可能に構成される。受信部71は、スタイラス2の消費電力を削減するため、検出パターンc1を検出するまでの間、間欠的にのみ受信動作を行う。
【0075】
波形再生部71aは、電極21に誘導された電荷(電圧)のレベルを上述した拡散符号PNのチップレートの数倍(例えば4倍)のクロックで2値化し、正負の極性値のバイナリ列(チップ列)に整形して出力する。相関演算器71bは、波形再生部71aが出力したチップ列をレジスタに格納し、上記クロックで順次シフトしながら拡散符号PN(又は、該拡散符号PNに対して反転及び巡回シフトのいずれか少なくとも一方を施してなる符号)との相関演算を行うことで、受信信号に含まれていたシンボルの値をデコードする。
【0076】
受信部71は、逐次、相関演算器71bによりデコードされたシンボルの値が上述した検出パターンc1を示しているか否かの判定を行う。その結果として検出パターンc1を検出すると、センサコントローラ31が存在することを検出し、制御部90に対して、コマンド信号により示されるコマンドに応じた処理などを実行可能にするための起動信号ENを発行する。
【0077】
また、受信部71は、検出パターンc1を検出した場合、受信動作を間欠的から連続的に切り替え、逐次、デコードしたシンボルの値が上述した区切りパターンSTPを示しているか否かの判定を行う。その結果として区切りパターンSTPを検出すると、受信部71は、その検出時刻t2を制御部90に対して出力する。
【0078】
区切りパターンSTPを検出した後の受信部71は、制御部90によるスケジューリング(後述)に従って、センサコントローラ31が送信するコマンド信号の受信動作を行う。具体的には、受信動作の実施中に相関演算器71bによってデコードされる一連のシンボルの値を制御情報c2として取得し、制御部90に出力する。
【0079】
制御部90は、マイクロプロセッサ(MCU)により構成され、受信部71から起動信号ENが供給されたことを契機として起動し、続いて受信部71から供給される検出時刻t2に基づいて、各種信号等の送受信スケジュールを生成する。そして、生成した送受信スケジュールに基づく制御信号SWCを生成して切替部76に供給する処理と、コマンド信号の受信を行うよう受信部71を制御する処理と、受信部71から供給される制御情報c2に基づいて送信部75を制御する処理とを行う。この送信部75の制御には、受信されたコマンド信号に基づいて、ロングバースト信号を送信するか、バースト信号及びデータ信号を送信するかを決定すること、ロングバースト信号又はバースト信号を送信する場合には送信部75にその旨を指示すること、及び、データ信号を送信する場合には、制御情報c2により送信を指示されたデータを取得して送信部75に供給することが含まれる。送信部75に供給するデータには、筆圧検出センサ23によって検出された筆圧を示すデータが含まれる。
【0080】
送信部75は、センサコントローラ31に対して送信する信号を生成して電極21に供給する回路であり、変調部73及び昇圧回路74により構成される。
【0081】
変調部73は、所定周波数又は制御部90からの制御に従う周波数のキャリア信号(矩形波信号)を生成し、そのまま、或いは、制御部90の制御に基づいて変調したうえで出力する回路である。ロングバースト信号及びバースト信号の送信時には、変調部73は、キャリア信号を変調せずにそのまま、或いはセンサコントローラ31との間で共有された既知の値のパターンで変調して出力する。これにより変調部73から、昇圧前のロングバースト信号及び昇圧前のバースト信号が出力される。一方、データ信号の送信時には、制御部90から供給されるデータによりキャリア信号を変調(OOK、PSK等)し、その結果として得られる変調信号を出力する。これにより変調部73から、昇圧前のデータ信号が出力される。
【0082】
昇圧回路74は、変調部73の出力信号を一定の振幅まで昇圧することにより、ロングバースト信号、バースト信号、及びデータ信号を生成する回路である。昇圧回路74によって生成されたロングバースト信号、バースト信号、及びデータ信号は、切替部76を経て電極21から空間に送出される。
【0083】
以上、本実施の形態によるセンサコントローラ31及びスタイラス2の構成及び動作について説明した。次に、センサコントローラ31及びスタイラス2の処理フロー図を参照しながら、それぞれの動作についてさらに詳しく説明する。
【0084】
初めに、
図9は、センサコントローラ31の動作の全体を示す処理フロー図である。同図に示すように、センサコントローラ31は、例えば、液晶等の表示リフレッシュレートの逆数により定義される時間Tr(例えば、60Hzの逆数である16.67ms)ごとに、4回の指タッチ検出処理(ステップS1,S2)と4回のスタイラス検出処理(ステップS3)とを含む同一の動作を繰り返すよう構成される。指タッチ検出処理とスタイラス検出処理とは交互に実行され、各指タッチ検出処理は時間Tf(例えば1500μs)の間、各スタイラス検出処理は時間Ts(例えば2500μs)の間、それぞれ継続して実行される。なお、指Fの検出は、スタイラス検出処理を挟んで不連続に実行される2回の指タッチ検出処理(ステップS1とステップS2)を1回の指タッチの位置検出単位として実行される。
【0085】
図10は、センサコントローラ31が行うスタイラス検出処理を示す処理フロー図である。図示していないが、センサコントローラ31は、自身の状態を示す状態フラグを記憶している。状態フラグにより示される状態には、スタイラス未検出かつペン起動信号送信待ち状態(=0)と、スタイラス未検出かつペン起動信号への応答待ち状態(=1)と、スタイラス検出済みかつ位置未導出状態(=2)と、スタイラス位置導出済み状態(=3)とが含まれる。センサコントローラ31は、初めにこの状態フラグを参照する(ステップS10)。
【0086】
ステップS10で参照した状態フラグが「0」であった場合、センサコントローラ31は、所定の時間T(例えば、
図9に示した時間Tsと同じ2500μs)にわたってペン起動信号を送信する(ステップS11)。具体的には、検出パターンc1の繰り返し及び区切りパターンSTPを送信する。ペン起動信号の連続送信を終えたセンサコントローラ31は、状態フラグに「1」を設定し(ステップS12)、ステップS10に処理を戻す。
【0087】
ステップS10で参照した状態フラグが「1」であった場合、センサコントローラ31は、まずロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号(第1のアップリンク信号)を送信する(ステップS13)。このコマンド信号を含む各種コマンド信号の送信には、
図10に示すように最大で時間T0(例えば200μs)を要する。その後、センサコントローラ31は、時間T1にわたってロングバースト信号の検出動作を行う(ステップS14)。この検出動作は、
図7(a)を参照して説明した全範囲スキャン(第1のスキャン)の前半によって行われる。
【0088】
センサコントローラ31は、時間T1が経過してロングバースト信号の検出動作を終了すると、ロングバースト信号を受信したか否かを判定する(ステップS15)。その結果、受信しなかったと判定した場合には、状態フラグに「0」を設定し(ステップS16)、ステップS10に処理を戻す。このステップS16は、例えばスタイラス2が
図1に示したセンシング範囲SRの外にあるなどの理由で、センサコントローラ31がダウンリンク信号を受信できない場合の処理である。一方、ステップS15で受信したと判定した場合、センサコントローラ31は状態フラグに「2」を設定し(ステップS17)、次にスタイラス2に対して送信するコマンドを決定した(ステップS18)うえで、ステップS10に処理を戻す。ここで決定されるコマンドは、ロングバースト信号の送信指示となる。
【0089】
ステップS10で参照した状態フラグが「2」であった場合、センサコントローラ31は、まずロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号(第1のアップリンク信号)を再送信する(ステップS19)。その後、センサコントローラ31は、時間T1にわたるロングバースト信号の検出動作を再度実行する(ステップS20)。この検出動作は、
図7(b)を参照して説明した全範囲スキャン(第1のスキャン)の後半によって行われる。なお、全範囲スキャンの前半の動作(ステップS14)と後半の動作(ステップS20)とを1回の時間T1の間に実行できる場合は、これら2つのステップS14,S20を1回の処理によって実行してもよい。
【0090】
センサコントローラ31は、時間T1が経過してロングバースト信号の検出動作を終了すると、ロングバースト信号を受信したか否かを判定する(ステップS21)。その結果、受信しなかったと判定した場合には、状態フラグに「0」を設定し(ステップS22)、ステップS10に処理を戻す。このステップS22は、例えばスタイラス2が
図1に示したセンシング範囲SRの外に離脱したなどの理由で、センサコントローラ31がダウンリンク信号を受信できなくなった場合の処理である。一方、ステップS21で受信したと判定した場合、センサコントローラ31は、状態フラグに「3」を設定する(ステップS23)とともに、ステップS14でのロングバースト信号の検出結果と、ステップS20でのロングバースト信号の検出結果とに基づいて、スタイラス2の位置を導出する(ステップS24)。そして、次にスタイラス2に対して送信するコマンドを決定した(ステップS25)うえで、ステップS10に処理を戻す。ここで決定されるコマンドは、各種データ(スタイラスID、筆圧を示すデータなど)の送信指示であるとともに、時間T2にわたるバースト信号の送信指示の役割も担っている。
【0091】
ステップS10で参照した状態フラグが「3」であった場合、センサコントローラ31は、ステップS25又は後述するステップS32で決定したコマンドを示すコマンド信号(第2のアップリンク信号)を送信する(ステップS26)。その後、センサコントローラ31は、時間T1より短い時間T2にわたってバースト信号の検出動作を行う(ステップS27)とともに、バースト信号を検出した場合には、各線状電極30X,30Yでの検出強度に基づいてスタイラス2の位置座標の導出を行う(ステップS28)。ステップS27でのバースト信号の検出動作は、
図7(c)を参照して説明したセクタスキャン(第2のスキャン)によって行われる。
【0092】
センサコントローラ31は、時間T2が経過してバースト信号の検出動作を終了すると、次にデータ信号の検出動作を行う(ステップS29)。この検出動作には、データ信号のデコード処理が含まれる。データ信号の検出動作は、直前のステップS28で導出された位置座標に基づいて選択される1本の線状電極30X又は線状電極30Yを用いて行われる。こうすることで、データ信号の検出期間をフルに活用することが可能になるので、スタイラス2からより多くのデータを受け取ることが可能になる。
【0093】
センサコントローラ31は、データ信号の検出動作を終了すると、バースト信号又はデータ信号を受信したか否かを判定する(ステップS30)。その結果、いずれも受信しなかったと判定した場合には、状態フラグに「0」を設定し(ステップS31)、ステップS10に処理を戻す。このステップS31は、例えばスタイラス2が
図1に示したセンシング範囲SRの外に離脱したなどの理由で、センサコントローラ31がダウンリンク信号を受信できなくなった場合の処理である。一方、ステップS30でいずれか少なくとも一方を受信したと判定した場合、次にスタイラス2に対して送信するコマンドを決定した(ステップS32)うえで、ステップS10に処理を戻す。ここで決定されるコマンドも、各種データ(スタイラスID、筆圧を示すデータなど)の送信指示であるとともに、時間T2にわたるバースト信号の送信指示の役割も担っている。
【0094】
次に、
図11は、
図10に対応するスタイラス2の動作を示す処理フロー図である。図示していないが、スタイラス2も、自身の状態を示す状態フラグを記憶している。状態フラグにより示される状態には、センサコントローラ未検出状態(=0)と、センサコントローラ検出済み状態(=1)とが含まれる。スタイラス2は、初めにこの状態フラグを参照する(ステップS40)。
【0095】
ステップS40で参照した状態フラグが「0」であった場合、スタイラス2は、まず受信動作休止状態に入る(ステップS41)。そして、所定時間が経過した後、上述した検出パターンc1の検出を試行する(ステップS42)。ステップS41の休止期間を設けているのは、検出パターンc1の検出動作を間欠的に行うことで、スタイラス2の消費電力を低減するためである。
【0096】
次いでスタイラス2は、ステップS42の試行によって検出パターンc1が検出されたか否かを判定する(ステップS43)。その結果、検出されていないと判定した場合、ステップS40に処理を戻す。一方、検出されたと判定した場合、スタイラス2は、上述した区切りパターンSTPが検出されるまで、検出パターンc1及び区切りパターンSTPを構成するシンボルの検出動作を継続する(ステップS44)。そして、区切りパターンSTPが検出された場合、その検出時刻に基づいてセンサコントローラ31と同期する処理を行った(ステップS45)うえで状態フラグに「1」を設定し(ステップS46)、ステップS40に処理を戻す。ステップS45の同期処理は、具体的には、
図8に示した制御部90による送受信スケジュールの生成処理である。
【0097】
ステップS40で参照した状態フラグが「1」であった場合、スタイラス2は、まずコマンド信号の検出動作を行う(ステップS47)。この検出動作は、時間T0にわたって行われる。次いでスタイラス2は、ステップS47の検出動作によってコマンド信号が検出されたか否か、検出された場合にはコマンド信号によって指示される内容は何か、という点についての判定を行う(ステップS48)。コマンド信号が検出されなかったと判定した場合には、状態フラグに「0」を設定し(ステップS49)、ステップS40に処理を戻す。このステップS49は、例えばスタイラス2が
図1に示したセンシング範囲SRの外に離脱したなどの理由で、スタイラス2がアップリンク信号を検出できなくなった場合の処理である。
【0098】
一方、ステップS48においてロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号が検出されたと判定した場合、スタイラス2は、ロングバースト信号の送信を決定し、時間T1にわたってロングバースト信号を送信する処理を行う(ステップS50)。具体的には、時間T1にわたって、ロングバースト信号を構成する上記所定波形の信号の連続送信を行う。その後、ステップS40に処理を戻す。
【0099】
また、ステップS48においてデータの送信指示を示すコマンド信号が検出されたと判定した場合、スタイラス2は、バースト信号の送信を決定し、時間T2にわたってバースト信号を送信する処理を行う(ステップS51)。具体的には、時間T2にわたって、バースト信号を構成する上記所定波形の信号の連続送信を行う。次いでスタイラス2は、指示されたデータを含むデータ信号を送信する処理を行う(ステップS52)。その後、ステップS40に処理を戻す。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態によれば、センサコントローラ31は、スタイラス2がホバー中である可能性が高いスタイラス未検出状態において、スタイラス2が通常のバースト信号より長い時間にわたって継続するロングバースト信号を送信することを期待できるようになる。したがって、線状電極一本あたりの検出動作時間を通常のバースト信号受信時より長くしつつも、ロングバースト信号の送信継続期間内により多くの線状電極(本実施の形態ではすべての線状電極30Y又は線状電極30X)を走査してバースト信号を検出することが可能になるので、タッチ面内の広い範囲でバースト信号を検出できる状態を確保しつつ、センサコントローラ31によるバースト信号検出の失敗の可能性を低減することが可能になる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、ロングバースト信号の受信時には全範囲スキャンを使用するので、タッチ面の全域でバースト信号を検出できる状態を確保しつつ、線状電極一本あたりの検出動作時間をさらに長くすることが可能になる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号により、センサコントローラ31からスタイラス2に対してロングバースト信号の送信を指示しているので、スタイラス2は、ロングバースト信号を送信すべきタイミングを明確に知ることができる。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0104】
以下、上記実施の形態の第1〜第6の変形例について説明する。
【0105】
図12は、上記実施の形態の第1の変形例によるスタイラス2の構成を示す図である。本変形例によるセンサコントローラ31及びスタイラス2は、アップリンク信号の送信に静電結合方式を利用しない無線通信を用いる点で、上記実施の形態と相違している。また、スタイラス2が互いにキャリア信号の形式が異なる2種類のダウンリンク信号DS1,DS2の送信に対応している点でも、上記実施の形態と相違している。ダウンリンク信号DS1,DS2は、ともに上述したロングバースト信号、バースト信号、及びデータ信号を送信可能に構成されており、スタイラス2は、接近しているセンサコントローラ31の種類に応じてこれらを使い分ける。以下、
図12を参照しながら、本変形例によるスタイラス2の構成について、詳しく説明する。
【0106】
本変形例によるスタイラス2は、
図12に示すように、電極21、信号処理部24、電源25、増幅部26、及び受信部27を有して構成される。
【0107】
受信部27は、無線通信として例えばブルートゥース(登録商標)による通信を実行可能に構成された機能部であり、本変形例では、センサコントローラ31がブルートゥース(登録商標)によって送信したアップリンク信号を受信する。
【0108】
信号処理部24は、2種類のダウンリンク信号DS1,DS2を選択的に送信する機能と、受信部27を介してアップリンク信号USを受信する機能とを有する機能部であり、具体的には、制御部91、昇圧部92、発振部93、スイッチ部94を有して構成される。
【0109】
昇圧部92は、電源25から供給される直流電圧を昇圧することにより、直流電圧V1を生成する機能を有する。具体的な例では、昇圧部92はDC−DCコンバータ又はチャージポンプ回路によって構成される。
【0110】
発振部93は、電源25から供給される直流電圧に基づいて発振動作を行うことにより、所定周波数で振動する無変調の正弦波信号(搬送波信号)を生成する機能を有する。増幅部26は、発振部93によって生成された正弦波信号を所定の増幅率で増幅することにより、無変調の正弦波信号v2を生成する機能を有する。増幅部26は、
図12に示すように、トランス及びキャパシタにより構成される増幅回路により構成されることが好ましい。
【0111】
スイッチ部94は1回路3接点のスイッチ素子であり、昇圧部92の出力端に接続される端子aと、増幅部26の出力端に接続される端子bと、接地電位が供給される電源配線に接続される端子gと、電極21に接続される共通端子cとを有して構成される。
【0112】
制御部91は、スイッチ部94を制御するための制御信号Ctrlを供給するとともに、受信部27を制御してセンサコントローラ31が送信したアップリンク信号を受信するICであり、電源25から供給される電力により動作するよう構成される。具体的な例では、制御部91はASIC又はMCUであってよい。制御部91は、受信部27を介して受信されるアップリンク信号の内容又はアップリンク信号が受信されないという事実(センサコントローラ31が、スタイラス2からセンサコントローラ31への一方向の通信のみに対応する場合)に基づき、ダウンリンク信号DS1,DS2のいずれを利用してロングバースト信号、バースト信号、及びデータ信号を送信するかを決定する。また、
図8に示した制御部90と同様に各種信号等の送受信スケジュールを決定し、決定した送受信スケジュールに基づいて、スイッチ部94の制御を行う。
【0113】
ダウンリンク信号DS1を送信する場合の制御部91は、昇圧部92の出力端と電極21の間に設けられる第1のスイッチ部として機能するよう、スイッチ部94を制御する。つまり、端子aが共通端子cに接続されている状態と、端子gが共通端子cに接続されている状態との間で、スイッチ部94を切り替える処理を行う。端子aが共通端子cに接続されている状態は第1のスイッチ部がオンとなっている状態に対応し、端子gが共通端子cに接続されている状態は第1のスイッチ部がオフとなっている状態に対応する。
【0114】
ダウンリンク信号DS1を用いてバースト信号又はロングバースト信号を送信する場合、制御部91は、所定の周期で周期的にスイッチ部94の切り替え制御を行う。端子aが共通端子cに接続されている場合には、直流電圧V1がスイッチ部94の出力電圧となる。一方、端子gが共通端子cに接続されている場合には、接地電位がスイッチ部94の出力電圧となる。したがって、スイッチ部94からは無変調のパルス列信号が出力され、これがロングバースト信号又はバースト信号となる。
【0115】
一方、ダウンリンク信号DS1を用いてデータ信号を送信する場合、制御部91は、筆圧レベルPや、スタイラス2に設けられるサイドスイッチ(図示せず)のオンオフを示すスイッチ情報SWなどのデータに応じてスイッチ部94の切り替え制御を行う。なお、このデータには、スタイラスID(スタイラス2の識別情報)などの他の情報を含んでもよい。制御部91は、この切り替え制御によって、データに基づいて変調されたパルス列信号であるデータ信号を生成する。制御部91によるパルス列信号の変調の具体的な方式としては、オンオフ変調や周波数変調などが考えられる。
【0116】
ダウンリンク信号DS2を送信する場合の制御部91は、増幅部26の出力端と電極21の間に設けられる第2のスイッチ部として機能するよう、スイッチ部94を制御する。つまり、端子bが共通端子cに接続されている状態と、端子gが共通端子cに接続されている状態との間で、スイッチ部94を切り替える処理を行う。端子bが共通端子cに接続されている状態は第2のスイッチ部がオンとなっている状態に対応し、端子gが共通端子cに接続されている状態は第2のスイッチ部がオフとなっている状態に対応する。
【0117】
ダウンリンク信号DS2を用いてバースト信号又はロングバースト信号を送信する場合、制御部91は、スイッチ部94を端子b側に固定する。したがって、スイッチ部94からは無変調の正弦波信号v2が出力され、これがロングバースト信号又はバースト信号となる。
【0118】
一方、ダウンリンク信号DS2を用いてデータ信号を送信する場合、制御部91は、筆圧レベルPやスイッチ情報SWなどのデータに基づいてスイッチ部94の切り替え制御を行う。なお、この場合においても、データにはスタイラスIDなどの他の情報を含んでもよい。制御部91は、この切り替え制御によって、データに基づいて変調された正弦波信号であるデータ信号を生成する。制御部91による正弦波信号の変調の具体的な方式としては、オンオフ変調が採用される。
【0119】
以上説明したように、本変形例によれば、アップリンク信号の送受信にブルートゥース(登録商標)を利用することができる。なお、ここではブルートゥース(登録商標)を利用する例を説明したが、アップリンク信号の送受信のためにブルートゥース(登録商標)以外の近接無線通信を用いてもよいのは、勿論である。
【0120】
また、本変形例によれば、スタイラス2は、ダウンリンク信号DS1,DS2の使い分けにより、種類の異なる複数のセンサコントローラ31との間で、双方向又は一方向に通信を行うことが可能になる。
【0121】
図13は、上記実施の形態の第2の変形例によるスタイラス2の動作を示す処理フロー図である。本変形例によるスタイラス2は、センサコントローラ31を未検出の段階で何らかのアップリンク信号を受信したら直ちにロングバースト信号を送信する点、及び、データ信号の直前にバースト信号を送信するか否かを判定する点で上記実施の形態と相違する。以下、
図13を参照しながら、本変形例によるスタイラス2の動作について、詳しく説明する。
【0122】
本変形例によるスタイラス2は、
図13に示すように、まずアップリンク信号の検出動作を行う(ステップS60)。そして、この検出動作によってアップリンク信号が検出されたか否かを判定し(ステップS61)、検出されていないと判定した場合には、ステップS60に戻って検出動作を繰り返す。一方、検出されたと判定した場合には、コマンド信号を待たずにロングバースト信号を送信する(ステップS62)。具体的には、上述した所定波形の信号を時間T1にわたって送信する。
【0123】
ロングバースト信号を送信した後、スタイラス2は、コマンド信号の検出動作を行う(ステップS63)。そして、データ送信の指示を示すコマンド信号が検出されたか否かを判定し(ステップS64)、検出されていないと判定した場合には、ステップS62に戻ってロングバースト信号の送信を繰り返す。一方、検出されたと判定した場合には、次にバースト信号の送信を行うか否かを判定する(ステップS65)。この判定は、検出されたコマンド信号の内容に基づいて行うことが好適である。こうすることで、スタイラス2によるバースト信号の送信の有無をセンサコントローラ31から制御することが可能になる。
【0124】
ステップS65でバースト信号を送信すると判定した場合の処理は、
図11に示したステップS51,S52と同様である。具体的に説明すると、スタイラス2は、所定波形の信号を時間T2にわたって送信することによりバースト信号を送信し(ステップS66)、その後の時間T1−T2にわたり、ステップS63で検出されたコマンド信号の指示に基づくデータを含むデータ信号を送信する(ステップS67)。一方、ステップS65でバースト信号を送信しないと判定した場合のスタイラス2は、時間T1にわたり、ステップS63で検出されたコマンド信号の指示に基づくデータを含むデータ信号を送信する(ステップS68)。
【0125】
ステップS67又はステップS68でデータ信号を送信した後、スタイラス2は、処理をステップS63に戻す。これにより、引き続き、センサコントローラ31からの指示に応じたデータを送信することが可能になる。
【0126】
以上説明したように、本変形例によれば、スタイラス2は、ロングバースト信号の送信指示を含むコマンド信号を待たずに、ロングバースト信号を送信することができる。したがって、ロングバースト信号に特に対応していないセンサコントローラ31に対しても、ロングバースト信号を送信することが可能になる。
【0127】
また、スタイラス2においてデータ信号の直前にバースト信号を送信するか否かを判定しているので、センサコントローラ31がスタイラス2からのバースト信号の送信を必要としない場合などには、スタイラス2は、より長い期間にわたってデータ信号を送信する(すなわち、より多くのデータを送信する)ことが可能になり、またセンサコントローラ31はより多くのデータを取得することが可能になる。
【0128】
図14は、上記実施の形態の第3の変形例によるセンサコントローラ31の動作を示す処理フロー図である。本変形例によるセンサコントローラ31は、1回のスタイラス検出処理(
図9のステップS3)の中でペン起動信号の送信又は全範囲スキャンの前半の実行に引き続いてロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を送信している点で、上記実施の形態と相違する。以下、
図14を参照しながら、本変形例によるセンサコントローラ31の動作について、詳しく説明する。
【0129】
本変形例によるセンサコントローラ31は、
図14に示すように、ステップS10で参照した状態フラグが「0」であった場合、
図10の例より短い時間(具体的には時間T1)にわたってペン起動信号を送信する(ステップS71)。次いでセンサコントローラ31は、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号(第1のアップリンク信号)を送信し(ステップS72)、次いで状態フラグに「1」を設定した(ステップS12)後、ステップS10に処理を戻す。
【0130】
また、ステップS10で参照した状態フラグが「1」であった場合、本変形例によるセンサコントローラ31は、時間T1にわたってロングバースト信号の検出動作を行い(ステップS73)、その後、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号(第1のアップリンク信号)を再度送信する(ステップS74)。ステップS73の検出動作が全範囲スキャンの前半によって行われる点は
図10に示したステップS14と同じであるが、
図10の例と比較すると、ロングバースト信号の検出動作とコマンド信号の送信の順序が逆になっている。
【0131】
また、ステップS10で参照した状態フラグが「2」であった場合、本変形例によるセンサコントローラ31は、時間Tにわたってロングバースト信号の検出動作を行う(ステップS63)。この検出動作が全範囲スキャンの後半によって行われる点は、
図10に示したステップS14と同じであるが、
図10と
図14を比較すると理解されるように、時間Tの全体をロングバースト信号の検出動作のために利用することが可能になっている。この後の処理は
図10の例と同様であるので、詳しい説明は割愛する。
【0132】
ここで、本変形例においては、ステップS72,S74で送信するロングバースト信号の送信指示に、ロングバースト信号の送信継続時間を示す情報も含めることが好ましい。そしてスタイラス2は、この情報により示される送信継続時間に応じて、ロングバースト信号の送信継続時間を制御することが好ましい。こうすることで、センサコントローラ31がロングバースト信号の検出動作を行う期間と、スタイラス2がロングバースト信号を送信する期間とを一致させることが可能になる。
【0133】
以上説明したように、本変形例によれば、全範囲スキャンの後半を上記実施の形態に比べて長い時間にわたって実施することができる。したがって、線状電極30X1本当たりの受信時間をさらに長くすることができるので、上記実施の形態に比べ、さらに確実に、センサコントローラ31にバースト信号を受信させることが可能になる。
【0134】
図15は、上記実施の形態の第4の変形例によるスタイラス2が送信するロングバースト信号を示す図である。本変形例によるセンサコントローラ31及びスタイラス2は、ロングバースト信号のフォーマットの点で、上記実施の形態と相違する。以下、
図15を参照しながら、本変形例によるロングバースト信号のフォーマットについて、詳しく説明する。
【0135】
図15に示すように、本変形例によるロングバースト信号は、周波数f1(第1の周波数)の信号と、周波数f1とは異なる周波数f2(第2の周波数)の信号とが連続するパターンによって構成される。具体的には、前半部分の周波数がf1、後半部分の周波数がf2となっている。
【0136】
ロングバースト信号の周波数が全区間にわたって単一であるとすると、センサコントローラ31は、受信したロングバースト信号から何らの情報も得られない。したがって、センサコントローラ31は、例えば単なるホワイトノイズまたは周波数f1付近に強い成分を有する周波数選択性ノイズをロングバースト信号と誤認して受信してしまう可能性がある。これに対し、本変形例によるロングバースト信号によれば、センサコントローラ31は、2種類の周波数が既知の順で検出されたという事実をもって、受信されている信号がロングバースト信号であると判定することができる。したがって、本変形例によれば、センサコントローラ31がロングバースト信号でない信号をロングバースト信号と誤認して動作してしまう可能性を低減することが可能になる。
【0137】
本変形例では、ロングバースト信号検出のための全範囲スキャンを、例えば、奇数番目の線状電極30Yを先にスキャンし、偶数番目の線状電極30Yを後にスキャンするように実行する。これは、センサコントローラ31がロングバースト信号の前半部分と後半部分の両方を受信できるようにするためである。なお、ロングバースト信号の時間T1が十分長く取れるときは、すべての線状導体30Yを周波数f1で順次スキャンし、その次に、再度すべての線状導体30Yを周波数f2で順次スキャンすることとしてもよい。
【0138】
以上説明したように、本変形例によれば、センサコントローラ31がロングバースト信号でない信号をロングバースト信号と誤認して動作してしまう可能性を低減することが可能になる。
【0139】
なお、本変形例ではロングバースト信号に前半部分と後半部分とで周波数が異なるという特徴を設ける例を説明したが、センサコントローラ31においてホワイトノイズとロングバースト信号を区別することを可能にする特徴であれば、どのような特徴をロングバースト信号に設けてもよい。例えば、ロングバースト信号は、センサコントローラ31との間であらかじめ定められた所定のシーケンスでL個の周波数が変更されるような信号であるとしてもよい。この場合、センサコントローラ31は、N本の線状電極30Y(またはM本の線状導体30X)を用い、周波数を変更しつつL回繰り返しスキャン動作を行うとしてもよい。
【0140】
図16は、上記実施の形態の第5の変形例によるスタイラス2の動作を示す処理フロー図である。本変形例によるセンサコントローラ31及びスタイラス2は、センサコントローラ31がスタイラス2を未だ検出していないことをスタイラス2がアップリンク信号に基づいて判定する点で、上記実施の形態と相違する。以下、
図16を参照しながら、本変形例によるスタイラス2の動作について、詳しく説明する。
【0141】
本変形例によるスタイラス2は、
図16に示すように、まず初めにスリープ状態となる(ステップS80)。このスリープ状態は、
図11に示した受信動作休止状態(ステップS31)と同じものである。
【0142】
スリープ状態に入って所定時間が経過した後、スタイラス2は、アップリンク信号の検出動作を行う(ステップS81)。そして、この検出動作によってアップリンク信号が検出されたか否かを判定し(ステップS82)、検出されていないと判定した場合には、ステップS80に戻って再度スリープ状態に入る。一方、検出されたと判定した場合には、そのアップリンク信号により、センサコントローラ31がスタイラス2を未だ検出していないこと(未検出状態であること)が示されるか否かを判定する(ステップS83)。この判定処理は、例えば
図8に示すスタイラス2の例では制御部90によって実行され、
図12に示すスタイラス2の例では制御部91によって実行される。
【0143】
ステップS83の判定の具体的な方法としては、例えば次のようなものが考えられる。1つ目は、スタイラス2を検出していない状態であることを示すアップリンク信号をセンサコントローラ31が明示的に送信している場合である。この場合、スタイラス2は、そのアップリンク信号を受信したか否かに基づいて、ステップS83の判定を実行すればよい。2つ目は、上記実施の形態で説明したように、センサコントローラ31がロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を送信する場合である。センサコントローラ31がロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を送信するのは、
図10を参照して説明したように、センサコントローラ31が未だスタイラス2を検出していない場合である。したがって、この場合のスタイラス2は、ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号を受信したか否かに基づいて、ステップS83の判定を実行することができる。
【0144】
ステップS83において肯定的な判定結果を得た場合、スタイラス2は、ロングバースト信号を送信する(ステップS84)。具体的には、上述した所定波形の信号を時間T1にわたって送信する。この場合に送信されるロングバースト信号が、
図15に示したロングバースト信号(ホワイトノイズとロングバースト信号を区別することを可能にする特徴を有する信号)であってよいのは勿論である。
【0145】
一方、ステップS83において否定的な判定結果を得た場合、スタイラス2は次に、バースト信号の送信を行うか否かを判定する(ステップS85)。これ以降の処理(ステップS85〜S88)は、
図13で説明したステップS65〜S68の処理と同様であるので、詳しい説明は割愛する。
【0146】
以上説明したように、本変形例によれば、スタイラス2は、センサコントローラ31がスタイラス2を検出済みか否かを判定し、その結果に基づいて、ロングバースト信号を送信するか、バースト信号及びデータ信号を送信するか(又はデータ信号のみを送信するか)を決定することが可能になる。
【0147】
図17は、上記実施の形態の第6の変形例による特定位置除斥処理を説明する図である。また、
図18は、本変形例によるセンサコントローラ31の動作を示す処理フロー図である。本変形例は、スタイラス検出処理(
図9のステップS3)の結果として導出されたスタイラス2の1以上の位置の中から、指タッチ検出処理(
図9のステップS1,S2)で検出された指タッチエリア(
図1に示した指Fによりタッチされている領域を示す情報)内に位置しているものを取り除くというものである。以下、詳しく説明する。
【0148】
図17(a)は指タッチ検出処理によって検出された指タッチエリアA1,A2を示し、
図17(b)は、
図17(a)の指タッチ検出処理の直後に実行されたスタイラス検出処理によって導出されたスタイラス2の位置B1〜B3を示している。
【0149】
図17(a)の指タッチエリアA1,A2は、上述したように、センサ30の線状電極上を流れる電流の一部が指Fと線状電極30X,30Yとの間に生ずる容量結合を通じて人体方向に流れ出ることによって、検出されたものである。なお、
図17(a)においては指タッチエリアA2の面積が指タッチエリアA1の面積に比べて大幅に広いものとなっているが、このような大面積の指タッチエリアA2は普通、指先ではなく手の平や拳等がタッチ面に接触したことによって形成されるものである。そこで通常は、面積の大きさに基づく別途の処理(パームリジェクション処理)によって無効化される。
図17(a)には、無効化前の状態を示している。
【0150】
図17(b)に示すスタイラス2の位置B1〜B3は、例えば
図10のステップS20において、各線状電極30X,30Yにおけるバースト信号の検出強度に基づいて導出されたものである。センサ30(
図2参照)に到達するバースト信号には、スタイラス2の電極21(
図8、
図12参照)から直接到来する成分に加えて、スタイラス2を持つ手やその反対側の手を経由して到来する成分が含まれる。
図17(b)において検出されている3つの位置B1〜B3のうち、スタイラス2の電極21からセンサ30に直接到来した成分によって導出されたものは位置B3のみであり、他の2つは、スタイラス2を持つ手やその反対側の手を経由してセンサ30に到来した成分によって導出されている。
【0151】
ここで再び
図17(a)を参照すると、位置B1,B2と同じ位置において、指タッチエリアA1,A2が検出されていることが理解される。これは、位置B1,B2の検出原因がタッチ面に手が近接していたことにあり、そのような手は、指タッチ検出処理によっても検出され得ることによるものである。本変形例によるセンサコントローラ31は、このような指タッチエリアとスタイラス位置との関係を利用するもので、指タッチ検出処理の結果を参照することによって、スタイラス検出処理によって導出されたスタイラス2の位置B1〜B3の中から位置B1,B2を選り分けて取り除く(除斥する)。以下、
図18を参照しながら、これを実現するためのセンサコントローラ31の動作について、詳しく説明する。
【0152】
図18に示すように、本変形例によるセンサコントローラ31はまず、指タッチエリアを検出する(ステップS90)。これは、
図9に示した指タッチ検出処理(ステップS1,S2)の中で行われる処理である。
【0153】
その後、
図9に示したスタイラス検出処理(ステップS3)に移ると、センサコントローラ31は、
図10のステップS20に示した処理などによって、まず1以上のスタイラス2の位置の候補を取得する(ステップS91)。また、センサコントローラ31は、ステップS90で検出された1以上の指タッチエリアを取得する(ステップS92)。なお、上述したパームリジェクション処理が行われる場合、ここで取得する指タッチエリアは、パームリジェクション処理を受ける前の段階のものである。
【0154】
次にセンサコントローラ31は、ステップS91で取得したスタイラス2の位置の候補のそれぞれについて、ステップS94以降の処理を繰り返す。具体的には、まずその候補により示される位置がステップS92で取得した1以上の指タッチエリアのいずれかの中に含まれるか否かを判定する(ステップS94)。ここで含まれないと判定した場合には、その候補により示される位置をスタイラス2の位置と認定し、通常の処理を行う(ステップS95)。一方、含まれると判定した場合には、その候補を無効化する(ステップS96)。無効化された候補は、その後の処理において、少なくともスタイラス2の位置としては使用されないことになる。なお、この無効化処理は、センサコントローラ31から電子機器3のシステムコントローラに対してスタイラス2の位置を出力しないようにすることによって実現してもよいし、スタイラス2の位置を出力した上でその位置は無効エリアであることをフラグ等で示すことによって実現してもよい。
【0155】
以上説明したように、本変形例によれば、センサコントローラ31は、スタイラス検出処理によって導出されたスタイラス2の複数の位置の中から、スタイラス2を持つ手やその反対側の手を経由してセンサ30に到来したバースト信号の成分によって導出された位置を取り除くことができる。
【0156】
また、上記実施の形態では、N本の線状電極30Y及びM本の線状電極30Xのすべてを使用して全範囲スキャンを実行するとして説明したが、全範囲スキャンでは、セクタスキャンに比べて多くのスキャン(すなわち、多数の線状電極を用いるスキャン)を行えば足り、必ずしもN本の線状電極30Y及びM本の線状電極30Xのすべてを使用しなければならないわけではない。つまり、全範囲スキャンは、タッチ面の全体又は一部である第1の範囲の検出エリアを利用して行えばよく、セクタスキャンは、この第1の範囲のうち選択された範囲の検出エリアを利用して行えばよい。また、この場合、全範囲スキャンの前に行うコマンド信号(ロングバースト信号の送信指示を示すコマンド信号)は第1の範囲から送信されればよく、セクタスキャンの前に行うコマンド信号(バースト信号及びデータ信号の送信指示を示すコマンド信号)は上記選択された範囲から送信されればよい。
【0157】
また、上記実施の形態では、全範囲スキャンの動作として、N本の線状電極30Yを順次使用するスキャン(前半)と、M本の線状電極30Xを順次使用するスキャン(後半)とに分けて説明したが、ロングバースト信号の送信継続時間T1を十分長く確保できる場合には、線状電極30Yの操作の後線状導体30Xをも利用してスタイラス2の位置(二次元座標位置)の特定を行うこととしてもよい。
【0158】
また、上記実施の形態では、ロングバースト信号を送信した後にはデータ信号を送信しない例を取り上げて説明したが、ロングバースト信号に続いてデータ信号を送信することとしてもよい。この場合のデータ信号の送信継続時間は、
図3に示したバースト信号のデータ信号の送信継続時間よりも短いこととしてもよい。このデータ信号は、スタイラス2の筐体に設けられたスイッチのオンオフ状態など、筆圧等に比して短いビット数で状態を示すことのできるデータを送信することに対して好適である。