)−Rで表される含フッ素ジエン化合物(式中、AはO又はNHであり、Qはn+1価の有機基又は単結合であり、Rfはそれぞれ独立にフルオロアルキル基又はフルオロエーテル基であり、nは1〜2であり、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、X、Y、Zは、それぞれ独立に、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つはメチレン基である。)、上記含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位を有する重合体、上記重合体の製造方法、上記含フッ素ジエン化合物又は上記重合体を含有する、表面処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル又はメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。また、各成分として市販品を使用することができる。
本明細書において、滑落性がより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
「wt%」は「質量%」を意味し「vol%」は「体積%」を意味する。
【0010】
本発明の表面処理剤は、本発明の含フッ素ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有する本発明の重合体等を含有するため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、本発明の表面処理剤が本発明の重合体を含有する場合についてはおよそ以下のとおりと推測される。
上記のとおり、1,6−ジエン−2−カルボン酸エステルモノマー等に由来する環構造含有共重合体において、上記モノマーによる繰り返し単位は、通常、5員環又は6員環の環構造に、エステルが結合する。
一方、本発明の含フッ素ジエン化合物に由来する本発明の重合体において、本発明の含フッ素ジエン化合物による繰り返し単位は、5員環又は6員環の環構造を有し、上記環構造にフルオロアルキル基又はフルオロエーテル基が、少なくともエステル結合又はアミド結合を介して結合する。
このように、本発明の重合体は、本発明の含フッ素ジエン化合物による繰り返し単位が繰り返し単位における主骨格として上記環構造を有することによって、隣接する繰り返し単位間で動きにくく、このため、各繰り返し単位において上記環構造に少なくともエステル結合等を介して結合する上記フルオロアルキル基等が一定方向に配向しやすくなる結果、本発明の表面処理剤の表面における滑落性が向上すると考えられる。
以下、本発明について詳述する。
【0011】
[含フッ素ジエン化合物]
本発明の含フッ素ジエン化合物は、下記式(1)で表される含フッ素ジエン化合物である。
【化5】
式(1)中、
Aは、O又はNHであり、
Qは、n+1価の有機基又は単結合であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基又はフルオロエーテル基であり、
nは、1〜2であり、
Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、
X、Y、Zは、それぞれ独立に、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つはメチレン基である。
【0012】
<A>
本発明において、式(1)中のAは、O(酸素原子)又はNH(イミノ基)である。
上記Aは、本発明の効果により優れるという観点から、Oが好ましい。
【0013】
<Q>
本発明において、式(1)中のQは、n+1価の有機基又は単結合である。本発明において式(1)中のnは1〜2であることから、n+1価は2〜3価となる。
【0014】
n+1価の連結基としては、直鎖状もしくは分岐状のn+1価の、アルキレン基もしくはアルケニレン基、n+1価の、オキシアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和の脂肪族基、4〜6員環の不飽和の脂肪族基、もしくは5〜6員環の複素環基、又は下記式(q)で表される2価の連結基が挙げられる。これらn+1価の連結基は組み合わされていてもよく、環基は縮合していてもよい。
−Y−Z− (q)
式中の記号は以下の意味を示す。
Y:直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、又はこれらの縮合した環基。
Z:−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−N(R)−、−SO
2−、−PO
2−、−N(R)−COO−、−N(R)−CO−、−N(R)−SO
2−、−N(R)−PO
2−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
【0015】
n+1価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基など)、アリーロキシ基(フェノキシ基など)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基など)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基など)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基など)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基など)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、カルバモイル基(N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基など)、アリール基(フェニル基、トルイル基など)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基など)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基など)、アルコキシアシルオキシ基(アセチルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、及び重合性基(ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、桂皮酸残基など)などが挙げられる。
ただし、Qがn+1価のアルキレン基又はn+1価のオキシアルキレン基であり、フッ素原子が置換した構造である場合は、後述するRfの炭素数の決定の定義に基づき、Qの構造も決定される。
【0016】
上記Qは単結合又はn+1価の連結基であれば適宜選択可能であるが、中でも、単結合、直鎖状又は分岐状のn+1価のアルキレン基が好ましく、直鎖状のn+1価のアルキレン基がより好ましい。
後述するRfがペルフルオロアルキル基である場合、Qとしての、フッ素原子を有さない直鎖状のn+1価のアルキレン基の炭素数は、本発明の効果により優れるという観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0017】
<Rf>
本発明において、式(1)中のRfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基又はフルオロエーテル基である。式(1)中のnが2である場合、複数のRfは同じであっても異なってもよい。
なお、本明細書において式(1)中のRfを「Rf基」と称する場合がある。
【0018】
(フルオロアルキル基)
フルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の1個ないし全部がフッ素原子に置換された部分フルオロ置換又はパーフルオロ置換アルキル基を意味する。フルオロアルキル基は、直鎖構造及び分岐構造のいずれであってもよい。なお、フルオロアルキル基の炭素数は、分岐構造の場合は分岐構造も含めた数である。
フルオロアルキル基を構成するアルキル基の直鎖構造としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。フルオロアルキル基を構成するアルキル基の分岐構造としては、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。なお、上記フルオロアルキル基を構成するアルキル基の例示において、上記アルキル基の水素原子の1個ないし全部がフッ素原子に置換されるものとする。
【0019】
フルオロアルキル基の炭素数は、フッ素原子が結合している炭素原子を全て含み、かつ該基に含まれる炭素数が最小になるように決めるものとする。
例えば、式(1)において、「−Q−Rf」が「−C
2H
4−C
6F
13」で表される基の場合、Qが「C
2H
4」であり、Rfが「C
6F
13」である。同様に、「−Q−Rf」が「−CH
2−CHF−CH
2−CF
2H」で表される基の場合、Qが「CH
2」であり、Rfが「CHF−CH
2−CF
2H」である。
【0020】
(フルオロエーテル基)
フルオロエーテル基とは、上記フルオロアルキル基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。上記フルオロアルキル基中の2箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された場合のフルオロエーテル基は、フルオロポリエーテル基となる。
【0021】
・Rf基の構造等
Rf基は直鎖構造及び分岐構造のいずれであってもよいが、Rf基のパッキングを上げる観点からRf基は直鎖構造が好ましい。同様の理由から、分岐構造である場合には、分岐部分がRf基の末端部分に存在する場合が好ましい。
また、Rf基は、本発明の効果により優れ、表面張力低下能力に優れることから、それぞれ独立に、ポリフルオロアルキル基(フッ素を複数有するアルキル基)が好ましく、ペルフルオロアルキル基(アルキル基の水素が全てフッ素に置換されたもの。)がより好ましい。
【0022】
Rf基の炭素数は、本発明の効果により優れ、得られる表面処理剤の防汚性、表面平滑性(レベリング性)に優れるという観点から、それぞれ独立に、1〜6が好ましい。
【0023】
上記Rf基は、本発明の効果により優れ、得られる硬化物が防汚性、表面平滑性(レベリング性)に優れるという観点から、それぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
上記Rf基は、本発明の効果により優れ、得られる硬化物が防汚性、表面平滑性(レベリング性)に優れるという観点から、それぞれ独立に、−C
6F
13、−C
5F
11、−C
4F
9、−C
2F
5、−CF
3であることが好ましい。
【0024】
Rf基が有するフッ素数は、本発明の効果により優れ、得られる硬化物が防汚性、表面平滑性(レベリング性)に優れるという観点から、それぞれ独立に、3以上が好ましく、3〜13がより好ましい。
【0025】
Rf基は、本発明の効果により優れ、表面張力低下能力に優れることから、Q基の末端に結合することが好ましく、Q基の末端の炭素原子に結合することがより好ましい。
Rf基が1個である場合、Q基は2価となり、Rf基が2個である場合、Q基は3価となる。
1個のRf基がQ基の末端の炭素原子に結合する例としては、例えば、CF
3−CH
2−、C
6F
13−CH
2−が挙げられる。
Rf基が2個である場合、本発明の効果により優れ、表面張力低下能力に優れることから、2個のRf基がQ基の末端に結合することが好ましく、2個のRf基が(2個とも)Q基の末端の炭素原子に結合することがより好ましい。
2個のRf基がQ基の末端の炭素原子に結合する例としては、例えば、(CF
3)
2CH−が挙げられる。
【0026】
<n>
本発明において、式(1)中のnは、1〜2である。本発明において、式(1)中のnは、Qに結合するRfの数を表す。
nが1である場合、本発明の効果により優れ、表面張力低下能力に優れることから、Rf基の炭素数は4〜6であることが好ましい。また、nが1であり、Rf基がペルフルオロアルキル基である場合、上記ペルフルオロアルキル基の炭素数は上記と同様の理由で4〜6であることが好ましい。
nが2である場合、本発明の効果により優れ、表面張力低下能力に優れることから、Rf基の炭素数はそれぞれ独立に1〜3であることが好ましい。また、nが2であり、Rf基がペルフルオロアルキル基である場合、上記ペルフルオロアルキル基の炭素数は上記と同様の理由でそれぞれ独立に1〜3であることが好ましい。
【0027】
<R>
本発明において、式(1)中のRは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。
【0028】
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
Rは、本発明の効果により優れるという観点から、水素原子が好ましい。
【0029】
<X、Y、Z>
本発明において、式(1)中のX、Y、Zは、それぞれ独立に、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基(−NH−)である。また、本発明において、X、Y、Zのうちの少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つはメチレン基である。
【0030】
本発明の効果により優れるという観点から、上記X、Zが、それぞれ独立に、メチレン基であり、上記Yが、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であることが好ましく、
上記X、Zが、それぞれ独立に、メチレン基であり、上記Yが、酸素原子であることがより好ましい。
【0031】
上記式(1)で表される含フッ素ジエン化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、下記式(2)で表される含フッ素ジエン化合物であることが好ましく、下記式(5)で表される化合物がより好ましい。
【化6】
式(2)中、
Aは、O又はNHであり、
Qは、n+1価の有機基又は単結合であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基又はフルオロエーテル基であり、
nは、1〜2であり、
Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。
【0032】
式(2)中のA、Q、Rf、n、Rは、式(1)中のA、Q、Rf、n、Rとそれぞれ同様である。
【0033】
式(5)で表される化合物は以下のとおりである。
【化7】
(5)
【0034】
(含フッ素ジエン化合物の製造方法)
本発明の含フッ素ジエン化合物の製造方法としては、式(1)中のAがOである場合、例えば、(Rf)
n−Q−A(上記Aは酸素原子)−Hで表される原料と、HO−CO−C(=CH
2)−X−Y−Z−C(=CH
2)−Rで表される原料とを、酸触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0035】
上記原料としての上記(Rf)
n−Q−A(上記Aは酸素原子)−HにおけるRf、n、Qは、式(1)中のRf、n、Qに対応する。なお、上記Aに結合するHは水素原子を表す。上記(Rf)
n−Q−A(上記Aは酸素原子)−Hは、Rf、n、Qとして、式(1)中のRf、n、Qに対応するものを有する化合物であれば特に制限されない。上記(Rf)
n−Q−A(上記Aは酸素原子)−Hとしては、例えば、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロメチル)エタノール、2、2−ジ(パーフルオロメチル)エタノールが挙げられる。
【0036】
もう一方の原料であるHO−CO−C(=CH
2)−X−Y−Z−C(=CH
2)−Rにおける、X、Y、Z、Rは、式(1)中のX、Y、Z、Rに対応する。上記原料は、X、Y、Z、Rとして、式(1)中のX、Y、Z、Rに対応するものを有する化合物であれば特に制限されない。なお、上記原料においてし、上記HO−CO−はカルボキシ基を表す。上記HO−CO−C(=CH
2)−X−Y−Z−C(=CH
2)−Rとしては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸(H−AMA)が挙げられる。
【0037】
上記酸触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機スルホン酸が挙げられる。
【0038】
上記反応の反応温度は、70〜120℃であればよい。より好ましくは80〜100℃である。
【0039】
また、本発明の含フッ素ジエン化合物の製造方法としては、式(1)中のAがNHの場合、例えば、(Rf)
n−Q−A(上記AはNH)−Hで表される原料と、ハロゲン原子−CO−C(=CH
2)−X−Y−Z−C(=CH
2)−Rで表される原料とを反応させる方法が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記(Rf)
n−Q−A(上記AはNH)−Hとしては、例えば、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアミン、2−(パーフルオロメチル)エチルアミン、2、2−ジ(パーフルオロメチル)エチルアミンが挙げられる。
上記ハロゲン原子−CO−C(=CH
2)−X−Y−Z−C(=CH
2)−Rとしては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロリドが挙げられる。
上記反応の反応温度は、−25〜100℃であればよい。好ましくは−10〜80℃である。
【0040】
上記含フッ素ジエン化合物の製造は有機溶媒中で行うことができる。上記有機溶媒は、上記反応を阻害しないものであれば特に制限されない。例えば、シクロヘキサンのような炭化水素化合物、エーテル系化合物、ケトン類が挙げられる。
上記含フッ素ジエン化合物の製造において、反応系内に、ハイドロキノン化合物のような重合禁止剤を加えてもよい。上記ハイドロキノン化合物としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、4−メトキシフェノールが挙げられる。
反応後、例えば、蒸留等によって反応生成物を精製することができる。
含フッ素ジエン化合物の製造は、反応で生成した水を反応系から除外する装置で行うのが好ましい。
【0041】
[重合体]
本発明の重合体は、本発明の含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位を有する、重合体である。
本明細書において、本発明の重合体を「特定重合体」と称する場合がある。
本発明の重合体の製造に使用されるモノマー(単量体)としての含フッ素ジエン化合物は、本発明の含フッ素ジエン化合物を少なくとも含むものであれば特に制限されない。
【0042】
特定重合体を構成する、含フッ素ジエン化合物から導かれる上記構成単位(繰り返し単位)は、本発明の効果により優れるという観点から、下記式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化8】
式(3)中、
Aは、O又はNHであり、
Qは、n+1価の有機基又は単結合であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基又はフルオロエーテル基であり、
nは、1〜2であり、
X、Y、Zは、それぞれ独立に、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つはメチレン基である。
【化9】
式(4)中、
Aは、O又はNHであり、
Qは、n+1価の有機基又は単結合であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基又はフルオロエーテル基であり、
nは、1〜2であり、
X、Y、Zは、それぞれ独立に、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基であり、X、Y、Zのうちの少なくとも1つはメチレン基である。
【0043】
式(3)中のA、Q、Rf、n、X、Y、Zは、式(1)中のA、Q、Rf、n、X、Y、Zとそれぞれ同様である。式(4)についても同様である。
【0044】
上記含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位(或いは、好ましい態様としての式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位。以下同様)の含有量(特定重合体が式(3)及び式(4)で表される構成単位を有する場合はその合計量。以下同様)は、本発明の効果により優れるという観点から、特定重合体中の25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
上記特定重合体が、上記含フッ素ジエン化合物による、環構造を有さない繰り返し単位を更に含む場合、上記含フッ素ジエン化合物による、環構造を有する繰り返し単位(例えば、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位)の含有量の上限は100質量%未満であればよい。上記含フッ素ジエン化合物による、環構造を有さない繰り返し単位は、例えば、後述する式(6)で表される重合体において、繰り返し単位数pを有する繰り返し単位として表されている。
【0045】
上記含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位(或いは、好ましい態様としての式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位)の含有量は、本発明の重合体が上記含フッ素ジエン化合物による単独重合体、又は上記含フッ素ジエン化合物及びこれ以外のモノマーを含むモノマーの共重合体である場合のいずれについても同様とできる。なお、本発明の重合体が上記共重合体である場合、上記含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位の含有量の上限は100質量%未満となる。
【0046】
本発明の重合体が、上記含フッ素ジエン化合物以外のモノマー(その他のモノマー)に由来する構成単位を有する場合、上記その他のモノマーは、エチレン性不飽和結合を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、上記含フッ素ジエン化合物以外の(メタ)アクリレート系化合物若しくは(メタ)アクリルアミド系化合物、又は(メタ)アクリル酸、スチレン系化合物が挙げられる。
【0047】
本発明の重合体は、本発明の効果により優れるという観点から、上記含フッ素ジエン化合物による単独重合体であることが好ましい。
【0048】
本発明の重合体が上記含フッ素ジエン化合物による単独重合体である場合、上記含フッ素ジエン化合物による単独重合体としては、例えば、下記式(6)で表される重合体が挙げられる。
【0050】
式(6)中のA、Q、Rf、n、X、Y、Zは、式(1)中のA、Q、Rf、n、X、Y、Zとそれぞれ同様である。
式(6)中のl、m、pは、各繰り返し単位の繰り返し単位数を表す。
l、m、pはそれぞれ独立に、0又は1以上であり、l+mは1以上である。
l+mは上記含フッ素ジエン化合物から導かれる構成単位(或いは、好ましい態様としての式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位)の含有量に対応する値とできる。
【0051】
本発明の重合体は、本発明の効果により優れるという観点から、下記式(7)で表される重合体を含むことが好ましい。
【化11】
【0052】
式(7)中のl、m、pは、式(6)中のl、m、pとそれぞれ同様である。
【0053】
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果により優れるという観点から、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜40,000がより好ましい。
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果により優れるという観点から、5,000〜200,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましく、20,000〜80,000が更に好ましい。
本発明の重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、本発明の効果により優れるという観点から、1.0〜20が好ましく、1.0〜3がより好ましい。
【0054】
[本発明の重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は、本発明の含フッ素ジエン化合物を、有機溶剤中で重合させることによって、本発明の重合体を製造する、重合体の製造方法である。
【0055】
本発明の重合体の製造方法に使用されるモノマー(単量体)としての含フッ素ジエン化合物は、本発明の含フッ素ジエン化合物であれば特に制限されない。
本発明の重合体の製造方法において、上記有機溶剤は重合溶剤として機能することができる。
本発明の重合体の製造方法によれば、本発明の重合体(特定重合体)を製造することができる。
【0056】
上記有機溶剤は、上記含フッ素ジエン化合物におけるジエンを効率的に環化させることができ、本発明の効果により優れ、上記含フッ素ジエン化合物(モノマー)を重合させる際に、比較的高い分子量で環化重合させることが可能であるという観点から、含フッ素有機溶剤を含むことが好ましい。
【0057】
上記含フッ素有機溶剤は、フッ素を有し、上記含フッ素ジエン化合物又は特定重合体を分散又は溶解させ得る、有機系の溶剤であれば特に制限されない。
上記含フッ素有機溶剤としては、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロケトン(PFK)が挙げられる。
【0058】
上記含フッ素有機溶剤は、本発明の効果により優れるという観点から、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を含むことが好ましく、フルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物を含むことがより好ましい。
【0059】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、一般的に、骨格が炭素で構成され、上記炭素に結合する水素の一部又は全てがフッ素で置換された化合物を指す。
フルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物としては、例えば、m−キシレンヘキサフルオリド(以下、m−XHFと記す。)、p−キシレンヘキサフルオリドのようなキシレンヘキサフルオリドが挙げられる。
フルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、m−XHFが好ましい。
【0060】
なお、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、フルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物以外のハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロケトン(PFK)については、後述する本発明の表面処理剤が更に含有することができる有機溶剤において記載されたものと同様のものを挙げることができる。
【0061】
本発明の重合体の製造方法において例えば重合開始剤を使用できる。上記重合開始剤としては、例えば、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオナート)、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、有機過酸化物、過硫酸塩等挙げられる。
本発明の重合体の製造方法において重合温度は、例えば、50〜80℃とできる。
なお、本発明の重合体の製造方法によって製造された重合体は、未反応の含フッ素ジエン化合物及び/又は重合溶剤としての有機溶剤を更に含んでもよい。
【0062】
[表面処理剤]
本発明の表面処理剤は、本発明の含フッ素ジエン化合物又は本発明の重合体を含有する、表面処理剤である。
【0063】
本発明の表面処理剤に含有される含フッ素ジエン化合物は、本発明の含フッ素ジエン化合物であれば特に制限されない。
本発明の表面処理剤に含有される重合体は、本発明の重合体(特定重合体)であれば特に制限されない。
本発明の表面処理剤は、本発明の効果により優れるという観点から、特定重合体を含有することが好ましく、式(6)で表される重合体を含有することがより好ましく、式(7)で表される重合体を含有することが更に好ましい。
【0064】
本発明の表面処理剤は、本発明の効果により優れるという観点から、更に、有機溶剤を含有することが好ましい。
上記有機溶剤は、上記含フッ素ジエン化合物又は上記特定重合体を溶解又は分散させ得る有機化合物であれば特に制限されない。上記有機溶剤は、上記含フッ素ジエン化合物又は上記特定重合体に対して反応性を有さないことが好ましい。
【0065】
上記有機溶剤としては、含フッ素有機溶剤、炭化水素化合物、エーテル系化合物、アルコール系化合物、ケトン類が挙げられる。
なお、上記有機溶剤において、含フッ素有機溶剤以外の有機溶剤は、フッ素を有さないものとする。
【0066】
上記有機溶剤は、上記含フッ素ジエン化合物又は上記特定重合体に対する溶解性又は分散性に優れ、本発明の効果により優れるという観点から、含フッ素有機溶剤を含むことが好ましい。
上記含フッ素有機溶剤は、炭化水素化合物が有する水素原子の少なくとも一部又は全てがフッ素原子に置換された化合物であればよい。上記炭化水素化合物は、上記フッ素原子以外に、更に、エーテル結合、カルボニル基等を有してもよい。
【0067】
上記含フッ素有機溶剤としては、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロケトン(PFK)が挙げられる。
【0068】
(ハイドロフルオロエーテル(HFE))
ハイドロフルオロエーテル(HFE)としては、例えば、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(CF
3CF
2CF
2OCH
3)、1,1−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CF
3CH
2OCF
2CH
3)、パーフルオロ−1−エチルブチルメチルエーテル(CF
3CF
2CF
2CF(CF
2CF
3)OCH
3)、2,2−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CF
3-CH
2-OCH
2-CF
2-H)、メチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OCH
3)及びエチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるハイドロフルオロエーテル(HFE)は、これらに限定されるものではない。
上記ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、1種類を単独で、又は2種類以上を組合せて、用いることができる。
【0069】
上記HFEは、表面処理剤の表面張力を低減でき、本発明の効果により優れ、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が低いことから、好ましくはCF
3−CH
2−OCH
2−CF
2−H、メチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OCH
3)及びエチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)からなる群から選択される少なくとも1種類であり、上記に加え、乾燥性、作業性に優れるという観点から、より好ましくはCF
3−CH
2−OCH
2−CF
2−H及び/又はエチルノナフルオロブチルエーテルであり、さらに好ましくはエチルノナフルオロブチルエーテルである。
【0070】
上記メチルノナフルオロブチルエーテル及び上記エチルノナフルオロブチルエーテルのノナフルオロブチル基(すなわち、パーフルオロブチル基)は、それぞれ、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。
【0071】
また、上記メチルノナフルオロブチルエーテル及び上記エチルノナフルオロブチルエーテルは、それぞれ、ノナフルオロブチル基の構造が同一である1種類の化合物からなる純物質であってもよいし、ノナフルオロブチル基の構造が相違する2種類以上の異性体からなる混合物であってもよい。
【0072】
上記エチルノナフルオロブチルエーテルとして、例えば、下記式(A−1−a)で表される化合物、下記式(A−1−b)で表される化合物及び下記式(A−1−c)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を単独で、又は2種類以上の化合物を混合した混合物として用いることができ、下記式(A−1−a)で表される化合物、及び下記式(A−1−b)で表される化合物の組合せが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0074】
(ハイドロフルオロカーボン(HFC))
ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、一般的に、骨格が炭素で構成され、上記炭素に結合する水素の一部又は全てがフッ素で置換された化合物を指す。
本発明の表面処理剤が更に含有することができるHFCとしては、例えば、脂肪族系炭化水素が有する水素の一部又は全てがフッ素で置換された脂肪族系HFCであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記脂肪族系HFCの主鎖は、直鎖状、分岐状若しくは環状、又はこれらの組合せであればよい。
なお、脂肪族系HFCは例えばベンゼン環のような芳香族炭化水素基を有さないものとできる。
【0075】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、例えば、
1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン(CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CH
3)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(CF
3CHFCHFCF
2CF
3)、ヘプタフルオロシクロペンタン(c−C
5F
7H
3)、トリデカフルオロヘキサン(C
6HF
13)、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン(CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CH
3)及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−n−ブタン(CF
3CH
2CF
2CH
3)のような、脂肪族系HFC;
m−XHFのような、芳香族炭化水素基を有する芳香族系HFCを挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるハイドロフルオロカーボン(HFC)は、これらに限定されるものではない。
上記ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、1種類を単独で、又は2種類以上を組合せて用いることができる。
【0076】
(パーフルオロケトン(PFK))
パーフルオロケトン(PFK)は、例えば、ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン((CF
3)
2CFC(=O)CF
2CF
3)、テトラデカフルオロ−2−メチルヘキサン−3−オン(CF
3CF
2CF
2C(=O)CF(CF
3)
2)及びテトラデカフルオロ−2,4−ジメチルペンタン−3−オン((CF
3)
2CFC(=O)CF(CF
3)
2)を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるパーフルオロケトン(PFK)は、これらに限定されるものではない。
上記パーフルオロケトン(PFK)は、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記パーフルオロケトン(PFK)を2種類組み合わせる場合、例えば、テトラデカフルオロ−2−メチルヘキサン−3−オン((CF
3)
2CFC(=O)CF
3CF
2CF
2)とテトラデカフルオロ−2,4−ジメチルペンタン−3−オン((CF
3)
2CFC(=O)CF(CF
3)
2)の組合せによる混合物が挙げられる。
【0077】
上記含フッ素有機溶剤は、本発明の効果により優れるという観点から、ハイドロフルオロエーテル(HFE)及び/又はハイドロフルオロカーボン(HFC)が好ましく、
ハイドロフルオロエーテル(HFE)とハイドロフルオロカーボン(HFC)の組合せがより好ましく、
CF
3−CH
2−OCH
2−CF
2−H、メチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OCH
3)及びエチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)からなる群から選択される少なくとも1種類と、芳香族炭化水素基を有する芳香族系HFCの組合せが更に好ましく、エチルノナフルオロブチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)とXHFの組合せがより更に好ましい。
なお、本発明の表面処理剤は、上記特定重合体の製造に由来する、例えば重合溶剤としての有機溶剤を、本発明の表面処理剤における有機溶剤として含有してもよい。
【0078】
本発明の表面処理剤が上記特定重合体を含有する場合、上記特定重合体の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、表面処理剤全量中の、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
本発明の表面処理剤が上記含フッ素ジエン化合物を含有する場合における上記含フッ素ジエン化合物の含有量、又は本発明の表面処理剤が上記含フッ素ジエン化合物及び上記特定重合体を含有する場合における上記含フッ素ジエン化合物及び特定重合体の合計含有量も上記と同様である。
【0079】
本発明の表面処理剤は、上記必須成分のほかに、さらに添加剤を含有してもよい。
上記添加剤としては、例えば、上記含フッ素ジエン化合物を重合させるために使用できる各種重合開始剤、硬化剤、硬化触媒、フィラー(充填材)、顔料、染料、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、消泡剤、発泡剤、分離防止剤、レベリング剤、可塑剤、乳化剤、乾燥剤、ガラス繊維、カーボン繊維などの補強繊維、界面活性剤、低収縮剤、着色剤などが挙げられる。
【0080】
本発明の表面処理剤の製造方法は特に制限されない。
本発明の表面処理剤が上記特定重合体のみを含有する場合は、上記特定重合体をそのまま使用すればよい。
また、上記特定重合体は、上記特定重合体を製造する際に重合溶剤として使用された上記有機溶剤等との混合物の状態であってもよい。
本発明の表面処理剤が上記特定重合体以外に更に、本発明の表面処理剤において上述した有機溶剤、必要に応じて使用することができる上記添加剤を含有する場合は、上記特定重合体と、上記有機溶剤及び/又は上記添加剤とを混合することによって、本発明の表面処理剤を製造することができる。
本発明の表面処理剤中に含まれ得る有機溶剤全体(特定重合体が特定重合体を製造する際に重合溶剤として使用された上記有機溶剤との混合物の状態として使用される場合、重合溶剤として使用された有機溶剤を含む。)の量は、本発明の効果により優れるという観点から、表面処理剤全量中の、50〜99.9質量%であることが好ましく、90〜99.5質量%がより好ましい。
【0081】
本発明の表面処理剤の使用方法としては、例えば、本発明の表面処理剤を基材に付与する使用方法が挙げられる。上記付与によって、上記基材の表面に表面処理剤の層を形成し、上記基材の表面の滑落性を向上させることができる。
本発明の表面処理剤を基材に付与する方法は特に制限されない。例えば、塗布等が挙げられる。
【0082】
本発明の表面処理剤が更に上記有機溶剤を含有する場合、本発明の表面処理剤を基材に付与した後、例えば、10〜120℃の条件下において、上記有機溶剤を乾燥させることができる。
【0083】
本発明の表面処理剤は、具体的には例えば、塗料、コーティング剤として使用することができる。
上記基材の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、ゴム、金属、セラミックなどが挙げられる。
上記基材としては、具体的には例えば、浴室部材、洗面部材、キッチン部材などの水周りの成形品;傘、靴、鞄などの生活用品;橋脚、屋根、外壁などの建築物の外装関連;床、内壁などの内装関連;家具、家電などの住宅用品;船舶、飛行機、自動車などの車体(外装材、内装材を含む)などが挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0085】
<含フッ素ジエン化合物の製造>
[実施例1−1]含フッ素ジエン化合物1の製造
以下の方法で含フッ素ジエン化合物1を製造した。
1.一段階目の工程(α−アリルオキシメチルアクリル酸:H−AMAの合成)
反応槽として、500mLの4つ口フラスコに温度計、攪拌装置、ジムロート冷却器、滴下漏斗を取り付けたものを使用した。反応槽に10wt%水酸化ナトリウム水溶液150.0gとMe−AMA(α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルエステル。商品名FX−AO−MA、日本触媒社製。以下同様)55.8gを仕込み、水浴で冷却しながら一時間攪拌した。Me−AMAの消失をGC分析で確認してから、水浴を氷浴に変えた。30wt%硫酸64.2gを滴下漏斗に仕込み、攪拌を続けながら滴下した。滴下終了後、分液漏斗により分液し、イオン交換水83.5g(有機層に対して40wt%)で水洗した。水洗後の有機層に0.2g(有機層に対して0.1wt%)のヒドロキノンを加え、有機層に含まれる水を留去するためにエバポレーターを用いて2.2kPaで1時間留去した。留去した後、析出物(Na
2SO
4)を除去するため孔径1μmのPTFE製メンブランフィルターと吸引濾過器を使用して濾過し、α−アリルオキシメチルアクリル酸(H−AMA)41.8gを得た。
【0086】
【化13】
Me−AMA H−AMA
【0087】
2.二段階目の工程(含フッ素ジエン化合物1の製造)
反応槽として、500mLの4つ口フラスコに温度計、攪拌装置、水分定量受器、平栓を取り付けたものを使用した。水分定量受器には、シクロヘキサンを充填させた。反応槽に、上記一段階目の工程で得られたH−AMA73.7gとシクロヘキサン80.0g、ヒドロキノン0.6g、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エタノール(市販品)200.0g、p−トルエンスルホン酸5.17gを加えた。油浴で90℃、9時間反応させ、GC分析により転化率を求めた(転化率99.7%)。反応後の溶液に10wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液146.1gを加え、分液漏斗により分液した。得られた有機層をイオン交換水146.1gで水洗し、有機層に1.45gの4−tert−ブチルピロカテコールを加えた。その後、シクロヘキサンを取り除くために、2.9kPaで2時間留去し、生成物223.9gを得た。(GC純度91.2%)
上記生成物を、約0.1kPaの減圧条件下で蒸留して精製し、70℃から97℃の温度範囲で留分を採取した。約88℃で採取した留分が主留(主生成物)であった。上記主生成物のGC純度は97.4%、収量が31.8gであった。
【0088】
【化14】
H−AMA 含フッ素ジエン化合物1
【0089】
3.上記主生成物の分析
GC−MSと
1H−NMRで上記主生成物の構造を分析した。
(1)GC−MS
上記主生成物のGC−MSによる分析の結果、上記分析で得られた上記主生成物の親ピーク(m/z=489)は、目的化合物(m/z=488)の分子量と一致した。
【0090】
GC−MSの測定条件を以下に示す。
装置:GC−2010及びGCMS−QP2010(株式会社島津製作所製)
カラム:DB−1301(アジレント・テクノロジー株式会社製)(内径0.25mm,長さ30m,膜厚1.00μm)
注入口温度:200℃
注入方式:スプリット
スプリット比:20
流量:11mL/min
カラム温度プログラム:50℃で5分間保持し、10℃/minで250℃まで温度を上げ、250℃で10分間保持する温度プログラム
イオン源温度:230℃
インターフェース温度:230℃
イオン化法:EI
【0091】
(2)
1H−NMR
上記主生成物の
1H−NMRによる分析の結果、目的化合物である下記構造に由来するプロトンが観測され、積分値とプロトン数が一致した。
【化15】
【0092】
<
1H−NMRの測定>について以下に示す。
測定対象物質(上記主生成物又は後述する重合体)を重溶媒アセトン−d6に溶解させ、測定対象物質の濃度が約0.2wt%になるように調製した。調製した溶液を
1H−NMR用測定管に移した。
以下に測定条件を示す。
装置:400MHz イヤーホールド マグネット 400JJYH(日本電子株式会社製)
核種:プロトン
積算回数:32
【0093】
以上、GC−MS及び
1H−NMRによる分析の結果から、上記主生成物の構造は、上記構造であると結論付けた。
本明細書において上記のとおり製造した主生成物を含フッ素ジエン化合物1と称する場合がある。
上記のようにして製造された含フッ素ジエン化合物1を後述する重合体の製造にモノマーとして使用した。
図1に含フッ素ジエン化合物1のGC−MSチャート(ガスクロマトグラム)、
図2に含フッ素ジエン化合物1のGC−MSチャート(マススペクトル)、
図3に含フッ素ジエン化合物1の
1H−NMRチャートを示す。なお、
図3に示した
1H−NMRチャートにおけるXは、
1H−NMR測定のために使用された重溶媒アセトン−d6中の水によるピークである。
【0094】
<<重合体の製造>>
<実施例2−1:特定重合体1(環+F)の製造>
100mLメジューム瓶にモノマーとして上記のとおり製造された含フッ素ジエン化合物1を11.0g、有機溶剤(重合溶剤)としてm−キシレンヘキサフルオライド(m−XHF。市販品)を44.0g、重合開始剤としてV−601(ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオナート)、富士フイルム和光純薬社製)を0.11g加え、重合溶液を準備した。その溶液内の溶存酸素を取り除くために、窒素で1分間バブリングを行った。その後、メジューム瓶を振とう恒温槽に入れ、70℃、18時間、振とう数120〜130min
-1の条件で重合させ、含フッ素ジエン化合物1による単独重合体である特定重合体1を製造した。特定重合体1は、含フッ素ジエン化合物1から導かれる構成単位(繰り返し単位)を有する。特定重合体1が有する繰り返し単位のうち、一部の繰り返し単位は、(CF
2)
6F基、及びジエンによる環構造を有する。
重合後に得られた、特定重合体1及び上記有機溶剤を含む混合物は均一な状態であった。
【0095】
(比較例2−1:比較重合体1(非環+F)の調製)
含フッ素ジエン化合物1を、下記構造を有する含フッ素非ジエン化合物(市販品)に変更した他は、上記<特定重合体1の製造>と同様にして重合を行い、上記化合物による単独重合体である比較重合体1を製造した。比較重合体1が有する繰り返し単位は、(CF
2)
6F基を有するが、環構造を有さない。
重合後の、比較重合体1及び上記有機溶剤を含む混合物は、均一な状態であった。
【化16】
【0096】
(比較例2−2:比較重合体2(環+C)の調製)
含フッ素ジエン化合物1を、非フッ素ジエン化合物であるMe−AMA(上記と同様。下記構造)に変更した他は、上記<特定重合体1の製造>と同様にして重合を行い、Me−AMAによる単独重合体である比較重合体2を製造した。比較重合体2が有する繰り返し単位は、ジエンによる環構造を有するが、フッ素原子を有さない。
重合後に得られた溶液中に白色固体が析出していた。
【化17】
【0097】
(比較例2−3:比較重合体3(環+C)の調製)
含フッ素ジエン化合物1を、非フッ素ジエン化合物であるMe−AMA(上記と同様)に変更し、有機溶剤(重合溶剤)としてのm−XHFをメチルエチルケトン(MEK)に変更した他は、上記<特定重合体1の製造>と同様にして重合を行い、Me−AMAによる単独重合体である比較重合体3を製造した。比較重合体3が有する繰り返し単位は、ジエンによる環構造を有するが、フッ素原子を有さない。
重合後の、比較重合体3及び上記有機溶剤を含む混合物は、均一な状態であった。
【0098】
(比較例2−4:比較重合体4(非環+C)の調製)
含フッ素ジエン化合物1を、非フッ素非ジエン化合物であるメチルメタクリレート(MMA。下記構造。市販品)に変更した他は、上記<特定重合体1の製造>と同様にして重合を行い、メチルメタクリレートによる単独重合体である比較重合体4を製造した。比較重合体4が有する繰り返し単位は、フッ素原子及び環構造を有さない。
重合後の、比較重合体4及び上記有機溶剤を含む混合物は、上記実施例2−1で得られた混合物よりも、粘度が高かった。
【化18】
【0099】
(比較例2−5:比較重合体5(非環+C)の調製)
含フッ素ジエン化合物1を、非フッ素非ジエン化合物であるメチルメタクリレートに変更し、有機溶剤(重合溶剤)としてのm−XHFをメチルエチルケトン(MEK)に変更した他は、上記<特定重合体1の製造>と同様にして重合を行い、メチルメタクリレートによる単独重合体である比較重合体5を製造した。比較重合体5が有する繰り返し単位は、フッ素原子及び環構造を有さない。
重合後の、比較重合体5及び上記有機溶剤を含む混合物は、均一な状態であった。
【化19】
【0100】
<特定重合体1の分析:環化率>
上記のとおり製造された特定重合体1がジエンによる環構造を有することを確認するために
1H−NMR測定を以下のとおり行った。その結果を
図4に示す。
図5は、
図4に示した、特定重合体1の
1H−NMRのチャートの拡大図である。なお、
図4に示した
1H−NMRチャートにおけるXは、
1H−NMR測定のために使用された重溶媒アセトン−d6中の水によるピークである。
図5も同様である。
また、各プロトンの積分値から環化率を算出した。以下に環化率の計算手順を記載する。
なお、重合体に関する
1H−NMR測定は、上記<
1H−NMRの測定>と同様である。
【0101】
まず、単量体(含フッ素ジエン化合物1)及び重合し得る重合体のプロトンに、a〜iで以下のようにラベル付けした。
【化20】
【0102】
・特定重合体1中の未反応の単量体の量
上記単量体にラベル付けしたgは、重合体には見られないため、特定重合体1の
1H−NMRの結果におけるgのピーク積分値から、特定重合体1中の未反応の単量体(モノマー)の量(mol)を、後述する計算式で0.0309モルと算出した。
【0103】
・特定重合体1中の、ジエンが未環化の繰り返し単位の量
重合体中の、ジエンが未環化の繰り返し単位の量を、a,bの合計ピーク積分値から求めた。しかし、単量体もa,bがあるため、特定重合体1の
1H−NMRの結果におけるa,bの合計積分値をもとに、後述する計算式で、上記のとおり得られた、特定重合体1中の未反応の単量体の量を差し引いて、特定重合体1中の、ジエンが未環化の繰り返し単位(未環化部)の量を、0.00365モルと算出した。
【0104】
・特定重合体1中の、ジエンが環化した繰り返し単位の量
重合体中の、ジエンが環化した繰り返し単位の量を、hのピーク積分値から求めた。しかし、単量体及びジエンが未環化の繰り返し単位もhがあるため、特定重合体1の
1H−NMRの結果におけるhの積分値をもとに、後述する計算式で、上記のとおり得られた、特定重合体1中の未反応の単量体及び未環の繰り返し単位の量を差し引いて、特定重合体1中の、ジエンが環化した繰り返し単位(環化部)の量を、0.96545モルと算出した。
【0105】
・環化率
以上の結果から、特定重合体1における含フッ素ジエン化合物1の環化率は99.6%であった。結果を第1表の「重合体の環化率」欄に上記結果を示す。
【0106】
【数1】
【0107】
比較重合体2、3の環化率についても特定重合体1と同様にして分析した。
比較重合体2は、
1H−NMRを測定する際に使用した重溶媒に溶解しなかったので、比較重合体2における環化率を測定できなかった。上記結果を第1表に「測定不可」と示した。
比較重合体3における非フッ素ジエン化合物の環化率は99.5%であった。
【0108】
【表1】
【0109】
<重合体の分析:分子量>
上記のとおり製造された重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)をGPCで測定した。結果を第1表に示す。
【0110】
(GPC:重合体の分子量測定)
上記各重合体のMw、Mn、及び(Mw/Mn)を、非フッ素系ポリマーについては、ACQUITY Arc Systems(日本ウォーターズ株式会社製)を用いて測定し、フッ素系ポリマー(本発明の重合体はフッ素を有するのでこれに該当する)については、HLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用いて測定した。以下に各測定条件を示す。
【0111】
・上記重合体が非フッ素系ポリマーである場合のMw等の測定条件
装置:ACQUITY Arc Systems(日本ウォーターズ株式会社製)
パージ溶媒:テトラヒドロフラン
移動相:テトラヒドロフラン
注入量:20μL
流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
分析時間:10min
検出器:ELSD
カラム:ACQUITY APC
TM XT 45×2,ACQUITY APC
TM XT 200×1,ACQUITY APC
TM XT 450×1(日本ウォーターズ株式会社製)
【0112】
・上記重合体がフッ素系ポリマーである場合のMw等の測定条件
装置:HLC−8320GPC(東ソー株式会社製)
パージ溶媒:Novec7300(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7、3M社製。以下同様)/ヘキサフルオロ−2−プロパノール=85/15vol%(体積%)
移動相:Novec7300/ヘキサフルオロ−2−プロパノール=85/15vol%
注入量:20μL
流速:0.3mL/min
カラム温度:40℃
分析時間:40min
検出器:RI
カラム:Shodex GPC LF−604×2,Shodex GPC LF−6×1,KF−600PH×1(昭和電工株式会社製)
【0113】
<表面処理剤の製造>
第1表の「表面処理剤」の欄の下に示す、表面処理剤に使用された、各重合体及び有機溶剤を用いて、各重合体の濃度が(2.0wt%)となるようにこれらを混合し、各表面処理剤を製造した。
上記<<重合体の製造>>で製造された各重合体(重合溶剤を含んだ状態の重合体)を、表面処理剤の製造に使用した。
【0114】
表面処理剤の製造に使用された有機溶剤の詳細は以下のとおりである。
・Novec7200:下記化合物の混合物。3M社製
【化21】
【0115】
・MEK:メチルエチルケトン(市販品)
なお、比較例3−2では、比較重合体2が、表面処理剤を製造するために使用された有機溶剤としてのMEKに溶解せず、表面処理剤を作製することができなかった。これに伴い、第1表において、比較例3−2の接触角及び転落角の結果を「測定不能」と示した。
【0116】
<評価>
上記のとおり製造された各表面処理剤を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
1.表面処理被膜付きガラス板の調製
ガラス板を上記のとおり製造された各表面処理剤に室温の条件下で1分間浸漬させ、上記ガラス板を表面処理剤から取り出した後、上記ガラス板を120℃の条件下で5分間乾燥させて、ガラス板の表面に各表面処理剤(特定重合体又は比較重合体)による膜を有する、表面処理被膜付きガラス板を調製した。
【0117】
2.接触角の測定
上記のとおり得られた各表面処理被膜付きガラス板にノルマルヘキサデカン(3μL)を着滴させ、自動接触角測定装置OCA20(英弘精機株式会社製)を用いて、接触角(単位:度)を測定した。
【0118】
・接触角の評価基準
上記接触角が60度以上であった場合、撥油性に優れ、好ましい。
上記接触角が60度より大きいほど、撥油性により優れる。
上記接触角が60度未満であった場合、撥油性が悪いと評価した。
【0119】
3.転落角の測定
上記のとおり得られた各表面処理被膜付きガラス板にノルマルヘキサデカン(10μL)を着滴させ、接触角計DMo−501(協和界面科学株式会社製)を用いて転落角を測定した。転落角を測定する際の転落角の移動速度は約1.5°/秒とし、ノルマルヘキサデカンの液滴が移動を始めた際の角度を転落角(度)とした。
【0120】
・転落角による滑落性の評価基準
本発明において、滑落性を、ノルマルヘキサデカン10μLを使用した場合の転落角の測定結果で評価した。
本発明において、ノルマルヘキサデカン10μLを使用した場合の転落角が20度以下であった場合、滑落性(液滴除去性)に優れると評価した。
上記転落角が20度より小さかった場合、滑落性により優れるものとする。
一方、上記転落角が20度を超えた場合、滑落性がやや悪いと評価した。
また、液滴が表面処理被膜付きガラス板から滑り落ちるときに、表面処理被膜付きガラス板の表面にノルマルヘキサデカンの液跡が残った場合、転落角の大きさにかかわらず、これを「測定不可」と評価した。上記「測定不可」を滑落性が非常に悪いと評価した。
【0121】
第1表に示す結果から明らかなように、重合体の製造に使用されたモノマーが含フッ素非ジエン化合物であったため、ジエンによる環構造を有さない比較重合体1を含む比較例3−1は、接触角が高かったものの、滑落性がやや悪かった。
重合体の製造に使用された重合溶剤がm−XHFであり、重合体の製造に使用されたモノマーが非フッ素ジエン化合物であったためフッ素を有さない比較重合体2を含む比較例3−2は、比較重合体2がMEKに溶解せず、表面処理剤を作製することができなかった。
重合体の製造に使用された重合溶剤がMEKであり、重合体の製造に使用されたモノマーが非フッ素ジエン化合物であったためフッ素を有さない比較重合体3を含む比較例3−3は、滑落性が非常に悪かった。
重合体の製造に使用されたモノマーが非フッ素非ジエン化合物であったため、フッ素及びジエンによる環構造を有さない比較重合体4、5を含む比較例3−4、5は、滑落性が非常に悪かった。
【0122】
これに対して、本発明の表面処理剤は滑落性に優れた。また、本発明の表面処理剤は撥油性も優れた。