【解決手段】システムにおいて、ベースバンドモジュール11及びデジタルベースバンド信号を複数のセルに対応する変調信号に変換させるRFベース12を有する信号発生装置10と、複数のセルに対応する変調信号が入力して変調信号が周波数変換されたRF信号を出力するRFコンバータ20と、RFコンバータ制御部31と、を有する。RFコンバータ制御部は、RFコンバータに入力される変調信号の入力レベルが、RFモジュールの有する入力限界値以下になるように、ベースバンドモジュールにおける、複数のセルに対応するデジタルベースバンド信号のうち、所定のセルに対応するデジタルベースバンド信号の電力値を低減させるように、ベースバンドモジュールを制御する。
複数のセルに対応するデジタルベースバンド信号を発生させるベースバンドモジュール(11)と、前記デジタルベースバンド信号を前記複数のセルに対応する変調信号に変換させるDAコンバータと、前記複数のセルに対応する前記変調信号が入力して前記変調信号が周波数変換されたRF信号を出力するRFコンバータ(20)と、RFコンバータ制御部(31)と、を有する信号発生装置において、
前記RFコンバータは、パワーアンプ(21)と、前記パワーアンプを経由する経路と前記パワーアンプをバイパスする経路とを切り替えるスイッチ(24、25)と、を備え、
前記変調信号は、各々のセルに対応して、複数のリソースブロックを有し、
前記RFコンバータ制御部は、前記RFコンバータに入力される前記変調信号の入力レベルが前記RFコンバータの有する入力限界値を超えた場合には、前記RFコンバータに入力される前記変調信号の入力レベルが前記RFコンバータの有する入力限界値以下になるように、前記ベースバンドモジュールにおける前記複数のセルに対応するデジタルベースバンド信号のうちの所定のセルに対応するデジタルベースバンド信号の電力値を低減させ、前記ベースバンドモジュールに備わる前記スイッチを、前記パワーアンプをバイパスする経路に切り替えることを特徴とする、
信号発生装置。
複数のセルに対応するデジタルベースバンド信号を発生させるベースバンドモジュール(11)と、前記デジタルベースバンド信号を前記複数のセルに対応する変調信号に変換させるDAコンバータと、前記複数のセルに対応する前記変調信号が入力して前記変調信号が周波数変換されたRF信号を出力するRFコンバータ(20)と、RFコンバータ制御部(31)と、を有する信号発生装置を用いた信号発生方法であって、
前記RFコンバータは、パワーアンプ(21)と、前記パワーアンプを経由する経路と前記パワーアンプをバイパスする経路とを切り替えるスイッチ(24、25)と、を備え、
前記変調信号は、各々のセルに対応して、複数のリソースブロックを有し、
前記RFコンバータ制御部は、前記RFコンバータに入力される前記変調信号の入力レベルが前記RFコンバータの有する入力限界値を超えた場合には、前記RFコンバータに入力される前記変調信号の入力レベルが前記RFコンバータの有する入力限界値以下になるように、前記ベースバンドモジュールにおける前記複数のセルに対応するデジタルベースバンド信号のうちの所定のセルに対応するデジタルベースバンド信号の電力値を低減させ、前記ベースバンドモジュールに備わる前記スイッチを、前記パワーアンプをバイパスする経路に切り替えることを特徴とする、
信号発生方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1に、本実施形態に係るシステム構成の一例を示す。本実施形態に係るシステムは、試験用のアナログRF信号を生成するための構成を備える。具体的には、本実施形態に係るシステムは、中間周波数帯のアナログ信号を生成する信号源10、中間周波数帯のアナログ信号を変調してアナログRF(Radio Frequency)信号を生成するRFコンバータ20、RFコンバータ20において生成するアナログRF信号の設定を行う試験インタフェース40を備える。
【0012】
信号源10及びRFコンバータ20は、交換可能なRFケーブル30で接続されている。試験インタフェース40は、信号源10に接続されており、RFコンバータ20にも接続されていてもよい。試験インタフェース40がアナログRF信号を設定し、信号源10及びRFコンバータ20が設定に応じたアナログRF信号を生成する。生成されたアナログRF信号は、RFコンバータ20に備わるアンテナ29から無線送信することができる。
【0013】
本実施形態に係るシステムは、RFコンバータ20の出力端におけるアナログRF信号の出力レベルを調整するための構成を備える。具体的には、本実施形態に係るシステムは、RFコンバータ制御部31、温度記憶部32、周波数キャリブレーション実行部33、を備える。RFコンバータ制御部31及び周波数キャリブレーション実行部33は、信号源10及びRFコンバータ20に接続されている。
【0014】
本開示の信号発生装置は、信号源10を含む。本開示の信号発生装置は、信号源10に加え、RFコンバータ20、周波数キャリブレーション実行部33、RFコンバータ制御部31及び温度記憶部32を含んでいてもよい。本開示の装置は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0015】
信号源10は、デジタルベースバンド信号を出力するBBM(Base Band Module)11と、中間周波数帯のアナログ信号を出力するRF(Radio Frequency)ベース12と、これらを制御する制御部として機能するCTM(Control Module)18と、を備える。BBM11は、複数のセルに対応する任意のパターンの試験信号を発生する。RFベース12は、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ(Digital to Analog Converter)を備え、BBM11からのデジタル信号を各セルに対応する中間周波数帯のアナログ信号に変換する。これにより、複数のセルに対応する変調信号が生成される。
【0016】
本実施形態のRFコンバータ20は、PA21を経由する経路22と、PA21をバイパスする経路23と、を備える。経路22と経路23は、PA21の入力側に接続されているスイッチ(以後、SWと称する。)24、及びPA21の出力側に接続されているスイッチ(以後、PASWと称する。)25を用いて切り替え可能になっている。RFコンバータ制御部31は、経路22と経路23との切り替えを行う。
【0017】
RFコンバータ20は、複数のセルに対応する変調信号が入力され、変調信号が周波数変換されたRF信号を出力する。RFコンバータ20は、アナログ信号を増幅するパワーアンプ(以下、PA(Power Amplifier)と称する。)、アナログ信号の振幅を調整するATT(Attenuator)24を備える。
【0018】
周波数キャリブレーション実行部33は、各サブキャリアの中心周波数の振幅が所望の値になるよう、中間周波数帯のアナログ信号の振幅を調整する。例えば、周波数キャリブレーション実行部33は、RFベース12から出力される中間周波数帯のアナログ信号の振幅のピーク値が所望の値になるよう、RFベース12に備わるDAコンバータを制御する。また、周波数キャリブレーション実行部33は、PASW25から出力されるアナログ信号の振幅のピーク値が所望の値になるよう、ATT26を制御する。
【0019】
RFコンバータ20の出力端におけるレベル(以後、SG出力レベルと称する。)をX[dBm](RMS(Root Mean Square)値)、PA21の出力端からRFコンバータ20の出力端までの挿入損失(以下、PA以降の挿入損失と称する。)をW[dB]とすると、PASW25の入力レベル(=PA21の出力端における出力レベル)Y[dBm](ピーク値)は次式で表される。
(数1)
Y=X+W+Γ+Δ+ε (1)
【0020】
ただし、Γ[dB]はクレストファクタ(Crest Factor)であり、Δ[dB]はRFコンバータ20内でのSG出力レベルXの変動分であり、ε[dB]はRFベース12に入力されるデジタルベースバンド信号のデジタルゲイン(RMS)の変動分である。
【0021】
一方、PASW25への最大入力レベルM[dBm](ピーク値)は次式で定義される。
(数2)
M=Y
max (2)
(数3)
M=X
max+W+Γ+Δ+ε (3)
が成立する。ここで、X
maxは設定可能なSG出力信号の最大値であり、例えばX
max=+5
2である。
【0022】
発明者らが、PA21以降の挿入損失を測定したところ、約10dB、すなわちW=+10であった。そのため、M=+27、W=+10の場合、
(数4)
27≦5+10+Γ+Δ+ε (4)
すなわち、
(数5)
Γ+Δ+ε≧12 (5)
が成立するとき、PASW25に過大な負荷がかかる過大入力状態となる。そこで、本開示は、式(5)に含まれるパラメータ「ε」を調整し、RFコンバータ20の有する入力限界値以下になるようにすることで、過大入力状態を防ぐ。
【0023】
クレストファクタΓ[dB]は、例えばΓ=3である。また、SG出力レベルXの変動分であるΔ[dB]は、次式で表される。
(数6)
Δ=T・Δ
T+Δ
C (6)
【0024】
ここで、T[℃]は周波数キャリブレーション後の温度変動である。Δ
Tは温度変動に起因する出力レベルの変動を表すパラメータであり、例えば−0.17[dB/℃]である。Δ
Cはケーブルに起因する出力レベルの変動を表すパラメータであり、例えば|Δ
C|>0.5である。
【0025】
周波数キャリブレーション実行時に温度センサ27で検出される温度をT
ref[℃]、周波数キャリブレーション実行後に温度センサ27で検出される現在温度をT
cur[℃]とすると、T=T
cur−T
refで表される。温度が5℃下がった場合、すなわちT=−5の場合、T・Δ
T=+0.85となる。温度が10℃上がった場合、すなわちT=+10の場合、T・Δ
T=−1.7となる。
【0026】
ε[dB]は、RFベース12に入力されるデジタルベースバンド信号のデジタルゲイン(RMS)をg[dB Fs(Full Scale)]、RFベース12に備わるDAコンバータの基準レベルをr[dB Fs]とすると、
(数7)
ε=g−r (7)
で表される。
【0027】
r=−10の場合、(7)式は
(数8)
ε=g+10 (8)
となる。g=rの条件下では(8)式はε=0となる。そこで、本実施形態は、ε≦0に制限する。
【0028】
デジタルベースバンド信号の出力レベル(変調波のTotal Power)を+10dBmと設定した場合にε=0となる条件下において、BBM11からのデジタルベースバンド信号の出力レベルを1dB上げて+11dBmとした場合はε=1に、1dB下げて+9dBmとした場合はε=−1にそれぞれ変化する。
【0029】
ここで、BBM11がセル番号#1〜#8の8つのセルのデジタルベースバンド信号を出力する場合、デジタルベースバンド信号の出力レベル(変調波のTotal Power)P[dBm]は
【数9】
で定義される。
【0030】
ただし、N
RBSCは1リソースブロック(以下、RB(Resource Blockと表記することがある。)あたりのサブキャリア数、N
CELLRB(n)は各セルで送信するリソースブロック数、P
EPRE(n)は各セルのEPRE(Energy Per Resource Element)すなわち1サブキャリアあたりのパワーである。P
EPRE(n)の単位は、μ∈{m:0≦m≦5}を用いて[dBm/15.2
μkHz]で表される。またN
RBSCは、例えば12である。
【0031】
ε≦0である場合、P≦+10に制限すればよい。そのため、本実施形態は、
(数10)
P≧+10 (10)
が成立する場合に、デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する。これにより、RFコンバータ20に入力されるアナログ信号の出力レベルが制限されるため、RFコンバータ20における過大入力状態を防ぐことができる。
【0032】
ここで、(7)式におけるrの値は、選択可能であってもよい。そこで、本実施形態では、(10)式を一般化した以下の式を用いる。
(数11)
P>P
th (11)
P
thは(7)式におけるrの値に応じた閾値である。例えば、アナログRF信号が5G NR信号の場合はP
th=16、それ以外のアナログRF信号の場合はP
th=10を用いる。
【0033】
CTM18は、(9)式を用いてデジタルベースバンド信号の出力レベルPを求め、(11)式が成立する場合にデジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する。例えば、CTM18がデジタルベースバンド信号の出力レベルをBBM11に指示し、BBM11がCTM18から指示された出力レベルのデジタルベースバンド信号を出力する。デジタルベースバンド信号の出力レベルの算出及び制限を実行するタイミングは任意であるが、例えば、CTM18は、プリミティブなどの種々の命令の受信を契機に行う。
【0034】
変調信号は、各々のセルに対応する、複数のサブキャリア、複数のリソースブロックを有する。そのため、CTM18は、各セルに対応する変調信号のパラメータを定めるパラメータ設定テーブルを保持する。
図2に、パラメータ設定テーブルの一例を示す。パラメータ設定テーブルは、SCS(Subcarrier Spacing)、CBW(Channel Bandwidth)、MAX RB(Maximum RB(Resource Block))、EPRE、セル設定フラグ、物理チャネル設定フラグを含む。図では、セル番号#1〜#8の8つのセルを設定する場合を示すが、セルの数は、試験インタフェース40で設定された任意の数でありうる。
【0035】
SCSは、サブキャリア周波数の間隔であり、例えば、15kHz、30kHz、60kHz、120kHz、240kHz、480kHzである。
CBWは、各チャネルの帯域幅であり、例えば、5MHz、10MHz、15MHz、20MHz、25MHz、40MHz、50MHz、60MHz、80MHz、100MHz、200MHz、400MHz、である。
MAX RBは、リソースブロック数の最大値であり、例えば、270である。
【0036】
EPREはユーザから設定され、例えば、あるセルのパワーがSCS=30kHz、リソースブロック数=270の条件でEPRE=−25.1dBm/30kHzに設定された場合、そのセルのデジタルベースバンド信号の出力レベル(トータルパワー)は
【数12】
と計算される。これらのSCS、CBW、MAX RB、EPREの値から各セルの出力レベルを計算する。
【0037】
セル設定フラグは、各セルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを制限するか否かを設定するためのフラグである。セル設定フラグが「無効」の場合、CTM18は、セルのデジタルベースバンド信号の出力レベルの制限を行わない。セル設定フラグが「有効」の場合、CTM18は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0038】
物理チャネル設定フラグは、物理チャネルの各チャネル単位でのデジタルベースバンド信号の出力レベルを制限するか否かを設定するためのフラグである。物理チャネル設定フラグが「無効」の場合、CTM18は、サブキャリアのデジタルベースバンド信号の出力レベルの制限を行わない。物理チャネル設定フラグが「有効」の場合、CTM18は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0039】
CTM18は、起動後、プリミティブ(Primitive)を受信すると、各プリミティブに対応する処理を実行する。
【0040】
・プリミティブ「FG_CPHY_CELL_CONFIG_REQ」
各セルのSCS、CBW、MAX RBが試験インタフェース40に入力されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、パラメータ設定テーブルで定義されたパラメータのうち、試験インタフェース(Unit)40で指定されたセルのSCS、CBW、MAX RBを更新する。
試験インタフェース40においてセル設定フラグが「有効」に設定されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、試験インタフェース40で指定されたセルのセル設定フラグを有効に設定する。
CTM18は、更新後のパラメータ設定テーブルの値を(9)式に適用し、セル#1〜#8のデジタルベースバンド信号の出力レベルPを算出する。出力レベルPが閾値P
thを超え、(11)式が成立する場合、CTM18は、セル設定フラグが「有効」に設定されているセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを低減させる。これにより、本実施形態は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0041】
・プリミティブ「FG_CPHY_CELL_RELEASE_REQ」
試験インタフェース40においてセル設定フラグが「無効」に設定されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、パラメータ設定テーブルで定義されたパラメータのうち、試験インタフェース40で指定されたセルのセル設定フラグを無効に設定する。
【0042】
・プリミティブ「FG_CMAC_SCH_CONFIG_REQ」
各セルのEPREが試験インタフェース40に入力されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、パラメータ設定テーブルで定義されたパラメータのうち、試験インタフェース40で指定されたセルのEPREを更新する。
試験インタフェース40において物理チャネル設定フラグが「有効」に設定されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、試験インタフェース40で指定されたセルの物理チャネル設定フラグを有効に設定する。
CTM18は、更新後のパラメータ設定テーブルの値を(9)式に適用し、セル#1〜#8のデジタルベースバンド信号の出力レベルPを算出する。出力レベルPが閾値P
thを超え、(11)式が成立する場合、CTM18は、物理チャネル設定フラグが「有効」に設定されているセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを物理チャネルのチャネル単位で低減させる。これにより、本実施形態は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0043】
・プリミティブ「FG_CMAC_SCH_RELEASE_REQ」
試験インタフェース40において物理チャネル設定フラグが「無効」に設定されると、試験インタフェース40は、本プリミティブをCTM18に出力する。CTM18は、パラメータ設定テーブルで定義されたパラメータのうち、試験インタフェース40で指定されたセルの物理チャネル設定フラグを無効に設定する。
【0044】
・プリミティブ「FG_CPHY_TRX_ROUTING_REQ」
CTM18は、SCS、CBW、MAX RB、EPREの各値が更新された場合、デジタルベースバンド信号の出力レベルPを算出する。出力レベルPが閾値P
thを超え、(11)式が成立する場合、CTM18は、セル設定フラグが「有効」に設定されているセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを低減させる。TRX_ROUTINGこれにより、本実施形態は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0045】
・プリミティブ「FG_CPHY_CELL_POWER_REQ」
CTM18は、試験インタフェース40で指定されているTarget Channelに応じてセルのEPREを更新する。
ここで、CTM18は、試験インタフェース40で指定されたセルのセル設定フラグが有効に設定されている場合、パラメータ設定テーブルで定義されたパラメータのうち、試験インタフェース40で指定されたセルのEPREを更新する。
CTM18は、更新後のパラメータ設定テーブルの値を(9)式に適用し、セル#1〜#8のデジタルベースバンド信号の出力レベルPを算出する。出力レベルPが閾値P
thを超え、(11)式が成立する場合、CTM18は、セル設定フラグが「有効」に設定されているセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを低減させる。これにより、本実施形態は、BBM11から出力されるデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0046】
図3に、デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する第1の具体例を示す。
(i)パラメータ設定テーブルにおいて、セル#1のセル設定フラグが「無効」であり、
(ii)パラメータ設定テーブルにおいて、セル#2〜#8のセル設定フラグが「有効」であり、
(iii)(9)式を用いて算出されるセル#1〜#8の出力レベルPが閾値P
thを超える場合、
BBM11は、セル#1の出力レベルをパラメータ設定テーブルのEPREで定められた出力レベルで出力し、セル#2〜#8の出力レベルを予め定められたシステム設定値で出力する。
【0047】
ここで、システム設定値は、例えば、設定可能なEPREの値のうちの最低値である。このように、本実施形態は、セル設定フラグが「有効」に設定されている全てのセル#2〜#8に対し、パラメータ設定テーブルのEPREで定められた出力レベルをブロックし、システム設定値にまで低減させる。これにより、本実施形態は、BBM11からのデジタルベースバンド信号の出力レベルを閾値P
th以下に制限する。
【0048】
図4に、デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する第2の具体例を示す。
図3では、セル設定フラグが「有効」に設定されている全てのセル#2〜#8の出力レベルをシステム設定値にまで低減させる例を示したが、本開示はこれに限定されない。
例えば、セル設定フラグが「有効」に設定されているセル#2〜#8のうちの一部のセル#7及び#8のみをシステム設定値にまで低減させることで、(9)式を用いて算出されるセル#1〜#8の出力レベルPが閾値P
th以下になる場合、CTM18は、
図4に示すように、セル設定フラグが「有効」に設定されているセル#2〜#8のうちの一部のセル#7及び#8のみをシステム設定値にまで低減させてもよい。
【0049】
図5に、デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する第3の具体例を示す。
図3では、セル設定フラグが「有効」に設定されているセル#2〜#8の出力レベルをシステム設定値にまで低減させる例を示したが、低減させる出力レベルはシステム設定値に限定されない。
例えば、CTM18は、(9)式を用いて算出されるセル#1〜#8の出力レベルPが閾値P
th以下にすることの可能なセル#2〜#8の出力レベルの許容最大値を求め、セル#2〜#8の出力レベルを許容最大値に低減させてもよい。
【0050】
以上説明したように、(9)式を用いて算出されるセル#1〜#8の出力レベルPが閾値P
thを超える場合、CTM18は、セル設定フラグが「有効」に設定されている少なくとも一つのセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する。試験インタフェース40は、システム設定値にまで低減させるのか、それとも出力レベルの許容最大値に低減させるのか、を選択可能であってもよい。また、試験インタフェース40は、セル設定フラグが「有効」に設定されているすべてのセルの出力レベルを制限するのか、必要最小限のセルの出力レベルを制限するのか、を選択可能であってもよい。
【0051】
本実施形態では、セル設定フラグが「有効」に設定されているセルについて説明したが、本開示は、物理チャネル設定フラグが「有効」に設定されているセルについても同様である。例えば、(9)式を用いて算出されるセル#1〜#8の出力レベルPが閾値P
thを超える場合、物理チャネル設定フラグが「有効」に設定されている少なくとも一つのセルのデジタルベースバンド信号の出力レベルを物理チャネルのチャネル単位で制限する。
【0052】
デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する第4の具体例について述べる。ここではセル数をセル#1とセル#2と2つとする。セル#1にセル#2を加えるときに、CTM18は、セルの追加によって出力レベルPが閾値P
thを超えないように、追加するセル#2の出力レベルP
SetCellの設定を調整する。
(数13)
P
SetCell=P
th−P
OtherCell (13)
ここで、「P
SetCell」は追加するセルの出力レベルであり、「P
OtherCell」はその他のセルの出力レベルである。セル#1にセル#2を加える場合、P
SetCellはP
Cell2であり、P
OtherCellはP
Cell1である。
【0053】
例えば、試験インタフェース40で設定されたセル#1、セル#2の出力レベルの設定値を、P
Cell1_Pri=+8dBm、P
Cell2_Pri=+8dBm、P
th=10dBmとする。セル#1の設定値は、P
Cell1=+8dBm、セル#2の設定値は、P
Cell2=P
th―P
Cell1より、P
Cell2≒5.7dBmとなる。P
thの値と、各セルのレベルの設定値を比較して、各セルのレベルの値がP
thの値に近い、すなわち、P
Cell1、P
Cell2<P
th、かつ、P
Cell1+P
Cell2>P
th、であるような場合にこの制限方法は好適である。また、セル数が増えた場合に2つのセルのレベルの設定値以外が同じの場合あるいは、セル#1からセル#2の順番で設定する場合などにおいても好適な制限方法である。
【0054】
デジタルベースバンド信号の出力レベルを制限する第5の具体例について述べる。ここではセル数をセル#1とセル#2と2つとする。CTM18は、セル#1とセル#2にバランスを入れて調整する。
(数14)
P
EPRE=P
th/N
RETotal (14)
ここでN
RETotalはセル数であり、本実施形態ではN
RETotal=2、とする。
【0055】
例えば、試験インタフェース40で設定されたセル#1、セル#2のレベルの設定値を、P
Cell1_Pri=+15dBm、P
Cell2_Pri=+15dBm、P
th=10dBmとする。CTM18は、セル#1のみの出力レベルを設定する場合、P
Cell1≒+10dBmに設定する。次いで、セル#2の出力レベルを設定する場合、P
SetCell=P
th/N
RETotalより、P
Cell1=+7dBm、P
Cell2=+7dBm、となる。P
thの値と、各セルのレベルの設定値を比較して、各セルのレベルの設定値がP
thの値に対して大きすぎる場合、すなわち、P
Cell1、P
Cell2>P
thであるような場合にこの制限方法は好適である。
【0056】
(第2の実施形態)
図6に、本実施形態に係るシステム構成の一例を示す。本実施形態の信号源10は、信号源10の電源のON/OFFを検出する起動センサ17を備える。本実施形態のRFコンバータ20は、RFコンバータ20内の温度を測定する温度センサ27、RFケーブル30の接続/接続断を検出するケーブルセンサ28を備える。
【0057】
PA21で増幅後のアナログ信号の出力レベルがRFコンバータ20に予め定められている絶対最大定格を超える場合、PASW25に過大な負荷がかかる過大入力状態となる。そこで、本開示は、経路22と経路23とを切り替えることで、過大入力状態を防ぐ。
【0058】
図7に、実施形態に係るSG信号出力の状態遷移図の一例を示す。本実施形態は、過大入力状態S102と適正入力状態S103の2状態を有する。過大入力状態S102は、PASW25に過大な負荷がかかる可能性のある状態である。適正入力状態S103は、適正な電流がPASW25へ流入する状態である。
【0059】
信号源10が起動すると(S101)、起動センサ17は、信号源10を起動した旨をRFコンバータ制御部31に通知する。RFコンバータ制御部31は、この通知を契機に、SW24及びPASW25を経路23に接続する。このように、本開示では、信号源10が起動した直後では過大入力状態S102に遷移し、過大入力状態S102では経路22に接続されることはない。
【0060】
ユーザが試験インタフェース40から、周波数キャリブレーションの操作を行うと、周波数キャリブレーション実行部33は、周波数キャリブレーションを実行する。周波数キャリブレーション実行部33は、周波数キャリブレーションの実行を完了すると、周波数キャリブレーションの実行を完了した旨をRFコンバータ制御部31に通知し、RFコンバータ20は適正入力状態S103に遷移する。RFコンバータ制御部31は、SG出力レベルによっては、SW24及びPASW25を経路22に接続することが可能となる。またRFコンバータ制御部31は、温度センサ27の検出する温度をT
ref[℃]として温度記憶部32に記録する。
【0061】
適正入力状態S103への遷移後、RFコンバータ制御部31は、過大入力状態S102に遷移したか否かを判定する。判定の間隔は、例えば10秒ごとである。過大入力状態S102に遷移した場合、RFコンバータ制御部31はSW24及びPASW25を経路23に切り替える。
【0062】
本開示では、RFコンバータ20に複数のセルに対応する変調信号が入力される。その複数のセルに対応する変調信号の入力レベルがRFコンバータの有する入力限界値を超えた場合、RFコンバータ制御部31は過大入力状態S102へ遷移したと判定する。例えば、RFコンバータ制御部31は、CTM18の算出する出力レベルP[dBm]を取得し、P>P
thであれば過大入力状態であると判定する。
【0063】
RFコンバータ制御部31は、以下の判定方法を用いて過大入力状態S102への遷移の判定をさらに行ってもよい。その場合、いずれか1つの方法を用いて過大入力状態であると判定された場合、RFコンバータ制御部31はSW24及びPASW25を経路23に切り替える。
【0064】
例えば、RFコンバータ制御部31は、温度センサ27の検出する温度の変動に基づいて、RFコンバータ20が過大入力状態S102に遷移したか否かを判定する。例えば、RFコンバータ制御部31は、温度センサ27から現在の温度T
cur[℃]を取得し、温度変動T=T
cur−T
refを求める。そして、RFコンバータ制御部31は、温度変動Tを用いて、RFコンバータ20の出力端におけるアナログRF信号の出力レベルの変動Δを求める。RFコンバータ制御部31は、変動Δが予め定められた値以上になる場合、過大入力状態S102に遷移したと判定する。ここで、予め定められた閾値は、後述する(13)式より、例えば9である。
【0065】
過大入力状態S102への遷移は、RFコンバータ20内の温度の他に、信号源10及びRFコンバータ20間の接続断によっても発生しうる。そこで、RFコンバータ制御部31は、ケーブルセンサ28を用いて、RFケーブル30の接続/接続断を検出する。ケーブルの接続/接続断の検出は、例えば、ケーブルの接続されているポートからの信号の有無に基づいて行うことができる。
【0066】
ケーブルセンサ28は、さらに、信号源10及びRFコンバータ20間の制御ケーブル(付図示)の接続/接続断、RFコンバータ20の電源ケーブル(不図示)の接続/接続断を検出してもよい。この場合、RFコンバータ制御部31は、RFケーブル30の接続/接続断と同様の動作を行う。
【0067】
適正入力状態S103から過大入力状態S102に遷移した場合、RFコンバータ制御部31は、過大入力状態である旨のアラートをユーザに通知してもよい。例えば、RFコンバータ制御部31は、過大入力状態である旨とその原因を試験インタフェース40に表示する。例えば、温度変動によって過大入力状態に遷移した旨、又は、ケーブルの接続断によって過大入力状態に遷移した旨、を試験インタフェース40に表示する。
【0068】
SG出力信号が基準レベル(ε=0)で出力される場合は、Γ=3である。そのため、
(数15)
Δ≧9 (15)
が成立するとき、RFコンバータ20への過大入力状態S102となる。
【0069】
具体的には、常温環境下(23℃)で周波数キャリブレーションを実行後、低温環境下(5℃)で周波数キャリブレーションを実行するためにSG出力レベルXを+10dBmに設定したところ、PASW25が故障した。ここで、温度変化によるSG出力レベルXの変動Δは(2)式より約3dBである。また、RFコンバータ20の経路を経路22に設定した場合、反射の影響で1dB程度出力レベルが上がる。このため、低温環境下(周波数キャリブレーションを未実行時)において、PASW25の入力レベルY[dBm](ピーク値)は(1)式より
(数16)
Y=X+W+Γ+Δ+ε
=+10+10+3+(3+1+α)+0
=+27+α (16)
であったことが判る。ただし、α[dB]は個体差による誤差である。結果として、最大入力レベルを超える信号がPASW25に入力されたと考えられる。
【0070】
周波数キャリブレーションを未実行状態において(15)式が成立した場合、すなわち、
・高温で周波数キャリブレーションを実行後、低温で周波数キャリブレーションを実行しない場合、
・信号源10とRFコンバータ20を損失が大きいRFケーブル30で接続して周波数キャリブレーションを実行し、その後に損失の少ないRFケーブル30に交換して周波数キャリブレーションを実行しない場合、
の少なくともいずれかの場合に過大入力状態S102となりうる。
【0071】
適正入力状態S103におけるSG出力レベルXの設定上限値X
maxは、例えばX
max=+5[dBm]である。過大入力状態S102におけるSG出力レベルXの設定上限値X
maxは、例えばX
max=−13[dBm]である。これにより、RFコンバータ20への過大入力条件をΔ≧27に緩和することができる。
【0072】
試験インタフェース40においてX
maxを超えるSG出力レベルXが設定された場合、RFコンバータ制御部31は、SG出力レベルXをX
maxに丸めてもよい。また、試験インタフェース40においてX
max=−13に設定可能であってもよい。この場合、常に過大入力状態S102であるとして経路23が適用され、PASW25が故障しないことを物理的に保証することができる。