排水継手において、一つの排水装置から他の排水装置に逆流が発生することを防止したり、排水時にサイホン効果が発生したりしても、負圧による騒音や破封の発生を防止することができる
排水継手において、排水継手を、排水機器からの排水が流入する第一の流入口及び下方に排水口に連通する第一の排出口を設けた垂立する管体部分からなる第一の排水流路と、第一の排水管部の垂立部分を覆うように設けられた、側面に第二の流入口を備え、下方に排水口に連通する第二の排出口を設けたケーシングを備えた第二の排水流路と、から構成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の排水継手を採用した排水配管の参考図である。
【
図12】第一実施例の主要部材の部材構成を示す断面図である。
【
図13】第一実施例の主要部材の部材構成を示す斜視図である。
【
図14】第一実施例の主要部材の組み合わせた状態を示す断面図である。
【0012】
以下に本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図14に示した、本発明の第一実施例の
目皿部材を備えた排水継手を採用した排水配管は、ビジネスホテル等にて多く採用されている、室内に浴槽B及び洗面ボウルSを備えた浴室の、室内側の排水配管に関するものであって、以下に記載する、排水機器としての洗面ボウルS及び浴槽Bと、これら排水機器の排水を処理するための、排水継手である継手部材本体1、浴槽排水口本体6、洗面排水口本体7、配管部材P、から構成される排水配管からなり、浴室の床面に設けられた排水口5に排出される。
浴槽Bは、本実施例では浴室の床面上に設置される、上方が開口した槽体であって、底面に浴槽排水口本体6を接続する浴槽取付口B1を有してなる。
洗面ボウルSは、本実施例では屋内の側壁面に取り付けられる、上方が開口した槽体であって、底面に洗面排水口本体7を接続する洗面取付口S1を有してなる。尚、本実施例では、施工開始時に既に屋内の側壁面に取り付け固定されてなる。
尚、浴槽Bと洗面ボウルSとを比較した場合、通常の使用をする限り、排水が生じる頻度は洗面ボウルSの方が多いが、一度に排水される排水の量は浴槽Bの方が多い。
また、浴槽排水口6a及び洗面排水口7aには、必要に応じて浴槽排水口6aまた洗面排水口7aを閉塞するための栓蓋8が取り付けられる。
浴槽排水口本体6は、施工完了時、浴槽取付口B1に接続固定される略円筒形状を成す部材であって、その内部に浴槽排水口6aを備えてなる。
洗面排水口本体7は、施工完了時、洗面取付口S1に接続固定される略円筒形状を成す部材であって、その内部に洗面排水口7aを備えてなる。
継手部材本体1は、浴槽Bと洗面ボウルSの、2つの排水機器からの排水を合流させて排水口5に排出するための排水継手であって、以下に記載する第一の排水流路2、及び第二の排水流路3を備える。
第一の排水流路2は、
図8の矢印で示すように、水平方向から垂下方向に向かって円筒を成す管体をL字形状に屈曲させて形成した流路であって、水平方向に向かって開口した、排水機器である浴槽Bからの排水が流入する第一の流入口2aと、下方に屈曲して垂立する管体部分の下端に開口した第一の排出口2bとを備えてなる。
第一の排出口2bを成す垂立した管体部分の下端は、後述する第二の排出口3bよりも下方に突出しており、この突出した部分の外側面に、目皿部材4の開口部4aと嵌合する、溝からなる嵌合部2cを備えてなる。
第二の排水流路3は、
図9に示すように、第一の排水流路2を覆うように設けられた、有底円筒形状を天地逆転させたような形状を成すケーシング部3cを備えた流路であって、ケーシング部3cは、上方に壁部分を設けると共に、下方が開口して第二の排出口3bを形成してなる。ケーシング部3cの、円形を成す側面部分は、
図4の底面視で示したように、第一の排出口2bと同心円状に形成され、また側面部分から側方に管体を延出し、その端部に第二の流入口3aが設けられてなる。
尚、第一の流入口2aと第二の流入口3aは、それぞれ略水平方向(実際には、自然排水を行うのに必要な1度乃至2度程度の若干の傾斜を備えてなる)を向くと共に、ほぼ同じ高さ位置に備えられてなる。
また、第一の流入口2aを備える管体と、第二の流入口3aを備える管体の、平面視における中心軸が成す角度は、
図3にあるように、約90度である。
また、第一の排水流路2を形成する管体の一部、水平方向の管体部分の一部は、
図8にあるように、ケーシング部3cの上方の壁面と兼用して構成されてなる。
また、第一の排水流路2と第二の排水流路3は一体の部材として構成され、別パーツとして分離することはできない。
配管部材Pは、塩ビ等の樹脂材からなる管体であって、直管や屈曲管等からなり、浴槽排水口本体6、及び洗面排水口本体7の下流側端部から、継手部材本体1までの間を配管し、排水の流路を形成する。また直線状の管体には、可撓性を備えた軟質塩ビ管のホース管と、硬質塩ビ管のパイプ管とがある。ホース管はスプリング状の芯材を備えることで管体が潰れた形状となることを防いでいる。また、屈曲管は硬質の塩ビ管、又はABS等の硬質の樹脂素材からなる。
排水口5は、浴室の床面Fに設けられた平面視円形を成す開口であって、排水口5の下流は床下の排水配管に接続されて、最終的には下水側に排出されるように構成されてなる。また、排水口5と床下配管の間には、下水側からの臭気や害虫類の屋内側への逆流を防ぐ、排水トラップ(図示せず)が備えられてなる。
また、排水口5には、以下に記載する目皿部材4が備えられてなる。
目皿部材4は、
図10、
図11に示した、排水口5内に嵌合により配置固定される部材であって、平面視円形を成す外周部と、中央部分に継手部材本体1の第一の排水流路2を成す管体の、垂直部分の下方側面と嵌合する開口部4aを備えてなり、また開口部4aと外周部の間には、排水中の塵芥や毛髪等を捕集する捕集部4bを備えてなる。捕集部4bは、幅1ミリメートル程度のリブを格子状に組み合わせ、1.4ミリメートル角の正方形形状の小さな開口を複数構成することで、排水は小さな開口から排出され、排水中の塵芥等はリブに留まって排水から分離され、捕集される。尚、
図10、
図11、
図13においては、捕集部4bはハッチングによって該当する部分のみ示し、リブの図示は省略してなる。
また、目皿部材4の捕集部4bは、施工が完了した時、その全てが継手部材本体1に覆われて閉塞するのではなく、平面視継手部材本体1の外側に位置する箇所の捕集部4bは浴室の床面F上に露出し、浴室の床面F上に生じた排水を排出するように構成されてなる。
【0013】
上記のように構成された各部材は、以下のようにして施工される。尚、特に詳述しないが、それぞれの接続部は、必要に応じて接続箇所を接着剤やパッキングを使用したネジ締めなどで水密的に接続する。
まず、浴槽Bの浴槽取付口B1に浴槽排水口本体6を、洗面ボウルSの洗面取付口S1に洗面排水口本体7を、それぞれ接続する。
次に、排水口5に目皿部材4を取り付け、更に目皿部材4の開口部4aに、継手部材本体1の嵌合部2cを嵌合させる。これにより、
図14に示したように、目皿部材4の捕集部4bの上方に第二の排出口3bが配置される。即ち、第二の排出口3bに目皿部材4の捕集部4bが備えられる。
次に、浴槽排水口本体6の下端に屈曲管を接続し、更に屈曲管の下流側端部にホース管を接続した上で、浴槽Bを浴室上に設置する。更に、ホース管の下流側端部を、継手部材本体1の第一の流入口2aに接続する。尚、この浴槽排水口本体6から第一の流入口2aまでの配管を、以下「浴槽配管BP」と記載する。
次に、洗面排水口本体7の下端に硬質の塩ビ管の直管を垂下するように接続し、その下端に屈曲管を接続する。更に、屈曲管の下流側端部にホース管を接続した上で、ホース管の下流側端部を、継手部材本体1の第二の流入口3aに接続する。尚、この洗面排水口本体7から第二の流入口3aまでの配管を、以下「洗面配管SP」と記載する。
このようにして、本発明の第一実施例の、浴室の排水配管が完了する。
尚、上記のように構成したことで、通常の使用の際には、浴槽Bに接続された第一の流入口2aは、洗面ボウルSに接続された第二の流入口3aに比べて、一度に排水される排水が大量に流入する。即ち、本発明の浴室の排水配管は、「第一の流入口2aに接続される排水機器は、第二の流入口3aに接続される排水機器よりも、一度に排水される排水の量が大量である」排水配管である。
【0014】
上記のように構成された本実施例は以下のように使用される。
浴槽B内に排水が生じた場合、浴槽B内の排水は、浴槽排水口6aから、浴槽配管BPを介して第一の流入口2aに流入し、第一の排水流路2を通過して第一の排出口2bから排水口5内に直接排出される。
また、洗面ボウルS内に排水が生じた場合、洗面ボウルS内の排水は、洗面排水口7aから、洗面配管SPを介して第二の流入口3aに流入し、ケーシング部3cの下面の第二の排出口3bから、目皿部材4の捕集部4bの開口を通過した上で排水口5内に排出される。
また、浴槽Bの浴湯がこぼれる等して浴室の床面F上に排水が生じた場合、浴室の床面F上の排水は、排水口5に備えられた目皿部材4の捕集部4bの内、継手部材本体1に覆われていない捕集部4bを介して排水口5内に流入し、排出される。
浴槽Bからの排水は、容量の大きい浴槽B内に溜まった排水(浴湯)を、栓蓋8を外して一気に排出することから、排水の量も大量になりやすい。しかしながら、本実施例では、排水口5内に排水が排出されるまで、継手部材本体1内で第一の排水流路2と、第二の排水流路3が合流することが無いため、第一の排水流路2、即ち浴室の排水が、第二の排水流路3に逆流を生じることはない。
また、第一の排水流路2からの排水が大量で、排水口5内にサイホン現象が生じ、排水口5内が負圧になった場合、負圧による空気の引き込みは、目皿部材4の捕集部4bの小さな開口を介することになるため、空気の通り抜けが困難になり、負圧による空気の引き込みが生じにくく、それに由来する「ごぼごぼ」といった引き込み音が生じにくくなる。
特に、洗面ボウルSを使用し、結果洗面配管SPからの排水により目皿部材4が濡れているような場合、目皿部材4の捕集部4bの小さな開口には水滴が付き、これが表面張力を生じて捕集部4bの開口を塞ぐように機能することで、一層負圧による空気の引き込みが生じにくくなる。
また、本実施例では、排水口5に備えた目皿部材4の捕集部4bの一部は継手部材本体1に覆われておらず、浴室の床面F上に露出しており、この露出した捕集部4bから、排水口5内や、第一の排水流路2または第二の排水流路3に吸気を行うことが可能であり、この吸気可能な構造により、前述した排水時のサイホン効果による負圧を解消することができる。
上記のように排水口5から吸気を行うようにした構造において、第一の排水流路2に大量に排水が発生した場合、第二の排水流路3と、排水口5の吸気の構造部分(本実施例の場合、継手部材本体1に覆われていない箇所の捕集部4b)には同じように捕集部4aが備えられてなるが、排水口5の方が負圧の発生個所に近いことから、吸気のほとんどは排水口5に備えられた目皿部材4の捕集部4bから行われ、洗面ボウルSの洗面排水口7aから生じることは殆どない。結果、負圧による引き込みやごぼごぼ音は排水口4に発生し、洗面排水口7aにはほぼ発生しない。洗面排水口7aに比べ、排水口4は使用者の耳から遠い位置にあり、ごぼごぼ音が発生しても、使用者にとっては洗面排水口7aで生じた場合ほど大きな音とならずに済む。
【0015】
本発明の実施例は以上のようであるが、本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、排水口5と床下配管の間に排水トラップを配置してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、浴槽配管BP上、及び洗面配管SP上に個別に排水トラップを用いても構わない。この際に、洗面配管SP上に用いたのが排水を封水として溜めることでトラップ機能を生じさせる封水式排水トラップであった場合、サイホン効果によって生じる負圧の影響が、本発明の
目皿部材を備えた排水継手によって減じられることで、封水が負圧によって引き込まれてトラップ機能を喪失する破封を、生じにくくすることができる。
【0016】
また、上記実施例では、排水機器として浴槽Bと洗面ボウルSを用いているが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、流し台や洗濯機等、他の排水機器に用いても構わない。
【0017】
また、上記実施例では、第一の排出口2bの下端を、第二の排出口3bよりも下方としているが、第二の流入口3aからの排水が第一の流路2側に逆流することを防止するためには、第一の排出口2bの下端を、第二の流入口3aの下端から第二の排出口3bまでの間の高さ位置とすることで逆流防止は可能である。
但し、本発明の実施例のように、第一の排出口2bの下端を、第二の排出口3bよりも低い位置としたほうが、より確実に逆流を防止することができる。
【0018】
また、上記実施例では、
目皿部材を備えた排水継手に接続する排水機器を2つとしているが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、例えば、ケーシング部3cの周囲に2つ以上、複数の第二の流入口3aを設け、第一の流入口2a、及び複数の第二の流入口3aのそれぞれに排水機器からの排水配管を接続することで、3つ以上の排水機器の排水を処理する
目皿部材を備えた排水継手としても構わない。