【解決手段】液透過性のトップシート25と、液不透過性のバックシート30と、トップシート25とバックシート30との間に配置された吸収体1と、を備え、吸収体1は、起毛面11a及び非起毛面11bを有し、非起毛面11bがトップシート25を臨むように配置される基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、基体不織布11の起毛面11aを覆う親水性シート20と、を含む高吸収性シート10を、備え、親水性シート20は、曲げこわさが0.02gf・cm
前記親水性シートは、その幅方向両端面が前記トップシートと前記基体不織布との間で対向し、かつ前記基体不織布の前記起毛面とともに前記基体不織布の幅方向両端面を覆うように内三つ折りされた立体形状を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
前記親水性シートは、幅方向両端部が前記基体不織布の前記非起毛面を覆って重なり合うように、それぞれ幅方向に延伸され、前記重なり合う幅寸法が、前記吸収体の幅寸法の5%以上50%以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。
図2は、吸収性物品50中の基体不織布11を示す。
図3は、吸収性物品50中の、高吸収性ポリマー12を固着担持させた基体不織布11を示す。
図4は、吸収性物品50中の吸収体1を示す。
図5は、吸収体2を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品が得られる
【0017】
吸収性物品50は、
図1に示すように、これを着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート25と、トップシート25に対向して配置され、これを着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート25とバックシート30との間に配置された吸収体1と、トップシート25の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体1はトップシート25とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート25を通して吸収体1に吸収及び保持される。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
吸収性物品50は、吸収体1がフラッフパルプを含有せず、かつ吸収性能が良好で繰り返しの体液吸収でもゲルブロッキング等による吸収速度の低下が起こりにくいものであることから、さらさらとした心地よい肌触りを維持し、着用感、フィット感が良好で、着用中の違和感がなく、着用中の違和感がない上に、体液を素早く吸収し、体液の拡散性、及び吸収速度に優れたものとなる。さらに、吸収性物品50は、起毛面11aに高吸収性ポリマー12を固着担持させた基体不織布11と、親水性シート20としてパルプ含有不織布と、を所定の構造で組み合わせて用いた吸収体1を備えることで、体液を保持した状態での液戻りだけでなく、着用者が体液を排出した直後で体液保持が十分になされていない状態でも液戻りが顕著に抑制されるという利点を有している。
【0019】
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート25、吸収体1、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート25は、吸収体1に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体1を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート25は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0021】
また、トップシート25には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート25には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0022】
強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート25の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート25の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体1へと誘導するために必要とされる、吸収体1を覆う形状であればよい。
【0023】
(吸収体)
本実施形態の吸収体1は、
図2〜
図4に示すように、高吸収性ポリマー12を担持した基体不織布11と、親水性シート20と、を所定の立体構造で組み合わせて用いた高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)10を備える。基体不織布11は、一方の表面が起毛面11a及び他方の表面が非起毛面11bであり、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持されている。高吸収性シート10において、基体不織布11は、非起毛面11bがトップシート25を臨むように配置されている。親水性シート20は、曲げこわさが0.02gf・cm
2/cm以上であり、かつウェット強度が10N/50mm以上であるパルプ含有不織布を含み、基体不織布11の起毛面11aを覆う。ここで、曲げこわさ及びウェット強度(湿潤時の引張強度)は後述の方法で測定される値である。なお、吸収体1の全面又は一部の表面にエンボス加工等を施してもよい。
【0024】
親水性シート20は、基体不織布11の起毛面11aを覆う平坦なシート状の立体形状を有し(親水性シート20の第1実施形態)、好ましくは基体不織布11の起毛面11aと共にその幅方向両端面11A、11Bを覆うように、内三つ折りされた立体形状を有し(親水性シート20の第2実施形態)、より好ましくは
図4に示すようにその幅方向両端面20a、20bがトップシート25と基体不織布11との層間で対向して基体不織布11の非起毛面11bの幅方向両端部周辺を覆い、かつ基体不織布11の起毛面11aと共にその幅方向両端面11A、11Bを覆うように、内三つ折りされた立体形状を有する(親水性シート20の第3実施形態)。さらに、親水性シート20の第3実施形態において、
図5に示すように、親水性シート20の幅方向両端面20a、20bがトップシート25と基体不織布11との層間で重なり合っていてもよい(親水性シート20の第4実施形態)。
【0025】
本実施形態の吸収体1は、その長手方向の寸法が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、又は150mm以上500mm以下の範囲である。また、吸収体1の幅方向の寸法Dは、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、又は60mm以上400mm以下の範囲である。
【0026】
本実施形態では、親水性シート20は、前述のように、基体不織布11の起毛面11aを覆い、好ましくは基体不織布11の起毛面11a、及び基体不織布11の幅方向両端面11A、11Bを覆い、より好ましくは基体不織布11の起毛面11a、基体不織布11の幅方向両端面11A、11B、及び基体不織布11の非起毛面11bの幅方向両端及び長手方向に延びる周辺領域を覆う。本実施形態によれば、起毛面11aに高吸収性ポリマー12を固着担持した基体不織布11と、親水性不織布20としての、曲げこわさ(曲げ剛性)が0.02gf・cm
2/cm以上の範囲又は0.02gf・cm
2/cm以上0.6gf・cm
2/cm以下の範囲であり、かつウェット強度が10N/50mm以上の範囲又は10N/50mm以上70N/50mm以下の範囲であるパルプ含有不織布と、を組み合わせて所定の立体構造で用いることにより、吸収体1が薄さを維持しつつ、柔らか過ぎず、適度な柔軟性と剛性とを持ち、着用感、フィット性が向上するだけでなく、吸収体1の体液吸収後の強度が増し、着用時又は体液吸収後に吸収性物品50を身体から取り外すときに、吸収体1の破れ、破損等が生じず、清潔に取り外し得る。また、上述のように、吸収体1が適度な剛性を有し、生産時に操業スピードを高めても、破れ等が非常に発生し難いことから、生産効率や歩留まりを向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、高吸収性シート10において、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を固着担持すると、高収性ポリマー12が起毛面11aと起毛繊維11xとで支持されることから、ホットメルト接着剤の使用量を低減化できるとともに、高吸収性ポリマー12の高密度化が抑制され、高吸収性ポリマー12の周囲に該ポリマー12が体液を吸収して膨張可能な空間を形成することができる。また、体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマー12同士が結着したゲルブロッキングも非常に発生しにくい。その結果、吸収体1全体としての体液拡散性、及び体液吸収速度が高くなり、ホットメルト系接着剤に由来するゴワゴワ感が生じにくい。また、吸収体1の構成部材である基体不織布11の起毛面11aが親水性シート20としてのパルプ含有で覆われていることから、吸収体1全体に体液が均一に行き渡り、吸収体1全体に分布する高吸収性ポリマー12を満遍なく用いて体液を効率よく吸収できる。したがって、吸収体1を備える吸収性物品50は、体液の拡散性や吸収速度が高く、体液吸収性に優れ、着用感の良好なものとなる。
【0028】
また、本実施形態によれば、吸収体1は基体不織布11の非起毛面11bがトップシート25を臨むように構成されている。また、
図5に示す吸収体2のように、基体不織布11の非起毛面11bを、親水性シート20の幅方向両端20a、20bを延伸させて重ね合わせて塞ぐように構成することにより、体液の拡散性及び吸収速度がより一層顕著に向上する(親水性シート20の第4実施形態)。
以下、吸収体1及びその各構成部材について説明する。
【0029】
(基体不織布)
図2に示すように、基体不織布11の片側表面11aは、基体不織布11を構成する繊維11xが起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート10に適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上させることができる。また、基体不織布11を上記のように起毛させることにより、基体不織布11の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃により毛羽立たせる方法、ニードルパンチにより毛羽立たせる方法等が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布11の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。なお、基体不織布11のもう一方の面11bは本実施形態では非起毛面であるが、これに限定されず、繊維を起毛させてもよい。
【0031】
基体不織布11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、エアスルー不織布が好ましい。
【0032】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、20g/m
2以上200g/m
2以下の範囲、20g/m
2以上160g/m
2以下の範囲、又は20g/m
2以上80g/m
2以下の範囲である。
【0033】
基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が20g/m
2以上80g/m
2以下の範囲であり、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。前述の範囲でエアスルー不織布を構成する繊維の太さを調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0034】
(高吸収性シート)
本実施形態の吸収体1に用いる高吸収性シート10は、
図2〜
図4に示すように、片側表面11aが起毛した基体不織布11と、基体不織布11の起毛した部分の繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、所定の内三つ折り構造に構成された親水性シート20と、を有する。基体不織布11の起毛した部分の繊維11x間に高吸収性ポリマー12が分散して固着担持され、高吸収性ポリマー12周辺の基体不織布11に尿等の体液が適度に拡散又は保持されることにより、吸収性能が向上し、フラッフパルプを含有しなくても十分な吸収性能を確保することができる。
【0035】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマー12の高吸収性シート10における坪量は、例えば、150g/m
2以上800g/m
2以下の範囲である。とすることが好ましい。
【0036】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート10が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー12としては中位粒子径を有する粒子状の高吸収性ポリマー12を用いることが好ましい。該中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0037】
高吸収性ポリマー12は、ホットメルト接着剤により、基体不織布11の起毛した部分の繊維11x間に固着担持されていることが好ましく、基体不織布11の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー12の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m
2以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0038】
(親水性シート)
本実施形態の高吸収性シート10は、基体不織布11の起毛面11aと、親水性シート20とを接着することで、高吸収性ポリマー12の高吸収性シート10外への漏出を防止することができ、着用時の肌触りをも向上させる得る。親水性シート20としては、前述のように、曲げこわさ(曲げ剛性)が0.02gf・cm
2/cm以上の範囲又は0.02gf・cm
2/cm以上0.6gf・cm
2/cm以下の範囲であり、かつウェット強度が10N/50mm以上の範囲又は10N/50mm上70N/50mm以下の範囲であるパルプ含有不織布を用いる。なお、基体不織布11の起毛面11aを親水性シート20と接着する際には、基体不織布11と親水性シート20とを、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固定することが好ましい。
【0039】
親水性シート20の曲げこわさが0.02gf・cm
2/cm未満及び/又はウェット強度が10N/50mm未満では、吸収体1の剛性が低下し、体液を繰り返し吸収するときや、体液吸収後に身体から取り外すときに、吸収体1に破れ等を生じやすくなる傾向がある。親水性シート20の曲げこわさが0.6gf・cm
2/cmを超えるか及び/又はウェット強度が70N/50mmを超えると、吸収体1が硬くなりすぎて、吸収性物品50の着用性やフィット感が低下し、着用時の違和感が大きくなる傾向がある。曲げこわさ及びウェット強度は後述する方法により測定できる。
【0040】
(パルプ含有不織布)
親水性シート20として用いられるパルプ含有不織布は、不織布と、不織布の少なくとも一方の表面に積層されたパルプ繊維ウェブと、を含む(パルプ含有不織布の第1実施形態)。本実施形態では、例えば吸収体1中の体液拡散性等に寄与するパルプ繊維ウェブが基体不織布11の起毛面11aに対面し、例えば吸収体1への強度付与等に寄与する不織布が外方を臨むように、パルプ含有不織布が配置されることが好ましい。
【0041】
好ましいパルプ含有不織布は、不織布と、不織布の少なくとも一方の表面に一体化したパルプ繊維ウェブと、を含む(パルプ含有不織布の第2実施形態)。ここで、「一体化」とは、少なくとも吸収性物品50の使用前後に不織布とパルプ繊維ウェブとが部分的でも剥離してその機能が大きく低減することがない状態にあることを意味する。不織布の坪量は例えば7g/m
2以上30g/m
2以下の範囲であり、パルプ繊維ウェブの坪量は例えば30g/m
2以上50g/m
2以下の範囲である。不織布及びパルプ繊維ウェブの各坪量を前記範囲とすることにより、パルプ含有不織布の坪量を後述する適切な範囲に調整することが容易になる。
【0042】
パルプ含有不織布の中でも、水流交絡による一体化物が好ましい(パルプ含有不織布の第3実施形態)。該一体化物は、例えば、不織布の表面に、バインダーを用いることなく、木材パルプ繊維をウォータージェットで交絡し、一体化してパルプ繊維ウェブを設けたパルプ含有不織布である。このようなパルプ含有不織布では、不織布の一方の表面において不織布を構成する繊維と木材パルプ繊維とが絡み合ってパルプ繊維ウェブが一体化されると共に、木材パルプ繊維の一部が不織布を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になっており、不織布とパルプ繊維ウェブとが極めて強固に結合している(パルプ含有不織布の第4実施形態)。
【0043】
ここで使用される木材パルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維ウェブに積層される不織布としては特に限定されないが、パルプ含有不織布全体の強度や通液性等の観点から、合成樹脂製繊維から構成されたスパンボンド不織布が好ましく、合成樹脂製繊維としてポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布がより好ましく、ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布がさらに好ましい。
【0044】
パルプ含有不織布において、不織布とパルプ繊維ウェブとの重量割合(不織布/パルプ繊維ウェブ)は、例えば40/60重量%以上10/90重量%以下の範囲である。パルプ繊維ウェブの含有量が60質量%未満であると、パルプ含有不織布が風合いや汗の吸収に乏しく蒸れやすくなる傾向があり、90質量%を超えるとパルプ含有不織布が硬くなる傾向がある。なお、パルプ繊維ウェブと一体化される不織布としては、特に限定されないが、パルプ繊維ウェブに対する支持性、パルプ含有不織布全体の強度や柔らかさ、風合い等の観点から、スパンボンド不織布が好ましく、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布がより好ましく、ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布が更に好ましい。
【0045】
パルプ含有不織布の坪量は、製品の厚みや強度等の観点から、例えば、30g/m
2以上80g/m
2以下の範囲又は40g/m
2以上60g/m
2の範囲である。30g/m
2未満では,パルプ含有不織布が柔らかくなり過ぎて製造歩留まりが低下するとともに、体液吸収後に破れ易くなる傾向があり、80g/m
2を超えるとパルプ含有不織布が硬さや厚みを増すことで、吸収体1が硬くなり着用時の快適性を損なう傾向がある。
【0046】
パルプ含有不織布の曲げこわさ及びウェット強度は、例えば、パルプ繊維ウェブや不織布の材質、厚み、坪量やこれらの重量割合等を適宜選択することにより、所望の値に調整することができる。
【0047】
<吸収体の製造方法>
吸収体1の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。基体不織布11の片側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。
その後、高吸収性ポリマー12をホットメルト接着剤等により、基体不織布11の起毛した部分の繊維11x間に固着担持させる。その後、基体不織布11の起毛面11a側と親水性シート20とをホットメルト接着剤等で接着し、高吸収性シート10を得る。この高吸収性シート10を吸収体1として用いる。
【0048】
本実施形態では、トランスファシート(不図示)を備えていてもよい。トランスファシーは、例えば、トップシート25と吸収体1との間に配置される。トランスファシートとしては透液性を有する基材であれば特に限定されないが、例えば、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液の立体ギャザー40への移行を防止する観点から、エアスルー不織布が好ましい。トランスファシートの坪量は例えば20g/m
2以上の範囲又は20g/m
2以上60g/m
2以下の範囲である。
【0049】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体1が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0050】
強度及び加工性の点から、バックシート30の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0051】
(立体ギャザー)
また、吸収性物品50は、
図1に示すように、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート25の肌側面の両側端部に、一対の立体ギャザー40を備えている。吸収性物品50の幅方向における立体ギャザー40の幅方向一端は、バックシート30の肌側面の両側端部付近(又は非肌側面の両側端部付近)に固定され、その幅方向途中部はトップシート25の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート25に固定されない自由端40aとなるように、立体ギャザーシートが配される。この自由端40a付近に立体ギャザー用弾性伸縮部材(不図示)を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー40の自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端、トップシート25とバックシート30とを部分的又は全体的に接合した袋体の幅方向両端、トップシート25の肌側面の幅方向両端等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品は、立体ギャザーを含まない実施形態をも包含する。
【0052】
立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が使用される。
【0053】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体1をトップシート25とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート25とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート25の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0054】
図5に示す吸収体2は、吸収体1の変形例である。吸収体2は、吸収体1と同じ基体不織布11、高吸収性ポリマー12、及び親水性シート(パルプ含有不織布)20を使用しており、親水性シート20の幅方向の両端部20a、20bを更に幅方向に延伸し、基体不織布11のトップシート25側で重なり合うように構成している。親水性シート20の重なり合う部分(以下「重なり領域」ともいう)の存在により、吸収体2は、重なり領域の存在による着用感、フィット感の低下を起こさず、吸収体1と同等又はそれ以上の効果を示すだけでなく、吸収体2の剛性が向上し、体液の吸収能力が向上する。また、体液の拡散速度及び吸収速度がより一層高くなる。さらに、吸収体2の強度が一層向上し、体液吸収後に身体から取り外すときの吸収体2の破れや破損が一層防止され、また、繰返し吸収回数をさらに多くすることができる。
【0055】
吸収体2における重なり領域の幅寸法は、例えば、吸収体2の幅寸法Dの5%以上50%以下の範囲である。5%未満では、重なり領域を設けても、体液の拡散速度、及び吸収速度の向上効果が不十分になる傾向がある。また、50%を超えると、体液の拡散速度、及び吸収速度が向上しない一方で吸収体の固さが増して着用感やフィット感が悪くなる傾向がある。
【0056】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
まず、基体不織布としてエアスルー不織布(坪量30g/m
2、曲げこわさ0.018gf・cm
2/cm、幅方向寸法60mm、長手方向寸法300mm)を用意し、基体不織布の片側表面を回転ノコ刃で物理的に起毛させて(起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%)、高吸収性ポリマーを基体不織布の起毛した部分の繊維間に分散させ(坪量380g/m
2)、ホットメルト接着剤により固着担持させた。さらに、親水性シートとして表1記載のパルプ含有不織布(幅方向寸法140mm、長手方向寸法300mm)を用意し、基体不織布の起毛面側と、ホットメルト接着剤を塗布した親水性シートとを接着した。次に、親水性シートを内三つ折りして、親水性シートの両端部を基体不織布の非起毛面の上方で重なり合わせ、重なり領域をホットメルト接着剤で固定し、親水性シートにより、基体不織布の起毛面全体、幅方向両端面、及び非起毛面全体を覆い、
図5に示す構造を有する、実施例1の吸収体を得た。
【0059】
次に、トップシートとしてエアスルー不織布(坪量25g/m
2)を用い、トランスファーシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m
2)を用い、吸収体を起毛面がバックシート側を向くように用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量30g/m
2)を用い、立体ギャザーとして、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布(坪量15g/m
2)を用いて、実施例1の吸収性物品を作製した。
【0060】
(実施例2〜4)
親水性シートとして表1記載のパルプ含有不織布を使用した以外は、実施例1と同様にして吸収体及び吸収性物品を作製した。
【0061】
(実施例5)
親水性シートとして表1記載のパルプ含有不織布(幅方向の寸法90mm)を使用し、親水性シートを内三つ折りし、基体不織布の起毛面、幅方向両側端面、及び非起毛面の両側端部から幅方向各15mmの領域を親水性シートで覆い、ホットメルト接着剤で固定する以外は、実施例1と同様にして、
図4に示す構造を有する実施例5の吸収体を作製した。この吸収体は、基体不織布の幅方向中央部において、60mmの幅で長手方向に延びるように基体不織布の非起毛面が露出していた。
【0062】
(比較例1)
親水性シートとして表1記載のパルプ含有不織布を使用した以外は、実施例1と同様にして吸収体及び吸収性物品を作製した。
【0063】
(比較例2)
親水性シートとして表1記載のスパンボンド不織布を使用した以外は、実施例1と同様にして吸収体及び吸収性物品を作製した。
【0064】
(比較例3)
親水性シートとして表1記載のクレープ紙を使用した以外は、実施例1と同様にして吸収体および吸収性物品を作製した。
【0065】
(比較例4)
親水性シートとして表1記載のパルプ含有不織布(幅方向の寸法60mm)を使用し、折りたたまずに配した以外は、実施例1と同様にして吸収体及び吸収性物品を作製した。
【0066】
(比較例5)
エアスルー不織布(坪量25g/m
2)/高吸収性ポリマー(坪量140g/m
2)/エアスルー不織布(坪量30g/m
2)/高吸収性ポリマー(坪量140g/m
2)/スパンレース不織布(坪量20g/m
2)を積層した5層積層シート(幅方向の寸法はすべて60mm)を比較例5の吸収体として用い、これを実施例1と同様のトップシートとバックシートとの間に介在させて、比較例5の吸収性物品を作製した。なお、比較例5で用いた不織布については、実施例1で用いた基体不織布のような起毛処理は行わなかった。
【0067】
[測定項目]
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた各吸収体および吸収性物品を用いて、厚み、吸収速度、逆戻り量を測定し、その結果を表1に示した。
(厚み)
無荷重条件下、及び35gf/cm
2の荷重条件下における吸収体中央の厚みを測定した。
(吸収速度)
実施例1〜5及び比較例1〜5の各吸収性物品に、46g/cm
2の加圧下で、内径30mmの筒から0.9質量%の生理食塩水(37℃)40mlを注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度1回目として計測する。3分経過後、0.9質量%の生理食塩水(37℃)40mlを再度注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度2回目として計測する。数値が小さいほど、吸収性に優れることを意味する。
(逆戻り量)
実施例1〜5及び比較例1〜5の各吸収性物品に、生理食塩水100mlを注水し、注水してから90秒後に35gf/cm
2の荷重でろ紙を吸収体表面に圧着させ、1分間でろ紙に逆戻りした水分量を測定する。逆戻り量が少ないほど、吸収体がドライな状態であることを示す。
【0068】
さらに、実施例1〜5及び比較例1〜5の各吸収性物品について、吸収体破れ評価、操業性評価、及び官能評価を実施し、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示した。
(吸収体破れ評価)
実施例1〜5及び比較例1〜5の各吸収性物品を実験台に載置し、生理食塩水100mlを注水し、注水してから10分後に12kgのローラーを用いて、30mm/秒の速度で2往復させたのち、吸収性物品内の吸収体を確認した。
〇:吸収体に破れがなかった
×:吸収体が破れてSAPが飛び出していた
(操業性)
〇:操業のスピードを低下させることなく、通常の生産が可能であった。
△:操業のスピードは通常に比べて、1%以上10%以下低下した。
×:操業スピードは通常に比べて、10%を超えて低下した。
(官能評価)
8人のパネラーに実施例1〜5及び比較例1〜5の各吸収性物品を着用してもらい、着用感(フィット感、やわらかさ)と吸収性(吸収性物品外への漏れの有無)について、「良い」又は「悪い」の2択で官能評価を行った。着用者は8時間使用し、日常動作における評価を行い、その結果を表1に示した。
〇:「良い」を選んだ着用者が6人以上8人以下のとき
△:「良い」を選んだ着用者が3人以上5人以下のとき
×:「良い」を選んだ着用者が1人若しくは2人のとき、又は「良い」を選んだ着用者が1人もいないとき
【0069】
なお、各親水性シートの曲げこわさ(曲げ剛性)及びウェット強度は、以下の方法で測定したものである。
(曲げこわさ)
曲げこわさ(曲げ剛性)は、曲げ試験機(商品名:KES−FB2、カトーテック(株)製)の固定チャックと移動チャックに試料(100mm×100mm)を差し込んでセットして測定した。移動チャックが正側の最大曲率+2.5cm
−1まで移動し反転して曲率0を通過し、その後、負の最大曲率−2.5cm
−1まで移動し反転して曲率0で測定が終了し、このようにして1サイクルの曲率に対する曲げモーメントの往復曲線が得られる。曲げモーメントの往復曲線において、曲率0.5cm
−1と1.5cm
−1の間の傾きと曲率−0.5cm
−1と−1.5cm
−1の間の傾きの平均値を曲げこわさとした。
(ウェット強度湿潤引張強度)
ウェット強度(湿潤時の引張強度)は、JIS8135の引張試験方法に基づいて各各親水性シートのCD方向を測定した。
【0070】
【表1】