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2021-172737バイオマス発電設備、設備ユニット及びバイオマス発電設備の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-172737(P2021-172737A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】バイオマス発電設備、設備ユニット及びバイオマス発電設備の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20211004BHJP
   C10K 1/06 20060101ALI20211004BHJP
【FI】
   C10B53/02
   C10K1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-77683(P2020-77683)
(22)【出願日】2020年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519423828
【氏名又は名称】A−Tech株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】特許業務法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】柳 博文
(72)【発明者】
【氏名】有竹 正善
【テーマコード(参考)】
4H012
4H060
【Fターム(参考)】
4H012JA03
4H012JA11
4H060AA02
4H060BB21
4H060BB23
4H060BB25
4H060DD23
4H060DD24
4H060GG01
(57)【要約】
【課題】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、システムに基づく設備の建設が、必要な場所に短期間でできるものを提供することを課題とする。
【解決手段】
乾燥した木質バイオマスを加熱して熱分解させる熱分解装置と、熱分解装置から排出されて間もない熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去装置と、タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたバイオマス発電設備であって、熱分解装置、タール成分除去装置、及び発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有する、バイオマス発電設備によって課題を解決する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した木質バイオマスを加熱して熱分解させる熱分解装置と、
前記熱分解装置から排出されて間もない熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去装置と、
タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたバイオマス発電設備であって、
前記熱分解装置、前記タール成分除去装置、及び前記発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有する、バイオマス発電設備。
【請求項2】
前記木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥装置を備えた前記バイオマス発電設備であって、
前記木質バイオマス乾燥装置、前記熱分解装置、前記タール成分除去装置、及び前記発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有する、請求項1に記載のバイオマス発電設備。
【請求項3】
前記熱分解ガスからチャーを分離して採取するチャー採取装置を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオマス発電設備。
【請求項4】
前記タール成分除去装置が、親水性のタール成分を前記熱分解ガスに水を吹きかけて除去する水スクラバを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のバイオマス発電設備。
【請求項5】
前記水スクラバで用いる水を循環利用する水循環利用装置であって、沈殿したスラッジを取り除く沈殿スラッジ除去機構と、前記水スクラバで用いた水に含まれたスラッジをろ過して取り除くスラッジ濾過機構とを備え、水に残存したスラッジが詰まらないよう、通過できる最大粒子径が3.2mmを超える水噴射孔とする水循環利用手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のバイオマス発電システム。
【請求項6】
前記タール成分除去装置が、親油性のタール成分を前記熱分解ガスにオイルを吹きかけて除去するオイルスクラバを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のバイオマス発電設備。
【請求項7】
前記タール成分を除去した熱分解ガスが、前記熱分解装置の加熱のためのエネルギー供給に用いられ、
前記タール成分を除去した熱分解ガスでは不足する場合にエネルギー供給を補助する補助燃料装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のバイオマス発電設備。
【請求項8】
前記発電装置により得られた電力を、前記バイオマス発電設備稼働のために用いることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のバイオマス発電設備。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のバイオマス発電設備における前記複数の設備ユニットのいずれかの設備ユニット。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のバイオマス発電設備における前記複数の設備ユニットのそれぞれを工場において製造するステップと、
前記工場にて製造された複数の設備ユニットを、前記工場の外の建設現場において、結合して前記バイオマス発電設備を組み立てるステップと、
を有するバイオマス発電設備の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化してエネルギーを得るシステムが知られている。このシステムにあっては、ガス化工程において発生するタールがプラント運転の妨げとなり問題であった。
【0003】
また、震災や大雨による川の氾濫等により、家屋や家具の木材、森林からの流木といった廃棄すべき木材が大量に生じた場合、大量の木材を短期間に除去することが求められる。その対策として適切なものはいまだ見つかっておらず、例えば、それらの木材を、まず多数の人員とクレーン等の機械を用いて集積し、集積所に木材をチップ化するための機械を導入する等、しており、試行錯誤を繰り返している。
【0004】
問題となっているのは、廃棄すべき木材が大量であることと、それらの大量の木材をできる限り短期間に除去することが求められる点である。また、撤去のための設備を建設する場合、建設に時間がかかることに問題があり、さらにそのような設備が必要なのはその時だけであり、木材の除去が終了したら設備は撤去する必要がある、という点も、費用や資源の面で非合理的とならざるを得ず問題であった。
【0005】
このため、木材を廃棄できる設備を短期間に容易に建設でき、また、そのような設備の撤去も容易にできるものが望まれていた。さらに、そのような設備が、撤去後にまたほかの地で再利用できるようになれば、さらに好ましい。
【0006】
特許文献1には、生成ガスに水を噴射する工程を備えるバイオマスガス生成装置について記載がある。しかし、この文献に記載の装置にあっては、生成ガスの温度が300℃程度であるためタールは気化しない。よって650℃〜750℃という高温の温度帯で、気化されているタール分を凝縮し回収する、という思想については示唆がない。
【0007】
非特許文献1には、高速道路のメンテナンスで生じる刈草や樹木の剪定枝、間伐材等のバイオマスについて、熱分解炉で加熱してガス化するシステムが記載されている。
【0008】
非特許文献2には、非特許文献1に記載のものと同じ対象の技術的事項に関しさらに詳細な記述がある。非特許文献2には、図8に示す通りの「バイオマスガス発電による緑の新たなリサイクルシステム」と称するシステムについて、次の通りの記載がある。「バイオマスガス発電のシステムフローは乾燥機でチップ化したバイオマスを乾燥させた後、熱分解炉で加熱・蒸し焼きにして熱分解ガスと炭化物に分解する。熱分解ガスに含まれるタールや微粉状のすすに洗浄循環水を吹き付けてガスを精製。最終精製された熱分解ガスを発電機に送り、補助燃料(A重油)を混ぜて発電を行う。一日当たりのバイオマスの処理可能量は4、8トン。発電機の定格出力は100キロワットで、うちプラントの自己消費50キロワット、SAへの送電50キロワット。SAではトイレや駐車場の照明などに発電した電気を使用している。工程上で発生するガスは発電燃料に使用する以外にもバイオマスの加熱エネルギーとして循環させる。ガス以外の炭化物は植物発生材重量の10分の1まで減量。発電機の排熱もバイオマスの乾燥に活用し、エネルギー効率を高めている。バイオマスを外部から蒸し焼きにしてガス化させるため、ダイオキシンなどの有害物質が発生しない。」
【0009】
非特許文献1と非特許文献2に記載のシステムにあっては、「熱分解ガスに含まれるタールや微粉状のすすに洗浄循環水を吹き付けてガスを精製。」との記載がある通り、タールや微粉状のすすには洗浄循環水を吹き付けていた。しかし、洗浄循環水を吹き付ける温度等については何ら示唆がない。非特許文献1と非特許文献2に記載のシステムにあっては、タールを取り除くことができず、タールがプラント運転に支障を来たし、プラントは一日稼働させると停止してしまい、数日以上継続して稼働させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−125577
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】東日本高速道路会社、「「バイオマスガス発電」による電力の供給を実用化」<URL:https://www.e-nexco.co.jp/effort/technique/tinet/example/biomass_gas/>2020年3月10日
【非特許文献2】日刊建設工業新聞「東日本高速会社/バイオマス発電施設の整備拡充検討/東北道・那須高原SAで実用化2016年8月8日4面」<URL:https://www.decn.co.jp/?p=74521>2020年3月10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、タール成分の除去が充分に行われるためにタールによるプラントへの支障が起きず、継続稼働ができるシステムを得ることを課題とする。
【0013】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、システムで必要なエネルギーとして、システムを稼働した結果得られたエネルギー
を用いることのできるシステムを得ることを課題とする。
【0014】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、システムに基づく設備の建設が、必要な場所に短期間でできるものを提供することを課題とする。
【0015】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、システムに基づく設備を、設備の必要な者に貸すことが容易にできるものを提供することを課題とする。
【0016】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、ユニット毎に交換が可能であるためにメンテナンスが容易なシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)乾燥した木質バイオマスを加熱して熱分解させる熱分解装置と、前記熱分解装置から排出されて間もない熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去装置と、タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたバイオマス発電設備であって、前記熱分解装置、前記タール成分除去装置、及び前記発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有する、バイオマス発電設備によって課題を解決する。
本発明が対象とする木質バイオマスは、木材に由来するあらゆる資源が対象となる。広葉樹・針葉樹を問わず、植物の根・葉・茎・花等のあらゆる部位が対象となる。森林の植物・街中の植物のいずれも対象となる。また、木造家屋を構成する柱・壁・天井といった部位も対象となる。例えば災害時に大量に生じる倒壊家屋等の廃材も対象となる。
木質バイオマスをサイロに投入する際には、最大数十cmの大きさまで破砕して行う。破砕する理由は、木質バイオマスどうしが互いに絡み合ってサイロの入り口や出口を塞ぐ等、搬送の妨げになることを防ぐためである。そのための破砕であるので、大きさを揃える必要はない。また、大きさと水分量の揃ったペレットにする必要はない。大きさと水分量の揃ったペレットにすることによりタールの発生を減じることができるが、ペレット化には費用と労力を要する。本発明はそのような費用と労力をかけることなく、タール成分を徹底的に除去する手段を備える点が特徴である。
ここに、タール成分とは、タールの材料となる成分をいう。
熱分解装置は、木質バイオマスをキルンに投入し外部から900℃〜1050℃]程度の高温で加熱する、といった既存の方法による。熱分解炉から排出されて間もない熱分解ガスとは、かなりの高温状態にある熱分解ガスをいう。900℃〜105〇℃]程度の高温で加熱した場合、熱分解炉から排出されて間もない熱分解ガスは、通常650℃〜78〇℃程度である。木質バイオマスを用いた発電システムでは、木質バイオマスから生じるタールの処理が問題となるところ、このような高温状態でのタール成分を取り除くタール成分除去装置を備えることにより、タールの有効な除去が実現する。
熱分解装置、タール成分除去装置、及び発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有することによって、各ユニットをあらかじめ製造し、これを一つの製品として、第三者に譲渡したり、貸したり、することができる。
ユニットを、例えば輸送用のトラック車で搬送可能な大きさ・重量とすることにより、バイオマス発電設備を建設するべき地に搬送することができる。
バイオマス発電のための手順において前後に連なる装置であって、大きさと重さの観点で搬送可能であれば、そのような前後に連なる装置はユニット化できる。
バイオマス発電設備の建設が必要となった際には、ユニット化したものを建設地まで搬送し、その地で他のユニットと接続する簡易な作業により建設を終えることができる。
第三者に貸し終えたユニットはユニット所有者に戻され、メンテナンスの後、ユニット所有者は再度第三者に貸すことができる。
ユニット所有者がユニットを第三者に貸している期間中にユニットに故障が生じた場合、ユニット所有者は一時的に故障のないユニットと取り換えて、故障したユニットをその間修理することができる。バイオマス発電設備にあっては、設備に故障が生じた場合、修理が完了するまでの間、設備全体の稼働を止めざるを得ない。通常、修理には数週間要するところ、ユニットの交換であれば数日で済むため、設備の稼働を止める期間が短くて済む。
【0018】
(2)前記木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥装置を備えた前記バイオマス発電設備であって、
前記木質バイオマス乾燥装置、前記熱分解装置、前記タール成分除去装置、及び前記発電装置を分散して収容し、分離可能に結合された複数の設備ユニットを有する、(1)に記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
乾燥は、サイロ内に木質バイオマスを投入して、ある程度の時間温風にさらす、等の既存の方法で行う。
【0019】
(3)前記熱分解ガスからチャーを分離して採取するチャー採取装置を備えることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
チャーを分離し採取することによって、有用なチャーを得ることができる。
【0020】
(4)前記タール成分除去装置が、親水性のタール成分を前記熱分解ガスに水を吹きかけて除去する水スクラバを備えることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
親水性のタール成分除去の手段を採用することにより、より有効なタール除去ができる。生成ガスが高温状態の場合、タールはガス化されており、水を吹きかけることにより急激な温度低下が為される。この結果、気体化されているタールを凝縮し、タールを液体として回収できる。
【0021】
(5)前記水スクラバで用いる水を循環利用する水循環利用装置であって、沈殿したスラッジを取り除く沈殿スラッジ除去機構と、前記水スクラバで用いた水に含まれたスラッジをろ過して取り除くスラッジ濾過機構とを備え、
水に残存したスラッジが詰まらないよう、通過できる最大粒子径が3.2mmを超える水噴射孔とする水循環利用手段を備えることを特徴とする(4)に記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
バイオマス発電設備を連続運転するためには、水スクラバに用いる水を循環利用できることが望ましい。沈殿スラッジ除去機構とスラッジ濾過機構は、水スクラバによって発生ガスから除去したスラッジを取り除くために機能する。
さらに細かい濾過機構を用いる等することにより、水スクラバに残存するスラッジをすべて取り除くこともできる。しかし、水スクラバで用いる水の用途を考慮すると、水スクラバに残存するスラッジをすべて取り除く必要はない。すなわち、水スクラバで用いる水の用途は、熱分解路から排出されて間もない高温状態の発生ガスに吹き付けて発生ガス中のタール成分を流し取ることであるので、スラッジを完全に取り除く必要はない。むしろ、スラッジをある程度取り除いた後は、残存するスラッジを取り除くことはやめて、システムが単純化することを選んだ方が、費用と労力の面で優れている。とはいえ、その場合、残存スラッジがあることにより水スクラバが目詰まりすることは避ける必要がある。そこで、水に残存したスラッジが詰まらないよう、水噴射孔に関し、通過できる最大粒子径が3.2mmを超える水噴射孔としたものである。
(6)前記タール成分除去装置が、親油性のタール成分を前記熱分解ガスにオイルを吹きかけて除去するオイルスクラバを備えることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
親油性のタール成分除去の手段を採用することにより、より有効なタール除去ができる。
【0022】
(7)前記タール成分を除去した熱分解ガスが、前記熱分解装置の加熱のためのエネルギー供給に用いられ、
前記タール成分を除去した熱分解ガスでは不足する場合にエネルギー供給を補助する補助燃料装置を備えることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
熱分解炉の加熱に、前記タール成分除去手段によりタール成分を取り除いた前記熱分解ガスを用いることができる理由は、タール成分を取り除いたことにより、熱分解ガスを用いてもプラントに支障が生じないからである。このように、熱分解炉の加熱にバイオマス発電システムによって生じたガスを用いることにより、費用の観点からも、また地球上のエネルギー資源を無駄にしないという観点からも、好ましい結果を生む。
熱分解手段は、熱分解ガスを排出するにあたり、熱分解ガス中に生じるタール成分が生じることをできる限り抑えつつ、かつガスを有効に発生させるために、適した温度を維持するよう設定し、加熱は設定温度を維持できるように制御して行われる。従って、設定温度を維持するためにガス化した木質バイオマスを利用するのでは不十分な場合には、補助燃料手段を利用する必要が生じる。補助燃料手段としてはA重油等、既存の燃料が用いられる。また、補助燃料手段として、集塵機、スクラバ、等で採取したチャー、スラッジ、タール、食品廃油から採取した油が用いられる。
【0023】
(8)前記発電装置により得られた電力を、前記バイオマス発電設備稼働のために用いることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載のバイオマス発電設備によって課題を解決する。
【0024】
(9)(1)から(8)のいずれかに記載のバイオマス発電設備における前記複数の設備ユニットのいずれかの設備ユニットによって課題を解決する。
(10)(1)から(8)のいずれかに記載のバイオマス発電設備における前記複数の設備ユニットのそれぞれを工場において製造するステップと、
前記工場にて製造された複数の設備ユニットを、前記工場の外の建設現場において、結合して前記バイオマス発電設備を組み立てるステップと、
を有するバイオマス発電設備の製造方法によって課題を解決する。
【発明の効果】
【0025】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムを得ることができる。また、そのようなシステムにあって、タールの除去が充分に行われるためにタールによるプラントへの支障が生じず、継続稼働ができるシステムを得ることができる。また、そのようなシステムにあって、システムで必要なエネルギーとしてシステムを稼働した結果得られたエネルギーを用いることができる。
【0026】
木質バイオマスを熱分解炉で加熱しガス化して発電するシステムであって、システムに基づく設備の建設が、必要な場所に短期間でできる。また、システムに基づく設備を、設備の必要な者に貸すことが容易にでき、ユニット毎に交換が可能であるためにメンテナンスが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1におけるプラントのフローを示す。
図2】実施例1のフローに、エネルギーの流れを加えて示す。
図3】実施例1の水スクラバを示す。
図4】熱分解ガスの流量等を実施例1のプラントと旧プラントを比較して示す。
図5】発電量等を実施例1のプラントと旧プラントを比較して示す。
図6】実施例1のプラントにおける発電量と使途を示す。
図7】実施例2におけるプラントを示す。
図8】従来のバイオマスガス発電のフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1を参照して、実施例1におけるプラントの構成を説明する。高速道路のサービスエリアの近隣に原料貯留ヤード10が設けてある。高速道路の中央分離帯や道路脇の壁面の植物のメンテナンスで生じた、草、葉、茎、根、といった材を、バイオマス原料(以下「原料」)として原料貯留ヤード10に貯めておく。貯めた原料を、破砕機を用いて、最大数十cmになるようランダムに破砕する。破砕した原料を、ローダー等を用いて、プラントの入口である原料投入ホッパー(図示せず)に投入する。ホッパーに投入された原料は、ベルトコンベヤを介して原料サイロ20まで運ばれる。原料サイロ20に行き着く前に、磁石等を用いた一般的な手段により原料に混入した鉄等の異物を取り除く機構があっても良い。原料サイロ20の中には、常時約80℃〜100℃の温風が流れている。原料は、原料サイロ20で数日間この温風にさらされる。その結果原料は、原料サイロ20において乾燥して、カサカサの状態になる。
【0029】
原料は、引続き、ベルトコンベヤを介して計量器30まで運ばれ、計量器30で計量の後、再びベルトコンベヤを介してロータリーキルン40に投入される。ロータリーキルン40に投入される原料が、途切れることなく一定量維持できるようにする機構を備えても良い。ロータリーキルン40に投入される原料が、途切れることなく一定量維持される。熱分解炉に供給するバイオマスの量が変動すると、熱分解炉により排出される熱分解ガスの変動、熱分解炉を加熱するための熱量の変動、補助燃料の供給量の変動、等、種々の変動をもたらし、システムが安定しない。よって、定量供給手段は安定したシステムを得るために有効である。ガス化対象のバイオマスが最大数十cmと比較的大きくかつ大きさが不揃いであるため、熱分解炉に投入されるバイオマスが、時間的に途切れることなく継続して投入されることは、システムの安定のために必要である。バイオマス定量供給手段は、熱分解炉に供給する直前にバイオマスを計量する手段を含んでも良い。
【0030】
ロータリーキルン40は、加熱ガス発生炉100(図2)で得た約950℃のガスで外部から加熱される。原料はロータリーキルン40内で、無酸素状態で熱せられ、熱分解ガスが発生する。発生したガスは、発生後からほとんど変わらない温度(約750℃)を維持したまま乾式集塵機50に流れ込む。乾式集塵機50として、チャンバ式集塵機(図示せず)とサイクロン式集塵機(図示せず)の二種類が用いられる。チャンバ式集塵機においては、比較的大きなチャーが重力により下方のコンベヤ(図示せず)に向けて落下する。発生ガスは引き続き、温度をほぼ保ったままサイクロン式集塵機に流れ込み、比較的微細なチャーが遠心力により集められ、下方のコンベヤ(図示せず)に向けて落下する。チャンバ式集塵機とサイクロン式集塵機からコンベヤに向けて落下したチャーは、コンベヤで運ばれ貯蔵され、その後商品若しくは燃料としての利用に供する。
【0031】
発生ガスは引き続き、発生後の温度をほぼ維持した状態で水スクラバ60に流れ込み、スプレー状の水のシャワーが吹きかけられる。これにより、発生ガス中の親水性のタール成分が取り除かれる。このようにガスが高温を維持した状態で、水のシャワーが吹きかけられることにより、多くのタール成分がガスの経路中で閉塞することなく取り除かれる。タールはガスの温度が冷えてくると液体又は固体状で発生するところ、発生前に取り除くことにより、その後ガスが冷えた際のタールの発生を著しく減少させることができる。
【0032】
水スクラバ60で用いられる水は、図3に示す通り循環して再利用され、その結果、プラントの連続運転が実現できている。以下に説明する。発生ガス45は、ロータリーキルン40から排出された際の温度をほぼ保ったまま、水スクラバ60に流れ込み、噴射孔68から吹き付けるシャワー状の水を浴びる。図では模式的に6個の噴射孔が描かれている。発生ガス45中の、タール成分と、乾式集塵機50で取り除ききれなかった細かいチャーは、吹き付けられた水によって流し落とされ、水封槽62に落ちる。なお、タール成分と細かいチャーはスラッジと呼ばれる。水封槽62にたまったタール成分と細かいチャーは、水封コンベア61でスラッジ回収槽63まで運ばれる。スラッジ回収槽63に回収されたスラッジは、後述のオートストレーナ65で回収されたスラッジと併せて、定期的に廃棄される。
【0033】
次に、大半のスラッジを除去した水封槽62の水は、洗浄水循環ポンプ64を介してオートストレーナ65に送られる。オートストレーナ65はメッシュを備えた既存のろ過装置であり、発生ガス45に吹き付けた水と共に発生ガスから取り除かれたタール成分と細かいチャーのうち、水封槽に沈殿しなかったものを濾し取る。メッシュ次第であるが、例えば、直径1μm以上のタール成分とチャーが濾し取られる。
【0034】
オートストレーナ65は、メッシュで濾しとられたスラッジが定期的・自動的に掃除され取り除かれる構造となっている。二つのオートストレーナ65が備えてあり、一方のオートストレーナがメッシュの掃除を行っている際は、他の一方のオートストレーナが発生ガスからスラッジを濾し取る作業を行う。掃除によって得られたスラッジは、コンベア等を介して(図示せず)スラッジ回収槽63に運ばれる。
【0035】
その後、水は、洗浄水クーラ66に流れ込んで冷却水67で冷やされ、図3の矢印Aに示す通り、再度、水スクラバ60で発生ガス45に吹き付ける水として用いられる。この際、例えば1μm以下のスラッジはオートストレーナ65で濾しとられることなく、水に残存しているが、そのまま水スクラバ60の水として用いる。このため、このようなスラッジにより噴射孔が目詰まりしないよう、噴射孔68を通過できる粒子の直径をスラッジの直径よりも充分大きいものとし、例えば3.2mmとしている。水に残存したスラッジは1μm以下であるところ、複数のスラッジ通しが絡み合う場合等考慮し、3.2mmとしたものである。水を強力に吹き付けようとする場合には、噴射孔は、小さい方が都合がよいところ、スラッジが残存したままの水を用いるためにあえて噴射孔を大きくするものである。
【0036】
図3図1を参照して、水スクラバ60を経由した発生ガス45は、引続きオイルスクラバ70に流れ込み、スプレー状のオイルが吹きかけられる。これにより、ガス中の親油性のタール成分が取り除かれる。
【0037】
図1を参照して、引き続き発生ガスはサブミクロンフィルタ80に流れ込み、ガスに残ったサブミクロンサイズのタール成分が、フィルタにより取り除かれる。ここまでの過程で、ガス中のタールとなる原料はほぼ全て取り除かれる。
【0038】
引き続き、ガスは送風機により発電機90のシリンダに送り込まれ、エンジンが駆動されて発電する。
【0039】
図2を参照して、実施例1のフローにエネルギーの流れを加えて説明する。
【0040】
サブミクロンフィルタ80を経由しタール成分がほぼすべて取り除かれたガスは、加熱ガス発生炉で燃料として用いられる(矢印j)。また、プラントにはA重油等の補助燃料130が設けてあり、バイオマス由来のエネルギーの供給(矢印j)が不十分なときに、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印n)。
【0041】
オイルスクラバ70でガス中の親油性のタールを取る際に用いたオイルは、その後、タールを含んだまま、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印i)。
【0042】
サービスエリアの調理場120で使用し終えた油は、廃油タンク110に貯えられ(矢印k)、ロータリーキルンの熱源を得る加熱ガス発生炉100の燃料として用いられる(矢印l)。廃油タンク110の油は、オイルスクラバ70で親油性のタールを洗い流すためのオイルとしても用いられる(矢印m)。補助燃料130は、バイオマス由来のエネルギーの供給(矢印p)が不十分なときに、発電機90の発電のためのエネルギーとしても用いられる(矢印o)。
【0043】
発電により得られた電気は、例えば、原料サイロ20内に送り込まれる温風の加熱(矢印p)等、システム稼働のために用いられる。さらに、発電により得られた電気は、サービスエリア(SA)140で用いる電気に用いられる(矢印q)。図示しないが、発電により得られた電気は、前記で余った場合には販売対象にもする。
【0044】
図4に、実施例1のプラントと旧プラントにおける熱分解ガスの流量等をしめす。図4の表に示した値はある日の一時間当たりの平均値である。旧プラントとは、非特許文献1と2に示すプラントである。すなわち、旧プラントは、高温下でタール成分を除去する手段と、親油性のタール成分を除去するためのオイルスクラバを備えておらず、プラントの稼働によりタールが生じ、プラントが継続稼働できないプラントである。
【0045】
「キルンを加熱するガスの温度」(図4)は、約950℃を維持するように設定されている。前述のとおり、キルン40の加熱には、加熱ガス発生炉100のガスが用いられる(図2の矢印r)。また、加熱ガス発生炉100で加熱ガスを発生させるためのエネルギーとして、主としてサブミクロンフィルタ80を経由しタールの材料となるものがほぼすべて取り除かれた熱分解ガスが用いられる(図2の矢印j)。エネルギー源として熱分解ガスで不十分の場合には、補助燃料130が用いられる(図2の矢印n)。
【0046】
「熱分解ガス」(図4)とは、キルンで加熱された結果熱分解されて生じたガスである。「熱分解ガスの温度」は約750℃になるように設定されている。「熱分解ガスの温度」を上昇させるためには、加熱ガス発生炉からキルンに供給する温度を上げる必要があるため、「熱分解ガスの温度」を上昇させるための手段は、加熱ガス発生炉の温度を上げる手段と同じである。すなわちそのためのエネルギーとしては、主として熱分解ガスが用いられる(図2の矢印j)。熱分解ガスで不十分の場合には、補助燃料130が用いられる(図2の矢印n)。
【0047】
図2に示す通り、タールを除去した熱分解ガス(図4の表では「乾ガス」と称している)は、発電機90と加熱ガス発生炉100の二か所でエネルギーとして利用される(図2の矢印hと矢印j)。従って、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を計測すれば、それぞれのプラントで排出された熱分解ガスの総量がある程度わかる。
【0048】
図4で「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を、実施例1のプラントと旧プラントで比較すると、次の通りである。
実施例1のプラントでは、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を加えると、19.8+32.7=52.5(Nm/h)である。
一方、旧プラントでは、「加熱ガス発生炉への供給乾ガス流量」と「発電機への供給乾ガス流量」を加えると、0+20.0=20.0(Nm/h)である。
【0049】
図5に、実施例1のプラントと旧プラントにおける「発電機への乾ガス流量」と「発電機へのA重油供給量」と「発電量」を示す。図5の表に示した値は、図4に示したものと同じ日時の、1時間当たりの平均値である。従って、旧プラントとは、非特許文献1と2に示すプラントである。
【0050】
「発電機への乾ガス流量」は、実施例1のプラントでは平均32.7Nm/hであるのに対し、旧プラントでは平均20.0Nm/hである。「発電機へのA重油供給量」は、実施例1のプラントでは平均5.2L/hであるのに対し、旧プラントでは平均21.3L/hである。「発電量」は、実施例1のプラントでは平均71.6KWであるのに対し、旧プラントでは平均91.4KWである。
【0051】
図5の値を用いて、実施例1のプラントと旧プラントのそれぞれについて、発電に用いられた熱量に関し、供給した乾ガスによるものと補助燃料であるA重油によるものの比を計算すると次の通りである。
ここで、
ガスに与える熱量=流量(Nm/h)×乾ガスの単位当たりの発熱量(MJ/Nm
乾ガスの単位当たりの発熱量=14.7(MJ/Nm
またここで、
油によって得られる熱量=流量(L/h)×比重(kg/L)×乾ガスの単位当たりの発熱量(MJ/kg)
比重=0.85(kg/L)
乾ガスの単位当たりの発熱量=38.9(MJ/kg)
【0052】
[実験例1のプラント]
乾ガス 32.7×14.7=480.7(MJ/h)
重 油 5.2×0.85×38.9=171.9(MJ/h)
乾ガス:重油=480.7:171.9=1:0.36
[旧プラント]
乾ガス 20.0×14.7=294.0(MJ/h)
重 油 21.3×0.85×38.9=704.3(MJ/h)
乾ガス:重油=294.0:704.3=1:2.40
すなわち、実施例1のプラントでは、設定された料の電力を得るために使った熱量は、乾ガスによるもの1に対して、補助燃料によるものは0.36であった。また、旧プラントでは、設定された料の電力を得るために使った熱量は、乾ガスによるもの1に対して、補助燃料によるものは2.40であった。
【0053】
図5に実施例1のプラントにおける発電量と使途を示す。この日得られた平均71.6KWの発電量のうち平均41.5KWが実施例1のプラントで使用された(図2の矢印p等)。また平均30.1KWがサービスエリアに送電された(図2の矢印q)。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、プラントを構成する各種装置を、プラントの機能が保たれるようにすることを前提に、搬送可能な大きさと重さになるようにしつつ、ユニット化する例である。例えば図7の符号101、102、103、104、105、106、107に示す、次に述べる通りのユニットである。
【0055】
原料投入ホッパー15と原料サイロ20について一つのユニット101を形成する。ロータリーキルン40、チャンバ―式集塵機52及びサイクロン式集塵機54について一つのユニット102を形成する。水スクラバ60とオイルスクラバ70について一つのユニット103を形成する。クーラ75とサブミクロンフィルタ80について一つのユニット104を形成する。発電機90について一つのユニット105を形成する。加熱ガス発生炉93について一つのユニット106を形成する。廃油タンク96とA重油タンク95について一つのユニット107を形成する。
【符号の説明】
【0056】
10 原料貯留ヤード
20 原料サイロ
30 計量器
40 ロータリーキルン
45 発生ガス
50 乾式集塵機
60 水スクラバ
61 水封コンベア
62 水封槽
63 スラッジ
64 洗浄水循環ポンプ
65 オートストレーナ
66 洗浄水クーラ
67 冷却水
68 噴射孔
70 オイルスクラバ
80 サブミクロンフィルタ
90 発電機
100 加熱ガス発生炉
110 廃油タンク
120 調理場
130 補助燃料
140 SA(サービスエリア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8