【解決手段】線状伝送部材30と、前記線状伝送部材30が配設される主面22を含むシート部材20と、一方主面が粘着面50fである、少なくとも1つの粘着テープ部材50と、を備え、前記粘着面50fが前記線状伝送部材30側を向いた状態で、前記少なくとも1つの粘着テープ部材50が前記線状伝送部材30を囲んでおり、前記少なくとも1つの粘着テープ部材50が前記線状伝送部材30から外側に延び出て、前記粘着面50fを介して前記シート部材20に粘着されている、配線部材10である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)線状伝送部材と、前記線状伝送部材が配設される主面を含むシート部材と、一方主面が粘着面である、少なくとも1つの粘着テープ部材と、を備え、前記粘着面が前記線状伝送部材側を向いた状態で、前記少なくとも1つの粘着テープ部材が前記線状伝送部材を囲んでおり、前記少なくとも1つの粘着テープ部材が前記線状伝送部材から外側に延び出て、前記粘着面を介して前記シート部材に粘着されている、配線部材である。
【0012】
本配線部材によると、前記粘着面が前記線状伝送部材側を向いた状態で、前記少なくとも1つの粘着テープ部材が前記線状伝送部材を囲んでいるため、少なくとも1つの粘着テープ部材が線状伝送部材に対してしっかりと粘着される。この粘着テープ部材が粘着面を介してシート部材に粘着されるため、線状伝送部材がシート部材に対してしっかりと容易に保持される。
【0013】
(2)(1)の配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材は、前記線状伝送部材に対して巻かれていてもよい。粘着テープ部材が線状伝送部材に対して容易に粘着される。
【0014】
(3)(2)の配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材は、前記線状伝送部材の外側に向けて延出して前記粘着面同士が粘着された側方延出部分を含んでもよい。側方延出部分がシート部材の主面に沿って配設されることで、線状伝送部材がシート部材上に安定して配設される。
【0015】
(4)(1)の配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材は、第1粘着テープ部材と、第2粘着テープ部材とを含み、前記第1粘着テープ部材と前記第2粘着テープ部材との間に前記線状伝送部材が配設され、前記線状伝送部材の両外方で、前記第1粘着テープ部材の粘着面と、前記第2粘着テープ部材の粘着面とが粘着され、前記第1粘着テープ部材が前記第2粘着テープ部材からはみ出して前記シート部材に粘着されていてもよい。前記線状伝送部材の両外方で、前記第1粘着テープ部材の粘着面と、前記第2粘着テープ部材の粘着面とが粘着された部分がシート部材の主面に沿って配設されることで、線状伝送部材がシート部材上に安定して配設される。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材が前記線状伝送部材から外側に延び出て、前記シート部材に巻かれていてもよい。前記少なくとも1つの粘着テープ部材が前記線状伝送部材から外側に延び出て、前記シート部材に巻かれているため、線状伝送部材がシート部材に対してより確実に保持される。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配線部材であって、前記シート部材に融着される融着線状伝送部材をさらに備えていてもよい。例えば、融着に適した融着線状伝送部材については、シート部材に融着し、融着に適さない線状伝送部材については、少なくとも1つの粘着テープ部材によってシート部材に保持できる。結果、融着に適した融着線状伝送部材と融着に適さない線状伝送部材とが混在した薄い配線部材を実現することができる。
【0018】
(7)(6)の配線部材であって、前記融着線状伝送部材が部分的な複数の融着部分を介して前記シート部材に融着され、前記融着線状伝送部材のうち前記複数の融着部分の間を押え付けるように、前記融着線状伝送部材及び前記シート部材に粘着される補助粘着部材をさらに備えてもよい。融着線状伝送部材のうち複数の融着部分の間が、補助粘着部材によってシート部材に押付けて保持される。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材は、前記線状伝送部材のうち前記シート部材から延出する部分を前記シート部材上で保持可能な位置に設けられていてもよい。線状伝送部材のうちシート部材から延出する部分が、少なくとも1つの粘着テープ部材によってしっかり保持される。
【0020】
(9)(8)の配線部材であって、前記少なくとも1つの粘着テープ部材は、前記シート部材のうち前記線状伝送部材が延出する端縁よりも内側の位置で、前記線状伝送部材を囲んでいてもよい。少なくとも1つの粘着テープ部材が、シート部材のうち線状伝送部材が延出する端縁からはみ出ずに、線状伝送部材を保持できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。
図1は配線部材10を示す平面図である。
図2は
図1におけるII−II線断面図である。配線部材10は、シート部材20と、線状伝送部材30と、少なくとも一つの粘着テープ部材50とを備える。
【0023】
シート部材20は、シート状の部材である。シート部材20は、一方の主面22と、この主面22とは反対側の主面24とを含む。本実施形態では、主面22上に線状伝送部材30が保持される。
【0024】
シート部材20は、線状伝送部材30の配線経路に沿った形状に形成されてもよい。ここでは、シート部材20は、一方向に長い長方形状に形成されている。シート部材は曲っていてもよい。シート部材は、曲線状に曲る部分を有していてもよい。シート部材は、分岐部分を有していてもよい。
【0025】
シート部材20を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材20は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成されてもよい。シート部材20は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。シート部材20は、金属などの材料を含むこともあり得る。
【0026】
シート部材20は、好ましくは、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有する。例えば、シート部材20は、線状伝送部材30の配設対象となる箇所の形状に沿って曲げ可能な程度に柔軟な性質を有していてもよい。また、例えば、シート部材20は、折返して曲げ可能な程度に柔軟な性質を有していてもよい。シート部材20は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、シート部材20は、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。より具体的には、例えば、シート部材20は、内部が一様に埋った樹脂シート材と不織シートとが積層されていることが考えられる。また例えば、シート部材20は、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0027】
線状伝送部材30は、車両における部品間を通信可能に又は電力供給可能に接続する線状伝送部材であることが想定される。線状伝送部材30は、接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿って延びるように、上記主面22側に配設される。
【0028】
より具体的には、線状伝送部材30は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材30は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0029】
電気を伝送する線状伝送部材30としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0030】
また、線状伝送部材30は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0031】
本実施形態では、線状伝送部材30が、電気を伝送するシールドケーブル30である場合を想定した説明がなされる。より具体的には、シールドケーブル30は、複数の電線32と、複数の電線を覆うシールド層35と、シールド層35を覆うシース36とを備える。電線32は、芯線33と、芯線33の周囲を覆う被覆34とを含む。複数(ここでは2つ)の電線32は、撚り合わされている。シールド層35は、導電性を有しており、撚り合わされた電線32を覆っている。シールド層35は、例えば、金属線が筒状に編まれた編組である。シース36は、絶縁層であり、シールド層35の周囲に溶融した樹脂が押出被覆されることにより形成される。シールド層35は省略されてもよい。かかるシールドケーブル30は、例えば、マイク接続用ケーブル、アンテナ用ケーブル、映像信号伝送用ケーブル、LVDS(Low Voltage Differenctial Signaling)信号用ケーブル等として用いられてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、配線部材10は、融着線状伝送部材40を備える。融着線状伝送部材40は、上記線状伝送部材30と同様に、電気又は光等を伝送する線状の部材である。ここでは、融着線状伝送部材40が電気を伝送する電線40である場合を想定した説明がなされる。より具体的には、電線40は、芯線41と、芯線41の周囲を覆う被覆43とを含む。本実施形態では、配線部材10は、複数(ここでは4つ)の電線40を含む。なお、融着線状伝送部材(電線)40は省略されてもよい。
【0033】
電線40は、シート部材20における主面22に融着されている。ここで、融着とは、例えば線状部材(電線)40とシート部材20の主面22とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が融かされることによってくっついて固定されることをいう。かかる融着がなされるにあたり、樹脂は、例えば、熱によって融かされることも考えられるし、溶剤によって融かされることも考えられる。つまり、融着による融着固定部は、熱によって融着固定された状態であってもよいし、溶剤によって融着固定された状態であってもよい。
【0034】
熱による融着は、超音波融着、加熱加圧融着、熱風融着、高周波融着などによってなされ得る。例えば、超音波融着による融着部は、超音波融着部と称されてもよい。
【0035】
融着箇所において、線状部材(電線)40の表面のみが融けてもよいし、ベース部材(シート部材)20の主面22のみが融けてもよいし、それらの両方の樹脂の両方が融けてもよい。
【0036】
電線40がシート部材20に融着されるため、電線40の表面素材が、シート部材20の主面22に融着可能な材料であるとよい。例えば、シート部材20の主面22の材料と、電線40の表面(被覆43)素材とが、同じ樹脂材を含んでいてもよい。例えば、シート部材20の主面22がPVCを含む材料によって形成されている場合、電線40の表面素材はPVCを含む材料であってもよい。
【0037】
シールドケーブル30は、主面22上において一定経路に沿って配設される。ここでは、シールドケーブル30は、シート部材20の延在方向に沿って当該シート部材20の一端部から他端部に向うように配設される。ここでは、シールドケーブル30は、シート部材20の延在方向に沿って直線状に配設される。
【0038】
電線40は、主面22上において、シールドケーブル30に沿うように延在する。ここでは、複数の電線40が、シールドケーブル30の両側に分散して配設されている。複数の電線40の間に隙間が設けられる。電線40とシールドケーブル30との間にも隙間が設けられている。電線40とシールドケーブル30とは接していてもよい。電線40同士が接していてもよい。
【0039】
電線40がシールドケーブル30に沿って配設されていることは必須ではない。電線40は、シールドケーブル30とは別の経路に沿うように、主面22に融着されていてもよい。
【0040】
シールドケーブル30及び電線40の両端部は、コネクタ60、62に接続されていてもよい。ここでは、シート部材20の一端部から離れた位置にコネクタ60が設けられ、シート部材20の他端部から離れた位置にコネクタ62が設けられる。コネクタ60、62はシート部材20に固定されていてもよい。シールドケーブル30の一端部(ここでは複数の電線32の一端部)及び電線40の一端部は、シート部材20の端部から延出して同じコネクタ60に接続されている。シールドケーブル30の他端部(ここでは複数の電線32の他端部)及び電線40の他端部は、シート部材20の端部から延出して同じコネクタ62に接続されている。
【0041】
少なくとも1つの粘着テープ部材50は、シールドケーブル30を主面22上に保持するための部材である。
図1では、シールドケーブル30の延在方向において間隔をあけた複数箇所(ここでは2箇所)のそれぞれに、少なくとも1つの粘着テープ部材50が設けられる。本実施形態では、少なくとも一つの粘着テープ部材50は、一つの粘着テープ部材50である。粘着テープ部材50の一方主面は粘着面50fである。ここで、粘着とは、例えば、圧力が加えられることによって対象物に接着することをいう。より具体的には、粘着とは、粘性を有する液体又はゲル等の表面が、対象物に対して加圧されることによって、当該対象物の凹凸表面に密着し、もって当該表面が当該対象物に接着することをいう。粘着面50fとは、そのように粘着する性質を有する面である。かかる粘着面50fを有する粘着テープ部材50は、シート部材20の表面及びシールドケーブル30の表面に対して、主として投錨効果等による力学的な接着力によって粘着することができる。このため、粘着面50fと、シート部材20の表面素材とシールドケーブル30の表面素材との化学的な接着相性に拘らず、粘着テープ部材50はシート部材20の主面22及びシールドケーブル30の表面の両方に粘着することができる。かかる粘着テープ部材50は、PVC等で形成された帯状の基材の一方主面に粘着層が形成された粘着テープ(いわゆるPVCテープ)であってもよい。
【0042】
少なくとも1つの粘着テープ部材50は、次の構成によって、シールドケーブル30をシート部材20に対して保持する。すなわち、粘着面50fがシールドケーブル30側を向いた状態で、少なくとも1つの粘着テープ部材50がシールドケーブル30を囲んだ状態となっている。また、少なくとも1つの粘着テープ部材50は、シールドケーブル30から外側に延びて、粘着面50fを介してシート部材20に粘着されている。
【0043】
本実施形態では、粘着テープ部材50は、粘着面50fを内側にして、シールドケーブル30に対して巻かれている。粘着テープ部材50は、シールドケーブル30に対して1周以上巻かれていてもよい。粘着テープ部材50は、シールドケーブル30に対して、3/2周以上巻かれていてもよく、2周以上巻かれていてもよい。粘着テープ部材50のうちシールドケーブル30に1周分巻かれる部分では、粘着面50fがシールドケーブル30の外周面に粘着される。粘着テープ部材50のうちシールドケーブル30に対して1周分を超えて噛まれる部分は、シールドケーブル30の巻付済の部分の外向き面に重なり、当該外向き面に粘着される。これにより、粘着テープ部材50がシールドケーブル30に巻かれた状態がより確実に保持される。
【0044】
粘着テープ部材50のうちの一端側部分は、上記のようにシールドケーブル30に巻かれている。粘着テープ部材50のうちの他端側部分は、シールドケーブル30から外側に延びて、シート部材20に粘着されている。粘着テープ部材50のうちの他端側部分は、シート部材20に巻かれていてもよい。
【0045】
本実施形態では、シート部材20の幅方向中間部にシールドケーブル30が位置している。粘着テープ部材50の他端側部分は、主面22上において、シールドケーブル30からシート部材20の幅方向に沿って延びる。粘着テープ部材50はシート部材20の一方側縁部に達し、当該一方側縁部において他方の主面24側に折返される。粘着テープ部材50は、当該他方の主面24上において、シート部材20の幅方向に沿って延びて、シート部材20の他方側縁部に達する。粘着テープ部材50は、シート部材20の他方側縁部において、一方の主面22側に折返される。粘着テープ部材50は、主面22上において、さらに、シート部材20の幅方向に沿って延びて、シールドケーブル30に達する。このため、粘着テープ部材50の他端側部分は、シート部材20に対して1周以上巻付けられ、再度シールドケーブル30に達する。粘着テープ部材50は、シート部材20に対して1周を超えて巻付けられていてもよい。
【0046】
粘着テープ部材50の他端側部分において、粘着面50fは、内側を向いている。このため、粘着面50fは、シート部材20の両主面22、24に粘着される。このため、粘着テープ部材50の他端側部分がシート部材20に対してしっかりと粘着される。また、主面22のうち電線40が存在する場所では、粘着テープ部材50は、当該電線40の外周にも粘着されている。このため、粘着テープ部材50は、電線40をシート部材20に押え付ける役割をも果すことができる。また、粘着テープ部材50の他端部は、シールドケーブル30に達し、粘着テープ部材50の一端側部分のうちシールドケーブル30に対して巻付け済の部分に粘着される。このため、シールドケーブル30は、その両側から主面22に粘着された粘着テープ部材50によって保持されることになり、シールドケーブル30が主面に対してしっかりと保持される。
【0047】
粘着テープ部材50の少なくとも一部が、シート部材20に対して粘着されていればよいため、粘着テープ部材50がシート部材20に巻かれていることは必須ではない。また、粘着テープ部材50の他端側部分が1周して再度シールドケーブル30に達していることは必須ではない。また、粘着テープ部材50が電線40に粘着していことは必須ではない。
【0048】
上記のように、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30を、少なくとも1つの粘着テープ部材50によってシート部材20に保持する構成は、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30を主面22に対して融着困難である場合に適用されてもよい。例えば、融着線状伝送部材40の一例である電線40の表面素材(ここでは被覆43の材料)が、シールドケーブル30の表面素材(ここではシース36の材料)と主面22の表面素材とに対する関係において、次の性質を有する場合である。この性質は、主面22に対する融着による電線40の剥離強度が、主面22に対する融着によるシールドケーブル30の剥離強度よりも大きい場合である。剥離強度は、次のようにして評価されてもよい。例えば、シールドケーブル30及び電線40をシート部材20に対して同じ条件で融着する。例えば、同じ加圧力、加圧時間、振動条件で、シールドケーブル30及び電線40をシート部材20に対して超音波融着する。そして、シート部材20からシールドケーブル30及び電線40に対して、同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854で規定されたいずれかの試験に準じた試験)を実施して剥離強度を評価する。例えば、シート部材20に対してシールドケーブル30又は電線40を180゜折返して引張る180゜剥離試験、又は、シート部材20とシールドケーブル30又は電線40を融着面に対して互いに逆の垂直方向に引っ張るT型剥離試験等を実施する。シールドケーブル30及び電線40に対して同種の試験を実施することで、剥離強度の大小が評価される。
【0049】
かかる剥離強度の差異は、主面の構成材料と、電線40及びシールドケーブル30の表面材料の組合せによってもたらされうる。例えば、主面22がPVCを含む材料によって形成されている場合において、電線40の被覆43がPVCを含む材料によって形成され、シールドケーブル30のシース36がPVCを含まない樹脂、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、フッ素樹脂等を含む材料によって形成されている場合が考えられる。
【0050】
線状部材の一例である電線40と、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30とは、同じ太さであってもよいし、異なる太さであってもよい。電線40とシールドケーブル30とが異なる太さである場合、いずれが太くてもよい。
【0051】
少なくとも1つの粘着テープ部材によって線状伝送部材を保持する構成は、シート部材に融着容易な線状伝送部材に対して適用されてもよい。
【0052】
このように構成された配線部材10によると、粘着面50fが線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30側を向いた状態で、少なくとも1つの粘着テープ部材50がシールドケーブル30を囲んでいる。このため、少なくとも1つの粘着テープ部材がシールドケーブル30に対してしっかりと粘着される。この少なくとも1つの粘着テープ部材50が粘着面50fを介してシート部材20に粘着されるため、シールドケーブル30がシート部材20に対してしっかりと容易に保持される。
【0053】
また、粘着テープ部材50がシールドケーブル30に対して巻かれて粘着されていれば、当該粘着テープ部材50がシールドケーブル30に対して容易かつしっかりと粘着される。
【0054】
また、粘着テープ部材50がシールドケーブル30から外側に延びて、シート部材20に巻かれていれば、粘着テープ部材50が当該シート部材20に対してしっかりと粘着される。これにより、シールドケーブル30がシート部材20に対してより確実にしっかりと保持される。特に、粘着テープ部材50がシート部材20に対して1周を超えて巻かれて、シールドケーブル30周りの粘着テープ部材50に再度粘着する構成とされていれば、シールドケーブル30が両側から粘着テープ部材50によって保持されることになる。これにより、シールドケーブル30がシート部材20に対してよりしっかりと一定位置に保持される。
【0055】
また、配線部材10は、融着線状伝送部材40の一例として電線40を備えている。このため、融着に適した電線40についてはシート部材20に融着し、融着に適さないシールドケーブル30については、少なくとも1つの粘着テープ部材50によってシールドケーブル30に保持できる。これにより、融着に適した電線40と、融着に適さないシールドケーブル30とを混在させて、薄い配線部材10を実現することができる。
【0056】
[変形例]
上記実施形態を前提とする変形例について説明する。なお、実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図3は第1変形例に係る配線部材110を示す断面図である。本配線部材110は、少なくとも1つの粘着テープ部材50に対応する少なくとも1つの粘着テープ部材150を備える。ここでは、少なくとも1つの粘着テープ部材150は、1つの粘着テープ部材150である。
【0058】
シールドケーブル30に対する粘着テープ部材150の巻かれ方が、上記実施形態とは異なっている。すなわち、粘着テープ部材150の一端側部分は、シールドケーブル30に巻かれている。ここでは、粘着テープ部材150の一端側部分はシールドケーブル30に1周巻かれている。粘着テープ部材150のうちシールドケーブル30に巻かれた部分の中間部が、シールドケーブル30の周方向の一部から外方に延出することによって、側方延出部分152が形成されている。側方延出部分152は、シールドケーブル30からシート部材20の一側縁部に向けて延出している。側方延出部分152では、粘着テープ部材150における2つの部分が、粘着面50fを互いに対向させた状態で重ね合されている。このため、側方延出部分152は、粘着テープ部材150の2つの部分が粘着面50f同士粘着されて重なった部分と、その外側端部で粘着テープ部材150が折返された折返し部分とを含む。
【0059】
粘着テープ部材150の一端部は、シールドケーブル30から上記側方延出部分152とは逆方向に延出する延出端部154とされている。粘着テープ部材150は、側方延出部分152を形成しつつシールドケーブル30に1周巻かれて、延出端部154に重なる。延出端部154と、粘着テープ部材150のうち延出端部154に重なる部分とは、粘着面50f同士の粘着によって重なった状態に保たれている。
【0060】
粘着テープ部材150の他端側部分は、延出端部154から外方に出て、シールドケーブル30の主面22、シート部材20の縁、他方の主面24、シート部材20の反対側の縁、一方の主面22を経て、シールドケーブル30に再度達する。粘着テープ部材150の他端部は、側方延出部分152に粘着される。粘着テープ部材150の他端部は、側方延出部分152を超えて、粘着テープ部材150のうちシールドケーブル30の外周側の部分に粘着されていてもよい。粘着テープ部材150の他端部は、粘着テープ部材150のうち上記延出端部154に粘着した部分の上に粘着されてもよい。
【0061】
本配線部材110によると、シールドケーブル30から側方延出部分152が延出している。この側方延出部分152がシート部材20の主面に沿って配設されることで、シールドケーブル30がシート部材20上に安定して配設される。例えば、側方延出部分152が主面22又は主面上の電線40に接触することで、シールドケーブル30がシート部材20上で転がり難くなり、シールドケーブル30の位置が安定する。また、例えば、粘着テープ部材150が側方延出部分152に達して当該側方延出部分152に粘着されることで、シート部材20を1周した粘着テープ部材150と、側方延出部分152とが大きい面積で粘着される。これにより、シールドケーブル30が粘着テープ部材150によってシールドケーブル30の両側から安定して保持され、シールドケーブル30の位置が安定する。
【0062】
なお、上記例では、側方延出部分152及び延出端部154の長さは、シート部材20の縁とシールドケーブル30との間に達する程度に設定されているが、その長さは特に限定されない。例えば、側方延出部分及び延出端部は、シート部材の縁に達する長さであってもよい。
【0063】
図4は第2変形例に係る配線部材210を示す断面図である。本配線部材210は、少なくとも1つの粘着テープ部材50に対応する少なくとも1つの粘着テープ部材250、256を備える。ここでは、少なくとも1つの粘着テープ部材250、256は、第1粘着テープ部材250と、第2粘着テープ部材256とを備える。
【0064】
第1粘着テープ部材250と第2粘着テープ部材256は、上記粘着テープ部材50と同様に、粘着面50fを有する帯状部材である。第1粘着テープ部材250は、第2粘着テープ部材256よりも長い。第1粘着テープ部材250は、シート部材20に1周以上巻かれ得る長さに設定されている。第2粘着テープ部材256は、シート部材20の幅以下に設定されている。
【0065】
第1粘着テープ部材250の一端側部分と第2粘着テープ部材256とが、シート部材20の幅方向に沿って、粘着面50fを互いに対向させた状態で、重ね合される。第1粘着テープ部材250の延在方向中間部と第2粘着テープ部材256の延在方向中間部との間に、シールドケーブル30が配設される。シールドケーブル30の両側外方では、第1粘着テープ部材250の粘着面50fと、第2粘着テープ部材256の粘着面50fとが粘着されている。以下の説明において、第1粘着テープ部材250と第2粘着テープ部材256との2つの重ね合せ部分のうち、第1粘着テープ部材250の一端部寄りの部分を重ね合せ部分259a、他方を重ね合せ部分259bという場合がある。
【0066】
また、重ね合せ部分259a、259bの間では、粘着面50fがシールドケーブル30の外周面に粘着している。これにより、第1粘着テープ部材250と第2粘着テープ部材256との間に、シールドケーブル30がより一定位置に保持される。
【0067】
第1粘着テープ部材250の他端側部分は、第2粘着テープ部材256の端部からはみ出して、シート部材20に粘着されている。ここでは、第1粘着テープ部材250の他端側部分は、第2粘着テープ部材256から外方に出て、シールドケーブル30の主面22、シート部材20の縁、他方の主面24、シート部材20の反対側の縁、一方の主面22を経て、シールドケーブル30に再度達する。第1粘着テープ部材250の他端部は、重ね合せ部分259aに粘着される。第1粘着テープ部材250の他端部は、第1粘着テープ部材250の一方側端部のうちシールドケーブル30の外周側の部分に粘着されていてもよい。第1粘着テープ部材250の他端部は、シールドケーブル30を超えて、重ね合せ部分259bに粘着されていてもよい。
【0068】
本配線部材210によると、重ね合せ部分259a、259bがシート部材20の主面に沿って配設されることで、シールドケーブル30がシート部材20上に安定して配設される。例えば、重ね合せ部分259a、259bが主面22又は主面上の電線40に接触することで、シールドケーブル30がシート部材20上で転がり難くなり、シールドケーブル30の位置が安定する。また、例えば、第1粘着テープ部材250が重ね合せ部分259aに達して当該重ね合せ部分259aに粘着されることで、シート部材20を1周した第1粘着テープ部材250と、重ね合せ部分259aとが大きい面積で粘着される。これにより、シールドケーブル30が第1粘着テープ部材250及び第2粘着テープ部材256によってシールドケーブル30の両側から安定して保持され、シールドケーブル30の位置が安定する。
【0069】
なお、上記例では、重ね合せ部分259a、259bの長さは、シート部材20の縁とシールドケーブル30との間に達する程度に設定されているが、その長さは特に限定されない。例えば、重ね合せ部分は、シート部材の縁に達する長さであってもよい。
【0070】
図5は第3変形例に係る配線部材310を示す平面図である。この配線部材310では、シート部材20の両端部に上記少なくとも1つの粘着テープ部材50が設けられている。少なくとも1つの粘着テープ部材50は、シールドケーブル30のうちシート部材20から延出する部分をシート部材20上で保持可能な位置に設けられている。換言すれば、少なくとも1つの粘着テープ部材50による保持構造は、シート部材20に対するシールドケーブル30の保持構造のなかで、前記延出する部分に最も近い位置に設けられる。つまり、少なくとも1つの粘着テープ部材50による保持構造には、シールドケーブル30のうちシート部材20から延出する部分が引張られた場合の力を受ける部分である。例えば、少なくとも1つの粘着テープ部材50は、シート部材20の端部に対して5cm以下の間隔をあけた位置に設けられてもよい。
【0071】
これにより、シールドケーブル30のうちシート部材20から延出する部分が、少なくとも1つの粘着テープ部材50によってしっかりと保持される。
【0072】
少なくとも1つの粘着テープ部材50は、シート部材20の縁よりも内側の位置で、シールドケーブル30を囲んでいることが好ましい。これにより、少なくとも1つお粘着テープ部材50がシート部材20のうちシールドケーブル30が延出する端縁からはみ出ずにシールドケーブル30を保持することができる。
【0073】
また、この配線部材310では、電線40が部分的な複数の融着部分342を介してシート部材20に融着されている。電線40のうち複数の融着部分342の間を押え付けるように、電線40及びシート部材20に粘着される補助粘着部材370が設けられている。
【0074】
補助粘着部材370は、上記粘着テープ部材と同様の部材であってもよい。補助粘着部材370は、シート部材20とシールドケーブル30と電線40とを囲んだ状態で、シート部材20とシールドケーブル30と電線40とに粘着されていればよい。
【0075】
この補助粘着部材370によって、電線40のうち複数の融着部分342の間をシート部材20に向けて押え付けることができる。なお、このように、電線40の延在方向において複数の融着部分が存在する場合に、複数の融着部分342の間で、上記補助粘着部材370のような、粘着テープ部材で電線40をシート部材に向けて押え付ける構成は、粘着テープ部材50、シールドケーブル30を前提としない構成においても、融着部分間の電線の浮きを押えるための技術として、成立し得る。
【0076】
補助粘着部材370は、シールドケーブル30を囲んだ状態となっていることは必須ではない。シート部材20の端部では、コネクタ60、62の取扱い時等に、シート部材20からシールドケーブル30を剥離させる力が作用する。このため、シート部材20の端部では、上記粘着テープ部材50を用いた構成のように、シールドケーブル30をしっかりと保持する構成が適用されていることが好ましい。一方、シート部材20の延在方向中間部では、シート部材20の端部ほどには、しっかりとシールドケーブル30を保持しなくてもよい。このため、シート部材20の延在方向中間部では、補助粘着部材370が、シールドケーブル30を単独で囲まず、シート部材20とシールドケーブル30と電線40とを囲んだ状態であってもよい。もっとも、補助粘着部材370も、上記実施形態、各変形例と同様に、シールドケーブル30を囲んだ状態となっていてもよい。
【0077】
図6は第4変形例に係る配線部材410を示す平面図である。同図に示すように、線状伝送部材30に対応する線状伝送部材430は、主面22に対応する主面422上で曲る曲げ経路部432を含んでいてもよい。ここでは、シート部材420は、L字状に曲る形状に形成されている。
【0078】
線状伝送部材430は、シート部材420の全体形状と同様にL字状に曲る経路に沿って、主面422上に配設されている。線状伝送部材430の両端部部分は、シート部材420の両端側直線部分に沿って直線状に延びている。線状伝送部材430の端部は、シート部材420の端部から延出してコネクタ60、62に接続されている。線状伝送部材430の延在方向中間部は、シート部材420の曲り部分で曲っている。ここでは、線状伝送部材430のうち曲げ経路部432から延び出る部分が90゜の角度をなすように曲っている。曲げ経路部432は、線状伝送部材430のうち曲げ経路部432から延び出る部分が90゜を超え、180゜未満の角度をなすように曲っていてもよいし、90゜未満の角度をなすように曲っていてもよい。曲げ経路部432は、角をなして曲っていてもよいし、湾曲しつつ曲っていてもよい。
【0079】
融着線状伝送部材40に対応する融着線状伝送部材440は、線状伝送部材430に沿って配設されている。融着線状伝送部材440の本数は任意である。融着線状伝送部材440は省略されてもよい。
【0080】
少なくとも1つの粘着テープ部材50に対応する少なくとも1つの粘着テープ部材450は、曲げ経路部432の両側の位置で線状伝送部材430をシート部材420に向けて押え付けている。
【0081】
このため、線状伝送部材430のうち曲げ経路部432の両側から外方に延び出る2つの部分が、別々に、少なくとも1つの粘着テープ部材450によって保持される。これにより、曲る経路に沿う線状伝送部材430が、シート部材420に対して一定の経路に沿って保持され易い。
【0082】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。