【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載ウェブサイトのアドレス:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI−PROJECT−19K23732/、掲載年月日:令和01年09月03日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、線維性疾患の根本的な治療方法は開発されておらず、新規治療薬の開発が求められている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、新規線維化抑制剤、及び線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を含む。
[1]羊膜上皮細胞の分泌物を含有する、線維化抑制剤。
[2]前記羊膜上皮細胞の分泌物が、前記羊膜上皮細胞が分泌するエクソソームである、[1]に記載の線維化抑制剤。
[3]前記羊膜上皮細胞の分泌物が、miR−483−5pである、[1]に記載の線維化抑制剤。
[4]羊膜上皮細胞の分泌物を含有する、線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
[5]前記羊膜上皮細胞の分泌物が、前記羊膜上皮細胞が分泌するエクソソームである、[4]に記載の医薬組成物。
[6]前記羊膜上皮細胞の分泌物が、miR−483−5pである、[5]に記載の医薬組成物。
[7]前記線維性疾患が、肝臓の線維性疾患である、[6]に記載の医薬組成物。
[8]前記肝臓の線維性疾患が、肝硬変である、[7]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規線維化抑制剤、及び線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[線維化抑制剤]
一実施形態において、本発明は、羊膜上皮細胞の分泌物を含む、線維化抑制剤、を提供する。
【0012】
「羊膜上皮細胞」は、羊膜の上皮から分離された細胞、及び前記細胞に由来する細胞を意味する。羊膜上皮細胞の分泌物は、星細胞の活性化を抑制し、組織の線維化を抑制する作用を有する。羊上皮膜細胞が由来する生物種は、本実施形態の線維化抑制剤の投与対象となる生物種と同一であることが好ましい。羊膜上皮細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、又はヒト以外の哺乳動物が挙げられる。ヒト以外の哺乳動物は、特に限定されないが、例えば、霊長類(サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(マウス、ハムスター、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等が挙げられる。羊膜細胞は、好ましくは、ヒトの羊膜上皮細胞である。
【0013】
羊膜上皮細胞の分泌物は、例えば、羊膜上皮細胞を培養した培養上清から得ることができる。羊膜上皮細胞の培養方法は、特に限定されず、公知の方法で培養することができる。培地は、公知の細胞培養用培地を特に限定なく用いることができる。培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培養液(DMEM)、MEM培養液(α−MEM、MEM[Hank’s Bss]等)、RPMI培養液(RPMI 1640等)、F12培養液、StemPro34、mTeSR1等が挙げられる。培養温度は、25〜40℃が挙げられ、30〜40℃が好ましく、35〜37℃がより好ましい。
【0014】
羊膜上皮細胞の分泌物は、羊膜上皮細胞の培養上清をそのまま用いてもよいし、前記培養上清から特定の成分を分離して用いてもよい。培養上清は、羊膜上皮細胞を培養し、培養液から羊膜上皮細胞を分離することにより、得ることができる。培養上清と羊膜上皮細胞とを分離する方法は、特に限定されないが、例えば、遠心分離法、フィルターろ過等が挙げられる。
【0015】
羊膜上皮細胞の分泌物としては、例えば、エクソソームが挙げられる。本実施形態の線維化抑制剤は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを含有するものであってもよい。エクソソームは、羊膜上皮細胞の培養上清から取得することができる。例えば、羊膜上皮細胞の培養上清からエクソソームを分離する方法は、特に限定されないが、例えば、超遠心分離、限外ろ過、連続フロー電気泳動、クロマトグラフィー等の方法が挙げられる。
【0016】
エクソソームは、miR−483−5pを含有することが好ましい。miR−483−5pは、羊膜上皮細胞由来のエクソソームに特異的に含まれるmiRNAである。後述する実施例で示すように、miR−483−5pは、星細胞の脱活性化を誘導し、線維化を抑制する作用を有する。そのため、miR−483−5pを含むエクソソームを用いることにより、線維化抑制効果を奏することができる。羊膜上皮細胞由来のエクソソームは、通常、miR−483−5pを含有する。ヒトのmiR−483−5p(hsa−miR−483−5p)の塩基配列を配列番号1に示す。
aagacgggaggaaagaagggag(配列番号1)
【0017】
羊膜上皮細胞の分泌物は、miR−483−5pであってもよい。miR−483−5pは、配列番号1に示す塩基配列に基づき、公知の核酸合成法で合成することにより、取得することができる。核酸合成法としては、例えば、ホスホロアミダイト法等が挙げられる。
【0018】
miR−483−5pは、ヌクレオチド残基の一部又は全部が、人工ヌクレオチドから誘導されるヌクレオチド残基で構成されていてもよい。「人工ヌクレオチド」は、リボヌクレオチドの糖部分、塩基部分及びリン酸基部分のいずれか1つ以上が修飾されたヌクレオチドである。人工ヌクレオチドとしては、例えば、BNA、ENA等が挙げられるが、これらに限定されない。また、miR−483−5pは、ヌクレオチド残基の一部が、デオキシリボヌクレオチドから誘導されるヌクレオチド残基で構成されていてもよい。一般的に、人工ヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドから誘導されるヌクレオチド残基の存在は、核酸分子の安定性を向上させる。本明細書において、「miR−483−5p」という用語は、RNAのみからなるものに加えて、人工ヌクレオチド残基及びデオキシリボヌクレオチド残基からなる群より選択される少なくとも1種を含むものも包含する。
【0019】
本実施形態の線維化抑制剤は、羊膜上皮細胞の分泌物に加えて、任意成分を含んでいてもよい。前記任意成分は、特に限定されず、医薬品分野において常用されるものを特に制限なく使用することができる。任意成分としては、例えば、後述する薬学的に許容される担体等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の線維化抑制剤は、組織又は器官の線維化を抑制するために、対象に投与して使用することができる。あるいは、後述する医薬組成物として、対象に投与することができる。線維化の抑制対象となる組織又は器官は、線維化が生じる組織又は器官であれば、特に限定されない。線維化が生じる組織又は器官としては、例えば、肝臓、肺、腎臓、皮膚、骨髄、心内膜、皮膚、後腹膜、腸間膜、乳腺、消化管、脂肪組織等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
[医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、羊膜上皮細胞の分泌物を含有する、線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
【0022】
羊膜上皮細胞の分泌物は、線維化抑制効果があるため、医薬組成物に含有させることにより、線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物として用いることができる。本実施形態の医薬組成物は、羊膜上皮細胞の分泌物を有効成分として含有する。羊膜上皮細胞の分泌物は、エクソソームであることが好ましく、miR−483−5pであることがより好ましい。
【0023】
線維性疾患は、組織又は器官の線維化に伴って発生する疾患である。線維性疾患は、特に限定されないが、例えば、肝硬変、肺線維症、腎線維症、膵線維症、心筋線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腸間膜線維症、乳腺線維症、嚢胞性線維症、消化管線維症、脂肪組織線維症、全身性強皮症、限局性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚創傷後または皮膚潰瘍後の瘢痕、皮膚線維症等が挙げられるが、これらに限定されない。線維性疾患は、肝臓の線維性疾患であることが好ましく、肝硬変がより好ましい。
【0024】
本実施形態の医薬組成物の適用対象の生物種は、線維性疾患を発症する生物であれば、特に限定されない。適用対象の生物種としては、例えば、ヒト、又はヒト以外の哺乳動物が挙げられる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、霊長類(サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(マウス、ハムスター、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本実施形態の医薬組成物は、羊膜上皮細胞の分泌物に加えて、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的に許容される担体」とは、有効成分の生理活性を阻害せず、且つ、その投与対象に対して実質的な毒性を示さない担体を意味する。「実質的な毒性を示さない」とは、その成分が通常使用される投与量において、投与対象に対して毒性を示さないことを意味する。本実施形態の医薬組成物においては、薬学的に許容される担体は、羊膜上皮細胞の分泌物の線維化抑制能を阻害せず、且つその投与対象に対して実質的な毒性を示さない担体である。薬学的に許容される担体は、典型的には非活性成分とみなされる、公知のあらゆる薬学的に許容され得る成分を包含する。薬学的に許容される担体は、特に限定されないが、例えば、溶媒、希釈剤、ビヒクル、賦形剤、流動促進剤、結合剤、造粒剤、分散化剤、懸濁化剤、湿潤剤、滑沢剤、崩壊剤、可溶化剤、安定剤、乳化剤、充填剤、保存剤(例えば、酸化防止剤)、キレート剤、矯味矯臭剤、甘味剤、増粘剤、緩衝剤、着色剤等が挙げられる。薬学的に許容される担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本実施形態の医薬組成物は、さらに任意成分を含んでいてもよい。任意成分は、特に限定されず、医薬分野において常用されるものを特に制限なく使用することができる。本実施形態の医薬組成物は、羊膜上皮細胞の分泌物以外の活性成分を含んでいてもよい。活性成分としては、例えば、ビタミン類及びその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、止痒剤、角質軟化剥離剤等が挙げられるが、これらに限定されない。任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本実施形態の医薬組成物の剤型は、特に制限されず、医薬品製剤として一般的に用いられる剤型とすることができる。本実施形態の医薬組成物は、経口製剤であってもよく、非経口製剤であってもよい。経口製剤としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、細粒剤、液剤、ドロップ愛、乳剤等が例示される。非経口製剤としては、例えば、注射剤、坐剤、軟膏、スプレー剤、外用液剤、点耳剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤等が例示される。これらの剤型の医薬組成物は、定法(例えば、日本薬局方記載の方法)に従って、製剤化することができる。
【0028】
本実施形態の医薬組成物の投与経路は、特に限定されず、経口又は非経口経路で投与することができる。なお、非経口経路は、経口以外の全ての投与経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、腟内及び腹腔内等への投与を包含する。また、投与は、局所投与であっても全身投与であってもよい。
【0029】
本実施形態の医薬組成物は、羊膜上皮細胞の分泌物の治療的有効量を投与することができる。「治療的有効量」とは、対象疾患の治療又は予防のために有効な薬剤の量を意味する。例えば、羊膜上皮細胞の分泌物の治療的有効量は、線維性疾患の発症及び/又は進行を遅らせることができる量であり得る。治療的有効量は、患者の症状、体重、年齢、及び性別等、並びに医薬組成物の剤型、及び投与方法等によって適宜決定すればよい。例えば、本実施形態の医薬組成物は、羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)の1回の投与量として、投与対象の体重1kgあたり、0.01〜1000mgとすることができる。前記投与量は、0.001〜1000mg/kgであってもよく、0.01〜500mg/kgであってもよく、0.1〜400mg/kgであってもよく、0.5〜300mg/kgであってもよい。
【0030】
本実施形態の医薬組成物は、単位投与形態あたり、治療的有効量の羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)を含んでいてもよい。例えば、本実施形態の医薬組成物における化合物(I)等の含有量は、0.01〜90質量%であってもよく、0.05〜80質量%であってもよく、0.1〜60質量%であってもよい。
【0031】
本実施形態の医薬組成物の投与間隔は、患者の症状、体重、年齢、及び性別等、並びに医薬組成物の剤型、及び投与方法等によって適宜決定すればよい。投与間隔は、例えば、数時間毎、1日1回、2〜3日に1回、1週間に1回等とすることができる。
【0032】
[他の態様]
一実施形態において、本発明は、羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)を含む、線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
一実施形態において、本発明は、線維性疾患を治療又は予防するための医薬組成物の製造における、羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、線維性疾患を治療又は予防に使用するための、羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、前記羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)を対象(例、線維性疾患に罹患している患者など)に投与することを含む、線維性疾患の治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、線維性疾患を治療又は予防するための、羊膜上皮細胞の分泌物(例えば、羊膜上皮細胞由来エクソソーム、又はmiR−483−5p)を提供する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
1.細胞
ヒト羊膜上皮細胞は、帝王切開で得られた正常ヒト胎盤より羊膜を分離し、酵素法を用いて羊膜上皮細胞を分離した。ヒト羊膜上皮細胞は、遠心分離法によってエクソソームを除去したknockout serum replacement (KSR)10%を含むDMEM培地を用いて維持した。
ヒト肝星培養細胞であるLX−2細胞は、EMD Millipore(Temecula,CA,USA)より購入したものを用いた。LX−2細胞は、高濃度グルコース(4.5g/dL),2%ウシ胎児血清(FBS),1X Pen/Strep 1X L−glutamineを含むDMEM培地を用いて維持した。
【0035】
2.ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームの回収
ヒト初代羊膜上皮細胞を10mLのDMEM・KSR培地を用いて、5%CO
2、37℃で2日間培養した。培養液を遠心分離して培養上清を回収した。さらに、培養上清から、段階遠心分離法(300 x g for 10min,2,000 x g for 10min,and 10,000 × g for 30min at 4°C)により、エクソソームを回収した。
【0036】
3.線維化抑制能の評価
ヒト肝星培養細胞であるLX−2細胞は、2%FBSを含む低濃度グルコース(1g/dL)DMEMで48時間培養したのち、ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソーム及び担体であるリン酸バッファーのみを培養液に添加した。5%CO
2、37℃で17時間培養したのち、ヒトTGFβ―1(recombinant human TGFβ1、Peprotech)を以下のように添加した。
(1)リン酸バッファーのみ添加、TGFβ−非添加
(2)リン酸バッファーのみ添加、TGFβ−添加(終濃度10ng/ml)
(3)ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソーム添加(終濃度10ug/ml)、TGFβ−添加(終濃度10ng/ml)
【0037】
TGFβ―1添加後48時間培養後、上記(1)〜(3)のヒト肝星細胞からフェノール/グアニジンイソチオシアネート法(Trizol)を用いて全RNAを抽出した。次いで、定量RT−PCRにより、α−smooth muscle actin(α−SMA)のmRNAを定量した。定量RT−PCRは、α−SMAとpeptidylprolyl isomerase A(PPIA)に特異的なプライマーセットとTaqMan Gene Expression Assaysを用いて、ViiA(登録商標)7リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific社製)により行った。α−SMAは、肝星細胞の活性化マーカーであり、PPIAは、内在性コントロールである。
【0038】
結果を
図1に示す。
図1では、PPIAに対するα―SMAの相対発現量を示した。ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームは、TGFβ−1によるα−SMAの発現上昇を有意に抑制することが確認された。この結果は、ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームがα−SMAの発現を抑制し、肝星細胞の活性化すなわち線維化を抑制することを示唆している。
【0039】
[実施例2]
1.細胞
ヒト羊膜上皮細胞は、上記と同様のものを用いた。
正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞は、LONZA(NHDF−Neo,CC−2509)より購入したものを用いた。ヒト新生児皮膚線維芽細胞は、ヒト羊膜上皮細胞と同様のDMEM・KSR培地を用いて維持した。
【0040】
2.ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソーム及びヒト新生児皮膚線維芽細胞由来エクソソームの回収
実施例1と同様の方法で、ヒト羊膜上皮細胞及びヒト新生児皮膚線維芽細胞をそれぞれ培養し、それぞれの培養上清を回収した。
【0041】
3.miRNAの網羅的解析
ヒト羊膜上皮細胞培養上清及びヒト新生児皮膚線維芽細胞培養上清は、System Biosciences(Mountain View,CA)において、Exo−NGS(登録商標)(Exosomal RNA−Seq)サービスにより、エクソソームの抽出、全エクソソーマルRNAの配列解析を行い、各細胞由来エクソソームに含まれるmiRNAを同定した。ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームに由来するmiRNAと、ヒト新生児皮膚線維芽細胞由来エクソソームに由来するmiRNAとを比較し、ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームに特異的なmiRNAを同定した。
【0042】
結果を
図2及び
図3に示す。ヒト羊膜上皮細胞由来エクソソームに特異的なmiRNAとして、miR−483−5pが同定された。
【0043】
[実施例3]
1.miRNA
miRNAは、合成miR−483−5pとネガティブコントロールとしてmiR−483−5pの塩基組成をスクランブルにしたスクランブルmiRを用いた。これらの合成miRは、Applied Biological Materials (BC,Canada) から購入した。
【0044】
2.線維化抑制能の評価
実施例1と同様にヒト星細胞を培養した。この際、miR−483−5p、スクランブルRNA(Scr;G,A,U,Cそれぞれのヌクレオチドの比率を変えずに配列だけをランダムに変更したRNA)及びヒトTGFβ―1(recombinant human TGFβ1、Peprotech )を以下のように培養液に添加した。
(1)miRNA非添加、TGFβ−非添加
(2)miRNA非添加、TGFβ−添加(終濃度10ng/ml)
(3)miR−483−5p添加(終濃度75 pmol )、TGFβ−添加(終濃度10ng/ml)
(4)スクランブルRNA添加(終濃度75 pmol )、TGFβ−添加(終濃度10ng/ml)
【0045】
培養後、上記(1)〜(4)の培養液からヒト肝星細胞培養液を遠心分離により回収し、全RNAを抽出した。次いで、実施例1と同様に、定量RT−PCRにより、α−SMAのmRNAを定量した。
【0046】
結果を
図4に示す。
図4では、PPIAに対するα―SMAの相対発現量を示した。miR−483−5pは、TGFβ−1によるPDLIM3の発現上昇を有意に抑制することが確認された。この結果は、miR−483−5pがα−SMAの発現を抑制し、線維化を抑制することを示唆している。