【解決手段】低域通過フィルタ10は、並列に接続された2つ以上の第2キャパシタ28、31と、前記2つ以上の第2キャパシタのうち少なくとも2つの第2キャパシタに直列に接続されて、共振周波数が互いに異なり前記帯域外の周波数となる少なくとも2つの直列共振回路29、32を形成する少なくとも2つの第2インダクタ27、30と、前記少なくとも2つの直列共振回路のうちいずれか2つの直列共振回路間に接続された1つ以上の第1インダクタ20とを備える
前記少なくとも2つの第2インダクタは、前記2つ以上の第2キャパシタのうちすべての第2キャパシタに直列に接続されて、第2キャパシタごとの直列共振回路を、前記少なくとも2つの直列共振回路として形成する請求項1に記載のフィルタ。
前記いずれか2つの直列共振回路間で前記1つ以上の第1インダクタに並列に接続されて、共振周波数が前記少なくとも2つの直列共振回路のいずれの共振周波数とも異なり前記帯域外の周波数となる1つ以上の並列共振回路を形成する1つ以上の第1キャパシタをさらに備える請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、以下に説明する実施の形態のうち、2つ以上の実施の形態が組み合わせられて実施されても構わない。あるいは、以下に説明する実施の形態のうち、1つの実施の形態または2つ以上の実施の形態の組み合わせが部分的に実施されても構わない。
【0013】
実施の形態1.
本実施の形態について、
図1から
図5を用いて説明する。
【0014】
***構成の説明***
図1を参照して、本実施の形態に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0015】
低域通過フィルタ10は、ある帯域内の周波数の信号を通過させるフィルタである。具体的には、低域通過フィルタ10は、ある周波数よりも低い帯域内の信号を減衰させることなく通過させ、帯域外の不要波あるいは高調波を著しく減衰させる動作を行うフィルタである。この動作は、本実施の形態に係るフィルタ方法に相当する。なお、低域通過フィルタ10と同様の構成を、その他の帯域通過フィルタ、あるいは、増幅器の整合回路に適用してもよい。
【0016】
低域通過フィルタ10は、任意の電子機器に適用される。図示していないが、具体例として、低域通過フィルタ10は、低域通過フィルタ10を通過した信号を処理する信号処理装置を備える電子機器に適用される。そのような電子機器としては、レーダ機器、通信機器および観測機器等がある。
【0017】
低域通過フィルタ10は、2つの第1インダクタ13,15と、2つの第1キャパシタ14,16と、1つの第2キャパシタ17とを備えている。2つの第1インダクタ13,15は、直列に接続されている。2つの第1キャパシタ14,16は、2つの第1インダクタ13,15に並列に接続されて、共振周波数が互いに異なり帯域外の周波数となる2つの並列共振回路18,19を形成している。1つの第2キャパシタ17は、2つの第1インダクタ13,15の接続部および接地間に接続されている。
【0018】
具体的には、低域通過フィルタ10は、入力端子11と出力端子12との間に、第1インダクタ13と第1キャパシタ14との並列共振回路18と、第1インダクタ15と第1キャパシタ16との並列共振回路19とを直列に装荷し、並列共振回路18と並列共振回路19との接続部と接地との間に第2キャパシタ17を装荷した構成になっている。
【0019】
図2を参照して、比較例1に係る低域通過フィルタ90の構成を説明する。
【0020】
低域通過フィルタ90は、入力端子11と出力端子12との間に、2個の第1インダクタ20を直列に装荷し、これらの第1インダクタ20の接続部と接地との間に第2キャパシタ17を装荷したT形構成になっている。フィルタの段数は、
図1の低域通過フィルタ10と同じ3段である。
【0021】
帯域内で
図2の低域通過フィルタ90の特性を維持し、帯域外で大きな損失特性を得るための
図1の低域通過フィルタ10の素子値の求め方について述べる。
【0022】
ここで、
図2の低域通過フィルタ90の第1インダクタ20のインダクタンス値をL、第2キャパシタ17のキャパシタンス値をCとする。また、
図1の低域通過フィルタ10の第1インダクタ13のインダクタンス値と第1キャパシタ14のキャパシタンス値とをそれぞれL1およびC1とする。第1インダクタ15のインダクタンス値と第1キャパシタ16のキャパシタンス値とをそれぞれL2およびC2とする。第2キャパシタ17のキャパシタンス値を
図2の低域通過フィルタ90と同じCとする。
【0023】
図1において、並列共振回路18のインピーダンスZ1は式1で求まる。ここで、ωは角周波数である。周波数をfとしたとき、ω=2πfとなる。
式1:Z1=jωL1/(1−ω
2L1C1)
【0024】
この式において、帯域外の周波数ω1で並列共振するための条件は式2となる。
式2:ω1
2=1/L1C1
【0025】
また、帯域内の周波数ω0におけるインピーダンスZ1は式1より式3となる。
式3:Z1=jω0L1/(1−ω0
2L1C1)
【0026】
一方、
図2の低域通過フィルタ90を構成する第1インダクタ20のω0におけるインピーダンスZ2は式4となる。
式4:Z2=jω0L
【0027】
ここで、ω0におけるZ1=Z2とし、式2の関係を用いて整理すると、並列共振回路18を構成するL1およびC1とLとの関係は式5となる。
式5:
L1=L(1−ω0
2/ω1
2)
C1=1/L(ω1
2−ω0
2)
【0028】
同様に、帯域外の周波数ω2で並列共振、帯域内の周波数ω0で
図2の低域通過フィルタ90を構成する第1インダクタ20と同じLとすると、並列共振回路19を構成するL2およびC2とLとの関係は式6となる。
式6:
L2=L(1−ω0
2/ω2
2)
C2=1/L(ω2
2−ω0
2)
【0029】
並列共振回路18を構成するL1およびC1とLとの関係を式5のように、また、並列共振回路19を構成するL2およびC2とLとの関係を式6のように選ぶことにより、ω0、ω1およびω2における並列共振回路18と並列共振回路19との簡易的な等価回路は
図3のように表すことができる。比較のため、
図2の低域通過フィルタ90を構成する第1インダクタ20の等価回路も示してある。
【0030】
図3に示すように、並列共振回路18はω0では
図2の低域通過フィルタ90の第1インダクタ20と等しいL、ω1では開放、ω2では式1から求まる等価的なキャパシタC’となる。また、並列共振回路19はω0では
図2の低域通過フィルタ90の第1インダクタ20と等しいL、ω2では式1から求まる等価的なインダクタL’、ω2では開放となる。
【0031】
図4は、各低域通過フィルタの損失特性例を示している。図中、(a)は
図1の低域通過フィルタ10、(b)は
図2の低域通過フィルタ90の特性である。帯域内のω0ではそれぞれ低損失特性を示し、帯域外では
図2の低域通過フィルタ90では周波数が高くなるに従い、緩やかに損失が増加するのに対し、
図1の低域通過フィルタ10ではω1およびω2で急峻に損失が増加するとともに、ω1からω2にわたっても大きな損失特性が得られる。
【0032】
図5は、
図1の低域通過フィルタ10の設計例を示している。ここで示す各素子値L1、C1、L2およびC2はω0をf0=1.25GHz、ω1をf1=2.3GHz、ω2をf2=2.7GHzとし、また、
図2の低域通過フィルタ90の第1インダクタ20のインダクタンス値をL=4.84nHとし、式5および式6により求めた値である。この例では、1.25GHzでの損失はほぼ0dB、帯域外の2.3GHzおよび2.7GHzでの損失はそれぞれ約70dB、また、2.3GHzから2.7GHzでの損失は30dBと帯域外で大きな損失特性が得られている。これに対し、L=4.84nH、C=1.74pFを選んだ
図2の低域通過フィルタ90の場合、1.25GHzでの損失はほぼ0dBとなるものの帯域外の2.3GHzおよび2.7GHzではそれぞれ0.9dBおよび3.4dBと大きな損失特性は得られない。
【0033】
以上のように、本実施の形態の低域通過フィルタ10は、入力端子11と出力端子12との間に並列共振回路18と並列共振回路19とを直列に装荷し、並列共振回路18と並列共振回路19との接続部と接地との間に第2キャパシタ17を装荷する構成になっている。並列共振回路18および並列共振回路19は、帯域内のω0で、低域通過フィルタ10に要求されるインダクタンスLをそれぞれ維持し、並列共振回路18の共振周波数が帯域外のω1、並列共振回路19の共振周波数が帯域外のω2となるような素子値が選ばれている。これにより、帯域内では低損失特性が得られ、また、帯域外のω1からω2の広帯域にわたって大きな損失特性が得られる。
【0034】
このように帯域外で大きな損失を得るために、フィルタの段数を増やすことがないため、本実施の形態は、小形の低域通過フィルタ10で低損失特性が得られる効果を奏する。
【0035】
***実施の形態の効果の説明***
本実施の形態によれば、段数が少なくても帯域外で大きな損失、帯域内では低損失特性が得られるフィルタを提供することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、複数個の並列共振回路が帯域内で低域通過フィルタ10に要求されるそれぞれのインダクタンスを維持しつつ、帯域外で並列共振回路の特性を利用することで、段数を増やすことなく帯域外で大きな損失、帯域内では低損失特性が得られる。また、それぞれの並列共振回路の共振周波数を異なる周波数に設定することにより、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅が拡大する効果もある。特に、T形構成の低域通過フィルタ10への適用に有効である。
【0037】
***他の構成***
低域通過フィルタ10は、1つの第2キャパシタ17の代わりに、2つの第1インダクタ13,15の接続部および接地間に接続された2つ以上の第2キャパシタを備えていてもよい。あるいは、低域通過フィルタ10は、後述する3つ以上の第1インダクタのうちいずれか2つの第1インダクタの接続部および接地間に接続された2つ以上の第2キャパシタを備えていてもよい。
【0038】
低域通過フィルタ10は、2つの第1インダクタ13,15の代わりに、直列に接続された3つ以上の第1インダクタを備えていてもよい。これら3つ以上の第1インダクタのうち少なくとも2つの第1インダクタのそれぞれには、第1キャパシタが並列に接続されて並列共振回路が形成される。本実施の形態と同様に、すべての第1インダクタに第1キャパシタが並列に接続されて、第1インダクタごとの並列共振回路が形成されてもよいが、後述する変形例のように、一部の第1インダクタのみに第1キャパシタが並列に接続されて、第1インダクタの総数よりも少ない数の並列共振回路が形成されてもよい。ここで述べた、いずれの構成がとられる場合も、低域通過フィルタ10は、3つ以上の第1インダクタのうち少なくとも2つの第1インダクタに並列に接続されて、共振周波数が互いに異なり帯域外の周波数となる少なくとも2つの並列共振回路を形成する少なくとも2つの第1キャパシタを備えることになる。
【0039】
図6を参照して、本実施の形態の変形例に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0040】
この変形例では、
図2の出力端子12側の第1インダクタ20の代わりに、第1インダクタ21と第1キャパシタ22とからなる並列共振回路23と、第1インダクタ24と第1キャパシタ25とからなる並列共振回路26との直列回路が用いられている。
【0041】
ここで、第1インダクタ21のインダクタンス値と第1キャパシタ22のキャパシタンス値とをそれぞれL3およびC3とする。第1インダクタ24のインダクタンス値と第1キャパシタ25のキャパシタンス値とをそれぞれL4およびC4とする。さらに、並列共振回路23および並列共振回路26の共振周波数をそれぞれω1およびω2とするとともに、帯域内のω0における並列共振回路23および並列共振回路26との等価的なインダクタのインダクタンス値をそれぞれ
図2の低域通過フィルタ90を構成する第1インダクタ20の1/2、すなわち、L/2とすると、L3、C3、L4およびC4は式5および式6と同様に、式7で求まる。
式7:
L3=L(1−ω0
2/ω1
2)/2
C3=2/L(ω1
2−ω0
2)
L4=L(1−ω0
2/ω2
2)/2
C4=2/L(ω2
2−ω0
2)
【0042】
以上のように、この変形例では、1個の第1インダクタ20の代わりに並列共振回路23と並列共振回路26とを採用し、帯域内では並列共振回路23と並列共振回路26との等価的なインダクタのインダクタンス値の和を、低域通過フィルタ10に要求されるインダクタンス値Lに等しくしている。また、並列共振回路23と並列共振回路26との帯域外での共振周波数を異なる値に設定している。これにより、
図1のものと同じく帯域内で低損失、帯域外で大きな損失特性の低域通過フィルタ10が得られる。
【0043】
この構成のように1個の第1インダクタ20を複数個の並列共振回路で置き換えることにより、フィルタの段数を増やすことなく、より多くの並列共振点を設けることができ、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅を広げることができる効果がある。
【0044】
式7では並列共振回路23と並列共振回路26との等価的なインダクタのインダクタンス値をそれぞれL/2としたが、合計のインダクタンス値がLであれば、他の比率であっても効果は同じである。
【0045】
以上の実施例では
図1および
図6に示すように、フィルタの段数として3段構成を採用しているが、それ以上の段数の構成を採用してもよい。その場合、さらに多くの並列共振点を設けることができるため、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅をさらに広げることができる。
【0046】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を、
図7から
図10を用いて説明する。
【0047】
***構成の説明***
図7を参照して、本実施の形態に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0048】
本実施の形態では、低域通過フィルタ10は、2つの第2キャパシタ28,31と、2つの第2インダクタ27,30と、1つの第1インダクタ20とを備えている。2つの第2キャパシタ28,31は、並列に接続されている。2つの第2インダクタ27,30は、2つの第2キャパシタ28,31に直列に接続されて、共振周波数が互いに異なり帯域外の周波数となる2つの直列共振回路29,32を形成している。1つの第1インダクタ20は、2つの直列共振回路29,32間に接続されている。
【0049】
具体的には、低域通過フィルタ10は、第1インダクタ20の一端子と接地との間に、第2インダクタ27と第2キャパシタ28とからなる直列共振回路29を、また、第1インダクタ20の他端子と接地との間に第2インダクタ30と第2キャパシタ31とからなる直列共振回路32をそれぞれ装荷した構成になっている。
【0050】
図8を参照して、比較例2に係る低域通過フィルタ90の構成を説明する。
【0051】
低域通過フィルタ90は、入力端子11と出力端子12との間に、1個の第1インダクタ20を装荷し、この第1インダクタ20の一端子と接地との間、および、他端子と接地との間にそれぞれ第2キャパシタ17を装荷したπ形構成になっている。フィルタの段数は、
図7の低域通過フィルタ10と同じ3段である。
【0052】
帯域内で
図8の低域通過フィルタ90の特性を維持し、帯域外で大きな損失特性を得るための
図7の低域通過フィルタ10の素子値の求め方について述べる。
【0053】
ここで、
図8の低域通過フィルタ90の第1インダクタ20のインダクタンス値をL、第2キャパシタ17のキャパシタンス値をCとする。また、
図7の低域通過フィルタ10の第2インダクタ27のインダクタンス値と第2キャパシタ28のキャパシタンス値とをそれぞれL5およびC5とする。第2インダクタ30のインダクタンス値と第2キャパシタ31のキャパシタンス値とをそれぞれL6およびC6とする。第1インダクタ20のインダクタンス値を
図8の低域通過フィルタ90と同じLとする。
【0054】
図7の低域通過フィルタ10においても、各素子値は実施の形態1と同様に、
図8の素子値をもとに式8のように求まる。ただし、ω0は帯域内の周波数であり、ω1およびω2はそれぞれ直列共振回路29および直列共振回路32の帯域外での共振周波数である。
式8:
L5=1/C(ω1
2−ω0
2)
C5=C(1−ω0
2/ω1
2)
L6=1/C(ω2
2−ω0
2)
C6=C(1−ω0
2/ω2
2)
【0055】
直列共振回路29を構成するL5およびC5とCの関係と、直列共振回路32を構成するL6およびC6とCとの関係を式8のように選ぶことにより、ω0、ω1およびω2における直列共振回路29と直列共振回路32との簡易的な等価回路は
図9のように表すことができる。比較のため、
図8の低域通過フィルタ90を構成する第2キャパシタ17の等価回路も示してある。
【0056】
図9に示すように、直列共振回路29はω0では
図8の低域通過フィルタ90の第2キャパシタ17と等しいC、ω1では短絡、ω2では等価的なインダクタL’となる。また、直列共振回路32はω0では
図8の低域通過フィルタ90の第2キャパシタ17と等しいC、ω2では等価的なキャパシタC’、ω2では短絡となる。
【0057】
このように、帯域内で低域通過フィルタ10に要求される第2キャパシタ17のキャパシタンス値Cを維持し、入力端子11と出力端子12との間の2ヵ所に短絡点を設けることにより、
図4の実線と同じく、帯域内で低損失特性が得られるとともに、帯域外のω1からω2にわたって大きな損失特性が得られる。
【0058】
図10は、
図7の低域通過フィルタ10の設計例を示している。ここで示す各素子値L5、C5、L6およびC6はω0をf0=1.25GHz、ω1をf1=2.3GHz、ω2をf2=2.7GHzとし、また、
図8の低域通過フィルタ90の第2キャパシタ17のキャパシタンス値をC=1.74pFとし、式8により求めた値である。この例では、
図5の例と同様に、1.25GHzでの損失はほぼ0dB、帯域外の2.3GHzおよび2.7GHzでの損失はそれぞれ約70dB、また、2.3GHzから2.7GHzでの損失は30dBと帯域外で大きな損失特性が得られている。これに対し、L=4.84nH、C=1.74pFを選んだ
図8の低域通過フィルタ90の場合、1.25GHzでの損失はほぼ0dBとなるものの帯域外の2.3GHzおよび2.7GHzではそれぞれ0.9dBおよび3.4dBと大きな損失特性は得られない。
【0059】
***実施の形態の効果の説明***
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、段数が少なくても帯域外で大きな損失、帯域内では低損失特性が得られるフィルタを提供することができる。
【0060】
本実施の形態によれば、複数個の直列共振回路が帯域内で低域通過フィルタ10に要求されるそれぞれのキャパシタンスを維持しつつ、帯域外で直列共振回路の特性を利用することで、段数を増やすことなく帯域外で大きな損失、帯域内では低損失特性が得られる。また、それぞれの直列共振回路の共振周波数を異なる周波数に設定することにより、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅が拡大する効果もある。特に、π形構成の低域通過フィルタ10への適用に有効である。
【0061】
***他の構成***
低域通過フィルタ10は、1つの第1インダクタ20の代わりに、2つの直列共振回路29,32間に接続された2つ以上の第1インダクタを備えていてもよい。あるいは、低域通過フィルタ10は、後述する3つ以上の直列共振回路のうちいずれか2つの直列共振回路間に接続された2つ以上の第1インダクタを備えていてもよい。
【0062】
低域通過フィルタ10は、2つの第2キャパシタ28,31の代わりに、並列に接続された3つ以上の第2キャパシタを備えていてもよい。これら3つ以上の第2キャパシタのうち少なくとも2つの第2キャパシタのそれぞれには、第2インダクタが直列に接続されて直列共振回路が形成される。本実施の形態と同様に、すべての第2キャパシタに第2インダクタが直列に接続されて、第2キャパシタごとの直列共振回路、すなわち、3つ以上の直列共振回路が形成されてもよいが、後述する変形例のように、一部の第2キャパシタのみに第2インダクタが直列に接続されて、第2キャパシタの総数よりも少ない数の直列共振回路が形成されてもよい。ここで述べた、いずれの構成がとられる場合も、低域通過フィルタ10は、3つ以上の第2キャパシタのうち少なくとも2つの第2キャパシタに直列に接続されて、共振周波数が互いに異なり帯域外の周波数となる少なくとも2つの直列共振回路を形成する少なくとも2つの第2インダクタを備えることになる。
【0063】
低域通過フィルタ10は、1つの第1キャパシタをさらに備えていてもよい。この1つの第1キャパシタは、2つの直列共振回路29,32間で1つの第1インダクタ20に並列に接続されて、共振周波数が2つの直列共振回路29,32のいずれの共振周波数とも異なり帯域外の周波数となる1つの並列共振回路を形成する。前述したように、3つ以上の直列共振回路が形成されてもよく、その場合、並列共振回路の共振周波数は、3つ以上の直列共振回路のいずれの共振周波数とも異なる帯域外の周波数となる。
【0064】
低域通過フィルタ10は、1つの第1インダクタ20の代わりに、直列に接続された2つ以上の第1インダクタを備えるとともに、2つ以上の第1キャパシタを備えていてもよい。これら2つ以上の第1キャパシタは、2つの直列共振回路29,32間で2つ以上の第1インダクタに並列に接続されて、第1インダクタごとの並列共振回路を形成する。各並列共振回路の共振周波数は、互いに異なり、かつ、2つの直列共振回路29,32のいずれの共振周波数とも異なる帯域外の周波数となる。前述したように、3つ以上の直列共振回路が形成されてもよく、その場合、各並列共振回路の共振周波数は、互いに異なり、かつ、3つ以上の直列共振回路のいずれの共振周波数とも異なる帯域外の周波数となる。
【0065】
図11を参照して、本実施の形態の変形例に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0066】
この変形例では、
図8の出力端子12側の第2キャパシタ17の代わりに、第2インダクタ27と第2キャパシタ28とからなる直列共振回路29と、第2インダクタ30と第2キャパシタ31とからなる直列共振回路32との並列回路が用いられている。
【0067】
ここで、第2インダクタ27のインダクタンス値と第2キャパシタ28のキャパシタンス値とをそれぞれL7およびC7とする。第2インダクタ30のインダクタンス値と第2キャパシタ31のキャパシタンス値とをそれぞれL8およびC8とする。さらに、直列共振回路29および直列共振回路32の共振周波数をそれぞれω1およびω2とするとともに、帯域内のω0における直列共振回路29および直列共振回路32との等価的なキャパシタのキャパシタンス値をそれぞれ
図8の低域通過フィルタ90を構成する第2キャパシタ17の1/2、すなわち、C/2とすると、L7、C7、L8およびC4は式8と同様に、式9で求まる。
式9:
L7=2/C(ω1
2−ω0
2)
C7=C(1−ω0
2/ω1
2)/2
L8=2/C(ω2
2−ω0
2)
C8=C(1−ω0
2/ω2
2)/2
【0068】
以上のように、この変形例では、1個の第2キャパシタ17の代わりに2個の直列共振回路29と直列共振回路32との並列回路を採用し、帯域内では直列共振回路29と直列共振回路32との等価的なキャパシタのキャパシタンス値の和を、低域通過フィルタ10に要求されるキャパシタンス値Cに等しくしている。また、直列共振回路29と直列共振回路32との帯域外での共振周波数を異なる値に設定している。これにより、
図7のものと同じく帯域内で低損失、帯域外で大きな損失特性の低域通過フィルタ10が得られる。
【0069】
この構成のように1個の第2キャパシタ17を複数個の直列共振回路で置き換えることにより、フィルタの段数を増やすことなく、より多くの直列共振点を設けることができ、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅を広げることができる効果がある。
【0070】
以上の実施例では
図7および
図11に示すように、フィルタの段数として3段構成を採用しているが、それ以上の段数の構成を採用してもよい。その場合、さらに多くの直列共振点を設けることができるため、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅をさらに広げることができる。
【0071】
実施の形態3.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を、
図12および
図13を用いて説明する。
【0072】
***構成の説明***
図12を参照して、本実施の形態に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0073】
本実施の形態では、
図1に示した実施の形態1の第2キャパシタ17の代わりに、第2インダクタ33と第2キャパシタ34とからなる直列共振回路35が設けられている。すなわち、低域通過フィルタ10は、1つの第2キャパシタ17の代わりに、1つの第2キャパシタ34を備えるとともに、1つの第2インダクタ33を備えている。この1つの第2インダクタ33は、2つの第1インダクタ13,15の接続部および接地間で1つの第2キャパシタ34に直列に接続されて、共振周波数が2つの並列共振回路18,19のいずれの共振周波数とも異なり帯域外の周波数となる1つの直列共振回路35を形成している。
【0074】
ここで、第2インダクタ33のインダクタンス値と第2キャパシタ34のキャパシタンス値とをそれぞれL9およびC9とする。帯域内のω0で等価的に第2キャパシタ17と同じキャパシタンス値Cを維持し、帯域外のω3で共振するためのL9とCとの関係およびC9とCとの関係は、実施の形態2と同様に、式10で求まる。
式10:
L9=1/C(ω3
2−ω0
2)
C9=C(1−ω0
2/ω3
2)
【0075】
このように、本実施の形態では、実施の形態1においてω1とω2とでそれぞれ並列共振する並列共振回路18および並列共振回路19に、さらにω3で直列共振する直列共振回路35を付加している。
【0076】
図13は、低域通過フィルタ10の損失特性例を示している。帯域内では低損失が維持され、帯域外のω1からω3にわたって大きな損失が得られる。
【0077】
以上のように、本実施の形態では、並列共振回路18、並列共振回路19および直列共振回路35を同時に用いることにより、フィルタの段数を増加させることなく、帯域内で低損失、帯域外で広帯域にわたって大きな損失が得られる小形な低域通過フィルタ10が実現できる。
【0078】
***実施の形態の効果の説明***
本実施の形態によれば、複数個の並列共振回路および直列共振回路がそれぞれ帯域内で低域通過フィルタ10に要求されるインダクタンスおよびキャパシタンスを維持しつつ、帯域外で並列共振回路および直列共振回路の特性を利用することで、段数を増やすことなく帯域外で大きな損失、帯域内では低損失特性が得られる。また、並列共振特性および直列共振特性を同時に利用することで、大きな損失が得られる帯域外での帯域幅をより拡大できるとともに、T形およびπ形構成の低域通過フィルタ10への適用も有効となり、設計の自由度が増える効果もある。
【0079】
***他の構成***
低域通過フィルタ10は、1つの第2キャパシタ34の代わりに、並列に接続された2つ以上の第2キャパシタを備えていてもよい。そして、低域通過フィルタ10は、1つの第2インダクタ33の代わりに、2つの第1インダクタ13,15の接続部および接地間で2つ以上の第2キャパシタに直列に接続されて、第2キャパシタごとの直列共振回路を形成する2つ以上の第2インダクタを備えていてもよい。各直列共振回路の共振周波数は、互いに異なり、かつ、2つの並列共振回路18,19のいずれの共振周波数とも異なる帯域外の周波数となる。3つ以上の並列共振回路が形成されてもよく、その場合、各直列共振回路の共振周波数は、互いに異なり、かつ、3つ以上の並列共振回路のいずれの共振周波数とも異なる帯域外の周波数となる。
【0080】
図14を参照して、本実施の形態の変形例に係る低域通過フィルタ10の構成を説明する。
【0081】
この変形例では、
図12の1個の直列共振回路35の代わりに、第2インダクタ36と第2キャパシタ37とからなる直列共振回路38と、第2インダクタ39と第2キャパシタ40とからなる直列共振回路41との並列回路が用いられている。
【0082】
ここで、第2インダクタ36のインダクタンス値と第2キャパシタ37のキャパシタンス値とをそれぞれL10およびC10とする。第2インダクタ39のインダクタンス値と第2キャパシタ40のキャパシタンス値とをそれぞれL11およびC11とする。さらに、直列共振回路38および直列共振回路41の共振周波数をそれぞれω3およびω4とするとともに、帯域内のω0における直列共振回路38および直列共振回路41との等価的なキャパシタのキャパシタンス値をそれぞれ
図8の低域通過フィルタ90を構成する第2キャパシタ17の1/2、すなわち、C/2とすると、L10、C10、L11およびC11は式10と同様に、式11で求まる。
式11:
L10=2/C(ω3
2−ω0
2)
C10=C(1−ω0
2/ω3
2)/2
L11=2/C(ω4
2−ω0
2)
C11=C(1−ω0
2/ω4
2)/2
【0083】
以上のように、この変形例では、直列共振回路35をω3で共振する直列共振回路38とω4で共振する直列共振回路41とに置換することで、フィルタ段数を増やすことなく、帯域外のω1からω4にわたって大きな損失が得られる帯域幅をさらに拡大できる効果がある。