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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-172366(P2021-172366A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】粉粒体排出具
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/06 20060101AFI20211004BHJP
【FI】
   B65D83/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-76775(P2020-76775)
(22)【出願日】2020年4月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】小室 雅司
(72)【発明者】
【氏名】延壽 和魂
(72)【発明者】
【氏名】森田 敏弘
(57)【要約】
【課題】簡易構造で比較的精度が低い安価な排出操作センサーを用いても、定量の粉粒体の排出を検出する粉粒体排出具を提供する。
【解決手段】ローターの中心軸周りの回転により、定量計量室に貯留された定量の粉粒体を、排出口を通して排出する粉粒体排出具であって、ローターの鉛直方向の移動操作を検出する排出操作センサーを備える。排出操作センサーは、定量計量室に貯留された粉粒体を排出する際に粉粒体排出具を鉛直方向に振る習性を利用して、ローターの鉛直方向の移動から粉粒体の排出を検出するので、安価で簡易構造のセンサーを用いることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、
前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設された投入側プレートと、
前記投入側プレートの上方に連結し、内部の粉粒体貯留室が前記投入口に連通する筒状の粉粒体容器と、
前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、
前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、
前記ローターの前記中心軸周りの回転により、粉粒体貯留室から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出する粉粒体排出具であって、
前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出する排出操作センサーを更に備え、
前記排出操作センサーが前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出することを特徴とする粉粒体排出具。
【請求項2】
前記排出操作センサーは、 前記連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットと、前記連結軸の近傍の前記投入側プレート又は前記排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、
前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出することを特徴とする請求項1に記載の粉粒体排出具。
【請求項3】
前記排出操作センサーが検出した前記ローターの鉛直方向の移動操作情報を一時記憶する第1記憶手段と、
第1記憶手段が一時記憶した移動操作情報をワイヤレス送信する第1送信手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の粉粒体排出具。
【請求項4】
粉粒体容器の上端は、前記排出口を通して下方へ粉粒体を排出する排出姿勢に対して、天地を逆転させた倒立姿勢で自立可能な設置形状に形成され、
前記磁気センサーから検出される磁力を、前記倒立姿勢で前記磁気センサーから検出される第1磁場強度と前記排出姿勢で前記磁気センサーから検出される第2磁場強度との間に設定する磁力閾値と比較する比較手段を有し、前記磁気センサーから検出される磁力を監視するスリープモードと、前記磁気センサーと前記記憶手段と前記送信手段の動作を制御するランモードで動作するマイコンを更に備え、
前記マイコンは、前記磁気センサーから検出される磁力が、第1磁場強度から前記磁力閾値を越えたときにスリープモードからランモードに、第2磁場強度から前記磁力閾値を越えたときにランモードからスリープモードに移行することを特徴とする請求項3に記載の粉粒体排出具。
【請求項5】
前記ローターの前記中心軸周りの回転操作を検出する回転操作センサーを更に備え、
回転操作センサーは、前記ローターの前記定量計量室間を仕切る仕切部に、複数の前記定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、前記磁気センサーで構成され、
前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作の周期より長い周期で変化することから、前記ローターの前記中心軸周りの回転操作を検出することを特徴とする請求項2に記載の粉粒体排出具。
【請求項6】
前記排出操作センサーが検出した前記ローターの鉛直方向の移動操作情報と前記回転操作センサーが検出した前記ローターの前記中心軸周りの回転操作情報とを一時記憶する第2記憶手段と、
第2記憶手段が一時記憶した移動操作情報と回転操作情報とをワイヤレス送信する第2送信手段とを更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の粉粒体排出具。
【請求項7】
前記排出操作センサーは、前記ローターの鉛直方向の加速度を検出する第1加速度センサーで構成され、
第1加速度センサーで検出される前記ローターの加速度の向きが、前記ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出することを特徴とする請求項1に記載の粉粒体排出具。
【請求項8】
円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、
前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設された投入側プレートと、
前記投入側プレートの上方に連結し、内部の粉粒体貯留室が前記投入口に連通する筒状の粉粒体容器と、
前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、
前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、
前記ローターの前記中心軸周りの回転により、粉粒体容器から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出する粉粒体排出具であって、
前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと中心軸周りで相対位置決めされ、前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ローターの間で鉛直方向に移動自在に配設されるラチェット板と、
前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ラチェット板の間に配置され、前記ラチェット板を前記ローターの方向に付勢する付勢手段と、
前記ラチェット板と前記ローターの当接面に形成される一組のラチェット爪は、排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えるランニングフェースラチェット機構と、
前記ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越える際の前記ラチェット板の移動を検出する節度センサーを更に備え、
前記節度センサーが前記ラチェット板の移動を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出することを特徴とする粉粒体排出具。
【請求項9】
前記節度センサーは、 前記ラチェット板に取り付けられる第3マグネットと、前記ラチェット板の近傍の前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、
前記磁気センサーで検出される磁力が急激に変化することから、前記ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする請求項8に記載の粉粒体排出具。
【請求項10】
前記節度センサーは、 前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートの振動を検出する第2加速度センサーで構成され、
前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ラチェット板間が衝突することによる振動を第2加速度センサーが検出することから、前記ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする請求項8に記載の粉粒体排出具。
【請求項11】
前記節度センサーは、前記ラチェット板に取り付けられる第3加速度センサーで構成され、
第3加速度センサーが前記ラチェット板の鉛直方向の移動加速度を検出することから、前記ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする請求項8に記載の粉粒体排出具。
【請求項12】
前記ラチェット板の鉛直方向の移動を検出する前記節度センサーの検出回数から、粉粒体の総排出量を検出することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の粉粒体排出具。
【請求項13】
前記節度センサーが検出した前記ラチェット板の移動情報と、前記ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とを一時記憶する第3記憶手段と、
第3記憶手段が一時記憶した前記ラチェット板の移動情報と、前記検出回数とをワイヤレス送信する第3送信手段とを更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の粉粒体排出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉ミルク、インスタントコーヒー、粉末状の医薬などの粉粒体を容器から一定量排出する粉粒体の排出具に関し、更に詳しくは、定量の粉粒体が排出されたことを検出する粉粒体排出具に関する。
【背景技術】
【0002】
粉ミルク、インスタントコーヒー、粉末状の医薬などの粉粒体を、定量分だけ使用する場合には、計量カップ、スプーンなどを用いて定量分を取り出しているが、手間と時間がかかるため、一定容量の定量計量室が設けられたローターを、粉粒体を貯留する粉粒体容器に対して回転操作するだけで、一定量の粉粒体を排出する粉粒体排出具が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
以下、この特許文献1に記載の粉粒体排出具100を、図14を用いて説明する。粉粒体排出具100は、同図に示すように、上下に貫通する定量計量室110が形成され、円筒の内壁面に雌ねじ101aが形成されたローター101と、ローター101の上面を覆い、投入口111が形成された投入側プレート102と、円筒の外側面に雄ねじ103aが形成され、雄ねじ103aをローター101の雌ねじ101aに螺合してローター101の上方に連結される粉粒体容器103と、ローター101の下面を覆い、排出口112が穿設された排出側プレート104と、排出側プレート104の下方を覆う蓋105と、投入側プレート102の中心から下方に向けて一体に突設され、投入口111と排出口112がローター101の中心軸Cに沿った鉛直方向で重ならない状態で、排出側プレート104を回転方向に相対位置決めして連結する連結軸106とから構成されている。
【0004】
連結軸106は、投入側プレート102と排出側プレート104の間でローター101を中心軸C周りに回転自在に案内し、これにより、一体に連結される粉粒体容器103とローター101に対して、投入側プレート102と排出側プレート104とが一体でローター101の中心軸C周りに相対的に回転する。ローター101の外側面には、中心軸C周りに所定角度離れた位置に、供給位置決め突起と排出位置決め突起114が突設され、排出側プレート104の外周面には、ローター101に対して排出側プレート104が相対回転する際に、これらの供給位置決め突起と排出位置決め突起114に当接して回転が規制される操作摘み115が突設されている。
【0005】
すなわち、この粉粒体排出具100は、粉粒体容器103若しくはローター101を手に持って、操作摘み115を回転操作して、投入側プレート102と排出側プレート104を中心軸C周りに回転させるもので、操作摘み115が供給位置決め突起に当接して回転が規制される回転位置では、投入側プレート102の投入口111がローター101の定量計量室110に連通し、操作摘み115が排出位置決め突起114に当接して回転が規制される回転位置では、ローター101の定量計量室110が排出側プレート104の排出口112に連通する。
【0006】
従って、定量計量室110に充填される容量の一定量の粉粒体を排出する際には、粉粒体容器103側を上方とした姿勢で粉粒体排出具100の粉粒体容器103若しくはローター101を手に持って、操作摘み115が供給位置決め突起に当接する回転位置まで排出側プレート104を回転操作する。これにより、粉粒体容器103に充填された粉粒体は、投入口111を通して定量計量室110内に落下し、その後、操作摘み115を逆方向に回転操作すると、定量計量室110の上面に沿って投入側プレート102が摺動し、一定量の粉粒体が定量計量室110に充填される。
【0007】
このようにして、上述の操作摘み115の回転操作を繰り返すことにより、定量計量室110の容量の整数倍の量の粉粒体を排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3487647号公報
【特許文献2】実開昭62−17550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、特許文献2に記載の従来の粉粒体排出具によれば、簡単な操作で一定量の粉粒体を排出して得られるので、粉ミルクを溶かして授乳する場合や、粉末の薬を飲む場合に、適量が得られる。しかしながら、粉粒体排出具を用いて定量の粉粒体を排出する操作を記録する手段がないので、授乳回数や薬を飲む回数が決められている場合に、粉粒体排出具を用いて排出した回数が分からず、過剰に授乳したり、粉末の薬を飲んでしまう恐れがあった。
【0010】
また、粉粒体排出具への回転操作を繰り返すことにより、定量計量室の容量の整数倍の量の粉粒体を排出できるが、繰り返す回転操作数を誤り、所望の容量と異なる粉粒体を排出してしまうという問題があった。
【0011】
定量計量室と排出口が連通するローターと排出側プレートの相対回転位置を検出する排出操作センサーを用いれば、一応、粉粒体の排出やその排出回数を検出し、その検出結果を記録して操作者へ伝えることができるが、定量計量室が排出口の一部のみに重なった相対回転位置で粉粒体が排出される場合や、定量計量室と排出口の一部が連通する回転位置で操作摘みを逆回転せた場合には、定量計量室の容量に相当する一定量の粉粒体が排出されず、排出操作センサーで、定量計量室と排出口とが完全に重なるローターと排出側プレートの相対回転位置を高精度に検出しなければ、不完全量であっても粉粒体が排出されたと検出する問題が生じる。
【0012】
一方、ローターと排出側プレートの相対回転位置を高精度に検出するには、複雑で高価な排出操作センサーを用いる必要があり、手で持って操作するような簡易構造の粉粒体排出具に搭載することは、配置スペースや製造コストの問題から実用性がない。
【0013】
また、定量計量室が排出口の一部のみに重なった相対回転位置で粉粒体が排出される場合や、操作摘みを排出位置決め突起に当接させて定量計量室と排出口が連通した後、操作摘みを逆回転せた場合であっても、排出操作センサーで粉粒体の排出を検出したこととすると、複数回の操作を繰り返して排出される粉粒体の総排出量が、操作回数から得る総排出量を満たさず、十分な量の粉粒体が得られない。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、簡易構造で比較的精度が低い安価な排出操作センサーを用いても、定量の粉粒体の排出を検出する粉粒体排出具を提供することを目的とする。
【0015】
また、ローターの逆回転操作を防止し、確実に定量の粉粒体を排出するとともに、比較的精度が低い安価な排出操作センサーを用いて、定量の粉粒体の排出を検出する粉粒体排出具を提供することを目的とする。
【0016】
また、排出操作センサーが検出する粉粒体の排出情報や排出操作回数をワイヤレス送信し、粉粒体排出具から離れた電子機器で粉粒体の排出情報や排出回数が得られる粉粒体排出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の粉粒体排出具は、円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が形成された投入側プレートと、
投入側プレートの上方に連結し、内部の粉粒体貯留室が投入口に連通する筒状の粉粒体容器と、ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、投入口と排出口が鉛直方向で重ならない状態で、投入側プレートと排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、投入側プレートと排出側プレートの間でローターを中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、ローターの中心軸周りの回転により、粉粒体貯留室から投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、排出口を通して下方へ排出する粉粒体排出具であって、
ローターの鉛直方向の移動操作を検出する排出操作センサーを更に備え、
排出操作センサーがローターの鉛直方向の移動操作を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出することを特徴とする。
【0018】
定量計量室と投入口が連通するローターの相対回転位置で、粉粒体貯留室に充填された粉粒体が投入口を通して定量計量室に落下し、ローターを相対回転することにより定量計量室の上面は投入側プレートに覆われ、定量計量室内に定量計量室の容量に相当する一定量の粉粒体が充填される。
【0019】
定量計量室が排出口に連通するローターの相対回転位置で、定量計量室に充填された粉粒体は排出口から落下して排出される。この状態で、粉粒体排出具の操作者は、定量計量室に充填された全ての粉粒体を排出しようと、ローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振る習性があるので、排出操作センサーがローターの鉛直方向の移動を検出することで、定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する。
【0020】
定量計量室が排出口の一部のみに重なった相対回転位置で粉粒体が排出される場合や、定量計量室と排出口が連通した後にローターを逆回転せた場合であっても、排出操作センサーが粉粒体の排出を検出した際には、粉粒体排出具を鉛直方向に振る操作が加えられているので、定量計量室に充填された粉粒体は残らず排出され、一定量の粉粒体が排出される。
【0021】
請求項2に記載の粉粒体排出具は、排出操作センサーが、 連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットと、連結軸の近傍の投入側プレート又は排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、磁気センサーで検出される磁力が、ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、ローターの鉛直方向の移動操作を検出することを特徴とする。
【0022】
操作者がローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振ると、投入側プレートと排出側プレートを連結する連結軸には、ローターとともに鉛直方向の加速度が加わり、連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットは、ローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振る操作で鉛直方向に移動する。その結果、投入側プレート又は排出側プレートに配置される磁気センサーと第1マグネット間の距離はローターの鉛直方向の移動操作で変化し、磁気センサーで検出される磁力が変化することから、ローターの鉛直方向の移動操作を検出できる。
【0023】
請求項3に記載の粉粒体排出具は、排出操作センサーが検出したローターの鉛直方向の移動操作情報を一時記憶する第1記憶手段と、第1記憶手段が一時記憶した移動操作情報をワイヤレス送信する第1送信手段とを更に備えたこと特徴とする。
【0024】
排出操作センサーが検出したローターの鉛直方向の移動操作情報は、第1記憶手段で一時記憶され、第1送信手段からワイヤレス送信される。ワイヤレス送信される移動操作情報は、定量計量室から一定量の粉粒体が排出されたことを示す排出情報であるので、粉粒体を排出したことを、移動操作情報を受信する機器で確認できる。
【0025】
請求項4に記載の粉粒体排出具は、粉粒体容器の上端は、排出口を通して下方へ粉粒体を排出する排出姿勢に対して、天地を逆転させた倒立姿勢で自立可能な設置形状に形成され、磁気センサーから検出される磁力を、倒立姿勢で磁気センサーから検出される第1磁場強度と排出姿勢で磁気センサーから検出される第2磁場強度との間に設定する磁力閾値と比較する比較手段を有し、磁気センサーから検出される磁力を監視するスリープモードと、磁気センサーと記憶手段と送信手段の動作を制御するランモードで動作するマイコンを更に備え、マイコンは、磁気センサーから検出される磁力が、第1磁場強度から磁力閾値を越えたときにスリープモードからランモードに、第2磁場強度から磁力閾値を越えたときにランモードからスリープモードに移行することを特徴とする。
【0026】
粉粒体排出具が倒立姿勢にある場合に、第1マグネットは、磁気センサーから最も離れ若しくは最も接近する位置にあり、磁気センサから検出される磁気の強度は第1磁場強度となる。また、粉粒体排出具が排出姿勢にある場合に、第1マグネットは、磁気センサーから最も接近し若しくは最も離れた位置にあり、磁気センサから検出される磁気の強度は第2磁場強度となる。磁気センサーから検出される磁力が、第1磁場強度から磁力閾値を越えた場合には、粉粒体排出具が倒立姿勢から排出姿勢となったことを表し、粉粒体の排出を検出する必要があるので、マイコンは、スリープモードから、磁気センサーと記憶手段と送信手段の動作を制御するランモードに移行して動作する。一方、磁気センサーから検出される磁力が、第2磁場強度から磁力閾値を越えた場合には、粉粒体排出具が排出姿勢から倒立姿勢となったことを表し、粉粒体は排出されないので、マイコンは、ランモードから、磁気センサーが検出する磁力を監視するスリープモードに移行して動作する。
【0027】
請求項5に記載の粉粒体排出具は、ローターの中心軸周りの回転操作を検出する回転操作センサーを更に備え、 回転操作センサーは、ローターの定量計量室間を仕切る仕切部に、複数の定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、磁気センサーで構成され、 磁気センサーで検出される磁力が、ローターの鉛直方向の移動操作の周期より長い周期で変化することから、ローターの中心軸周りの回転操作を検出することを特徴とすることを特徴とする。
【0028】
ローターが中心軸周りに回転し、いずれかの定量計量室が排出口に連通し、粉粒体が排出口から排出される毎に、その定量計量室毎に対応して仕切部に配設される第2マグネットが磁気センサーの近傍を通過し、磁気センサーで検出される磁力が変化する。その結果、磁気センサーで検出される磁力の変化から、定量計量室毎のローターの中心軸周りの回転操作を検出できる。第1マグネットによる磁力は、粉粒体排出具を上下に振るローターの鉛直方向の移動操作の周期で変化し、第2マグネットによる磁力は、ローターが中心軸周りに回転し、定量計量室毎に対応する仕切部が通過する間の周期で変化し、前者の周期より十分に長い周期で変化するので、磁気センサーは、第1マグネットによる磁場の変化と識別して検出する第2マグネットによる磁場の変化から、ローターの中心軸周りの回転操作を検出する。
【0029】
請求項6に記載の粉粒体排出具は、排出操作センサーが検出したローターの鉛直方向の移動操作情報と回転操作センサーが検出したローターの中心軸周りの回転操作情報とを一時記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段が一時記憶した移動操作情報と回転操作情報とをワイヤレス送信する第2送信手段とを更に備えたこと特徴とする。
【0030】
排出操作センサーが検出したローターの鉛直方向の移動操作情報と回転操作センサーが検出したローターの中心軸周りの回転操作情報とは、第2記憶手段で一時記憶され、第2送信手段からワイヤレス送信される。ワイヤレス送信される移動操作情報と回転操作情報は、1又は複数の定量計量室から一定量毎に排出された粉粒体の総量を示し、排出した粉粒体の総量を移動操作情報と回転操作情報を受信した機器で確認できる。
【0031】
請求項7に記載の粉粒体排出具は、排出操作センサーが、ローターの鉛直方向の加速度を検出する第1加速度センサーで構成され、第1加速度センサーで検出されるローターの加速度の向きが、ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、ローターの鉛直方向の移動操作を検出することを特徴とする。
【0032】
操作者がローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振ると、ローターには、ローターを鉛直方向に移動操作することによる鉛直方向の加速度が加わるので、第1加速度センサーで検出されるローターの加速度の向きが、ローターの鉛直方向に移動操作で変化することから、ローターの鉛直方向の移動操作を検出できる。
【0033】
請求項8に記載の粉粒体排出具は、円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が形成された投入側プレートと、投入側プレートの上方に連結し、内部の粉粒体貯留室が投入口に連通する筒状の粉粒体容器と、ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、投入口と排出口が鉛直方向で重ならない状態で、投入側プレートと排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、投入側プレートと排出側プレートの間でローターを中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、ローターの中心軸周りの回転により、粉粒体容器から投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、排出口を通して下方へ排出する粉粒体排出具であって、投入側プレート若しくは排出側プレートと中心軸周りで相対位置決めされ、投入側プレート若しくは排出側プレートとローターの間で鉛直方向に移動自在に配設されるラチェット板と、投入側プレート若しくは排出側プレートとラチェット板の間に配置され、ラチェット板をローターの方向に付勢する付勢手段と、ラチェット板とローターの当接面に形成される一組のラチェット爪は、排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えるランニングフェースラチェット機構と、ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越える際のラチェット板の移動を検出する節度センサーを更に備え、節度センサーがラチェット板の移動を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出することを特徴とする。
【0034】
定量計量室と投入口が連通するローターの相対回転位置で、粉粒体貯留室に充填された粉粒体が投入口を通して定量計量室に落下し、ローターを相対回転することにより定量計量室の上面は投入側プレートに覆われ、定量計量室内に定量計量室の容量に相当する一定量の粉粒体が充填される。
【0035】
定量計量室が排出口に連通するローターの相対回転位置で、定量計量室に充填された粉粒体は排出口から落下して排出される。この際に、ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越え、付勢手段で付勢されるラチェット板は、投入側プレート若しくは排出側プレートの方向に移動するので、節度センサーがラチェット板の移動を検出することで、定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する。
【0036】
ランニングフェースラチェット機構によりローターは一方向にのみに回転するので、定量計量室と排出口が完全に重なって全ての粉粒体が排出される前に、ローターか逆回転して排出口が閉ざされることがない。排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、ランニングラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越え、付勢手段で付勢されるラチェット板が、投入側プレート若しくは排出側プレートに衝突し、その衝突による衝撃で定量計量室に充填された全ての粉粒体が排出されるので、定量計量室に充填された一定量の全ての粉粒体が排出される。
【0037】
請求項9に記載の粉粒体排出具は、節度センサーは、 ラチェット板に取り付けられる第3マグネットと、ラチェット板の近傍の投入側プレート若しくは排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、磁気センサーで検出される磁力が急激に変化することから、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする。
【0038】
排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、ランニングラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越え、ラチェット板は付勢手段で付勢されて急激に投入側プレート若しくは排出側プレートの方向に移動する。このとき、ラチェット板に取り付けられる第3マグネットと、投入側プレート若しくは排出側プレートに配置される磁気センサー間の距離は急激に変化し、磁気センサーで検出される磁力も急激に変化することから、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出できる。
【0039】
請求項10に記載の粉粒体排出具は、節度センサーが、 投入側プレート若しくは排出側プレートの振動を検出する第2加速度センサーで構成され、投入側プレート若しくは排出側プレートとラチェット板間が衝突することによる振動を第2加速度センサーが検出することから、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする。
【0040】
排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、ランニングラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えると、付勢手段で付勢されたラチェット板は投入側プレート若しくは排出側プレートに衝突するので、第2加速度センサーは、その衝突による投入側プレート若しくは排出側プレートの振動を検出し、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出する。
【0041】
請求項11に記載の粉粒体排出具は、節度センサーが、ラチェット板に取り付けられる第3加速度センサーで構成され、第3加速度センサーがラチェット板の鉛直方向の移動加速度を検出することから、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出することを特徴とする。
【0042】
排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、ランニングラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えると、ラチェット板に取り付けられる第3加速度センサーは、付勢手段で付勢されることにより加速して移動する。第3加速度センサーは、その加速度を検出し、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出する。
【0043】
請求項12に記載の粉粒体排出具は、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出する節度センサーの検出回数から、粉粒体の総排出量を検出すること特徴とする。
【0044】
いずれかの定量計量室が排出口に連通し、粉粒体が排出口から排出される毎に、節度センサーは、ラチェット板の移動を検出するので、節度センサーが検出する検出回数から、1又は複数の各定量計量室から一定量毎に排出された粉粒体の総量を検出できる。
【0045】
請求項13に記載の粉粒体排出具は、節度センサーが検出したラチェット板の移動情報と、ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とを一時記憶する第3記憶手段と、 第3記憶手段が一時記憶したラチェット板の移動情報と、検出回数とをワイヤレス送信する第3送信手段とを更に備えたことを特徴とする。
【0046】
節度センサーが検出したラチェット板の移動情報と、ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とは、第3記憶手段で一時記憶され、第3送信手段からワイヤレス送信される。ワイヤレス送信される移動情報と検出回数は、1又は複数の定量計量室から一定量毎に排出された粉粒体の総量を示し、排出した粉粒体の総量を移動情報と検出回数を受信した機器で確認できる。
【発明の効果】
【0047】
請求項1の発明によれば、ローターの鉛直方向の移動操作を検出する排出操作センサーで、定量の粉粒体の排出を検出するので、検出結果を記録して、粉粒体排出具を用いて粉粒体を排出したことを確認できる。
【0048】
また、定量計量室と排出口とが完全に重なるローターと排出側プレートの相対回転位置を正確に検出するまでの精度がない低い安価な排出操作センサーであっても、定量の粉粒体の排出を検出できる。
【0049】
請求項2の発明によれば、連結軸内に収容される第1マグネットと、磁気センサーとから構成される簡単な構成で、ローターの鉛直方向の移動操作を検出できる。
【0050】
請求項3の発明によれば、粉粒体排出具を用いて一定量の粉粒体を排出したことを粉粒体排出具から離れた電子機器で確認できる。
【0051】
請求項4の発明によれば、粉粒体排出具が倒立姿勢である場合には、粉粒体が排出されたことを検出する必要がないので、マイコンは、スリープモードで動作し、磁気センサーが検出する磁力のみを監視する。その結果、バッテリーの消費を節約できる。
【0052】
請求項5の発明によれば、ローターの定量計量室間を仕切る仕切部に複数の定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、排出操作センサーと兼用する磁気センサーとから構成される簡単な構成で、ローターの中心軸周りの回転操作を検出できる。
【0053】
請求項6と請求項13の発明によれば、粉粒体排出具を用いて一定量毎に排出した粉粒体の総量を粉粒体排出具から離れた電子機器で確認できる。
【0054】
請求項7の発明によれば、ローターの鉛直方向の加速度を検出する第1加速度センサーで構成される簡単な構成で、ローターの鉛直方向の移動操作を検出できる。
【0055】
請求項8の発明によれば、ラチェット板の移動を検出する節度センサーで、定量の粉粒体の排出を検出するので、検出結果を記録して、粉粒体排出具を用いて粉粒体を排出したことを確認できる。
【0056】
また、定量計量室と排出口とが完全に重なるローターと排出側プレートの相対回転位置を正確に検出することなく、ラチェット板の移動のみを検出する安価な節度センサーを用いて、定量の粉粒体の排出を検出できる。
【0057】
請求項9の発明によれば、ラチェット板に取り付けられる第3マグネットと、磁気センサーとから構成される簡単な構成で、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出できる。
【0058】
請求項10の発明によれば、投入側プレート若しくは排出側プレートの振動を検出する第2加速度センサーからなる簡単な構成で、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出できる。
【0059】
請求項11の発明によれば、ラチェット板の鉛直方向の移動加速度を検出する第3加速度センサーからなる簡単な構成で、ラチェット板の鉛直方向の移動を検出できる。
【0060】
請求項12の発明によれば、節度センサーが検出するラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数から、粉粒体の総排出量を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本願発明の第1実施の形態に係る粉粒体排出具1を示す正面図である。
図2】粉粒体排出具1の分解斜視図である。
図3】粉粒体排出具1の縦断面図である。
図4】ローター3の上方に配置される投入側プレート4とカバー2の斜視図である。
図5】投入側プレート4を除いたローター3の斜視図である。
図6】排出側プレート5に一体に形成された連結軸6の斜視図である。
図7】粉粒体の排出検出・送信回路20を示すブロック図である。
図8】本願発明の第2実施の形態に係る粉粒体排出具30の斜視図である。
図9】粉粒体排出具30の分解斜視図である。
図10】粉粒体排出具30の要部縦断面図である。
図11】ランニングフェースラチェット機構31を示す部分破断要部斜視図である。
図12】投入側プレート34とラチェット板33とその間に配置される圧縮スプリング32の斜視図である。
図13】投入側プレート34を除いて示すローター35の斜視図である。
図14】従来の粉粒体排出具100を示す分解斜視図である。。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の第1実施の形態に係る粉粒体排出具1を、図1乃至図7を用いて説明する。本実施の形態に係る粉粒体排出具1は、定量のお湯で溶いて授乳用ミルクとするために、定量の粉粒体である粉ミルクを排出するミルカーであり、使用せずに待機させている状態では、図1図3に示す排出姿勢から上下の向きをひっくり返した倒置姿勢としておくものであるが、以下の粉粒体排出具1の各部の説明は、図1図3に図示する排出姿勢の向きを上下方向として説明する。
【0063】
本実施の形態に係る粉粒体排出具1は、図5に示すように、円筒形でその中心軸Cから放射状に60度間隔の仕切り壁11が形成されることにより、一定量の粉ミルクを充填する6つの扇形の定量計量室12が形成されたローター3と、ローター3の上面を覆う投入側プレート4と、ローター3の下面を覆う排出側プレート5とからなる定量排出部10を備えている。ローター3の各仕切り壁11の上端には、投入側プレート4及び排出側プレート5に対するローター3の相対回転を検出する回転検出用マグネット18が固定されている。
【0064】
投入側プレート4は、図2に示すように、円板状のプレートで、周囲の円環枠を残して中心軸C周りの180度の角度の半円形の投入口7が穿設されている。中心軸Cを挟み、投入口7と反対側の投入側プレート4の上面は、カバー2で覆われた部品収容室4aとなっていて、部品収容室4a内に収容される回路基板26に、図7に示す粉粒体の排出検出・送信回路20の各機能を実行する為のPMU(マイコンという)21と、マイコン21に接続する磁気センサー22、記憶部23、アンテナを含むRF通信部24等の各電子部品と、これらの駆動電源となるバッテリー25が実装されている。
【0065】
排出側プレート5は、ローター3とほぼ同じ輪郭の円板状に形成され、ローター3のいずれかの定量計量室12と同形若しくはやや小さい扇形の排出口8が、中心軸C周りの60度の角度内に穿設されている。
【0066】
連結軸6は、合成樹脂などの半磁性体で雄ねじ状に形成され、ネジ頭部6aを下端とした連結軸6を、下方から排出側プレート5、ローター3、投入側プレート4の順に中心軸Cに沿って挿通し、その上部にナット9を螺合させて、ネジ頭部6aとナット9の間で、投入側プレート4と排出側プレート5の間にローター3を回転自在に挟んだ状態で、投入側プレート4と排出側プレート5を締め付け、投入側プレート4と排出側プレート5の相互が相対回転しないように一体に連結する。
【0067】
連結軸6を介して投入側プレート4と排出側プレート5との相対回転が規制された状態で、中心軸C周りで、投入側プレート4の投入口7の反対側に排出側プレート5の排出口8が配設され、投入口7と排出口8は鉛直方向に沿った投影方向で重ならないようになっている。また、投入側プレート4の部品収容室4aと排出側プレート5の排出口8は、鉛直方向で重なる位置にあり、部品収容室4aに収容された磁気センサー22は、排出口8の上方に位置している。
【0068】
雄ネジ状の連結軸6は、ネジ頭部6aを残して円筒状に形成され、その中空の円筒内に図3に示すように、鉛直方向検出用マグネット13が鉛直方向に移動自在に収容されている。中空の円筒の上端の開口は、ナット9で施蓋されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、投入側プレート4の近傍とその下方の間で移動自在に収容される。
【0069】
円板状の投入側プレート4の外周面には、円筒状の粉粒体容器19の下方の開口縁の内壁に刻設された雌ネジと螺合する雄ネジが刻設され、粉粒体容器19と、粉粒体容器19下端の開口を覆う投入側プレート4が着脱自在に連結される。粉粒体容器19は、粉粒体排出具1を使用する前に、開口を上向きとした倒立姿勢で、上方から内部の粉粒体貯留室19aに十分な分量の粉ミルクを貯留しておき、その上方に投入側プレート4をネジ止めして、粉粒体容器19の開口を覆っておく。倒立姿勢で、粉粒体貯留室19aへの粉粒粉ミルクの投入を容易にするために、粉粒体容器19の上端面は平坦面となり、粉粒体容器19が自立して起立するようになっている。その後、粉粒体排出具1を用いて一定量の粉ミルクを排出させる際には、倒立姿勢から図1に示す向きに上下を倒置させる(以下、この向きを排出姿勢という)。
【0070】
また、円板状の排出側プレート5の下方にも、粉ミルクの排出口を絞って排出する漏斗14がネジ止めして取り付けられている。漏斗14は、粉粒体排出具1を上下に振って、排出口8から散乱して排出される粉ミルクを狭い絞り口14aにまとめて排出する。
【0071】
キャップ15は、漏斗14の下方に着脱自在に取り付けられ、漏斗14の絞り口14aから粉粒体を排出しない粉粒体排出具1が倒立姿勢である間に、絞り口14aを覆い、絞り口14aから水分やゴミがローター3の定量計量室12に侵入することを防止する。
【0072】
部品収容室4a内の回路基板26に実装された磁気センサー22は、磁気センサー22の配設位置での上述した鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18による磁場の強さを数値化した磁力として検出する。本実施の形態では、磁気センサー22は、投入側プレート4の上面に配置されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、粉粒体排出具1が倒立姿勢である間に最も接近し、図3に示す排出姿勢で最も遠ざかる。従って、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、粉粒体排出具1が倒立姿勢で高く、排出姿勢で低い磁力が検出される。更に、粉粒体排出具1を上下に振る操作では、その上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で鉛直方向検出用マグネット13が鉛直方向に往復移動するので、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、粉粒体排出具1を上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で変化する。
【0073】
また、磁気センサー22は、ローター3が相対回転することにより、各仕切り壁11が通過する上方の投入側プレート4に配設されているので、仕切り壁11に取り付けられた回転検出用マグネット18は、ローター3の相対回転により、いずれかの仕切り壁11が磁気センサー22の下方を通過する際に最も接近し、仕切り壁11の間の定量計量室12が通過する際に遠ざかる。上述の通り、磁気センサー22は、排出口8の上方に位置しているので、磁気センサー22が検出する回転検出用マグネット18による磁力は、排出口8の上方にいずれかの仕切り壁11が位置する回転位置で最も高く(以下、このとき検出される磁力を第1回転磁力という)、仕切り壁11間の定量計量室12が排出口8に一致して連通する回転位置で低い磁力(以下、この時検出される磁力を第2回転磁力という)が検出される。
【0074】
ローター3を回転させる回転操作では、中心軸C周りに60度間隔で配置される仕切り壁11若しくはその間の定量計量室12が磁気センサー22の下方を通過するので、磁気センサー22が検出する回転検出用マグネット18による磁力は、ローター3を60度回転させる回転周期とほぼ同一の周期で変化する。
【0075】
マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力と磁力の変化から、粉粒体排出具1の姿勢の判定する。この姿勢を判定するために、粉粒体排出具1を倒立姿勢と排出姿勢とした際に、それぞれ磁気センサー22から検出される磁力を第1磁場強度と第2磁場強度とし、第1磁場強度と第2磁場強度と間の任意の磁力を磁力閾値に設定しておく。マイコン21は、磁気センサー22から検出される磁力が、所定の期間継続して設定した磁力閾値を越える場合に、粉粒体排出具1は、倒立姿勢と判定し、所定の期間継続して設定した磁力閾値未満である場合に、粉粒体排出具1は、排出姿勢と判定する。
【0076】
マイコン21は、バッテリー25からマイコン21と磁気センサー22のみに駆動電源を供給し、磁気センサー22が検出する磁力のみを監視するスリープモードと、バッテリー25から粉粒体の排出検出・送信回路20を構成する全ての回路部品に駆動電源を供給し、全ての粉粒体の排出検出・送信回路20の動作を制御するランモードで動作し、所定の経過時間、粉粒体排出具1を倒立姿勢と判定した場合には、待機状態であるとして、ランモードで動作している場合には、スリープモードに移行する。また、粉粒体排出具1を倒置姿勢と判定している間に磁気センサー22から検出される磁力が磁力閾値を越える場合や、粉粒体排出具1を排出姿勢と判定した場合には、使用状態であるとして、スリープモードで動作している場合には、ランモードに移行する。これにより、待機状態で、バッテリー25の不必要の電力消費を防止できる。
【0077】
また、マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力と磁力の変化から、粉粒体排出具1の鉛直方向の移動操作と、ローター3の中心軸C周りの回転操作を検出する。両者の判別は、磁気センサー22が検出する磁力に、鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18による磁力が重ねられているが、鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18がそれぞれ発生する磁場の強さは異なり、また、粉粒体排出具1を上下に振る操作で、鉛直方向検出用マグネット13による磁力が変化する周期と、ローター3を回転させる回転操作で、回転検出用マグネット18による磁力が変化する周期が異なるので、磁気センサー22が検出した磁力の変化量と、変化する周期とから、判別できる。
【0078】
粉粒体排出具1の鉛直方向の移動操作の検出は、磁気センサー22から検出される磁力が、粉粒体排出具1を上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で第1磁場強度と第2磁場強度間の差分の変化量で変化する場合に、マイコン21は、粉粒体排出具1を上下に振る鉛直方向の移動操作であると判定し、検出した鉛直方向の移動操作情報を検出時刻とともに、記憶部23に記憶する。
【0079】
また、ローター3の中心軸C周りの回転操作の検出は、磁気センサー22から検出される磁力が、ローター3を中心軸C周りに60度回転操作する操作周期に、第1回転磁力と第2回転磁力間の差分の変化量で変化する場合に、マイコン21は、ローター3の中心軸C周りの相対回転操作であると判定し、第2回転磁力を検出した際に定量計量室12が排出口8に一致して、粉ミルクが排出されたものとして、検出した回転操作情報を検出時刻とともに、記憶部23に記憶する。
【0080】
RF通信部24は、低消費電力で動作するBluetooth(登録商標)方式のRF通信モジュールと回路基板26の一面に導電パターンを印刷配線して形成されたプリントアンテナ24aとからなり、マイコン21を介して記憶部23に記憶された移動操作情報と回転操作情報とこれらの検出時刻とをRF送信する。RF通信部24からこれらの上方を送信する送信先は、ペアリング工程で特定される図示しない特定の端末機器であり、ペアリング工程は、ここでは、粉粒体排出具1を倒置姿勢とした状態で、粉粒体排出具1を鉛直方向に1度振る動作で実行されるものとする。
【0081】
以下、このように構成された粉粒体排出具1の動作を説明する。初めに、倒置姿勢とした粉粒体排出具1の粉粒体容器19からネジ止めされている定量排出部10から上方を外し、開口する粉粒体容器19の上方から粉粒体貯留室19aに定量排出する粉ミルクを投入しておく。
【0082】
続いて、ペアリング工程を実行するため、定量排出部10の投入側プレート4を粉粒体容器19にネジ止めして一体とした粉粒体排出具1を一度上下に振る。この鉛直方向の移動操作によって、連結軸6内に鉛直方向に移動自在に収容された鉛直方向検出用マグネット13は、一度鉛直方向に移動操作する周期で、連結軸6内を鉛直方向に往復する。これにより、粉粒体排出具1を磁気センサー22から検出される磁力が磁力閾値を越え、マイコン21は、スリープモードから粉粒体の排出検出・送信回路20の全ての動作を制御するランモードに移行するとともに、ペアリング工程を求める操作が実行されたものとして、ペアリング行程を実行する。
【0083】
Bluetooth(登録商標)方式では、送信側の粉粒体排出具1と受信側となる一又は複数の端末機器にそれぞれ固有のマスターIDとスレーブIDを割り当てられる。ペアリング工程では、粉粒体排出具1のRF通信部24をペアリングモードとし、マスターIDが割り当てられた粉粒体排出具1がペアリングモードとなったことを周囲に向けて発信する。スレーブIDを割り当てられた端末機器がこれを受信すると、同様にペアリングモードとなって、自身に割り当てられたスレーブIDを粉粒体排出具1のRF通信部24へ返信し、粉粒体排出具1が受信したスレーブIDが自身のマスターIDに関連づけて割り当てられたスレーブIDに一致すると、両者の間のみのRF通信が確立される。このペアリング工程によって、粉粒体排出具1から送信される移動操作情報や回転操作情報などの送信情報が、粉粒体排出具1を使用する使用者の端末機器など特定の端末機器にのみ送信され、不特定の端末機器に送信されない。
【0084】
ペアリング工程を実行した後、粉粒体排出具1を倒置姿勢から上下を反転させて排出姿勢とすると、粉粒体容器19の粉粒体貯留室19aに貯留されている粉ミルクが、投入側プレート4の投入口7を介してその下方に連通するローター3の定量計量室12に重力で落下し充填される。投入側プレート4若しくは投入側プレート4に一体にネジ止めされている粉粒体容器19を持って、ローター3を相対回転(以下、単に回転という)させると、投入側プレート4の投入口7の縁の部分が、定量計量室12の上縁で粉ミルクを擦り切り、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが定量計量室12に充填される。
【0085】
ここで、漏斗14を覆うキャップ15を外し、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート5の排出口8に連通する回転位置まで、更にローター3を回転させると、排出口8を通して漏斗14の絞り口14aから粉ミルクが排出される。この際に、粉粒体排出具1を鉛直方向に数回振ることにより、定量計量室12に充填されていた粉ミルクは、残らず排出され、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが排出される。
【0086】
粉粒体排出具1を鉛直方向に数回振ることにより、連結軸6内に鉛直方向に移動自在に収容された鉛直方向検出用マグネット13は、粉粒体排出具1を鉛直方向に移動操作する周期で、連結軸6内を鉛直方向に往復し、磁気センサー22から検出される磁力が、この周期とほぼ一致する周期で第1磁場強度と第2磁場強度間の差分の変化量で変化する。この検出した磁力の変化から、マイコン21は、粉ミルクの排出操作に伴う粉粒体排出具1を上下に数回振る移動操作であると判定し、検出した移動操作情報をその検出時刻と関連付けて記憶部23に記憶する。
【0087】
記憶部23に記憶された移動操作情報と検出時刻は、定量排出操作が終了した所定時間後(例えば、マイコン21が排出姿勢から倒置姿勢と判定し、ランモードからスリープモードに移行する直前)に、RF通信部24から特定の端末装置に送信され、端末側では、一定量の粉ミルクを排出した排出操作をその時刻とともに記録できる。
【0088】
本実施の形態にかかる粉粒体排出具1では、一度、粉粒体排出具1を排出姿勢とした間に、更にローター3を回転操作して複数の定量計量室12に充填された粉ミルクを排出し、定量計量室12の容積の複数倍の容積に相当する量の粉ミルクを排出することもできる。いずれかの定量計量室(以下、第1定量計量室という)12を排出口8に連通させて粉ミルクを排出させた後、ローター3を更に同方向に60度回転操作すると、その回転方向と逆方向で隣り合う定量計量室(第2定量計量室)12が排出口8に連通し、第2定量計量室12に充填された粉ミルクが同様に排出口8を通して漏斗14の絞り口14aから排出される。
【0089】
このローター3を回転操作する間に磁気センサー22から検出される磁力は、第1定量計量室12と第2定量計量室12がそれぞれ排出口8に一致する回転位置で低い第2回転磁力であり、その間の第1定量計量室12と第2定量計量室12を仕切る仕切り壁11が排出口8の上方に位置する回転位置で相対的に高い第1回転磁力となる。マイコン21は、磁気センサー22から検出される磁力が、ローター3を中心軸C周りに60度回転操作する操作周期にほぼ一致する周期で第1回転磁力と第2回転磁力間の差分の変化量で変化し、検出した磁力が第2回転磁力に低下した際に追加して同量の粉ミルクを排出されたものと判定し、検出した回転操作情報を検出時刻とともに、記憶部23に記憶する。同様に、ローター3を60度毎に回転操作し、更に粉ミルクを排出する回転操作を検出できるので、複数の定量計量室12から粉ミルクを排出する排出回数を表すローター3の回転操作情報を検出時刻とともに記憶部23に記憶できる。
【0090】
記憶部23に記憶された回転操作情報と検出時刻は、上述した移動操作情報とその検出時刻とともに、定量排出操作が終了した所定時間後に、RF通信部24から特定の端末装置に送信され、端末側では、これらの送信された情報と検出時刻とから、定量計量室12の複数倍の容量の粉ミルクを排出した排出操作をその時刻とともに記録できる。
【0091】
粉粒体排出具1を用いて定量の粉ミルクを排出した使用者は、端末装置から、粉ミルクから作ったミルクで授乳した回数や授乳量をその時刻とともに確認できる。
【0092】
本実施の形態では、鉛直方向検出用マグネット13の鉛直方向の移動による磁気センサーで検出される磁力の変化からローター3の鉛直方向の移動操作を検出しているが、ローター3に取り付ける加速度センサーで検出することもできる。
【0093】
上述の第1実施の形態では、粉粒体を排出する際に、粉粒体排出具1を上下に振る操作を利用して、定量の粉粒体が排出されることを検出したが、必ずしも粉粒体排出具1を鉛直方向に振らない場合であっても、定量の粉粒体が排出されたことを検出できる。以下、粉粒体排出具を鉛直方向に移動操作することなく、粉粒体の排出を検出する本願発明の第2実施の形態に係る粉粒体排出具30を図8乃至図13の各図を用いて説明する。第2実施の形態の説明においても、図8図10に図示する姿勢を排出姿勢と、上下を逆転させた姿勢を倒置姿勢と、排出姿勢での上下方向を上下方向として説明する。また、第1実施の形態にかかる粉粒体排出具1と同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0094】
本実施の形態に係る粉粒体排出具30は、図9に示すように、2重の円筒形で内側円筒35aと外側円筒35bの間に中心軸Cから放射状に72度間隔の仕切り壁11が形成されることにより、一定量の粉ミルクを充填する5つの扇形の定量計量室12が形成されたローター35と、ローター35の上面を覆う投入側プレート34と、ローター35の下面を覆う排出側プレート36とからなる定量排出部40を備えている。
【0095】
投入側プレート34は、図10図12に示すように、円板状のプレートで、その下面の中心軸C周りに内側案内筒部34bと外側案内筒部34cが垂設され、内側案内筒部34bと外側案内筒部34cとの間で、その下方に配置されるローター35の内側円筒35aと外側円筒35bを遊嵌し、ローター35を中心軸C周りに回転自在に案内している。内側案内筒部34bの内側には、中心軸Cに沿った角筒状の投入側連結軸34dが垂設されている。
【0096】
投入側プレート34の内側案内筒部34bと外側案内筒部34cとの間には、扇形の定量計量室12の2倍の中心軸C周りの144度の角度の半円形の投入口7が穿設されている。中心軸Cを挟み、投入口7と反対側の投入側プレート34の上面は、カバー2で覆われる枡形の部品収容室34aとなっていて、部品収容室34a内に収容される回路基板26に、粉粒体の排出検出・送信回路20の各機能を実行するマイコン21、磁気センサー22、記憶部23、及びアンテナを含むRF通信部24等の各電子部品と、これらの駆動電源となるバッテリー25が実装されている。
【0097】
排出側プレート36は、ローター35とほぼ同じ輪郭の円板状に形成され、ローター35のいずれかの定量計量室12と同形若しくはやや小さい扇形の排出口8が、中心軸C周りの72度の角度内に穿設されている。また、排出側プレート36の中心には、中心軸Cに沿って角筒状の排出側連結軸36aが立設され、排出側連結軸36aの上部が上述した投入側連結軸34dの下部に内側から嵌合して鉛直方向に沿った角筒部6bが形成され、投入側連結軸34dと排出側連結軸36aとをネジ止めして鉛直方向に一体に連結する雄ねじ6cとで、投入側プレート34と排出側プレート36を中心軸C周りで相対位置決めして連結し、投入側プレート34と排出側プレート36の間でローター35を中心軸C周りに回転自在に案内する連結軸6が構成される。
【0098】
連結軸6を介して投入側プレート34と排出側プレート36との相対回転が規制された状態で、中心軸C周りで、投入側プレート34の投入口7の反対側に排出側プレート36の排出口8が配設され、投入口7と排出口8は鉛直方向に沿った投影方向で重ならないようになっている。
【0099】
ローター35の内側円筒35aの下方は、その中心に角筒部6bを回転自在に挿通させる挿通孔が穿設されたリング状の底板35cで覆われ、底板35cの上面には、中心軸C周りに72度のピッチで、上方からみて反時計回りの方向に上方に傾斜する5本の固定側ラチェット爪35dが形成されている。
【0100】
ローター35の内側円筒35aで囲われた底板35cと、その上方の開口を覆う投入側プレート34の間に、円板状のラチェット板33が鉛直方向に移動自在に配設されている。ラチェット板33の中心には、角筒部6bが挿通させる角枠部33aが立設され、角枠部33aに角筒状の角筒部6bが遊挿することによって、ラチェット板34は、鉛直方向に移動自在に案内され、投入側プレート34と排出側プレート36に対して中心軸C周りの回転が規制される。
【0101】
固定側ラチェット爪35dと鉛直方向で対向するラチェット板33の底面には、中心軸C周りに72度のピッチで、固定側ラチェット爪35dと同方向に傾斜する5本の可動側ラチェット爪33bが形成されている。ラチェット板33の上面と投入側プレート34との間には、ラチェット板33に形成された可動側ラチェット爪33bをその下方のローター35に形成された固定側ラチェット爪35dの方向に付勢する圧縮スプリング32が配設され、相互に摺動する可動側ラチェット爪33bと固定側ラチェット爪35dとによって、ローター35を投入側プレート34及び排出側プレート36に対して一方向にのみ回転させるランニングフェースラチェット機構31が構成される。ここでは、上方からみてローター35は、中心軸C周りに時計回りにのみ相対回転する。また、可動側ラチェット爪33bと固定側ラチェット爪35dは、排出側プレート36に対して時計回りに相対回転するローター35のいずれかの定量計量室12が鉛直方向で排出側プレート36の排出口8に一致し、排出口8に連通する回転位置で、一方のラチェット爪が相手側のラチェット爪を乗り越える位置に形成される。
【0102】
ラチェット板33の角枠部33aの上端には、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出するための鉛直方向検出用マグネット13が取り付けられている。
【0103】
第1実施の形態と同様に、投入側プレート34の外側案内筒部34cの外側面には、粉粒体容器19の下方の開口縁の内壁に刻設された雌ネジと螺合する雄ネジが刻設され、粉粒体容器19が投入側プレート34の上方に着脱自在に連結される。また、円板状の排出側プレート36の下方にも、粉ミルクの排出口を絞って排出する漏斗14がネジ止めして着脱自在に連結されている。これらのネジ結合する結合面には、弾性材料からなるシールリング37が配置され、ネジ結合部から粉粒体が漏れ出ないようにしている。
【0104】
部品収容室34a内の回路基板26に実装された磁気センサー22は、磁気センサー22の配設位置での鉛直方向検出用マグネット13による磁場の強さを数値化した磁力として検出する。磁気センサー22は、磁気センサー22を収容する投入側プレート34とローター35との間で鉛直方向に移動するラチェット板33の上方に配置されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、一方のラチェット爪33b、35bが他方のラチェット爪35b、33bを乗り越える直前に磁気センサー22に最も接近し、乗り越えた直後に、圧縮スプリング32によりラチェット板33が下方に移動するので、最も遠ざかる。従って、マイコン21は、磁気センサー22か検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力の変化から、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出する。
【0105】
固定側ラチェット爪35dと可動側ラチェット爪33bとは、中心軸C周りに72度のピッチで形成されているので、ローター35を投入側プレート34及び排出側プレート3に対して72度相対回転させる毎に、ラチェット板33は上下に移動し、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、ローター35を72度回転操作する周期で変化する。一方、ローター3に形成される定量計量室12は、中心軸C周りの72度間隔で形成され、ローター35を72度相対回転操作する毎にいずれかの定量計量室12が排出口8に連通し、排出口8から粉ミルクが排出されるので、マイコン21が磁力の変化から検出するラチェット板33の鉛直方向の往復移動は、定量計量室12に充填された粉ミルクが排出されたことを表す。
【0106】
マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力が周期的な変化することから、ラチェット板33の鉛直方向の往復移動回数を検出する。ラチェット板33の往復移動回数は、ローター35の相対回転操作によって排出口8に連通した定量計量室12の数を表し、往復移動回数は、定量計量室12から排出される粉ミルクの総量を表す。
【0107】
特に、本実施の形態では、いずれかの定量計量室12が鉛直方向で排出側プレート36の排出口8に一致して連通するローター35の回転位置で、一方のラチェット爪33b、35bが他方のラチェット爪35b、33bを乗り越えるので、マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出する。ラチェット板33の下方への移動は、定量計量室12に充填された粉ミルクが排出されたことを表し、ラチェット板33が下方へ移動する回数は、その数の定量計量室12から排出される粉ミルクの総量を表す。
【0108】
マイコン21は、上述のラチェット板33の移動情報と、ラチェット板33の移動を検出した検出回数を検出時刻とともに、記憶部23に記憶し、RF通信部24は、所定時間経過後に、マイコン21を介して記憶部23に記憶されたラチェット板33の移動情報と検出回数をこれらを検出した検出時刻とともにRF送信する。
【0109】
以下、このように構成された粉粒体排出具30の動作を説明する。初めに、図示しない操作スイッチを用いて、RF通信部24をペアリングモードとし、Bluetooth(登録商標)方式でRF通信部24からRF送信する端末機器を特定しておく。続いて、倒置姿勢とした粉粒体排出具30の粉粒体容器19の上方から粉粒体貯留室19aに定量排出する粉ミルクを投入し、粉粒体容器19に投入側プレート34を連結してその開口を覆った後、粉粒体排出具30を倒置姿勢から上下を反転させて排出姿勢とする。
【0110】
粉粒体排出具30を排出姿勢とすると、上方の粉粒体容器19の粉粒体貯留室19aに貯留されている粉ミルクが、投入側プレート34の投入口7を介してその下方に連通するローター35の定量計量室12に重力で落下し充填される。続いて、投入側プレート34若しくは投入側プレート34に一体にネジ止めされている粉粒体容器19を持って、ローター35を回転させる。この回転操作では、粉粒体容器19と一体に回転するラチェット板33の可動側ラチェット爪33bとローター35の固定側ラチェット爪35dが噛み合うことによって、ローター35は、粉粒体容器19に対して、上方からみて時計回りにのみ相対回転(以下、単に回転という)する。従って、粉ミルクが充填された定量計量室12の一部が排出側プレート36の排出口8に連通した後、ローター35が逆回転し、定量の粉ミルクが排出されないということがない。
【0111】
ローター35を回転操作することにより、投入側プレート34の投入口7の縁の部分が、定量計量室12の上縁で粉ミルクを擦り切り、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが定量計量室12に充填される。
【0112】
ローター35の回転操作においては、ローター35の固定側ラチェット爪35dの傾斜面がラチェット板33の可動側ラチェット爪33bの傾斜面に摺動して、圧縮スプリング32に抗してラチェット板33を上方へ押し上げるので、ローター35を回転操作に圧縮スプリング32による負荷が加わる。更に、ローター35を回転操作し、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越えると、ラチェット板33は、圧縮スプリング32により下方に付勢されて一気に下降し、同時にローター35の回転操作から圧縮スプリング32による負荷が除かれるので、操作者に節度感が伝わる。また、一気に下降するラチェット板33は、ローター35の底板35に衝突して停止し、ローター35が振動する。
【0113】
本実施の形態では、いずれかの定量計量室12が排出口8に一致して連通するローター35の回転位置で、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越えるので、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に連通する回転位置で、排出口8を通して漏斗14の絞り口134aから粉ミルクが排出される。この際に、ローター35は、ラチェット板33が衝突することにより振動するので、粉粒体排出具1を振ることなく、定量計量室12に充填されていた粉ミルクは、残らず排出され、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが排出される。
【0114】
また、ローター35を回転操作する操作者は、圧縮スプリング32による負荷が除かれることによる節度感と、ラチェット板33がローター35の底板35に衝突することによる衝突音から、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に完全に一致する回転位置でローター35の回転を停止させることができる。
【0115】
マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出し、定量計量室12に充填されていた粉ミルクが排出されたことを表すこのラチェット板33の下方への移動情報とその検出時刻を記憶部23に記憶する。
【0116】
定量計量室12の容積の複数倍の容積に相当する量の粉ミルクを排出する場合には、更にローター35を72度回転操作し、回転方向と逆方向で隣り合う粉ミルクが充填された定量計量室12を排出口8に連通させて粉ミルクを排出し、同様の回転操作を所望容量の粉ミルクが排出されるまで繰り返す。この回転操作においては、各定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に連通する毎に、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越え、同一の作用を繰り返すので、その説明は省略する。
【0117】
また、粉ミルクが充填された各定量計量室12から排出口8を通して粉ミルクが排出される毎に、マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出するので、ラチェット板33の下方への総移動回数と、その検出時刻を記憶部23に記憶する。ラチェット板33の下方への総移動回数は、ローター35の回転操作によって排出口8に連通した定量計量室12の数を表し、総移動回数から排出された粉ミルクの総量を検出することができる。投入口7から粉ミルクが充填された定量計量室12が排出口8に連投するまでにローター35は144度回転し、ラチェット板33は2回下降するので、実際の粉ミルクの総排出量は、検出されるラチェット板33の総移動回数から2回減じた回数から得られる。
【0118】
記憶部23に記憶されたラチェット板の下方への移動情報、総移動回数とその各検出時刻は、定量排出操作が終了した所定時間後に、RF通信部24から特定の端末装置に送信され、端末側では、これらの送信された情報と検出時刻とから、定量計量室12の複数倍の容量の粉ミルクを排出した排出操作をその時刻とともに記録できる。従って、粉粒体排出具30を用いて所望量の粉ミルクを排出した使用者は、端末装置から、粉ミルクから作ったミルクで授乳した回数や授乳量をその時刻とともに確認できる。
【0119】
本実施の形態によれば、ラチェット板33に取り付けられる鉛直方向検出用マグネット13の移動により磁気センサー22で検出される磁力の変化からラチェット板33の鉛直方向の移動を検出しているが、ラチェット板33に加速度センサーを取り付けて、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出してもよい。
【0120】
また、定量計量室12が排出口8に一致するローター3の回転位置では、ラチェット板33がローター35に衝突してローター35が振動するので、加速度センサーをローター35やローター35の下方に配置される排出側プレート36に取り付けて、加速度センサーが検出するローター35や排出側プレート36の振動からラチェット板の鉛直方向の移動を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、粉ミルクなどの粉粒体を定量排出した排出記録を確認可能な粉粒体排出具に適している。
【符号の説明】
【0122】
1 粉粒体排出具
3 ローター
4 投入側プレート
5 排出側プレート
6 連結軸
7 投入口
8 排出口
10 定量排出部
11 仕切り壁
12 定量計量室
13 鉛直方向検出用マグネット
18 回転検出用マグネット
19 粉粒体容器
19a 粉粒体貯留室
20 粉粒体の排出検出・送信回路
30 粉粒体排出具(第2実施の形態)
31 ランニングフェースラチェット機構
32 圧縮スプリング(付勢手段)
33 ラチェット板
34 投入側プレート
35 ローター
35d 固定側ラチェット爪
36 排出側プレート
40 定量排出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14