(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-169131(P2021-169131A)
(43)【公開日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/26 20060101AFI20211001BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20211001BHJP
G05B 19/401 20060101ALI20211001BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
B23Q15/26
G01B5/00 F
G05B19/401
B23Q17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-72646(P2020-72646)
(22)【出願日】2020年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 通久
(72)【発明者】
【氏名】横田 祥也
(72)【発明者】
【氏名】安倍 宗孝
【テーマコード(参考)】
2F062
3C001
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062AA10
2F062AA12
2F062AA85
2F062BB03
2F062BB09
2F062BC57
2F062CC03
2F062CC09
2F062CC23
2F062DD02
2F062DD11
2F062DD23
2F062DD24
2F062DD33
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF07
2F062FF17
2F062FF26
2F062HH01
2F062JJ06
2F062KK01
3C001KA01
3C001KB04
3C001TB02
3C001TC05
3C029EE02
3C269AB05
3C269BB03
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF25
3C269JJ18
3C269MN16
3C269QB17
(57)【要約】
【課題】より正確な回転軸の回転中心および回転中心の向きを算出し、ワークの加工精度を向上した多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明は、ワー
クが載置されるテーブル4,5とワー
クを加工する工具61を、加工プログラム201に基づいて回転軸の制御により相対移動させる多軸加工
機の回転中心測定方法であって、加工プログラム201を取得する加工プログラム取得工程(S101)と、加工プログラム201から工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて測定角度を算出する加工プログラム解析工程(S102)と、テーブル4,5に基準球63を載置するとともにテーブル4,5と工具61を相対移動させて基準球63の位置を計測し、回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程(S103)を行うことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を、加工プログラムに基づいて回転軸の制御により相対移動させる多軸加工機の回転中心測定方法であって、
前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、
基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を行うことを特徴とする多軸加工機の回転中心測定方法。
【請求項2】
前記加工プログラム解析工程は、前記指令角度の度数分布を算出し、出現頻度の高い前記指令角度を前記測定角度とすることを特徴とする請求項1記載の多軸加工機の回転中心測定方法。
【請求項3】
前記加工プログラム解析工程は、前記度数分布から前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度を算出し、前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度のうち下限値、上限値および中間値を前記測定角度とすることを特徴とする請求項2記載の多軸加工機の回転中心測定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の回転中心測定方法を多軸加工機によって実行させるように、当該多軸加工機のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
多軸加工機の加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて前記多軸加工機の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算するための測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
加工プログラムを数値制御部および全体制御部にて処理して回転軸のサーボモータを駆動することにより、ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を相対移動させる多軸加工機であって、
前記数値制御部は、
前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、
基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を実行することを特徴とする多軸加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の幾何学的誤差を正確に測定することが可能な多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物(以下、ワーク)に対して複数の角度から工具を近づけて複雑な形状の加工を行う多軸工作機械が知られている。例えば、直進3軸と回転2軸から構成されるマシニングセンタ等の5軸加工機は、A軸周りおよびC軸周りに回転するテーブルと、X軸Y軸Z軸にスライド移動する工具を備え、テーブル上にワークを載置して、ワークをA軸およびC軸周りに回転移動させながら工具をスライド移動して多様な形状の加工を行う。
このような5軸加工機においては、組立時に生じる誤差、ワークや回転軸そのものの重さによる撓み、回転軸の熱による変位等の要因により、回転軸の回転中心の位置や回転中心の向き等に幾何学的な誤差(幾何偏差)が生じる。さらに軸数が多いことに伴って軸同士の幾何偏差の数が増大し、ワークの加工精度に大きな影響を与えてしまう。
【0003】
よってワークの加工精度の問題を解消するため、加工を行う前に実際の回転中心の位置や回転中心の向きを求める方法が行われている。
具体的には、
図11に示すように基準球およびタッチプローブを用意し、旋回テーブル上に基準球を設置し、タッチプローブを加工ヘッドの取付部に取り付ける(S01)。そして求めたい回転軸周りにテーブルを回転させて回転角度を変えながら、回転角度の異なる基準球の位置をタッチプローブにより3点計測する(S02)。計測した3点を通る平面の法線ベクトルを求めることにより回転中心の向きを演算する(S03)。さらに計測した3点を通る円弧を近似することで、円弧の中心点を求め、円弧の中心点を通る直線と他の回転軸とにより回転中心の位置を演算する(S04)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−038902号公報
【特許文献2】特許第5875568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転中心の位置を円弧近似により求める場合、基準球の位置を計測する回転角度により、得られる回転中心の位置にばらつきが生じてしまう。例えば、特許文献1や特許文献2記載の方法のように特定の回転角度で基準球の位置を計測している場合は、加工前に使用した基準球の回転角度と実際に加工プログラムで使用される回転角度が異なるため、回転中心の位置にずれが生じ、加工精度が悪化してしまう。
【0006】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、より正確な回転軸の回転中心および回転中心の向きを算出し、ワークの加工精度を向上した多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を、加工プログラムに基づいて回転軸の制御により相対移動させる多軸加工機の回転中心測定方法であって、前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を行うことを特徴とする。
また本発明は、加工プログラムを数値制御部および全体制御部にて処理して回転軸のサーボモータを駆動することにより、ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を相対移動させる多軸加工機であって、前記数値制御部は、前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を実行することを特徴とする。
【0008】
ここで「テーブル」とは、本実施形態のチルトテーブルおよび旋回テーブルをさす。
本発明によれば、実際にワークを加工する際に使用する加工プログラムを解析して、加工プログラムでよく使用される工具姿勢の指令角度を算出し、この指令角度に基づいて幾何偏差測定工程において使用する基準球の測定角度を導出している。よって、基準球を使用して幾何偏差測定を行った際の回転軸の回転中心の位置および向きと実際の回転軸の回転中心の位置と向きにずれが生じる問題を回避することができ、加工誤差を最小限に抑えることが可能である。
【0009】
本発明の多軸加工機の回転中心測定方法は、前記加工プログラム解析工程が前記指令角度の度数分布を算出し、出現頻度の高い前記指令角度を前記測定角度とすることを特徴とする。
また本発明の多軸加工機の回転中心測定方法は、前記加工プログラム解析工程が前記度数分布から前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度を算出し、前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度のうち下限値、上限値および中間値を前記測定角度とすることを特徴とする。
【0010】
ここで「指令角度の度数分布」とは、加工プログラムに含まれる指令角度のデータの集合を指令角度ごとにわけたときの、それぞれの指令角度の出現頻度の分布状況のことをいう。また「指令角度の度数分布」には、加工プログラムに含まれる指令角度のデータの集合をいくつかの区間にわけたときの、それぞれの区間に所属する指令角度の出現頻度の分布状況も含まれる。
ここで「出現頻度」とは、データ群において特定の文字や記号が何回出てくるか表す量であり、出現回数と同義である。本明細書においては、加工プログラムに含まれる指令角度のデータの集合において特定の指令角度が何回で出てくるかを表す量として使用している。
本発明によれば、加工プログラムで使用される工具姿勢の指令角度の度数分布を算出して、出現頻度の高い指令角度を測定角度としているため、簡単かつ正確に幾何偏差測定で使用する測定角度を算出することが可能となる。
【0011】
本発明は、請求項1から3のいずれか一項記載の回転中心測定方法を多軸加工機によって実行させるように、当該多軸加工機のコンピュータ上で動作するプログラムであり、また本発明は、コンピュータに、多軸加工機の加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、解析した結果に基づいて前記多軸加工機の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算するための測定角度を算出する加工プログラム解析工程と、を実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、加工プログラム取得工程と加工プログラム解析工程と幾何偏差測定工程を全て多軸加工機上で実行することで、別の設備を追加することなく、正確な回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算することができ、設備投資を最小限に抑えることが可能となる。
また本発明によれば、加工プログラム取得工程と加工プログラム解析工程を多軸加工機とは異なるコンピュータ上で実行することで事前に測定角度を算出し、ワークを加工する直前に多軸加工機上で既に算出された測定角度を使用して幾何偏差測定工程を実行する。このように工程を異なる装置で行うことにより、ワークを加工する前の初期設定時間を短縮化することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、より正確な回転軸の回転中心および回転中心の向きを算出し、ワークの加工精度を向上した多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法およびプログラムを提供することが可能となる。さらに上記構成とすることにより、幾何偏差工程で使用する測定角度を簡単かつ迅速に求めることが可能となり、初心者から上級作業者まで、どんな作業者であっても正確な回転軸の回転中心の位置および向きを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る5軸加工機100の概略図である。
【
図2】上記実施形態に係る5軸加工機100の内部の構造を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態に係る5軸加工機100のブロック図である。
【
図4】上記実施形態に係る5軸加工機100の回転中心測定方法を示すフロー図である。
【
図5】上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム201の概要を示す模式図である。
【
図6】上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム解析工程を示すフロー図である。
【
図7】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフの一例である。
【
図8】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度Φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度Φn)を表すグラフの一例である。
【
図9】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフのその他の例である。
【
図10】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度Φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度Φn)を表すグラフのその他の例である。
【
図11】上記実施形態に係るタッチプローブ62と旋回テーブル5に設置された基準球63の模式図である
【
図12】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてA軸周りにチルトテーブル4を回転した状態を説明する模式図である。
【
図13】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてC軸周りに旋回テーブル5を回転した状態を説明する模式図である。
【
図14】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程を示すフロー図である。
【
図15】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程において回転中心の位置を求める方法を説明する模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る5軸加工システム500のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の多軸加工機、多軸加工機の回転中心測定方法の実施形態として、5軸加工機100について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能であり、それぞれが独立して発明を構成する。
【0016】
<1.第1の実施形態>
(1.5軸加工機100の全体構成)
【0017】
図1、
図2および
図3を参照して、5軸加工機100の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る5軸加工機100の概略図であり、
図2は、上記実施形態に係る5軸加工機100の内部の構造を示す模式図である。
5軸加工機100は、X軸、Y軸、Z軸の直線軸3軸と、回転軸2軸の5軸制御を行う加工機であり、ワークWをチルトテーブル4とともに旋回させるテーブル旋回型である。5軸加工機100には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が設定されており、X軸に平行に延びる軸心周りの回転軸としてA軸が、Z軸に平行に延びる軸心周りの回転軸としてC軸が設定されている。
【0018】
5軸加工機100は、基台1と、加工ヘッド2と、Y軸移動テーブル3と、Y軸移動テーブル3の上に載置されてA軸周りに回転可能に構成されたチルトテーブル4と、チルトテーブル4の上に載置されてC軸周りに回転可能に構成された旋回テーブル5と、制御装置7を備える。
基台1、加工ヘッド2、Y軸移動テーブル3、チルトテーブル4、旋回テーブル5を含む加工エリアKは、5軸加工機100の筐体9内に設けられている。
【0019】
加工ヘッド2は、基台1に対して、X軸方向およびZ軸方向に移動可能に構成されている。加工ヘッド2には工具61を取り付けるための取付部8が設けられており、取付部8が回転することにより、工具61を回転させて切削加工を行うことができる。
【0020】
Y軸移動テーブル3は、基台1に対して、Y軸方向に移動可能に構成されている。Y軸移動テーブル3上には、チルトテーブル4が載置されている。チルトテーブル4の上には旋回テーブル5がさらに載置されている。作業者は、旋回テーブル5上にワークWを載置することで、工具61によってワークWを加工することができる。
【0021】
チルトテーブル4は、回転軸としてのA軸周りに回転可能に構成されており、A軸とX軸とが平行となるようにY軸移動テーブル3上に載置される。
【0022】
旋回テーブル5は、回転軸としてのC軸周りに回転可能に構成されており、A軸の回転角度が0°の場合に、C軸とZ軸とが平行となるようにチルトテーブル4上に載置される。チルトテーブル4及び旋回テーブル5をA軸およびC軸回りに任意の角度に回転させることで、旋回テーブル5上に載置されたワークWの工具に対する姿勢を変更して加工することができる。
【0023】
このように、チルトテーブル4のA軸はX軸と平行に、旋回テーブル5のC軸はZ軸と平行に設置されていることが望ましいが、実際には各テーブルの加工誤差や取付誤差により、A軸およびC軸がそれぞれX軸およびZ軸に対して傾いた状態で取り付けられることとなる。そこで、本実施形態では、実際のA軸およびC軸の回転中心の位置および実際のA軸およびC軸の回転中心の向きを測定して、その後の加工処理に使用している。ここで「回転中心の位置」とは回転軸の中心座標であり、「回転中心の向き」とは回転軸の方向を示すベクトルである。A軸およびC軸の幾何偏差の算出方法は後述する。
【0024】
(1.2.5軸加工機100の機能構成)
【0025】
図3は、上記実施形態に係る5軸加工機100のブロック図である。
図3に示すように5軸加工機100は、入力部20、操作部30、記憶部40、制御部50、サーボモータ60を備える。
5軸加工機100は、CAD/CAM装置200と接続され、入力部20を介してCAD/CAM装置200から加工プログラム201を取得し、記憶部40に格納する。また制御部50は加工プログラム201に基づいて、Y軸移動テーブル3、チルトテーブル4、旋回テーブル5、工具61に設けられた各サーボモータ60を駆動する。
【0026】
図5は、上記実施形態における5軸加工機100の加工プログラム201の内容を示す模式図である。
CAD/CAM装置200は、加工プログラム201を作成する装置であり、ワークWの加工形状を作成し、ワークWの加工形状に基づいて各機械を動作させるための加工プログラム201を作成する。
加工プログラム201は、複数の加工ブロックによって構成されており(
図5)、加工ブロックには、工具61の先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度を指定するGコードや、ワークWに対する工具61の先端点の相対速度を指令するFコード等が記述されている。ここで「工具姿勢」とは、工具とワークの相対的な姿勢を指し、工具姿勢の指令角度は、加工ブロックごとに回転軸(A軸、C軸)の回転角度として指定されている。
【0027】
入力部20には、CAD/CAM装置200から加工プログラム201が入力される。加工プログラム201はCAD/CAM装置200からだけでなく、作業者により記憶媒体を介して入力部20に入力されてもよい。
【0028】
操作部30は、表示部31および手入力部32を含み、手入力部32としてキーボードやタッチパネル等が使用される。作業者は表示部31に表示される内容に従って手入力部32により5軸加工機100の各種設定を行うことができる。
【0029】
記憶部40は、例えば、RAM(Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成されており、制御部50による各種プログラムに基づく処理の実行時のワークエリア等として用いられる。また、記憶部40は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、又はSDD(Solid State Drive)を備えており、制御部50の処理に利用される閾値等のデータ及びプログラム等を記憶する。
【0030】
サーボモータ60は、Y軸移動テーブル3、チルトテーブル4、旋回テーブル5、工具61にそれぞれ設けられている。全体制御部51の指令により各サーボモータ60を駆動することで、各構成部品を回転または移動させることができる。
【0032】
制御部50は、全体制御部51と、数値制御部52から構成される。
【0033】
全体制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)等で構成され、5軸加工機100の全体の動作を制御し、各サーボモータ60を駆動するものである。
【0034】
数値制御部52は、加工プログラム取得部521と、加工プログラム解析部522と、幾何偏差測定部523を備える。
【0035】
加工プログラム取得部521は、加工プログラム取得工程を実行するものであって、作業者が操作部30を介して選択した加工プログラム201を記憶部40から取得するものである。
【0036】
加工プログラム解析部522は、加工プログラム解析工程を実行するものである。加工プログラム解析部522は、加工プログラム取得部521により取得された加工プログラムを解析し、加工プログラム201の中の加工ブロックごとにおける回転軸2軸に対する指令角度θn,Φn(nは加工ブロックのインデックスであり、n=1,2,・・・,Nである。Nは加工ブロック数とする。)を参照する。そして、参照した回転軸2軸の指令角度θn,Φnから度数分布を演算し、幾何偏差を測定するための測定角度λ_θm,λ_φmを算出して、記憶部40に格納する。
【0037】
幾何偏差測定部523は、加工プログラム解析部522において算出された測定角度λ_θm,λ_φmで基準球63を回転させて基準球63の位置を計測することにより、実際の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算して、記憶部40に格納する。
【0039】
図4は、上記実施形態に係る5軸加工機100の回転中心測定方法を示すフロー図であり、
図11は、上記実施形態に係るタッチプローブ62と旋回テーブル5に設置された基準球63の模式図である。
作業者はワークWを加工する前に5軸加工機100の回転軸の幾何偏差を測定するため回転中心測定を以下の通り行う。
作業者はCAD/CAM装置200等により加工プログラム201を作成し、入力部20を介して記憶部40に加工プログラム201を保存する。
次に、作業者が加工ヘッド2の取付部8にタッチプローブ62を取り付け、旋回テーブル5上に基準球63を設置する(
図11)。そして、手入力部32を介して表示部31に表示された設定画面を操作すると、記憶部40から加工プログラム201が読み出されて、設定画面に加工プログラム201が表示される。作業者が表示部31に表示された加工プログラム201を手入力部32により選択して、回転中心測定を実施するための開始ボタン等を押下すると、回転中心測定が開始され、加工プログラム取得部521は記憶部40から作業者に選択された加工プログラム201を取得する(S101:加工プログラム取得工程)。
【0040】
次に、加工プログラム解析部522は、加工プログラム取得部521により取得された加工プログラム201を解析し、回転軸A軸に対する指令角度θnおよび回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布を算出して、回転軸A軸およびC軸の測定角度λ_θm,λ_φm(m=1,2,・・・,M Mは測定角度の数)を算出し、算出された測定角度λ_θm,λ_φmを記憶部40に格納する(S102:加工プログラム解析工程)。
回転軸の幾何偏差を測定するためには、測定角度λ_θm,λ_φmは3点以上必要(M≧3)である。
【0041】
そして、幾何偏差測定部523は、A軸まわりに測定角度λ_θmでチルトテーブル4を回転して基準球63の位置を計測し、同様にC軸周りに測定角度λ_φmで旋回テーブル5を回転して基準球63の位置を計測し、基準球63の位置から実際の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算し、記憶部40に格納する(S103:幾何偏差測定工程)。
【0042】
(1.5.加工プログラム解析工程の詳細説明)
【0043】
図6は、上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム解析工程を示すフロー図であり、
図7は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフの一例である。
図8は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度Φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度Φn)を表すグラフの一例であり、
図9は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフのその他の例である。
図10は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度Φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度Φn)を表すグラフのその他の例である。
取得した加工プログラム201に加工ブロックがN個あった場合、加工ブロックごとに回転軸A軸の指令角度θnおよび回転軸C軸の指令角度Φnが存在する(
図5)。よって、加工プログラム解析部522は加工プログラム201内を参照し(S201)、回転軸A軸に対する指令角度θnおよび回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布を算出する(S202)。
例えば、回転軸A軸に対する指令角度θnの度数分布が
図7、
図9のように回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布が
図8、
図10のように演算される。
次に、算出された度数分布に基づいて、幾何偏差測定部523で実際の回転中心の位置および回転中心の向きを求めるために使用する測定角度λ_θm,λ_φmを算出し、算出された測定角度λ_θm,λ_φmを記憶部40に格納する(S203)。
例えば、回転軸A軸に対する指令角度θnの度数分布が
図7、
図9である場合、出現頻度が所定の閾値以上の指令角度θnが加工プログラム201の中で多用されていると推定する。出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値、上限値および下限値と上限値の中間の値である中間値の3点を回転軸A軸の幾何偏差測定に使用する測定角度λ_θmとする。閾値は、予め記憶部40に格納されているものを使用する。
一例として
図7の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値が10°であり、上限値が85°であり、中間値が47.5°である。よって、測定角度λ_θ1=10°、λ_θ2=47.5°、λ_θ3=85°とし、求められた測定角度λ_θ1,λ_θ2,λ_θ3を回転軸A軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。中間値は四捨五入して使用することもある。
また
図9の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値が0°であり、上限値が40°であり、中間値が20°である。よって、測定角度λ_θ1=0°、λ_θ2=20°、λ_θ3=40°とし、求められた測定角度λ_θ1,λ_θ2,λ_θ3を回転軸A軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。
【0044】
さらに例えば、回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布が
図8である場合、出現頻度が所定の閾値以上の指令角度φnが加工プログラム201の中で多用されていると推定する。出現頻度が閾値以上である指令角度φnの下限値、上限値および中間値の3点を回転軸C軸の幾何偏差測定に使用する測定角度λ_φmとする。閾値は、予め記憶部40に格納されているものを使用する。
一例として、
図8の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度φnの下限値が90°であり、上限値が275°であり、中間値が182.5°である。よって、測定角度λ_φ1=90°、λ_φ2=182.5°、λ_φ3=275°とし、求められた測定角度λ_φ1,λ_φ2,λ_φ3を回転軸C軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。中間値は四捨五入して使用することもある。
また
図10の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度φnの下限値が0°であり、上限値が315°であり、中間値が157.5°である。よって、測定角度λ_φ1=0°、λ_φ2=157.5°、λ_φ3=315°とし、求められた測定角度λ_φ1,λ_φ2,λ_φ3を回転軸C軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。
【0045】
度数分布から測定角度λ_θm,λ_φmを算出する方法として閾値により求める方法を記載したが、度数分布のピークを求めて、出現頻度が一番高い指令角度を測定角度として算出する方法等、様々な方法を適用することが可能である。
【0046】
(1.6.幾何偏差測定工程の詳細説明)
図11は上記実施形態に係るタッチプローブ62と旋回テーブル5に設置された基準球63の模式図であり、
図12は、上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてA軸周りにチルトテーブル4を回転した状態を説明する模式図である。また
図13は、上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてC軸周りに旋回テーブル5を回転した状態を説明する模式図であり、
図14は、上記実施形態に係る幾何偏差測定工程を示すフロー図である。
図15は、上記実施形態に係る幾何偏差測定工程において回転中心の位置を求める方法を説明する模式図である。
幾何偏差測定工程においては、予め加工ヘッド2の取付部8および旋回テーブル5にタッチプローブ62および基準球63が取り付けられた状態で開始される(
図11)。
幾何偏差測定部523は記憶部40から測定角度λ_θmまたはλ_φmを読み出し、A軸まわりにチルトテーブル4を測定角度λ_θmで回転して、タッチプローブ62を用いて基準球63の位置を計測する。
図12においては、測定角度λ_θ1,λ_θ2,λ_θ3でチルトテーブル4をA軸まわりに回転して、測定角度ごとに基準球63の位置を求めている例を示している。同様に、C軸まわりに旋回テーブル5を測定角度λ_φmで回転して、タッチプローブ62を用いて基準球63の位置を計測する。
図13においては、測定角度λ_φ1,λ_φ2,λ_φ3で旋回テーブル5をC軸まわりに回転して、測定角度ごとに基準球63の位置を求めている例を示している。このように、幾何偏差を求める回転軸全てに対して測定角度ごとに基準球63の位置を測定する(S301)。
次に、タッチプローブ62が計測した基準球63の位置から、測定角度λ_θm,λ_φmごとに基準球63の中心位置を算出する(S302)。
そして、測定角度λ_θm,λ_φmごとに求められた基準球63の中心位置から、A軸およびC軸の回転中心の向きを算出する(S303)。具体的には、測定角度λ_θmごとに求めた基準球63の中心位置の3点を含む平面を求め、その平面の法線ベクトルをA軸の回転中心の向きとする。同様に、測定角度λ_φmごとに求めた基準球63の中心位置の3点を含む平面を求め、その平面の法線ベクトルをC軸の回転中心の向きとする。
さらに、回転中心の位置を算出する(S304)。具体的には、
図15に示すように、測定角度λ_θmごとに求めた基準球63の中心位置の3点であるA1,A2,A3を円弧近似し、その円弧の中心点A0を求める。そして、その円弧の中心点A0を通り、かつ中心位置A1,A2,A3の3点を含む平面APの法線ベクトルと平行な中心線ANを求める。同様に、測定角度λ_φmごとに求めた基準球63の中心位置の3点C1,C2,C3を円弧近似し、その円弧の中心点C0を求め、その円弧の中心点C0を通り、かつ中心位置の3点C1,C2,C3を含む平面CPの法線ベクトルと平行な中心線CNを求める。
中心線AN上にある点のうち中心線CNと最も近い点をA軸の回転中心の位置とし、中心線CN上にある点のうち中心線ANと最も近い点をC軸の回転中心の位置とする(S304)。
【0047】
このようにワークを加工する際に使用する加工プログラムの指令角度のうち、使用頻度の高い角度を使用して、幾何偏差の測定をするための測定角度とするため、より正確な回転中心の位置および回転中心の向きを求めることができる。
【0048】
<2.第2の実施形態>
図16は、本発明の第2の実施形態に係る5軸加工システム500のブロック図である。尚、各図面及び明細書記載の各実施形態において、同様の構成要素には同様の符号を付与し、適宜説明を省略する。
5軸加工システム500は、解析装置400と、CAD/CAM装置200と、5軸加工機300から構成され、各装置がネットワーク600を介して接続されている。
【0049】
ネットワーク600は、インターネットまたはLAN等の通信ネットワークであって、有線または無線で情報を伝達する。
【0050】
解析装置400は、ネットワーク600を介してCAD/CAM装置200から加工プログラム201を取得し、加工プログラム201から回転軸ごとの測定角度を算出して5軸加工機300へ送信する装置である。
解析装置400は、加工プログラム取得部4521、加工プログラム解析部4522を備える。
【0051】
加工プログラム取得部4521は、加工プログラム取得工程を実行するものであって、CAD/CAM装置200から送信された加工プログラム201を取得するものである。
【0052】
加工プログラム解析部4522は、加工プログラム解析工程を実行するものである。加工プログラム解析部4522は、加工プログラム取得部4521により取得された加工プログラムを解析し、加工プログラム201の中の加工ブロックごとにおける回転軸2軸に対する指令角度θn,Φnを参照する。そして、参照した回転軸2軸の指令角度θn,Φnから度数分布を演算し、幾何偏差を測定するための測定角度λ_θm,λ_φmを算出して、5軸加工機300へ送信する。
加工プログラム解析工程の詳細は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
5軸加工機300は、X軸、Y軸、Z軸の直線軸3軸と、回転軸2軸の5軸制御を行う加工機であり、数値制御部352として幾何偏差測定部3523を備える。
【0054】
幾何偏差測定部3523は、幾何偏差測定工程を実行するものであり、解析装置400から取得した測定角度λ_θm,λ_φmで基準球63を回転させて基準球63の位置を計測することにより、実際の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算して、記憶部40に格納するものである。
幾何偏差測定工程の詳細は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
このように加工プログラム取得工程と加工プログラム解析工程を多軸加工機とは異なる解析装置で実行することで事前に測定角度を算出し、ワークを加工する直前に多軸加工機上で既に算出された測定角度を使用して幾何偏差測定工程を実行する。各工程を異なる装置で行うことにより、ワークを加工する前の初期設定時間を短縮化することが可能となる。
【0056】
<3.その他の実施形態>
以上、本発明における実施形態について説明したが、本開示の適用は上述の内容に限定されるものではない。
【0057】
例えば、チルトテーブル4および旋回テーブル5といったテーブル側に回転軸2軸が設けられていたが、この形態に限定されることはない。たとえば、テーブル側および工具側に1軸ずつ設けられている形態や、工具側に2軸設けられている5軸制御加工機に対しても、本発明を適用することができる。
【0058】
また、本発明の実施形態においては、X、Y、Z軸の直線軸3軸と、A軸とC軸の回転軸2軸の5軸制御加工機に関して説明を行ったが、この形態に限定されることはない。たとえば、A軸の代わりにB軸(すなわち、Y軸に平行な回転軸)の回転で制御してもよいし、X、Y、Z軸の直線軸3軸と、A軸、B軸、C軸の回転軸3軸の6軸制御の工作機械に対しても多軸加工機として本発明を適用することができる。
【0059】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 基台
2 加工ヘッド
3 Y軸移動テーブル
4 チルトテーブル
5 旋回テーブル
61 工具
8 取付部
20 入力部
30 操作部
31 表示部
32 手入力部
40 記憶部
50 制御部
60 サーボモータ
62 タッチプローブ
63 基準球
100 5軸加工機
200 CAD/CAM装置
201 加工プログラム
K 加工エリア
W ワーク
【手続補正書】
【提出日】2021年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る5軸加工機100の概略図である。
【
図2】上記実施形態に係る5軸加工機100の内部の構造を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態に係る5軸加工機100のブロック図である。
【
図4】上記実施形態に係る5軸加工機100の回転中心測定方法を示すフロー図である。
【
図5】上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム201の概要を示す模式図である。
【
図6】上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム解析工程を示すフロー図である。
【
図7】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフの一例である。
【
図8】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度
φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度
φn)を表すグラフの一例である。
【
図9】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフのその他の例である。
【
図10】上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度
φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度
φn)を表すグラフのその他の例である。
【
図11】上記実施形態に係るタッチプローブ62と旋回テーブル5に設置された基準球63の模式図である
【
図12】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてA軸周りにチルトテーブル4を回転した状態を説明する模式図である。
【
図13】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程においてC軸周りに旋回テーブル5を回転した状態を説明する模式図である。
【
図14】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程を示すフロー図である。
【
図15】上記実施形態に係る幾何偏差測定工程において回転中心の位置を求める方法を説明する模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る5軸加工システム500のブロック図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
<1.第1の実施形態>
(1.
1.5軸加工機100の全体構成)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図1、
図2および
図3を参照して、5軸加工機100の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る5軸加工機100の概略図であり、
図2は、上記実施形態に係る5軸加工機100の内部の構造を示す模式図である。
5軸加工機100は、X軸、Y軸、Z軸の直線軸3軸と、回転軸2軸の5軸制御を行う加工機であり、ワー
クをチルトテーブル4とともに旋回させるテーブル旋回型である。5軸加工機100には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が設定されており、X軸に平行に延びる軸心周りの回転軸としてA軸が、Z軸に平行に延びる軸心周りの回転軸としてC軸が設定されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
5軸加工機100は、基台1と、加工ヘッド2と、Y軸移動テーブル3と、Y軸移動テーブル3の上に載置されてA軸周りに回転可能に構成されたチルトテーブル4と、チルトテーブル4の上に載置されてC軸周りに回転可能に構成された旋回テーブル5と、
制御部50を備える。
基台1、加工ヘッド2、Y軸移動テーブル3、チルトテーブル4、旋回テーブル5を含む加工エリアKは、5軸加工機100の筐体9内に設けられている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
Y軸移動テーブル3は、基台1に対して、Y軸方向に移動可能に構成されている。Y軸移動テーブル3上には、チルトテーブル4が載置されている。チルトテーブル4の上には旋回テーブル5がさらに載置されている。作業者は、旋回テーブル5上にワー
クを載置することで、工具61によってワー
クを加工することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
旋回テーブル5は、回転軸としてのC軸周りに回転可能に構成されており、A軸の回転角度が0°の場合に、C軸とZ軸とが平行となるようにチルトテーブル4上に載置される。チルトテーブル4及び旋回テーブル5をA軸およびC軸回りに任意の角度に回転させることで、旋回テーブル5上に載置されたワー
クの工具に対する姿勢を変更して加工することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
図5は、上記実施形態における5軸加工機100の加工プログラム201の内容を示す模式図である。
CAD/CAM装置200は、加工プログラム201を作成する装置であり、ワー
クの加工形状を作成し、ワー
クの加工形状に基づいて各機械を動作させるための加工プログラム201を作成する。
加工プログラム201は、複数の加工ブロックによって構成されており(
図5)、加工ブロックには、工具61の先端点の指令位置および工具姿勢の指令角度を指定するGコードや、ワー
クに対する工具61の先端点の相対速度を指令するFコード等が記述されている。ここで「工具姿勢」とは、工具とワークの相対的な姿勢を指し、工具姿勢の指令角度は、加工ブロックごとに回転軸(A軸、C軸)の回転角度として指定されている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
記憶部40は、例えば、RAM(Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成されており、制御部50による各種プログラムに基づく処理の実行時のワークエリア等として用いられる。また、記憶部40は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、又は
SSD(Solid State Drive)を備えており、制御部50の処理に利用される閾値等のデータ及びプログラム等を記憶する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
加工プログラム解析部522は、加工プログラム解析工程を実行するものである。加工プログラム解析部522は、加工プログラム取得部521により取得された加工プログラムを解析し、加工プログラム201の中の加工ブロックごとにおける回転軸2軸に対する指令角度θn,
φn(nは加工ブロックのインデックスであり、n=1,2,・・・,Nである。Nは加工ブロック数とする。)を参照する。そして、参照した回転軸2軸の指令角度θn,
φnから度数分布を演算し、幾何偏差を測定するための測定角度λ_θm,λ_φmを算出して、記憶部40に格納する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
図4は、上記実施形態に係る5軸加工機100の回転中心測定方法を示すフロー図であり、
図11は、上記実施形態に係るタッチプローブ62と旋回テーブル5に設置された基準球63の模式図である。
作業者はワー
クを加工する前に5軸加工機100の回転軸の幾何偏差を測定するため回転中心測定を以下の通り行う。
作業者はCAD/CAM装置200等により加工プログラム201を作成し、入力部20を介して記憶部40に加工プログラム201を保存する。
次に、作業者が加工ヘッド2の取付部8にタッチプローブ62を取り付け、旋回テーブル5上に基準球63を設置する(
図11)。そして、手入力部32を介して表示部31に表示された設定画面を操作すると、記憶部40から加工プログラム201が読み出されて、設定画面に加工プログラム201が表示される。作業者が表示部31に表示された加工プログラム201を手入力部32により選択して、回転中心測定を実施するための開始ボタン等を押下すると、回転中心測定が開始され、加工プログラム取得部521は記憶部40から作業者に選択された加工プログラム201を取得する(S101:加工プログラム取得工程)。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
図6は、上記実施形態に係る5軸加工機100の加工プログラム解析工程を示すフロー図であり、
図7は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフの一例である。
図8は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度
φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度
φn)を表すグラフの一例であり、
図9は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸A軸の指令角度θnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度θn)を表すグラフのその他の例である。
図10は、上記実施形態の加工プログラム解析工程における回転軸C軸の指令角度
φnの度数分布(縦軸が出現頻度、横軸が指令角度
φn)を表すグラフのその他の例である。
取得した加工プログラム201に加工ブロックがN個あった場合、加工ブロックごとに回転軸A軸の指令角度θnおよび回転軸C軸の指令角度
φnが存在する(
図5)。よって、加工プログラム解析部522は加工プログラム201内を参照し(S201)、回転軸A軸に対する指令角度θnおよび回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布を算出する(S202)。
例えば、回転軸A軸に対する指令角度θnの度数分布が
図7、
図9のように回転軸C軸に対する指令角度φnの度数分布が
図8、
図10のように演算される。
次に、算出された度数分布に基づいて、幾何偏差測定部523で実際の回転中心の位置および回転中心の向きを求めるために使用する測定角度λ_θm,λ_φmを算出し、算出された測定角度λ_θm,λ_φmを記憶部40に格納する(S203)。
例えば、回転軸A軸に対する指令角度θnの度数分布が
図7、
図9である場合、出現頻度が所定の閾値以上の指令角度θnが加工プログラム201の中で多用されていると推定する。出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値、上限値および下限値と上限値の中間の値である中間値の3点を回転軸A軸の幾何偏差測定に使用する測定角度λ_θmとする。閾値は、予め記憶部40に格納されているものを使用する。
一例として
図7の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値が10°であり、上限値が85°であり、中間値が47.5°である。よって、測定角度λ_θ1=10°、λ_θ2=47.5°、λ_θ3=85°とし、求められた測定角度λ_θ1,λ_θ2,λ_θ3を回転軸A軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。中間値は四捨五入して使用することもある。
また
図9の度数分布においては、出現頻度が閾値以上である指令角度θnの下限値が0°であり、上限値が40°であり、中間値が20°である。よって、測定角度λ_θ1=0°、λ_θ2=20°、λ_θ3=40°とし、求められた測定角度λ_θ1,λ_θ2,λ_θ3を回転軸A軸について幾何偏差測定を行う場合の回転角度とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
加工プログラム解析部4522は、加工プログラム解析工程を実行するものである。加工プログラム解析部4522は、加工プログラム取得部4521により取得された加工プログラムを解析し、加工プログラム201の中の加工ブロックごとにおける回転軸2軸に対する指令角度θn,
φnを参照する。そして、参照した回転軸2軸の指令角度θn,
φnから度数分布を演算し、幾何偏差を測定するための測定角度λ_θm,λ_φmを算出して、5軸加工機300へ送信する。
加工プログラム解析工程の詳細は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
1 基台
2 加工ヘッド
3 Y軸移動テーブル
4 チルトテーブル
5 旋回テーブル
61 工具
8 取付部
20 入力部
30 操作部
31 表示部
32 手入力部
40 記憶部
50 制御部
60 サーボモータ
62 タッチプローブ
63 基準球
100 5軸加工機
200 CAD/CAM装置
201 加工プログラム
K 加工エリ
ア
【手続補正15】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正16】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正17】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2021年8月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を、加工プログラムに基づいて回転軸の制御により相対移動させる多軸加工機の回転中心測定方法であって、
前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、前記指令角度の度数分布を算出して出現頻度の高い前記指令角度を測定角度とする加工プログラム解析工程と、
基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を行うことを特徴とする多軸加工機の回転中心測定方法。
【請求項2】
前記加工プログラム解析工程は、前記度数分布から前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度を算出し、前記出現頻度が所定の閾値を超える前記指令角度のうち下限値、上限値および中間値を前記測定角度とすることを特徴とする請求項1記載の多軸加工機の回転中心測定方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか一項記載の回転中心測定方法を多軸加工機によって実行させるように、当該多軸加工機のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項4】
ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を、加工プログラムに基づいて回転軸の制御により相対移動させる多軸加工機のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
多軸加工機の加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、前記指令角度の度数分布を算出して出現頻度の高い前記指令角度を前記多軸加工機の回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算するための測定角度とする加工プログラム解析工程と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
加工プログラムを数値制御部および全体制御部にて処理して回転軸のサーボモータを駆動することにより、ワークが載置されるテーブルと前記ワークを加工する工具を相対移動させる多軸加工機であって、
前記数値制御部は、
前記加工プログラムを取得する加工プログラム取得工程と、
前記加工プログラムから工具姿勢の指令角度を読み出して解析し、前記指令角度の度数分布を算出して出現頻度の高い前記指令角度を測定角度とする加工プログラム解析工程と、
基準球が載置された前記テーブルと前記工具を相対移動させて前記基準球の位置を計測し、前記回転軸の回転中心の向きおよび回転中心の位置を演算する幾何偏差測定工程を実行することを特徴とする多軸加工機。