特開2021-170629(P2021-170629A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-170629(P2021-170629A)
(43)【公開日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】プリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/40 20060101AFI20211001BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
   H05K3/40 K
   H05K1/11 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-194776(P2020-194776)
(22)【出願日】2020年11月25日
(62)【分割の表示】特願2020-71622(P2020-71622)の分割
【原出願日】2020年4月13日
(71)【出願人】
【識別番号】591074091
【氏名又は名称】株式会社野田スクリーン
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 康充
(72)【発明者】
【氏名】土井 章裕
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB11
5E317CD01
5E317CD23
5E317CD27
5E317CD32
5E317GG09
5E317GG20
(57)【要約】
【課題】従来方法では孔埋め困難なスルーホール仕様を有するプリント基板であっても、それらのスルーホールに適切に充填材を充填する。
【解決手段】プリント基板10の下面にシールフィルム12を貼り付けて、真空雰囲気下でプリント基板10の上面側から充填材16をスクリーン印刷によって押し込んでスルーホール11内に充填材16を充填する。その後、プリント基板10からフィルム12を剥がし、スルーホール11に対応する位置に凹所17を形成した治具板18の上に重ねた状態で、再度、軽く充填材16を供給してスルーホール11の下面側から充填材16を突出させる補助充填工程を実行する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を貫通するスルーホールを有するプリント基板の前記スルーホールに充填材を充填したプリント基板を製造する方法であって、
前記プリント基板の一方の面側における前記スルーホールの開口端面を前記充填材が出ない状態に塞いだ状態で、前記プリント基板の他方の面側から充填材を押し込んで前記スルーホール内に前記充填材を充填する充填材充填工程と、
前記充填材充填工程後であって前記充填材の硬化前に、前記スルーホールの前記開口端面を開放した状態で、前記プリント基板の前記他方の面側から前記充填材を再度供給する補助充填工程とを実行するプリント基板の製造方法。
【請求項2】
フィルム基材の表面に粘着剤層を形成したフィルムを前記プリント基板の一方の面に貼り付けることで前記一方の面側における前記スルーホールの開口端面を前記充填材が出ない状態に塞ぐフィルム貼り付け工程を実行し、その後、少なくとも前記スルーホールに対応する位置において平坦面を有する平坦治具上に前記プリント基板を置いて前記充填材充填工程を実行し、前記補助充填工程では前記充填材を前記スルーホール内に供給するに先立って前記フィルムを剥離するフィルム剥離工程を実行する請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項3】
前記フィルムの前記粘着剤層は、前記フィルム基材の領域内において複数の小領域に分かれて前記粘着剤層が形成されていない非形成領域と共に併存して形成されている請求項2に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項4】
前記フィルムのフィルム基材には通気性の複数の細孔が貫通形成されている請求項3に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項5】
基板を貫通するスルーホールを有するプリント基板の前記スルーホールに充填材を充填したプリント基板を製造する方法であって、前記充填材を前記スルーホールに充填する工程を前記プリント基板を真空雰囲気下における印刷方式により行うプリント基板の製造方法において、
平滑な表面を有し多数の微小な通気路を貫通形成したフィルムを粘着剤によって前記プリント基板の一方の面側に貼り付けて前記スルーホールの開口端面を前記充填材が出ない状態に塞いだ状態とするフィルム貼り付け工程と、前記プリント基板の他方の面側から充填材を押し込んで前記スルーホール内に前記充填材を充填する充填材充填工程を実行するプリント基板の製造方法。
【請求項6】
基板を貫通するスルーホールを有するプリント基板の前記スルーホールに充填材を真空雰囲気下における印刷方式により充填するにあたり、前記充填材を供給する側とは反対側から前記プリント基板に貼り付けられるフィルムであって、フィルム基材とその表面に形成された粘着剤層と前記フィルム基材に形成された通気性の細孔とを備え、前記粘着剤層は前記プリント基板に貼り付けられる領域内において、複数の小領域に分かれて形成され、前記粘着剤層が形成されていない非形成領域と共に併存しているプリント基板の充填材印刷用のシールフィルム。
【請求項7】
基板を貫通して一方及び他方の面側に開口端面を有するスルーホールが形成されたプリント基板であって、
前記スルーホールの前記一方の面側の開口端面から充填された充填材が前記他方の面側の開口端面からほぼ均等量だけ突出したプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールに樹脂を充填するプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高密度実装基板としてビルドアップ配線基板が利用されている。これはスルーホールを有するコア基板の両面に絶縁層を介して回路を多層に重ねた構成である。コア基板のスルーホールには孔埋め用の樹脂が充填され、両面をバフ研磨により平坦化した上で、その上に多層の回路が形成されている。コア基板は、上記のように順次層を重ねて多層基板とするから、コア基板の平坦度が悪いと上に重ねる層の平坦性ひいては回路パターンの精度に悪影響を与える。このため、コア基板には高度な平坦性が求められる。また、この種のビルドアップ配線基板のコア基板に限らず、例えば半導体チップを搭載するICパッケージのプリント基板も、その平坦度が悪いと半導体チップとの接続信頼性を低下させる原因になるため、やはり高度な平坦性が求められる。
【0003】
上述のようにスルーホールを有しつつ高度な平坦性が求められるプリント基板の製造方法としては、下記特許文献1及び特許文献2に記載の方法が知られている。これらの方法は、プリント基板の下面に粘着フィルムを貼り付けておいてスルーホールを有底構造とした上で、真空雰囲気下でプリント基板上に充填材を載せてスキージを滑らせることにより、充填材をスルーホール内に押し込む。その後、充填材を硬化させた後に、裏面の粘着フィルムを剥がし取り、プリント基板両面に残った樹脂をバフ研磨により除去して平坦化するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−188308公報
【特許文献2】特開2005−57109公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記方法では、充填材を硬化させた後に粘着フィルムを剥がすため、粘着フィルムの粘着剤層はスルーホール内で硬化した充填材に密着し、粘着フィルムから剥がれて充填材と共にスルーホール内に粘着層が残ってしまい、プリント基板としての特性を低下させる。
【0006】
かといって、充填材の硬化前に粘着フィルムを剥がすと、未硬化の充填材の一部が粘着フィルム側に付着してスルーホール内から抜け出てしまい、充填材がプリント基板の裏面側において不足して充填材の硬化後に数十μmの凹みが生ずる。これでは、プリント基板の平坦性が損なわれてしまう。
【0007】
そこで、本発明者らは未公開の技術として次のような方法を発明した。図1(A)に示すように、プリント基板1のスルーホール2に対応する位置に予め凹部3を形成した治具板4を準備し、この治具板4をプリント基板1の裏面に宛がった状態としておく。そして、図1(B)に示すように、例えばスクリーン版5とスキージ6とを使用したスクリーン印刷によって充填材7をプリント基板1のスルーホール2内に充填するのである。このようにすれば、充填材7はスルーホール2内に充填され、図1(C)に示すようにプリント基板1の表裏両面から飛び出た状態にすることができる。そこで、充填材7を硬化させ、プリント基板1の両面を例えばバフ研磨により研磨すれば、プリント基板1の両面に残って硬化した充填材7を除去して、プリント基板1の両面を平滑化することができる。
【0008】
旧来の仕様のプリント基板に関しては、上記の未公開発明によって充填材7を各スルーホール2に同等に充填することができ、その結果、表裏両面を研磨することで十分に平坦化したプリント基板1を製造することができる。
【0009】
ところが、近年、例えば半導体チップを搭載するプリント基板では、半導体チップの小型化に伴いその関連領域における配線パターン及びスルーホールの狭ピッチ化が進んでいる。このため、プリント基板内に極小径のスルーホールが密集する領域が生じたり、同一基板内におけるスルーホールの開口径が広範囲化する、すなわち開口径の大きさが大小様々に異なるものが混在したりする状況となっている。
【0010】
上記のスクリーン印刷によって充填材7をスルーホール2内に充填する際、充填材7のスルーホール2への充填抵抗はスルーホール2の開口径が小さいほど大きい。このため、例えば同一基板内でスルーホール2の開口径が広範囲にわたっているプリント基板の孔埋めを上記の未公開発明によって行うと、開口径が大きなスルーホール2では開口径が小さなスルーホール2に比べて充填材が容易に押し込まれることになる。このため、図1(C)に示すように、プリント基板1の裏面側における充填材7の突出量は、開口径が大きなスルーホール2では開口径が小さなスルーホール2に比べて著しく多くなるという現象が生ずる。この充填材7の突出部は充填材7の硬化後にバフ研磨されるものである。このため、その大径側のスルーホール2における充填材7の突出部を十分に研磨しようとすると、開口径が小さなスルーホール2側においては過剰に研磨が進み、プリント基板1の銅箔までも削ってしまう可能性がでてくる。また、研磨負担が大きいために研磨剤の消費も多く、そもそも高価な充填材を多量に無駄にすることになる。かといって、研磨能力からみて大径側スルーホール2からの充填材7の突出量が適切になるように印刷条件を定めると、小径側のスルーホール2への充填が不十分になるという問題が生ずる。
【0011】
また、開口径の大きさが大小様々に異なるものが混在する場合に限らず、例えば大型の半導体チップ直下のように極小径のスルーホールが格子状に密集する領域を有するプリント基板では次のような問題がある。すなわち、この種の高密集状態のスルーホールを有するプリント基板を支える治具板4にはそのスルーホール領域全体に及ぶ広い凹部3を形成せざるをえない。すると、スクリーン印刷時にプリント基板1のうちスルーホール密集領域の外周縁部では治具板4に支えられてプリント基板1の撓みは少ないが、その領域の中央部分ではスキージ1の押し下げ力によってプリント基板1が凹むように撓む。このような撓み量の不均一性はプリント基板1の厚さが薄いほど顕著になり、これが結局、充填材の充填量の不均一をもたらす。さらには、例えば開口径が0.5mm程度或いはそれ以上の開口径の大径のスルーホールを有するプリント基板では、大径のスルーホールは、元来、充填材の充填抵抗が極めて小さいため、充填量が均等となるようにスクリーン印刷の諸条件を調整することが困難であるという事情がある。
【0012】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、従来方法では孔埋め困難なスルーホール仕様を有するプリント基板であっても、それらのスルーホールに適切に充填材を充填することができるプリント基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板を貫通するスルーホールを有するプリント基板のスルーホールに充填材を充填してプリント基板を製造する方法であって、プリント基板の一方の面側におけるスルーホールの開口端面を充填材が出ない状態に塞ぎ、かつ真空雰囲気下においた状態で、プリント基板の他方の面側から充填材を押し込んでスルーホール内に充填材を充填する充填材充填工程と、充填材充填工程後であって充填材の硬化前に、スルーホールに対応する位置に凹所を形成した支持治具の上に一方の面側が支持治具に接するように位置決めして重ねた状態で、プリント基板の他方の面側から充填材を供給してスルーホールの一方の面側の開口端面から充填材を突出させる補助充填工程とを実行するところに特徴を有する。
【0014】
前記充填材充填工程では、スルーホールの一方側の開口端面を塞いだ状態で、かつ真空雰囲気下で充填材の充填を行うため、スルーホール内の奥まで充填材を十分に充填することができる。その後充填材の硬化前に、スルーホールに対応する位置に凹所を形成した支持治具の上にプリント基板を置いて補助充填工程を行うから、今度は充填材がスルーホールの一方側の開口端面から外に突出するようになる。
【0015】
この補助充填工程は、充填材充填工程に比べれば充填材の押し込み力が小さい充填方法を採用できるから、スルーホールの開口径が大小相違している場合でも、極小径のスルーホールが密集している場合でも、或いは大径のスルーホールが含まれる場合であっても、各スルーホール毎に充填材の追加的な充填量が大きく異なってしまうことはなく、各スルーホールから充填材が適量だけほぼ均等に突出した状態を作ることができる。
【0016】
なお、前記充填材充填工程においては、フィルム基材の表面に粘着剤層を形成したフィルムをプリント基板の一方の面に貼り付けることでスルーホールの開口端面を充填材が出ない状態に塞ぎ、その上で前記プリント基板を平坦治具上に置いてプリント基板の他方の面側からスルーホール内に充填材を押し込むようにしてもよい。このようにすると、プリント基板の平坦性が悪い場合でも、スルーホールの開口端面を確実に塞ぐことができる。フィルムは補助充填工程に先立ち剥離する必要があるが、その際にスルーホールに充填された充填材の一部がフィルムに付着して取り除かれたとしても、充填材は補助充填工程により補われるから、各スルーホールから充填材が適量だけほぼ均等に突出した状態を作ることができる。
【0017】
補助充填工程によって、各スルーホールから充填材が適量だけほぼ均等に突出した状態が作られれば、その後、充填材を硬化させる充填材硬化工程を実行した上で、必要に応じて研磨工程によって突出部分を研磨することで、両面が平坦化されたプリント基板を製造することができる。
【0018】
充填材充填工程及び補助充填工程をスクリーン印刷によって行うと、プリント基板内のスルーホール群の一部に選択的に充填材を埋めることができて無駄がないばかりか、スルーホール群を複数群に分けた複数回のスクリーン印刷による孔埋めができるから、スクリーン印刷の印刷条件を各スルーホール群に最適に適合させて孔埋めを行うことができる。
【0019】
フィルム貼り付け工程で使用するフィルムとして、その全領域内において粘着剤層が形成されている領域と、粘着剤層が形成されていない非形成領域とが併存して形成されている構成のものを使用すると、スルーホールからの空気抜けが良くなるため充填材を奥まで容易に充填できるようになり、開口径が特に小さな高アスペクト比(深さ/開口径)のスルーホールを有するプリント基板の場合に効果的である。
【0020】
フィルム貼り付け工程で使用するフィルムとして、フィルム基材に複数の通気性の細孔が形成されているものを使用すると、スルーホールからの空気抜けが一層よくなるため、高アスペクト比のスルーホールを有するプリント基板において効果的である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来方法では孔埋め困難なスルーホール仕様を有するプリント基板であっても、それらのスルーホールに適切に充填材を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】未公開発明の孔埋め方法を示す拡大模式断面図
図2】ICパッケージの断面図
図3】プリント基板の断面図
図4】フィルム貼り付け工程後のプリント基板を示す断面図
図5】シールフィルムの拡大平面図
図6】プリント基板を治具板にセットした状態の断面図
図7】充填材充填工程の様子を示す断面図
図8】充填材充填工程における空気の流れを示す平面図
図9】充填材充填工程における空気の流れを示す断面図
図10】フィルム剥離工程の様子を示す断面図
図11】フィルム剥離工程後のプリント基板を示す断面図
図12】プリント基板をザグリ治具板の上にセットした状態の断面図
図13】補助充填工程の様子を示す断面図
図14】補助充填工程後のプリント基板を示す断面図
図15】平坦化工程後のプリント基板を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図2ないし図15によって説明する。
【0024】
本実施形態では、本発明をボールグリッドアレイを有する集積回路パッケージのプリント基板に適用した例を示す。本実施形態で製造されるプリント基板10は多数のスルーホール11を有し、図2に示すように、プリント基板10の上面に半導体チップ20が搭載されて多数の半田ボール21によってプリント基板10の上面に形成したランド(図示せず)に対して電気接続がとられる。半導体チップ20は更に接着剤22によってプリント基板10上に固定され、半導体チップ20の上面には放熱板23が接着剤24によって接着される。
【0025】
さて、プリント基板10の出発材料としては例えば厚さ寸法が0.1mm〜8.0mm程度の両面銅貼りプリント基板が推奨される。このプリント基板10には予め例えば内径0.1mm〜5.0mm程度の貫通孔が形成され、その内壁面に両面の銅箔に導通する内面メッキが施されて両面の銅箔間を電気的に導通させるスルーホール11となっている。図3に示すように、スルーホール11はプリント基板10の上下両面において開口する開口端面を有する。本実施形態では、スルーホール11はその開口径が大小様々なものがプリント基板10内に混在していてよく、それらのアスペクト比(プリント基板10の板厚/スルーホール11の開口径)は様々に異なる。例えば、図3(図面の縦横縮尺は同一ではない)に示した開口径が小さなスルーホール11Aのアスペクト比は例えば10以上であって、大径のスルーホール11Bのアスペクト比は例えば5程度である。
【0026】
(フィルム貼り付け工程)
上記のプリント基板10の一方の面(図3において下面。以下「裏面」という)側には、まずシールフィルム12が貼り付けられる(図4参照)。このシールフィルム12は、例えば厚さ35μm〜100μmの合成樹脂製の基材フィルム12Aに粘着剤層12Bを印刷により形成したものである。粘着剤層12Bは図5に示すように例えば丸形のドットを千鳥格子状に置いた散点配置、すなわち粘着剤層12Bが、フィルム基材12Aの領域内において複数の小領域に分かれて形成され、粘着剤層12Bの形成領域と非形成領域とが基材フィルム12Aの全域の中で併存する形態となっている。なお、基材フィルム12A及び粘着剤層12Bは共に透明であるから、粘着剤層12Bを示す円形の領域内には網点を付して見やすくなるように描いてある。
【0027】
粘着剤層12Bの直径は同図に二点鎖線で示すスルーホール11の直径よりも小さくても大きくても良く、直径100μm〜500μmの範囲とし、これを10μm〜400μmの間隔を隔てて配置することが好ましい。
【0028】
また、基材フィルム12Aには、図5に示すように予め直径10μm〜100μm程度の微小な通気性の細孔12Cが基材フィルム12Aの全面領域に例えば2mm〜4mmのピッチで格子状又は千鳥格子状をなしてほぼ均等に存在するよう散点配置されている。
【0029】
このシールフィルム12をプリント基板10の裏面に貼り付けることにより、スルーホール11の下面側の開口端面は充填材が出ない状態に塞がれている。すなわち、スルーホール11の下面側の開口端面は、粘性液体的にはほぼ封止されるが、粘着剤層12B相互間の隙間や微小な通気性の細孔12Cによって気体的には外部と連通した状態となっている。
【0030】
(充填材充填工程)
次に、図6及び図7に示すように、シールフィルム12を貼り付けたプリント基板10をシールフィルム12が平坦治具13上に設置して真空印刷機による充填材の充填を行う。真空印刷機は、大気圧よりも十分に低い気圧(例えば50pa〜100pa)下に維持された真空室内に、スクリーン版14とそのスクリーン版14の上を摺動するスキージ15を備え、スクリーン版14上に例えば孔埋め用の合成樹脂である充填材16が供給された状態でスクリーン版14上にスキージ15を下降させてスクリーン版14上を摺動させることで、スクリーン版14を通して充填材16を下に押し込むという周知の構成である。図7に示すように、シールフィルム12を貼り付けたプリント基板10は、シールフィルム12側が平坦治具13に接し、その反対側の他方の面(以下、「表面」という)がスクリーン版14の下に位置するように配置される。
【0031】
スクリーン版14は、プリント基板10のスルーホール11に対応する位置に図示しない透孔を形成したものである。このスクリーン版14に対して正確にプリント基板10が位置決め配置されることで、スクリーン版14に形成されている透孔とプリント基板10のスルーホール11とが連通し、スルーホール11内に充填材16が押し込まれる。
【0032】
平坦治具13は、スルーホール11に対応する領域のみならず全体の領域が平坦面となっており、シールフィルム12を下側から支えてスルーホール11の裏面側の開口端面をシールフィルム12によって塞いだ状態に維持する。これによりスルーホール11内に押し込まれた充填材16がシールフィルム12とプリント基板10との隙間から漏れ出ることを防止できる。
【0033】
スキージ15は周知の通り合成樹脂製の板状をなしており、そのスクリーン版14に対する押し付け角度や押し付け圧力を調整することで、充填材16をスクリーン版14の下に押し込む力、ひいては充填材16の押し込み量を調整可能である。
【0034】
シールフィルム12には粘着剤層12Bが散点状に形成されており、かつ、シールフィルム12には多数の細孔12Cが形成されていることから、真空印刷機内でプリント基板10にスクリーン印刷を行うと、充填材16がスルーホール11内に押し込まれる際に、スルーホール11内に残っている僅かな気体は、図8及び図9に破線で示すように、散点状の粘着剤層12B相互間の隙間、細孔12C、シールフィルム12と平坦治具13との間の微小な隙間を通って真空室内に排出される。このため、充填材16はスルーホール11内でシールフィルム12に達するまで円滑に充填される。
【0035】
その一方で、シールフィルム12とは反対側のスクリーン版14側の表面においては、図7に示すようにスキージ15が通過した後に、充填材16がスルーホール11の開口端面から僅かに盛り上がった突出部16Aが形成される。この突出部16Aはスクリーン版14がプリント基板10の表面から離れるときにスクリーン版14の透孔から漏れ出る充填材16によって形成されるから、スルーホール11の開口端面からの突出寸法は、スルーホール11の径寸法に関わらず、いずれのスルーホール11についても概ね均等となる。
【0036】
(フィルム剥離工程)
次に、プリント基板10を真空印刷機内から取り出し、図10に示すようにシールフィルム12をプリント基板10から剥離する。この実施形態で、充填材16は加熱又は紫外線照射によって完全硬化する性質を有するものを使用しているが、上記の充填材充填工程後、その充填材16の硬化を開始させる前に、シールフィルム12をプリント基板10から剥離するので、スルーホール11内の充填材16の一部は粘着剤層12Bに付着したまま、スルーホール11内から抜け出ることがある。その結果、小径のスルーホール11Aでは10μm程度の凹み16Bが生じ、大径のスルーホール11Bでは30μm程度の凹み16Cが生ずることがある(図11参照)。
【0037】
(補助充填工程)
次いで、シールフィルム12を剥がした前記プリント基板10を、再度、上述の真空印刷機にセットする。この場合、予め真空印刷機内には平坦な平坦治具13に代えて、プリント基板10の各スルーホール11に対応する位置にそれぞれ凹所17を形成した支持治具18をセットしてあり、その各凹所17に各スルーホール11が対応するよう位置決めしてプリント基板10を支持治具18上に載せる。凹所17は、図12に示すようにスルーホール11Aの開口径よりも僅かに大きな内径を有して各スルーホール11Aに一対一で対応する独立形の凹所17Aであってもよく、一つの凹所が複数個のスルーホール11Bの形成領域に対応するようにした統合型の凹所17Bであってもよい。支持治具18の上面のうち凹所17A,17B以外の領域は平坦であって、プリント基板10の裏面に密着してプリント基板10を支える。
【0038】
このように真空印刷機内の支持治具18上にプリント基板10を位置決めして載置した状態で、再度必要なら真空雰囲気下に戻してプリント基板10の表面側から充填材16のスクリーン印刷を行う。この場合のスクリーン印刷は、既にスルーホール11内には充填材16がほぼ全体に、すなわち凹み16B,16C以外の部分に充填された状態にあり、各スルーホール11の裏面の開口端面は支持治具18の凹所17A,17B内に連通した状態にあるから、充填材16の充填抵抗は極めて少ない。従って、例えばスキージ15をスクリーン版14に接触させるときの押し下げ寸法を小さくしたりして、充填材16の充填力を極めて小さい状態で行っても、充填材16がスルーホール11内に補充的に供給され、図13に示すようにスルーホール11の裏面側の開口端面から充填材16が突出状態となり突出部16Dが形成される。
【0039】
このスクリーン印刷は充填材16の充填力が極めて小さい状態で行うことになるから、スルーホール11の開口径の大小を問わず、小径のスルーホール11Aであっても大径のスルーホール11Bであっても、各突出部16Dの開口端面からの突出体積を従来に比べ小さなバラツキに抑えることができる。
【0040】
(充填材硬化工程)
次に、補助充填工程を終えたプリント基板10を真空印刷機から取り出し、加熱又は紫外線照射によって充填材16を完全硬化させる。
(平坦化工程)
充填材16の完全硬化後、プリント基板10の両面を例えばバフ研磨により研磨して、プリント基板10の両面においてスルーホール11の両開口端面からから突出している突出部16A,16Dを除去すると、図15に示すようにプリント基板10の両面全域が平坦化される。
【0041】
ここで、バフ研磨機は図示しないが、プリント基板10をローラー上に載せて所定方向に搬送しつつ、プリント基板10の面に沿い、かつ搬送方向と直交する方向に延びる回転軸を有する複数本のバフを備える。バフはプリント基板10を挟む上下両側に配置され、片側毎にプリント基板10の搬送方向に間隔を隔てて複数本例えば2本づつが配置されている。プリント基板10は、この実施形態では、まず裏面側の1本目のバフにより研磨され、次に表面側の1本目のバフにより研磨され、次に表面側の2本目のバフにより研磨され、最後に裏面側の2本目のバフにより研磨される。各バフにより研磨される際には研磨剤が供給され、プリント基板10はバフとは反対側に設けられたバックアップロールにより支持される。
【0042】
最初のバフによる研磨において、プリント基板10の裏面側では充填材16の突出部16Dの体積はスルーホール11の径寸法に関わらずバラツキが少ないから、突出部16Dの研磨をプリント基板10の裏面側全域において均等に進行させることができる。
【0043】
また、プリント基板10の表面側の研磨に移行したとき、充填材16の突出部16Aの体積もスルーホール11の径寸法に関わらずバラツキが少ないから、突出部16Aの研磨もプリント基板10の表面側全域において均等に進行させることができる。
したがって、裏面側及び表面側について同様に研磨が進んで、突出部16の体積バラツキに起因する局部的な研磨残りが生ずることがなく、逆面側の研磨に移行したときにその裏に部分的に残る研磨残りによってプリント基板10がバフに強く押し付けられることがなく、両面において均等な研磨が実行される。これにより、プリント基板10の表裏両面において局部的に銅箔が過剰に削られたり、充填材16が過剰に残ったりすることを防止できる。
【0044】
このように本実施形態によれば、プリント基板10のスルーホール11に充填材16を充填するに際し、スルーホール11の開口径が大小様々に異なっていても、プリント基板10の上下両面における充填材16の突出部の突出体積をスルーホール11の開口径に関わらず小さなバラツキに抑えることができるから、その後の平坦化工程において充填材16の突出部16A,16Dを全域で均等に研磨することができる。
【0045】
特に本実施形態では、充填材充填工程において、充填材16の充填をスクリーン印刷によって行うこととしたから、目的とするスルーホール11のみに選択的に充填材16を充填することができる。従って、例えば孔埋めを行う全てのスルーホールをそれらのアスペクト比に応じて2種類に分け、第1回のスクリーン印刷では高アスペクト比のスルーホール群のみの孔埋めを行い、第2回のスクリーン印刷では低アスペクト比のスルーホール群のみの孔埋めをするという複数分割形の充填材充填工程を採用することもできる。これにより各回のスクリーン印刷で対象とするスルーホール群に適した印刷条件を採用することができるから、特に高アスペクト比のスルーホールが含まれるプリント基板の孔埋めに好適する。
【0046】
また、本実施形態では、シールフィルム12の粘着剤層12Bを基材フィルム12Aの領域内に点在する複数のドットの集合体により形成したから、ドット間の隙間(粘着剤層の非形成領域)を通ってスルーホール11内の残留空気が抜けでやすくなり、充填材の充填を円滑に行うことができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)上記実施形態では、プリント基板がICチップを搭載するICパッケージ用のプリント基板に適用した例を示したが、これに限らず、高アスペクト比のスルーホールを有するプリント基板の孔埋め方法に好適であり、例えばビルドアップ基板のコア基板にも適用できることは勿論である。
【0049】
(2)上記実施形態では、充填材充填工程と補助充填工程とをスクリーン印刷によって行う例を示したが、スクリーン版を使用せず、プリント基板の全面に充填材を供給して例えばスキージ等によって充填材をスルーホール内に押し込んだり、プリント基板の両面側に圧力差を生じさせてその圧力差を利用して充填材を押し込んでもよい。また、スクリーン印刷により充填材充填工程と補助充填工程と実行する場合、上記実施形態のように両工程を同一の真空印刷機によって行うに限らず、別々の真空印刷機で行っても良い。その場合には、平坦治具と支持治具とを予め各真空印刷機内にセットしておくことができ、1台の真空印刷機で各治具を交換する必要がないため、生産性が向上する。
【0050】
(3)上記実施形態では、充填材充填工程を行うにあたり、プリント基板の一方の面側にシールフィルムを貼り付けてスルーホールの一方の面側の開口端面を塞ぐこととしたが、必ずしもフィルムは必要ではなく、プリント基板の平坦性が良好な場合等には、プリント基板を平坦な治具板の上に置いて充填材の充填を行っても良い。また、フィルムによってスルーホールの開口端面を塞ぐにあたり本実施形態では、粘着剤層をプリント基板に密着させることとしたが、粘着剤層はフィルム基材の領域内において複数の小領域に分かれて粘着剤層が形成されていない非形成領域と共に併存して形成されているので、粘着剤層が形成されていない非形成領域を通って空気の流通、ひいてはスルーホール内からの空気の排出が許容され、充填材の充填が円滑に行われる。
【0051】
(4)上記実施形態では、補助充填工程を充填材の硬化を開始させる前に実行するようにしたが、これに限らず、硬化が不可避的或いは意図的に開始された後であってもよく、要は補助充填工程によりスルーホール内に充填材を追加的に供給して既に充填されている充填材の一部がスルーホールの開口端面から突出する状況で同工程を実行すれば良い。
【0052】
(5)上記実施形態では、スルーホールの内壁面に導電性の銅メッキ層を形成した例を示したが、これに限らず、導電性、磁性或いは誘電性において所要の特性を選択した機能性材料を含んだ樹脂層が形成されている場合でもよく、また、充填材としても導電性、磁性或いは誘電性において所要の特性を選択した機能性材料であってもよい。
【0053】
(6)上記実施形態では、プリント基板に孔径が大小異なるスルーホールが形成されている場合に適用した例を示したが、これに限らず、例えば大型の半導体チップ直下のように極小径のスルーホールが格子状ないし千鳥格子状に密集する領域(例えば、スルーホール間ピッチが0.5mm以下の狭ピッチで、片辺20mm以上の矩形領域)を有するプリント基板の孔埋めに適用してもよい。スルーホールの下面をシールフィルムで塞いだ状態で充填材を充填する充填材充填工程ではスルーホール全体に充填材を充填し、その後の補助充填工程で充填材を緩やかに補充することでプリント基板の撓みを極力抑えつつ下側への充填材をほぼ均等に突出させることができるからである。
【0054】
また、例えば開口径が0.5mm以上である比較的大径のスルーホールを有する場合であっても、まず充填材充填工程でスルーホール全体に充填材を充填した上で、その後の補助充填工程で充填材を緩やかに補充することで充填材の下側への突出量を容易に制御することができるので、均等な突出状態とすることができる。
【0055】
(7)上記実施形態ではスクリーン印刷により充填材を充填する例を示したが、これに限らず、スクリーン版を使用しない他の充填方法、例えばスキージのみを使用する充填方法やスキージも使用せずにプリント基板の一方の面から充填材を圧入する充填方法を採用してもよい。要するところ、各種の充填材の充填方法或いはそれらを組合せた充填方法によって、本発明の充填材充填工程と補助充填工程とを実行することにより、充填材をスルーホール内に二段階で供給すればよい。
【0056】
(8)上記実施形態では、粘着剤層12Bは円形のドットを点在させる例を示したが、ドットの形状は円形に限らず、矩形、多角形、長円形等の非円形であってもよいことは勿論であり、要は粘着剤層がフィルムの全域に形成されるのではなく、フィルム領域内に粘着剤層の形成領域と非形成領域とが併存する形態であることが望ましい。
【符号の説明】
【0057】
10: プリント基板
11: スルーホール
12: シールフィルム(フィルム)
12A: フィルム基材
12B: 粘着剤層
12C: 細孔
13: 平坦治具
18: 支持治具
14: スクリーン版
15: スキージ
16: 充填材
16A,16D: 突出部
図1
図2
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