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特開2021-169555レジストインキ及びレジスト印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-169555(P2021-169555A)
(43)【公開日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】レジストインキ及びレジスト印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/104 20140101AFI20211001BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20211001BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
   C09D11/104
   H05K3/00 F
   H05K3/06 F
   H05K3/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-72871(P2020-72871)
(22)【出願日】2020年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】小林智恵
(72)【発明者】
【氏名】岡田守弘
【テーマコード(参考)】
4J039
5E339
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AE06
4J039BA35
4J039BC57
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE23
4J039EA39
4J039EA40
4J039FA01
4J039GA17
4J039GA18
5E339AA00
5E339AB00
5E339AD01
5E339BC01
5E339BE11
5E339CC00
5E339CD01
5E339CE12
5E339CE18
5E339EE10
(57)【要約】
【課題】
マスキングの為のレジスト皮膜が薄膜であっても回路となる金属箔との密着性、及び耐酸性エッチング性を兼備できるレジストインキを提供することを目的とする。
【解決手段】
ポリエステル樹脂、酸化チタン、及びシランカップリング剤を含有するレジストインキであって、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が3000〜10000、且つ水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上であり、前記酸化チタンをインキ全量の5〜30質量%含有するレジストインキ、及びレジスト印刷物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、酸化チタン、及びシランカップリング剤を含有するレジストインキであって、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が3000〜10000、且つ水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上であり、前記酸化チタンをインキ全量の5〜30質量%含有することを特徴とするレジストインキ。
【請求項2】
前記シランカップリング剤が、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる1つ以上である請求項1に記載のレジストインキ。
【請求項3】
前記シランカップリング剤に対する前記酸化チタンの質量比率が0.1:13〜4:13の範囲である請求項1又は2に記載のレジストインキ。
【請求項4】
更に、硝化綿を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のレジストインキ。
【請求項5】
金属箔にレジストインキで印刷を行う工程と、
印刷する事で形成したレジストインキの皮膜を100℃以上に加熱硬化させる工程と、硬化したレジストインキ被膜の上から酸性エッチング液でエッチングする工程とをこの順に有するレジスト印刷物の製造方法であって、
前記レジストインキが請求項1〜4の何れか1つに記載のレジストインキであり、金属箔への印刷されたインキ量が約0.5〜2g/mであることを特徴とするレジスト印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔から回路パターン状の回路基板を作成する際に用いるレジストインキに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、レンタルビデオ店、ドラッグストアや家電量販店などの様々な業態の小売店や図書館などの人手に頼る応対の自動化、人材不足の解消や人件費削減を目的に、「電子式商品監視装置」、「電子式物品監視装置」、「電子式商品監視機器」とも呼ばれるEAS機器(Electronic Article surveillance)の導入が普及しつつある。
商品に専用のタグを取り付け、精算レジにて正規に代金を支払えば、その場でタグを取りはずすか、タグを不活性化する処理をおこなう。不正に商品を持ち出そうとすれば、未処理のタグを検知して警報音を鳴らすなどして、異常を管理者に知らせることで、所謂万引き(商品窃盗)が行われたときに、警報音などで知らせるシステムである。
また、近距離無線通信を用いた自動認識技術のRFID (radio frequency identification)では、一般的には、無線通信を用いて、ICタグを取り付けた様々な対象物を識別・管理するシステムやその関連部品が世界的に普及しつつあり、日本国内でも年々需要が増え始めている。そしてこれらのEAS機器やRFIDで用いられるICタグの製造時には、レジストインキが使用される。
ICタグは一般的に金属箔にレジストインキで回路パターンとなるコイル状のマスキング印刷を行い、必要に応じて印刷部の紫外線硬化や熱硬化を経て、酸性又はアルカリ性のエッチング液に浸漬させ回路パターンとして不要な部分をエッチング除去し、必要とされる回路パターンを作成する(例えば、特許文献1:特開2015−65384)。
エッチングの際のレジストとなる印刷皮膜を熱硬化するタイプでは、通常オーブンを用いて170℃〜200℃の焼付けを行う。
また、近年ではより高い解像度で再現性の優れるマスキングが要望されており、現状の約2.2〜3.0g/mの塗布量(例えば、特許文献2:特許6117457号)に対して、塗布量2g/m以下の薄膜とする必要がある一方で、薄膜とすれば酸エッチング時にインキが剥がれ落ちてしまう現象が見られることから、薄膜時でも金属箔との密着性と耐酸性エッチング性を両立できる事が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−65384号公報
【特許文献2】特許6117457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マスキングの為のレジスト皮膜が薄膜であっても回路となる金属箔との密着性、及び耐酸性エッチング性を兼備できるレジストインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、レジストインキにおいて、特定のポリエステル樹脂、酸化チタン、及びシランカップリング剤を必須成分として含有することが課題解決に有効であることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、ポリエステル樹脂、酸化チタン、及びシランカップリング剤を含有するレジストインキであって、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が3000〜10000、且つ水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上であり、前記酸化チタンをインキ全量の5〜30質量%含有することを特徴とするレジストインキに関する。
【0007】
また、本発明は、前記シランカップリング剤が、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる1つ以上であるレジストインキに関する。
【0008】
また、本発明は、前記シランカップリング剤に対する前記酸化チタンの質量比率が0.1:13〜4:13の範囲であるレジストインキに関する。
【0009】
また、本発明は硝化綿を含有するレジストインキに関する。
【0010】
更に、本発明は、金属箔にレジストインキで印刷を行う工程と、印刷する事で形成したレジストインキの皮膜を100℃以上に加熱硬化させる工程と、硬化したレジストインキ被膜の上から酸性エッチング液でエッチングする工程とをこの順に有するレジスト印刷物の製造方法であって、前記レジストインキの金属箔への印刷されたインキ量が約0.5〜2g/mであることを特徴とするレジスト印刷物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、マスキングの為のレジスト皮膜が薄膜であっても回路となる金属箔との密着性、及び耐酸性エッチング性を兼備するレジストインキが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「レジストインキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示す。
【0013】
本発明は、ポリエステル樹脂、酸化チタン、及びシランカップリング剤を含有するレジストインキであって、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が3000〜10000、水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上であり、前記酸化チタンをインキ全量の5〜30質量%含有することを特徴とするレジストインキの発明である。
【0014】
本発明のレジストインキは、具体的には前記ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなど各種有機溶剤に溶解させる。前記バインダー樹脂及び上記各種有機溶剤で酸化チタンを練肉し、インキを作成する。上記インキに着色顔料、各種添加剤を投入し更に攪拌することで十分分散されたレジストインキを得る。
【0015】
本発明のレジストインキでは、公知のポリエステル樹脂の内、数平均分子量が3000〜10000の範囲であり、且つ水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上である事を必須とする。前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであればよい。多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上の二塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0016】
前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
【0017】
前記数平均分子量3,000〜10,000であり、水酸基価が15mgKOH/g以上及び/又は酸価が15mgKOH/g以上のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂全量の70質量%以上含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂末端構造に起因する前記水酸基価が15mgKOH/g以上と高ければ、これが反応性基となって併用するシランカップリング剤の反応性官能基との反応性がより高まり結合は強固となる事から、回路となる金属箔との密着性、レジスト被膜を形成した際の耐エッチング性の両方を兼ね備える観点から水酸基価が15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上であればさらに好ましく、40mgKOH/g以上では最も好ましい。
また、ポリエステル樹脂末端構造に起因する前記酸価が15mgKOH/g以上と高ければこれが反応性基となって併用するシランカップリング剤の反応性官能基との反応性がより高まり結合は強固となる事から、回路となる金属箔との密着性、レジスト被膜を形成した際の耐エッチング性の両方を兼ね備える観点から酸価が15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上であればさらに好ましい。
また、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、より好ましくは3,000〜8,000の範囲である。ポリエステル樹脂の数平均分子量が3,000未満の場合には、得られるインキの組成物の金属箔への密着性、レジスト被膜を形成した際の耐エッチング性が低下する傾向があり、10,000を超える場合には、ポリエステル樹脂の構造上、1グラム当たりの水酸基価や酸価を増やす事が困難となる上、得られるレジストインキの粘度が高くなり塗布量2g/m以下の薄膜とする際の再現性が低下すると共に、塗工性が低下し印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
【0018】
結晶性ポリエステルは、構造的に凝集力が高い為に汎用有機溶剤に可溶なものが確保しにくく、レジストインキに用いた際に硬化したレジスト被膜の金属箔との密着性、及び耐酸性エッチング性の双方を兼備できる点で、結晶性ポリエステル樹脂より非結晶性ポリエステル樹脂の方が好適である。
【0019】
本発明のレジストインキでは、顔料として酸化チタンを必須とする。中でも、表面処理された酸化チタンが、比較的良好な分散性を示すことから好ましい。特に、無機物で表面処理された酸化チタンが好ましく、シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンが好ましい。
【0020】
シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンにおいて、酸化チタンとしては、公知のルチル型・アナターゼ型の二酸化チタンが使用でき、より好ましくはルチル型二酸化チタンである。
また前記酸化チタンの平均粒径としては、100〜500nmのものを使用することが好ましく、150〜400nmのものを使用することがより好ましい。平均粒径が100nm未満であると分散安定性はより実現し易くなるものの、白色度が低下しカラーICチップ向けとして彩色制御がしにくい一方、平均粒径が500nmを超えるとインキ塗膜の平滑性や見た目の光沢性が低下する傾向にある。粒径について実用的には200〜300nmが更により好ましい。
なお原料としての酸化チタンの平均粒径は電子顕微鏡写真により20個の粒径測定を行って平均をとったものとする。
【0021】
シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンにおいて、一般にシリカは、酸化チタン表面の酸・塩基の状態を調整する目的や、得られたインキ・塗料皮膜の耐久性を付与するために使用され、アルミナは分散時の酸化チタンの濡れを改良するために使用される。また酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が挙げられる。シリカとアルミナの処理量の比率は、分散安定性の観点から、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。また、酸化チタンに対する該無機物の量は必ずしも限定されないが、一般的には酸化チタン100部に対して30部以下である。
【0022】
本発明のレジストインキで使用する酸化チタン含有量は、レジスト被膜を形成した際の耐エッチング性を十分に保持する観点から、レジストインキ全量の5質量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から30質量%以下が好ましく、10〜25質量%の範囲であればより好ましい。
【0023】
シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンは、市販品を使用してもよく、例えば、石原産業(株)、テイカ(株)等の酸化チタンが製造メーカーより市販されている。例えば、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販され、アルミナによる処理量が上記比率の範囲に入る酸化チタンも入手することができる。
【0024】
本発明のレジストインキで使用するシランカップリング剤は、YSi Xの化学式で示される。ここでXはアルコキシ基を示し、加水分解性を有する部位である。またYは、アルキル基、アルケン基、アレン基、アリール基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、クロル基、メルカプト基等から選択される1種の反応性官能基を有する部位である。
【0025】
前記Yとしては基材密着性の観点から極性が高い官能基がより好適である。したがってさらに好ましくは、アリール基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基およびメルカプト基から選択される1種の官能基を有することが望ましい。
そして前記シランカップリング剤が持つこの特徴的な構造を利用し、前記反応性官能基を有する部位Yを介して有機ポリマー等と、前記加水分解性を有する部位Xを加水分解、反応させることにより無機物表面等と化学結合を形成し、本発明のレジストインキにおいて前記Yとポリエステル樹脂が、一方で前記Xと併用する酸化チタンや回路となる金属箔が接合する事で、化学的性質の異なる両者を強固に結びつける事ができる。
【0026】
前記反応性官能基を有する部位Yとして極性がより高い官能基と、15mgKOH/g以上の高い水酸基価や酸価を有するポリエステル樹脂末端構造が反応性基となって両者の結合はより強固となる傾向にある。
また、主に前記加水分解性を有する部位Xにより、無機物の酸化表面あるいは水酸基とも類似のメカニズムで反応する事から、例えば併用する酸化チタン、有機溶剤に含まれる微量な水分や大気中の湿気によってアルコキシ基が加水分解してシラノール基が生成した後、チタン表面にある水酸基との水素結合を介して回路となる金属箔表面に移行し、さらに脱水縮合反応を経て無機物表面のチタンや回路となる金属箔と強固な共有結合を生成するものである。
本発明のレジストインキは金属箔へ印刷転写後、ヒートセットする事でこれらの反応を加速させるものであり、加熱する事により副生する水、アルコールなどを系外に除くことができる。
【0027】
前記シランカップリング剤は本発明のレジストインキの皮膜強度に好適に作用するが、回路となる金属箔との密着性を良好にする観点から、より好ましくはレジストインキ全量の0.05質量%以上、レジストインキの安定性の観点から5質量%以下であることが望ましい。
【0028】
前記シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらを単独で使用しても、複数組合せて使用してもよい。中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが、インキ硬化皮膜のアルミ蒸着フィルム基材への密着性、及びレジスト被膜を形成した際の耐エッチング性の観点から好ましく、反応性官能基を有する部位Yがエポキシ基である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0029】
また、前記シランカップリング剤に対する前記酸化チタンの質量比率が0.1:13〜4:13の範囲である事が好ましい。前記範囲であれば、レジスト被膜を形成した際の耐エッチング性が低下する事なく、反対にチタンの質量比率が前記範囲より多過ぎてレジストインキが高粘度化し作業性が低下したりゲル化する事が抑制できる。
【0030】
本発明のレジストインキに使用し得る溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。中でもポリエステル樹脂への溶解性の観点から、トルエン/メチルエチルケトン/酢酸エチルの混合液がより好ましい。
【0031】
更に、本発明のレジストインキでは、硝化綿を適量併用する事で耐酸性エッチング性を更に保持することができる。硝化綿の添加量としては、レジストインキ固形分全量の1〜10質量%が好ましく、更に2〜5質量%であれば更に好ましい。
【0032】
本発明のレジストインキでは、カラーICタグを対象に、必要に応じ一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を用いて着色することができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総質量に対して1〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
本発明では更に必要に応じて、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0034】
前記顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、吐出速度、粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0035】
本発明のレジストインキの印刷対象となる金属箔は、予めポリエステル樹脂フィルム等のプラスチックフィルムに貼合せてある場合と、印刷、腐食、回路成形後に各種樹脂フィルムと貼合せる両方の方法がありうる。いずれにしてもレジストインキとの接着面は金属箔である。金属箔の厚み、並びに貼合せるプラスチックフィルムの厚みはその用途に応じて数μm〜数十μmと様々である。
【0036】
本発明のレジストインキを使用したレジスト印刷物の製造方法としては、まず最初に金属箔にレジストインキで印刷を行う工程と、印刷する事で形成したレジストインキの皮膜を100℃以上に加熱硬化させる工程と、硬化したレジストインキ被膜の上から酸性エッチング液でエッチングする工程とをこの順に有する製造方法に従い、レジスト印刷物が得られるものである。
前記金属箔にレジストインキで印刷を行う工程は、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
加熱温度としては100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であれば基材への密着性がより向上する。
尚、汎用に普及しているレジストインキの塗布量は約2.2〜3.0g/mの範囲である事が一般的であるのに対し、本願発明のレジストインキは塗布量が約0.5〜2g/mの薄膜に対応できる事を特徴とするものであり、より高い解像度を保持するレジスト印刷物が得られる。
【実施例】
【0037】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による数平均分子量(ポリスチレン換算)Mnの測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
尚、水酸基価は、ポリエステル樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
また酸価は、JISK0070に準拠して、ポリエステル樹脂の固形分1g中に含まれる遊離カルボキシル基を中和するのに要するKOHのmg数より示したものである。
【0038】
〔ポリエステル樹脂溶液の作製〕
非結晶性ポリエステル樹脂A1(水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、数平均分子量3000)を43部、トルエン50部、メチルエチルケトン30部、酢酸エチル20部を4つ口フラスコに入れ、80℃に加温後2時間保温し樹脂が完全に溶解したのを確認した後室温まで冷却し、固形分30%の非結晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
同様に、樹脂・各溶剤を同比率、同手順を経て、固形分30%の非結晶性ポリエステル樹脂A2〜A6、及びX1、X2を得た。
A2〜A6の各物性値は以下の通り。
・非結晶性ポリエステル樹脂A2(水酸基価20mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、数平均分子量8000)
・非結晶性ポリエステル樹脂A3(水酸基価37mgKOH/g、酸価1mgKOH/g、数平均分子量8000)
・非結晶性ポリエステル樹脂A4(水酸基価16mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、数平均分子量3000)
・非結晶性ポリエステル樹脂A5(水酸基価0mgKOH/g、酸価22mgKOH/g、数平均分子6000)
・非結晶性ポリエステル樹脂A6(水酸基価5mgKOH/g、酸価15mgKOH/g、数平均分子量8000)
・非結晶性ポリエステル樹脂X1(水酸基価6mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、数平均分子量17000)
・非結晶性ポリエステル樹脂X2(水酸基価5mgKOH/g、酸価4mgKOH/g、数平均分子量18000)
【0039】
〔硝化綿ニス液の作製〕
工業用硝化綿DHX3−5(ニトロセルロース、不揮発分70%、Nobel NC,Ltd.製)37.5部に、トルエン/メチルエチルケトン/酢酸エチル(質量比で50/30/20の比率)の混合液を62.5部加え、充分混合し硝化綿ニス液(S)を作製した。
【0040】
[実施例1]
得られたポリエステル樹脂A1の固形分を26.4部、チタンホワイトR−830(ルチル型硫酸法酸化チタン、平均粒子径250nm 吸油量21、石原産業(株)社製)を13部、シランカップリング剤Z6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーティング(株)社製)を1部、硝化綿ニス液(S)の固形分2.8部、トルエン36部、メチルエチルケトン5.5部、酢酸エチル15.3部の合計100部を混合練肉し、白色のレジストインキを作製した。
【0041】
[実施例2〜16,比較例1〜4]
表1、2に示す組成配合により、実施例2〜16及び比較例1〜4について、実施例1と同様にレジストインキを作製した。
尚、実施例6、16については、硝化綿ニスを添加せずに作製した。
【0042】
得られた各々レジストインキに、前記トルエン/メチルエチルケトン/酢酸エチルは質量比で50/30/20の混合液を更に加え、粘度がザーンカップ#3(離合社製)で18秒(25℃)に調整し、金属箔(サイズ:縦20cm×横10cm)に、ヘリオダイレクト彫刻グラビア凹版(225線/inch)を備えたグラビア校正機を用い、塗膜量が2.0g/mになる様、全面ベタで印刷した。
【0043】
1)密着性
レジストインキをベタ刷りした金属箔を、楠本化成製 環境試験機 HISPEC HT310を使用し、170℃にて8分間オーブン加熱した後、常温(25℃)で2時間放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのレジスト印刷皮膜の外観の状態を目視判定した。なお判定基準は次の7段階とした。
(評価基準)
7:レジスト皮膜が全く剥がれなかった。
6:レジスト皮膜の80%以上〜90%が金属箔に残った。
5:レジスト皮膜の70%以上〜80%が金属箔に残った。
4:レジスト皮膜の60%以上〜70%が金属箔に残った。
3:レジスト皮膜の50%以上〜60%未満が金属箔に残った。
2:レジスト皮膜の30%以上〜50%未満が金属箔に残った。
1:レジスト皮膜の30%以下が金属箔に残った。
【0044】
2)耐酸エッチング性
耐酸性トレーに濃度15%塩酸液を液温40℃で保管し、30分間レジストインキをベタ刷りした金属箔を浸漬後、引上げ水洗しレジスト印刷皮膜の外観の状態を、下記判定基準の7段階にて目視判定した。
(評価基準)
7:レジスト皮膜が全く剥がれなかった。
6:レジスト皮膜の80%以上〜90%が金属箔に残った。
5:レジスト皮膜の70%以上〜80%が金属箔に残った。
4:レジスト皮膜の60%以上〜70%が金属箔に残った。
3:レジスト皮膜の50%以上〜60%未満が金属箔に残った。
2:レジスト皮膜の30%以上〜50%未満が金属箔に残った。
1:レジスト皮膜の30%以下が金属箔に残った。
【0045】
各レジストインキの配合と評価結果を表1、2に示す。尚、表中の有機溶剤の数値以外は全て固形分質量を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例の示すレジストインキでは、塗膜量が2.0g/mの薄膜であっても、回路となる金属箔との密着性、耐酸性エッチング性を共に兼備することができる。