【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日:令和2年2月10日、掲載アドレス:https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1347−4065/ab6faf
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー・環境新技術先導プログラム α型酸化ガリウム高品質自立基板の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 結晶基板(例えば、サファイア基板など)上に、応力緩和層を介して、結晶性酸化物の単結晶を含む結晶性酸化物層を形成する結晶性積層構造体の製造方法において、前記応力緩和層に、κ−Ga
を含む多結晶を用いて、前記応力緩和層の形成を、前記結晶基板上に、直接または他の層を介して、凹部または凸部からなる凹凸部を形成し、ついで、該凹凸部上に、前記応力緩和層を成膜することにより行う。
前記応力緩和層の形成を、前記結晶基板上に、直接または他の層を介して、凹部または凸部からなる凹凸部を形成し、ついで、該凹凸部上に、前記応力緩和層を成膜することにより行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga
2O
3)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。また、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての幅広い応用も期待されている。特に、酸化ガリウムの中でもコランダム構造を有するα―Ga
2O
3等は、非特許文献1によると、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶することによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはIn
XAl
YGa
ZO
3(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5〜2.5)を示し(特許文献9等)、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
【0003】
しかしながら、酸化ガリウムは、最安定相がβガリア構造であるので、特殊な成膜法を用いなければ、準安定相であるコランダム構造の結晶膜を成膜することが困難である。また、コランダム構造を有するα―Ga
2O
3は準安定相であり、融液成長によるバルク基板が利用できない。そのため、現状はα―Ga
2O
3と同じ結晶構造を有するサファイアを基板として用いている。しかし、α―Ga
2O
3とサファイアとは格子不整合度が大きいため、サファイア基板上にヘテロエピタキシャル成長されるα―Ga
2O
3の結晶膜は、転位密度が高くなる傾向がある。また、コランダム構造の結晶膜に限らず、成膜レートや結晶品質の向上、クラックや異常成長の抑制、ツイン抑制、反りによる基板の割れ等においてもまだまだ課題が数多く存在している。このような状況下、現在、コランダム構造を有する結晶性半導体の成膜について、いくつか検討がなされている。
【0004】
特許文献1には、ガリウム又はインジウムの臭化物又はヨウ化物を用いて、ミストCVD法により、酸化物結晶薄膜を製造する方法が記載されている。特許文献2〜4には、コランダム型結晶構造を有する下地基板上に、コランダム型結晶構造を有する半導体層と、コランダム型結晶構造を有する絶縁膜とが積層された多層構造体が記載されている。また、特許文献5〜7のように、ELO基板やボイド形成を用いて、ミストCVDによる成膜も検討されている。しかしながら、いずれの方法も成膜レートや結晶品質および大面積化の両立においてまだまだ満足のいくものではなく、成膜方法が待ち望まれていた。
特許文献8には、少なくとも、ガリウム原料と酸素原料とを用いて、ハライド気相成長法(HVPE法)により、コランダム構造を有する酸化ガリウムを成膜することが記載されている。また、非特許文献1には、HVPE法用いてELO基板上に酸化ガリウムを成膜することが記載されている。しかしながら、いずれの方法も転位などの結晶品質においてまだまだ満足のいくものではなく、結晶品質に優れた結晶膜が待ち望まれていた。
なお、特許文献1〜8はいずれも本出願人らによる特許または特許出願に関する公報であり、現在も検討が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高品質な結晶層を備える結晶性積層構造体を工業的有利に得ることができる結晶性積層構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、結晶基板上に、応力緩和層を介して、結晶性酸化物の単結晶を含む結晶性酸化物層を形成する結晶性積層構造体の製造方法において、前記応力緩和層に、κ−Ga
2O
3を含む多結晶を用いて結晶性積層構造体を製造すると、結晶性等の品質に優れた結晶層を有する結晶性積層構造体を簡便且つ容易に得られることを知見し、このような結晶性積層構造体の製造方法によれば、上記した従来の問題を一挙に解決できることを見出した。
【0009】
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 結晶基板上に、応力緩和層を介して、結晶性酸化物の単結晶を含む結晶性酸化物層を形成する結晶性積層構造体の製造方法であって、前記応力緩和層に、κ−Ga
2O
3を含む多結晶を用いることを特徴とする結晶性積層構造体の製造方法。
[2] 前記結晶基板が、サファイア基板である前記[1]記載の製造方法。
[3] 前記応力緩和層が、表面の少なくとも一部に凹部または凸部からなる凹凸部を有する前記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記応力緩和層の形成を、前記結晶基板上に、直接または他の層を介して、凹部または凸部からなる凹凸部を形成し、ついで、該凹凸部上に、前記応力緩和層を成膜することにより行う前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記凹凸部の形成を、前記結晶基板上に直接または他の層を介してマスクを規則的に配列することにより行う前記[4]記載の製造方法。
[6] 前記マスク上に、前記応力緩和層が形成されている前記[5]記載の製造方法。
[7] 前記マスク層が、周期律表第4族金属の金属酸化物を含む前記[5]または[6]に記載の製造方法。
[8] 周期律表第4族金属が、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである前記[7]記載の製造方法。
[9] 前記結晶性酸化物が少なくともガリウムを含む前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記結晶性酸化物がコランダム構造を有する前記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記結晶性酸化物層の転位密度が、1×10
7/cm
2以下である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の結晶性積層構造体の製造方法によれば、高品質な結晶層を備える結晶性積層構造体を工業的有利に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の結晶性積層構造体の製造方法は、結晶基板上に、応力緩和層を介して、結晶性酸化物の単結晶を含む結晶性酸化物層を形成する結晶性積層構造体の製造方法であって、前記応力緩和層に、κ−Ga
2O
3を含む多結晶を用いることを特長とする。本発明においては、前記結晶性酸化物層の少なくとも一部が前記応力緩和層に接触するように前記結晶性酸化物層を形成するのが好ましい。ここで、「単結晶」とは、結晶面、結晶軸が揃っている単一の結晶子からなる結晶をいう。また、「多結晶」とは、結晶面、結晶軸が異なる2以上の結晶子が粒界を介して接合または集積してなる結晶をいう。
【0014】
(結晶基板)
結晶基板は、結晶物を主成分として含む基板であれば、特に限定されず、公知の基板であってよい。絶縁体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいし、半導体基板であってもよい。単結晶基板であってもよいし、多結晶基板であってもよい。前記結晶基板としては、例えば、コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板、またはβ−ガリア構造を有する結晶物を主成分として含む基板、六方晶構造を有する結晶物を主成分として含む基板などが挙げられる。なお、前記「主成分」とは、基板中の組成比で、前記結晶物を50%以上含むものをいい、好ましくは70%以上含むものであり、より好ましくは90%以上含むものである。
【0015】
コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板としては、例えば、サファイア基板、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。前記β−ガリア構造を有する結晶物を主成分として含む基板としては、例えば、β−Ga
2O
3基板、またはβ−Ga
2O
3基とAl
2O
3とを含む混晶体基板などが挙げられる。なお、β−Ga
2O
3とAl
2O
3とを含む混晶体基板としては、例えば、Al
2O
3が原子比で0%より多くかつ60%以下含まれる混晶体基板などが好適な例として挙げられる。また、前記六方晶構造を有する基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。その他の結晶基板の例示としては、例えば、Si基板などが挙げられる。
【0016】
本発明においては、前記結晶基板が、サファイア基板であるのが好ましい。前記サファイア基板としては、例えば、c面サファイア基板、m面サファイア基板、a面サファイア基板などが挙げられる。また、前記サファイア基板はオフ角を有していてもよい。前記オフ角は、特に限定されないが、好ましくは0°〜15°である。なお、前記結晶基板の厚さは、特に限定されないが、好ましくは、50〜2000μmであり、より好ましくは200〜800μmである。
【0017】
本発明においては、前記結晶基板上に、直接または他の層を介して、凹部または凸部からなる凹凸部が形成されているのが好ましい。また、この場合、前記応力緩和層が、前記凹凸部を構成していてもよい。凹凸部は、凹部または凸部からなるものであれば特に限定されず、凹部からなる凹凸部であってもよいし、凸部からなる凹凸部であってもよい。また、前記凹凸部は、規則的な凹部または凸部から形成されていてもよいし、不規則な凹部または凸部から形成されていてもよい。本発明においては、前記凹凸部が周期的に形成されているのが好ましく、周期的かつ規則的にパターン化されているのがより好ましい。前記凹凸部の形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、ドット状、メッシュ状またはランダム状などが挙げられるが、本発明においては、ドット状またはストライプ状が好ましい。また、凹凸部が周期的かつ規則的にパターン化されている場合には、前記凹凸部のパターン形状が、三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形状、円状、楕円状などの形状であるのが好ましい。なお、ドット状に凹凸部を形成する場合には、ドットの格子形状を、例えば正方格子、斜方格子、三角格子、六角格子などの格子形状にするのが好ましく、三角格子の格子形状にするのがより好ましい。前記凹凸部の凹部または凸部の断面形状としては、特に限定されないが、例えば、コの字型、U字型、逆U字型、波型、または三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形などの多角形等が挙げられる。
【0018】
前記凸部の構成材料は、特に限定されず、公知の材料であってよい。絶縁体材料であってもよいし、導電体材料であってもよいし、半導体材料であってもよい。また、前記構成材料は、非晶であってもよいし、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。前記凸部の構成材料としては、例えば、Si、Ge、Ti、Zr、Hf、Ta、Sn等の酸化物、窒化物または炭化物、カーボン、ダイヤモンド、金属、これらの混合物などが挙げられる。より具体的には、SiO
2、SiNまたは多結晶シリコンを主成分として含むSi含有化合物、前記結晶性酸化物の結晶成長温度よりも高い融点を有する金属(例えば、白金、金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムなどの貴金属等)などが挙げられる。本発明においては、前記凸部の構成材料が、周期律表第4族金属(例えば、Ti、Zr、Hf等)を含むのが、前記多結晶をより効率的に形成することができるので、好ましく、周期律表第4族金属の金属酸化物を含むのがより好ましく、酸化チタンを含むのが最も好ましい。なお、前記構成材料の含有量は、凸部中、組成比で、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が最も好ましい。
【0019】
前記凸部の形成手段としては、公知の手段であってよく、例えば、フォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、レーザーパターニング、その後のエッチング(例えばドライエッチングまたはウェットエッチング等)などの公知のパターニング加工手段などが挙げられる。本発明においては、前記凸部がストライプ状またはドット状であるのが好ましく、ドット状であるのがより好ましい。また、本発明においては、前記結晶基板が、PSS(Patterned Sapphire Substrate)基板であるのも好ましい。前記PSS基板のパターン形状は、特に限定されず、公知のパターン形状であってよい。前記パターン形状としては、例えば、円錐形、釣鐘形、ドーム形、半球形、正方形または三角形のピラミッド形等が挙げられるが、本発明においては、前記パターン形状が、円錐形であるのが好ましい。また、前記パターン形状のピッチ間隔も、特に限定されないが、本発明においては、5μm以下であるのが好ましく、1μm〜3μmであるのがより好ましい。
また、本発明においては、前記凸部の形成を、前記結晶基板上にマスク層を形成することにより行うのが好ましい。マスク層は、例えば、真空蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等の公知の成膜手段によってマスク層の構成材料を成膜した後、上記した公知のパターグ加工手段によって加工することにより好適に形成することができる。前記マスク層の構成材料としては、前記凸部の構成材料として例示した材料等が挙げられる。本発明においては、前記マスク層を用いて結晶性積層構造体を製造する場合、前記マスク層上に応力緩和層を形成するのが好ましく、厚さが100nm以下の前記マスク層上に応力緩和層を形成するのが、より厚膜且つより転位が低減された結晶性酸化物層を得ることができるので、より好ましく、厚さ50nm以下の前記マスク層上に応力緩和層を形成するのが、結晶性酸化物層の転位密度を1×10
7/cm
2以下とすることができるので、最も好ましい。前記転位は、刃状転位、らせん転位またはこれらの混合転位をいう。また、この場合、前記マスク層の構成材料は、遷移金属の金属酸化物を含むのが好ましく、周期律表第4族金属の金属酸化物を含むのがより好ましく、酸化チタンを含むのが最も好ましい。前記マスク層の構成材料をこのような好ましいものとすることにより、κ−Ga
2O
3の多結晶をより容易に形成することができ、結晶性酸化物層の結晶性をより優れたものとすることができる。
【0020】
前記凹部は、特に限定されないが、上記凸部の構成材料と同様のものであってもよいし、基板であってもよい。本発明においては、前記凹部が、基板の表面上に設けられた空隙層であるのが好ましい。前記凹部の形成手段としては、前記凸部の形成手段と同様の手段を用いることができる。前記空隙層は、公知の溝加工手段により、基板に溝を設けることで、前記基板の表面上に形成することができる。本発明においては、前記空隙層を、例えば、スパッタリングによりマスク層を設けた後、ついで、フォトリソグラフィー等の公知のパターンニング加工手段を用いてパターニング加工することにより、好適に形成することができる。空隙層の溝幅、溝深さ、テラス幅等は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、適宜に設定することができる。
【0021】
以下、本発明において好適に用いられる結晶基板の好ましい態様を、図面を用いて説明する。
図2は、本発明における結晶基板の結晶成長面上に設けられた凹凸部の一態様を示す。
図2の凹凸部は、結晶基板1と、マスク層4とから構成されている。
図3は、天頂方向から見た
図2に示す凹凸部の表面を示している。
図2および
図3からわかるように、マスク層4は、結晶基板1の結晶成長面上に形成されており、ドット状に穴が空いている。マスク層4のドットの穴からは結晶基板1が露出しており、ドット状の凹部2bが三角格子状に形成されている。なお、前記ドットの円は、それぞれ一定の周期aの間隔ごとに設けられている。周期aは、特に限定されないが、本発明においては、1μm〜1mmであるのが好ましく、5μm〜300μmであるのがより好ましい。ここで、周期aは、隣接するドットの円の端部同士の間の距離をいう。なお、マスク層4は、マスク層4の構成材料を成膜した後、フォトリソグラフィー等の公知の手段を用いて所定形状に加工することにより形成することができる。また、マスク層4の構成材料としては、例えば、Si、Ge、Ti、Zr、Hf、Ta、Sn、Al等の酸化物、窒化物または炭化物、カーボン、ダイヤモンド、金属、またはこれらの混合物等が挙げられる。本発明においては、前記マスク層4が、遷移金属の金属酸化物を含むのが好ましく、周期律表第4族金属を含むのが好ましく、酸化チタンを含むのが最も好ましい。前記マスク層の構成材料をこのような好ましいものとすることにより、κ−Ga
2O
3の多結晶をより容易に形成することができ、結晶性酸化物層の結晶性をより優れたものとすることができる。また、マスク層4の成膜手段は、特に限定されず、公知の手段であってよい。前記マスク層4の成膜手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等が挙げられる。本発明においては、前記マスク層が酸化チタンを含む場合には、スパッタリング法を用いるのが、より好適にマスク層4上に多結晶酸化物を形成することができるので、好ましく、反応性スパッタリング法を用いるのがより好ましく、O
2ガス供給下の反応性スパッタリング法を用いるのが最も好ましい。
【0022】
図4は、本発明における結晶基板の結晶成長面上に設けられた凹凸部の一態様を示す。
図4の凹凸部は、結晶基板1と、マスク層4とから構成されている。マスク層は、結晶基板1の結晶成長面上にストライプ状に形成されており、マスク層4によって、凹部(溝)2bがストライプ状に形成されている。なお、マスク層4は、フォトリソグラフィー等の公知の手段を用いて形成することができる。また、マスク層4の構成材料としては、例えば、Si、Ge、Ti、Zr、Hf、Ta、Sn、Al等の酸化物、窒化物または炭化物、カーボン、ダイヤモンド、金属、またはこれらの混合物等が挙げられる。本発明においては、前記マスク層4が、遷移金属の金属酸化物を含むのが好ましく、周期律表第4族金属を含むのが好ましく、酸化チタンを含むのが最も好ましい。前記マスク層の構成材料をこのような好ましいものとすることにより、κ−Ga
2O
3の多結晶をより容易に形成することができ、結晶性酸化物層の結晶性をより優れたものとすることができる。
【0023】
凹凸部の凸部(マスク層)の幅および高さ、凹部の幅および深さ、間隔などは特に限定されないが、本発明においては、前記凸部(マスク層)の幅が約1μm〜約1mmであるのが好ましく、約5μm〜約300μmであるのがより好ましく、約10μm〜約100μmであるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記凸部(マスク層)の高さが、約1nm〜約10μmであるのが好ましく、約5nm〜約1μmであるのがより好ましく、約10nm〜約100nmであるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記凹部の幅が、約1μm〜約300μmであるのが好ましく、約3μm〜約100μmであるのがより好ましく、約5μm〜約50μmであるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記凹部の深さが、約1nm〜約1mmであるのが好ましく、約10nm〜約300μmであるのがより好ましく、約20nm〜約100μmであるのが最も好ましい。前記凹凸部をこれら好ましいものとすることにより、より優れた前記結晶性積層構造体をより容易に得ることができる。なお、前記凹凸部は前記結晶基板上に直接形成されていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよい。
【0024】
本発明においては、前記結晶基板上に応力緩和層等を含むバッファ層を設けてもよく、バッファ層を設ける場合には、バッファ層上でも前記凹凸部を形成してもよい。また、本発明においては、前記基板が、表面の一部または全部に、バッファ層を有しているのが好ましい。前記バッファ層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよい。前記形成手段としては、例えば、スプレー法、ミストCVD法、HVPE法、MBE法、MOCVD法、スパッタリング法等が挙げられる。本発明においては、前記バッファ層が、ミストCVD法により形成されているのが、前記バッファ層上に形成される前記結晶膜の膜質をより優れたものとでき、特に、チルト等の結晶欠陥を抑制できるため、好ましい。
【0025】
前記応力緩和層の形成手段は、前記多結晶を形成できる手段であれば特に限定されず、公知の手段であってよい。前記応力緩和層の形成手段としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法、パルス成長法、ALD法またはスパッタリング法等が挙げられる。本発明においては、前記形成手段が、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法またはHVPE法であるのが好ましく、HVPE法であるのがより好ましい。
【0026】
以下、前記応力緩和層の形成手段として、HVPE法を用いた場合を例として、本発明をより詳細に説明する。前記HVPE法は、具体的には、例えば、金属を含む金属源をガス化して金属ハロゲン化物ガスとし、ついで、前記金属ハロゲン化物ガスと、酸素含有原料ガスとを反応室内の前記結晶基板に供給して成膜する際に、反応性ガスを前記結晶基板上に供給し、前記成膜を前記反応性ガスの流通下で行うのが好ましい。
【0027】
(金属源)
前記金属源は、金属を含んでおり、ガス化が可能なものであれば、特に限定されず、金属単体であってもよいし、金属化合物であってもよい。前記金属としては、例えば、ガリウム、アルミニウム、インジウム、鉄、クロム、バナジウム、チタン、ロジウム、ニッケル、コバルトおよびイリジウム等から選ばれる1種または2種以上の金属等が挙げられる。本発明においては、前記金属が、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムから選らばれる1種または2種以上の金属であるのが好ましく、ガリウムであるのがより好ましく、前記金属源が、ガリウム単体であるのが最も好ましい。また、前記金属源は、気体であってもよいし、液体であってもよいし、固体であってもよいが、本発明においては、例えば、前記金属としてガリウムを用いる場合には、前記金属源が液体であるのが好ましい。
【0028】
前記ガス化の手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の手段であってよい。本発明においては、前記ガス化の手段が、前記金属源をハロゲン化することにより行われるのが好ましい。前記ハロゲン化に用いるハロゲン化剤は、前記金属源をハロゲン化できさえすれば、特に限定されず、公知のハロゲン化剤であってよい。前記ハロゲン化剤としては、例えば、ハロゲンまたはハロゲン化水素等が挙げられる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素等が挙げられる。また、ハロゲン化水素としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられる。本発明においては、前記ハロゲン化に、ハロゲン化水素を用いるのが好ましく、塩化水素を用いるのがより好ましい。本発明においては、前記ガス化を、前記金属源に、ハロゲン化剤として、ハロゲンまたはハロゲン化水素を供給して、前記金属源とハロゲンまたはハロゲン化水素とをハロゲン化金属の気化温度以上で反応させてハロゲン化金属とすることにより行うのが好ましい。前記ハロゲン化反応温度は、特に限定されないが、本発明においては、例えば、前記金属源がガリウムであり、前記ハロゲン化剤が、HClである場合には、900℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、400℃〜700℃であるのが最も好ましい。前記金属ハロゲン化物ガスは、前記金属源の金属のハロゲン化物を含むガスであれば、特に限定されない。前記金属ハロゲン化物ガスとしては、例えば、前記金属のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、金属を含む金属源をガス化して金属ハロゲン化物ガスとした後、前記金属ハロゲン化物ガスと、前記酸素含有原料ガスとを、前記反応室内の基板上に供給する。また、本発明においては、反応性ガスを前記基板上に供給する。前記応力緩和層の形成温度は、特に限定されないが、本発明においては、例えば、前記金属源がガリウムであり、前記ハロゲン化剤が、HClである場合には、900℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、400℃〜700℃であるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記応力緩和層の形成を低温(例えば500℃未満)で行い、結晶性酸化物層の形成を高温(例えば、500℃以上)で行うのも、前記応力緩和層および前記結晶性酸化物層をより良好に作り分けることができるので、好ましい。前記酸素含有原料ガスとしては、例えば、O
2ガス、CO
2ガス、NOガス、NO
2ガス、N
2Oガス、H
2OガスまたはO
3ガスから選ばれる1種または2種以上のガスである。本発明においては、前記酸素含有原料ガスが、O
2、H
2OおよびN
2Oからなる群から選ばれる1種または2種以上のガスであるのが好ましく、O
2を含むのがより好ましい。前記反応性ガスは、通常、金属ハロゲン化物ガスおよび酸素含有原料ガスとは異なる反応性のガスであり、不活性ガスは含まれない。前記反応性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、エッチングガス等が挙げられる。前記エッチングガスは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のエッチングガスであってよい。本発明においては、前記反応性ガスが、ハロゲンガス(例えば、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガスまたはヨウ素ガス等)、ハロゲン化水素ガス(例えば、フッ酸ガス、塩酸ガス、臭化水素ガスまたはヨウ化水素ガス等)、水素ガスまたはこれら2種以上の混合ガス等であるのが好ましく、ハロゲン化水素ガスを含むのが好ましく、塩化水素を含むのが最も好ましい。なお、前記金属ハロゲン化物ガス、前記酸素含有原料ガス、前記反応性ガスは、キャリアガスを含んでいてもよい。前記キャリアガスとしては、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス等が挙げられる。また、前記金属ハロゲン化物ガスの分圧は特に限定されないが、本発明においては、0.5Pa〜1kPaであるのが好ましく、5Pa〜0.5kPaであるのがより好ましい。前記酸素含有原料ガスの分圧は、特に限定されないが、本発明においては、前記金属ハロゲン化物ガスの分圧の0.5倍〜100倍であるのが好ましく、1倍〜20倍であるのがより好ましい。前記反応性ガスの分圧も、特に限定されないが、本発明においては、前記金属ハロゲン化物ガスの分圧の0.1倍〜5倍であるのが好ましく、0.2倍〜3倍であるのがより好ましい。
【0030】
本発明においては、さらに、ドーパント含有原料ガスを前記基板に供給するのも好ましい。前記ドーパント含有原料ガスは、ドーパントを含んでいれば、特に限定されない。前記ドーパントも、特に限定されないが、本発明においては、前記ドーパントが、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブおよびスズから選ばれる1種または2種以上の元素を含むのが好ましく、ゲルマニウム、ケイ素、またはスズを含むのがより好ましく、ゲルマニウムを含むのが最も好ましい。このようにドーパント含有原料ガスを用いることにより、得られる膜の導電率を容易に制御することができる。前記ドーパント含有原料ガスは、前記ドーパントを化合物(例えば、ハロゲン化物、酸化物等)の形態で有するのが好ましく、ハロゲン化物の形態で有するのがより好ましい。前記ドーパント含有原料ガスの分圧は、特に限定されないが、本発明においては、前記金属含有原料ガスの分圧の1×10
−7倍〜0.1倍であるのが好ましく、2.5×10
−6倍〜7.5×10
−2倍であるのがより好ましい。なお、本発明においては、前記ドーパント含有原料ガスを、前記反応性ガスとともに前記基板上に供給するのが好ましい。
【0031】
(応力緩和層)
前記応力緩和層は、κ−Ga
2O
3を含む多結晶を含むものであれば、特に限定されない。本発明においては、前記応力緩和層が、κ−Ga
2O
3を含む多結晶を主成分として含むのが好ましい。ここで、「主成分」とは、例えば、前記応力緩和層がGa
2O
3を主成分として含む場合、前記応力緩和層中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でGa
2O
3が含まれていればそれでよい。本発明においては、前記応力緩和層中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であるのが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。前記応力緩和層の厚さは、特に限定されず、1μm以上であってもよいし、1μm以下であってもよい。なお、本発明においては、前記応力緩和層が、非晶質部分を含んでいてもよい。
【0032】
本発明においては、前記応力緩和層として、表面の少なくとも一部に凹部または凸部からなる凹凸部を有する応力緩和層を積層するのも、前記結晶性酸化物層の品質をより優れたものとすることができるので、好ましい。このような応力緩和層の形成は、例えば、前記結晶基板の表面に前記凹凸部を形成し、ついで、前記凹凸部上に上記した好ましい形成手段を用いて前記応力緩和層を形成することにより、好適に行うことができる。前記応力緩和層が有する凹凸部の形状等は、上記した結晶基板上の凹凸部の形状等と同様であってよい。
【0033】
前記結晶性酸化物層の形成手段は、結晶性酸化物の単結晶を含む結晶性酸化物層が得られる手段であれば、特に限定されず、公知の手段であってよい。前記形成手段としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法、パルス成長法またはALD法等が挙げられる。本発明においては、前記形成手段が、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法またはHVPE法であるのが好ましく、HVPE法であるのがより好ましい。本発明においては、前記結晶性酸化物層の形成手段および条件等が、前記応力緩和層の形成手段と同様であってもよい。
【0034】
(結晶性酸化物層)
結晶性酸化物層は、結晶性酸化物の単結晶を含むものであれば、特に限定されないが、本発明においては、前記結晶性酸化物の単結晶を主成分として含むのが好ましい。また、本発明においては、前記結晶性酸化物が半導体であってもよい。前記結晶性酸化物としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉄、クロム、バナジウム、チタン、ロジウム、ニッケル、コバルトおよびイリジウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含む金属酸化物の結晶などが挙げられる。本発明においては、前記結晶性酸化物が、アルミニウム、インジウムおよびガリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含有するのが好ましく、少なくともガリウムを含むのがより好ましく、結晶性酸化ガリウムまたはその混晶であるのが最も好ましい。前記結晶性酸化物の結晶構造は、特に限定されない。前記結晶性酸化物の結晶構造としては、例えば、コランダム構造、β―ガリア構造、六方晶構造(例えば、ε型構造等)、直方晶構造(例えばκ型構造等)、立方晶構造、または正方晶構造等が挙げられる。本発明においては、前記結晶性酸化物が、コランダム構造、β―ガリア構造または六方晶(例えば、ε型構造等)を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。このような好ましい結晶性酸化物層と上記した好ましい応力緩和層とを組み合わせることにより、前記結晶性酸化物層の結晶性等の品質をより優れたものとすることができる。なお、「主成分」とは、前記結晶性酸化物が、原子比で、前記結晶性酸化物層の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。前記結晶性酸化物層の厚さは、特に限定されないが、10μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましく、50μm以上であるのが最も好ましい。また、本発明においては、前記結晶性酸化物層が、横方向成長部を含むのが好ましい。前記横方向成長部は、前記結晶性酸化物層の厚さ方向に対して横方向または略横方向に成長した部分であれば、特に限定されない。また、本発明においては、前記応力緩和層が単結晶を含む場合、前記結晶性酸化物の結晶構造と前記応力緩和層における前記単結晶の結晶構造とが同じであるのが、前記結晶性酸化物層の横方向成長部等の結晶性をより優れたものとすることができるので、好ましく、前記結晶性酸化物と前記応力緩和層における前記単結晶の構成材料とが同じであるのがより好ましい。
【0035】
前記結晶性酸化物層には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、特に限定されず、公知のものであってよく、n型ドーパントであってもよいし、p型ドーパントであってもよい。前記n型ドーパントとしては、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブまたはこれらの2種以上の元素等が挙げられる。前記p型ドーパントとしては、例えば、Mg、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ti、Pb、N、Pまたはこれらの2種以上の元素等が挙げられる。前記ドーパントの含有量も、特に限定されないが、前記結晶性酸化物層中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%〜20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%〜10原子%であるのが最も好ましい。
【0036】
本発明の製造方法を用いて得られた結晶性積層構造体は、特に、半導体装置に好適に用いることができ、とりわけ、パワーデバイスに有用である。前記結晶性積層構造体を用いて形成される半導体装置としては、MISやHEMT、MOS等のトランジスタやTFT、半導体‐金属接合を利用したショットキーバリアダイオード、他のP層と組み合わせたPN又はPINダイオード、受発光素子が挙げられる。本発明においては、前記結晶性積層構造体をそのまま半導体装置等に用いてもよいし、前記基板等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、半導体装置等に適用してもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
1.マスクの形成
基板として、表面にα―Ga
2O
3層が形成されたサファイア基板(c面、オフ角0.25°)を用いて、基板上にスパッタリング法を用いて酸化チタンからなるマスク層を形成し、ついで、フォトリソグラフィー法を用いて、形成したマスク層を所定形状のマスクに加工した。なお、スパッタリング法においては、O
2ガスを流しながらTiターゲットを用いて、酸化チタンからなるマスク層(厚さ50nm)を形成した。また、マスク層の加工は、具体的には開口部(ドット)(直径:5μm)が、周期(隣接するドットの端部どうしの間の距離)20μmで三角格子状に基板上に配列するようにマスク層を加工した。
【0039】
2.応力緩和層および結晶性酸化物層の形成
2−1.HVPE装置
図1を用いて、本実施例で用いたハライド気相成長(HVPE)装置50を説明する。HVPE装置50は、反応室51と、金属源57を加熱するヒータ52aおよび基板ホルダ56に固定されている基板を加熱するヒータ52bとを備え、さらに、反応室51内に、酸素含有原料ガス供給管55bと、反応性ガス供給管54bと、基板を設置する基板ホルダ56とを備えている。そして、反応性ガス供給管54b内には、金属含有原料ガス(金属ハロゲン化物ガス)供給管53bが備えられており、二重管構造を形成している。なお、酸素含有原料ガス供給管55bは、酸素含有原料ガス供給源55aと接続されており、酸素含有原料ガス供給源55aから酸素含有原料ガス供給管55bを介して、酸素含有原料ガスが基板ホルダ56に固定されている基板に供給可能なように、酸素含有原料ガスの流路を構成している。また、反応性ガス供給管54bは、反応性ガス供給源54aと接続されており、反応性ガス供給源54aから反応性ガス供給管54bを介して、反応性ガスが基板ホルダ56に固定されている基板に供給可能なように、反応性ガスの流路を構成している。金属含有原料ガス供給管53bは、ハロゲン含有原料ガス供給源53aと接続されており、ハロゲン含有原料ガスが金属源に供給されて金属含有原料ガスとなり金属含有原料ガスが基板ホルダ56に固定されている基板に供給される。反応室51には、使用済みのガスを排気するガス排出部59が設けられており、さらに、反応室51の内壁には、反応物が析出するのを防ぐ保護シート58が備え付けられている。
【0040】
2−2.成膜準備
金属含有原料ガス供給管53b内部にガリウム(Ga)金属源57(純度99.99999%以上)を配置し、反応室51内の基板ホルダ56上に、基板として、上記1.で得られたマスク層付きのサファイア基板を設置した。その後、ヒータ52aおよび52bを作動させて反応室51内の温度を570℃(Ga金属源付近)および520℃(基板ホルダ付近)にまで昇温させた。
【0041】
2−3.κ−Ga
2O
3およびα−Ga
2O
3の成膜
金属原料含有ガス供給管53b内部に配置したガリウム(Ga)金属57に、ハロゲン含有原料ガス供給源53aから、塩化水素(HCl)ガス(純度99.999%以上)を供給した。Ga金属と塩化水素(HCl)ガスとの化学反応によって、塩化ガリウム(GaCl/GaCl
3)を生成した。得られた塩化ガリウム(GaCl/GaCl
3)と、酸素含有原料ガス供給源55aから供給されるO
2ガス(純度99.99995%以上)を、反応性ガス供給管54bを通して、前記基板上に供給した。そして、HClガスの流通下で、塩化ガリウム(GaCl/GaCl
3)およびO
2ガスを基板上で大気圧下、520℃にて反応させ、基板上に成膜した。ここで、ハロゲン含有原料ガス供給源53aから供給されるHClガスの分圧を1.25×10
−1kPa、反応性ガス供給源54aから供給されるHClガスの分圧を1.25×10
−1kPa、酸素含有原料ガス供給源55aから供給されるO
2ガスの分圧を1.25kPaに、それぞれ維持した。
【0042】
2−4.評価
上記2−3.において、40分後、2時間後、5時間後のそれぞれの結晶成長の様子をSEMにて観察した。結果を
図5に示す。上記2−3.で得られた積層構造体は、κ−Ga
2O
3多結晶上にα−Ga
2O
3単結晶が結晶膜として形成され、得られた結晶膜は、転位密度が5×10
6/cm
2以下であり、異常成長やクラックが認められず、きれいな結晶膜であった。
【0043】
(実施例2)
マスク層の周期を10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層構造体を作製した。結晶成長の様子と、得られた積層構造体の外観写真を
図6に示す。得られた積層構造体は、κ−Ga
2O
3多結晶上にα−Ga
2O
3単結晶が結晶膜として形成され、得られた結晶膜は、転位密度が5×10
6/cm
2以下であり、異常成長やクラックが認められず、きれいな結晶膜であった。
【0044】
(比較例1)
マスク材料として、SiO
2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層構造体を作製した。結晶成長の様子と、得られた積層構造体の外観写真を
図6に示す。得られた積層構造体の結晶膜は、結晶性が低く、異常成長が肉眼で確認できるほどであった。