【課題】 射出成形金型からポリエチレン製のプリフォームを早期に離型しても、良好な中空容器を成形できる射出延伸ブロー成形機及びポリエチレン製容器の成形方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、5℃から25℃の温度範囲に冷却されたキャビティ型とコア型とを含む射出成形金型にポリエチレン溶融樹脂を射出充填してプリフォームを成形し、成形されたプリフォームをブロー成形金型に移送し、中空容器を成形し、プリフォームの温度が、前記射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、プリフォームをブローする射出延伸ブロー成形機及びポリエチレン製容器の成形方法に関する。
5℃から25℃の温度範囲に冷却されたキャビティ型とコア型とを含む射出成形金型を備え、前記射出成形金型に射出充填されたポリエチレン溶融樹脂からプリフォームを成形する射出成形部と、
前記射出成形部で成形された前記プリフォームをブローするブロー成形部と、
を備え、
前記プリフォームの温度が、前記射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、前記ブロー成形部は、前記プリフォームをブローする
射出延伸ブロー成形機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、容器の生産効率を高めるため、一連の成形サイクル時間を短縮可能な射出延伸ブロー成形機が、近年開発されている。ポリエチレン製容器の成形においても、成形サイクル時間の短縮が望ましい。しかしながら、射出成形金型に充填される溶融樹脂の温度は、通常250℃程度であるため、プリフォームの表面温度が金型設定温度(100℃近傍)に達するまで多くの時間を要する。
【0007】
従って、前記従来の成形方法によっては、射出成形金型からプリフォームを早期に離型した場合、前述のような不具合が生じる可能性がある(容器の偏肉やブローの際のプリフォームの破裂など)。そのため、従来の成形方法において、ポリエチレン製容器の成形サイクル時間を短縮することが難しい。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、射出成形金型からプリフォームを早期に離型しても、良好な中空容器を成形できる射出延伸ブロー成形機及びポリエチレン製容器の成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出延伸ブロー成形機は、
5℃から25℃の温度範囲に冷却されたキャビティ型とコア型とを含む射出成形金型を備え、前記射出成形金型に射出充填されたポリエチレン溶融樹脂からプリフォームを成形する射出成形部と、
前記射出成形部で成形された前記プリフォームをブローするブロー成形部と、
を備え、
前記プリフォームの温度が、前記射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、前記ブロー成形部は、前記プリフォームをブローする
ことを特徴とする。
【0010】
本発明のこの態様によれば、キャビティ型とコア型の温度を5℃から25℃の温度範囲に設定し、プリフォーム表面を急冷することで、プリフォーム外表面及び内表面に早期に結晶質のスキン層を形成することができる(特に、限定されるものではないが、形成される前記スキン層は、薄くて硬い状態にあると考えられる)。よって、溶融樹脂(プリフォーム)を射出成形金型に射出充填し、射出成形金型との接触によるプリフォームの冷却時間を短くしても、不具合なくプリフォームを離型することができる。
【0011】
また、本発明は、プリフォームの温度が、射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、ブロー成形部がプリフォームをブローする。そのため、本発明によれば、成形サイクル時間を短縮して良好なポリエチレン製容器を成形できる。ここで、プリフォームの温度測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、プリフォームから放射される赤外線量を赤外線検出カメラなどによって検出し、その赤外線量に基づき温度を測定する方法などが挙げられる。
【0012】
なお、以下に限定されるものではないが、プリフォームの温度が射出成形金型の型開完了後の最初の極小点に到達した際、スキン層は、結晶質状態から非晶質状態に転移すると考えられる。すなわち、本発明によれば、表面に結晶質のスキン層が形成された状態でプリフォームを離型することができ、且つ軟質の非晶質状態にスキン層が変化した時点又はその近傍でプリフォームをブローすることができる。そのため、早期に離型しても良好なポリエチレン製容器を成形できる。
【0013】
また、本発明に係る射出延伸ブロー成形機において、
前記射出成形金型内での前記プリフォームの冷却時間は、1秒から2秒であり、その後、前記プリフォームを離型することが好ましい。
【0014】
本発明のこの態様によれば、射出成形金型におけるプリフォームの冷却時間を前記範囲とし、極めて早期にプリフォームを離型しても、良好なポリエチレン製容器を成形することができる。
【0015】
更に、本発明に係る射出延伸ブロー成形機において、
前記ブロー成形部は、1.5から2.5の延伸倍率で前記プリフォームをブローすることが好ましい。
【0016】
本発明のこの態様によれば、プリフォームの延伸倍率を前記範囲とすることで、薄肉・長尺で良好なポリエチレン製容器を成形することができる。
【0017】
また、本発明に係るポリエチレン製容器の成形方法は、
5℃から25℃の温度範囲に冷却されたキャビティ型とコア型とを含む射出成形金型にポリエチレン溶融樹脂を射出充填してプリフォームを成形するステップと、
成形された前記プリフォームをブロー成形金型に移送し、中空容器を成形するステップと、
を含み、
前記プリフォームの温度が、前記射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、前記プリフォームをブローすることを特徴する。
【0018】
本発明のこの態様によれば、キャビティ型とコア型の温度を5℃から25℃の温度範囲に設定し、プリフォーム表面を急冷することで、プリフォーム外表面及び内表面に早期に結晶質のスキン層を形成することができる(特に、限定されるものではないが、形成される前記スキン層は、薄くて硬い状態にあると考えられる)。よって、溶融樹脂(プリフォーム)を射出成形金型に射出充填し、射出成形金型との接触によるプリフォームの冷却時間を短くしても、不具合なくプリフォームを離型することができる。
【0019】
また、本発明は、プリフォームの温度が、射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した時点±2秒の時間範囲内で、プリフォームをブローする。そのため、本発明によれば、成形サイクル時間を短縮して良好なポリエチレン製容器を成形できる。特に限定されるものではないが、前記プリフォームの温度が、前記射出成形金型の型開完了時点から最初の極小点に到達した際のスキン層の状態変化に関しては、前記と同様のことが推測される。また、プリフォームの温度測定方法に関しても、例えば、プリフォームから放射される赤外線量を赤外線検出カメラなどによって検出し、その赤外線量に基づき温度を測定する方法などが挙げられる。
【0020】
更に、本発明に係るポリエチレン製容器の成形方法において、
前記射出成形金型内での前記プリフォームの冷却時間を1秒から2秒とし、その後、前記プリフォームを離型することが好ましい。
【0021】
本発明のこの態様によれば、射出成形金型におけるプリフォームの冷却時間を前記範囲とし、極めて早期にプリフォームを離型しても、良好なポリエチレン製容器を成形することができる。
【0022】
更に、本発明に係るポリエチレン製容器の成形方法において、
前記ブロー成形金型で前記プリフォームを延伸ブローする際、前記プリフォームの延伸倍率を1.5から2.5とすることが好ましい。
【0023】
本発明のこの態様によれば、プリフォームの延伸倍率を前記範囲とすることで、薄肉・長尺で良好なポリエチレン製容器を成形することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、射出成形金型からプリフォームを早期に離型しても、良好な中空容器を成形できる射出延伸ブロー成形機及びポリエチレン製容器の成形方法を提供することができる。その結果、本発明によれば、成形サイクル時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1を詳細に説明する。初めに、
図1から
図3を参照して、射出延伸ブロー成形機1の全体構成を説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1の平面概略図である。また、
図2は、射出延伸ブロー成形機1の斜視図である。更に、
図3は、射出延伸ブロー成形機1の正面図(射出成形部10に対面した状態で射出延伸ブロー成形機1を見た図)である。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1は、射出成形部10、ブロー成形部20、取り出し部30の各ステーションを備える。射出成形部10、ブロー成形部20、取り出し部30の各ステーションは、互いに約120°の間隔を空けて周状に配置される。なお、射出成形部10に備わるホットランナー機構(図示しない)は、射出装置40と連結される。これにより、射出装置40から射出成形部10に溶融樹脂(ポリエチレン)が充填される。
【0028】
また、
図2及び
図3に示されるように、射出延伸ブロー成形機1は、前記各ステーションの上方に配置され、プリフォーム又は中空容器を次のステーションに移送するための回転板50等を更に備える。より詳しくは、回転板50は、中間基盤51内に設けられると共に、各ステーションの上方位置に至った段階で所定時間停止する。
【0029】
更に、回転板50の下面には、プリフォーム及び中空容器の口部を形成するためのリップ型11が取り付けられる。本実施形態において、リップ型11は、プリフォーム及び中空容器の口部を把持した状態で、これらを次のステーションに移送する。なお、射出延伸ブロー成形機1は、一連の動作を制御する制御部(図示しない)を備えることが好ましい。例えば、制御部の記憶領域(ROM)に、動作プログラムが記憶され、記憶された動作プログラムによって、射出成形部10、ブロー成形部20、取り出し部30、回転板50等における下記の動作が制御されることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1の動作例は、以下の通りである。まず、射出成形部10に備わる後述の射出成形金型10Mに溶融樹脂が充填されると、キャビティ型12内でプリフォームの胴部及び底部が成形されると共に、リップ型11内でプリフォームの口部が成形される。プリフォームの成形を終えた後、リップ型11及びコア型13が上昇し、リップ型11に口部が把持されたプリフォームが、射出成形金型10Mから離型する。最後に、所定位置まで上昇したリップ型11が停止し、射出成形金型10Mの型開が完了する。
【0031】
次に、回転板50が回転し、プリフォームの口部を把持したリップ型11は、ブロー成形部20に向かう。ブロー成形部20の上方位置にリップ型11が到達すると、リップ型11及びこれに把持されるプリフォームがブロー成形部20に向けて降下する。これにより、プリフォームがブロー成形部20に移送される。
【0032】
プリフォームがブロー成形部20に移送された後、ブロー成形部20に備わる後述のブロー成形金型20Mで、プリフォームが延伸ブローされる。これにより、プリフォームから中空容器が成形される。中空容器の成形を終えた後、ブロー成形金型20Mが開き、成形された中空容器がブロー成形金型20Mから離型する。その後、リップ型11が、中空容器の口部を把持した状態で上昇する。
【0033】
更に、回転板50が回転し、中空容器の口部を把持したリップ型11は、取り出し部30に向かう。取り出し部30の上方位置にリップ型11が到達すると、リップ型11及び中空容器が取り出し部30に向けて降下する。これにより、中空容器が取り出し部30に移送される。
【0034】
最終的に、取り出し部30において、リップ型11による中空容器口部の把持が解除され、中空容器が取り出し部30の容器取出口(図示しない)に向けて落下する。その結果、中空容器は、容器取出口を通過し、射出延伸ブロー成形機1の外部に取り出される。
【0035】
次に、
図4を参照して、本実施形態における射出成形部10を詳細に説明する。ここで、
図4は、射出成形部10に備わる射出成形金型10Mの垂直断面図である。
図4に示されるように、射出成形金型10Mは、リップ型11、キャビティ型12、コア型13により形成される。
【0036】
キャビティ型12は、射出成形部10内に固設されている。これに対して、回転板50が回転し、射出成形部10(キャビティ型12)の上方位置にリップ型11が至ると、回転板50を含む中間基盤51と共にリップ型11がキャビティ型12に向けて降下する。それと同時に、中間基盤51より上方に配設される上部基盤53に支持されるコア型13が、リップ型11及びキャビティ型12に向けて降下する。降下したコア型13は、リップ型11の内側を通過し、キャビティ型12の内部に挿入される。これにより、射出成形金型10Mが形成される。
【0037】
また、射出成形金型10Mが形成された際、
図4に示されるように、キャビティ型12の内側面とコア側13の外側面との間、及びリップ型11とコア型13との間に所定間隔の空間が形成される。射出装置40から射出成形金型10Mに射出されたポリエチレン製の溶融樹脂は、当該空間内で所定時間留め置かれる。これにより、溶融樹脂が冷却固化され、プリフォームが成形される。すなわち、当該空間は、プリフォーム成形空間10PSに対応する。
【0038】
本実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1において、プリフォーム成形空間10PSに溶融樹脂(プリフォーム)が充填された後、プリフォーム成形空間10PS内に充填されたプリフォームが所定時間留め置かれる。このとき、プリフォームの外表面はキャビティ型12と接触すると共に、プリフォームの内表面はコア型13と接触している。前述のように、約250℃程度まで加熱された溶融樹脂が射出成形金型10Mに充填され、プリフォーム内の熱がキャビティ型12及びコア型13に伝熱される。これにより、プリフォームの温度が下がる(プリフォーム充填後、プリフォームを射出成形金型10Mに留め置く時間及び過程を以下「冷却時間」及び「冷却過程」と言う。)。
【0039】
ここで、
図4に示されるように、射出成形金型10Mのキャビティ型12は、冷却媒体(本実施形態では、チラー水)の通路121を備える。通路121を通過する冷却媒体によって、キャビティ型12は、所定温度帯に冷却される。コア型13も、冷却媒体(本実施形態では、チラー水)の通路131を備え、通路131を通過する冷却媒体によって、所定温度帯に強制冷却される。
【0040】
このように、予め冷却された射出成形金型10M(キャビティ型12、コア型13)内に、溶融樹脂(プリフォーム)が充填されると、キャビティ型12及びコア型13に接触するプリフォームの外表面及び内表面が急冷される。その結果、キャビティ型12と接触するプリフォームの外表面及びコア型13と接触するプリフォームの内表面に、結晶質の硬質スキン層が速やかに形成される。そのため、射出成形金型10Mからプリフォームが早期に離型されても、離型の際のプリフォームの変形等に起因する種々の不具合を抑制できる。
【0041】
本実施形態において、キャビティ型12及びコア型13は、冷却媒体(特に限定されないが、例えば、チラー装置によって循環冷却される水)によって5℃から25℃の温度範囲に冷却されることが好ましい。また、キャビティ型12及びコア型13は、冷却媒体によって5℃から20℃の温度帯に冷却されることが更に好ましく、10℃から15℃の温度帯に冷却されることが更に好ましい。
【0042】
これに対して、キャビティ型12及びコア型13の温度が5℃を下回る場合、離型の際、プリフォームにおけるスキン層の厚みが想定以上に増え、プリフォームが過度に硬化する可能性がある。この場合、次のブロー工程において、設計通りの容器形状にプリフォームをブローできない可能性がある点で好ましくない。また、5℃を下回る温度にキャビティ型12及びコア型13を冷却する場合、例えば、チラー装置に加え、冷却能力の高い他の装置を用いなければ、当該温度まで冷却できない可能性がある。この場合、製品コストが高騰する点で好ましくない。
【0043】
同様に、キャビティ型12及びコア型13の温度が25℃を上回る場合、水温が常温より高いことから、例えば、チラー装置のみでは対応する温度に調整することが難しい。この場合も、チラー装置以外の他の装置を用いなければ、キャビティ型12及びコア型13を所望の温度に制御することが難しい。そのため、製品コストが過度に高騰する可能性がある点で好ましくない。
【0044】
射出成形金型10Mでのプリフォームの冷却時間は、特に限定されるものではないが、1秒から2秒であることが好ましい。前述の通り、キャビティ型12及びコア型13が、例えば5℃から25℃の温度範囲に冷却されているため、プリフォームの冷却時間を極めて短く設定しても、適度な硬さ・厚みを有するスキン層が、プリフォームの外表面及び内表面に形成される。これにより、射出成形金型10Mからプリフォームを早期に離型し、不具合のないプリフォームをブロー成形金型20Mに移送することができる。その結果、溶融樹脂の充填開始からプリフォームの離型までの時間を縮めることができ、成形サイクル時間を短縮することができる。
【0045】
次に、
図5を参照して、本実施形態におけるブロー成形部20を詳細に説明する。ここで、
図5は、ブロー成形部20に備わるブロー成形金型20Mの垂直断面図である。
図5に示されるように、ブロー成形金型20Mは、リップ型11、一対の割型であるブロー型21、底型22により形成される。また、ブロー成形部20は、延伸ロッド23、筒状のブローコア24、エア供給手段(図示しないエアコンプレッサ等)を更に備える。ここで、延伸ロッド23とブローコア24との間に、エア供給手段からのエアが通過する流路(間隙)25が設けられている。
【0046】
ブロー成形金型20Mに移送されたプリフォームは、延伸ロッド23によって、所定の延伸倍率(延伸後のプリフォームの長さ/延伸前のプリフォームの長さ)に延伸される。また、プリフォームの延伸とほぼ同タイミングで、エア供給手段から供給されるエアが、流路25を通過し、リップ型11に把持されるプリフォームの内側に排出される。これにより、プリフォームがブローされ、中空容器が成形される。
【0047】
プリフォームの延伸倍率は、特に限定されるものではないが、1.5以上であることが好ましい。また、プリフォームの延伸倍率は、2.5以下であることが好ましい。前述の通り、本実施形態におけるプリフォームは、適度な硬さ・厚みのスキン層を有するため、射出成形金型10Mから早期に離型された短尺のプリフォームから長尺の中空容器を成形しても、良好な容器を得ることができる。
【0048】
ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン)製容器における従来の成形方法の場合、プリフォームの温度を高く保つため、射出成形金型(キャビティ型、コア型)を100℃近傍(ポリエチレンの融点温度より僅かに低い温度)に温調していた。また、従来の成形方法において、射出成形金型に250℃前後の溶融樹脂を充填した後、これに溶融樹脂を接触させて100℃前後まで冷却していた。従来の成形方法によれば、長時間の冷却時間が必要である一方、プリフォーム表面に非晶質の厚いスキン層が形成され、ブローできる状態が確保される。しかしながら、従来の成形方法により得られるプリフォーム内の熱量は少なく、ブローの際に延び難い。そのため、延伸倍率が低く制限される(例えば、1.2倍)。これに対して、本実施形態におけるプリフォームは、5℃から25℃の温度範囲に冷やされた射出成形金型10Mによって急冷される結果、プリフォーム表面に結晶質の薄くて硬いスキン層が形成されると考えられる。これにより、短い冷却時間であってもプリフォームを容易に離型できる。また、離型後のプリフォームコア層の熱量が多く、溶融状態が保たれているため、ブローの際、プリフォームが延び易い。従って、従来に比べて延伸倍率を増やしても(例えば、1.5倍から2.5倍)、薄肉で良好なポリエチレン製容器を成形することができる。
【0049】
ここで、本発明者の研究により、例えば、5℃から25℃の温度範囲にある射出成形金型10M(キャビティ型12、コア型13)でポリエチレン製のプリフォームを冷却し、冷却されたプリフォームを射出成形金型10Mから離型すると、
図6の曲線S1に示されるように、射出成形金型10Mの型開完了から最初の極小点Pに到達するまで、プリフォームの温度が低下し、その後、プリフォームの温度が上昇することが確認された。これは、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の他の合成樹脂では現れない挙動である。また、
図6の曲線S2に示されるように、従来の100℃近傍に調整された射出成形金型により成形されたプリフォームの温度挙動とも異なる。
【0050】
本実施形態に係る射出延伸ブロー成形機1は、プリフォームの温度が、射出成形金型10Mの型開完了時点から最初の極小点Pに到達した時点±2秒の時間範囲内で、ブロー成形部20は、プリフォームをブローする。本実施形態によれば、前記タイミングでプリフォームをブローするため、成形サイクル時間を短縮し且つ良好な中空容器を成形することができる(詳細は、下記実施例を参照されたい)。換言すれば、本実施形態は、ポリエチレン製プリフォームに特有な温度推移に合わせたブロー工程を含むため、特にポリエチレン製容器の成形に適する。
【0051】
また、特に限定されるものではないが、例えば、5℃から25℃の温度範囲にある射出成形金型10Mにより成形されるポリエチレン製プリフォームの温度は、射出成形金型10Mの型開完了後5秒以内に最初の極小点Pに到達する傾向を有する。これに対して、射出成形金型を100℃近傍に調整した従来の射出成形金型により成形されるプリフォームは、射出成形金型の型開完了後6秒を超えた時点でブローされる。従って、本実施形態によれば、射出成形金型10Mの型開完了後ブローまでの時間を従来とほぼ同等とすることができる(場合によっては、本実施形態における型開完了後ブローまでの時間を従来に比べて短縮することができる)。前述のように、本実施形態において、射出成形金型10Mでのプリフォームの冷却時間を従来に比べ大幅に短縮することができることを併せ考えれば、本実施形態によって、成形サイクル時間を大幅に短くすることができる。
【実施例】
【0052】
以上説明した射出延伸ブロー成形機1において、具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0053】
実施例1(樹脂ペレット:高密度ポリエチレン樹脂,Marlex(登録商標),Chevron Phillips Chemical Company LP)、実施例2(樹脂ペレット:高密度ポリエチレン樹脂,InnoPlus(登録商標),PTT Polymer Marketing Company Limited)、及び比較例1(樹脂ペレット:高密度ポリエチレン樹脂,Marlex(登録商標),Chevron Phillips Chemical Company LP)のプリフォームに関し、射出成形金型10Mの型開完了時点からの温度推移を
図7に示す。
【0054】
ここで、
図7のグラフ横軸は、射出成形金型10Mの型開完了時点からの経過時間(秒)を示す(リップ型11及びコア型13の上昇が停止し、射出成形金型10Mの型開が完了した時点を0秒としている)。また、
図7のグラフ縦軸は、型開完了後の各時間におけるプリフォームの温度を示す。なお、本実施例の場合、射出成形金型10Mの正面と対向するよう配設された赤外線検出カメラを用いてプリフォームから放射される赤外線量を検出し、検出された赤外線量を温度に変換する方法によって、プリフォームの温度を測定した。このとき、測定対象のプリフォームは、キャビティ型12の直上にあるリップ型11により把持されている。
【0055】
図7に示されるように、実施例1(実線)及び実施例2(破線)のプリフォーム温度は、共に型開完了後5秒以内に最初の極小点Pに至った(実施例1の場合、約5秒。実施例2の場合、約3.5秒。)。これに対して、比較例1のプリフォーム温度は、型開完了後僅かの期間上昇し、その後降下した。すなわち、比較例1の温度推移において、極小点Pは現れなかった。
【0056】
改めて、射出成形金型10Mにより実施例1のプリフォームを成形し、更に当該プリフォームを離型した後、これをブロー成形金型20Mに移して中空容器を成形した。このとき、実施例1のプリフォームに関し、極小点Pに至った後、約0.35秒経過した時点で延伸ブローを行った(
図7のB1)。その結果、偏肉のない良好な中空容器が成形された。
【0057】
また、別途成形された実施例1のプリフォームに関し、極小点Pに至った後、約1秒経過した時点で延伸ブローを行った(
図7のB2)ところ、同様に、偏肉のない良好な中空容器が成形された。
【0058】
一方、射出成形金型10Mにより実施例2のプリフォームを成形し、更に当該プリフォームを離型した後、これをブロー成形金型20Mに移して中空容器を成形した。このとき、実施例2のプリフォームに関し、極小点Pに至った後、約1.5秒経過した時点で延伸ブローを行った(
図7のB3)。その結果、実施例1と同様に、偏肉のない良好な中空容器が成形された。
【0059】
次に、実施例1、実施例2、比較例1における成形条件及び成形時間を下表1に示す。ここで、表1の「ブロー開始時点」は、射出成形金型10Mの型開完了後、プリフォームがブローされるまでの時間を指す。なお、実施例1のブロー開始時点は、
図7のB1に対応する。また、実施例2のブロー開始時点は、
図7のB3に対応する。更に、比較例1のブロー開始時点は、
図7のB4に対応する。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示されるように、実施例1及び実施例2において、射出成形金型10Mでのプリフォーム成形時間(充填時間+冷却時間)及び離型からブロー開始までの時間が、比較例1に比べて大幅に短縮されても、良好な中空容器を成形することができた。その結果、従来(比較例1)に比べ、成形サイクル時間を短縮することができた。
【0062】
以上、本発明に係る実施形態を詳細に説明した。ただし、前記の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。