【実施例】
【0017】
以下本発明の一実施例による機能性塗料について説明する。
本実施例による機能性塗料は、可視光応答型光触媒粉末を含有する。可視光応答型光触媒としては、銅系化合物修飾酸化タングステン光触媒、銅系化合物修飾酸化チタン光触媒、又は鉄系化合物修飾酸化チタン光触媒を用いることができる。
また、可視光応答型光触媒として、特許文献1で開示されている紫外光と可視光とを吸収するアパタイトを用いることが好ましい。このアパタイトは、金属原子Aと、金属原子Bと、金属原子Cとを含む。金属原子Aは通常のアパタイトに含まれる金属原子であり、金属原子Bは紫外光を吸収する金属原子であり、金属原子Cは可視光を吸収する金属原子である。
このようにアパタイトに含まれる金属原子に、紫外光を吸収する金属原子のみならず可視光を吸収する金属原子を含めることにより、紫外光のみならず可視光でも光触媒機能を発揮できる。また、このアパタイト粉末の表面にFeや炭素を付着させることで、付着させないアパタイトと比較して、吸収する光の波長領域が可視光に現れ、可視光の吸収を高める。
【0018】
金属原子Aは、Ca、Al、La、Mg、Sr、Ba、Pb、Cd、Eu、Y、Ce、Na、及びKからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、アパタイトに含まれる金属原子の主成分である。この中では、Caが最も一般的である。
紫外光を吸収する金属原子Bは、Ti、Zr、及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。この中では、Tiが最も好ましい。金属原子Bの含有量は、アパタイトに含まれる金属原子全体に対して、3mol%以上11mol%以下が好ましく、8mol%以上10mol%以下がより好ましい。
可視光を吸収する金属原子Cは、Cr、Co、Cu、Fe、及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。この中ではCrが最も好ましい。金属原子Cの含有量は、アパタイトに含まれる金属原子全体に対して、0.5mol%以上2mol%以下が好ましく、0.5mol%以上1.5mol%以下がより好ましい。
このアパタイトは、金属原子Aがアパタイト結晶構造を構成し、その金属原子Aの一部が金属原子Bと金属原子Cとによって置換されていることが好ましい。
【0019】
本実施例による機能性塗料は、脱水汚泥乾燥物粉末及び植物微粉砕粉末の少なくとも一方を吸着材として含有する。
脱水汚泥乾燥物粉末は、浄水場で生じる汚泥、河川や湖沼に堆積した汚泥を脱水処理したものである。
脱水汚泥乾燥物粉末は、例えば以下の方法によって得ることができる。
水道水を供給する浄水場で生じる堆積汚泥に、堆積汚泥と同種の汚泥の固形粒子を混合して汚泥の中に空間を生じさせ、含水量に応じて自重による固液分離を行い、マイクロ波で加熱、乾燥する。すなわち、汚泥内部にマイクロ波が届くことで粒子の塊の内部の水分が高温化し、水分を固形粒子の混合によって生じた空間から蒸発させることで均一な乾燥を行える。
乾燥後に、酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)を混合してもよい。また、乾燥後に、粘土鉱物を加えてもよい。粘土鉱物としては、ゼオライトやベントナイトを用いることができる。
また、酸化鉄、塩化アルミニウム、酸化アルミニウムを混合してもよい。浄水場の汚泥には、汚泥を凝集するために凝集剤として塩化アルミニウムや酸化アルミニウムを使用しているため、これらの混合量は、既に含有しているアルミニウムの量を考慮して調整する。
マイクロ波による乾燥では水分率を25%〜50%とし、その後、自然乾燥で水分率を15%〜20%程度まで減少させる。更に、100℃以下の温度で30分から120分乾燥させ、400℃以下の温度で焼成する。この焼成によってポーラスを多数形成することができる。
このような脱水汚泥乾燥物粉末は、空隙による物理吸着力と、表面水酸基による化学吸着力とを有し、アンモニア、酢酸、ホルムアルデヒド、トイレ臭、タバコ臭、及びペット臭を吸着する。
この脱水汚泥乾燥物粉末を機能性塗料に含有させることで、物理吸着力とともに化学吸着力を有するため、高い吸着機能を発揮する。
【0020】
植物微粉砕粉末は、トマトやケナフなどの草本植物の葉及び茎をミキシングしてゲル化し、その後乾燥して得られるものであり、平均直径が50μm〜300μmであることが好ましい。
植物微粉砕粉末は、特にエチレンガスの抑制及び吸着効果を有する。
【0021】
脱水汚泥乾燥物粉末及び植物微粉砕粉末を、吸着材として可視光応答型光触媒粉末とともに含有する機能性塗料を用いることで、紫外光が十分に届かない空間での各種の臭気を吸着して分解することができる。
【0022】
また、本実施例による機能性塗料は、高温焼成した貝殻又は鶏卵の殻を水和・微細化した水酸化カルシウム粉末を更に含有することが好ましい。
水酸化カルシウム粉末は、平均粒径が3.5μm〜300μmでpH12〜13であることが好ましい。
貝殻には、ホタテ貝殻が適しているが、アワビ貝殻、サザエ貝殻、ホッキ貝殻、ウニ貝殻又は珊瑚を用いることができる。
貝殻又は鶏卵の殻は、洗浄して異物を除去し、回転式の焼成炉にて、炉内温度500℃前後にて40〜60分焼成する。鶏卵の殻を用いる場合には、殻内部に付着しているタンパク質の皮を焼成前に除去しておく。焼成した貝殻は付着物を除去した後に、平均粒径30mm 程度に粉砕する。焼成した鶏卵の殻は付着物を除去した後に、5〜10mm程度に粉砕する。粉砕した貝殻粉末又は鶏卵の殻粉末を更に900℃〜1000℃にて40〜90分再度焼成する。焼成後、水和化して微細化し、平均粒径が3.5μm〜300μm、より好ましくは20μm〜50μmでpH12〜13の水酸化カルシウム粉末とする。
機能性塗料に水酸化カルシウム粉末を更に含有させることで、抗菌効果を更に高めることができる。
【0023】
また、本実施例による機能性塗料は、銀粒子を更に含有することが好ましい。
銀粒子は、平均粒径が0.001μm〜0.05μm、より好ましくは0.001μm〜 0.005μmであり、水溶液に分散させたものを用いる。平均粒径が0.001μm〜0.005μmの銀粒子はナノシルバーである。銀粒子は、光触媒粉末(紫外光と可視光とを吸収するチタンアパタイト粉末)に付着させる。チタンアパタイト粉末の表面に銀粒子が付着することで、銀を分散させることができるとともに銀の抗菌・防臭、脱酸素による抗酸化、酸化劣化防止効果が発揮しやすい。
機能性塗料に銀粒子を更に含有させることで、抗菌・防臭効果を更に高めることができる。
【0024】
また、本実施例による機能性塗料は、海の浮遊物が固化し堆積した地層が固まって形成された岩石を砕いた海洋深層石微粉砕粉末を更に含有させることが好ましい。
海洋深層石微粉砕粉末は、SiO
2、MgO、CaO、及びCO
2+(H
2O±)の成分合計が全成分の50%以上である。
例えば、SiO
2(22.14%)、TiO
2(0.68%)、Al
2O
3(4.62%)、FeO(3.38%)、MnO(0.08%)、MgO(13.92%)、CaO(20.89%)、Na
2O(0.28%)、K
2O(2.71%)、P
2O
5(0.14%)、及びCO
2+(H
2O±)(31.15%)の海洋深層石がある(有限会社エステート.コム社製 アクアPS)。
機能性塗料に海洋深層石微粉砕粉末を更に含有させることで、臭気成分を更に低減でき、抗酸化作用による活性酸素の低減を図ることができる。
【0025】
また、本実施例による機能性塗料は、ゼオライトやベントナイトなどの粘土鉱物を更に有することが好ましい。粘土鉱物は、セピオライト、スメクタイト、イモゴライト、パリゴルスカイト、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、ベントナイト、アタパルジャイト、酸性白土、リモナイトから選ばれる少なくとも一種を主成分とする多孔質粘土鉱物が好ましく、泥岩や活性炭を用いることもできる。粘土鉱物を混ぜることで造粒化できるとともに、粘土鉱物がポーラスを形成することでエチレンガス吸着効果を発揮する。
また、植物を原料とする炭化物粉末を更に有することが好ましい。炭化物粉末の原料には、トマトやケナフなどの草本植物の葉及び茎を用いることが好ましい。
炭化物粉末の平均直径は50μm〜300μmとすることが好ましい。平均粒径が3.5μm〜300μmの水酸化カルシウム粉末と、平均粒径が0.001μm〜0.05μmの銀粒子と、平均直径が50μm〜300μmの植物微粉砕粉末と、平均直径が50μm〜300μmの炭化物粉末を用いることで、水酸化カルシウム粉末による抗菌効果、銀粒子による抗菌・防臭効果、植物微粉砕粉末によるエチレンガスの抑制及び吸着効果、及び炭化物粉末によるエチレンガス吸着効果を発揮することができる。
また、過酸化マンガンを更に有することが好ましい。過酸化マンガンを有することで、特にバナナから発生するエチレンガスに対する抑制効果を高めることができる。
【0026】
以下本発明の実施例について図面とともに詳細に説明する。
図1は本実施例の機能性塗料を塗布した基材を示す図であり、
図1(a)は基材を壁面に貼る前の状態、
図1(b)は基材を壁面に貼った状態を示している。
本実施例の機能性塗料13には、吸着材として脱水汚泥乾燥物粉末を含んでいる。
基材10は、一方の面を模様や図柄を印刷する表面11とし、他方の面を壁面20に張り付ける裏面12とし、機能性塗料13を裏面12に塗布した壁紙である。基材10は、植物繊維からなるパルプの他、木材や樹脂材を原料とするものであってもよい。
基材10は、粘着剤を用いて壁面20に貼付される。
基材10は、可視光や臭気ガスを透過する。従って、機能性塗料13は、壁面20側に塗布されているが、各種の臭気を吸着して分解することができる。
また、基材10の表面11には、機能性塗料13を塗布していないため、模様や図柄を印刷することができる。
なお、本実施例における壁面20は、天井面を含むものである。
このように、本実施例による基材10は、機能性塗料13を裏面12に塗布することで、表面11には模様や図柄を印刷することができるとともに、基材10を貼った室内空間での各種の臭気を吸着して分解することができる。
【0027】
図2は本実施例の機能性塗料を塗布した鮮度保持包装材を示す図である。
本実施例の機能性塗料13には、吸着材として植物微粉砕粉末を含んでいる。
鮮度保持包装材30には、生花、青果物、鮮魚、加工食品、又は穀物である収容物を収容する。
鮮度保持包装材30は、収容物を収容する包装材内面31に機能性塗料13を塗布している。
更に具体的には、鮮度保持包装材30は、収容物を収容するとともに少なくとも一つの面を開口部32とする包装材本体30Aと、少なくとも開口部32を覆う蓋体30Bと、開口部32を覆う透明フィルム30Cとを有している。
包装材本体30Aの包装材内面31は、内底面31aと内側面31bとから構成され、内底面31a及び内側面31bには機能性塗料13を塗布している。
本実施例によれば、蓋体30Bを包装材本体30Aから取り外して収容物が見える状態にしている場合、例えば店内で展示販売している場合、包装材内面31に機能性塗料13を塗布しているため、収容物から発生するエチレンを吸着し分解し、収容物の鮮度を保持することができる。
なお、本実施例では、収容物を収容する包装材内面31に機能性塗料13を塗布したが、包装材外面に塗布してもよく、包装材が複数層である場合には、中間層に機能性塗料13を塗布してもよい。