【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する
。
1.異方性導電接着剤
2.発光装置
3.実施例
【0014】
<1.異方性導電接着剤>
本実施の形態に係る異方性導電接着剤は、基板の配線パターンの電極上に発光素子を接
続させる異方性導電接着剤であって、無機バインダーと、導電粒子とを含有する。接着剤
成分が無機材料であることにより、優れた耐熱性及び耐光エネルギー性を得ることができ
る。
【0015】
[無機バインダー]
無機バインダーの主成分としては、アルカリ金属ケイ酸塩、リン酸塩、及びシリカゾル
からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、中でも、分子式M
2O・
nSiO
2(MはNa、K、Liのいずれか1種であり、nはモル比である。)で表され
るアルカリ金属ケイ酸塩を用いることが好ましい。
【0016】
アルカリ金属ケイ酸塩の金属Mは、一般にNa>K>Liの順で接着性が良好である。
このため、無機バインダーの主成分は、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)であることが好ま
しい。ケイ酸ナトリウムとしては、JIS K1408に準拠するケイ酸ナトリウム1号
〜3号を用いることが好ましく、中でも、接着力の観点からケイ酸ナトリウム3号を用い
ることが好ましい。
【0017】
また、無機バインダーは、接着力を向上させるため、硬化剤として、Zn、Mg、Cの
いずれか1種の酸化物、水酸化物、Na、K、Caのいずれか1種のケイ化物、ケイフッ
化物、Al、Znのいずれか1種のリン酸塩、Ca、Ba、Mgのいずれか1種のホウ酸
塩を含有してもよい。
【0018】
[導電粒子]
導電粒子としては、半田粒子、金属粒子、及び樹脂粒子に金属が被覆された樹脂コア導
電粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であるであることが好ましい。中でも、半
田粒子を用いることが好ましく、半田粒子と樹脂コア粒子とを併用することが好ましい。
【0019】
導電粒子の平均粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましく
は5μm以上25μm以下である。導電粒子の配合量は、無機バインダー100質量部に
対して3〜120質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ま
しい。
【0020】
半田粒子としては、例えばJIS Z 3282−1999に規定されている、Sn−P
b系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Bi−Sn系、Sn−
Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系、Sn−Pb−Ag系、Pb
−Ag系などから、電極材料や接続条件などに応じて適宜選択して用いることができる。
また、半田粒子の形状は、粒状、燐片状などから適宜選択することができる。また、半田
粒子は、異方性を向上させるために絶縁層で被覆されていても構わない。また、半田の融
点は、100〜250℃であることが好ましく、150〜200℃であることがより好ま
しい。なお、半田粒子は、圧着時の十分な荷重により、半田粒子の融点以下の実装温度で
も端子(電極)との間で合金を形成することができる。
【0021】
半田粒子の配合量は、20〜120質量部であることが好ましい。はんだ粒子の配合量
が少なすぎると優れた放熱特性が得られなくなり、配合量が多すぎると異方性が損なわれ
、優れた接続信頼性が得られない。
【0022】
半田粒子と樹脂コア導電粒子とを併用する場合、半田粒子は、樹脂コア導電粒子よりも
平均粒径が大きいことが好ましく、半田粒子の平均粒径は、樹脂コア導電粒子の平均粒径
の120〜800%であることが好ましく、200〜500%であることがより好ましい
。半田粒子の平均粒径が樹脂コア導電粒子よりも大きいことにより、圧着時に半田粒子に
十分に荷重が加わり、半田粒子の融点以下の実装温度でも端子(電極)との間で合金を形
成することができる。
【0023】
金属粒子としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバ
ルト、銀、金などの各種金属又はこれらの合金を用いることができる。
【0024】
樹脂コア導電粒子の樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アク
リル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニル
ベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂などを用いることができる。また、樹脂粒子を被覆する
金属としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、
銀、金などの各種金属又はこれらの合金を用いることができる。
【0025】
また、本実施の形態に係る異方性導電接着剤は、粘度や線膨張を調整するため、無機フ
ィラーをさらに含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、酸
化チタン、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。無
機フィラーの平均粒径は、10nm〜10μmであることが好ましく、無機フィラーの配
合量は、無機バインダー100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。
【0026】
また、異方性導電接着剤は、LEDからの出射光を反射し、高い光取り出し効率を得る
ため、TiO
2、BN、ZnO、Al
2O
3などの白色無機粒子を含有してもよい。白色
無機粒子の平均粒径は、反射させる光の波長の1/2以上であることが好ましい。
【0027】
このような異方性導電接着剤によれば、接着剤成分が無機材料であることにより、優れ
た耐熱性及び耐光エネルギー性を得ることができる。特に、青色LEDの2〜3倍の強さ
の光エネルギーの紫外線を発光する紫外線LEDを実装した場合でも、優れた耐熱性及び
耐光エネルギー性を得ることができる。
【0028】
<2.発光装置>
本実施の形態に係る発光装置は、配線パターンを有する基板と、配線パターンの電極上
に形成された異方性導電膜と、異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、異方性導
電膜が、前述した無機バインダーと、導電粒子とを含有する異方性導電接着剤の硬化物で
ある。これにより、優れた耐熱性及び耐光エネルギー性を得ることができる。
【0029】
また、本実施の形態に係る発光装置の製造方法は、基板の配線パターンの電極上に、無
機バインダーと、導電粒子とを含有する異方性導電接着剤を塗布し、異方性導電接着剤を
介して発光素子を加熱圧着させるものである。
【0030】
図1は、発光装置の一例を示す断面図である。発光素子は、例えばn−GaNからなる
第1導電型クラッド層11と、例えばIn
xAl
yGa
1−x−yN層からなる活性層1
2と、例えばp−GaNからなる第2導電型クラッド層113とを備え、いわゆるダブル
ヘテロ構造を有する。また、パッシベーション層14により第1導電型クラッド層11の
一部に形成された第1導電型電極11aと、第2導電型クラッド層13の一部に形成され
た第2導電型電極13aとを備える。第1導電型電極11aと第2導電型電極13aとの
間に電圧が印加されると、活性層12にキャリアが集中し、再結合することにより発光が
生じる。
【0031】
発光素子は、特に限定されず、発光波長が200〜300nm程度の紫外線を発光する
紫外線LEDであっても、発光波長が460nm程度の青色光を発光する青色LEDであ
ってもよい。光エネルギー式(E=hc/λ)による計算によれば、青色LEDの光エネ
ルギーは2.8eVであり、紫外線LEDの光エネルギーは4.1〜6.2eVであり、
紫外線LEDは、青色LEDの2〜3倍の強さの光エネルギーを有することになるが、本
実施の形態では、異方性導電接着剤の接着剤成分が無機材料であるため、紫外線LEDを
用いた場合でも接着強度の低下を抑制し、優れた耐熱性及び耐光エネルギー性を得ること
ができる。
【0032】
基板は、基材21上に第1導電型用回路パターン22と、第2導電型用回路パターン2
3とを備え、発光素子の第1導電型電極11a及び第2導電型電極13aに対応する位置
にそれぞれ電極を有する。
【0033】
基板は、透光基板であることが好ましい。基材21が透光基板である場合、基材31は
、ガラス、PET(polyethylene terephthalate)などの透明基材であることが好ましく
、第1導電型用回路パターン22、第2導電型用回路パターン23、及びその電極は、I
TO(Indium-Tin-Oxide)、IZO(Indium-Zinc-Oxide)、ZnO(Zinc-Oxide)、I
GZO(Indium-Gallium-Zinc-Oxide)などの透明導電膜であることが好ましい。基板が
透光基板であることにより、基板側を表示面(発光面)とすることが可能となる。
【0034】
異方性導電膜30は、前述した異方性導電接着剤が硬化したものであり、発光素子の端
子(電極11a、13a)と基板の端子(電極)との間に導電粒子31が捕捉されること
により、発光素子と基板とが電気的に接続される。
【0035】
このような発光装置によれば、異方性導電接着剤の接着剤成分が無機材料であることに
より、優れた耐熱性及び耐光エネルギー性を得ることができる。特に、青色LEDの2〜
3倍の強さの光エネルギーの紫外線を発光する紫外線LEDを実装した場合でも、優れた
耐熱性及び耐光エネルギー性を得ることができる。
<3.実施例>
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、各種の異方性導電接着剤を作
製した。そして、異方性導電接着剤を用いて基板上に青色LEDチップを実装してLED
実装サンプルAを作製し、初期及び高温高湿連続点灯試験後のダイシェア強度を測定して
耐熱性を評価した。また、異方性導電接着剤を用いて基板上に紫外線LEDチップを実装
してLED実装サンプルBを作製し、初期、TCT(Temperature Cycling Test)試験後
及び高温高湿連続点灯試験後の順電圧を測定して耐熱性及び耐光エネルギー性について評
価した。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[LED実装サンプルの作製]
図2は、LED実装サンプルの作製工程を説明するための図である。
図2に示すように
、LED実装サンプルを作製した。金属配線が形成されたセラミック基板41をステージ
上に配置し、セラミック基板41上に異方性導電接着剤40をスタンピング法にて塗布し
た。そして、異方性導電接着剤40上に、LEDチップ42を60gの加重で搭載し、加
熱圧着ボンダー43を用いて、ヘッドとステージを加熱して加熱圧着実装し、LED実装
サンプルA又はLED実装サンプルBを得た。
【0038】
[ダイシェア強度の測定]
LEDチップ42として青色LED(定格350mA、サイズ45mm角、波長460
nm)を用いて、LED実装サンプルAを作製した。
【0039】
図3は、ダイシェア強度試験の概要を示す断面図である。
図3に示すように、ダイシェ
アテスターを用いて、ツール50のせん断速度20μm/sec、温度25℃の条件で各
LED実装サンプルAの初期、及び高温高湿連続点灯試験後のダイシェア強度を測定した
。高温高湿連続点灯試験は、温度85℃−湿度90%−500時間の条件で連続点灯させ
た。
【0040】
[順電圧の測定]
LEDチップ42として青色LED(ナイトライドセミコンダクター社、NS355C
−2SAA、定格20mA、順電圧3.61V、波長355nm)を用いて、LED実装
サンプルBを作製した。
【0041】
各LED実装サンプルBの初期、TCT試験後、及び高温高湿連続点灯試験後の順電圧
を測定した。TCT試験は、LED実装サンプルBを、−40℃及び100℃の雰囲気に
各30分間曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを1000サイクル行った。高温
高湿連続点灯試験は、温度85℃−湿度90%−1000時間、20mAの条件で連続点
灯させた。LEDの初期の順電圧から0.1V以上変化したものをNGと評価した。
【0042】
<実施例1>
表1に示すように、水ガラス(JIS K1408に示すケイ酸ナトリウム3号)10
0質量部、及び半田粒子(粒径10〜25μm、融点180℃、千住金属工業社製)60
質量部を秤量して添加し、遊星攪拌機にて2000rpm/2minで攪拌して、異方性
導電接着剤を作製した。この異方性導電接着剤を介してセラミック基板上にLEDチップ
を搭載し、ヘッドを150℃、ステージを50℃に加熱し、実装温度(到達トップ温度)
100℃、60秒間の条件で加熱圧着実装し、LED実装サンプルA、Bを得た。表1に
、LED実装サンプルAの初期及び高温高湿連続点灯試験後のダイシェア強度、並びにL
ED実装サンプルBの初期、TCT試験後及び高温高湿連続点灯試験後の順電圧の測定結
果を示す。
【0043】
<実施例2>
表1に示すように、水ガラス(JIS K1408に示すケイ酸ナトリウム3号)10
0質量部、及び樹脂コア導電粒子(平均粒径5μm、ニッケルメッキ、樹脂コア粒子(日
本化学社製EHコア))10質量部を秤量して添加し、遊星攪拌機にて2000rpm/
2minで攪拌して、異方性導電接着剤を作製した。これ以外は、実施例1と同様に、L
ED実装サンプルA、Bを作製した。
【0044】
<実施例3>
表1に示すように、水ガラス(JIS K1408に示すケイ酸ナトリウム3号)10
0質量部、半田粒子(粒径10〜25μm、融点180℃、千住金属工業社製)30質量
部、及び樹脂コア導電粒子(平均粒径5μm、ニッケルメッキ、樹脂コア粒子(日本化学
社製EHコア))5質量部を秤量して添加し、遊星攪拌機にて2000rpm/2min
で攪拌して、異方性導電接着剤を作製した。これ以外は、実施例1と同様に、LED実装
サンプルA、Bを作製した。
【0045】
<実施例4>
表1に示すように、水ガラス(JIS K1408に示すケイ酸ナトリウム3号)10
0質量部、半田粒子(粒径10〜25μm、融点180℃、千住金属工業社製)60質量
部、及びシリカ粒子(日本アエロジル社製アエロジルRX300)7質量部を秤量して添
加し、遊星攪拌機にて2000rpm/2minで攪拌して、異方性導電接着剤を作製し
た。これ以外は、実施例1と同様に、LED実装サンプルA、Bを作製した。
【0046】
<比較例1>
表1に示すように、異方性導電接着剤として、デクセリアルズ社製のアミン系硬化剤含
有液状異方性導電接着剤(BPシリーズ、樹脂:エポキシ樹脂、粒子:Ni粒子)を使用
した。この異方性導電接着剤を介してセラミック基板上にLEDチップを搭載し、ヘッド
を200℃、ステージを50℃に加熱し、実装温度(到達トップ温度)150℃、30秒
間の条件で加熱圧着実装し、LED実装サンプルA、Bを得た。
【0047】
<比較例2>
表1に示すように、異方性導電接着剤として、デクセリアルズ社製のカチオン硬化AC
F(樹脂:エポキシ樹脂、粒子:ニッケル被覆樹脂粒子、粒子径:3μm、厚み:6μm
、樹脂密度:60Kpcs/mm
2)を使用した。この異方性導電接着剤を介してセラミ
ック基板上にLEDチップを搭載し、ヘッドを250℃、ステージを70℃に加熱し、実
装温度(到達トップ温度)180℃、30秒間の条件で加熱圧着実装し、LED実装サン
プルA、Bを得た。
【0048】
<比較例3>
表1に示すように、シリコン樹脂(信越化学社製KER2500)100質量部、及
び半田粒子(粒径10〜25μm、融点180℃、千住金属工業社製)60質量部を秤量
して添加し、遊星攪拌機にて2000rpm/2minで攪拌して、異方性導電接着剤を
作製した。この異方性導電接着剤を介してセラミック基板上にLEDチップを搭載し、ヘ
ッドを290℃、ステージを60℃に加熱し、実装温度(到達トップ温度)200℃、6
0秒間の条件で加熱圧着実装し、LED実装サンプルA、Bを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1のようにアミン系硬化剤含有液状異方性導電接着剤を用いた場合、アミン硬化
系−エポキシ樹脂の極性により吸水性が高いため、LED実装サンプルAは、高温高湿連
続点灯試験においてダイシェア強度が低下し、LED実装サンプルBは、高温高湿連続点
灯試験において順電圧が大きく変化した。
【0051】
また、比較例2のようにカチオン硬化ACFを用いた場合、LED実装サンプルAは、
高温高湿連続点灯試験において青色LEDが剥がれてしまい、LED実装サンプルBは、
TCT試験において300時間で不点灯となり、高温高湿連続点灯試験において130時
間で不点灯となった。
【0052】
また、比較例3のようにシリコン樹脂ACFを用いた場合、シリコン樹脂が柔らかいこ
とから、LED実装サンプルAは、高いダイシェア強度が得られず、LED実装サンプル
Bは、TCT試験において200時間で不点灯となり、高温高湿連続点灯試験において2
00時間で不点灯となった。
【0053】
一方、実施例1〜4のように水ガラスを含有する無機ACFを用いた場合、LED実装
サンプルAは、高温高湿連続点灯試験においてもダイシェア強度が低下せず、LED実装
サンプルBは、TCT試験、及び高温高湿連続点灯試験においても順電圧の変化が小さか
った。すなわち、水ガラスを含有する無機ACFを用いることにより、優れた耐熱性及び
耐光エネルギー性が得られることがわかった。
また、本発明に係る発光装置は、配線パターンを有する基板と、前記配線パターンの電極上に形成された異方性導電膜と、前記異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、前記異方性導電膜が、無機バインダーと、
導電粒子とを含有し、前記無機バインダーが、JIS K1408に準拠するケイ酸ナトリウム3号を主成分とする異方性導電接着剤を塗布し、前記異方性導電接着を介して発光素子を加熱圧着させることを特徴とする。