【実施例】
【0029】
本発明の実施形態となる耐水性薄膜付き金網研削砥石2の構成と作用を
図1〜
図9により説明する。先ず、
図1において、耐水性薄膜付き金網研削砥石2は、この金網円筒体3の上端側(基端部)3aが工具ホルダHの取付穴h0に保持される。工具ホルダHの中心孔hには、主軸アーバーのセンター孔(図示なし)からクーラント液となる研削液CO叉は研削気体CEが耐水性薄膜付き金網研削砥石2の金網円体3の上端側の基端部3aとこの中心空間に送り込まれる。上記金網筒体3の外周面(内周面も含む)には、耐水性薄膜(フイルム又はテープ状に加工されている)10が貼り付けられているから、金網筒体3の基端部3a内側から先端環状部3bに電着した砥粒Dへと研削液CO叉は研削気体CEが供給される。これで、耐水性薄膜10に防御されて、全ての研削液CO叉は研削気体CEが耐水性薄膜付き金網研削砥石2の先端部3bの砥粒DとワークWの加工点Pに対するトレパン(芯残し穴あけ)箇所に、100%確実且つ積極的に供給される構成になっている。
【0030】
上記耐水性薄膜付き金網研削砥石2の詳細構成を
図2により説明する。先ず、
図2(a)において、金網材を円筒形に形成した金網筒体3の内周面3cを耐水性薄膜10(詳細構成は後記する)のフイルム10aでダイヤモンド他の砥粒Dの上面に被覆している。該金網筒体の先端面3b及び内周面3cと外周面3dには、ダイヤモンド他の砥粒Dが電着されている。
【0031】
また、
図2(b)において、金網材を円筒形に形成した金網筒体3の外周面3dに電着した砥粒Dの上面には、耐水性薄膜10(詳細構成は後記する)のフイルム10aが被覆されている。該金網筒体の先端面3b及び内周面3cと外周面3dには、ダイヤモンド他の砥粒Dが電着されている。
【0032】
更に、
図2(c)において、金網材3aを円筒形に形成した金網筒体3の内周面3cと外周面3dは、耐水性薄膜10(詳細構成は後記する)のフイルム10aで被覆されている。該金網筒体の先端面3b及び内周面3cと外周面3dには、ダイヤモンド他の砥粒Dが電着されている。
【0033】
次に、
図3と
図4により、上記耐水性薄膜付き金網研削砥石2の金網筒体3における外周面3d(内周面3cも同じ)に、耐水性薄膜10のフイルム10aを被覆し、この剥がし方の作用を説明する。先ず、
図3において、金網材を円筒形に形成した金網筒体3の外周面3dには、超砥粒Dが電着されていて、この外周面3dはこの超砥粒Dを含めて耐水性薄膜10のフイルム10aで被覆している。
図3の拡大断面の矢線Eの領域が耐水性薄膜10のフイルム10aで被覆された状態を示し。矢線Fの領域が耐水性薄膜10のフイルム10aがワークWとの研削作用で剥がれて超砥粒Dの凸部が露出した状態を示す。
【0034】
ここで、
図4により、上記耐水性薄膜10のフイルム10aを、金網筒体3における外周面3d(内周面3cも同じ)に被覆する作用と、剥がし取られる原理作用を説明する。
図4において、鉛筆20の芯21は、耐水性薄膜10の1枚のフイルム10aを重ね合わせた物に相当する。即ち、鉛筆20の芯21は、黒鉛A1と粘土Bとを混錬して乾燥させて固めたもので、薄い黒鉛片A1がトランプのカードの如く多層化されている。この鉛筆20の芯21を表面3gがザラザラした凹凸紙3´に(金網筒体3における外周面3dや内周面3cに相当する)押し当て、左から右に擦り付けると、多層化している薄い黒鉛片A1が1枚ずつ剥がれて凹凸紙3´の表面3gに付着する。そして、消しゴム(図示無し)で、黒鉛片A1を擦り付けると、凸部の黒鉛片A1が剥がれ取れて、凹凸紙3´の表面3gが再び現れる現象と同じである。
【0035】
しかして、上記耐水性薄膜10のフイルム10aは、耐水性・耐油性・耐熱性を有する例えば黒鉛のグラファイトであり、少なくとも当該グラファイトと粘土との混練物をフイルム状に焼結固形化したフイルム状のシートである。このフイルム10aによると、金網筒体面に圧着又は接着又は焼結又は塗布の何れかにより固着され、金網筒体面に電着する砥粒Dが加工ワークWとの摩擦熱で剥ぎ取られると摩擦先端から粉末化し研削液又は研削気体に溶け込み、新たな砥粒先端を加工ワーク面に露出させる構成となっている。
【0036】
上記耐水性薄膜10のフイルム10aは、例えば炭素材のカーボンとしても良い。該炭素材のカーボンによる時は、少なくとも当該カーボンと粘土との混練物をフイルム状に焼結固形化したフイルム状のシートとしても良い。このフイルム10aによるときも、金網筒体面に圧着又は接着又は焼結又は塗布の何れかにより固着され、金網筒体面に電着する砥粒Dが加工ワークWとの摩擦熱で剥ぎ取られると摩擦先端から粉末化し研削液又は研削気体に溶け込み、新たな砥粒先端を加工ワーク面に露出させる構成となっている。
【0037】
上記耐水性薄膜10のフイルム10aは、黒鉛のグラファイトや炭素材のカーボンの素材や粘土との混練物をフイルム状に焼結固形化したフイルム状のシートに限定されず、天然黒鉛や人造黒鉛及びこの類似素材で、耐熱性の有る樹脂素材他の素材が適宜に適用可能である。要するに、耐水性・耐油性・耐熱性を有する黒鉛系やカーボン系に限らず、金網体の表面をシールド・閉塞し、金属面や硬い素材との摩擦で摩擦表面のみ素材が粉末状に剥がれる性質を具備した素材なら何でも適用可能である。
【0038】
上記金網筒体3は、
図5に示すように中実線材3e又は通孔を開けた中空線材3fからなる金網材を円筒に形成し、該先端面3bとこの外周部3dに砥粒Dを固着させてなる。勿論、金網体の外周・内周の全面に砥粒Dを電着させている。上記砥粒Dは、ダイヤ、CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等である。更に、上記砥粒Dは、
図5に示すように、金網筒体3の網目を構成すべく交差させた線材3e又は3fの表面に固着させ、上記網目の空間孔h3を所定寸法に定めて研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末を外部へ排出可能としている。
【0039】
上記金網筒体3は、
図6に示すように、耐水性・耐油性の耐水性薄膜10のフイルム10aを内外周面3c,3dに巻き込み、金網筒体の内外周面に圧着又は接着又は焼結又は塗布の何れかの手段により固着・被覆されている。そして、先端環状部3bはワークWとの加工摩擦でフイルム10aが粉末化され、砥粒Dが露出した状態を示している。
【0040】
上記構成からなる耐水性薄膜付き金網研削砥石2のワークWの加工点Pに対するトレパン(芯残し穴あけ)作用を、
図7〜
図9により説明する。先ず、
図7(a)において、金網研削砥石2だけで、金網筒体3の外周に耐水性薄膜10のフイルム10a(テープとも言う)が無いと、研削液COや研削気体CEは、金網筒体3の網目から漏れ、砥石先端の砥粒D及びワークWの加工点Pに届かず、加工不良を来す。
【0041】
これに対して、
図7(b)に示す如く、
図2(b)に見るように金網筒体3の外周面3dに耐水性薄膜10のフイルム10a(テープ)を備えていると、このフイルム10a(テープ)に誘導される研削液COや研削気体CEは、金網筒体3の外周面3dの外周に漏れず、金網筒体3内において、砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、研削精度や研削効率が完璧・飛躍的に改善される。そして、
図7(b)に示す如く、ワークWの板厚の途中加工において、研削液COや研削気体CEは砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、跳ね返される研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示す網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0042】
そして、
図7(c)に示す如く、ワークWの板厚を貫通加工するに至り、研削液COや研削気体CEは砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、加工片Cとなるトレパン(芯残し穴明け)と共に研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末を下方外部へ効率良く排出する作用が得られる。この時に、研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示すように、網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0043】
更に、
図9(a)に示す如く、ワークWの板厚の途中加工において、金網筒体3の内周面3cに耐水性薄膜10のフイルム10a(テープ)を備えていると、このフイルム10a(テープ)の外周面3d側の金網体内に誘導される研削液COや研削気体CEと、金網筒体3の中心側に誘導される多量の研削液COや研削気体CEとからなり、砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、研削精度や研削効率が完璧・飛躍的に改善される。
この時に、研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示すように、網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0044】
そして、
図9(b)に示す如く、ワークWの板厚を貫通加工するに至り、研削液COや研削気体CEは砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、加工片Cとなるトレパン(芯残し穴明け)と共に研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末を下方外部へ効率良く排出する作用が得られる。この時に、研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示すように、網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0045】
そして、
図9(c)に示す如く、金網筒体3の内周面3cと外周面3dに耐水性薄膜10のフイルム10a(テープ)を備えていると、このフイルム10a(テープ)の内周面3cと外周面3dとの金網体内に誘導される研削液CO又は研削気体CEと、金網筒体3の中心側に誘導される多量の研削液COや研削気体CEとからなり、砥石先端3bの砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、研削精度や研削効率が完璧・飛躍的に改善される。
この時に、研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示すように、網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0046】
そして、
図9(d)に示す如く、ワークWの板厚を貫通加工するに至り、研削液COや研削気体CEは砥石先端の砥粒DとワークWの加工点Pに100%届き、加工片Cとなるトレパン(芯残し穴明け)と共に研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末を下方外部へ効率良く排出する作用が得られる。この時に、研削液COや研削気体CEや研削屑や耐水性薄膜10の粉末等を、
図5に示すように、網目の空間孔h3を通過して外部へ効率良く排出する。
【0047】
以上のように、本発明の耐水性薄膜付き金網研削砥石によると、特に深穴研削加工や深い貫通孔加工において、加工点・研削点へのクーラント液(研削液又は研削気体)の供給が耐水性薄膜の誘導作用により無駄なく100%達成される。これで、研削屑の排出効率アップ、研削時間の短縮による研削効率が改善できる。即ち、クーラント液は、耐水性薄膜に誘導されて長身な金網筒体の基端部から先端部に電着した砥粒とその加工点に迄100%効率良く誘導・噴出されることで、研削効率が改善され、深穴研削加工や深い貫通孔加工での加工効率や研削効率アップ、研削屑の排出効率アップによる研削時間の短縮が図れる効果が得られる。
【0048】
ここで、
図8において、上記耐水性薄膜10のフイルム10a(テープ)の特性と、金網筒体3への固着方法、金網への金網線の編み込み等の技術手段を要約説明する。
01)テープは、防水・防油性・耐熱性を有しクーラント(研削液COや研削気体CE )を漏らさない。
02)テープは、ワーク加工の研削摩擦で粉末化しクーラント(研削液COや研削気体 CE)に溶ける。
03)テープは、超砥粒の刃先をワークとの摩擦で露出させ切れ味を損なわない。
04)テープは、トリノス(金網筒体3)の内径面に固着するが、外径、全面もある。
05)テープの固着は、圧着・接着・焼結・塗布などがある。
06)テープは、巻き取り式又は折り畳み式等で金網筒体に巻き付ける。
07)テープは、糸状のテープ糸にして金属線と編み込む方式がある。
等々の実施態様例が採用されている。しかしながら、この実施態様に限定されないこと、勿論である。