【解決手段】並列に配置される第1シリンダ部20と第2シリンダ部36を有し、第1シリンダ部は、第1ピストン24によって区画されるヘッド側の第1蓄圧室32とロッド側の第2蓄圧室34を備え、第2シリンダ部は、第2ピストン40によって区画されるヘッド側の開放室48とロッド側の駆動室50を備え、第1ピストンに連結された第1ピストンロッド26の端部と第2ピストンに連結された第2ピストンロッド42の端部とが相互に連結され、第2蓄圧室および駆動室に対する圧力流体の給排を行うための単一の給排ポート16を備え、第1蓄圧室と第2蓄圧室の連通状態を切り換える導通切換弁58が第1ピストンに設けられる。
請求項5記載の流体圧シリンダにおいて、前記第1プッシュロッドと前記第2プッシュロッドは、前記第1ピストンロッドの軸線方向から見て、該軸線から反対方向に等距離だけ離れた位置に設けられる流体圧シリンダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記エアシリンダでは、駆動ロッドを後退させるときは駆動シリンダの第1シリンダ室にエアを供給する必要があり、エアの消費量削減には一定の限度がある。また、第1シリンダ室と第2シリンダ室に対するエアの給排を切り換える切換弁と駆動シリンダとの間には2本の配管を設けることが不可欠となっている。ちなみに、移動用シリンダのピストンロッドと出力用シリンダのピストンロッドを同軸上で連結した直列タイプの流体圧シリンダも知られているが、この場合も、上記と同様な問題があるほか、流体圧シリンダの全長が長くなり過ぎて大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、移動用のシリンダ部と出力用のシリンダ部を備えた流体圧シリンダであって、大型化を避けるとともに圧力流体の消費量を最大規模で削減することができる流体圧シリンダを提供することを目的とする。また、接続する配管が1本のみで足りる流体圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体圧シリンダは、並列に配置される第1シリンダ部と第2シリンダ部を有し、第1シリンダ部は、第1ピストンによって区画されるヘッド側の第1蓄圧室とロッド側の第2蓄圧室を備え、第2シリンダ部は、第2ピストンによって区画されるヘッド側の開放室とロッド側の駆動室を備える。そして、第1ピストンに連結された第1ピストンロッドの端部と第2ピストンに連結された第2ピストンロッドの端部とが相互に連結され、第2蓄圧室および駆動室に対する圧力流体の給排を行うための単一の給排ポートを備え、第1蓄圧室と第2蓄圧室の連通状態を切り換える導通切換弁が第1ピストンに設けられる。
【0008】
上記流体圧シリンダによれば、移動用シリンダとして構成される第2シリンダ部への圧力流体の供給は、第2ピストンを一方向(後退方向)に移動させるときだけ行えばよいものとすることができるので、圧力流体の消費量を最大規模で削減することができる。また、第1シリンダ部と第2シリンダ部が並列に配置されるので、流体圧シリンダが大型化するのを抑制できる。さらに、流体圧シリンダに接続する配管は、給排ポートに接続する配管1本のみで足りるので、配管の取り回しが簡単になる。
【0009】
また、本発明に係る流体圧シリンダは、並列に配置される第1シリンダ部と第2シリンダ部を有し、第1シリンダ部は、第1ピストンによって区画されるヘッド側の第1蓄圧室とロッド側の第2蓄圧室を備え、第2シリンダ部は、第2ピストンによって区画されるヘッド側の開放室とロッド側の駆動室を備える。そして、第1ピストンに連結された第1ピストンロッドの端部と第2ピストンに連結された第2ピストンロッドの端部とが相互に連結され、第1蓄圧室と第2蓄圧室の連通状態を切り換える導通切換弁が第1ピストンに設けられ、引き込み工程において、第1蓄圧室と第2蓄圧室が相互に連通した状態で流体供給源からの圧力流体が駆動室および第2蓄圧室に供給され、押し出し工程において、第1蓄圧室と第2蓄圧室が相互に連通した状態で駆動室の圧力流体が排出される。
【0010】
上記流体圧シリンダによれば、移動用シリンダとして構成される第2シリンダ部への圧力流体の供給は、第2ピストンを一方向(後退方向)に移動させるとき、すなわち引き込み工程のときのみ行えばよいので、圧力流体の消費量を最大規模で削減することができる。また、第1シリンダ部と第2シリンダ部が並列に配置されるので、流体圧シリンダが大型化するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る流体圧シリンダは、第1蓄圧室と第2蓄圧室を相互に連通せしめることにより、出力用シリンダとして構成される第1シリンダ部の第1ピストンにおける受圧面積差を利用して、第1ピストンを前進方向に移動させることができる。すなわち、第1シリンダ部に前進時の移動用シリンダとしての機能をもたせることができるので、第2シリンダ部への圧力流体の供給は、第2ピストンを後退方向に移動させるときだけ行えばよく、圧力流体の消費量を究極的に削減することができる。また、第2蓄圧室および駆動室に対する圧力流体の給排を行うための単一の給排ポートを備えるので、流体圧シリンダに接続する配管は1本のみで足り、配管の取り回しが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る流体圧シリンダについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。流体圧シリンダ10は、給排切換弁90に接続されて使用され、ワークの位置決め等の仕事を行う。なお、使用される流体は、圧縮空気等の圧力流体である。
【0014】
図1、
図4および
図6に示すように、流体圧シリンダ10は、第1シリンダ孔22および第1シリンダ孔22より径の小さい第2シリンダ孔38が形成された直方体状のシリンダボデイ12を有する。第1シリンダ孔22と第2シリンダ孔38は、シリンダボデイ12の長手方向一端から他端まで延び、上下に並んで設けられている。
【0015】
第1シリンダ孔22の一端側は第1ヘッドカバー28によって閉塞され、第1シリンダ孔22の他端側は第1ロッドカバー30によって閉塞される。第1シリンダ孔22には、第1ピストン24が摺動自在に配設され、第1シリンダ部20が構成される。第1シリンダ孔22は、第1ピストン24により、第1ヘッドカバー28側(ヘッド側)の第1蓄圧室32と第1ロッドカバー30側(ロッド側)の第2蓄圧室34とに区画される。後述する作用の説明で明らかになるように、第1シリンダ部20は、出力用シリンダとしての役割を担うほか、前進時の移動用シリンダとしての役割も担う。
【0016】
第2シリンダ孔38の一端側は第2ヘッドカバー44によって閉塞され、第2シリンダ孔38の他端側は第2ロッドカバー46によって閉塞される。第2シリンダ孔38には、第2ピストン40が摺動自在に配設され、第2シリンダ部36が構成される。第2シリンダ孔38は、第2ピストン40により、第2ヘッドカバー44側(ヘッド側)の開放室48と第2ロッドカバー46側(ロッド側)の駆動室50とに区画される。第2シリンダ部36は、後退時の移動用シリンダとしての役割を担う。第1シリンダ部20と第2シリンダ部36は、並列に配置されている。
【0017】
第1ピストンロッド26の一端部は第1ピストン24に連結され、第1ピストンロッド26の他端部は第1ロッドカバー30を通って外部に延びる。第2ピストンロッド42の一端部は第2ピストン40に連結され、第2ピストンロッド42の他端部は第2ロッドカバー46を通って外部に延びる。
【0018】
第1ピストンロッド26の他端部と第2ピストンロッド42の他端部は、矩形板状の連結プレート52によって連結される。具体的には、連結プレート52に形成された第1挿通孔52aに第1ピストンロッド26の他端部が挿通され、第1挿通孔52aの両側で筒状の出力部材54と第1ナット56aが第1ピストンロッド26に螺合されることで、連結プレート52に第1ピストンロッド26が固定される。また、連結プレート52に形成された第2挿通孔52bに第2ピストンロッド42の他端部が挿通され、第2挿通孔52bの両側で第2ナット56bと第3ナット56cが第2ピストンロッド42に螺合されることで、連結プレート52に第2ピストンロッド42が固定される。
【0019】
この場合、第1挿通孔52aの内径は第1ピストンロッド26の外径よりも大きくなっており、また、第2挿通孔52bの内径は第2ピストンロッド42の外径よりも大きくなっている。これにより、製造誤差や組付誤差を吸収して第1ピストンロッド26と第2ピストンロッド42の平行性を保ち、第1ピストン24と第2ピストン40の摺動抵抗を低減することができる。第1ピストン24と第2ピストン40は、第1ピストンロッド26、連結プレート52および第2ピストンロッド42を介して一体的に移動する。
【0020】
以下において、第1ピストンロッド26と第2ピストンロッド42がシリンダボデイ12から押し出される方向(前進方向)に第1ピストン24と第2ピストン40が移動する工程を「押し出し工程」という。また、第1ピストンロッド26と第2ピストンロッド42がシリンダボデイ12に引き込まれる方向(後退方向)に第1ピストン24と第2ピストン40が移動する工程を「引き込み工程」という。流体圧シリンダ10は、出力部材54が第1ピストンロッド26と一体に押し出されるときに仕事をする。
【0021】
図1および
図3に示すように、シリンダボデイ12の上面には、給排ポート16と開放ポート18が設けられている。給排ポート16は、配管94を介して給排切換弁90に接続される(
図9参照)。開放ポート18は、大気に開放されている。
【0022】
シリンダボデイ12の内部には、第2蓄圧室34を給排ポート16に繋ぐ第1流路14aと、駆動室50を給排ポート16に繋ぐ第2流路14bと、開放室48を開放ポート18に繋ぐ第3流路14cが設けられている(
図9参照)。第1流路14aには、給排切換弁90から第2蓄圧室34に向かう流体の流れを許容し、第2蓄圧室34から給排切換弁90に向かう流体の流れを阻止するチェック弁14eが介設されている。さらに、シリンダボデイ12の内部には、後述する排出切換弁74における径方向通路80を給排ポート16に繋ぐ第4流路14dが設けられている。第1流路14aの一部と第4流路14dの一部は、
図5に現れている。
【0023】
第1ピストン24には、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34との連通状態を切り換えるための導通切換弁58が設けられている。導通切換弁58は、第2蓄圧室34内に突出する第1プッシュロッド60を有する。
【0024】
図7に示すように、第1プッシュロッド60は、第1ピストン24の軸方向に貫通して形成されたガイド孔62内にスライド自在に支持される。第1プッシュロッド60の内部には、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34を相互に連通せしめるための導通用通路64が設けられている。この導通用通路64は、第1プッシュロッド60の直径方向に貫通する第1孔部64aと、第1孔部64aの途中から分岐して第1蓄圧室32の方向に延びる第2孔部64bとで構成される。第1孔部64aの両端は、第1プッシュロッド60の外周とガイド孔62の壁面との間の環状隙間66に開口し、第2孔部64bの端部は、第1蓄圧室32に連通している。第1プッシュロッド60が第2蓄圧室34内に所定以上突出しているとき、環状隙間66は第2蓄圧室34と連通する。
【0025】
第1プッシュロッド60は、第1ピストン24に固定されるばね受け72と第1プッシュロッド60との間に配置されるコイルスプリング68により、第2蓄圧室34内に突出する向きに付勢されている。第1プッシュロッド60に設けられた段部60aがガイド孔62に設けられた段部62aに係止することで、第1プッシュロッド60の突出量が規制され、第1プッシュロッド60の抜けが防止されている。なお、ばね受け72の中央には孔72aが設けられている。
【0026】
押し出し工程の終端近傍において、第1プッシュロッド60は、第1ロッドカバー30に当接し、コイルスプリング68の付勢力に抗して押し込まれ、ガイド孔62内をスライドする。第1プッシュロッド60が押し込まれると、第1プッシュロッド60の外周に装着されたパッキン70がガイド孔62の壁面に当接し、環状隙間66と第2蓄圧室34との連通が遮断される。すなわち、導通切換弁58は、押し出し工程の終端近傍において、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34との連通を遮断する。第1プッシュロッド60は、第1ピストン24の端面から突出しない位置まで押し込むことが可能となっている。
【0027】
第1ロッドカバー30には、第2蓄圧室34と給排切換弁90との接続状態を切り換えて第2蓄圧室34内の圧力流体の排出を可能にする排出切換弁74が設けられている。排出切換弁74は、第2蓄圧室34内に突出する第2プッシュロッド76を有する。導通切換弁58の第1プッシュロッド60と排出切換弁74の第2プッシュロッド76は、第1ピストンロッド26の軸線方向から見て、該軸線から反対方向(180度異なる方向)に等距離だけ離れた位置に設けられる。
【0028】
図8に示すように、第2プッシュロッド76は、第1ロッドカバー30の軸方向に貫通して形成されたガイド孔78内にスライド自在に支持される。第1ロッドカバー30のガイド孔78は、第2蓄圧室34に近接する側の小径孔部78aと、第2蓄圧室34から離間する側の大径孔部78bとを有する。第2プッシュロッド76は、小径孔部78aに挿通される小径軸部76aと、大径孔部78bに挿通される大径軸部76bとを有し、小径軸部76aおよび大径軸部76bの外周にはOリング82a、82bが装着されている。
【0029】
第2プッシュロッド76は、第1ロッドカバー30に固定されるばね受け86と第2プッシュロッド76との間に配置されるコイルスプリング84により、小径軸部76aが第2蓄圧室34内に突出する向きに付勢されている。第2プッシュロッド76の突出量は、小径軸部76aと大径軸部76bとの間に設けられた段部76cが小径孔部78aと大径孔部78bとの間に設けられた段部78cに係止することで規制される。
【0030】
第1ロッドカバー30には、一端が第1ロッドカバー30の外周面に開口し、他端が大径孔部78bに開口する径方向通路80が設けられている。この径方向通路80は、前述したように、シリンダボデイ12の第4流路14dに連通している。第2プッシュロッド76の内部には、第2蓄圧室34と径方向通路80を相互に連通せしめるための排出用通路88が設けられている。この排出用通路88は、第2プッシュロッド76の小径軸部76aにおいて直径方向に貫通する第1孔部88aと、第1孔部88aを横切るとともに第2プッシュロッド76の軸方向に貫通する第2孔部88bとで構成される。
【0031】
押し出し工程の終端近傍において、第2プッシュロッド76は、第1ピストン24に当接し、コイルスプリング84の付勢力に抗して押し込まれ、ガイド孔78内をスライドする。第2プッシュロッド76が押し込まれると、小径軸部76aに装着されたOリング82aが小径孔部78aの壁面から離れ、第2蓄圧室34は、第2プッシュロッド76の排出用通路88を介して第1ロッドカバー30の径方向通路80に連通する。したがって、第2蓄圧室34は、排出用通路88、径方向通路80、第4流路14dおよび給排ポート16を介して給排切換弁90に接続される。すなわち、排出切換弁74は、押し出し工程の終端近傍において、第2蓄圧室34を給排切換弁90に接続する。第2プッシュロッド76は、第1ロッドカバー30の端面から突出しない位置まで押し込むことが可能となっている。
【0032】
図9に示すように、給排切換弁90は、第1ポート92aないし第3ポート92cを備え、第1位置と第2位置との間で切り換えられる2位置3ポート切換弁として構成されている。第1ポート92aは、配管94を介してシリンダボデイ12の給排ポート16に接続される。また、第2ポート92bは流体供給源(コンプレッサ)96に接続され、第3ポート92cは消音器98を備えた排出口99に接続される。給排切換弁90が第1位置にあるとき、第1ポート92aと第2ポート92bが接続され、給排切換弁90が第2位置にあるとき、第1ポート92aと第3ポート92cが接続される。流体圧シリンダ10と給排切換弁90とを接続するのに必要な配管は、上記配管94の1本のみである。
【0033】
本実施形態に係る流体圧シリンダ10は、以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。なお、
図9〜
図12において、二点鎖線は、シリンダボデイ12のアウトラインを示す。
【0034】
図4に示されるように、第1ピストン24が第1ヘッドカバー28と第1ロッドカバー30の中間位置にあって、第1蓄圧室32、第2蓄圧室34、駆動室50および開放室48の圧力がすべて大気圧と等しくなっている状態を初期状態とする。
【0035】
この初期状態において、給排切換弁90は第2位置にあり、給排ポート16は排出口99に繋がっている。また、導通切換弁58の第1プッシュロッド60および排出切換弁74の第2プッシュロッド76は、第2蓄圧室34内に突出している。したがって、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34は相互に連通しており、第4流路14dによる第2蓄圧室34と給排切換弁90との接続は遮断されている。
【0036】
上記初期状態から、給排切換弁90を第1位置に切り換えると、給排ポート16は流体供給源96に繋がる。流体供給源96からの圧力流体は、給排ポート16から第2流路14bを通って駆動室50に供給されるとともに、給排ポート16からチェック弁14eが介在された第1流路14aを通って第2蓄圧室34に供給される。圧力流体が駆動室50に供給されると、第2ピストン40が第2ヘッドカバー44に向けて駆動される。第1ピストン24も、第2ピストン40と一体となって移動し、第1ヘッドカバー28に向けて駆動される。
【0037】
一方、第2蓄圧室34に供給される圧力流体は、第2蓄圧室34に蓄積されるほか、第2蓄圧室34と連通状態にある第1蓄圧室32にも蓄積される。そして、第1ピストンロッド26および第2ピストンロッド42は最大限まで引き込まれ、第1蓄圧室32および第2蓄圧室34には、同圧の高圧流体が蓄積される(
図9参照)。このとき、第2ピストン40は第2ヘッドカバー44に当接しているが、第1ピストン24は第1ヘッドカバー28に当接していない。
【0038】
次に、給排切換弁90を第2位置に切り換えると、給排ポート16は排出口99に繋がる。駆動室50の圧力流体は、第2流路14bと給排ポート16を通り、給排切換弁90を経た後、排出口99から外部に排出される。駆動室50の圧力は、開放室48の圧力と同じ大気圧まで低下し、第2ピストン40に作用する駆動力がゼロになる。
【0039】
一方、第2蓄圧室34の圧力流体は、チェック弁14eの作用により排出されない。第1ピストン24には、第1蓄圧室32に蓄積された流体の圧力およびこれと同圧である第2蓄圧室34に蓄積された流体の圧力が作用するが、両者は第1ピストンロッド26の断面に相当する面積差をもって作用する。このため、第1ピストン24が第1蓄圧室32の流体圧により第1ロッドカバー30に向けて押される力は、第1ピストン24が第2蓄圧室34の流体圧により第1ヘッドカバー28に向けて押される力を上回る。第1ピストン24は、第1ロッドカバー30に向けて駆動され、押し出し工程が始まる(
図10参照)。
【0040】
上記のとおり、押し出し工程は、流体圧シリンダ10に対して流体供給源96からの圧力流体が何ら供給されることなく行われる。そして、押し出し工程の終端近傍において、導通切換弁58の第1プッシュロッド60が第1ロッドカバー30に当接するとともに、排出切換弁74の第2プッシュロッド76が第1ピストン24に当接する。これにより、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34との連通が遮断されるとともに、第2蓄圧室34が第4流路14dを介して給排切換弁90に接続される(
図11参照)。
【0041】
第2蓄圧室34に蓄積された圧力流体は、第4流路14dと給排ポート16を通り、第2位置にある給排切換弁90を経た後、排出口99から外部に排出される。第1蓄圧室32に蓄積された圧力流体は、第2蓄圧室34に流れ込むことが阻止され、第1蓄圧室32内に留まる。このため、第1蓄圧室32の流体圧は第2蓄圧室34の流体圧を大きく上回ることになり、第1ピストン24は、大きな推進力で第1ロッドカバー30に押し付けられる。すなわち、押し出し工程の終端において、流体圧シリンダ10は最大の力を発揮する。
【0042】
第2蓄圧室34から排出される圧力流体は、押し出し工程の終端近傍において容積が縮小された第2蓄圧室34に存在していた圧力流体であって、その量は少ない。次の引き込み工程の際に第2蓄圧室34に供給する圧力流体の量は、この排出量相当のものでよい。
【0043】
上記押し出し工程の終端近傍において、第1ロッドカバー30に当接してその反力を受ける第1プッシュロッド60は、コイルスプリング68を介して第1ピストン24に力を及ぼす。また、コイルスプリング84を介して第1ロッドカバー30に支持された第2プッシュロッド76も、第1ピストン24に当接してこれと同じ向きの力を及ぼす。これらの力は、第1ピストンロッド26の軸線から反対方向に等距離だけ離れた位置に作用するので、例えば、コイルスプリング68とコイルスプリング84のばね定数の調整により、これらの力が同程度の大きさとなるようにすれば、第1ピストン24を傾斜させようとするモーメントは生じない。
【0044】
次に、給排切換弁90を第1位置に切り換えると、流体供給源96からの圧力流体は、給排切換弁90を経た後、給排ポート16と第2流路14bを通って駆動室50に供給されるとともに、給排ポート16とチェック弁14eが介在された第1流路14aを通って第2蓄圧室34に供給される。これにより、第2ピストン40が第2ヘッドカバー44に向けて駆動され、第1ピストン24も第1ヘッドカバー28に向けて駆動され、引き込み工程が始まる(
図12参照)。
【0045】
引き込み工程が始まると、導通切換弁58の第1プッシュロッド60は、コイルスプリング68の付勢力により第1ピストン24から突出した後、第1ロッドカバー30から離れる。これと同時に、排出切換弁74の第2プッシュロッド76は、コイルスプリング84の付勢力により第1ロッドカバー30から突出した後、第1ピストン24から離れる。第1プッシュロッド60が突出することにより、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34が相互に連通する。第2プッシュロッド76が突出することにより、第4流路14dによる第2蓄圧室34と給排切換弁90との接続は遮断されるが、第1流路14aによる給排切換弁90から第2蓄圧室34への圧力流体の流れは継続している。
【0046】
したがって、流体供給源96からの圧力流体は、駆動室50に供給されるほか、第1流路14aを介して第2蓄圧室34に供給・蓄積され、さらに、導通切換弁58を経て第1蓄圧室32にも供給・蓄積される。このようにして引き込み工程が進み、第2ピストン40が第2ヘッドカバー44に当接することで第1ピストンロッド26および第2ピストンロッド42が最大限まで引き込まれ、第1蓄圧室32および第2蓄圧室34に同圧の高圧流体が蓄積される(
図9参照)。
【0047】
以後、給排切換弁90を第2位置に切り換えることによる押し出し工程と、給排切換弁90を第1位置に切り換えることによる引き込み工程が繰り返し実行される。なお、流体供給源96からの圧力流体を駆動室50および第1蓄圧室32と連通状態にある第2蓄圧室34に供給したときの引き込み動作を可能とするため、第2ピストン40の断面積と第2ピストンロッド42の断面積との差は、第1ピストンロッド26の断面積よりも大きくなっている。
【0048】
本実施形態に係る流体圧シリンダ10によれば、第1シリンダ部20の第1ピストン24における受圧面積差を利用して、第1ピストン24を前進方向に移動させることができる。すなわち、第1シリンダ部20に前進時の移動用シリンダとしての機能をもたせることができるので、第2シリンダ部36への圧力流体の供給は、第2ピストン40を後退方向に移動させるときだけ行えばよく、圧力流体の消費量を究極的に削減することができる。
【0049】
また、第2蓄圧室34および駆動室50に対する流体供給源96からの圧力流体の給排は、単一の給排ポート16を通じて行うことができるので、流体圧シリンダ10に接続する配管は配管94の1本のみで足り、配管の取り回しが容易になる。
【0050】
また、押し出し工程の終端において、第1蓄圧室32と第2蓄圧室34との連通が遮断されるとともに第2蓄圧室34に蓄積された圧力流体が排出されるので、ワークに対して仕事をするときに最大の力を発揮することができる。
【0051】
また、出力用シリンダとしての機能と前進時の移動用シリンダとしての機能を兼ね備える第1シリンダ部20と、後退時の移動用シリンダとしての機能を備える第2シリンダ部36とを並列配置により組み合わせたので、移動用シリンダと出力用シリンダを直列に配置する場合と比べて、流体圧シリンダ10の全長を大幅に短くすることができる。
【0052】
また、給排ポート16に接続される給排切換弁90を2位置3ポート切換弁として構成することができるので、給排切換弁90の構成を簡素なものとすることができる。
【0053】
本実施形態では、第1プッシュロッド60と第2プッシュロッド76との位置関係を、第1ピストンロッド26の軸線方向から見て反対方向に等距離だけ離れた位置としたが、両者の位置関係はこれに限られるものではなく、相互に接触しない範囲で適宜の位置に配設することができる。
【0054】
本発明に係る流体圧シリンダは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。