【解決手段】噴霧装置1は、空気の導入口3d及び排出口3cを有し、水溶液を収容可能な霧化容器3と、霧化容器3内に設けられ、水溶液に超音波振動を加えて霧化する超音波霧化ユニット5と、霧化容器3の導入口3dに空気を供給する送風機7と、霧化容器3に供給する水溶液を貯蔵するタンク4と、タンク4から水溶液を霧化容器3に連続的に供給するポンプ8と、霧化容器3からタンク4に水溶液を還流させるパイプ11と、を備える。パイプ11の先端が霧化容器3の内側の底面から上方に突出し、霧化容器3内でオーバーフローした水溶液をパイプ11に流入させるようにして霧化容器3内の液面高さを一定に維持するとともに、液面高さを調節可能とした。
前記パイプの先端にねじ山及びねじ溝が形成され、前記ねじ山及びねじ溝にねじ結合するパイプ部材を備え、前記パイプ部材により前記液面高さを調節可能とした請求項1記載の噴霧装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の噴霧装置では、霧化粒子の粒径が噴霧運転中に変動したり、所望の粒径の霧化粒子の発生効率が低下したりするおそれがあった。また、所望の粒径の霧化粒子を所望の範囲にまで放出するための調整が難しい場合があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、所望の微細な粒子を安定して大量に発生させることができ、ひいては所望の粒径の霧化粒子を所望の範囲にまで放出するための調整を容易に行うことができる噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の噴霧装置は、空気の導入口及び排出口を有し、水溶液を収容可能な霧化容器と、
前記霧化容器内に設けられ、前記水溶液に超音波振動を加えて霧化する超音波霧化ユニットと、
前記霧化容器の導入口に空気を供給する送風機と、
前記霧化容器に供給する水溶液を貯蔵するタンクと、
前記タンクから前記水溶液を前記霧化容器に連続的に供給するポンプと、
前記霧化容器から前記タンクに前記水溶液を還流させるパイプと、
を備え、
前記パイプの先端が前記霧化容器の内側の底面から上方に突出し、前記霧化容器内でオーバーフローした前記水溶液を前記パイプに流入させるようにして前記霧化容器内の液面高さを一定に維持するとともに、前記液面高さを調節可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の噴霧装置においては、前記パイプの先端にねじ山及びねじ溝が形成され、前記ねじ山及びねじ溝にねじ結合するパイプ部材を備え、前記パイプ部材により前記液面高さを調節可能としたことが好ましく、また、前記霧化容器に空気の整流板を備えることが好ましく、さらに、前記水溶液が次亜塩素酸水であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の噴霧装置によれば、所定の微細な粒子の霧を安定して大量に発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の噴霧装置の実施形態を、図面を用いてより具体的に説明する。なお、以下の説明において上下方向は鉛直方向を指している。
【0012】
図1に本発明の一実施形態の噴霧装置1の正面図を示す。
図2に噴霧装置1の側面図を示す。
図1、
図2において、噴霧装置1は、フレーム2の上段に霧化容器3が固定され、下段に霧化容器3に供給する水溶液を貯蔵するタンクとしての給水タンク4が載置されている。霧化容器3は、上端に開口を有する容器本体3aと、容器本体3aの上端の開口を密閉可能な蓋3bを有している。噴霧装置1の運転時には上記容器本体3aの開口は蓋3bで閉じられており、メンテナンス時には、蓋3bは必要に応じて開けられる。
【0013】
容器本体3aの内側の底面には、超音波霧化ユニット5が固定されている。超音波霧化ユニット5は、一例では複数の超音波振動子が平面的に並列に配置されたものである。噴霧装置1の運転時には超音波霧化ユニット5は、容器本体3aに供給された水溶液中に浸漬され、この水溶液に超音波振動を加えることにより霧化させる。超音波霧化ユニット5の出力(電圧)は、後述する電源ボックス12により可変となっている。これにより噴霧粒径を調節することができる。
【0014】
蓋3bに排出口3cが形成されている。排出口3cの位置は、例えば超音波霧化ユニット5のほぼ直上の位置とすることができる。この排出口3cにダクト16が取り付けられて、霧化粒子を排出させる。ダクト16が蛇腹などで可撓性を有することにより、噴霧方向を自在に設定することができる。
ダクト16の先端に、必要に応じて着脱可能なノズル17を設けることができる。ノズル17は、先すぼまりの形状を有する中空な円筒状であり、例えばプラスチックからなる。ノズル17の先端を、はさみやカッター等で切除することによりノズル17の先端の開口径を変更することができ、これにより希望する範囲まで霧化粒子を到達させることができる。ノズル17の先端の開口径は、開口径の異なる複数のノズル17を用意しておき、所望の開口径のノズル17に交換することによっても変更することができる。
また、霧化粒子を小さくするために、風量を少なくすると、ダクト16における風量が低下し、霧化粒子を遠くまで飛ばすことが難しくなるところ、ノズル17の開口径の調節により、これを補うことができる。
【0015】
容器本体3aの側面に、空気の導入口3dが形成されている。この導入口3dにホース6の一端が接続されている。ホース6の他端は、フレーム2の下段に設けられた送風機7に接続されている。この送風機7により容器本体3a内にホース6を通して空気を連続的に供給できるようにしている。ホース6の途中に風量調節ダンパ18が設けられ、容器本体3a内に供給する風量を調節できるようにしている。風量調節は、風量調節ダンパ18の他、送風機のモータにインバータ等を設けて回転数を変更することによっても可能である。もっとも、機械式の風量調節ダンパ18を用いることにより、故障の少ない運転ができるので好ましい。
【0016】
容器本体3a内において、導入口3dと対向する位置に、垂直方向の板と、その垂直方向の板の下端に接続して水平方向に延びる板とを有し、
図1の正面図からみてL字形の断面をなす整流板3eが設けられている。送風機7から導入口3dを通して容器本体3aに導入された空気は、整流板3eにより図面中矢印で示す方向に整流されて超音波霧化ユニット5の上方の液面近傍を通過し、ダクト16に向かう。このように空気が整流されることにより、適切な粒径の噴霧粒子を効率よく生じさせることができる。整流板3eと超音波霧化ユニット5との位置関係は、整流板3eの垂直方向の板からみて、導入口3dに対向する側とは反対側の空間の底面に超音波霧化ユニット5が配置させるのが好ましい。
【0017】
フレーム2の下段で送風機7近傍にポンプ8が設けられている。ポンプ8に給水ホース9、10の一端がそれぞれ接続されている。給水ホース9の他端は給水タンク4内に挿入され、給水ホース10の他端は容器本体3aの例えば側面に接続され、ポンプ8の動作により給水タンク4内の水溶液を容器本体3a内に連続的に供給できるようになっている。ポンプ8は一例としてチューブポンプを用いることができる。もっとも、チューブポンプに限定されず、他の種類のポンプを用いることもできる。
【0018】
給水タンク4は、水位スイッチ15を備えることができ、例えば、給水タンク4内の水位が所定基準よりも下がったら、噴霧装置1の電源をオフにするようなスイッチとすることができる。
【0019】
水溶液を容器本体3aから給水タンク4に還流させるために、パイプ11が容器本体3aと給水タンク4とを接続して設けられている。パイプ11の容器本体3a側の先端部は、容器本体3aの底面に取り付けられて、容器本体3aの内側で更に上方に突出している。容器本体3aの内側からパイプ11の先端が突出している高さが、容器本体3aにおける水溶液の液面高さとなる。つまり、容器本体3aに供給された水溶液のうちパイプ11の先端から溢れた分はパイプ11内に流入してパイプ11を通して給水タンク4に戻される。したがって、ポンプ8により連続的に水溶液が容器本体3aに供給されていても、容器本体3a内の水溶液の液面高さは一定に維持される。
【0020】
容器本体3a内の水溶液の液面高さは、少なくとも超音波霧化ユニット5が水溶液に浸漬される高さである。また、後で詳述するようにパイプ11の先端までの高さを調節可能とすることにより、液面高さを調節可能としている。
【0021】
超音波霧化ユニット5、送風機7及びポンプ8を動作させるための電源ボックス12がフレーム2に取り付けられている。なお、
図2では、噴霧装置1の構造の理解を容易にするために、電源ボックス12を取り外した状態を示している。また、給水タンク4の水位スイッチ15も電源ボックス12に接続される。電源ボックス12は、超音波霧化ユニット5の印加電圧を調節することにより、出力を調節することができるようになっている。電源ボックス12は、コネクタを介して超音波霧化ユニット5、送風機7及びポンプ8の各電源ケーブルと接続されており、電源ボックス12がフレーム2から着脱可能になっている。電源ボックス12が着脱可能であることは、ひいては電源ボックス内の部品が故障しても、電源ボックス12の交換により容易に修理できることを意味する。
【0022】
フレーム2の下部にはキャスター13が取り付けられていて噴霧装置1を自在に移動可能としている。また、図には示していないが、フレーム2に装飾用のパネルを取り付けて、美観を向上させることができる。
【0023】
噴霧装置1は、電源ボックス12の動作スイッチをオンにすることにより、超音波霧化ユニット5、送風機7及びポンプ8が動作する。給水タンク4内の水溶液がポンプ8により給水ホース9、10を通して容器本体3aに連続的に供給される。容器本体3a内で、供給された水溶液は、超音波霧化ユニット5を浸漬させ、パイプ11の先端の高さまで水位が上昇する。パイプ11の先端の高さから溢れた水溶液は、パイプ11を通して給水タンク4に還流する。水溶液に浸漬された超音波霧化ユニット5が超音波振動により水溶液の微小な粒子を生じさせ、送風機7による空気の流れに乗せて噴霧粒子をダクト16から吐出させる。このとき電源ボックス12により超音波霧化ユニット5の電圧を調整して、噴霧粒子の粒径を調整することができる。
【0024】
噴霧装置1に用いられる水溶液は、空間除菌、空間殺菌に利用される水溶液を用いることができ、例えば、次亜塩素酸水や銀イオン水等を用いることができる。次亜塩素酸水は、例えばJIS B8701に規定された次亜塩素酸水生成装置やそれに準拠した次亜塩素酸水生成装置により製造された次亜塩素酸水を用いることができる。
【0025】
本実施形態の噴霧装置1の作用効果について以下説明する。
超音波霧化ユニット5の超音波振動子に加える印加電圧を変更することにより噴霧粒径を調節することができる。具体的に、電圧を高くすると粒径の大きなものの割合が増加する。電圧を低くすると粒径の大きなものの割合が減少する。もっとも、印加電圧を変更すると時間当たりの噴霧能力が変わる。
【0026】
また、送風機7の送風量を変更することにより、噴霧粒径を調節することができる。具体的に、風量を増加させると系内の流速が上昇することで、大きな粒径のものも、霧化容器から外部に放出される。風量を減少させると、大きな粒径のものは、霧化容器内で自重により落下するので、霧化容器から外に放出されず、その結果、空間への噴霧粒径は小さくなる。もっとも、送風量を変更すると、噴霧された粒子の到達領域が変わる。
【0027】
一般に、噴霧装置は、設置施設、設置環境、設置用途などによって、噴霧能力や噴霧領域は適切な条件が存在するところ、噴霧能力や噴霧範囲を適切に定めようとすると、適切な粒径の噴霧粒子を生じさせることが難しい場合があった。逆に、適切な粒径の粒子を生じさせる条件では、時間当たりの噴霧能力や送風量に制約がある場合があった。
【0028】
ここに、本発明者は、霧化容器3内における液面高さが、噴霧粒径に影響を及ぼすことから、液面高さの調整を、上述した印加電圧や送風量と組み合わせて噴霧粒径を調整する本発明を創案するに至った。超音波霧化ユニット5が浸漬された水溶液の、超音波霧化ユニット5から液面までの高さが高いほど大きな粒径の粒子の割合が減少し、逆に低いほど大きな粒径の粒子の割合が増加する。適切な液面高さを確保することで、細かな所望の噴霧粒子を得ることができる。したがって、液面高さの調整により、時間当たりの噴霧能力や送風量を最適化したうえで、さらに適切な粒径になるように容易に調整することができる。
【0029】
また、従来の噴霧装置では運転中に液面高さが次第に低下することにより、霧化粒子の粒径が変動したり、所望の粒径の霧化粒子の発生効率が低下したりすることがあったのに対して、本実施形態の噴霧装置1では、液面高さは、常に一定に維持することができるので、運転中に、霧化粒子の粒径が変動したり、所望の粒径の霧化粒子の発生効率が低下し
たりするおそれはない。
【0030】
本発明でいう液面高さは、霧化の原理からすると、上述したとおり超音波霧化ユニット5の超音波振動子の表面から液面までの高さのことであるが、超音波霧化ユニット5は、容器本体3aの内側の底面に固定されているので、液面高さを、容器本体3aの内側の底面から液面までの高さと定義しても、液面高さを調整することにより、噴霧粒子の粒径を調整できることには変わりがない。
【0031】
液面高さの調整は、例えば、以下のようにして実施される。前述したように、容器本体3aに供給された水溶液を給水タンク4に還流させるためのパイプ11の先端部は、容器本体3aの底面に取り付けられて、容器本体3aの内側で更に上方に突出している。このパイプ11の先端部の、容器本体3aの底面からの高さを調整することで、液面高さを調整することができる。より具体的には、
図3に、噴霧装置1のパイプ11先端近傍の拡大図を示すように、パイプ11の先端部に雄ねじのねじ山及びねじ溝を形成しておき、このねじ山及びねじ溝にねじ結合する雌ねじを有するパイプ部材14を用意する。所定の長さのものを用意してもよく、長さの異なるパイプ部材を複数用意してもよい。パイプ11先端に対してねじ結合するパイプ部材14の長さと、パイプ部材14を回転させることにより、パイプ11のねじのピッチに従ってパイプ部材14が軸線方向に移動する距離により、パイプ11の先端部の、容器本体3aの底面からの高さを調整することができる。
【0032】
本実施形態の噴霧装置1は、容器本体3aから給水タンク4に、オーバーフローした分の水溶液を還流させるためのパイプ11の先端に工夫を加えたシンプルな構造により液面高さを調整することができる。かかる態様によれば、液面高さを調節する手段が安価であり、故障が少ない。
【0033】
液面高さを調節する手段は、上述したパイプ部材14を用いるものに限られない。もっとも、噴霧粒子の粒径は、設置施設、設置環境、設置用途などによって変わり、液面高さの調整を、噴霧能力の調整や噴霧領域の調整と共に実施して適切な噴霧粒子の粒径とするが、噴霧装置1が特定の施設等に設置され、噴霧粒子の粒径が、いったん適切に調整された後は、大幅に液面高さを変更することは特に必要がない。よって、液面高さの調整手段として、運転中に随時可変にできるような手段としての、水位センサやパイプの昇降装置や位置制御装置などを必ずしも用いなくても済む。
【0034】
本実施形態の噴霧装置は、(1)液面レベルの連続調整、(2)超音波霧化ユニット5の印加電圧調整、(3)霧化粒子を置換させる風量の調整、の3つの組み合わせを適宜調整することで、ユーザーの使用環境に合わせた、霧化粒径と噴霧能力を得ることができる。さらに、霧化粒子の置換風量を少なくすると、霧化粒径は小さくなるが、反面、吹き出しノズル出口における吹き出し風量が低下してしまい、霧化粒子を遠くまで飛ばすことが難しくなるのに対して、本実施形態の噴霧装置1は、ダクト16の先端にテーパーコーン状のノズル17を取り付けることにより、所望の小さな霧化粒子を、遠くまで飛ばすことができる。
【0035】
次に本発明の別の実施形態について
図4〜6を用いて説明する。
図4に、本発明の別の実施形態の噴霧装置20の正面図を示し、
図5に、噴霧装置20の右側面図を示し、
図6に、噴霧装置20の左側面図を示す。なお、
図6においては、噴霧装置20の構造の理解を容易にするためフレーム2の一部の記載を省略している。
なお、
図4〜6の噴霧装置20において、
図1〜3を用いて説明した噴霧装置1と同一の部材については、
図1〜3と同じ符号を付しており、以下では重複する説明を省略する。
【0036】
図4〜6の噴霧装置20の、
図1〜3に記載された噴霧装置1との相違点は、送風機7からダクト16に接続するダクトホース21を備え、送風機7から容器本体3aに導入する風量と、送風機7からダクト16に導入する風量とを、風量調節ダンパ18及び風量調節ダンパ22により調整することができるようにしている点である。ダクトホース21は
図4の紙面でみて霧化容器3の背後に設けられている。前述したように、送風機7から容器本体3aに導入する風量を調節することにより、噴霧粒子の粒径を調節することができる。もっとも、風量により噴霧粒子の粒径を調節すると、ダクト16内の流速が低下して、噴霧粒子がダクト16から設置空間に拡散し難くなる場合があり得る。そこで、本実施形態の噴霧装置20は、ダクトホース21を備えて送風機7の風量の一部を、容器本体3aを通ることなく、ダクト16の出口近傍からキャリア空気として吹き出すことができるようにしている。これにより、上述したダクト16内の流速が低下して、噴霧粒子がダクト16から設置空間に拡散し難くなるおそれはない。すなわち、本実施形態の噴霧装置20は、
図1〜3に示した噴霧装置1が有するノズル17の代わりに、ダクトホース21を備えることにより所望の小さな霧化粒子を、遠くまで飛ばすことができる。もっとも、本実施形態の噴霧装置20は、更にノズル17を備えることもできる。
【0037】
ダクトホース21は、必要に応じてサイレンサー23を中間に備え、騒音を低下させることができる。サイレンサー23は、
図4〜6に示す例では円筒型を有している。
【0038】
以上、本発明の噴霧装置の実施形態を、図面を用いて説明したが、本発明の噴霧装置は、これまで説明した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、幾多の変形が可能であることは言うまでもない。