【解決手段】上記積層セラミック電子部品の製造方法は、第1軸方向に内部電極が積層されたセラミックチップの、上記内部電極の端部が露出し上記第1軸に直交する第2軸方向に向いた側面に、接着材を介してサイドマージンシートを貼り付けるステップを含む。上記接着材が乾燥される。上記接着材を乾燥させた後、上記セラミックチップの上記側面で、上記サイドマージンシートが打ち抜かれる。
第1軸方向に内部電極が積層されたセラミックチップの、前記内部電極の端部が露出し前記第1軸に直交する第2軸方向に向いた側面に、接着材を介してサイドマージンシートを貼り付け、
前記接着材を乾燥させ、
前記接着材を乾燥させた後、前記セラミックチップの前記側面で、前記サイドマージンシートを打ち抜く
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、側面用セラミックグリーンシートを打ち抜いた際に、接着材や側面用セラミックグリーンシートがグリーンチップの側面以外の面に貼り付き、外観不良が発生することがあった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、サイドマージン部の形成に伴う外観不良を抑制することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1軸方向に内部電極が積層されたセラミックチップの、上記内部電極の端部が露出し上記第1軸に直交する第2軸方向に向いた側面に、接着材を介してサイドマージンシートを貼り付けるステップを含む。
上記接着材が乾燥される。
上記接着材を乾燥させた後、上記セラミックチップの上記側面で、上記サイドマージンシートが打ち抜かれる。
【0007】
この構成では、サイドマージンシートを貼り付けた後に接着材を乾燥させることで、接着材の、側面とサイドマージンシートの接着に寄与していない部分の表面を乾燥させることができる。これにより、当該部分の接着材の接着力を低下させることができる。したがって、サイドマージンシートの打ち抜き工程において、サイドマージンシートの側面に接着していない部分が接着材を介してセラミックチップに貼りつく不具合を抑制することができ、セラミックチップの外観不良を抑制することができる。
【0008】
例えば、風を供給しつつ上記接着材を乾燥させてもよい。
具体的には、1m
3/min以上20m
3/min以下の風を供給しつつ上記接着材を乾燥させてもよい。
風を供給しつつ接着材を乾燥させることにより、効率よく接着材の接着力を低下させることができる。
【0009】
例えば、30℃以上100℃以下で上記接着材を乾燥させてもよい。
常温以上で接着材を乾燥させることで、効率よく接着材の接着力を低下させることができる。
【0010】
例えば、上記サイドマージンシートに上記接着材を塗布して、上記側面に上記サイドマージンシートを貼り付けてもよい。
あるいは、上記側面に上記接着材を塗布して、上記側面に上記サイドマージンシートを貼り付けてもよい。
【0011】
また、上記サイドマージンシートを上記第2軸方向から上記側面に向かって加圧することで、上記側面に上記サイドマージンシートを貼り付けてもよい。
これにより、接着材を、サイドマージンシート及び側面に密着させることができ、接着材を介してサイドマージンシートを側面に確実に貼り付けることができる。
【0012】
例えば、20℃以上200℃以下で上記サイドマージンシートを加温しつつ、上記側面に上記サイドマージンシートを貼り付けてもよい。
これにより、接着材の接着力を高めることができ、サイドマージンシートを側面により確実に貼り付けることができる。
【0013】
例えば、弾性部材上に配置された上記サイドマージンシートを、上記側面で打ち抜いてもよい。
これにより、弾性部材上に配置されたサイドマージンシートに対して側面が深く押し込まれ、それによってサイドマージンシートにせん断力を及ぼし、サイドマージンシートを側面の外縁形状に沿った適切な形状に打ち抜くことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、サイドマージン部の形成に伴う外観不良を抑制することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0017】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1〜3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA−A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB−B'線に沿った断面図である。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面と、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、を有する。セラミック素体11の各面を接続する稜部は、例えば丸みを帯びている。
【0019】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。
図1に示す外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。
【0020】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0021】
セラミック素体11は、セラミック積層体(積層体)16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16には、X軸方向を向いた2つの端面16aと、Y軸方向を向いた2つの側面16bと、Z軸方向を向いた2つの主面16cと、が形成されている。端面16aは、Y軸方向及びZ軸方向に沿って延びる。側面16bは、Z軸方向及びX軸方向に沿って延びる。主面16cは、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる。サイドマージン部17は、積層体16の2つの側面16bをそれぞれ被覆している。
【0022】
積層体16の端面16a、側面16b及び主面16cはいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0023】
積層体16は、容量形成部18と、容量形成部18のZ軸方向両側にそれぞれ設けられたカバー部19と、を有する。容量形成部18は、Z軸方向にセラミック層を介して積層された内部電極12,13を有する。
【0024】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、それぞれ、X−Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、一方の端面16aまでX軸方向に延び、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、他方の端面16aまでX軸方向に延び、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層に電圧が加わり、容量形成部18に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0026】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0027】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO
3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O
3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO
3)系、酸化チタン(TiO
2)系などで構成してもよい。
【0028】
カバー部19は、絶縁性セラミックスで形成されるが、例えばセラミック素体11で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、カバー部19と容量形成部18との間に発生し得る内部応力が抑制される。
【0029】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の両側面16bに露出している。これらの内部電極12,13の端部の位置は、Y軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。両側面16bには、内部電極12,13間及びこれらと外部との間の絶縁性を確保する等の観点から、サイドマージン部17が設けられている。
【0030】
サイドマージン部17は、側面16bをY軸方向から覆い、X軸方向及びZ軸方向に沿って延びる略平板状に構成される。サイドマージン部17は、絶縁性セラミックスで形成されるが、内部応力抑制等の観点から、カバー部19と同様に積層体16で用いられた誘電体セラミックスで形成されてもよい。サイドマージン部17は、以下に説明するように、例えば側面16bでセラミックグリーンシートを押圧し打ち抜くことによって形成される。
【0031】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5〜13は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5〜13を適宜参照しながら説明する。
【0032】
(ステップS01:セラミックチップ116作製)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミックチップ116を作製する。
【0033】
図5に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成のセラミックグリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0034】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0035】
セラミックシート101,102は、
図5に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部18に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部19に対応する。
なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0036】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。上記積層体の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。これにより、
図6に示すセラミックチップ116が作製される。
【0037】
図6に示すように、セラミックチップ116は、未焼成の内部電極112,113が形成された未焼成の容量形成部118と、未焼成のカバー部119と、を有する。セラミックチップ116には、Y軸方向に向いた側面116bと、X軸方向に向いた端面116aと、Z軸方向に向いた主面116cと、が形成される。側面116bは、切断線Lxに対応する切断面である。端面116aは、切断線Lyに対応する切断面である。側面116bからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0038】
(ステップ02:サイドマージンシート117s貼り付け)
ステップS02では、セラミックチップ116の側面116bに、接着材Dを介してサイドマージンシート117sを貼り付ける。セラミックチップ116は、本ステップの前に、鉛直方向に主面116cが向いた姿勢から、鉛直方向に側面116bが向いた姿勢に変更される。セラミックチップ116の姿勢の変更は、例えば、転動法などの公知の方法を用いることができる。
【0039】
図7及び
図8は、本ステップを示す模式的な図であり、Aは斜視図、BはX軸方向から見た断面図である。なお、
図7A及び
図8Aにおいては、説明のため、サイドマージンシート117sをドットパターンで示している。
【0040】
サイドマージンシート117sは、バインダと、溶剤と、絶縁性セラミックスと、を含む未焼成のセラミックグリーンシートである。サイドマージンシート117sの組成は、ステップS01で用いられるセラミックシート101,102,103と共通の組成とすることが好ましい。これにより、サイドマージンシート117sとセラミックシート101,102,103の物性を同等に揃えることができる上に、積層セラミックコンデンサ10の製造コストを低減することができる。
【0041】
サイドマージンシート117sは、側面116bの面積よりも大きく構成され、典型的には、間隔をあけて配置された複数のセラミックチップ116の側面116bをカバーし得る大きさで構成される。これにより、複数のセラミックチップ116に対して一括してサイドマージン部117を形成することができる。
【0042】
本実施形態では、
図7に示すように、サイドマージンシート117sに接着材Dが塗布される。そして、サイドマージンシート117sの接着材D塗布面が、セラミックチップ116の一方の側面116bと、Y軸方向に対向するように配置される。続いて、
図8に示すように、側面116bに、接着材Dを介してサイドマージンシート117sが貼り付けられる。
【0043】
接着材Dは、サイドマージンシート117sと側面116bとを接着できれば特に限定されず、例えば、バインダと、溶剤と、絶縁性セラミックスと、を含むセラミックスラリーで形成される。
【0044】
図9は、本ステップの具体的な構成例を示すX軸方向から見た断面図である。
図9に示す例では、セラミックチップ116のY軸方向下方を向いた側面116bに粘着シートTが貼り付けられ、セラミックチップ116が粘着シートTを介して平板状の保持部材S上に配置される。保持部材Sは、例えばステンレスやアルミニウムなどの一般的に剛体に分類される材料で形成することができる。Y軸方向上方を向いた側面116bは、接着材Dが塗布されたサイドマージンシート117sと対向するように配置されている。
【0045】
図9の白抜き矢印で示すように、サイドマージンシート117sは、例えば押圧部材E1を介して加圧板P1によってY軸方向に加圧される。押圧部材E1は、例えば各種ゴムや各種エラストマーなどの弾性変形可能な材料で形成される。あるいは、押圧部材E1は、ステンレスやアルミニウムなどの一般的に剛体に分類される材料で形成されてもよい。
【0046】
本ステップにおいて、接着材Dは、例えば転移点以上に加温される。これにより、接着材Dが十分に軟化した状態となる。一例として、サイドマージンシート117sが20℃以上200℃以下に加温されることにより、接着材Dも20℃以上200℃以下の温度に加温され、軟化する。サイドマージンシート117sの加温は、例えば、押圧部材E1の内部に設けられたヒータにより行われる。
【0047】
軟化した接着材Dは、加圧されることで側面116bの微細な凹凸形状に沿うように柔軟に変形し、側面116bに密着する。したがって、接着材Dが側面116bに対して十分に接着される。
【0048】
そして、押圧部材E1をY軸方向上方に移動させる。これにより、押圧部材E1がサイドマージンシート117sから離間し、サイドマージンシート117sが側面116bに接着された状態で保持される。
【0049】
(ステップS03:接着材D乾燥)
ステップS03では、接着材Dを乾燥させる。接着材Dの乾燥は、
図10に示すように、側面116bにサイドマージンシート117sが接着された状態で行われる。
【0050】
本ステップでは、風を供給しつつ接着材Dを乾燥させてもよく、例えば1m
3/min以上20m
3/min以下の風を供給しつつ接着材Dを乾燥させてもよい。これにより、短時間で接着材Dを乾燥させることができる。また、例えば30℃以上100℃以下で接着材Dを乾燥させることで、常温以上の環境下で接着材Dを効率よく乾燥させることができる。特に、30℃以上100℃以下の温風又は熱風を供給しつつ接着材Dを乾燥させることで、接着材Dをより効率よく乾燥させることができる。
【0051】
本ステップは、例えば、サイドマージンシート117sが貼り付けられた状態のセラミックチップ116を、風量及び/又は温度の制御等が可能な乾燥室(乾燥炉)内に配置することで行われる。あるいは、本ステップは、サイドマージンシート117sが貼り付けられた状態のセラミックチップ116の近傍に、風の供給及び/又は加温等が可能な乾燥機を配置することで行われてもよい。
【0052】
本ステップにより、接着材Dの溶剤が蒸発し、接着材Dの流動性(柔軟性)が低下することで、接着材Dの側面116bに貼り付いていない部分の接着力が低下する。一方で、接着材Dの側面116bに貼り付いている部分は、ステップS02の貼り付け工程によって、サイドマージンシート117s及び側面116bに十分密着している。このため、本ステップにおいても、サイドマージンシート117sが側面116bに接着された状態を維持できる。
【0053】
(ステップS04:サイドマージンシート117s打ち抜き)
ステップS04では、
図11に示すように、セラミックチップ116の側面116bで、サイドマージンシート117sを打ち抜く。
【0054】
本ステップでは、例えばサイドマージンシート117sと加圧板P2との間に、弾性部材としての押圧部材E2が配置される。加圧板P2は、加圧板P1と同一のものでもよいし、異なるものでもよい。押圧部材E2は、各種ゴムや各種エラストマーなどの弾性変形可能な材料で形成され、押圧部材E1よりも柔軟性が高い材料で形成される。
【0055】
図11の白抜き矢印で示すように、押圧部材E2が加圧板P2によってY軸方向下方に加圧されることにより、押圧部材E2が、セラミックチップ116間の空間に食い込むように大きく変形する。押圧部材E2の変形に伴い、サイドマージンシート117sも大きく変形する。これにより、サイドマージンシート117sでは、側面116b上に接着された領域と、セラミックチップ116間の領域との間に、大きなせん断力が加わる。このせん断力がサイドマージンシート117sのせん断強さ以上になると、サイドマージンシート117sが側面116bの外縁に沿って打ち抜かれる。
【0056】
本ステップにおける加圧温度、加圧の大きさ及び加圧時間等は、押圧部材E2及びサイドマージンシート117sの材質等に鑑みて適宜設定できる。例えば、本ステップの加圧温度は、ステップS03の貼り付け工程の加圧温度よりも低い温度である。これにより、サイドマージンシート117sの軟化を抑制し、サイドマージンシート117sのせん断強さを低下させることができる。
【0057】
本ステップにより、側面116bにサイドマージン部117が形成される。
【0058】
ステップS02〜S04は繰り返され、2つの側面116bにそれぞれサイドマージン部117が形成される。これにより、
図12に示すように、セラミックチップ116及び2つのサイドマージン部117を有する未焼成のセラミック素体111が作製される。未焼成のセラミック素体111は、ステップS05の前に、バレル研磨等によって面取りされてもよい。
【0059】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体111を焼成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態の接着材Dは、焼成により溶剤及びバインダが蒸発し、サイドマージン部17の一部となり得る。
【0061】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成する。一例として、まず、導電性ペーストをセラミック素体11のX軸方向両端部に塗布し、この導電性ペーストを焼き付けて下地膜を形成する。次に、下地膜が形成されたセラミック素体11をメッキ液に浸漬させて電解メッキを行うことで、1又は複数のメッキ膜を形成する。
これにより、
図1〜3に示すような積層セラミックコンデンサ10が形成される。
【0062】
なお、上記のステップS06における処理の一部を、ステップS05の前に行ってもよい。例えば、ステップS05の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS05において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0063】
本実施形態では、サイドマージンシート117sの貼り付け後に接着材Dを乾燥する工程を行うことで、サイドマージンシート117sの打ち抜き後に、サイドマージンシート117s及び接着材Dの側面116b以外の面への貼り付きを抑制することができる。以下、比較例を用いて本実施形態の作用効果について説明する。
【0064】
[本実施形態の作用効果]
図13は、本実施形態の比較例に係る打ち抜き工程後の態様を模式的に示す図であり、Aは斜視図、BはX軸方向から見た断面図である。なお、
図13A及び
図14Aにおいては、説明のため、サイドマージンシート117sをドットパターンで示している。
【0065】
本比較例では、ステップS02のサイドマージンシート117s貼り付け工程の後、ステップS03の接着材Dの乾燥工程を行わずに、ステップS04の打ち抜き工程を行う。
【0066】
ステップS04の打ち抜き工程では、
図11に示すように、サイドマージンシート117sの側面116b上に接着された領域と、サイドマージンシート117sのセラミックチップ116間の領域との間が、側面116b以外の面(例えば主面116c)に沿って引き伸ばされる。当該引き伸ばされた領域は、側面116b以外の面に押し付けられるとともに、Y軸方向のせん断力が付加される。これにより、
図13に示す断片F1が発生し得る。
【0067】
断片F1は、例えばサイドマージンシート117sと接着材Dとを含み、接着材Dを介して側面116b以外の面に貼り付いている。ステップS03の乾燥工程を行わない場合、ステップS04の打ち抜き工程においても接着材Dが軟化していることがある。このため、上記引き伸ばされた領域が側面116b以外の面に押し付けられた際に、接着材Dが当該面の微細な凹凸形状に沿うように密着し、当該面に貼り付いた断片F1が発生し得る。
【0068】
この断片F1が貼り付いた状態でステップS05の焼成が行われた場合、焼成後に積層セラミックコンデンサ10の表面が局所的に盛り上がったような外観となり、積層セラミックコンデンサ10の外観不良が発生し得る。
【0069】
そこで、本実施形態では、ステップS02の後、ステップS03で接着材Dを乾燥させる。これにより、接着材Dの溶剤が蒸発し、接着材Dの流動性(柔軟性)が低下する。したがって、側面116bに貼り付いていない部分の接着材Dの接着力が低下する。
【0070】
図14は、本実施形態の打ち抜き工程後の態様を模式的に示す図であり、Aは斜視図、BはX軸方向から見た断面図である。
図14に示すように、本実施形態において、打ち抜き工程で発生した断片F1の接着材Dは、柔軟性が低下しているため、セラミックチップ116に押し付けられた場合でも、セラミックチップ116表面の微細な凹凸形状に沿うように変形できない。これにより、断片F1は、セラミックチップ116の表面に十分接着できず、セラミックチップ116から落下する。仮にステップS04において断片F1がセラミックチップ116に貼り付いた場合でも、断片F1の接着力が弱いため、例えばステップS05の焼成前にバレル研磨を行うことにより、断片F1がセラミックチップ116から容易に落下する。
【0071】
したがって、断片F1が側面116b以外の面に貼り付くことによる積層セラミックコンデンサ10の外観不良を抑制することができる。
【0072】
また、ステップS03の乾燥工程は、ステップS02の貼り付け工程の後に、サイドマージンシート117sが側面116bに接着された状態で行われる。接着材Dの側面116bに接着された領域では、ステップS02において、接着材Dが側面116bの微細な凹凸形状に沿って密着するように既に変形している。このため、ステップS03以降においても、サイドマージンシート117sの側面116bに接着された状態が維持される。したがって、ステップS03の乾燥工程により、接着材Dの側面116bに貼り付いていない領域の接着力を選択的に低下させることができる。
【0073】
さらに、ステップS03の乾燥工程により、サイドマージンシート117sに含まれる溶剤も蒸発し得る。これにより、サイドマージンシート117sの柔軟性が低下し、サイドマージンシート117sのせん断強さを低下させることができる。したがって、ステップS04における打ち抜き工程時に、サイドマージンシート117sを側面116bの外縁に沿った適切な形状で打ち抜くことが可能となる。
【0074】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態では、ステップS02において、サイドマージンシート117sに接着材Dを塗布すると説明したが、これに限定されない。例えば、側面116bに接着材Dを塗布してもよい。
【0075】
図15及び
図16は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示す模式的な断面図である。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態において、ステップS02以外のステップは、第1実施形態と同様に行われるため、詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施形態のステップS02では、まず
図15に示すように、側面116bに接着材Dを塗布する。そして、接着材Dが塗布された側面116bとY軸方向に対向するように、サイドマージンシート117sが配置される。
【0077】
そして
図16に示すように、サイドマージンシート117sは、例えばY軸方向に加圧されることで、側面116bに貼り付けられる。本実施形態では、サイドマージンシート117sが加圧されることで、側面116bに塗布された接着材Dが側面116bからはみ出し、接着材Dの不要部分F2が発生することがある。
【0078】
不要部分F2は、側面116b以外の面に回り込むことがあるが、ステップS02直後の段階では、当該面に強固に接着されてはいない。
【0079】
そして、ステップS03では、第1実施形態と同様に、接着材Dを乾燥させる。これにより、側面116bに貼り付いていない不要部分F2は、流動性が低下し、上述のように接着力が低下した状態となる。
【0080】
ステップS04では、第1実施形態と同様に、セラミックチップ116の側面116bで、サイドマージンシート117sを打ち抜く。この際に、上述のように、側面116b以外の面にもサイドマージンシート117sが押し付けられ、押し付けられた部分にせん断力が作用することで、サイドマージンシート117sの断片が発生し得る。
【0081】
仮にステップS03の接着材Dの乾燥工程を行わなかった場合、接着材Dの不要部分F2が軟化した状態でステップS04の打ち抜き工程が行われることがある。軟化した状態の不要部分F2にサイドマージンシート117sの断片が押し付けられた場合、不要部分F2が側面116b以外の面に密着し、
図17に示すように、当該面に接着された断片F3が発生し得る。
【0082】
あるいは、接着材Dの不要部分F2が側面116b以外の面にはみ出した状態で残ることもある。このような不要部分F2及び断片F3がステップS05において焼成されることで、積層セラミックコンデンサ10の外観不良が発生し得る。
【0083】
本実施形態では、
図18に示すように、乾燥工程によって不要部分F2の柔軟性が低下しているため、不要部分F2にサイドマージンシート117sの断片が押し付けられて断片F3が発生した場合でも、断片F3がセラミックチップ116に密着しない。この結果、断片F3がセラミックチップ116から容易に落下する。また、不要部分F2の柔軟性が低下することで、不要部分F2のせん断強さも低下する。これにより、ステップS04において、不要部分F2がサイドマージンシート117sとともに側面116bの外縁に沿って容易に切断される。
【0084】
したがって、本実施形態においても、積層セラミックコンデンサ10の外観不良の発生を抑制することができる。
【0085】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0086】
例えば、ステップS04の打ち抜き工程とステップS05の焼成工程との間に、側面116bに接着されたサイドマージンシート117sを再圧着する工程を行ってもよい。これにより、サイドマージンシート117sを側面116bに、より強固に接着させることができる。
【0087】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。