【解決手段】トップシート10とバックシート11と吸収体12と、長手方向400mm以上、幅方向140mm以上で、前方域6、排尿域7及び後方域8を有し、後方域幅は排尿域及び前方域より広く200mm〜350mm、後方域の吸収体幅は排尿域及び前方域の吸収体幅より広く160mm〜320mm、前方域幅と後方域幅の比が140:200〜200:350、前方域の吸収体幅と後方域の吸収体幅の比が125:160〜190:340、後方域の吸収体は、幅方向両外側に一対の耳部50、51を構成し、耳部の厚み方向両側又は一方に吸収シート14、16を備え、吸収シートは、複層のパルプ含有複合型不織布シート30の間に高吸収性ポリマー37を担持し、少なくとも耳部の曲げ剛性が5.0gf・cm
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、それらの間に配置された吸収体と、を有し、長手方向の長さが400mm以上であり、幅方向の長さが140mm以上である吸収性物品であって、
主に着用者の腹部に当接する前方域、主に前記着用者の股間部に当接する排尿域、及び主に前記着用者の背部に当接する後方域を有し、
前記後方域の幅は、前記排尿域及び前記前方域の各幅よりも広く、かつ200mm以上350mm以下であり、
前記後方域における前記吸収体の幅は、
前記排尿域及び前記前方域における前記吸収体の各幅よりも広く、かつ160mm以上320mm以下であり、
前記前方域の幅と前記後方域の幅との比(前記前方域の幅:前記後方域の幅)が140:200以上200:350以下であり、前記前方域の吸収体幅と前記後方域の吸収体幅の比が125:160以上190:340以下(前方域の吸収体幅:前記後方域の吸収体幅)であり、
前記後方域の前記吸収体は、幅方向両外側に広がる一対の耳部を構成し、
前記耳部のトップシート側及び/又はバックシート側に配設された吸収シートを備え、
前記吸収シートは、複層のパルプ含有複合型不織布シートと、その複層間に担持された高吸収性ポリマーと、を備え、
少なくとも前記耳部の曲げ剛性が5.0gf・cm2/cm以上である、ことを特徴とする吸収性物品。
前記パルプ含有複合型不織布シートは、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含み、かつ厚み方向の前記スパンボンド不織布側に突出する凸部と、厚み方向の前記パルプ繊維ウェブ側に凹む凹部と、が所定パターンで面方向に交互に設けられた凹凸部を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
前記吸収シートは、一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凸部の内部空間と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凸部の内部空間とが対面して高吸収性ポリマー保持空間を形成し、かつ一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の底面と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の底面と、が対面するように、一方及び他方の前記パルプ含有複合型不織布シートが配置され、前記高吸収性ポリマーは、前記高吸収性ポリマー保持空間内に封入されている、請求項2に記載の吸収性物品。
一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の前記底面と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の前記底面とが、前記高吸収性ポリマー保持空間内に封入された前記高吸収性ポリマーの体液吸収に伴う膨潤により離隔する程度に接合されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
前記凹凸部の前記パターンが、格子状、波状、エイコンパターン状、水玉模様状、鱗文様状又は市松模様状であるか、或いは複数の多角形が互いに等間隔で上下左右方向に配置されたパターンである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
前記パルプ含有複合型不織布シートは、前記スパンボンド不織布と、前記パルプ繊維ウェブと、の水流交絡一体化物であり、前記水流交絡一体化物は、少なくとも一部のパルプ繊維が前記スパンボンド不織布を構成する繊維及び/又は他のパルプ繊維と絡み合って、前記スパンポンド不織布の一方の面に固着した前記パルプ繊維ウェブと、前記スパンボンド不織布の他方の面から外方に露出したパルプ繊維と、を含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、体液を繰り返し吸収するような大型で大吸収容量のタイプのパッドが多く市販されている。とくに就寝時は体液が背中側から漏れ易いことから、アウターの紙おむつ(テープ止めタイプやパンツタイプ)に挿入して装着されるパッドには、背中側が幅方向に長いことが望まれている。しかしながら、従来のパッドは、紙おむつに挿入して装着する際に、紙おむつの立体ギャザー間への収まりが悪いことから、紙おむつ外への体液の漏れの原因になることがある。また、パッドの背中側が幅広となっている耳部を有することにより、耳部の側部がひらひらして紙おむつへの密着度が低下し、漏れや装着のしづらさの原因となることがある。就寝時に使用する際の漏れ防止や紙おむつへのパッドの装着性等の点でさらなる改良の余地が残されている。
【0008】
本発明の目的は、背中側が幅広構造でありながら、アウターである紙おむつへの装着性が優れ、紙おむつ外への体液の漏れを防止できる、インナータイプの吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、吸収性物品の後方部(背中側)の幅広部の両側部にパルプ含有不織布製のSAPシートを設けることで、所望の吸収性物品を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の吸収性物品に係る。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、それらの間に配置された吸収体と、を有し、長手方向の長さが400mm以上であり、幅方向の長さが140mm以上である吸収性物品であって、
主に着用者の腹部に当接する前方域、主に前記着用者の股間部に当接する排尿域、及び主に前記着用者の背部に当接する後方域を有し、
前記後方域の幅は、前記排尿域及び前記前方域の各幅よりも広く、かつ200mm以上350mm以下であり、
前記後方域における前記吸収体の幅は、
前記排尿域及び前記前方域における前記吸収体の各幅よりも広く、かつ160mm以上320mm以下であり、
前記前方域の幅と前記後方域の幅との比(前記前方域の幅:前記後方域の幅)が140:200以上200:350以下であり、前記前方域の吸収体幅と前記後方域の吸収体幅の比が125:160以上190:340以下(前方域の吸収体幅:前記後方域の吸収体幅)であり、
前記後方域の前記吸収体は、幅方向両外側に広がる一対の耳部を構成し、
前記耳部のトップシート側及び/又はバックシート側に配設された吸収シートを備え、
前記吸収シートは、複層のパルプ含有複合型不織布シートと、その複層間に担持された高吸収性ポリマーと、を備え、
少なくとも前記耳部の曲げ剛性が5.0gf・cm
2/cm以上である、ことを特徴とする吸収性物品。
(2)前記パルプ含有複合型不織布シートは、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含み、かつ厚み方向の前記スパンボンド不織布側に突出する凸部と、厚み方向の前記パルプ繊維ウェブ側に凹む凹部と、が所定パターンで面方向に交互に設けられた凹凸部を有する、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記吸収シートは、一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凸部の内部空間と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凸部の内部空間とが対面して高吸収性ポリマー保持空間を形成し、かつ一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の底面と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の底面と、が対面するように、一方及び他方の前記パルプ含有複合型不織布シートが配置され、前記高吸収性ポリマーは、前記高吸収性ポリマー保持空間内に封入されている、上記(2)の吸収性物品。
(4)前記凹部は、一の前記凸部とそれに隣り合う他の前記凸部との間に介在し、略溝状の断面視形状を有する、上記(2)又は(3)の吸収性物品。
(5)一方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の前記底面と、他方の前記パルプ含有複合型不織布シートの前記凹部の前記底面とが、前記高吸収性ポリマー保持空間内に封入された前記高吸収性ポリマーの体液吸収に伴う膨潤により離隔する程度に接合されている、上記(2)〜(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記凹凸部の前記パターンが、格子状、波状、エイコンパターン状、水玉模様状、鱗文様状又は市松模様状であるか、或いは複数の多角形が互いに等間隔で上下左右方向に配置されたパターンである、上記(2)〜(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記凸部の内部空間の高さは0.2mm以上3.0mm以下であり、前記凸部の底面の面積は7mm
2以上95mm
2以下であり、面積比(前記凹部の開口部面積:前記凸部の頂面面積)が38:62以上62:38以下である、上記(2)〜(6)のいずれかの吸収性物品。
(8)前記パルプ含有複合型不織布シートは、前記スパンボンド不織布と、前記パルプ繊維ウェブと、の水流交絡一体化物であり、前記水流交絡一体化物は、少なくとも一部のパルプ繊維が前記スパンボンド不織布を構成する繊維及び/又は他のパルプ繊維と絡み合って、前記スパンポンド不織布の一方の面に固着した前記パルプ繊維ウェブと、前記スパンボンド不織布の他方の面から外方に露出したパルプ繊維と、を含む、上記(2)〜(7)のいずれかの吸収性物品。
(9)前記スパンボンド不織布は、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布である、上記(2)〜(8)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、背中側が幅広構造でありながら、アウターである紙おむつへの装着性が優れ、紙おむつ外への体液の漏れを防止できる、インナータイプの吸収性物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
<吸収性物品>
以下、
図1〜
図3に示す吸収性物品1、2、3を総称して本実施形態の吸収性物品ともいう。
図1(a)及び(b)は、第1実施形態の吸収性物品1の平面図及び断面図である。
図4は、本実施形態の吸収性物品に用いられる吸収シート14、15、16、17(以下「吸収シート14〜17」と総称することもある)の概略構成を示す平面図である。
図5は、
図4に示すY
1−Y
1切断線における吸収シート14〜17の断面図である。
図6は、体液吸収後の吸収シート14〜17の模式断面図である。後述する
図2、
図3も含めて、これらの図面は、本実施形態の吸収性物品の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。また、
図1(b)、
図2(b)及び
図3(b)では、一部の構成部材同士が厚み方向に密接するように記載されているが、これに限定されず、これらの間に隙間が存在していても良い。
【0015】
本実施形態の吸収性物品は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できる。例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。これらの中でも、インナーとして挿入される本実施形態の吸収性物品と、アウターとしての各種紙おむつと、を組み合わせが好適である。ここで、紙おむつとしては、テープ止めタイプやパンツタイプが好ましい。
【0016】
第1実施形態に係る吸収性物品1は、
図1に示すように、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート11と、それらの間に配置された吸収体12と、を有している。本実施形態では、吸収体12の肌側面及び非肌側面は共にコアラップシート13A、13Bにより覆われている。本実施形態の吸収性物品1は、その長手方向において、吸収性物品1を着用したときに、着用者の腹部に主に当接する前方域6と、着用者の股間部に主に当接する排尿域7と、着用者の背部に主に当接する後方域8と、に区分されている。
【0017】
後に詳述するが、本実施形態の吸収性物品1の吸収体12は、後方域8において、吸収性物品1の幅方向両外側に延出する一対の耳部50、51を有し、耳部50、51とトップシート10との間にはそれぞれ吸収シート14、16が配設されている。吸収シート14、16は、それぞれ、複層のパルプ含有複合型不織布シート30と、その複層間に担持された高吸収性ポリマー37と、を備えている。また、後方域8における吸収体12の耳部50と吸収シート14、15との積層部分の曲げ剛性は5.0gf・cm
2/cm以上である。さらに、吸収性物品1は、必要に応じて、固定手段19、20を備えていてもよい。
【0018】
また、本実施形態の吸収性物品1は、以下の寸法的特徴を有している。
長手方向の長さaが400mm以上の範囲又は400mm以上720mm以下の範囲であり、幅方向の長さbが140mm以上の範囲又は140mm以上200mm以下の範囲である。また、後方域8の幅は、前方域6の幅及び排尿域7の幅よりも広く、かつ200mm以上350mm以下の範囲又はである。また、前方域6の幅と後方域8の幅との比は、前方域6の幅:後方域8の幅として、140:200以上200:350以下の範囲である。長さaを400mm以上の範囲、及び幅方向の長さbを140mm以上の範囲とし、後方域8の幅を前述の範囲とし、かつ前方域6の幅と後方域8の幅との比を前述の範囲とすることで、吸収性物品1を各種紙おむつ(アウター)のインナーとして用いた場合に、位置のズレや部分的なめくれ返り等が起こりにくく、紙おむつ内に安定的に収納される傾向がある。
【0019】
前述のように構成することで、後方域8(背中側)が幅広構造でありながら、アウターである紙おむつへの装着性が優れ、紙おむつ外への体液の漏れを軽減できる吸収性物品、言い換えれば、アウターの紙おむつへの漏れがほとんどなく、紙おむつへの良好な密着性が維持され、アウターと合わせて着用感に優れた吸収性物品が得られる。
以下、シート状又は板状の各構成部材について、順を追って詳しく説明する。各構成部材は、シート状又は板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体12に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材である。トップシート10としては液透過性を有するものを特に限定なく使用できるが、着用者の肌に当接する場合があることから、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォームフィルム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用い、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0021】
トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。エンボス加工や穿孔加工は、例えば公知の方法に従って実施できる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート10の坪量は、例えば、15g/m
2以上40g/m
2以下である。トップシート10の形状は特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体12へ誘導するために、吸収体12の平面視形状に応じて吸収体12を覆う形状であればよい。
【0022】
(吸収体)
本実施形態の吸収体12は、その肌側面及び非肌側面の両方をコアラップシート13A、13Bに覆われた状態で、トップシート10とバックシート12との間に配置され、例えば、体液を吸収及び保持する。本実施形態の吸収体12は、
図1に示すように、前方域6の途中部から排尿域7に向けて帯状に延び、排尿域7から後方域8の幅方向において幅方向内側に凹む部分円弧状の縁辺に沿って幅方向寸法が連続的に増加し、排尿域7から後方域8に向けて扇状に広がり、後方域8において幅方向両方外側に延出した一対の耳部50、51を構成している。
【0023】
吸収体12において、前方域6の吸収体12の幅と、後方域8の吸収体12の幅、との比は、前方域6の吸収体幅:後方域8の吸収体幅として、125:160以上190:340以下の範囲又は125:200以上160:260以下の範囲である。また、後方域8における吸収体12の幅は、前方域6及び排尿域7における吸収体12の各幅よりも広く、かつ160mm以上320mm以下の範囲又は200mm以上260mm以下の範囲である。吸収体12の各寸法を上述のように構成し、かつ吸収性物品1の各寸法を前述のように構成することで、後方域8において吸収体12に幅方向外側に延出する一対の耳部50、51を設けているにも関わらず、紙おむつ内部への挿入性、密着性が向上し、紙おむつ内部でのズレが起こり難く、紙おむつの非常に良好な着用感を損なわない吸収性物品1が得られる。
【0024】
本実施形態では、後方域8の吸収体幅を「後方域8の吸収体最大幅」、排尿域7の吸収体幅を「排尿域7の吸収体最大幅」とそれぞれ読み替えて、前述の寸法規定に合致するように構成される。なお、本実施形態では、吸収体12は、前述の扇状の平面視形状を有しているが、これに限定されず、吸収体12の幅方向の寸法が、排尿域7から後方域8に向けて、段階的に大きくなる実施形態、後方域8の排尿域7に隣接する側から離反する側に向けて段階的に又は連続的に大きくなる実施形態等をも包含する。また、吸収体12に第2実施形態に示すようなスリット又は溝を設けてもよく、さらにエンボス加工を施しても良い、
【0025】
吸収体12は、例えば、吸収基材と、吸収基材に担持される吸収成分と、を含む。
吸収基材には、例えば、生理用ナプキン、おむつ、尿パッド等に含まれる吸収基材を使用でき、例えば、フラッフパルプ、親水性シート等がある。フラッフパルプには、例えば、木材パルプ、合成繊維や、合成樹脂繊維等の非木材パルプ等の綿状の解繊物等がある。親水性シートには、例えば、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等がある。また、アセテートトウの開繊体を吸収基材として使用できる。
【0026】
吸収成分には、例えば、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう)等がある。本実施形態で使用する高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収及び保持し、体液の逆流を防止できる各種ポリマーを特に限定なく使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含む重合体が挙げられる。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、重量当たりの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0027】
高吸収性ポリマーの形態は特に限定されないが、ゲルブロッキング等の発生を抑制する観点から、好ましくは粒子状であり、より好ましくは中位粒子径を有する粒子状である。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は50μm以上550μm以下の範囲である。また、高吸収性ポリマーの坪量は、吸収体12の体液吸収能力(体液吸収量)と繰り返し体液を吸収した後の着用感とのバランス等の観点から、例えば90g/m
2以上240g/m
2以下である。吸収体12は、上記の吸収基材及び吸収成分を用いて、単層又は複層のシート状に構成される。これらの中でも、木材パルプからのフラッフパルプのウェブの親水性繊維マトリックスをSAP粒子と混合して形成したものが好ましい。
【0028】
吸収体12は、2層以上を重ねて用いてもよい。また、吸収体12の厚みは、吸収しようとする体液の種類や、吸収体12の形態や材質等に応じて適宜選択される。また、体液の吸収性、保持性や、吸収体12の形状保持性、SAPの脱落防止等の観点から、必要に応じて吸収体12全体を親水性シートで被覆してもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体12の形状を安定させるために、吸収体12をティシュー等の親水性シート(図示せず)で包んでもよい。
【0029】
(コアラップシート)
コアラップシート13A、13Bは、それぞれ吸収体12のトップシート10側の表面及びバックシート11側の表面を覆い、吸収体物品1の厚み方向において、吸収体12と吸収シート14、16との間に介在し、例えば、トップシート10を介して供給された体液を吸収体12の肌側面又は非肌側面の全体に略均一に行き渡らせるように機能する。コアラップシート13A、13Bの坪量は特に限定されないが、例えば40g/m
2以上の範囲又は40g/m
2以上60g/m
2以下の範囲である。
【0030】
コアラップシート13A、13Bには、透液性を有する基材であれば特に限定されないが、例えば、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液の立体ギャザー18への移行を防止する観点から、エアスルー不織布が好ましい。コアラップシート13A、13Bの平面視形状は、吸収体12の肌側面又は非肌側面の全体を覆うような形状であれば特に限定されない。本実施形態ではコアラップシート13A、13Bが上述の位置に配設されているが、本実施形態はコアラップシート13A、13Bが配設されていない実施形態をも包含する。
【0031】
(吸収シート)
吸収シート14、16は、
図4及び
図5に示すように、吸収体12の耳部50、51の肌側面に積層されている。吸収体12に耳部50、51を設け、かつ吸収シート14、16を配設することで、複数回の体液の外部、特に背中側への漏出を防止できる吸収性物品1が提供される。本実施形態は、耳部50、51のトップシート10側に吸収シート14、16を配設しているが、これに限定されず、耳部50、51のトップシート10側及びバックシート11側の両方に配設する実施形態、耳部50、51のバックシート11側のみに配設する実施形態、耳部50のトップシート10側及びバックシート11側のいずれか一方に配設し、耳部51のトップシート10側及びバックシート11側の他方に配設する実施形態等を包含する。
【0032】
本実施形態では、吸収シート14、コアラップシート13A、耳部50、及びコアラップシート13Bで構成される積層部分、並びに吸収シート16、コアラップシート13A、耳部51、及びコアラップシート13Bで構成される積層部分は、それぞれ、曲げ剛性が5.0gf・cm
2/cm以上の範囲又は5.0gf・cm
2/cm以上30gf・cm
2/cm以下の範囲である。曲げ剛性は、数値が低いほど、曲げやすいこと示す。曲げ剛性を5.0gf・cm
2/cm以上とすることで、吸収性物品1を紙おむつへの挿入作業を円滑に実施でき、また、吸収性物品1の紙おむつ内での装着安定性(ズレの防止等)が向上する。曲げ剛性は、例えば、耳部50、51、吸収シート14〜17、コアラップシート13A、13B等の厚みや材質を適宜選択することにより調整できる。
【0033】
曲げ剛性を測定する対象となる積層部分(以下単に「積層部分」ともいう)は、耳部50、51付近の厚み方向の積層部分の構成部材の配置により異なり、コアラップシート13A、13Bが配置されていない場合は、例えば、耳部50と吸収シート14、15との積層部分であり、コアラップシート13A(又はコアラップシート13B)のみが配置されている場合は、耳部50とコアラップシート13A(又はコアラップシート13B)と吸収シート14、15との積層部分であり、コアラップシート13A、13Bが配置されておらず、かつトップシート10(又はバックシート11)側の吸収シート14(又は吸収シート15)のみが配置されている場合は、耳部50と吸収シート14(又は吸収シート15)との積層部分である。耳部51の積層部分、耳部50の積層部分と同様である。
【0034】
曲げ剛性は、試料(所定の積層部分)を、曲げ試験機(商品名:KES−FB2、カトーテック(株)製)の固定チャックと移動チャックに差し込んでセットして測定される。移動チャックが正側の最大曲率+2.5cm
−1まで移動し反転して曲率0を通過し、その後、負の最大曲率−2.5cm
−1まで移動し反転して曲率0で測定が終了し、このようにして1サイクルの曲率に対する曲げモーメントの往復曲線が得られる。曲げモーメントの往復曲線において、曲率0.5cm
−1と1.5cm
−1の間の傾きと、曲率−0.5cm
−1と−1.5cm
−1の間の傾きの平均値を曲げ剛性とする。
【0035】
本実施形態の吸収シート14〜17は、それぞれ、2枚のパルプ含有複合型不織布シート30の間に高吸収性ポリマー37が封入された形態を有する。本実施形態のパルプ含有複合型不織布シート30の積層枚数は2枚であるが、これに限定されず、3枚以上に任意の積層枚数を選択できる。吸収シート14〜17の一実施形態では、パルプ含有複合型不織布シート30は、スパンボンド不織布31と、これに一体化されたパルプ繊維ウェブ32と、を含み、凹凸部40をその全面に有している。本実施形態では、パルプ含有複合型不織布シート30の全面に凹凸部40が形成されているが、これに限定されず、パルプ含有複合型不織布シート30の一部に形成されていてもよい。
【0036】
また、一実施形態の吸収シート14〜17は、2枚のパルプ含有複合型不織布シート30の各パルプ繊維ウェブ32同士が向き合って部分的に接触し、2枚のパルプ含有複合型不織布シート30の凸部35同士が対面して高吸収性ポリマー保持空間34を形成し、かつ2枚のパルプ含有複合型不織布シート30の凹部36の内部空間同士が対面して、それらのパルプ繊維ウェブ32側底面が接触面又は緩い接合面33となるように、2枚のパルプ含有複合型不織布シート30が積層されている。パルプ含有複合型不織布シート30を構成する材料については後述し、ここでは凹凸部40について先に説明する。
【0037】
本実施形態の凹凸部40は、
図4に示すように、略六角形状の頂面を有する凸部35と溝状の凹部36とが、所定パターンでパルプ含有複合型不織布シート30の面方向に交互に設けられた形態を有する。本実施形態のパターンとは、1つの凸部35と、その左右方向、上斜め左右方向、及び下斜め左右方向である周囲の6つの凸部35と、六角形の6辺のうちの1辺が略平行になり、かつ凸部35の周囲に沿って配置された凹部36により互いに離隔するように配置されたパターンであり、複数の多角形が互いに等間隔で上下左右方向に配置されたパターンの一実施形態である。ここで、多角形としては、例えば、略正三角形、略正方形、略長方形、略ひし形、略平行四辺形、略五角形、六角形以上の略多角形等が挙げられる。凹凸部40のパターンは本実施形態に限定されず、格子状、波状、エイコンパターン状(どんぐりの連続形状)、水玉模様状、鱗文様状、市松模様状等でもよい。また、2つ以上のパターンを組み合わせたパターンでもよい。いずれのパターンにおいても、一応の閉空間である高吸収性ポリマー保持空間34を形成するという点では同じであることから、同じ効果が得られることも自明である。
【0038】
本実施形態の凸部35は、パルプ含有複合型不織布シート30の厚み方向において、スパンボンド不織布31(又はトップシート10)側に突出し、その頂面が略六角形の平面視形状を有する平坦面である。凹部36は、パルプ繊維ウェブ32(又はバッグシート12)側に凹み、凸部35の縁辺に沿って折れ曲がりながら線状に延びる溝であり、体液の拡散経路になり易い。したがって、凹部36は、パルプ繊維ウェブ32が本来有する吸液性や体液拡散性をより一層向上させ、吸収シート14〜17中のほぼ全部の高吸収性ポリマー37を体液の吸収に利用できるようにする。その結果、吸収シート14〜17中の高吸収性ポリマー37の封入量を適切な範囲に調整可能になり、吸収体12の耳部50、51と吸収シート14〜17との積層部分の厚みを吸収性物品1の良好な着用感を損なわない程度に薄くすることができる。
【0039】
凹部36は、断面視が逆台形状(開口部の径が底面の径よりも大きい形状)、U字状、V字状等でもよい。凹部36の開口部の幅寸法X(
図4)は、凸部35の頂面の面積や平面視形状、凸部35と凹部36との配置パターン等に応じて適宜選択されるが、後述する緩い接合の状態を実現する観点からは、例えば0.3mm以上1.0mm以下である。
【0040】
一のパルプ含有複合型不織布シート30の凸部35(以下「一の凸部35」ともいう)と、他のパルプ含有複合型不織布シート30の凸部35(以下「他の凸部35」ともいう)とは、その内部空間同士が対面して高吸収性ポリマー保持空間34を形成する。高吸収性ポリマー保持空間34に封入された高吸収性ポリマー37は、高吸収性ポリマー保持空間34の内壁面であるパルプ繊維ウェブ32の表面に固着されてもよく、固着されていなくてもよく、一部が固着されかつ残部が固着されていなくてもよい。高吸収性ポリマー37の固着には、例えば、ホットメルト系接着剤等が用いられる。高吸収性ポリマー保持空間34内に封入される高吸収性ポリマー37としては、吸収体12に用いられるのと同じ高吸収性ポリマーを特に制限なく使用できる。
【0041】
凸部35の内部空間の高さは、高吸収性ポリマー保持空間34内への高吸収性ポリマー37の封入量と体液を最大に吸収した時点での吸収体11の厚みとのバランス、凸部35の形態保持性等の観点から、例えば、0.2mm以上3.0mm以下である。ここで、凸部35の内部空間の高さとは、複数の、接触面又は緩い接合面33を縦横方向に連結した仮想面に対して垂直方向の高さである。また、凸部35のパルプ繊維ウェブ32側開口部の面積は、高吸収性ポリマー37の封入量の調整等の観点から、例えば7mm
2以上95mm
2以下である。なお、凸部35が柱状体である場合は、凸部35の頂面の面積と、パルプ繊維ウェブ32側開口部の面積とは略等しい。
【0042】
また、一のパルプ含有複合型不織布シート30の凹部36(以下「一の凹部36」ともいう)のパルプ繊維ウェブ32(又はバックシート12)側の底面(以下「一の凹部36の底面」ともいう)と、他のパルプ含有複合型不織布シート30の凹部36(以下「他の凹部36」ともいう)のパルプ繊維ウェブ32(又はバックシート12)側の底面(以下「他の凹部36の底面」ともいう)とは、
図5に示すように対面して、接触面又は緩い接合面33となる。ここで、緩い接合とは、一及び他の凹部36の底面同士が接合し、各高吸収性ポリマー保持空間34を閉空間にするものの、高吸収性ポリマー37が体液を吸収して膨潤したときに、その体積膨張に伴って接合状態が解消し、一及び他の凹部36の底面同士が離反するような接合をいう。ここで、接合方法としては熱融着、超音波接着等の公知の方法を利用できる。また、緩い接合のためには、高吸収性ポリマー37の封入量を一定にした上で、接合条件を種々設定し、反復実験を繰り返し、高吸収性ポリマー37の封入量に応じて前述の緩い接合を実現し得る接合条件を適宜選択すればよい。
【0043】
パルプ含有複合型不織布シート30のスパンボンド不織布31側表面において、面積比(凹部36の開口部面積:凸部35の頂面面積)は、高吸収性ポリマー37の封入量と接合強度、拡散性確保等観点から、例えば、38:62以上62:38以下である。なお、凸部35、及び凹部36の各寸法は、例えば、ワンショット3D形状測定機(商品名:コントローラ VR−3000 Series、(株)キーエンス製)の解析アプリケーションを使用して求められる。例えば、前記解析アプリケーションを用いて凸部35と凹部36との高低差を測定すると、凸部35の高さや凹部36の深さが求められる。また、凸部35の中心間の距離を測定すると、凸部35の間隔が求められる。
【0044】
パルプ含有複合型不織布シート30のスパンボンド不織布31としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、その材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布31は、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。これらの中でも、強度、柔らかさ等の観点から、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布31が好ましく、構成繊維が全てポリプロピレン繊維であるスパンボンド不織布31がより好ましい。また、スパンボンド不織布31の坪量は特に限定されないが、引張強度と触感の柔らかさの観点から、例えば、7g/m
2以上20g/m
2以下である。
【0045】
パルプ繊維ウェブ32としては特に制限されないが、例えば、パルプ繊維を主体とする不織布(以下「パルプ不織布」ともいう)からなる層、パルプ繊維が互いに絡み合った層、パルプ繊維をごく少量の接着剤やバインダーで固着した層等が挙げられる。これらの中でも、強度、柔らかさ等の観点から、パルプ繊維が互いに絡み合った層が好ましい。ここで使用されるパルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維ウェブ32の坪量は特に限定されないが、均一性、触感、吸収性等の観点から、例えば30g/m
2以上70g/m
2以下である。
【0046】
パルプ繊維の含有量は、例えば、パルプ含有複合型不織布シート30全量の65質量%以上90質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布31であり、又は70質量%以上85質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布31である。パルプ繊維の含有量が65質量%未満であると体液の吸収性、拡散性等の面で安定したパルプ含有複合型不織布シート30が形成されない傾向があり、90質量%超えるとパルプ含有複合型不織布シート30が硬くなる傾向がある。
【0047】
パルプ含有複合型不織布シート30全体としての坪量は、例えば、40g/m
2以上80g/m
2以下、又は40g/m
2以上60g/m
2以下である。40g/m
2未満であるとパルプ含有複合型不織布シート30が柔らかくなりすぎる傾向があり、80g/m
2を超えるとパルプ含有複合型不織布シート30が硬くなりすぎる傾向がある。
【0048】
また、パルプ含有複合型不織布シート30について、テンシロンでの引張強度試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力(引張強度)は特に限定されないが、例えば、1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下である。
【0049】
パルプ含有複合型不織布シート30の厚さは、シックネスゲージ(商品名:ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK(登録商標)、(株)尾崎製作所製)を用いて測定したとき、例えば、0.25mm以上0.50mm以下、又は0.30mm以上0.45mm以下である。この範囲より低い値の場合、パルプ含有複合型不織布シート30が柔らかくなりすぎ、吸収性物品1の製造時にパルプ含有複合型不織布シート30を安定して固定できない傾向がある。また、この範囲よりも高い値の場合、パルプ含有複合型不織布シート30が硬くなる傾向がある。
【0050】
スパンボンド不織布31とパルプ繊維ウェブ32との一体化は、例えば、熱圧着法、水流交絡法、接着剤による一体化等の方法により実施できる。これらの方法の中でも、水流交絡法を利用すれば、外観、触感の柔らかさと強度の両立等を有するパルプ含有複合型不織布シート30が得られる。水流交絡法によれば、バインダーや接着剤を用いることなく、スパンボンド不織布31の非肌側表面に水流と共に木材パルプ繊維を吹き付けることで、パルプ繊維ウェブ32中にてパルプ繊維が絡み合うとともに、スパンボンド不織布31の構成繊維とパルプ繊維とが絡み合い、スパンボンド不織布31とパルプ繊維ウェブ32とが強固に一体化した水流交絡一体化物が得られる。
【0051】
このような水流交絡一体化物の一実施形態として、少なくとも一部のパルプ繊維がスパンボンド不織布31を構成する繊維(合成樹脂繊維)及び/又は他のパルプ繊維と絡み合って、スパンポンド不織布21の一方の面に固着したパルプ繊維ウェブ32と、スパンボンド不織布を厚み方向に貫通してその他方の面から外方に突出したパルプ繊維と、を含む水流交絡一体化物が挙げられる。この実施形態に前述の凹凸部40を形成した場合、凸部35及び凹部36のスパンポンド不織布31側表面にパルプ繊維が露出し、この露出したパルプ繊維が体液の誘導路となり、凹凸部40の立体構造(特に凹部36)とパルプ繊維ウェブ32とが相乗的に協働し、吸収体12全体への体液の極めて速やかな拡散及び吸収保持が得られ、吸収速度が高まり、ウェットバックが向上する。前記実施形態の水流交絡一体化物は、例えば、スパンボンド不織布31に吹き付ける水流の圧力を適宜調整することにより得ることができる。前記実施形態の水流交絡一体化物の中でも、強度、柔らかさ、吸収性の観点から、スパンボンド不織布31がポリプロピレンからなるスパンボンド不織布であることがより好ましい。
【0052】
パルプ含有複合型不織布シート30への凹凸部40形成は、例えば、エンボス加工により行われる。エンボス加工としては、例えば、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等の公知の方法が挙げられる。加圧及び/又は加熱と、エンボス加工と、を同時に実施してもよい。
【0053】
<吸収シートの作製>
吸収シート14〜17は、例えば、凸部35の頂面を下向きにした一のパルプ含有複合型不織布シート30を用意し、凸部35の内部空間に高吸収性ポリマー37を固着及び/又は非固着で収納し、これに、他のパルプ含有複合型不織布シート30を凸部35の頂面を上向きにして積層し、一及び他のパルプ含有複合型不織布シート30の4周の縁辺を接合し、更に必要に応じて、凹部36のパルプ繊維ウェブ32側底面同士を緩く接合することにより、作製することができる。一及び他のパルプ含有複合型不織布シート30の4周の縁辺、及び凹部36のパルプ繊維ウェブ32側底面同士を同時に接合することもできる。
【0054】
(バックシート)
バックシート11は、吸収性物品1の最も非肌側に配置され、例えば、吸収体12が保持する体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような通気性又は非通気性の液不透過性基材からなる。バックシート11用の液不透過性基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの積層体である複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布等が挙げられる。
【0055】
バックシート11の坪量は特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、例えば、15g/m
2以上40g/m
2以下である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート11に通気性を付与する形態がある。バックシート11に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法などが挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0056】
(立体ギャザー)
立体ギャザー18は、例えば、吸収性物品1の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために設けられる。本実施形態の立体ギャザー18は、幅方向一端がバックシート11の肌側面の幅方向両端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の幅方向両端部付近に固定され、幅方向他端が自由端となって、トップシート10の幅方向両端部周辺を覆い、かつ長手方向に延びる、立体ギャザーシート18aと、立体ギャザーシート18aの自由端付近に長手方向に延びるように配設された弾性伸縮部材18bと、を含み、立体ギャザーシート18aの幅方向途中部を起点にして折り曲げ自在に設けられた構成部材である。立体ギャザーシート18aの自由端近傍に弾性伸縮部材を配設することで、自由端に起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとしている。本実施形態では、立体ギャザー18の幅方向一端をバックシート11の肌側表面に固定しているが、これに限定されず、例えば、該幅方向一端をバックシート11の非肌側表面に固定してもよく、トップシート10とバックシート11とで構成される積層体に固定してもよく、さらに、トップシート10の肌側表面に固定してもよい。
【0057】
立体ギャザーシート13aとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド職不/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合織布等が挙げられる。弾性伸縮部材13bとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものが挙げられる。本実施形態の吸収性物品1は、立体ギャザー18を含まない実施形態をも含んでいる。
【0058】
(固定手段)
本実施形態の吸収性物品1におけるバックシート11は前方域6及び後方域8において、紙おむつのトップシート10への着脱自在な固定手段として、前方域6の固定手段20、及び後方域8の固定手段19をそれぞれ非肌側面に有していてもよい。排尿域7においても、トップシート10の幅方向両縁辺に沿うように固定手段を設けてもよい。固定手段を2箇所又は3箇所に有することにより、吸収性物品1と紙おむつを固定して余分な空間を発生させず、十分な定着性やフィット性を得ることができ、横モレを防止することができる。固定手段としては特に限定されないが、例えば、フックテープ、面ファスナー等が挙げられ、これらの中でもフックテープが好ましい。
【0059】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート12、吸収体11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート12とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定し、さらに立体ギャザー18を取り付けることで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0060】
図2(a)及び(b)は、第2実施形態の吸収性物品2の平面図及び断面図である。吸収性物品2は、吸収性物品1の変形例であり、吸収体12に代えて吸収体12Aを有する以外は、吸収性物品1と同じ構成を有している。吸収性物品2において、吸収性物品1と同じ機能を各構成部材については、吸収性物品1と同じ参照符号を付し、その説明を省略する。吸収体12Aは、その幅方向中央部に長手方向に延びかつ厚み方向に貫通した中空状のスリット21が設けられている
【0061】
スリット21は、吸収体12Aの幅方向中央部において、後方域8の排尿域7から離反する側の端部近傍から、前方域6の排尿域7に近接する側の端部近傍まで長手方向に延びている。スリット21を設けることにより、体液を繰り返し吸収するときに、吸収量や吸収速度の低下を抑制し、体液のわき漏れ特に背中側からの漏れを一層少なくすることができる。スリット21の開口部の平面視形状は本実施形態では長円状であるが、これに限定されず、長方形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形、一方向に長い楕円形状等でもよい。また、スリット21の数は本実施形態では1個であるが、これに限定されず、2個以上でもよい。また、スリット21の長さ(長手方向寸法)及び幅(幅方向寸法)は特に限定されないが、例えば、長さは100mm以上300mm以下の範囲であり、幅は10mm以上40mm以下の範囲である。長さ及び幅をこれらの範囲とすることにより、吸収体12の強度低下に伴う体液吸収量の低下を抑制しつつ、繰り返しの吸収を経ても吸収速度を維持することができる。
【0062】
図3(a)及び(b)は、第3実施形態の吸収性物品3の平面図及び断面図である。吸収性物品3は、吸収性物品1の変形例であり、吸収体12に代えて吸収体12Bを有する以外は、吸収性物品1と同じ構成を有している。吸収性物品3において、吸収性物品1と同じ機能を各構成部材については、吸収性物品1と同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
吸収体12Bは、Tの字を90°左回転させた横Tの字状の平面視形状を有し、後方域8においてTの字の短辺部分が幅方向両方外側に延出して一対の耳部50、51を構成している。また、Tの字の長辺部分は、後方域8におけるTの字の短辺部分の幅方向中央から、排尿域7を経て前方域6に向けて長手方向に延びている。このように構成しても、吸収性物品1、2と同様の効果が得られる。吸収体12Bの平面視形状は本実施形態では横Tの字状であるが、前述の吸収体12(吸収体12B)の各寸法範囲内で、横Tの字状の短辺を長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状に置き換えてもよく、横Tの字状の長辺をI字状、長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状に置き換えてもよい。
【0064】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0065】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に詳細に説明する。
【0066】
(実施例1)
トップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m
2)、バックシートとして通気性ポリエチレン系フィルム(坪量20g/m2)、コアラップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m
2)、2層のパルプ含有複合型不織布シートの間に高吸収性ポリマーを坪量150g/m
2で担持させた吸収シート(幅方向寸法e:70mm)、パルプ含有複合型不織布シートとしてハイドロニット不織布(商品名、米国キンバリークラーク社製、ポリプロピレン製スパンボンド不織布にパルプを水流交絡したシート、坪量40g/m
2)及び吸収体としてフラッフパルプとSAPと表1に示す割合での混合物を成形し、後方域に位置する領域に幅方向両外側に延出する一対の耳部を有するシート状物をそれぞれ用い、表1に示す寸法a〜eとし、かつバックシート側のコアラップシートとバックシートとの間には吸収シートを配置しない以外は、
図1と同様にして、実施例1の吸収性物品を作製した。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同じ材料を用い、表1に示す寸法a〜eとし、かつ
図1と同じ構造を有する、実施例2の吸収性物品を作製した。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同じ材料を用い、吸収体の幅方向中央部において、後方域から前方域に及び、表1に示す長さ寸法及び幅寸法の長円状のスリットを形成し、表1に示す寸法a〜eとし、かつ
図2と同じ構造を有する、実施例3の吸収性物品を作製した。
【0069】
(比較例1)
吸収シートを用いない以外は実施例1と同様にして、比較例1の吸収性物品を作製した。
【0070】
(比較例2)
吸収性物品の幅方向寸法bを300mmから400mmに変更する以外は、実施例1と同様にして、比較例2の吸収性物品を作製した。
【0071】
(比較例3)
吸収体を、耳部を設けた吸収体から、幅160mmのストレート型(長方形)の吸収体に変更する以外は、比較例1と同様にして、比較例3の吸収性物品を作製した
【0072】
(官能評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3の吸収性物品であるパッドを紙おむつのインナーとして、日常的に紙おむつを着用するパネラー10名に一晩(10時間)着用してもらい、排尿吸収後の装着時の違和感と紙おむつ外へ漏れ感の良否について以下の基準で評価した。
〇:「吸収後に装着時の違和感がほとんどなかった」「紙おむつ外への漏れがほとんどなかった。」が8人以上10人以下のとき
△:「吸収後の装着時の違和感が多少あった」「紙おむつ外への漏れが多少あった」が5人以上7人以下のとき
×:「吸収後の装着時の違和感があった」「紙おむつ外への漏れがあった」がいないか4人以下のとき
【0073】
【表1】