【解決手段】給電制御装置10では、MOSFET20をオン又はオフに切替えることによって、直流電源11から負荷12への給電を制御する。電流調整回路25は、装置抵抗24を介して流れる電流を、MOSFET20のドレイン及びソース間の電圧に比例する電流に調整する。駆動回路21は、抵抗回路26の両端間の電圧が所定電圧を超えた場合、MOSFET20をオフに切替える。MOSFET20のオン抵抗値は、MOSFET20の周囲温度に応じて変動する。抵抗回路26の抵抗値は、MOSFET20の周囲温度に応じて、MOSFET20のオン抵抗値と異なる方向に変動する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、電流を流れる半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによって給電を制御する給電制御装置であって、前記半導体スイッチの上流側の一端に一端が接続されている抵抗と、前記抵抗を介して流れる電流を、前記半導体スイッチの両端間の電圧に比例する電流に調整する電流調整回路と、前記抵抗を介して流れる電流の電流経路に配置される抵抗回路と、前記抵抗回路の両端間の電圧が所定電圧を超えた場合に前記半導体スイッチをオフに切替える切替え回路とを備え、前記半導体スイッチのオン抵抗値は、前記半導体スイッチの周囲温度に応じて変動し、前記抵抗回路の抵抗値は、前記周囲温度に応じて、前記オン抵抗値と異なる方向に変動する。
【0012】
上記の態様にあっては、半導体スイッチを介して負荷に電流が流れる。半導体スイッチは、負荷への給電を制御するためのスイッチとして機能するだけではなく、負荷に流れる電流を検出するための抵抗としても機能する。このため、負荷を介して流れる電流の電流経路に配置される素子の数が少ないので、構成が小さく、製造費用が安価である。
【0013】
半導体スイッチのオン抵抗値は、半導体スイッチがオンである場合における半導体スイッチの両端間の抵抗値である。半導体スイッチの両端間の電圧は、(オン抵抗値)・(負荷に流れる電流)で表される。「・」は積を示す。抵抗を介して流れる電流は、半導体スイッチの両端間の電圧に比例するので、抵抗回路の両端間の電圧は、(オン抵抗値)・(負荷に流れる電流)・(抵抗回路の抵抗値)に比例する。抵抗回路の抵抗値は、半導体スイッチの周囲温度に応じて、オン抵抗値とは異なる方向に変動する。例えば、オン抵抗値が上昇した場合、抵抗回路の抵抗値は低下する。
【0014】
このため、半導体スイッチの周囲温度が変動した場合であっても、抵抗回路の両端間の電圧は、半導体スイッチの周囲温度に応じて殆ど変動せず、半導体スイッチを介して負荷に流れる電流に比例する。結果、半導体スイッチを介して負荷に流れる電流が一定値を超えた場合に、抵抗の両端間の電圧が所定電圧を超え、半導体スイッチがオフに切替わる。
【0015】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記抵抗回路は、抵抗値が前記周囲温度に応じて、前記オン抵抗値と異なる方向に変動するサーミスタと、前記サーミスタに直列に接続される直列抵抗とを有する。
【0016】
上記の態様にあっては、抵抗回路では、サーミスタが配置されており、サーミスタの抵抗値は、半導体スイッチの周囲温度に応じて、半導体スイッチのオン抵抗値と異なる方向に変動する。このため、抵抗回路の抵抗値は、半導体スイッチの周囲温度に応じて、半導体スイッチのオン抵抗値と異なる方向に変動する。
【0017】
(オン抵抗値)・(抵抗回路の抵抗値)が半導体スイッチの周囲温度に無関係に一定である場合においては、抵抗回路の両端間の電圧は半導体スイッチの周囲温度に無関係に一定である。この場合、半導体スイッチを適切なタイミングでオフに切替えることができる。(オン抵抗値)・(サーミスタの抵抗値)が周囲温度に応じて変動する場合であっても、サーミスタに直列抵抗を直列に接続することによって、(オン抵抗値)・(抵抗回路の抵抗値)が半導体スイッチの周囲温度に無関係に一定である構成を実現することができる。
【0018】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記抵抗回路は、前記サーミスタ及び直列抵抗の直列回路に並列に接続される並列抵抗を有する。
【0019】
上記の態様にあっては、(オン抵抗値)・(サーミスタの抵抗値)が周囲温度に応じて変動する場合であっても、直列抵抗及び並列抵抗を接続することによって、(オン抵抗値)・(抵抗回路の抵抗値)が半導体スイッチの周囲温度に無関係に一定である構成を確実に実現することができる。
【0020】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記電流調整回路は、前記電流経路にて前記抵抗の下流側に配置される可変抵抗器と、前記半導体スイッチ及び抵抗の下流側の一端の電圧が一致するように前記可変抵抗器の抵抗値を調整する抵抗調整部とを有する。
【0021】
上記の態様にあっては、半導体スイッチ及び抵抗の下流側の一端の電圧が一致するように可変抵抗器の抵抗値を調整する。これにより、抵抗を介して流れる電流は、半導体スイッチの両端間の電圧を抵抗回路の抵抗値で除算した値に調整される。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
(実施形態1)
<電源システムの構成>
図1は、実施形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は、車両に搭載されており、給電制御装置10、直流電源11及び負荷12を備える。直流電源11は、例えばバッテリである。負荷12は、車両に搭載されている電気機器である。
【0024】
給電制御装置10は、半導体スイッチとして機能するNチャネル型のMOSFET20を有する。MOSFET20のドレイン及びソースそれぞれは、直流電源11の正極及び負荷12の一端に接続されている。直流電源11の負極と、負荷12の他端とは接地されている。
【0025】
MOSFET20について、状態がオンである場合、ドレイン及びソース間の抵抗値は小さく、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。MOSFET20のオン抵抗値は、MOSFET20がオンである場合におけるMOSFET20のドレイン及びソース間の抵抗値である。MOSFET20がオンである場合、直流電源11の正極から、電流が、MOSFET20、負荷12及び直流電源11の負極の順に流れ、負荷12に電力が供給される。負荷12に電力が供給された場合、負荷12は作動する。
【0026】
MOSFET20について、状態がオフである場合、ドレイン及びソース間の抵抗値は十分に大きく、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。MOSFET20がオフである場合、直流電源11は負荷12に電力を供給せず、負荷12は動作を停止している。
給電制御装置10は、MOSFET20をオン又はオフに切替えることによって、直流電源11から負荷12への給電を制御する。
【0027】
<給電制御装置10の構成>
給電制御装置10は、MOSFET20に加えて、駆動回路21、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)22、コンパレータ23、装置抵抗24、電流調整回路25及び抵抗回路26を有する。電流調整回路25は、電流を調整するための調整FET30及び差動増幅器31を有する。コンパレータ23及び差動増幅器31それぞれは、プラス端、マイナス端及び出力端を有する。調整FET30は、Pチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。
【0028】
MOSFET20のゲートには、駆動回路21が接続されている。駆動回路21は、更に、マイコン22と、コンパレータ23の出力端とが接続されている。MOSFET20のドレインは、更に、装置抵抗24の一端に接続されている。装置抵抗24の他端は、電流調整回路25の調整FET30のソースに接続されている。調整FET30のドレインは抵抗回路26の一端に接続されている。抵抗回路26の他端は接地されている。電流調整回路25内において、調整FET30のソース及びゲートそれぞれは、差動増幅器31のマイナス端及び出力端に接続されている。差動増幅器31のプラス端は、MOSFET20のソースに接続されている。抵抗回路26の一端は、更に、コンパレータ23のマイナス端に接続されている。
【0029】
駆動回路21は電圧を出力する。駆動回路21の出力電圧がMOSFET20のゲートに印加される。駆動回路21の出力電圧の基準電位は接地電位である。駆動回路21の出力電圧が一定のオン電圧以上の電圧である場合、MOSFET20はオンである。駆動回路21の出力電圧が一定のオフ電圧未満の電圧である場合、MOSFET20はオフである。オン電圧はオフ電圧を超えている。オフ電圧は正の電圧である。
【0030】
駆動回路21は、出力電圧をオン電圧以上である電圧に調整することによって、MOSFET20をオンに切替える。駆動回路21は、出力電圧をオフ電圧未満である電圧に調整することによって、MOSFET20をオフに切替える。MOSFET20がオンである場合、前述したように、MOSFET20を介して電流が流れ、直流電源11から負荷12に電力が供給される。このとき、MOSFET20では、電流はMOSFET20のドレイン及びソースの順に流れる。従って、MOSFET20を介して流れる電流経路において、MOSFET20のドレイン及びソースそれぞれは、上流側及び下流側の一端である。MOSFET20がオフである場合、前述したように、負荷12への給電が停止する。以下では、MOSFET20を介して流れる電流をスイッチ電流と記載する。
【0031】
また、電流は、直流電源11の正極から、装置抵抗24、電流調整回路25の調整FET30及び抵抗回路26の順に流れる。従って、抵抗回路26において、電流調整回路25側の一端が上流側の一端である。抵抗回路26において、接地されている一端が下流側の一端である。以下では、装置抵抗24を介して流れる電流を抵抗電流と記載する。抵抗電流の電流経路において、電流調整回路25の調整FET30は装置抵抗24の下流側に配置され、抵抗回路26は電流調整回路25の調整FET30の下流側に配置されている。
【0032】
マイコン22及びコンパレータ23それぞれは、ハイレベル電圧及びローレベル電圧を駆動回路21に出力する。ハイレベル電圧及びローレベル電圧の基準電位は接地電位である。ハイレベル電圧はローレベル電圧よりも高い。駆動回路21は、マイコン22及びコンパレータ23の出力電圧に基づいて、MOSFET20をオン又はオフに切替える。
【0033】
マイコン22は、負荷12を作動させる場合に出力電圧をハイレベル電圧に切替え、負荷12の動作を停止させる場合に出力電圧をローレベル電圧に切替える。コンパレータ23のマイナス端には、一定の所定電圧が印加されている。所定電圧は、正の電圧であり、例えば、レギュレータが直流電源11の出力電圧を降圧することによって生成される。所定電圧の基準電位は接地電位である。コンパレータ23のマイナス端には、基準電位が接地電位である抵抗回路26の上流側の一端、即ち、抵抗回路26の両端間の電圧が印加されている。以下では、抵抗回路26の両端間の電圧を回路電圧と記載する。コンパレータ23は、回路電圧が所定電圧以下の電圧となった場合、出力電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。コンパレータ23は、回路電圧が所定電圧を超えた場合、出力電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。
【0034】
電流調整回路25内において、差動増幅器31は、基準電位が接地電位である電圧を出力する。差動増幅器31の出力電圧は調整FET30のゲートに印加される。差動増幅器31の出力電圧が高い程、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値は大きい。差動増幅器31の出力電圧が低い程、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値は小さい。差動増幅器31は、出力電圧を調整することによって、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値を調整する。調整FET30及び差動増幅器31それぞれは可変抵抗器及び抵抗調整部として機能する。
【0035】
以下では、MOSFET20のソースの電圧をスイッチ電圧と記載する。装置抵抗24の出力端の電圧を抵抗電圧と記載する。スイッチ電圧及び抵抗電圧の基準電位は接地電位である。差動増幅器31は、スイッチ電圧から抵抗電圧を減算することによって算出される差分電圧が高い程、出力電圧を高い電圧に調整する。
【0036】
差動増幅器31は、スイッチ電圧が抵抗電圧よりも高い電圧に上昇した場合、出力電圧を上昇させる。このとき、スイッチ電圧及び抵抗電圧の差分電圧が大きい程、差動増幅器31の出力電圧の上昇幅は大きい。これにより、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値が上昇し、装置抵抗24を介して流れる電流が低下する。結果、装置抵抗24において発生する電圧降下の幅が低下し、抵抗電圧は上昇する。
【0037】
差動増幅器31は、スイッチ電圧が抵抗電圧よりも低い電圧に低下した場合、出力電圧を低下させる。このとき、スイッチ電圧及び抵抗電圧の差分電圧の絶対値が大きい程、差動増幅器31の出力電圧の低下幅は大きい。これにより、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値が低下し、装置抵抗24を介して流れる電流が上昇する。結果、装置抵抗24において発生する電圧降下の幅が上昇し、抵抗電圧は低下する。
【0038】
以上のように、差動増幅器31は、スイッチ電圧及び抵抗電圧が一致するように、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値を調整する。直流電源11の両端間の電圧をVbと記載する。MOSFET20のオン抵抗値をRaと記載する。MOSFET20を介して流れるスイッチ電流をIaと記載する。装置抵抗24の抵抗値をRtと記載する。装置抵抗24を介して流れる抵抗電流をIsと記載する。MOSFET20がオンである場合、スイッチ電圧は(Vb−Ra・Ia)で表される。「・」は積を示す。抵抗電圧は(Vb−Rt・Is)で表される。
【0039】
スイッチ電圧は抵抗電圧に一致するので、下記式が成り立つ。
Vb−Ra・Ia=Vb−Rt・Is
この式を展開することによって下記式が得られる。
Is=Ra・Ia/Rt
従って、差動増幅器31は、抵抗電流Isを(Ra・Ia/Rt)に調整する。Ra・Iaは、MOSFET20がオンである場合におけるMOSFET20の両端間の電圧である。このため、(Ra・Ia/Rt)はMOSFET20の両端間の電圧に比例する。
【0040】
抵抗回路26の抵抗値及び回路電圧それぞれをRs及びVdで表す。回路電圧VdはRs・Isで表され、抵抗電流Isは(Ra・Ia/Rt)で表されるので、下記式が成り立つ。
Vd=Rs・Ra・Ia/Rt
【0041】
コンパレータ23のプラス端に印加されている所定電圧をVrと記載する。コンパレータ23の出力電圧は、Vr≧Vdを満たす場合、ハイレベル電圧である。Vr≧Vdにおいて、Vdに(Rs・Ra・Ia/Rt)を代入することによって下記式が得られる。
Vr≧Rs・Ra・Ia/Rt
この式を展開することによって下記式が得られる。
Ia≦(Rt・Vr)/(Rs・Ra)
【0042】
コンパレータ23の出力電圧は、Vr<Vdを満たす場合、ローレベル電圧である。Vr<Vdにおいて、Vdに(Rs・Ra・Ia/Rt)を代入し、式を展開する。これにより、下記式が得られる。
Ia>(Rt・Vr)/(Rs・Ra)
【0043】
電流閾値Ithを下記式のように定義する。
Ith=(Rt・Vr)/(Rs・Ra)
コンパレータ23は、スイッチ電流Iaが電流閾値Ith以下の電流となった場合に出力電圧をハイレベル電圧に切替え、スイッチ電流Iaが電流閾値Ithを超えた場合に出力電圧をローレベル電圧に切替える。
【0044】
MOSFET20がオフである場合、負荷12を介して電流が流れず、スイッチ電圧がゼロVである。このため、差動増幅器31は、抵抗電圧をスイッチ電圧に一致させるために、調整FET30のゲートの電圧を低下させる。従って、MOSFET20がオフである場合、調整FET30のドレイン及びソース間の抵抗値は十分に小さい。従って、MOSFET20がオフである場合、直流電源11の両端間の電圧は、装置抵抗24及び抵抗回路26によって分圧される。装置抵抗24及び抵抗回路26が分圧を行うことによって得られた分圧電圧がコンパレータ23のマイナス端に印加される。
【0045】
分圧電圧は所定電圧Vrを超える。このため、MOSFET20がオフである場合、コンパレータ23はローレベル電圧を出力する。
【0046】
<給電制御装置10の動作>
図2は、給電制御装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図2には、マイコン22の出力電圧、MOSFET20の状態、コンパレータ23の出力電圧及びスイッチ電流の推移が示されている。これらの推移の横軸には時間が示されている。
図2では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれはH及びLで示されている。
【0047】
マイコン22の出力電圧がローレベル電圧である場合、駆動回路21はMOSFET20をオフに維持している。このため、スイッチ電流はゼロAであり、コンパレータ23の出力電圧はローレベル電圧である。
【0048】
マイコン22が出力電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替えた場合、駆動回路21は、コンパレータ23の出力電圧に無関係にMOSFET20をオンに切替える。これにより、MOSFET20を介してスイッチ電流が流れ、スイッチ電流がゼロAから上昇する。電源システム1が正常である場合においては、MOSFET20がオンであるとき、スイッチ電流は電流閾値Ith以下の電流である。
【0049】
MOSFET20がオンである場合、スイッチ電流に比例する回路電圧がコンパレータ23のマイナス端に印加される。ここで、スイッチ電流は電流閾値Ith以下の電流であるため、コンパレータ23は、出力電圧を、ローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。
【0050】
マイコン22が出力電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替えた場合、駆動回路21は、コンパレータ23の出力電圧に無関係にMOSFET20をオフに切替える。これにより、スイッチ電流はゼロAに低下する。MOSFET20がオフであるので、コンパレータ23は、出力電圧を、ハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。
【0051】
前述したように、マイコン22が出力電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替えた場合、駆動回路21はMOSFET20をオンに切替え、MOSFET20を介して、スイッチ電流が流れる。MOSFET20がオンである場合において、スイッチ電流が電流閾値Ith以下の電流であるとき、コンパレータ23はハイレベル電圧を出力している。電源システム1において故障が発生し、スイッチ電流が上昇したと仮定する。故障は、例えば、負荷12の両端の短絡である。
【0052】
スイッチ電流が電流閾値Ithを超えた場合、コンパレータ23は出力電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。マイコン22の出力電圧がハイレベル電圧である状態でコンパレータ23の出力電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、駆動回路21はMOSFET20をオフに切替える。これにより、スイッチ電流はゼロAに低下する。MOSFET20がオフに切替わるので、コンパレータ23は、ローレベル電圧を出力し続ける。駆動回路21は、マイコン22の出力電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わるまで、MOSFET20をオフに維持する。駆動回路21は切替え回路として機能する。
【0053】
以上のように、駆動回路21は、スイッチ電流が電流閾値Ithを超えた場合にMOSFET20をオフに切替えるため、MOSFET20を介して過電流が流れることが防止される。MOSFET20を介して過電流が流れた場合、MOSFET20の温度が異常な温度に上昇する可能性がある。このとき、MOSFET20において故障が発生する可能性がある。
【0054】
MOSFET20は、直流電源11から負荷12への給電を制御するためのスイッチとして機能するだけではなく、負荷12に流れる電流を検出するための抵抗としても機能する。このため、スイッチ電流の電流経路に電流検出用のシャント抵抗を配置する必要がなく、スイッチ電流の電流経路に配置される素子が少ない。結果、給電制御装置10の構成が小さく、給電制御装置10の製造費用は安価である。
【0055】
MOSFET20がオンである場合に流れるスイッチ電流は、負荷12に流れるメインの電流であるので、電流閾値Ith未満の電流である場合であっても大きい。このため、スイッチ電流の電流経路に配置される素子は、大きな電流が流れることが許容される大型の素子であり、スイッチ電流の電流経路に配置される素子は高価である。従って、スイッチ電流の電流経路に配置される素子の数が少ない程、装置の構成が小さく、装置の製造費用が安価である。
【0056】
<MOSFET20のオン抵抗値の温度依存性>
図3は、MOSFET20のオン抵抗値Ra及び周囲温度の関係を示すグラフである。MOSFET20を介してスイッチ電流が流れた場合、MOSFET20は発熱し、MOSFET20の温度が上昇する。MOSFET20の周囲温度は、MOSFET20の温度と同様に変動する。MOSFET20のオン抵抗値Raは、MOSFET20の温度、即ち、MOSFET20の周囲温度に応じて変動する。
図3に示すように、MOSFET20のオン抵抗値Raは、MOSFET20の周囲温度が高い程、高い。
【0057】
前述したように、電流閾値Ithは(Rt・Vr)/(Rs・Ra)で表される。ここで、Rt、Vr及びRsそれぞれは、装置抵抗24の抵抗値、所定電圧及び抵抗回路26の抵抗値である。電流閾値Ithは、MOSFET20の温度、即ち、MOSFET20の周囲温度に無関係に、一定であることが好ましい。しかしながら、MOSFET20のオン抵抗値Raは、MOSFET20の周囲温度に応じて変動する。
【0058】
抵抗回路26の抵抗値Rsは、MOSFET20の周囲温度に応じて、MOSFET20のオン抵抗値と異なる方向に変動する。このため、電流閾値Ithは、MOSFET20の周囲温度に応じて殆ど変動することはない。
MOSFET20の周囲温度が上昇したことによって、MOSFET20のオン抵抗値Raが上昇前のオン抵抗値の2倍に上昇したと仮定する。この場合において、抵抗回路26の抵抗値Rsが上昇前の抵抗値の(1/2)倍に低下すれば、電流閾値Ithは変動することはない。
【0059】
電流閾値Ithを一定の目標電流Igに維持するためには、下記式を満たす必要がある。
Rs・Ra=Rt・Vr/Ig
ここで、装置抵抗24の抵抗値Rtは、MOSFET20の周囲温度に無関係に一定であるので、(Rt・Vr/Ig)は定数である。抵抗回路26として、MOSFET20の周囲温度が変動した場合であっても、抵抗回路26の抵抗値Rs及びMOSFET20のオン抵抗値Raの積が一定値に維持される回路を設計すればよい。これにより、電流閾値Ithは、MOSFET20の周囲温度に無関係に一定の目標電流Igに維持される。
【0060】
図4は理想的な抵抗回路26の抵抗値Rsの説明図である。
図4の上側には、MOSFET20のオン抵抗値RaとMOSFET20の周囲温度との関係と、抵抗回路26の抵抗値RsとMOSFET20の周囲温度との理想的な関係とが示されている。
図4の下側には、(Ra・Rs)とMOSFET20の周囲温度との関係が示されている。(Rt・Vr/Ig)をCと記載する。Cは定数である。
【0061】
MOSFET20としては、
図4に示すように、予め設定されている周囲温度の設定範囲内において、オン抵抗値が周囲温度に比例するスイッチが用いられる。MOSFET20のオン抵抗値Raは、MOSFET20の周囲温度が上昇した場合、上昇する。MOSFET20の周囲温度の設定範囲内において抵抗回路26の抵抗値Rsが(C/Ra)である場合、
図4の下側に示すように、(Ra・Rs)は、MOSFET20の周囲温度に無関係に定数Cに維持される。
従って、抵抗回路26として、MOSFET20の周囲温度に関して抵抗値が(C/Ra)と同様に推移する回路を用いればよい。
【0062】
<抵抗回路26の構成>
図5は抵抗回路26の回路図である。抵抗回路26は、サーミスタ40、直列抵抗41及び並列抵抗42を有する。サーミスタ40の一端は調整FET30のドレインに接続されている。サーミスタ40他端に直列抵抗41の一端が接続されている。直列抵抗41の他端は接地されている。このように、サーミスタ40に直列抵抗41が直接に接続されている。サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路に並列抵抗42が並列に接続されている。サーミスタ40の一端は抵抗回路26の上流側の一端である。直列抵抗41の他端は抵抗回路26の下流側の一端である。
【0063】
サーミスタ40の抵抗値は、サーミスタ40の温度が上昇した場合に低下する。サーミスタ40はMOSFET20の近傍に配置されている。このため、サーミスタ40の温度は、MOSFET20の周囲温度に実質的に一致する。結果、サーミスタ40の抵抗値は、MOSFET20の周囲温度が上昇した場合に低下する。
【0064】
従って、サーミスタ40の抵抗値はMOSFET20の周囲温度に応じてMOSFET20のオン抵抗値と異なる方向に変動する。このため、サーミスタ40を有する抵抗回路26の抵抗値も、MOSFET20の周囲温度に応じて、MOSFET20のオン抵抗値と異なる方向に変動する。
【0065】
MOSFET20の周囲温度について、サーミスタ40の抵抗値の推移が、
図4に示す(C/Ra)の推移と一致していない場合、直列抵抗41及び並列抵抗42を接続することによって、抵抗回路26の抵抗値Rsの推移を、
図4に示す(C/Ra)の推移に実質的に一致させることができる。
【0066】
抵抗回路26、サーミスタ40、直列抵抗41及び並列抵抗42それぞれの抵抗値をRs、Rr、Rc及びRpと記載する。抵抗回路26の抵抗値Rsは下記式を満たす。
Rs=(Rr+Rc)・Rp/(Rr+Rc+Rp)
【0067】
<直列抵抗41の効果>
図6は直列抵抗41の効果の説明図である。サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路の抵抗値をRfと記載する。直列回路の抵抗値Rfは(Rr+Rc)で表される。
図6には、サーミスタ40の抵抗値Rc及びMOSFET20の周囲温度の関係と、直列回路の抵抗値Rf及びMOSFET20の周囲温度の関係とが示されている。
図6に示すように、サーミスタ40の抵抗値Rcは、MOSFET20の周囲温度が上昇した場合に低下する。サーミスタ40抵抗値Rcの推移は曲線を描く。
【0068】
直列抵抗41の抵抗値RcはMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である。このため、サーミスタ40に直列抵抗41を直列に接続することによって、サーミスタ40の抵抗値Rc及びMOSFET20の周囲温度の関係のグラフの形状を変更せずに、抵抗値をサーミスタ40の抵抗値Rrから直列抵抗41の抵抗値Rcだけ増加させることができる。サーミスタ40に直列抵抗41を直列に接続することによって、抵抗回路26の抵抗値Rsの最小値を調整することができる。
【0069】
<並列抵抗42の効果>
図7は並列抵抗42の効果の説明図である。
図7には、サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路の抵抗値RfとMOSFET20の周囲温度との関係が示されている。
図7には、更に、抵抗回路26の抵抗値RsとMOSFET20の周囲温度との関係が示されている。
【0070】
直列回路及び並列抵抗42の並列回路の抵抗値は、(Rf・Rp/(Rf+Rp))であり、直列回路の抵抗値Rfよりも低い。従って、直列回路に並列抵抗42を並列に接続することによって、抵抗値がRfから(Rf・Rp/(Rf+Rp))に低下する。MOSFET20の周囲温度が第1温度T1である場合におけるサーミスタ40及び直列回路それぞれの抵抗値をRr1及びRf1と記載する。MOSFET20の周囲温度が第2温度T2である場合におけるサーミスタ40及び直列回路それぞれの抵抗値をRr2及びRf2と記載する。直列回路の抵抗値Rf1,Rf2について下記式が成り立つ。
Rf1=Rr1+Rc
Rf2=Rr2+Rc
【0071】
サーミスタ40の抵抗値Rrは、MOSFET20の周囲温度が高い程、小さい。第2温度T2は第1温度T1よりも高いので、抵抗値Rr2は抵抗値Rr1よりも小さい。前述したように、直列抵抗41の抵抗値Rcは、MOSFET20の周囲温度に無関係に一定である。従って、抵抗値Rf2は抵抗値Rf1よりも小さい。
【0072】
MOSFET20の周囲温度が第1温度T1である場合、抵抗回路26の抵抗値Rsは(Rf1・Rp/(Rf1+Rp))で表される。直列回路に並列抵抗42を並列に接続することによって、抵抗値がRf1から(Rf1・Rp/(Rf1+Rp))に低下する。同様に、MOSFET20の周囲温度が第2温度T2である場合、抵抗回路26の抵抗値Rsは(Rr2・Rp/(Rr2+Rp))で表される。直列回路に並列抵抗42を並列に接続することによって、抵抗値がRr2から(Rr2・Rp/(Rr2+Rp))に低下する。
【0073】
MOSFET20の周囲温度が第2温度T2である場合における抵抗値の低下幅は、MOSFET20の周囲温度が第1温度T1である場合における抵抗値の低下幅よりも小さい。例えば、抵抗値Rf1、抵抗値Rf2及び抵抗値Rpそれぞれが10オーム、5オーム及び5オームであると仮定する。MOSFET20の周囲温度が第2温度T2である場合、抵抗値は5オームから2.5オームに低下し、低下幅は2.5オームである。MOSFET20の周囲温度が第1温度T1である場合、抵抗値は10オームから3.33(=10/3)オームに低下し、低下幅は6.66(=20/3)オームである。
【0074】
直列回路の抵抗値Rfが大きい程、並列抵抗42を接続することによって生じる抵抗値の低下の幅は大きい。従って、並列抵抗42を接続することによって、直列回路の抵抗値RfとMOSFET20の周囲温度との関係を示すグラフの曲率を低減することができる。曲率が低減した場合、グラフは直線に近づく。
【0075】
MOSFET20の周囲温度を1つの温度に固定した場合、並列抵抗42の抵抗値が小さい程、抵抗値の低下幅は大きい。このため、グラフの曲率の低減幅は、並列抵抗42の抵抗値Rpが小さい程、大きい。グラフの曲率は、並列抵抗42の抵抗値Rpが小さい程、小さい値に低下する。
【0076】
以上のことから、サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路に並列抵抗42を並列に接続することによって、抵抗回路26の抵抗値Rs及びMOSFET20の周囲温度の関係を示すグラフの形状を変更することができる。結果、抵抗回路26の抵抗値Rs及びMOSFET20の周囲温度の関係を示すグラフの形状を、
図4に示す(C/Ra)が描くグラフの形状に実質的に一致させることができる。
【0077】
抵抗回路26は直列抵抗41及び並列抵抗42を有するので、(Ra・Rr)が周囲温度に応じて変動する場合であっても、直列抵抗41及び並列抵抗42を接続することによって、(Ra・Rs)がMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である構成を確実に実現することができる。前述したように、Ra、Rr及びRsそれぞれは、MOSFET20のオン抵抗値、サーミスタ40の抵抗値及び抵抗回路26の抵抗値である。
【0078】
<給電制御装置10の効果>
抵抗回路26の回路電圧Vdは(Rs・Ra・Ia/Rt)で表される。前述したように、IaはMOSFET20を介して流れるスイッチ電流である。Rtは装置抵抗24の抵抗値である。抵抗回路26の抵抗値Rsは、MOSFET20の周囲温度に応じて、MOSFET20のオン抵抗値Raとは異なる方向に変動する。具体的には、MOSFET20の周囲温度が上昇した場合、MOSFET20のオン抵抗値Raは上昇し、抵抗回路26の抵抗値Rsは低下する。
【0079】
このため、MOSFET20の周囲温度が変動した場合であっても、Rs・Raが実質的に一定であるので、回路電圧VdはMOSFET20の周囲温度に応じて殆ど変動しない。回路電圧Vdはスイッチ電流Iaに比例する。このため、スイッチ電流Iaが一定の電流閾値Ith(目標電流Ig)を超えた場合に、回路電圧Vdが所定電圧Vrを超え、MOSFET20がオフに切替わる。
【0080】
(実施形態2)
実施形態1において、並列抵抗42が接続される場所は、サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路の両端間に限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には、実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0081】
<抵抗回路26の構成>
図8は実施形態2における抵抗回路26の回路図である。実施形態2における抵抗回路26では、サーミスタ40及び直列抵抗41の直列回路ではなく、サーミスタ40に並列抵抗42が並列に接続されている。
【0082】
サーミスタ40に並列抵抗42を並列に接続することによって、サーミスタ40の抵抗値Rr及びMOSFET20の周囲温度の関係を示すグラフの曲率が低減され、このグラフの形状が変更される。サーミスタ40及び並列抵抗42の並列回路に直列抵抗41を直列に接続することによって、並列回路の抵抗値及びMOSFET20の周囲温度の関係のグラフの形状を変更せずに、抵抗値を並列回路の抵抗値から直列抵抗41の抵抗値Rcだけ増加させることができる。
【0083】
従って、サーミスタ40に並列抵抗42を並列に接続することによって、実施形態1と同様に、抵抗回路26の抵抗値Rs及びMOSFET20の周囲温度の関係を示すグラフの形状を、
図4に示す(C/Ra)が描くグラフの形状に実質的に一致させることができる。更に、並列回路に直列抵抗41を直列に接続することによって、実施形態1と同様に、抵抗回路26の抵抗値Rsの最小値を調整することができる。結果、(Ra・Rr)が周囲温度に応じて変動する場合であっても、直列抵抗41及び並列抵抗42を接続することによって、(Ra・Rs)がMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である構成を確実に実現することができる。実施形態1の説明で述べたように、Ra、Rr及びRsそれぞれは、MOSFET20のオン抵抗値、サーミスタ40の抵抗値及び抵抗回路26の抵抗値である。
【0084】
<給電制御装置10の効果>
実施形態2における給電制御装置10は、実施形態1における給電制御装置10が奏する効果を同様に奏する。
【0085】
<変形例>
実施形態1において、サーミスタ40に直列抵抗41を直列に接続することによって、(Ra・Rs)がMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である構成を実現することができる場合、抵抗回路26は並列抵抗42を有していなくてもよい。実施形態2において、サーミスタ40に並列抵抗42を並列に接続することによって、(Ra・Rs)がMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である構成を実現することができる場合、抵抗回路26は直列抵抗41を有していなくてもよい。この場合、サーミスタ40の他端は、抵抗電流の電流経路において下流側の一端であり、接地される。
【0086】
実施形態1,2において、(Ra・Rr)がMOSFET20の周囲温度に無関係に一定である場合、抵抗回路26は直列抵抗41及び並列抵抗42を有していなくてもよい。実施形態1の説明で述べたように、Rrはサーミスタ40の抵抗値である。抵抗回路26が直列抵抗41及び並列抵抗42を有しない場合、サーミスタ40の他端は、抵抗電流の電流経路において下流側の一端であり、接地される。
【0087】
実施形態1,2において、直流電源11及び負荷12間に接続されるスイッチは、半導体スイッチであればよいので、Nチャネル型のMOSFET20に限定されない。直流電源11及び負荷12間に接続されるスイッチは、MOSFETとは異なるNチャネル型のFET、Pチャネル型のFET又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0088】
実施形態1,2において、電流調整回路25が有する可変抵抗器は、調整FET30、即ち、Pチャネル型のFETに限定されない。可変抵抗器は、例えば、PNP型のバイポーラトランジスタであってもよい。この場合、バイポーラトランジスタのエミッタ、コレクタ及びベースそれぞれは、調整FET30のソース、ドレイン及びゲートに対応する。
【0089】
開示された実施形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。