【実施例】
【0108】
実施例1 生体内におけるBIIB037の毒性試験
Tg2576マウス及びカニクイザルを、BIIB037の毒性試験に使用した。これら2種の内、Tg2576マウスが、脳実質及び血管にアミロイド斑を蓄積しているので、このマウスを一次の薬理学的関連種とみなされた。
【0109】
マウスにおける標準的な組織病理学的評価に加えて、微小出血を定量するために、ヘモジデリンのペリス染色 (ヘモグロビンの分解産物)を実施した。Tg2576マウス[Kumar−Singh et al.2005]を含む、ADのトランスジェニックマウスにおける背景所見[Winkler et al.2001]、及びいくつかの抗Aβ抗体で治療されたトランスジェニックマウスにおける薬剤関連所見[Pfeifer et al.2002、Racke et al.2005、Wilcock and Colton 2009]の両方として、微小出血が認められている。
【0110】
実施例2 生体内における、BIIB037の短期試験
13週間の試験において、10または70mg/kgのch12F6A、もしくは500mg/kgのch12F6AまたはBIIB037のいずれかの、4週間ごとの用量を、Tg2576マウスに投与した。標準的な病理組織学的染色によって評価すると、70mg以上/kg/週を投薬した2匹のマウスに、微小の軽度急性出血が認められた。さらなる所見は、70mg以上/kg/週で処置したマウスにおける、対照動物と比べた、髄膜血管の炎症の発生率及び/または重症度のわずかな増加、及び500mg/kg/週で投薬した2匹の動物における血栓症の発生を含んでいた。6週間の無投薬の回復期間の終わりに、ch12F6A及びBIIB037で処置したマウスにおいて認められた発生率及び重症度の所見は、この研究中の対照群において認められた範囲内であった。
【0111】
脳の標準的な組織病理に加えて、ペリス染色によって、微小出血の存在を評価したが、投薬13週間後の、ch12F6A/BIIB037及び対照治療群との間に、微小出血における有意差は無かった。
【0112】
70mg/kg/週で、またはそれを上回って観察された、髄膜血管炎症の増加した発生率及び/または重症度ならびに急性出血は、10mg/kg/週の無毒性量(NOAEL)の決定に寄与した。
【0113】
実施例3 生体内における、BIIB037の長期試験
6ヶ月試験において、10または40mg/kgのch12F6A、もしくは250mg/kgのch12F6AまたはBIIB037のいずれかの、4週間ごとの用量を、Tg2576マウスに投与した。主要及び回復期間中に評価したパラメーターのいずれにも、40mg以上/kgの投薬で、マウスの定常領域を含むキメラ12F6A(ch12F6A)で処置した、主要な及び早期死亡の動物の脳での、髄膜/脳血管の炎症の発生率及び/または重症度の組み合わせにおける僅かな増加ならびに血管肥厚、及び250mg/kgのch12F6Aで処置した動物の小集団における微小出血以外には、治療に関連する変化は無かった。
【0114】
250mg/kgのBIIB037の静脈内注射による投与を毎週受けたTg2576マウスにおいて、処置に関連する所見は無く、髄膜/脳血管の炎症の発生率及び/または重症度の増加ならびに血管肥厚は無く、及びch12F6AまたはBIIB037の投与を受けた動物の脳での、多数の病巣及び/または微小出血の領域パーセントにおいて、統計的な有意差は無かった。
【0115】
6週間の回復期間後、当該血管炎症または肥厚の発生率及び/または重症度は、治療及び対照群の全体にわたって類似していた。これら変化の潜在的な治療関連増悪を、完全に除外することできないが、脳における血管炎症、肥厚、及び増悪の可能性がある微小出血は、治療との曖昧な関連性、及び潜在的に、この疾患モデルだけに固有の、年齢に関連する進行性変化のためであると、考えられた。したがって、本試験から、NOAELは、250mg/kg/週である。
【0116】
4週間のサルの試験では、処置に関連する所見は認められず、NOAELは、300mg/kg/週であった。
【0117】
要約すると、BIIB037の毒性評価は、沈着したAβに対する当該抗体の結合に一貫した毒性プロファイルと一致した。
【0118】
実施例4 生体内におけるアミロイドベータの減少
Tg2576マウスにおいて、ch12F6A(0.3mg/kgから30mg/kg)の長期間投与後に、脳アミロイドにおける用量に依存した減少が、認められた。3mg/kgで、著しいアミロイド減少が認められ、その最小有効用量であると判断され、及び有効性は、10mg/kgから30mg/kgの間で、高止まり状態に達すると思われた。Tg2576マウスの毒性試験(10mg/kg/週)の13週間で得られた無毒性量(NOAEL)を、安全域決定の目的に使用した。
【0119】
BIIB037の1及び3mg/kgでの、ヒトにおける平均定常状態暴露量(AUC
0〜4週間として計算)を、その非臨床NOAEL投薬暴露量(AUC
0〜4週間として計算)の約12分の1及び4分の1として見積もる。10mg/kg用量後の、BIIB037の平均定常状態暴露量を、NOAEL投薬暴露量と同等であると見積もる。その最高用量の30mg/kgを、当該NOAEL暴露量の2〜3倍の平均定常状態暴露量、及び髄膜血管炎症の重症度がわずかに増加し、及び脳出血の発生が認められた場所での、70mg/kg用量での暴露量の3分の1に達すると見積もる。
【0120】
実施例5 BIIB037を伴う臨床経験
第一の臨床試験は、軽度から中度ADの対象におけるBIIB037の安全性、忍容性、及び薬物動態(PK)の、第1相、無作為試験、盲検法、プラセボ対照の、単一漸増用量(SAD)試験である。このSAD試験に、53人の対象を登録した。
【0121】
BIIB037の開始用量は、0.3mg/kgであり、500mg/kg(AUCTAU=402000μg
*hr/mL)を与えられたTg2576マウスの平均暴露量を超えない、平均暴露(AUCinf)を与えると予測される用量である、60mg/kgまで増やした。最大で30mg/kgまでの用量(0.3、1、3、10、20、及び30mg/kg)が、一般に良好に受け入れられた。
【0122】
症候を示すアミロイド関連画像異常−浮腫(ARIA―E)の2つの重篤有害事象(SAE)、及び無症候性のARIA―Eの1つの有害事象(AE)が、60mg/kg統計群で報告された。60mg/kg統計群へのさらなる登録を、試験プロトコルに従って終了した。SAD試験において、AEが原因の死亡及び離脱が報告された。BIIB037の血清暴露は、最大30mg/kgまでの用量で、直線的傾向を示した。
【0123】
実施例6 A.ヒトAD対象における、BIIB037の第1b相臨床試験
第1b相臨床試験を実施した。この試験は、前駆から軽度ADの対象及び陽性アミロイドスキャンにおける、無作為試験、盲検法、プラセボ対照の、BIIB037の漸増用量研究である。この試験の一次評価項目は、安全性であった。二次評価項目は、18F−AV−45 PET画像診断によって測定された、脳アミロイド斑含有量への影響の評価を含んでいた。18F−AV−45 PET信号の基準からの変化を、ある特定の脳領域において評価した。探査評価項目で、その対象の認知を評価した。対象は、その患者の体重に基づいて、BIIB037の1、3、6、または10mg/kg、もしくはプラセボの投与を受けた。
【0124】
B.予め特定した中間解析#1
予め特定した中間解析#1で、その1、3、及び10mg/kg群、ならびにプラセポ群に対する26週データを得た。
【0125】
このAD対象を、無作為に、プラセボ、その患者の体重の1mg/kgでのBIIB037の投与を受ける者、その患者の体重の3mg/kgでのBIIB037の投与を受ける者、及びその患者の体重の10mg/kgでのBIIB037の投与を受ける者の4群に分けた。各群には、約31人の対象がいた。その対象の平均年齢は、約72歳(平均)であった。ApoE4保因者は、各々の群に、63%、61%、66%、及び63%含まれていた。
【0126】
その対象のADの臨床ステージを評価した。前駆ADの対象は、各々の群に、47%、32%、44%、及び41%含まれていた。軽度ADの対象は、各々の群に、53%、68%、56%、及び59%含まれていた。
【0127】
静的PET捕捉プロトコルを取り入れた。トレーサーを各対象に注入し、及び単一スキャンを実施した。このトレーサーは、AV45、原線維Aβ斑標的化PETリガンドであった。
【0128】
このアミロイドPET画像診断プロトコルの結果は、PET画像診断に使用したβ−アミロイドリガンドの摂取量の測定値であり、及びβ−アミロイドの存在量に対応する標準摂取比として表した。この標準化摂取率比は、参照領域に対する標的領域の比率をとることによりPET信号を正規化する。標的領域において、特異的結合及び結合信号の変化は、治療に誘導された薬理の改変を反映している。参照領域において、非特異的結合は、その治療の効果が無いことを示している。
【0129】
アミロイドの用量に依存した減少が認められた。26週目に、3mg/kg及び10mg/kgにおいて認められた、統計的に有意な減少があった。この効果は、対象の小規模の集団に基づき、54週まで継続するようであった。明確なApoE修復の効果は、認められなかった。より高い基準の標準化摂取率を伴った対象に、より高い効果が認められた。
【0130】
当該治療の安全性及び忍容性を評価した。有害事象は一般に、軽度または中度であった。頭痛が、もっとも一般的な有害事象であり、及び用量に依存性していると思われた。化学的、血液、尿、心電図、または重要な兆候における有意な変化は無かった。27人の対象が、ARIA−EまたはARIA−E/Hを示した。
【0131】
BIIB037の高用量で及びApoE4送達を伴って、ARIAのより高い発生率が認められた。同型及び異型のE4保因者は、ARIAに対して、同様のリスクがあると思われた。
【0132】
ARIA−Eの発症は、一般に治療過程の早期に発生した。ARIA−Eは、3〜5回の投薬(18週目または10週目)後の、1及び3mg/kgの用量で発生した。その5回目の投薬後に、こうしたケースは、検出されなかった。ARIA−Eは、2回投薬(6週目)後及び30週目の、6及び10mg/kgの用量で発生し、画像診断所見は一般に、4〜12週間で解消し、ARIA−Eが、可逆的であることを示している。
【0133】
ARIA−Hの事象を持つ全ての対象はまた、ARIA−E事象も有していた。3mg/kgおよび10mg/kgでの治療群の各々において、ARIA−Eの発生率が、ARIA−Hの発生率に比べてより高かった。1mg/kg用量の投与を受けた群における各事象の発生率は、同じであった。
【0134】
C.予め特定された中間解析#2
予め特定された中間解析#2で、その1、3、及び10mg/kg群、ならびにプラセポ群に対する54週データを得て、同様に6mg/kg群に対する26週データを得た。
【0135】
図1は、治療群の各々に対して観測されたデータに基づく、その時点での平均のPET合成画像の標準化摂取率の値(SUVR)を示す。
図1は、基準点から26週目の間に、BIIB037抗体の投与を受けた治療群の各々において、アミロイド蓄積量の減少があったことを示す。26種目から54週目の間に、BIIB037の投与を受けた治療群の各々において、アミロイド蓄積量のさらなる減少があった。プラセボ群は、アミロイド蓄積量に、対応する減少を示さなかった。
【0136】
図1はまた、BIIB037の投与によるアミロイド蓄積量の減少は、用量に依存していたことを示す。BIIB037のより高い用量は、アミロイドスキャンを使用した脳において、より多くのアミロイドの減少を伴っていた。プラセボ群では、同様の効果は認められなかった。
【0137】
図2は、基準の臨床ステージ、すなわち前駆または軽度ADによる、26週目での、基準のPET合成画像のSUVRからの調整後の平均変化を示す。
図2は、観察されたデータに基づく。
図2は、このアミロイドスキャンにおいて、アミロイド減少は、用量に依存していたことを示す。
【0138】
図3は、対象のApoE4状態別の、アミロイド蓄積量の減少を示す。保因者群及び非保因者群の両方が、そのプラセボと比べてアミロイド蓄積量の減少を示した。各ケースにおいて、その減少は、用量に依存していた。
【0139】
本試験における、ARIA−E及び/またはARIA−Hの発生率を予測した。その結果を、
図4に示す。ApoE4保因者及びApoE4非保因者におけるARIAの発生率もまた、
図4に報告する。この発生率は、6及び10mg/kgで、用量に依存し及びこのApoE4送達に依存していた。ARIA−Eの発症は通常、その治療過程の早期であった。ARIA−Eは一般に、可逆性である。ARIA−Hは、安定であった。画像診断所見は一般に、4〜12週で解消した。
【0140】
D.患者の認知力の臨床評価
治療される患者におけるアルツハイマー病の症状の変化の指標として、臨床評価を取り入れた。特に、the Clinical Dementia Rating(臨床的認知症判定(CDR))及びthe Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査(MMSE))で、基準からの変化を決定した。観察されたデータに基づいたこれら評価の結果を、
図5及び6にまとめた。
【0141】
図5は、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのBIIB037抗体の投与を受けた患者の母集団と比べた、プラセボ投与を受けた患者と比較した、CDR−SBの基準からの調整後平均変化を示す。測定は、特定用量での治療の54週目に行った。
【0142】
図6は、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのBIIB037抗体の投与を受けた患者母集団と比べた、プラセボ投与を受けた患者と比較した、MMSEの基準からの調整後平均変化を示す。測定は、特定用量での治療の54週目に行った。
【0143】
実施例7 前駆または軽度アルツハイマー病の患者における、アデュカヌマブ(BIIB037)、抗Aβモノクローナル抗体の無作為、二重盲検、プラセボ対照の第1b相試験:疾患ステージ及びApoEε4状態による中間結果
アデュカヌマブ(BIIB037)は、可溶性オリゴマー及び不溶性原線維を含む、ベータ−アミロイド(Aβ)ペプチドの凝集形態に対して選択的な、ヒトモノクローナル抗体である。アデュカヌマブの単一漸増用量試験は、最大30mg/kg用量での、軽度から中度ADの患者において、許容される安全性を示した。この第1b相試験では、前駆または軽度ADの患者における、アデュカヌマブの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、及び薬力学を評価した。
【0144】
目的は、疾患ステージ及びApoEε4状態によって、アデュカヌマブによる、暫定的な安全性及びAβの除去(フロルベタピル[18−AV−45]ポジトロン放出断層撮影法[PET]の結果における変化)を提供することであった。
【0145】
試験設計
PRIMEは、多施設、無作為試験、二重盲検法、プラセボ対照試験の、複数回投薬試験である[NCT01677572]。
【0146】
患者は、50〜90歳の年齢であり、決まった併用薬を有しており、ミニメンタルステート検査(MMSE)で20以上のスコアを有しており、及び以下の臨床及び放射線の基準を満たしていた。
・前駆AD:MMSEが24〜30の自発的な記憶障害、Free and Cued Selective Reminding Test(自由及び手掛かり選択性再認識検査)で27以下の総自由想起スコア、グローバルClinical Dementia Rating(臨床認知症評価)(CDR)で0.5のスコア、その他の認知ドメインにおいて著しい障害レベルが無い、本質的に保存された日常生活の活動及び認知症では無く、視覚的評価で陽性のフロルベタピルPETスキャン結果を有していた。
・軽度AD:MMSEで20〜26、グローバルCDRで0.5または1.0、National Institute on Aging−Alzheimer’s Association(老化に関する米国立学会−アルツハイマー病協会)の推定ADに対する中核臨床基準に合致しており、視覚的評価で陽性のフロルベタピルPETスキャン結果を有していた。
【0147】
当該PRIME試験設計を、
図14に示す。患者(計画ではN=188)を、無作為に、有効対プラセボが3対1の比率で、時間差、漸増用量設計で、9つの治療群(目標登録数:有効治療群当たりn=30)の1つに振り分けた。一次及び二次評価項目を、
図15に提供している。このPRIME評価の時系列を、
図16に示す。PRIMEは、進行中である。中間解析のために、当該1、3、及び10mg/kgの治療群に対しては54週目に、及び当該6mg/kgの治療群に対しては30週目に、データを解析した。
患者
166人の患者の内、無作為で、165人に投薬し、107人(65%)が、ApoEε4保因者で、及び68人(41%)が、前駆ADであった。患者の配分状況を、
図17に示す。
図18に示すように、基準の人数統計データ及び疾患の特徴は、治療群全般にわたって、一般的にバランスが取れていた。
【0148】
安全性
有害事象(AE)は、治療群全体の患者の84%〜98%と報告された。最も一般的なAE及び重篤AE(SAE)は、アミロイド関連画像異常(ARIA:MRIに基づく)であり(表9)、他のAE/SAEは、その患者集団と一致していた。
図19には、ARIA所見及びARIE−Eにおける患者の配分状況の概要を与える。
【0149】
3人の患者の死亡が報告され(プラセボで2人、10mg/kgのアデュカヌマブで1人)、治療との関連とみなされた者はいなかった(2人は、試験の中止後に発生した)。
【0150】
孤立したARIA−浮腫(ARIA−E)の発生率は、用量及びApoEε4状態に依存していた(
図19)。
・ApoEε4保因者間でのARIA−Eの全発生率は、1、3,6、及び10mg/kgのアデュカヌマブの各々において、プラセボの0%に対して、5%、5%、43%、及び55%であった。
・ApoEε4非保因者間での相応する発生率は、プラセボの0%に対して、0%、9%、11%、及び17%であった。
・孤立したARIA−微小出血/ヘモジデリン沈着症(ARIA−H)の発生率は、用量及びApoEε4状態の全般において類似していた(データは示されていない)。
【0151】
小さなサンプルサイズに基づくと、ApoEε4状態で説明する場合、前駆及び軽度ADの患者間で、ARIA−Eの発生率に、明確な差は無かった(
図19)。
【0152】
ARIE−E事象のほとんど(92%)は、最初の5回投薬内で認められ、ARIA−E事象の65%は、無症状であった。
・存在する場合、症状は普通、4週間以内に解消された。
・MRI所見は通常、4〜12週間以内に解消された。
【0153】
ARIA−Eを発達させた患者(54%)の大半は、治療を継続した(継続した者の93%は、低減した用量で実施した)。再発ARIA−Eを発生した患者はいなかった。ARIA−Eの患者における治療の中断は、軽度及び前駆の二次群の全般に一貫していた(データは示されていない)。
【0154】
化学的、血液、尿、心電図、または重要な兆候において、著しい変化は無かった。
【0155】
脳Aβ斑の減少
脳Aβ斑の減少を、前頭、頭頂、外側側頭、感覚運動野、前帯状、及び後帯状の6領域の容積からの複合SUVRによって評価した。
【0156】
26週目及び54週目での、脳Aβ斑の用量及び時間に依存した減少(SUVR減少によって裏付けられる)は、
図7に示すように、試験用量内で、一般的に軽度及び前駆ADの二次群全般、ならびにApoEε4保因者及び非保因者の全般に一貫していた。
【0157】
臨床評価項目
1年での探査評価項目、MMSE(
図8)及びCDR−sb(
図9)における低下が、統計的に有意に、用量に依存して緩慢になった。
【0158】
結論
プラセボに対して、PET画像診断によって測定した脳Aβ斑の、用量及び時間に依存した著しい減少があった。この効果は、治療の6か月後及び1年後でも明白であった。
【0159】
Aβ斑の減少における、プラセボに対するアデュカヌマブの効果のパターンは一般に、疾患ステージ及びApoEε4状態全般において一貫していた。
【0160】
MMSE及びCDR−sbにおける低下の、統計的に有意な容量に依存した緩慢化が、1年後に認められた。
【0161】
アデュカヌマブは、54週にわたり許容される安全性プロファイルを示した。ARIAは、主要な安全性及び忍容性の所見であり、及びモニターでき、ならびに管理できた。ARIAの発生率は、用量及びApoEε4状態に依存していた。ARIAは通常、治療過程の初期に認められ、及び無症状、または軽度な、一過性の症状であった。
【0162】
中間解析#3
中間解析#3は、当該6mg/kgの治療群及び対応するプラセボの治療群(当該解析のために集められたプラセボ集団に組み込まれている)に対する、54週までのデータを含む。
【0163】
脳Aβ斑の減少
脳Aβ斑の減少を、前頭、頭頂、外側側頭、感覚運動野、前帯状、及び後帯状の6領域の容積からの複合SUVRによって評価した。
図11に示すように、54週で、脳Aβ斑の用量に依存した減少があった(SUVR減少により裏付けられる)。
【0164】
臨床評価項目
1年での探査評価項目、MMSE(
図13)及びCDR−sb(
図12)における低下が、統計的に有意に、用量に依存して緩慢になった。
【0165】
実施例8 早期アルツハイマー病の患者における、アデュカヌマブ(BIIB037)の有効性及び安全性を評価するための、第3相、多施設、無作為試験、二重盲検法、プラセボ対照による並列群試験
ADにより軽度な認知力障害(MCI)を持つ対象及び軽度ADのサブ群を含む、早期ADの患者において、プラセボと比べたアデュカヌマブの有効性及び安全性を評価するための試験を行った。
【0166】
本研究のために選択した投薬治療計画は、脳アミロイドの排除に対して観察されたPKとPDの関係、及びCDR−SBならびにMMSEでの効果、安全性、忍容性、及びPDデータに基づいた。
【0167】
アデュカヌマブでの治療で認められた、脳アミロイド蓄積量の用量及び時間に依存した減少は、投薬6か月後の3、6、及び10mg/kg用量、及び投薬12か月後の3及び10mg/kg用量で統計的に有意であった。投薬12か月後の、CDR−SBにおける基準からの平均減少における効果は、3及び10mg/kgの両方において認められ、10mg/kgで統計的有意に達した。MMSEスコアにおける基準からの平均低下における効果は、3及び10mg/kgで統計的に有意であった。これらのデータは、3kg/kgは、許容用量であるが、しかしながら、これらの所見の用量に依存する性質を考えると、より高い用量(6及び10mg/kg)の使用が、許容可能リスクで、より大きな利点を与えることを示す。
【0168】
ARIAは、抗アミロイド標的候補薬で引き起こされる可能性がある事象であると特定され、及び特に関心の高い事象であると考えられている。これまでに、ARIAの発生率は、用量及びApoEε4送達の両方に依存し、特にその最大容量で観察されている。
【0169】
ARIA発生率、重症度、及び許容レベル範囲内の関連中断率を維持しつつ、3mg/kg及びそれより高い用量で観察されたCDR−SBならびにMMSEにおける用量に依存した減少及び効果を最大とするために、用量設定の治療計画を用いる。
【0170】
アデュカヌマブの忍容性及び明らかな有効性を考えると、用量設定治療計画に使用する用量は、ApoEε4保因者に対しては3及び6mg/kgであり、ならびにApoEε4非保因者に対しては6及び10mg/kgである。用量設定は、以下に詳細を示すように、1mg/kgで開始し、及び3、6及び10mg/kgに増加する。
【0171】
投薬スキーム
プラセボ対照期間
用量を、おおよそ76週にわたり、約4週間隔で投与する(合計で20回投薬)。対象を、ApoEε4保因者状態に基づいて、以下(表4及び
図10を参照)のように、1対1対1(アデュカヌマブの低用量対アデュカヌマブの高用量対プラセボ)の比率で、3治療群(各450対象)の1つに割り当てる。
ApoEε4保因者
・低用量(3mg/kg)
最初の2回の用量に対しては1mg/kg、それ以降は3mg/kg
・高用量(6mg/kg)
最初の2回の用量に対しては1mg/kg、次の4回の用量に対しては3mg/kg、及びそれ以降は6mg/kg
・プラセボ
生理食塩水注入
ApoEε4非保因者
・低用量(6mg/kg)
最初の2回の用量に対しては1mg/kg、次の4回の用量に対しては3mg/kg、及びそれ以降は6mg/kg
・高用量(10mg/kg)
最初の2回の用量に対しては1mg/kg、次の2回の用量に対しては3mg/kg、次の2回の用量に対しては6mg/kg、及びそれ以降は10mg/kg・プラセボ
生理食塩水注入
【表4】
【0172】
投薬スキームの修正
以下の環境においては、当該投薬を修正できる。
・高用量の安全性及び忍容性
当該高用量(ApoEε4非保因者における10mg/kg、及びApoEε4保因者における6mg/kg)のいずれかが受け入れらない場合、その高用量群(複数可)の登録を終了することができ、及び対象を差し替えない。その中断した用量に対して、無作為割り当てされた対象は、そのApoEε4保因者状態に従って、その次に可能な用量へと用量を減らす。
・用量設定
用量設定が有益でない場合、それを除き、及びその後に、ApoEε4保因者である対象は、3または6mg/kgの固定用量の投与を受け、及び非保因者は、6または10mg/kgで投与を受ける。
【0173】
長期延長(LTE)
プラセボ対照期間に、アデュカヌマブの投与を受け、及びLTEに入った対象は、そのプラセボ対照期間の最後に彼らが受け取ったアデュカヌマブと同じ用量で、投与が継続される。対象は、そのプラセボ対照期間に対して記述されたものと同じ治療計画を使用して、投薬される(表4及び
図10を参照)。その投薬スキームの修正(すなわち、高用量群の終了及び固定投薬で用量設定を入れ替え)を、そのLTEで実施する。
【0174】
低下した認知力及び機能障害におけるアデュカヌマブの月用量の有効性を、そのCDR−SBスコアにおける変化によって測定する。
【0175】
二次測定は、そのMMSEによって測定された臨床進行において、アデュカヌマブの月用量の効果を評価することである。この測定に関する評価項目は、78週目でのMMSEスコアにおける基準からの変化である。
【0176】
他の二次測定は、ADAS−Cog13によって測定された臨床進行において、アデュカヌマブの月用量の効果を評価することである。この測定に関する評価項目は、78週目でのADAS−Cog13スコアにおける基準からの変化である。
【0177】
他の二次測定は、ADCS−ADL−MCIによって測定された臨床進行において、アデュカヌマブの月用量の効果を評価することである。この測定に関する評価項目は、78週目でのADCS−ADL−MCIスコアにおける基準からの変化である。
【0178】
参考文献
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