【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明についてさらに説明する。実施例における各分析は以下のとおりである。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0028】
[ポリプロピレン系樹脂材料のキシレン不溶分の量]
2.5gのポリマーを撹拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥した。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。キシレン不溶分の量(25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%)は、(100−可溶性のポリマーの重量%)で求められ、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。
キシレン不溶分は、沈殿物に残留したキシレンをメタノールで十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取した。
【0029】
[キシレン不溶分の融点(Tm)]
上記の方法で得たキシレン不溶分の融点は、パーキンエルマー社製のダイヤモンドDSCを用い、サンプルを230℃で5分間保持した後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して結晶化し、30℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で230℃まで加熱した際に得られる融解曲線のピーク位置により決定した。なお、低分子量ポリプロピレンの場合、メインの融解ピークの高温側に昇温中の融解再結晶化によって生じる結晶の融解によるサブの融解ピークが生じることがあるが、本発明で用いる融点は、メインの融解ピークの位置より求めた。
【0030】
[キシレン不溶分の分子量分布(Mw/Mn)]
上記の方法で得たキシレン不溶分の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(ポリマーラボラトリーズ社製PL−GPC220)により測定した。本発明におけるGPC測定では、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを移動相とし、重合体の試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して試料を調整した。これにより得た試料溶液の200μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度140℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。
【0031】
[キシレン不溶分のタクティシティー(mmmm)]
上記の方法で得たキシレン不溶分のmmmmを次のようにして求めた。まず1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解したサンプルを、日本電子社製JNM LA−400(13C共鳴周波数 100MHz)を用いて
13C−NMR法
で測定した。次いで得られたスペクトルから、プロピレンモノマーのメソ(m)結合シークエンスが4つ連続したペンタッドに相当するピークの強度の割合を、A.Zambelli,Macromolecules,6,925(1973)に記載された方法に従って求めた。
【0032】
[平均繊維径]
日本電子社製JSM−6510LA(低真空分析走査電子顕微鏡装置)を用いて紡糸した繊維径の観察を行い、平均繊維径を測定する。
【0033】
[実施例1]
(1)ポリプロピレン1の製造
以下のようにして、パウダー状のホモポリプロピレン:ポリプロピレン1(MFR=1750g/10分、25℃でのキシレン不溶分の量=97.7重量%、キシレン不溶分のTm=160℃、キシレン不溶分のMw/Mn=4.5、キシレン不溶分のmmmm=98.4%)を製造した。
1)固体触媒成分の調製
欧州特許出願EP728769の実施例1に準じて、成分(A)(固体触媒成分)を調製した。具体的には以下のようにして成分(A)を調製した。
多孔性のバリヤーを備える500mlの反応器に0℃において225mlのTiCl
4を導入した。内容物を撹拌しながら、微小球状のMgCl
2・2.1C
2H
5OH 10.1(54ミリモル)gを15分間窒素雰囲気下で添加した。当該MgCl
2・2.1C
2H
5OHの製造方法は後述する。添加の終了時に温度を70℃とし、9ミリモルの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを添加し、内容物を100℃に加熱し、この温度で2時間反応させた。その後、TiCl
4を濾過して除去した。新たに200mlのTiCl
4と9ミリモルの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを添加し、内容物を120℃で1時間反応させた。その後、再度濾過して新たに200mlのTiCl
4を添加し、内容物を120℃でさらに1時間反応させた後、濾過して全ての塩素イオンが炉液に存在しなくなるまで60℃においてn−ヘプタンで洗浄した。固体成分を分析し、3.5重量%のTi、および16.2重量%の9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを含有することを確認した。
【0034】
微小球状のMgCl
2・2.1C
2H
5OH付加物は以下のようにして調製した。48gのMgCl
2、77gの無水C
2H
5OH、および830mlのケロシンを、不活性ガス雰囲気下周囲温度において、タービン撹拌器および浸漬パイプを完備する2リットルのオートクレーブに導入した。内容物を撹拌しながら120℃に加熱すると、MgCl
2およびアルコール間に付加物が形成された。当該付加物は融解し分散剤と混合していた。オートクレーブ内を15気圧の窒素圧に保持した。オートクレーブの浸漬パイプを加熱ジャケットにより外部から120℃に加熱した。加熱ジャケットの内径は1mmで、端から端までの長さは3mであった。混合物を7m/秒の速度でパイプ中を循環させた。分散液を撹拌しながら5リットルのフラスコに集めた。前記フラスコは2.5リットルのケロシンを含み、−40℃の初期温度に保持されているジャケットにより外部から冷却した。乳濁液の最終温度は0℃であった。乳濁液の分散相を構成する球状固体生成物を沈降および濾過により分離し、次いでヘプタンで洗浄して乾燥させた。前記の作業は全て不活性雰囲気中で実施した。最大直径が50μ以下の固体球状粒子の形で130gのMgCl
2・3.0C
2H
5OHが得られた。次いで生成物から、アルコール含量が、MgCl
2の1モル当たり2.1モルとなるまで窒素流中で50℃から100℃に徐々に温度を上昇させてアルコールを除去し
【0035】
2)重合
予備接触容器内で、80mlの無水n−ヘキサン中、上記で得た固体触媒成分7mgに
、0.56ミリモルのジシクロペンチルメトキシシラン(DCPMS)および7ミリモルのトリエチルアルミニウム(TEAL)を、10℃において20分間接触させた。得られた触媒系を、馬蹄形撹拌器を具備し、1時間窒素流でパージした4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに導入し、液体プロピレン中懸濁状態で20℃において10分間保持することによって予備重合を行った。続いて液体プロピレンに水素(MFR調整の目的で使用)を15000モルppmになるように供給し、得られた予備重合物を用いて重合温度70℃で内容物を重合した。その後未反応モノマーを除去し、ポリマーを回収し、窒素流下70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。このようにしてポリプロピレン1を製造した。
【0036】
(2)積層体の製造
図1に示す装置を用い、当該ポリプロピレンを250℃に加熱し、吐出ノズル22から溶融ポリプロピレン20を吐出する。ガスノズル12から250℃に加熱した加圧ガス10を吐出し、溶融ポリプロピレン20を延伸してポリプロピレンナノファイバーを形成する。当該ポリプロピレンナノファイバーを基材50に付着させて積層体を得る。ポリプロピレンナノファイバーの平均繊維径は500nmである。
【0037】
[実施例2]
(1)ポリプロピレン2の製造
以下のようにしてパウダー状のホモポリプロピレン:ポリプロピレン2(MFR=1800g/10分、25℃でのキシレン不溶分の量=98.7重量%、キシレン不溶分のTm=154℃、キシレン不溶分のMw/Mn=2.5、キシレン不溶分のmmmm=96.7%)を製造した。
1)触媒成分の調製
PCT/EP2004/00761に記載の方法で触媒系を調製した。ただし、rac−ジメチルシリルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドに代えて、US−2003/0149199に記載の方法で調製したrac−ジメチルシリレン(2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)インデニル)(2−イソプロピル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた。
【0038】
2)重合
前記のとおり調製した触媒泥の形態の触媒系を、予備接触容器内に供給し、その中で約5(kg/時)のプロパンで希釈した。触媒系を、予備接触容器から予備重合ループに供給し、ここに同時にプロピレンを供給した。予備重合ループ内での温度は45℃、触媒の滞留時間は8分間であった。予備重合ループ内で得られた予備重合触媒を、次にループ反応器中に連続的に供給し、プロピレンを供給すると共に、水素(MFR調整の目的で使用)を900モルppmとなるように供給し、重合温度70℃で重合を行った。ポリマーを反応器から取り出し、未反応のモノマーから分離し、窒素流下70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。
【0039】
(2)積層体の製造
ポリプロピレン2を用いる以外は実施例1と同様にしてポリプロピレンナノファイバーの積層体を得る。ポリプロピレンナノファイバーの平均繊維径は300nmである。
【0040】
[比較例1]
ホモポリプロピレン1の代わりに、水素を4000モルppmになるように供給した以外はホモポリプロピレン1と同様にして得たパウダー状のホモポリプロピレン3(MFR=200g/10分、25℃でのキシレン不溶分の量=98.0重量%)を用いる以外は、実施例1と同様にして積層体を製造する。しかしながら、当該例ではポリプロピレンフ
ァイバーの平均繊維径は1500nmであり、ナノファイバーとならない。
【0041】
[比較例2]
ホモポリプロピレン1の代わりに、DCPMSを使用しないで水素を23000モルppmになるように供給した以外はホモポリプロピレン1と同様にして得たパウダー状のホモポリプロピレン4(MFRは高すぎて測定不能)を用いる以外は、実施例1と同様にして積層体を製造する。しかしながら、当該例では繊維切れが発生しポリプロピレンファイバーが得られない。