【実施例1】
【0028】
図1を参照して、実施例1におけるプラントの構成を説明する。高速道路のサービスエリアの近隣に原料貯留ヤード10が設けてある。高速道路の中央分離帯や道路脇の壁面の植物のメンテナンスで生じた、草、葉、茎、根、といった材を、バイオマス原料(以下「原料」)として原料貯留ヤード10に貯めておく。貯めた原料を、破砕機を用いて、最大数十cmになるようランダムに破砕する。破砕した原料を、ローダー等を用いて、プラントの入口である原料投入ホッパー(図示せず)に投入する。ホッパーに投入された原料は、ベルトコンベヤを介して原料サイロ20まで運ばれる。原料サイロ20に行き着く前に、磁石等を用いた一般的な手段により原料に混入した鉄等の異物を取り除く機構があっても良い。原料サイロ20の中には、常時約80℃〜100℃の温風が流れている。原料は、原料サイロ20で数日間この温風にさらされる。その結果原料は、原料サイロ20において乾燥して、カサカサの状態になる。
【0029】
原料は、引続き、ベルトコンベヤを介して計量器30まで運ばれ、計量器30で計量の後、再びベルトコンベヤを介してロータリーキルン40に投入される。ロータリーキルン40に投入される原料が、途切れることなく一定量維持できるようにする機構を備えても良い。ロータリーキルン40に投入される原料が、途切れることなく一定量維持される。熱分解炉に供給するバイオマスの量が変動すると、熱分解炉により排出される熱分解ガスの変動、熱分解炉を加熱するための熱量の変動、補助燃料の供給量の変動、等、種々の変動をもたらし、システムが安定しない。よって、定量供給手段は安定したシステムを得るために有効である。ガス化対象のバイオマスが最大数十cmと比較的大きくかつ大きさが不揃いであるため、熱分解炉に投入されるバイオマスが、時間的に途切れることなく継続して投入されることは、システムの安定のために必要である。バイオマス定量供給手段は、熱分解炉に供給する直前にバイオマスを計量する手段を含んでも良い。
【0030】
ロータリーキルン40は、加熱ガス発生炉100(
図2)で得た約950℃のガスで外部から加熱される。原料はロータリーキルン40内で、無酸素状態で熱せられ、熱分解ガスが発生する。発生したガスは、発生後からほとんど変わらない温度(約750℃)を維持したまま乾式集塵機50に流れ込む。乾式集塵機50として、チャンバ式集塵機(図示せず)とサイクロン式集塵機(図示せず)の二種類が用いられる。チャンバ式集塵機においては、比較的大きなチャーが重力により下方のコンベヤ(図示せず)に向けて落下する。発生ガスは引き続き、温度をほぼ保ったままサイクロン式集塵機に流れ込み、比較的微細なチャーが遠心力により集められ、下方のコンベヤ(図示せず)に向けて落下する。チャンバ式集塵機とサイクロン式集塵機からコンベヤに向けて落下したチャーは、コンベヤで運ばれ貯蔵され、その後商品若しくは燃料としての利用に供する。
【0031】
発生ガスは引き続き、発生後の温度をほぼ維持した状態で水スクラバ60に流れ込み、スプレー状の水のシャワーが吹きかけられる。これにより、発生ガス中の親水性のタール成分が取り除かれる。このようにガスが高温を維持した状態で、水のシャワーが吹きかけられることにより、多くのタール成分がガスの経路中で閉塞することなく取り除かれる。タールはガスの温度が冷えてくると液体又は固体状で発生するところ、発生前に取り除くことにより、その後ガスが冷えた際のタールの発生を著しく減少させることができる。
【0032】
水スクラバ60で用いられる水は、
図3に示す通り循環して再利用され、その結果、プラントの連続運転が実現できている。以下に説明する。発生ガス45は、ロータリーキルン40から排出された際の温度をほぼ保ったまま、水スクラバ60に流れ込み、噴射孔68から吹き付けるシャワー状の水を浴びる。図では模式的に6個の噴射孔が描かれている。発生ガス45中の、タール成分と、乾式集塵機50で取り除ききれなかった細かいチャーは、吹き付けられた水によって流し落とされ、水封槽62に落ちる。なお、タール成分と細かいチャーはスラッジと呼ばれる。水封槽62にたまったタール成分と細かいチャーは、水封コンベア61でスラッジ回収槽63まで運ばれる。スラッジ回収槽63に回収されたスラッジは、後述のオートストレーナ65で回収されたスラッジと併せて、定期的に廃棄される。
【0033】
次に、大半のスラッジを除去した水封槽62の水は、洗浄水循環ポンプ64を介してオートストレーナ65に送られる。オートストレーナ65はメッシュを備えた既存のろ過装置であり、発生ガス45に吹き付けた水と共に発生ガスから取り除かれたタール成分と細かいチャーのうち、水封槽に沈殿しなかったものを濾し取る。メッシュ次第であるが、例えば、直径1μm以上のタール成分とチャーが濾し取られる。
【0034】
オートストレーナ65は、メッシュで濾しとられたスラッジが定期的・自動的に掃除され取り除かれる構造となっている。二つのオートストレーナ65が備えてあり、一方のオートストレーナがメッシュの掃除を行っている際は、他の一方のオートストレーナが発生ガスからスラッジを濾し取る作業を行う。掃除によって得られたスラッジは、コンベア等を介して(図示せず)スラッジ回収槽63に運ばれる。
【0035】
その後、水は、洗浄水クーラ66に流れ込んで冷却水67で冷やされ、
図3の矢印Aに示す通り、再度、水スクラバ60で発生ガス45に吹き付ける水として用いられる。この際、例えば1μm以下のスラッジはオートストレーナ65で濾しとられることなく、水に残存しているが、そのまま水スクラバ60の水として用いる。このため、このようなスラッジにより噴射孔が目詰まりしないよう、噴射孔68を通過できる粒子の直径をスラッジの直径よりも充分大きいものとし、例えば3.2mmとしている。水に残存したスラッジは1μm以下であるところ、複数のスラッジ通しが絡み合う場合等考慮し、3.2mmとしたものである。水を強力に吹き付けようとする場合には、噴射孔は、小さい方が都合がよいところ、スラッジが残存したままの水を用いるためにあえて噴射孔を大きくするものである。
【0036】
図3と
図1を参照して、水スクラバ60を経由した発生ガス45は、引続きオイルスクラバ70に流れ込み、スプレー状のオイルが吹きかけられる。これにより、ガス中の親油性のタール成分が取り除かれる。
【0037】
図1を参照して、引き続き発生ガスはサブミクロンフィルタ80に流れ込み、ガスに残ったサブミクロンサイズのタール成分が、フィルタにより取り除かれる。ここまでの過程で、ガス中のタールとなる原料はほぼ全て取り除かれる。
【0038】
引き続き、ガスは送風機により発電機90のシリンダに送り込まれ、エンジンが駆動されて発電する。
【0039】
図2を参照して、実施例1のフローにエネルギーの流れを加えて説明する。
【0040】
サブミクロンフィルタ80を経由しタール成分がほぼすべて取り除かれたガスは、加熱ガス発生炉で燃料として用いられる(矢印j)。また、プラントにはA重油等の補助燃料130が設けてあり、バイオマス由来のエネルギーの供給(矢印j)が不十分なときに、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印n)。
【0041】
オイルスクラバ70でガス中の親油性のタールを取る際に用いたオイルは、その後、タールを含んだまま、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印i)。
【0042】
サービスエリアの調理場120で使用し終えた油は、廃油タンク110に貯えられ(矢印k)、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印l)。廃油タンク110の油は、オイルスクラバ70で親油性のタールを洗い流すためのオイルとしても用いられる(矢印m)。補助燃料130は、バイオマス由来のエネルギーの供給(矢印p)が不十分なときに、発電機90の発電のためのエネルギーとしても用いられる(矢印o)。
【0043】
発電により得られた電気は、例えば、原料サイロ20内に送り込まれる温風の加熱(矢印p)等、システム稼働のために用いられる。さらに、発電により得られた電気は、サービスエリア(SA)140で用いる電気に用いられる(矢印q)。図示しないが、発電により得られた電気は、前記で余った場合には販売対象にもする。
【0044】
図4に、実施例1のプラントと旧プラントにおける熱分解ガスの流量等をしめす。
図4の表に示した値はある日の一時間当たりの平均値である。旧プラントとは、非特許文献1と2に示すプラントである。すなわち、旧プラントは、高温下でタール成分を除去する手段と、親油性のタール成分を除去するためのオイルスクラバを備えておらず、プラントの稼働によりタールが生じ、プラントが継続稼働できないプラントである。
【0045】
「キルンを加熱するガスの温度」(
図4)は、約950℃を維持するように設定されている。前述のとおり、キルン40の加熱には、加熱ガス発生炉100のガスが用いられる(
図2の矢印r)。また、加熱ガス発生炉100で加熱ガスを発生させるためのエネルギーとして、主としてサブミクロンフィルタ80を経由しタールの材料となるものがほぼすべて取り除かれた熱分解ガスが用いられる(
図2の矢印j)。エネルギー源として熱分解ガスで不十分の場合には、補助燃料130が用いられる(
図2の矢印n)。
【0046】
「熱分解ガス」(
図4)とは、キルンで加熱された結果熱分解されて生じたガスである。「熱分解ガスの温度」は約750℃になるように設定されている。「熱分解ガスの温度」を上昇させるためには、加熱ガス発生炉からキルンに供給する温度を上げる必要があるため、「熱分解ガスの温度」を上昇させるための手段は、加熱ガス発生炉の温度を上げる手段と同じである。すなわちそのためのエネルギーとしては、主として熱分解ガスが用いられる(
図2の矢印j)。熱分解ガスで不十分の場合には、補助燃料130が用いられる(
図2の矢印n)。
【0047】
図2に示す通り、タールを除去した熱分解ガス(
図4の表では「乾ガス」と称している)は、発電機90と加熱ガス発生炉100の二か所でエネルギーとして利用される(
図2の矢印hと矢印j)。従って、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を計測すれば、それぞれのプラントで排出された熱分解ガスの総量がある程度わかる。
【0048】
図4で「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を、実施例1のプラントと旧プラントで比較すると、次の通りである。
実施例1のプラントでは、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を加えると、19.8+32.7=52.5(Nm
3/h)である。
一方、旧プラントでは、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を加えると、0+20.0=20.0(Nm
3/h)である。
【0049】
図5に、実施例1のプラントと旧プラントにおける「発電機への乾ガス流量」と「発電機へのA重油供給量」と「発電量」を示す。
図5の表に示した値は、
図4に示したものと同じ日時の、1時間当たりの平均値である。従って、旧プラントとは、非特許文献1と2に示すプラントである。
【0050】
「発電機への乾ガス流量」は、実施例1のプラントでは平均32.7Nm
3/hであるのに対し、旧プラントでは平均20.0Nm
3/hである。「発電機へのA重油供給量」は、実施例1のプラントでは平均5.2L/hであるのに対し、旧プラントでは平均21.3L/hである。「発電量」は、実施例1のプラントでは平均71.6KWであるのに対し、旧プラントでは平均91.4KWである。
【0051】
図5の値を用いて、実施例1のプラントと旧プラントのそれぞれについて、発電に用いられた熱量に関し、供給した乾ガスによるものと補助燃料であるA重油によるものの比を計算すると次の通りである。
ここで、
ガスに与える熱量=流量(Nm
3/h)×乾ガスの単位当たりの発熱量(MJ/Nm
3)
乾ガスの単位当たりの発熱量=14.7(MJ/Nm
3)
またここで、
油によって得られる熱量=流量(L/h)×比重(kg/L)×乾ガスの単位当たりの発熱量(MJ/kg)
比重=0.85(kg/L)
乾ガスの単位当たりの発熱量=38.9(MJ/kg)
【0052】
[実験例1のプラント]
乾ガス 32.7×14.7=480.7(MJ/h)
重 油 5.2×0.85×38.9=171.9(MJ/h)
乾ガス:重油=480.7:171.9=1:0.36
[旧プラント]
乾ガス 20.0×14.7=294.0(MJ/h)
重 油 21.3×0.85×38.9=704.3(MJ/h)
乾ガス:重油=294.0:704.3=1:2.40
すなわち、実施例1のプラントでは、設定された料の電力を得るために使った熱量は、乾ガスによるもの1に対して、補助燃料によるものは0.36であった。また、旧プラントでは、設定された料の電力を得るために使った熱量は、乾ガスによるもの1に対して、補助燃料によるものは2.40であった。
【0053】
図5に実施例1のプラントにおける発電量と使途を示す。この日得られた平均71.6KWの発電量のうち平均41.5KWが実施例1のプラントで使用された(
図2の矢印p等)。また平均30.1KWがサービスエリアに送電された(
図2の矢印q)。