(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-169124(P2021-169124A)
(43)【公開日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】無機鋳型および中子の造型方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/02 20060101AFI20211001BHJP
B22C 5/04 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
B22C1/02 Z
B22C5/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【公開請求】
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2021-118311(P2021-118311)
(22)【出願日】2021年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】520432129
【氏名又は名称】大阪硅曹株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 義明
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA04
4E092AA18
4E092AA19
4E092BA10
(57)【要約】
【課題】 コールドボックスやシェルモールド、フランを始めとする有機粘結剤を使用した鋳物砂と一緒に再生処理を行うことが可能な無機鋳型および中子の造型方法を提供する。
【解決手段】 組成としてSiO
2が70%以上の鋳物砂に、無機粘結剤として珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムを鋳物砂に対して3.0%〜15.0%の範囲で配合し、添加剤として流動パラフィンを鋳物砂に対して0.1%〜5.0%、カオリンの無水物である焼成カオリンを鋳物砂に対して3.0%〜10.0%配合し、混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる無機鋳型および中子の造型方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成としてSiO2が70%以上の鋳物砂に、無機粘結剤として珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムを鋳物砂に対して3.0%〜15.0%の範囲で配合し、添加剤として流動パラフィンを鋳物砂に対して0.1%〜5.0%、カオリンの無水物である焼成カオリンを鋳物砂に対して3.0%〜10.0%配合し、混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる無機鋳型および中子の造型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機粘結剤を使用した鋳物砂と一緒に再生処理を行うことが可能な無機鋳型および中子の造型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機粘結剤または無機粘結剤を使用した鋳物砂の再生処理については、それぞれの粘結剤において再生砂を生成する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、無機粘結剤を使用した鋳物砂から再生砂を生成する方法が開示されている(例えば、特願平5−160436号参照)。特許文献2には、無機粘結剤を使用した鋳物砂から再生砂を生成する方法が開示されている(例えば、特願平6−138190号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平5−160436号
【特許文献2】特願平6−138190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、鋳物砂の再生処理に関して、以下の課題を見出した。
現在、鋳物砂の再生処理は有機粘結剤を使用した鋳物砂および無機粘結剤を使用した鋳物砂がそれぞれ異なる方法で再生処理が行われている。
【0005】
有機粘結剤を使用した鋳物砂と無機粘結剤を使用した鋳物砂とを一緒に再生処理することができれば、再生処理の効率化や既存設備の有効利用、処理コストの減少また鋳造における有機中子と無機中子との同時併用もできるようになるが、無機粘結剤は、再生処理中にブロッキングが起こるおそれがあり、具体的には焙焼工程でブロッキングが起こるおそれが大きいために、有機粘結剤を使用した鋳物砂と一緒に再生処理を行うことは極めて困難を要する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、有機粘結剤を使用した鋳物砂と一緒に再生処理を行っても、ブロッキングすることなく再生処理ができる無機鋳型および中子の造型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
組成としてSiO
2が70%以上の鋳物砂に、無機粘結剤として珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムを鋳物砂に対して3.0%〜15.0%の範囲で配合し、添加剤として流動パラフィンを鋳物砂に対して0.1%〜5.0%、カオリンの無水物である焼成カオリンを鋳物砂に対して3.0%〜10.0%配合し、混合したのち、造型用型に充填し硬化して得られる無機鋳型および中子の造型方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、有機粘結剤を使用した鋳物砂と無機粘結剤を使用した鋳物砂とを一緒に再生処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態)
本実施形態では、組成としてSiO
2が70%以上の鋳物砂に、無機粘結剤として珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムを鋳物砂に対して3.0%〜15.0%の範囲で配合し、添加剤として流動パラフィンを鋳物砂に対して0.1%〜5.0%、カオリンの無水物である焼成カオリンを鋳物砂に対して3.0%〜10.0%配合し、混合したのち、造型用型に充填し硬化して無機鋳型および中子を造型する。
【0012】
鋳物砂は組成としてSiO
2が70%以上が好ましく、更に90%以上がより好ましい。
【0013】
無機粘結剤としての珪酸ナトリウムおよび珪酸カリウムの配合量は、鋳物砂に対して3.0%〜15.0%が好ましく、5.0〜10.0%がより好ましい。
【0014】
流動パラフィンの配合量は、鋳物砂に対して0.1%〜5.0%が好ましく、0.5%〜2.0%がより好ましい。
【0015】
カオリンの無水物である焼成カオリンの配合量は、鋳物砂に対して3.0%〜10.0%が好ましく、5.0%〜8.0%がより好ましい。
【0016】
無機鋳型および中子の硬化方法は、従来公知の硬化方法が用いられ、造型用型の加熱による硬化方法、造型用型内への熱風吹込みまたはCO
2ガス吹込みによる硬化方法が使用できる。
【実施例】
【0017】
本実施例では、有機粘結剤を使用した中子と、組成としてSiO
2が70%以上の鋳物砂に無機粘結剤として3号珪酸ナトリウムを配合し、添加剤として流動パラフィンおよび焼成カオリンを配合した混合物を造型用型に充填し硬化して造型した無機中子とをそれぞれ50gずつ3mm〜5mm程度の大きさに解砕し合計100gの混合サンプルを作成した。耐熱容器に混合サンプルを充填したのち、焼成炉にて700℃で30分間焼成を行った。常温に戻したのち混合サンプルを355μmの網目の篩にかけて通過率の測定を行った。なお、鋳物砂はあらかじめ355μmの網目の篩にかけ、355μm以上の鋳物砂を取り除いたものを使用した。
【実施例1】
【0018】
有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が99%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を造型用型に充填し硬化した無機中子をそれぞれ50gずつ3mm〜5mm程度の大きさに解砕し合計100gの混合サンプルを作成した。混合サンプルを耐熱容器に充填したのち、焼成炉にて700℃で30分間焼成を行った。常温に戻したのち混合サンプルを355μmの網目の篩にかけて通過率の測定を行った。
【実施例2】
【0019】
有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が75%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を使用して、実施例1と同様な測定を行った。
【実施例3】
【0020】
有機粘結剤としてコールドボックスを使用した中子と、組成としてSiO
2が99%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を使用して、実施例1と同様な測定を行った。
【実施例4】
【0021】
有機粘結剤としてコールドボックスを使用した中子と、組成としてSiO
2が75%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を使用して、実施例1と同様な測定を行った。
【0022】
(比較例1) 有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が99%の鋳物砂に3号珪酸ナトリウムを9.0%配合し、添加剤は配合せずに、実施例1と同様な測定を行った。
【0023】
(比較例2) 有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が75%の鋳物砂に3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%配合し、実施例1と同様な測定を行った。
【0024】
(比較例3) 有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が75%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%配合し、実施例1と同様な測定を行った。
【0025】
(比較例4) 有機粘結剤としてシェルモールドを使用した中子と、組成としてSiO
2が30%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を使用して、実施例1と同様な測定を行った。
【0026】
(比較例5) 有機粘結剤としてコールドボックスを使用した中子と、組成としてSiO
2が30%の鋳物砂に流動パラフィンを0.6%、3号珪酸ナトリウムを9.0%、焼成カオリンを6.1%の順序で攪拌しながら配合した混合物を使用して、実施例1と同様な測定を行った。
【0027】
(評価方法)
1.ブロッキング状況の確認
実施例1〜4および比較例1〜5にて作成した混合サンプルを355μmの網目の篩に かけ通過率の測定を行い、通過率が99%以上の場合を○、通過率99%未満の場合を ×とし、評価を行った。
【0028】
(評価)
ブロッキング状況について実施例1〜4および比較例1〜5の結果を表1に示す。
【表1】
【0029】
(総合評価)
本発明である実施例1〜4は、組成としてSiO
2が70%以上の鋳物砂を使用した無機中子の例である。実施例1〜4の全てにおいてブロッキングが見られなかった。
比較例1〜5は、添加剤の配合無しまたは組成としてSiO
2が70%以下の鋳物砂を使用した無機中子の例である。比較例1〜5の全てにおいてブロッキングが見られた。